説明

空調制御システム

【課題】 居住空間の快適性を損なうことなく、電気料金を下げることができる空調制御システムを提供することを課題とする。
【解決手段】 空調設備400と、電力量計100と、居住空間530の体感指数を検知可能な体感指数検知部200と、空調設備400を制御可能な制御部300とを備え、制御部300は、所定期間の電力量から作成される第1のデータベース311と、所定期間の体感指数から作成される第2のデータベース312とを記憶する記憶部310と、需要電力の予測値が需要電力の規制値以上となる第1の期間を予測するとともに、体感指数の予測値が体感指数の規制値以上となる第2の期間を予測する予測部321とを有し、第1の期間及び第2の期間が生じないようにすべく、空調設備400の運転及び停止期間を最適に制御するように構成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居住空間の快適性を損なうことなく、電気料金を下げることができる空調制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、事務所ビルや商業施設などを所有する所有者は、電力会社と高圧受電の契約を結んでいる場合がある。各所有者から電力会社へ支払われる電力料金は、電力量によって決まっている。よって、電力料金を下げるために、この電力量を低減する様々な試みが行われている。
【0003】
電力料金は、基本料金と電力量料金とから構成される。基本料金は、1ヶ月ごとの最大需要電力(以下、「デマンド」とも称する)のうち、過去1年間で最も大きいデマンド(以下、「契約電力」とも称する)によって決定される。需要電力は、電力量計で計測された電力量をもとに30分単位で積算した電力量の平均値(平均電力)である。この需要電力のうち、その月で最大となる需要電力がデマンドである。電力量料金は、使用した電力量に比例して決定される。
【0004】
このようにして決定される電気料金を下げるために、所有者は、デマンドを低減することで基本料金を下げようとする。そこで、デマンドを低減するよう制御するデマンド制御システムが開発されている(例えば、特許文献1 段落[0012]〜[0018]参照)。このデマンド制御システムは、需要電力をリアルタイムに計測し、予め設定された需要電力を超過しないように、各空調設備などの負荷機器の運転を制御するものである。
【0005】
デマンド制御システムは、需要電力を算出すべく電力量を計測可能な電力量計100と、該電力量計100で計測された電力量から所定期間後の需要電力を予測するデマンドセンサ200Aと、該デマンドセンサ200Aが予測した需要電力が目標値を超過するか否かを演算して目標値を超過すると予測される場合に空調設備400などの負荷機器の運転を自動制御するデマンドコントローラ(負荷コントローラ)300Aと、から構成される。
【0006】
デマンドコントローラ300Aは、空調設備400の運転を制御する運転制御信号を空調設備400に送信することにより、空調設備400の運転を制御する。すなわち、デマンドコントローラ300Aは、目標値をデマンドに設定し、予測した需要電力がデマンドを超過しない場合だけ空調設備400を運転させ、デマンドを超過する場合、空調設備400の運転を停止する。
【0007】
このシステムによれば、目標値をデマンドに設定することで、このデマンドを超過しないように空調設備400を制御し、よって、需要電力をデマンドより下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−318907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、電力料金を下げるために運転制御される空調設備400は、事務所ビルや商業施設などの居住空間に対して居住者が快適に居住できるように冷暖房等の空調を行う設備である。例えば、真夏時の出勤直後などのように一斉に空調設備400を使用するような場合、一時に電力量が急増してデマンドを超過しそうになる場合がある。このような場合であっても、デマンドコントローラ300Aは、デマンドを超過しないように空調設備400の運転を停止させる。空調設備400の運転を停止すると、電気料金を下げることはできるが、居住空間内は、当然、蒸し暑い状態となり、居住者の快適性が著しく損なわれる。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み、居住空間の快適性を損なうことなく、電気料金を下げることができる空調制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る空調制御システムは、建物の居住空間の空調を制御可能な空調設備と、該空調設備に使用されている電力量を計測可能な電力量計と、空調設備を備えた居住空間の体感指数を検知可能な体感指数検知部と、該体感指数検知部によって計測された体感指数に基づいて空調設備を制御可能な制御部とを備え、前記制御部は、電力量計によって計測された所定期間の電力量から作成される第1のデータベースと、体感指数検知部によって検知された所定期間の体感指数から作成される第2のデータベースと、を記憶する記憶部と、第1のデータベースに基づいて電力量から算出されて予測される需要電力の予測値が需要電力の規制値以上となる第1の期間を予測するとともに、第2のデータベースに基づいて予測される体感指数の予測値が体感指数の規制値以上となる第2の期間を予測する予測部と、を有し、第1の期間及び第2の期間が生じないようにすべく、空調設備の運転及び停止期間を最適に制御するように構成されてなることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、制御部は、電力量計によって計測された所定期間の電力量により第1のデータベースを作成し、予測部で第1のデータベースに基づいて電力量から算出される需要電力が規制値以上となる第1の期間を予測する。また、制御部は、体感指数検知部によって検知された所定期間の体感指数により第2のデータベースを作成し、予測部で第2のデータベースに基づいて体感指数が規制値以上となる第2の期間を予測する。そして、制御部は、予測された第1の期間及び第2の期間に基づき空調設備の運転及び停止期間を最適に制御することにより、需要電力を規制値未満に収めて第1の期間を生じなくするとともに、体感指数を規制値未満に収めて第2の期間を生じなくする。従って、本発明に係る空調制御システムは、居住空間の快適性を損なうことなく、電気料金を下げることができる。
【0013】
また、本発明によれば、前記建物は、居住空間を区画する壁部を有する躯体部分と、該躯体部分の外側に設けられる断熱材とで構成される外断熱工法の建物であり、前記体感指数検知部は、前記躯体部分の壁部の表面温度を検知可能な第1検知部と、居住空間の温度を検知可能な第2検知部とを備えることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、居住空間は、外断熱工法の建物に設けられており、外断熱工法以外の工法(例えば、無断熱工法や内断熱工法など)と比較して外気の熱が居住空間に伝わりにくくなっている。ここで検知される躯体部分の壁部の表面温度及び居住空間の温度は、外断熱工法により他の工法と比較してその変化(温度の上昇及び下降の度合い)を低く抑えることができる。体感指数検知部は、この躯体部分の壁部の表面温度を第1検知部により検知するとともに、この居住空間の温度を第2検知部により検知する。すなわち、体感指数検知部は、居住空間の快適性を計るための体感指数として体感温度を検知する。体感指数検知部が検知する体感温度(躯体部分の壁部の表面温度及び居住空間の温度)は、外断熱工法により外気の熱による変化を受けにくくなっており、居住空間の快適性が損なわれにくくなっている。更に、制御部は、予測された第1の期間及び第2の期間に基づき空調設備の運転及び停止期間を最適に制御することにより、需要電力を規制値未満に収めて第1の期間を生じなくするとともに、体感温度を規制値未満に収めて第2の期間を生じなくする。従って、本発明に係る空調制御システムは、居住空間の快適性を損なうことなく、電気料金を下げることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の如く、本発明に係る空調制御システムによれば、居住空間の快適性を損なうことなく、電気料金を下げることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る空調制御システムの構成を説明する概略図、(b)は、同実施形態に係る空調制御システムの構成を説明するブロック図を示す。
【図2】同実施形態に係る空調制御システムの制御フロー図を示す。
【図3】(a)及び(b)は、同実施形態に係る空調制御システムの制御フロー図を示す。
【図4】従来のデマンド制御システムの構成を説明するブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る空調制御システムについて図面を参照しつつ説明する。まず、同実施形態に係る空調制御システムが設けられる建物について図1(a)を参照しつつ説明する。この建物は、居住空間530を区画する壁部511を有する躯体部分510と、該躯体部分510の外側に設けられる断熱材520とで構成される外断熱工法の建物である。そして、空調制御システムは、この壁部511と床部512と天井部513とで囲まれた居住空間530の空調設備400を制御する。
【0018】
壁部511は、本実施形態ではコンクリート製である例を説明する。断熱材520は、居住空間530の外側の熱を居住空間530の内側に伝わりにくくするために壁部511より外側に設けられている。よって、外断熱工法の建物に設けられる居住空間530は、断熱材520の外側の熱による影響を受けにくい一方、躯体部分510が空調設備400による熱(冷熱又は温熱)を蓄熱することができる。すなわち、この居住空間530は、断熱材520が設けられていない無断熱工法の建物や、断熱材520を躯体部分510の内側に設ける内断熱工法などの建物に設けられた居住空間と比較して空調の効果が長期間維持される。
【0019】
次に、本実施形態に係る空調制御システムの構成について図1(b)を参照しつつ説明する。同実施形態に係る空調制御システムは、建物の居住空間530の空調を制御可能な空調設備400と、該空調設備400に使用されている電力量を計測可能な電力量計100と、空調設備400を備えた居住空間530の体感指数を検知可能な体感指数検知部200と、該体感指数検知部200によって計測された体感指数に基づいて空調設備400を制御可能な制御部300とを備える。
【0020】
電力量計100は、空調設備400と接続され、空調設備400が使用する電力量を計測する。電力量計100は、更に、制御部300とも接続されており、計測した電力量を制御部300に送信可能に構成されている。
【0021】
体感指数検知部200は、躯体部分510の壁部511の表面温度Taを検知可能な第1検知部210と、居住空間530の温度Tbを検知可能な第2検知部220とを備える。体感指数検知部200は、本実施形態では、体感指数として体感温度を計測するために設けられる。体感温度は、「(壁部511の表面514の温度Ta+居住空間530の温度Tb)÷2」で求められる。
【0022】
第1検知部210及び第2検知部220は、温度を検知する温度センサである。第1検知部210は、特に、外部に面する断熱材520の内側に設けられる壁部511の表面514の温度を計測することが好ましい。第2検知部220は、例えば空調設備400に温度センサが搭載されている場合、その温度センサを代用してもよい。
【0023】
制御部300は、空調設備400を制御するための各種情報を記憶する記憶部310と、空調設備400を動作させる命令を演算する演算部320と、電力量計100、体感指数検知部200及び空調設備400と情報の送受信を行うI/Oインターフェース330とを備える。
【0024】
記憶部310は、電力量計100によって計測された所定期間の電力量から作成される第1のデータベース311と、体感指数検知部200によって検知された所定期間の体感温度から作成される第2のデータベース312と、本システムによって規制する需要電力Wの規制値Waと、本システムによって居住空間530に居住する居住者に快適性を提供すべく規制する体感温度Sの規制値Saとを記憶する。本実施形態では、需要電力Wの規制値Waは、1ヶ月の最大の需要電力(デマンド)であり、体感指数Sの規制値Saは、居住空間530に居住する人にとって快適性を損なわない上限の体感指数である例を説明する。各データベースに記憶される所定期間の電力量及び体感温度は、電力量及び体感温度を予測するのに必要な期間分の電力量及び体感温度であればよく、例えば、過去1年分であってもよいし、それ以上の期間であってもよい。第2のデータベース312に記録される体感温度Sは、空調設備400を運転させていないときの値である。よって、空調設備400を停止させても、この体感温度Sの予測値Sbが変わることがないようになっている。
【0025】
演算部320は、第1のデータベース311に基づいて電力量から算出されて予測されるデマンドWの予測値WbがデマンドWの規制値Wa以上となる第1の期間T1を予測するとともに、第2のデータベース312に基づいて予測される体感温度Sの予測値Sbが体感温度Sの規制値Sa以上となる第2の期間T2を予測する予測部321と、この予測部321の予測結果に基づき空調設備400の運転を制御する運転制御部322とを有する。
【0026】
次に同実施形態に係る空調制御システムの動作について、図2及び図3を参照しつつ説明する。なお、図2は、同実施形態に係る空調制御システムの制御部300の運転制御フロー図を示す。図3(a)は、同実施形態に係る空調制御システムの制御部300のデマンドWの予測値Wbの検証フロー図を示し、同図(b)は、同実施形態に係る空調制御システムの体感温度Sの予測値Sbの検証フロー図を示す。
【0027】
まず、空調設備400の運転制御フローについて、図2を参照しつつ説明する。演算部320は、第1のデータベース311に基づいてデマンドWの規制値Wa以上となる第1の期間T1を予測する(S101)。更に、演算部320は、第2のデータベース312に基づいて体感温度Sの規制値Sa以上となる第2の期間T2を予測する(S102)。
【0028】
次に、第1の期間T1が予測されず(T1=0の場合、S103でNO)、第2の期間T2も予測されない(T2=0の場合、S104でNO)場合、空調設備400は運転しない。
【0029】
第1の期間T1が予測されず(T1=0の場合、S103でNO)、第2の期間T2が予測される(T2>0の場合、S104でYES)場合、運転制御部322は、第2の期間T2に空調設備400を運転させる(S105)。すなわち、第2の期間T2が予測されたことにより、第2の期間T2の体感温度Sが、居住者を快適に居住させるための規制値Sa以上となる可能性があり、そのため、運転制御部322は、空調設備400をその第2の期間T2に運転させて、第2の期間T2の体感温度Sが規制値Saより下回るように制御する。なお、第1の期間T1が予測されていないため、運転制御部322が空調設備400を停止させなくても、デマンドWは、規制値Waを超えることはない。
【0030】
第1の期間T1が予測され(T1>0の場合、S103でYES)、第2の期間T2が予測されない(T2=0の場合、S106でNO)場合、運転制御部322は、第1の期間T1に空調設備400が運転されておれば、この空調設備400の運転を停止させる(S108)。すなわち、第1の期間T1が予測されたことにより、第1の期間T1のデマンドWが、規制値Wa以上となる可能性があり、そのため、運転制御部322は、その第1の期間T1の空調設備400の運転を停止させることにより、第1の期間T1のデマンドWが規制値Waより下回るように制御する。なお、この第2の期間T2が予測されていないため、運転制御部322が空調設備400を運転させなくても、体感温度Sは、規制値Saを超えることはない。
【0031】
第1の期間T1及び第2の期間T2が予測され(T1>0且つT2>0の場合、S103及びS106でYES)、第1の期間T1と第2の期間T2とが重ならない(一致しない)(T1≠T2、S107でNO)場合、運転制御部322は、第2の期間T2に空調設備400を運転させて、第2の期間T2の体感温度Sが規制値Saを下回るように制御する(S105)。また、運転制御部322は、第1の期間T1に空調設備400の運転を停止させることにより、第1の期間T1のデマンドWが規制値Waを下回るように制御する(108)。
【0032】
第1の期間T1及び第2の期間T2が予測され(T1>0且つT2>0の場合、S103及びS106でYES)、第1の期間T1と第2の期間T2とが重なる(一致する)(T1=T2、S107でYES)場合、運転制御部322は、空調設備400の運転及び停止期間の最適制御を行う(S109)。空調設備400の運転及び停止期間の最適制御とは、例えば、運転制御部322が空調設備400をその第2の期間T2(=第1の期間T1)の所定期間前に運転させて、第2の期間T2の体感温度Sが規制値Saを下回るように制御することである。運転制御部322は、その後、第1の期間T1に空調設備400の運転を停止させることにより、第1の期間T1のデマンドWが規制値Waを下回るように制御する。
【0033】
このようにして、本実施形態に係る空調制御システムは、第1の期間T1及び第2の期間T2が予測されても、空調設備400の運転及び停止期間を最適に制御することにより、第1の期間T1及び第2の期間T2が生じないように構成されている。
【0034】
次に、電力量計100で検知した電力量を記憶するとともに、デマンドWの予測値WbをデマンドWの算出値Wcで比較して検証する検証フローについて、図3(a)を参照しつつ説明する。まず、制御部300は、電力量計100から電力量の検出値を受信する(S201)。制御部300は、第1のデータベース311に電力量の検出値を記憶する(S202)とともに、デマンドWの予測値Wbを検出した電力量から算出する(S203)。そして、制御部300は、デマンドWの予測値Wbを算出されたデマンドWの算出値Wcで比較して検証する(S204)。制御部300は、電力量計100から電力量を受信するたびに、この動作を繰り返すことにより、デマンドWの予測値Wbの信頼性を監視する。
【0035】
次に、体感指数検知部200で検出した体感温度Sの検出値Scを記憶するとともに、体感温度Sの予測値Sbを体感温度Sの検出値Scで比較して検証する検証フローについて、図3(b)を参照しつつ説明する。まず、制御部300は、体感指数検知部200から体感指数Sの検出値Scを受信する(S301)。制御部300は、第2のデータベース312に体感温度Sの検出値Scを記憶する(S302)。そして、制御部300は、体感温度Sの予測値Sbを体感温度Sの検出値Scで比較して検証する(S303)。制御部300は、体感指数検知部200から体感温度Sを受信するたびに、この動作を繰り返すことにより、体感温度Sの予測値Sbの信頼性を監視する。
【0036】
従って、制御部300は、電力量計100によって計測された所定期間の電力量により第1のデータベース311を作成し、予測部321で第1のデータベース311に基づいて電力量から算出されるデマンドWが規制値Wa以上となる第1の期間T1を予測する。また、制御部300は、体感指数検知部200によって検知された所定期間の体感温度Sにより第2のデータベース312を作成し、予測部321で第2のデータベース312に基づいて体感温度Sが規制値Sa以上となる第2の期間T2を予測する。そして、制御部300は、予測された第1の期間T1及び第2の期間T2に基づき空調設備400の運転及び停止期間を最適に制御することにより、需要電力Wを規制値Wa未満に収めて第1の期間T1を生じなくするとともに、体感温度Sを規制値Sa未満に収めて第2の期間T2を生じなくする。
【0037】
また、居住空間530は、外断熱工法の建物に設けられており、外断熱工法以外の工法(例えば、無断熱工法や内断熱工法など)と比較して外気の熱が居住空間530に伝わりにくくなっている。ここで検知される躯体部分510の壁部514の表面温度Ta及び居住空間530の温度Tbは、外断熱工法により他の工法と比較してその変化(温度の上昇及び下降の度合い)を低く抑えることができる。体感指数検知部200は、この躯体部分510の壁部514の表面温度Taを第1検知部210により検知するとともに、この居住空間530の温度Tbを第2検知部220により検知する。すなわち、体感指数検知部200は、居住空間530の快適性を計るための体感温度Sを検知する。体感指数検知部200が検知する体感温度(躯体部分510の壁部514の表面温度Ta及び居住空間530の温度Tb)は、外断熱工法により外気の熱による変化を受けにくくなっており、居住空間530の快適性が損なわれにくくなっている。更に、制御部300は、予測された第1の期間T1及び第2の期間T2に基づき空調設備400の運転及び停止期間を最適に制御することにより、デマンドWを規制値Wa未満に収めて第1の期間T1を生じなくするとともに、体感温度Sを規制値Sa未満に収めて第2の期間T2を生じなくする。従って、本実施形態に係る空調制御システムは、居住空間530の快適性を損なうことなく、電気料金を下げることができる。
【0038】
なお、本発明に係る空調制御システムは、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0039】
上記実施形態に係る空調制御システムは、外断熱工法の建物に設けられる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、無断熱工法や内断熱工法の建物に設けることもできる。
【0040】
上記実施形態に係る空調制御システムは、需要電力Wの規制値Waを過去の当該月のデマンドとする例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、需要電力Wの規制値Waは、過去1年間の最大需要電力(デマンド)である契約電力としてもよい。このように規制値Waを選択すると、本実施形態に係る空調制御システムであれば、その月のデマンド(の規制値)が契約電力より低い場合に空調設備400を運転させることができるようになる。
【0041】
上記実施形態に係る空調制御システムは、体感指数として体感温度Sを例に説明したが、これに限定されるものではなく、室内温度や室内湿度などであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
100…電力量計、200…体感指数検知部、210…第1検知部、220…第2検知部、300…制御部、310…記憶部、311…第1のデータベース、312…第2のデータベース、320…演算部、321…予測部、322…運転制御部、330…I/Oインターフェース、400…空調設備、510…躯体部分、511…壁部、512…床部、513…天井部、514…(壁部の)表面、520…断熱材、530…居住空間、200A…デマンドセンサ、300A…デマンドコントローラ、Ta…躯体部分の表面の温度、Tb…居住空間の温度、T1…第1の期間、T2…第2の期間、W…デマンド(最大需要電力)、Wa…デマンドの規制値、Wb…デマンドの予測値、S…体感温度(体感指数)、Sa…体感温度の規制値、Sb…体感温度の予測値、Sc…体感温度の検出値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の居住空間の空調を制御可能な空調設備と、
該空調設備に使用されている電力量を計測可能な電力量計と、
空調設備を備えた居住空間の体感指数を検知可能な体感指数検知部と、
該体感指数検知部によって計測された体感指数に基づいて空調設備を制御可能な制御部とを備える空調制御システムであって、
前記制御部は、電力量計によって計測された所定期間の電力量から作成される第1のデータベースと、体感指数検知部によって検知された所定期間の体感指数から作成される第2のデータベースと、を記憶する記憶部と、
第1のデータベースに基づいて電力量から算出されて予測される需要電力の予測値が需要電力の規制値以上となる第1の期間を予測するとともに、第2のデータベースに基づいて予測される体感指数の予測値が体感指数の規制値以上となる第2の期間を予測する予測部と、を有し、
第1の期間及び第2の期間が生じないようにすべく、空調設備の運転及び停止期間を最適に制御するように構成されてなることを特徴とする空調制御システム。
【請求項2】
前記建物は、居住空間を区画する壁部を有するとともに外部と隔てる躯体部分と、該躯体部分の外側に設けられる断熱材とで構成される外断熱工法の建物であり、
前記体感指数検知部は、前記躯体部分の壁部の表面温度を検知可能な第1検知部と、居住空間の温度を検知可能な第2検知部とを備える請求項1に記載の空調制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−63054(P2012−63054A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206306(P2010−206306)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000221775)東邦レオ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】