説明

空調室内機

【課題】吹き出し空気の左右吹き出しにおいて、空気を狙いの方向に効率的に吹き出すことができる空調室内機を提供する。
【解決手段】空調室内機10では、垂直羽根20は、本体ケーシング13内に配置され、吹出口15からの空気の吹き出し状態を第1状態および第2状態のいずれかに切り換え可能である。第1状態は本体ケーシング13の正面側に吹き出す状態であり、第2状態は本体ケーシング13の側面側に吹き出す状態である。制御部40は、運転停止時に垂直羽根20を第2状態にした後に補助羽根130を収納し上下風向調整羽根30を閉状態にするので、垂直羽根20と上下風向調整羽根30及び補助羽根130とが干渉せず、また、干渉してもその程度が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
空調室内機の吹出口から吹き出される空気は、吹出口近傍に配置された上下風向調整羽根、及び吹出口の内側に配置された垂直羽根によって吹き出し方向の変更が可能である。例えば、特許文献1(特開2006−2984号公報)に開示されている室内機では、吹出口に上下風向板と複数の左右風向板(垂直羽根)とが設けられており、左右風向板により室内に吹き出される空気の左右方向の向きを偏向し、上下風向板によって上下方向の向きを変更する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の左右風向板(垂直羽根)は、室内ファンから吹出口に向って形成されている吹出流路の途中に収納されているので、吹出流路を通る空気を左右に偏向することはできるが、吹出口を出た空気が狙いの方向に進むとは考えにくい。
【0004】
本発明の課題は、吹き出し空気の左右吹き出しにおいて、空気を狙いの方向に効率的に吹き出すことができる空調室内機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空調室内機は、吹出口からの空気の吹き出し方向を変更可能な空調室内機であって、ケーシングと、垂直羽根と、上下方向調整羽根と、制御部とを備えている。ケーシングには、吹出口が形成されている。垂直羽根は、ケーシング内に配置され、吹出口からの空気の吹き出し状態を第1状態および第2状態のいずれかに切り換え可能である。第1状態は、ケーシングの正面側に吹き出す状態である。第2状態は、ケーシングの側面側に吹き出す状態である。上下風向調整羽根は、運転時に吹出口を開ける開状態となり、運転停止時に吹出口を閉じる閉状態となる。制御部は、垂直羽根および上下風向調整羽根の動作を制御する。また、垂直羽根は、第1状態では閉状態の上下風向調整羽根と干渉する程度の大きさに設定されている。また、制御部は、運転停止時に垂直羽根を第2状態にした後、上下風向調整羽根を閉状態にする。
【0006】
この空調室内機では、制御部は、運転停止時に垂直羽根を第2状態にした後に上下風向調整羽根を閉状態にするので、垂直羽根と上下風向調整羽根とが干渉せず、また、干渉してもその程度が小さい。それゆえ、垂直羽根の吹き出し方向の寸法を長くとることができるので、横吹き出し時の空気を狙いの方向に向けることができる上に、運転停止時の上下風向調整羽根と垂直羽根との干渉による、垂直羽根の塑性変形を防止することができる。
【0007】
本発明の第2観点に係る空調室内機は、第1観点に係る空調室内機であって、補助羽根をさらに供えている。補助羽根は、運転時、風向調整羽根が水平状態に近い姿勢をとっているときの上下風向調整羽根の後端と吹出口との間に生じる隙間を小さくする。補助羽根は、運転停止時に、閉状態の上下風向調整羽根よりも垂直羽根に近い位置に収納される。垂直羽根は、第1状態では収納状態の補助羽根と干渉する程度の大きさに設定されている。制御部は、運転停止時に垂直羽根を第2状態にした後、補助羽根を収納状態にする。
【0008】
この空調室内機では、制御部は、運転停止時に垂直羽根を第2状態にした後、補助羽根を収納状態にするので、垂直羽根と補助羽根とが干渉せず、また、干渉してもその程度が小さい。それゆえ、垂直羽根の吹き出し方向の寸法を長くとることができるので、横吹き出し時の空気を狙いの方向に向けることができる上に、運転停止時の補助羽根と垂直羽根との干渉による、垂直羽根の塑性変形を防止することができる。
【0009】
本発明の第3観点に係る空調室内機は、第1観点または第2観点に係る空調室内機であって、上下風向調整羽根が閉状態のときの垂直羽根の第2状態が、垂直羽根の原点位置である。
【0010】
従来、運転再開ごとに垂直羽根を原点位置に復帰させていたが、この空調室内機では、上下風向調整羽根が閉状態のときの垂直羽根の第2状態を垂直羽根の原点位置とすることによって、運転再開時の垂直羽根の原点復帰を省略することができる。その結果、使用者が運転開始から空気吹き出し動作に至るまでの時間を長く感じる、というような不快感を軽減することができる。
【0011】
本発明の第4観点に係る空調室内機は、第3観点に係る空調室内機であって、制御部が、運転停止直前の垂直羽根の位置を記憶し、運転再開時にその位置へ復帰させる。
【0012】
この空調室内では、運転再開時の垂直羽根の原点復帰を省略することができるので、垂直羽根が前回運転時の位置に戻るまでに要する時間が従来よりも短くなり、その分、使用者が運転開始から空気吹き出し動作に至るまでの時間を長く感じる、というような不快感を軽減することができる。
【0013】
本発明の第5観点に係る空調室内機は、第4観点に係る空調室内機であって、垂直羽根が、間隔を開けて並ぶ複数の垂直羽根片を有している。制御部は、運転停止時に複数の垂直羽根片のうちの左半分をケーシングの左側面側に向け、右半分をケーシングの右側面側に向ける。
【0014】
この空調室内機、特に、吹き出し空気を左右独立して吹き分けることができるタイプの空調室内機では、運転再開時の垂直羽根の原点復帰を省略することができるので、運転開始から垂直羽根が前回運転時の位置に復帰するまでに要する時間が従来よりも短くなり、その分、使用者が運転開始から空気吹き出し動作に至るまでの時間を長く感じる、というような不快感を軽減することができる。
【0015】
本発明の第6観点に係る空調室内機は、第4観点に係る空調室内機であって、垂直羽根が、間隔を開けて並ぶ複数の垂直羽根片を有している。制御部は、運転停止時に複数の垂直羽根片を右左いずれか一方に向ける。
【0016】
この空調室内機、特に、吹き出し空気を左右いずれか一方に向けるタイプの空調室内機では、運転再開時の垂直羽根の原点復帰を省略することができるので、運転開始から垂直羽根が前回運転時の位置に復帰するまでに要する時間が従来よりも短くなり、その分、使用者が運転開始から空気吹き出し動作に至るまでの時間を長く感じる、というような不快感を軽減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1観点に係る空調室内機では、垂直羽根と上下風向調整羽根とが干渉せず、また、干渉してもその程度が小さい。それゆえ、垂直羽根の吹き出し方向の寸法を長くとることができ、横吹き出し時の空気を狙いの方向に向けることができる上に、運転停止時の上下風向調整羽根と垂直羽根との干渉による、垂直羽根の塑性変形を防止することができる。
【0018】
本発明の第2観点に係る空調室内機では、垂直羽根と補助羽根とが干渉せず、また、干渉してもその程度が小さい。それゆえ、垂直羽根の吹き出し方向の寸法を長くとることができ、横吹き出し時の空気を狙いの方向に向けることができる上に、運転停止時の補助羽根と垂直羽根との干渉による、垂直羽根の塑性変形を防止することができる。
【0019】
本発明の第3観点から第6観点のいずれかに係る空調室内機では、垂直羽根が前回運転時の位置に戻るまでに要する時間が従来よりも短くなるので、その分、使用者が運転開始から空気吹き出し動作に至るまでの時間を長く感じる、というような不快感を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る空調室内機であって、運転時の当該空調室内機の斜視図。
【図2】図1に係る空調室内機であって、運転停止時の当該空調室内機の断面図。
【図3】上下風向調整羽根が吹出口を開けたときの空調室内機下部の側面図。
【図4】暖房運転時に採られる下吹き姿勢の上下風向調整羽根側面図。
【図5】暖房運転時に採られる上吹き姿勢の上下風向調整羽根側面図。
【図6】第2状態の羽根片、及びその周辺の斜視図。
【図7】図1のA−A線における空調室内機の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0022】
(1)空調室内機10の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る空調室内機10であって、運転時の当該空調室内機10の斜視図である。また、図2は、図1に係る空調室内機であって、運転停止時の当該空調室内機10の断面図である。
【0023】
図1及び図2において、空調室内機10は壁掛式の室内機であって、室内熱交換器11、室内ファン12、本体ケーシング13、底フレーム17、フィルタ25及び制御部40が搭載されている。
【0024】
本体ケーシング13は、前面グリル13a、前面パネル13b及び背面板13cによって立体空間を形成し、その立体空間内に室内熱交換器11、室内ファン12、底フレーム17、フィルタ25、及び制御部40が収まっている。前面パネル13bは、前面グリル13aの前面を覆っており、上端が前面グリル13aに回動自在に支持され、ヒンジ式に動作することができる。また、本体ケーシング13は、取付板(図示せず)を介して壁に装着される。
【0025】
室内熱交換器11及び室内ファン12は、底フレーム17に取り付けられている。室内熱交換器11は、通過する空気との間で熱交換を行う。また、室内熱交換器11は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成し、その下方に室内ファン12が位置する。室内ファン12は、クロスフローファンであり、室内から取り込んだ空気を、室内熱交換器11に当てて通過させた後、室内に吹き出す。
【0026】
本体ケーシング13の下面部には、吹出口15が設けられている。吹出口15には、吹出口15から吹き出される空気を案内する上下風向調整羽根30が回動自在に取り付けられている。上下風向調整羽根30は、モータ(図示せず)によって駆動し、空気の吹出方向を変更するだけでなく、吹出口15を開閉することもできる。吹出口15は、吹出流路18によって本体ケーシング13の内部と繋がっており、吹出流路18は吹出口15から底フレーム17に沿って形成されている。
【0027】
また、吹出流路18には、図2に示すように、垂直羽根20が配置されている。垂直羽根20は、吹き出し空気を少なくとも本体ケーシング13の正面または側面のいずれかの方向に仕向けることができる。
【0028】
本体ケーシング13の前面グリル13aと室内熱交換器11との間にはフィルタ25が配置されている。フィルタ25は、室内熱交換器11に向って流入してくる空気に含まれる塵埃を除去する。
【0029】
前面グリル13aの前上部には、吸込口22が設けられている。吸込口22近傍の室内空気は、室内ファン12の稼動によって吸込口22、フィルタ25及び室内熱交換器11を経て室内ファン12に吸い込まれ、室内ファン12から吹出流路18を経て吹出口15から吹き出される。
【0030】
制御部40は、本体ケーシング13の前方部分に収まっており、室内ファン12の回転数制御、吹出口15の開度調節などを行う。なお、吹出口15の開度調節は、上下風向調整羽根30と補助羽根130とを介して行なわれる。
【0031】
(2)詳細構成
(2−1)上下風向調整羽根30
上下風向調整羽根30は、図1及び図2に示すように略長方形を成す板状部材であり、空調室内機10が運転を停止しているときは、吹出口15の開口を覆う位置(以後、閉位置とよぶ)で待機する。上下風向調整羽根30の閉位置において外部から視認することができる第1面30aは、本体ケーシング13の下面の一部を担っている。
【0032】
また、上下風向調整羽根30の第1面30aの裏面である第2面30bには、第1前方連結部311、第2前方連結部312、及び第3前方連結部313が設けられている(図1参照)。第1前方連結部311、第2前方連結部312、及び第3前方連結部313は、上下風向調整羽根30の閉位置において第2面30bの前方端側で、第2面30bの長手方向に沿ってほぼ等間隔で配置されている。
【0033】
さらに、上下風向調整羽根30の第2面30bには、第1後方連結部321、及び第2後方連結部322が設けられている。第1後方連結部321、及び第2後方連結部322は、上下風向調整羽根30の閉位置において第2面30bの後方端側で、第2面30bの長手方向中央部に配置されている。
【0034】
第1前方連結部311、第2前方連結部312、及び第3前方連結部313それぞれには、円弧状のラック部材46の一端が連結される。ラック部材46は、凸側面にラックアンドピニオン機構のラック46aが形成されており、ラック部材46はラック46aを吹出口15の斜め上方に向けた姿勢をとる。
【0035】
また、図1に示すように、第1後方連結部321、及び第2後方連結部322それぞれには、折り畳み可能なリンク部材47の一端が連結されている。リンク部材47は、2つの棒状部材の端部同士が回転自在に接合された構成である。リンク部材47の2つの棒状部材のうち節47cの上側を上リンク47a、下側を下リンク47bとよぶ。
【0036】
図3は、上下風向調整羽根30が吹出口15を開けたときの空調室内機10下部の側面図である。図3において、本体ケーシング13の内部には、第1ステッピングモータ51が搭載されており、第1ステッピングモータ51の回転軸にはピニオンギア51aが取り付けられている。ピニオンギア51aはラック46aと噛み合っており、第1ステッピングモータ51がピニオンギア51aを図3正面視で時計方向に回転させることによって、ラック部材46が吹出口15の前方に向って移動し、上下風向調整羽根30の前部が吹出口15の前方に向って迫り出す。これを、第1ステッピングモータ51の第1動作とよぶ。
【0037】
逆に、第1ステッピングモータ51がピニオンギア51aを図3正面視で反時計方向に回転させることによって、ラック部材46が本体ケーシング13の奥側に向って後退する。これを、第1ステッピングモータ51の第2動作とよぶ。
【0038】
さらに、本体ケーシング13の内部には、第2ステッピングモータ52が搭載されており、第2ステッピングモータ52の回転軸には駆動ギア52aが取り付けられている。また、リンク部材47の上リンク47aの端部に被駆動ギア48が設けられており、第2ステッピングモータ52が駆動ギア52aを介して被駆動ギア48を図3正面視の時計方向に回転させることによって、節47cを中心に上リンク47aと下リンク47bとが成す中心角が拡大し、上下風向調整羽根30の後部が吹出口15の前方に向って迫り出す。これを、第2ステッピングモータ52の第1動作とよぶ。
【0039】
逆に、駆動ギア52aが被駆動ギア48を図3正面視の反時計方向に回転させることによって、節47cを中心に上リンク47aと下リンク47bとが成す中心角が縮小し、上下風向調整羽根30の後部が吹出口15に向って後退する。これを、第2ステッピングモータ52の第2動作とよぶ。
【0040】
したがって、第1ステッピングモータ51の第1動作と第2ステッピングモータ52の第1動作とが、同時または連続して実行されることによって、上下風向調整羽根30が吹出口15の前方に向って迫り出す。また、第1ステッピングモータ51の第2動作と第2ステッピングモータ52の第2動作とが、同時または連続して実行されることによって、上下風向調整羽根30が吹出口15に向って後退する。
【0041】
なお、図3で示した上下風向調整羽根30の姿勢は、除湿運転時などに採られる上下吹き姿勢であるが、この他、第1ステッピングモータ51の第1動作、第2動作、第2ステッピングモータ52の第1動作、及び第2動作の組み合わせによって、さまざまの形態をとり得る。以下、代表的な姿勢について図面を参照しながら説明する。
【0042】
図4は、暖房運転時に採られる下吹き姿勢の上下風向調整羽根30の側面図である。また、図5は、暖房運転時に採られる上吹き姿勢の上下風向調整羽根30の側面図である。図4において、上下風向調整羽根30の暖房運転時の下吹き姿勢は、閉位置を基準とした場合、第1ステッピングモータ51がピニオンギア51aを図3正面視で時計方向に角度A1だけ回転させ、第2ステッピングモータ52が被駆動ギア48を図3正面視の時計方向に角度B1だけ回転させることによって、実現される。
【0043】
また、図5において、上下風向調整羽根30の暖房運転時の上吹き姿勢は、閉位置を基準とした場合、第1ステッピングモータ51がピニオンギア51aを図3正面視で時計方向に角度A1だけ回転させ、第2ステッピングモータ52が被駆動ギア48を図3正面視の時計方向に角度B2だけ回転させることによって、実現される。なお、角度B2≧角度B1である。
【0044】
(2−2)補助羽根130
図1において、吹出口15の後部に、その長辺と平行な回動軸を有する2つの補助羽根130が設けられている。2つの補助羽根130は、吹出口15の長手方向に沿って隣接している。
【0045】
本体ケーシング13のうち吹出口15の中央部と対峙する位置に、補助羽根130の回動軸の一端を支持する2つの中央支持部131が設けられている。また、本体ケーシング13のうち吹出口15の後部コーナーには、補助羽根130の回動軸の他方の端を支持する側方支持部132が設けられている。
【0046】
また、図2に示すように、上下風向調整羽根30が閉位置にあるとき、補助羽根130は上下風向調整羽根30の上方に、上下風向調整羽根30とほぼ平行な姿勢で収納されており、外部からは見えない。このとき、補助羽根130は、上下風向調整羽根30の第2面30bと重なるように近接しているので、補助羽根130が吹出流路18を占有する空間は小さく、吹出口15周辺および吹出流路18に配置されている他の部材(例えば、垂直羽根20)との干渉が最小限に抑えられている。
【0047】
また、上下風向調整羽根30が図3に示すような除湿運転時などにおける上下吹き姿勢を採るとき、補助羽根130の先端が上下風向調整羽根30の後端に向くように回動する。上下風向調整羽根30が上下吹き姿勢を採るとき、吹出口15からの吹き出し空気は、上下風向調整羽根30の第2面30bに当たって、斜め上方に向う空気と、斜め下方に向う空気とに分かれる。但し、上下風向調整羽根30の後端と吹出口15との隙間が大きいので、斜め下方に向う空気の一部が吹出口15後方の壁(空調室内機10が取り付けられる壁)に向って流れ、壁面を汚す原因になる。
【0048】
本実施形態の場合、上下風向調整羽根30の後端と吹出口15との隙間に補助羽根130が介在するようになるので、その隙間を通過して後方へ漏れ出ようとする吹き出し空気を補助羽根130が遮る。その結果、吹き出し空気による壁面の汚れが防止される。
【0049】
また、上下風向調整羽根30が図4に示すような暖房運転における下吹き姿勢を採るとき、若しくは、図5に示すような暖房運転における上吹き姿勢を採るとき、補助羽根130は、上下風向調整羽根30とほぼ平行になるように回動する。この場合、補助羽根130は後方へ漏れ出ようとする吹き出し空気を遮るだけでなく、その吹き出し空気を上下風向調整羽根30と平行な方向へ導く。
【0050】
(2−3)垂直羽根20
垂直羽根20は、図1に示すように、複数の羽根片201と、複数の羽根片201を連結する連結棒203を有している。また、垂直羽根20は、図2に示すように、吹出流路18において、閉位置における上下風向調整羽根30の第2面30bよりも室内ファン12近傍に配置されている。
【0051】
羽根片201は、吹出流路18の室内ファン12側から吹出口15側に向って徐々に面積が拡大する板片であり、吹出口15側に連結棒203が挿入されるスリット孔201aが形成され、室内ファン12側の端部には本体ケーシング13内部に支持される支持部201bが形成されている。また、羽根片201には、中央部から支持部201bに向って延びる2つのスリット201cが形成されている。
【0052】
複数枚の羽根片201は、連結棒203が吹出口15の長手方向に沿って水平往復移動することによって、本体ケーシング13の長手方向に対して垂直な状態を中心に左右に揺動する。なお、連結棒203は、モータ(図示せず)によって水平往復移動する。
【0053】
羽根片201は揺動だけでなく、揺動した後にモータが停止することによって任意の角度で止まることができる。それゆえ、羽根片201は、吹出口15からの空気の吹き出し状態を本体ケーシング13の正面側に吹き出す第1状態(図1参照)と、本体ケーシング13の側面側に吹き出す第2状態のいずれかに切り換え可能である。
【0054】
図6は、第2状態の羽根片201及びその周辺の斜視図である。図6において、例えば、連結棒203が吹出口15の長手方向に沿って最大限移動したとき、羽根片201では、2つのスリット201cに挟まれた部分が支持部201bを固定端とする片持ち梁となって撓む。それゆえ、羽根片201の先端は本体ケーシング13の側面側に向き、第2状態となる。
【0055】
また、垂直羽根20の羽根片201は、吹き出し方向の寸法を長くとるほど、横吹き出し時の空気を狙いの方向に向けることができるので、本実施形態では、第1状態の羽根片201の大きさが、閉状態の上下風向調整羽根30と干渉する程度の大きさに設定されている。
【0056】
図7は、図1のA−A線における空調室内機10の部分断面図である。図7において、垂直羽根20の中央より右側にある羽根片201は先端を右側面RF側に向ける姿勢を採り、垂直羽根20の中央より左側にある羽根片201は先端を左側面LF側に向ける姿勢を採っている。つまり、制御部40は、吹出口15からの空気を本体ケーシング13の側面側に吹き出す第2状態に切り換えた後、補助羽根130を収納し、且つ上下風向調整羽根30を閉位置に戻している。
【0057】
仮に、制御部40が空調室内機10の運転を停止し、上下風向調整羽根30を閉位置に戻した場合、羽根片201が第1状態のままでは羽根片201の先端部と上下風向調整羽根30とが干渉する。さらに、補助羽根130は上下風向調整羽根30の上方に収納されるので、補助羽根130とも干渉する。このような干渉は、軋み音が発生させるだけでなく、羽根片201を変形させる可能性がある。
【0058】
そこで、本実施形態では、制御部40が空調室内機10の運転を停止する際、図7に示すように羽根片201を第2状態にするので、吸込口15に収納された補助羽根130、及び閉位置に戻った上下風向調整羽根30との干渉が防止される。また、仮に干渉しても、干渉の程度が小さいので、軋み音の発生や羽根片201の変形が防止される。
【0059】
また、空調室内機10では垂直羽根20の連結棒203をステッピングモータで駆動しており、上下風向調整羽根30が閉状態のときの羽根片201の第2状態を垂直羽根20の原点位置としている。制御部40は、運転開始時に垂直羽根20を一旦原点位置に移動させてから、記憶している前回停止直前の位置へ戻す必要があるが、停止時にすでに垂直羽根20が原点位置にある(羽根片201が第2状態にある)ので、原点位置までの時間が省略される。それゆえ、運転開始から垂直羽根20が前回停止直前の位置に復帰するまでに要する時間が従来よりも短くなり、その分、使用者が運転開始から空気吹き出し動作に至るまでの時間を長く感じる、というような不快感を軽減することができる。
【0060】
なお、図7では、複数の羽根片201のうちの半分は先端を右側面RF側に向け、残りの半分が左側面LF側に向けているが、それに限定されるものではなく、全ての羽根片201の先端を右側面RF側および左側面LF側のいずれか一方に向けても同様の効果が得られる。
【0061】
(3)特徴
(3−1)
空調室内機10では、垂直羽根20は、本体ケーシング13内に配置され、吹出口15からの空気の吹き出し状態を第1状態および第2状態のいずれかに切り換え可能である。第1状態は本体ケーシング13の正面側に吹き出す状態であり、第2状態は本体ケーシング13の側面側に吹き出す状態である。制御部40は、運転停止時に垂直羽根20を第2状態にした後に補助羽根130を収納し上下風向調整羽根30を閉状態にするので、垂直羽根20と上下風向調整羽根30及び補助羽根130とが干渉せず、また、干渉してもその程度が小さい。それゆえ、垂直羽根20の吹き出し方向の寸法を長くとることができ、横吹き出し時の空気を狙いの方向に向けることができる上に、運転停止時に上下風向調整羽根と垂直羽根との干渉による、垂直羽根の塑性変形を防止することができる。
【0062】
(3−2)
また、上下風向調整羽根30が閉状態のときの垂直羽根20の第2状態が、垂直羽根20の原点位置である。従来の運転再開ごとに垂直羽根を原点位置に復帰させている空調室内機との比較において、運転再開時の垂直羽根20の原点復帰が省略される。その結果、使用者が運転開始から空気吹き出し動作に至るまでの時間を長く感じる、というような不快感を軽減することができる。
【0063】
(3−3)
空調室内機10では、制御部40が、運転停止直前の垂直羽根20の位置を記憶し、運転再開時にその位置へ復帰させる。この空調室内機では、運転開始時すでに垂直羽根20が原点位置にあるので、垂直羽根20が前回停止直前の位置に戻るまでに要する時間が従来よりも短くなる。それゆえ、使用者が運転開始から空気吹き出し動作に至るまでの時間を長く感じる、というような不快感を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明によれば空気吹き出し方向に沿った垂直羽根の長さが、従来に比べて大きく設定され、空気を狙いの方向に効率的に吹き出すことができる。よって、吸込口自動開閉タイプの空調室内機に有用である。
【符号の説明】
【0065】
10 空調室内機
13 本体ケーシング
15 吹出口
20 垂直羽根
30 上下風向調整羽根
40 制御部
130 補助羽根
201 羽根片
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【特許文献1】特開2006−2984号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹出口(15)からの空気の吹き出し方向を変更可能な空調室内機であって、
前記吹出口(15)が形成されたケーシング(13)と、
前記ケーシング(13)内に配置され、前記吹出口(15)からの空気の吹き出し状態を、前記ケーシング(13)の正面側に吹き出す第1状態、及び前記ケーシング(13)の側面側に吹き出す第2状態のいずれかに切り換え可能な垂直羽根(20)と、
運転時に前記吹出口(15)を開ける開状態となり、運転停止時に前記吹出口(15)を閉じる閉状態となる上下風向調整羽根(30)と、
前記垂直羽根(20)および前記上下風向調整羽根(30)の動作を制御する制御部(40)と、
を備え、
前記垂直羽根(20)は、前記第1状態では前記閉状態の前記上下風向調整羽根(30)と干渉する程度の大きさに設定されており、
前記制御部(40)は、運転停止時に前記垂直羽根(20)を第2状態にした後、前記上下風向調整羽根(30)を閉状態にする、
空調室内機(10)。
【請求項2】
運転時、水平状態に近い姿勢をとっているときの前記上下風向調整羽根(30)の後端と前記吹出口(15)との間に生じる隙間を小さくする補助羽根(130)をさらに備え、
前記補助羽根(130)は、運転停止時に、閉状態の前記上下風向調整羽根(30)よりも前記垂直羽根(20)に近い位置に収納され、
前記垂直羽根(20)は、前記第1状態では収納状態の前記補助羽根(130)と干渉する程度の大きさに設定されており、
前記制御部(40)は、運転停止時に前記垂直羽根(20)を第2状態にした後、前記補助羽根(130)を前記収納状態にする、
請求項1に記載の空調室内機(10)。
【請求項3】
前記上下風向調整羽根(30)が閉状態のときの前記垂直羽根(20)の第2状態が、前記垂直羽根(20)の原点位置である、
請求項1又は請求項2に記載の空調室内機(10)。
【請求項4】
前記制御部(40)は、運転停止直前の前記垂直羽根(20)の位置を記憶し、運転再開時に前記位置へ復帰させる、
請求項3に記載の空調室内機(10)。
【請求項5】
前記垂直羽根(20)は、間隔を開けて並ぶ複数の垂直羽根片(201)を有し、
前記制御部(40)は、運転停止時に複数の前記垂直羽根片(201)のうちの左半分を前記ケーシング(13)の左側面側に向け、右半分を前記ケーシング(13)の右側面側に向ける、
請求項4に記載の空調室内機(10)。
【請求項6】
前記垂直羽根(20)は、間隔を開けて並ぶ複数の垂直羽根片(201)を有し、
前記制御部(40)は、運転停止時に複数の前記垂直羽根片(201)を右左いずれか一方に向ける、
請求項4に記載の空調室内機(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50281(P2013−50281A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189474(P2011−189474)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】