説明

空調機

【課題】予熱運転機能(第1機能)および暖房予約機能(第2機能)を両立すべきか、或いは、いずれか一方の機能を優先すべきかを空調機側で決定する、ユーザーにとって使い勝手のよい空調機を提供する。
【解決手段】空調機1では、リモコン52に設けられた第1機能設定スイッチ41及び第2機能設定スイッチ42を介して第1機能および第2機能の両方を設定することができる。それゆえ、一方が既に設定されていることを理由に他方が排除されることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機に関し、特に、予熱運転機能および暖房予約機能を有する空調機に関する。
【背景技術】
【0002】
空調機において、冬場の朝に暖房の立ち上がりを早くする手段として、特許文献1(特開2010−48494号公報)に、圧縮機を低能力で運転しながら暖房開始指令を受けた後に圧縮機の能力を増大させる予熱運転機能が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、一般の空調機には、設定時刻までに部屋が所定温度となるように暖房する暖房予約機能が付帯されているが、上記特許文献には予熱運転機能および暖房予約機能の使い分けについて何ら説明がなく、機能両立の可否、機能の優先順位決定の要否については不明である。
【0004】
本発明の課題は、両機能を両立すべきか、或いは、いずれか一方の機能を優先すべきかをユーザーに代わって空調機側で決定する、ユーザーにとって使い勝手のよい空調機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る空調機は、圧縮機、凝縮器、減圧機構および蒸発器の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用する空調機であって、設定手段と、制御手段とを備えている。設定手段は、所定機能が、その所定機能を必要とする時刻またはその近傍で働くように設定するための手段である。制御手段は、設定手段によって設定された条件に沿って空調運転を行う。所定機能は、第1機能と第2機能とを含んでいる。第1機能は、予熱設定時間帯に圧縮機を低能力で運転して暖房運転時と同じ冷凍サイクルで冷媒を循環させ、暖房運転開始指令を受けたときに暖房運転を開始する機能である。第2機能は、暖房設定時刻に空調対象空間の温度が設定温度に近づくように自動的に暖房運転を開始する機能である。設定手段は、第1機能および第2機能の両方を設定することができる。
【0006】
第1機能と第2機能とを両立すべきか、それとも、いずれか一方を優先すべきかを空調機側で決定するには、少なくとも成立に矛盾があるか否かにかかわらず両機能を設定できるようにする必要がある。この空調機では、設定手段が第1機能および第2機能の両方を設定することができるので、一方が既に設定されていることを理由に他方が排除されることがない。
【0007】
本発明の第2観点に係る空調機は、第1観点に係る空調機であって、風向調整手段をさらに備えている。風向調整手段は、調和された空気の吹出方向を調節する。制御手段は、第1機能が働いている期間中に暖房運転を開始する指令を受けたとき、風向調整手段を介して空気の吹出方向を所定領域に向う方向へ固定する。
【0008】
この空調機では、第1機能が、例えば冬場の朝など、すぐに暖かい空気が必要な生活シーンに適用されるので、暖かい空気の吹出方向が固定されることによって、ユーザーは暖気が到達するゾーンで朝の仕度をすればよく、ユーザーにとって使い勝手がよい。
【0009】
本発明の第3観点に係る空調機は、第1観点に係る空調機であって、制御手段が、第1機能と第2機能とを両立させることができないと判断したとき、第1機能および第2機能のいずれか一方の機能を優先させる。
【0010】
この空調機では、例えば、第1機能における圧縮機の始動時間と第2機能における圧縮機の始動時間とが一致した場合などは、両機能の両立は不可能であるのでいずれか一方を優先すればよい。つまり、両機能の優先順位の決定は空調機側で行うので、ユーザー自らが考える必要がなく、使い勝手がよい。
【0011】
本発明の第4観点に係る空調機は、第3観点に係る空調機であって、制御手段が第2機能よりも第1機能を優先させる。
【0012】
この空調機では、部屋全体を設定温度まで暖める第2機能を優先した場合、エネルギー消費を増加させることになる。それゆえ、第2機能に比べてエネルギー消費の少ない第1機能を優先させることによって、節電効果が得られる。
【0013】
本発明の第5観点に係る空調機は、第4観点に係る空調機であって、選択手段をさらに備えている。選択手段は、エネルギー消費を抑制した空調運転を行う節電モードを選択するための手段である。制御手段は、選択手段から節電モードを実行する指令を受けたとき、第2機能よりも第1機能を優先させる。
【0014】
この空調機では、ユーザーが節電モードを選択するだけで、節電効果のある第1機能が自動的に選択されるので、ユーザーにとって使い勝手がよい。
【0015】
本発明の第6観点に係る空調機は、第4観点または第5観点に係る空調機であって、制御手段が、暖房設定時刻に基づいて第2機能開始時刻を決定する。さらに、制御手段は、第2機能開始時刻および第2設定時刻の少なくともいずれか一方が予熱設定時間帯に存在するとき、第2機能よりも第1機能を優先させる。
【0016】
この空調機では、第1機能の予熱設定時間帯に第2機能開始時刻および第2設定時刻の少なくともいずれか一方が存在するような状態のときに、制御手段がユーザーの手を煩わせることなく自動的に第1機能を選択し、必要最低限の暖気を供給しながら節電を行う。
【0017】
本発明の第7観点に係る空調機は、第6観点に係る空調機であって、さらに、暖房設定時刻が予熱設定時間帯に存在するとき、制御手段は暖房設定時刻に暖房運転を開始する。
【0018】
この空調機では、ユーザーが第1機能の予熱設定時間帯で暖房運転を開始させる時機を逸した場合でも、第2機能の暖房設定時刻になれば暖房運転が開始されるので、ユーザーに手間がかからず便利である。
【0019】
本発明の第8観点に係る空調機は、第6観点に係る空調機であって、さらに、第2設定時刻が予熱設定時間帯よりも遅いとき、制御手段は予熱設定時間帯の最終時刻に暖房運転を開始する。
【0020】
この空調機では、第1機能が終了しても、圧縮機を停止させることなく暖房運転のために継続させることになるので、圧縮機への負荷が軽減され、節電効果が得られる。
【0021】
本発明の第9観点に係る空調機は、第3観点に係る空調機であって、選択手段をさらに備えている。選択手段は、エネルギー消費を抑制した空調運転を行う節電モードを選択するための手段である。制御手段は、選択手段から節電モードを解除する指令を受けたとき、第1機能よりも第2機能を優先させる。
【0022】
この空調機では、ユーザーが節電よりも快適性を求めることを、節電モードの解除をもって確認できる上に、第2機能によってその求めに応えることができる。
【0023】
本発明の第10観点に係る空調機は、第9観点に係る空調機であって、制御手段が暖房予熱設定時刻に基づいて第2機能開始時刻を決定する。さらに、制御手段は、第2機能開始時刻が設定時間帯に存在するとき、第2機能開始時刻に暖房運転を開始する。
【0024】
この空調機では、第1機能が第2機能より先行している時間帯のみ第1機能を働かせるので、第2機能が開始する前に圧縮機が温度上昇しており、暖房運転開始時の圧縮機への負荷が軽減され、節電効果が得られる。
【0025】
本発明の第11観点に係る空調機は、第10観点に係る空調機であって、制御手段が、暖房設定時刻に基づいて第2機能開始時刻を決定する。さらに、制御手段は第2機能開始時刻が予熱設定時間帯よりも早く、第2設定時刻が予熱設定時間帯に存在するとき、第2機能開始時刻に暖房運転を開始する。
【0026】
この空調機では、暖房快適性を求めるユーザーに対して、第1機能よりも能力の高い第2機能によって応えることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1観点に係る空調機では、設定手段が第1機能および第2機能の両方を設定することができるので、一方が既に設定されていることを理由に他方が排除されることがない。
【0028】
本発明の第2観点に係る空調機では、第1機能が、例えば冬場の朝など、すぐに暖かい空気が必要な生活シーンに適用されるので、暖かい空気の吹出方向が固定されることによって、ユーザーは暖気が到達するゾーンで朝の仕度をすればよく、ユーザーにとって使い勝手がよい。
【0029】
本発明の第3観点に係る空調機では、例えば、第1機能における圧縮機の始動時間と第2機能における圧縮機の始動時間とが一致した場合などは、両機能の両立は不可能であるのでいずれか一方を優先すればよい。つまり、両機能の優先順位の決定は空調機側で行うので、ユーザー自らが考える必要がなく、使い勝手がよい。
【0030】
本発明の第4観点に係る空調機では、部屋全体を設定温度まで暖める第2機能を優先した場合、エネルギー消費を増加させることになるので、第1機能に比べてエネルギー消費の少ない第1機能を優先させることによって、節電効果が得られる。
【0031】
本発明の第5観点に係る空調機では、ユーザーが節電モードを選択するだけで、節電効果のある第1機能が自動的に選択されるので、ユーザーにとって使い勝手がよい。
【0032】
本発明の第6観点に係る空調機では、第1機能の予熱設定時間帯に第2機能開始時刻および第2設定時刻の少なくともいずれか一方が存在するような状態のときに、ユーザーの手を煩わせることなく自動的に第1機能を選択し、必要最低限の暖気を供給しながら節電を行うことができる。
【0033】
本発明の第7観点に係る空調機では、ユーザーが第1機能の予熱設定時間帯で暖房運転を開始させる時機を逸した場合でも、第2機能の暖房設定時刻になれば暖房運転が開始されるので、ユーザーに手間がかからず便利である。
【0034】
本発明の第8観点に係る空調機では、第1機能が終了しても、圧縮機を停止させることなく暖房運転のために継続させることになるので、圧縮機への負荷が軽減され、節電効果が得られる。
【0035】
本発明の第9観点に係る空調機では、ユーザーが節電よりも快適性を求めることを、節電モードの解除をもって確認できる上に、第2機能によってその求めに応えることができる。
【0036】
本発明の第10観点に係る空調機では、第1機能が第2機能より先行している時間帯のみ第1機能を働かせるので、第2機能が開始する前に圧縮機が温度上昇しており、圧縮機への負荷が軽減され、節電効果が得られる。
【0037】
本発明の第11観点に係る空調機では、暖房快適性を求めるユーザーに対して、第1機能よりも能力の高い第2機能によって応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る空調機の構成図。
【図2】空調機の室内機およびその空調機を遠隔操作するためのリモートコントロールユニットの斜視図。
【図3】空調機の制御ブロック図
【図4】空調機における第1機能および第2機能のタイムチャート。
【図5A】空調機の第1制御フロー図。
【図5B】空調機の第2制御フロー図。
【図5C】空調機の第3制御フロー図。
【図5D】空調機の第4制御フロー図。
【図5E】空調機の第5制御フロー図。
【図5F】空調機の第6制御フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0040】
(1)空調機1の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る空調機1の構成図である。図1において、空調機1は、冷房運転及び暖房運転が可能な空気調和装置であり、室内機2と、室外機3と、室外機3と室内機2とを接続するための液冷媒連絡配管7、及びガス冷媒連絡配管9とを備えている。
【0041】
(1−1)室内機2
図1において、室内機2は、室内熱交換器11と、室内ファン35とを有している。室内熱交換器11は、クロスフィン型熱交換器であり、室内空気との熱交換によって内部を流れる冷媒を蒸発又は凝縮させ、室内の空気を冷却又は加熱することができる。
【0042】
図2は、空調機1の室内機2および空調機1を遠隔操作するためのリモートコントロールユニット52の斜視図である。図2において、リモートコントロールユニット52(これ以後、リモコン52とよぶ)は、ユーザーの操作に応じて、室内機2及び室外機3に内蔵されている制御部と交信して空調機を制御する。
【0043】
(1−2)室外機3
図1において、室外機3は、主に、圧縮機13、四路切換弁15、室外熱交換器17、膨張弁19、及びアキュムレータ21を有している。さらに、室外機3は室外ファン55も有している。
【0044】
(1−2−1)圧縮機13、四路切換弁15およびアキュムレータ21
圧縮機13は、ガス冷媒を吸入して圧縮する。圧縮機13の吸込口手前には、アキュムレータ21が配置されており、圧縮機13に液冷媒が直に吸い込まれないようになっている。
【0045】
四路切換弁15は、冷房運転と暖房運転との切換時に、冷媒の流れの方向を切り換える。冷房運転時、四路切換弁15は、圧縮機13の吐出側と室外熱交換器17のガス側とを接続するとともに圧縮機13の吸入側と室内熱交換器11のガス側とを接続する。つまり、図1の四路切換弁15内の実線で示された状態である。
【0046】
また、暖房運転時、四路切換弁15は、圧縮機13の吐出側と室内熱交換器11のガス側とを接続するとともに圧縮機13の吸入側と室外熱交換器17のガス側とを接続する。つまり、図1の四路切換弁15内の点線で示された状態である。
【0047】
(1−2−2)室外熱交換器17および室外ファン55
室外熱交換器17は、室外空気との熱交換によって内部を流れる冷媒を凝縮又は蒸発させることができる。なお、室外ファン55が、この室外熱交換器17に対面するように配置されており、回転することによって室外空気を取り込んで室外熱交換器17に送風し、冷媒と室外空気との熱交換を促進する。
【0048】
(1−2−3)膨張弁19
膨張弁19は、冷媒圧力や冷媒流量の調節を行うために、室外熱交換器17と室内熱交換器11の間の配管に接続され、冷房運転時及び暖房運転時のいずれにおいても、冷媒を膨張させる機能を有している。
【0049】
(1−3)制御部50
図3は、空調機1の制御ブロック図である。図3において、制御部50はリモコン52からの指令信号に基づいて、圧縮機13の運転周波数、四路切換弁15の切換動作、膨張弁19の開度、および風向調整羽根駆動モータ62の回転を制御する。
【0050】
図1に示すように、制御部50は、室内機2内に内蔵されている室内制御部50aと室外機3内に内蔵されている室外制御部50bとを有している。室内制御部50aとリモコン52との間では赤外線信号の送受信が行われる。室内制御部50aと室外制御部50bとの間では信号の送受信がワイヤを介して行われる。
【0051】
(1−4)リモコン52
リモコン52には、運転スイッチ22、運転切換スイッチ24、温度設定スイッチ26、入りタイマースイッチ28、節電モードスイッチ30、第1機能設定スイッチ41、第2機能設定スイッチ42、及び風向調整スイッチ61が設けられている。
【0052】
なお、第1機能設定スイッチ41及び第2機能設定スイッチ42を総称して設定手段とよぶ。さらに、風向調整スイッチ61、風向調整羽根駆動モータ62及び風向調整羽根63(図2参照)を総称して風向調整手段とよぶ。
【0053】
運転スイッチ22は、操作される毎に空調機1の運転と停止とを交互に切り換える。運転切換スイッチ24は、操作される毎に運転を自動→冷房→除湿→暖房の順に切り換える。温度設定スイッチ26は、上押操作される毎に設定温度が上昇し、下押操作される毎に設定温度が降下する。入りタイマースイッチ28は、操作される毎に1時間後、2時間後・・・6時間後のように順次に入り時刻が変更される。節電モードスイッチ30は、操作される毎に節電モードのオンとオフとを交互に切り換える。
【0054】
第1機能設定スイッチ41は、操作される毎に第1機能のオンとオフとを交互に切り換える。第2機能設定スイッチ42は、操作される毎に第2機能のオンとオフとを交互に切り換える。風向調整スイッチ61は、操作される毎に風向調整羽根63(図2参照)の上下遥動と任意位置固定とを交互に切り換える。
【0055】
(2)第1機能および第2機能
(2−1)第1機能
図4は、空調機における第1機能および第2機能のタイムチャートである。図4において、第1機能設定スイッチ41がオンのとき、任意の第1設定時刻t1を挟んだ所定の設定時間帯に圧縮機13を低能力で運転し暖房運転時と同じ冷凍サイクルで冷媒を循環させる。この機能が第1機能である。
【0056】
設定時間帯の開始点である第1機能開始時刻t1sは第1設定時間t1より所定時間早く、設定時間帯の終了点である第1機能終了時刻t1fは第1設定時間t1より所定時間遅い。
【0057】
この設定時間帯では、リモコン52から制御部50へ暖房運転開始の指令が入れば、制御部50は圧縮機13の運転周波数を最大能力まで立ち上げる。圧縮機13は事前の低能力運転によって暖められているので、素早い上がりで暖房を開始することができる。
【0058】
(2−2)第2機能
また、入りタイマースイッチ28で入り時刻が設定されているとき、第2機能設定スイッチ42がオンになると、上記入り時刻が第2設定時刻t2となり、時刻が第2設定時刻t2に到達した時点で部屋が既に暖まっているように、第2設定時刻t2よりも早い時刻t2sから暖房運転が開始される。この機能が第2機能である。
【0059】
(3)節電モードと第1機能および第2機能との関係
節電モードスイッチ30がオンのとき、第1機能設定スイッチ41及び第2機能設定スイッチ42がともにオンであっても、制御部50は第2機能よりも第1機能を優先する。
【0060】
(3−1)第1状態
図4において、第1機能の設定時間帯t1s〜t1fに第2機能開始時刻t2sだけが存在する状態を第1状態とする。以下、第1状態における節電モードオン時、オフ時の空調機1の動作を説明する。
【0061】
(3−1−1)節電モードがオンのとき
空調機1は第1機能の設定時間帯t1s〜t1fが終了するまで第1機能で動作する。そして、時刻が第1機能終了時刻t1fに到達したとき、暖房運転を開始する。なお、制御部50は、第1機能の設定時間帯t1s〜t1fの途中に、暖房運転開始指令を受けたときは、その時点から暖房運転を開始する。
【0062】
(3−1−2)節電モードがオフのとき
空調機1は第1機能開始時刻t1sから第2機能開始時刻t2sまでの間は第1機能で動作する。そして、第2機能開始時刻t2sから暖房運転を開始する。なお、制御部50は、第1機能開始時刻t1sから第2機能開始時刻t2sまでの間で、暖房運転開始指令を受けたときは、その時点から暖房運転を開始する。
【0063】
(3−2)第2状態
図4において、第1機能の設定時間帯t1s〜t1fに第2機能開始時刻t2sおよび第2設定時刻t2が存在する状態を第2状態とする。以下、第2状態における節電モードオン時、オフ時の空調機1の動作を説明する。
【0064】
(3−2−1)節電モードがオンのとき
空調機1は第1機能開始時間t1sから第2設定時刻t2まで第1機能で動作する。そして、第2時刻t2から暖房運転を開始する。なお、制御部50は、第1機能開始時間t1sから第2設定時刻t2までの途中に、暖房運転開始指令を受けたときは、その時点から暖房運転を開始する。
【0065】
(3−2−2)節電モードがオフのとき
空調機1は第1機能開始時刻t1sから第2機能開始時刻t2sまでの間は第1機能で動作する。そして、第2機能開始時刻t2sから暖房運転を開始する。なお、制御部50は、第1機能開始時刻t1sから第2機能開始時刻t2sまでの間で、暖房運転開始指令を受けたときは、その時点から暖房運転を開始する。
【0066】
(3−3)第3状態
図4において、第1機能の設定時間帯t1s〜t1fに第2設定時刻t2だけが存在する状態を第3状態とする。以下、第3状態における節電モードオン時、オフ時の空調機1の動作を説明する。
【0067】
(3−3−1)節電モードがオンのとき
空調機1は第1機能開始時刻t1sから第2設定時刻t2まで第1機能で動作する。そして、第2設定時刻t2から暖房運転を開始する。なお、制御部50は、第1機能開始時刻t1sから第2設定時刻t2までの途中に、暖房運転開始指令を受けたときは、その時点から暖房運転を開始する。
【0068】
(3−3−2)節電モードがオフのとき
空調機1は第1機能を無効にし、第2機能開始時刻t2sから暖房運転を開始する。
【0069】
(4)第1機能および第2機能の動作フロー
(4−1)第1機能および第2機能の設定から節電モードのオン・オフ判定までのフロー
図5Aは、空調機1の第1制御フロー図である。図5Aにおいて、ステップS1で制御部50は第1機能がオンか否かを判定し、オンと判定したときはステップS2へ進み、オフと判定したときは待機して判定を継続する。
【0070】
ステップS2で制御部50は第1設定時刻t1の入力を待ち、入力がない場合は前回の第1設定時刻が入力されたものとする。
【0071】
ステップS3で制御部50は第1機能開始時刻t1sと第1機能終了時刻t1fを決定する。本実施形態では、第1機能開始時刻t1sは第1設定時刻t1の30分前であり、第1機能終了時刻t1fは第1設定時刻t1の30分後である。
【0072】
ステップS4で制御部50は第2機能がオンか否かを判定し、オンと判定したときはステップS4へ進み、オフと判定したときは第3制御フローBへ進む。
【0073】
ステップS5で制御部50は第2設定時刻t2の入力を待ち、入力がない場合は前回の第2設定時刻が入力されたものとする。
【0074】
ステップS6で制御部50は第2機能開始時刻t2sを決定する。本実施形態では、第2機能開始時刻t2sは第2設定時刻t2の20分前である。
【0075】
ステップS7で制御部50は節電モードがオンか否かを判定し、オンと判定したときは第2制御フローAへ進み、オフと判定したときは第5制御フローDへ進む。
【0076】
(4−2)第1機能および第2機能の両立可否を判定するためのフロー
ステップS8で制御部50は、第1機能開始時刻t1sが第2機能開始時刻t2sより早いか否かを判定し、早いと判定したときはステップS9へ進み、遅いと判定したときは第4制御フローCへ進む。
【0077】
ステップS9で制御部50は、第1機能終了時刻t1fが第2機能開始時刻t2sより早いか否かを判定し、早いと判定したときはステップS10へ進み、遅いと判定したときは第4制御フローCへ進む。
【0078】
ステップS10で制御部50は、時刻が第1機能開始時刻t1sに達したか否かを判定し、達したと判定したときはステップS11へ進み、達していないと判定したときは待機して判定を継続する。
【0079】
ステップS11で制御部50は、第1機能を開始する。ステップS12で制御部50は、暖房運転開始指令があったか否かを判定し、その指令があったと判定したときはステップS16へ進んで暖房運転を開始し、その指令がなかったと判定したときはステップS13へ進む。
【0080】
ステップS13で制御部50は、時刻が第1機能終了時刻t1fになったか否かを判定し、第1機能終了時刻t1fになったと判定したときはステップS14に進み、第1機能終了時刻t1fになっていないと判定したときは待機して判定を継続する。
【0081】
ステップS14で制御部50は、第1機能を終了する。ステップS15で制御部50は、時刻が第2機能開始時刻t2sになったか否か判定し、第2機能開始時刻t2sになったと判定したときはステップS16へ進み、第2機能開始時刻t2sになっていないと判定したときは待機して判定を継続する。ステップS16で制御部50は暖房運転を開始する。
【0082】
(4−3)第1機能のみ可動するフロー
先のステップS4では、制御部50は第2機能がオフと判定し、第3制御フローBのステップS41へ進んでいる。ステップS41では制御部50は、時刻が第1機能開始時刻t1sになったか否か判定し、第1機能開始時刻t1sになったと判定したときはステップS42に進み、第1機能開始時刻t1sになっていないと判定したときは待機して判定を継続する。
【0083】
ステップS42で制御部50は、第1機能を開始する。ステップS43で制御部50は、暖房運転開始指令があったか否かを判定し、その指令があったと判定したときはステップS431へ進んで暖房運転を開始し、その指令がなかったと判定したときはステップS44へ進む。
【0084】
ステップS44で制御部50は、時刻が第1機能終了時刻t1fになったか否かを判定し、第1機能終了時刻t1fになったと判定したときはステップS45に進み、第1機能終了時刻t1fになっていないと判定したときは待機して判定を継続する。ステップS45で制御部50は第1機能を終了する。
【0085】
(4−4)第1機能を優先するフロー
先のステップS8で制御部50は第1機能開始時刻t1sが第2機能開始時刻t2sより遅いと判定し、或は、先のステップS9で制御部50が第1機能終了時刻t1fが第2機能開始時刻t2sより遅いと判定し第4制御フローCのステップS71へ進んでいる。
【0086】
ステップS71で制御部50は、時刻が第1機能開始時刻t1sになったか否か判定し、第1機能開始時刻t1sになったと判定したときはステップS72に進み、第1機能開始時刻t1sになっていないと判定したときは待機して判定を継続する。
【0087】
ステップS72で制御部50は、第1機能を開始する。ステップS73で制御部50は、時刻が第2設定時刻t2になったか否かを判定し、第2設定時刻t2になったと判定したときはステップS77に暖房運転を開始し、第2設定時刻t2になっていないと判定したときはステップS74へ進む。
【0088】
ステップS74で制御部50は、暖房運転開始指令があったか否かを判定し、その指令があったと判定したときはステップS77へ進んで暖房運転を開始し、その指令がなかったと判定したときはステップS75へ進む。
【0089】
ステップS75で制御部50は、時刻が第1機能終了時刻t1fになったか否かを判定し、第1機能終了時刻t1fになったと判定したときはステップS76に進み、第1機能終了時刻t1fになっていないと判定したときはステップS73へ戻る。ステップS76で制御部50は第1機能を終了する。そして、ステップS77で制御部50は暖房運転を開始する。
【0090】
(4−5)第2機能を優先するフロー・その1
先のステップS7では、制御部50は節電モードがオフと判定し第5制御フローDのステップS81へ進んでいる。ステップS81で制御部50は、第1機能開始時刻t1sが第2機能開始時刻t2sより早いか否かを判定し、早いと判定したときはステップS82へ進み、遅いと判定したときはステップS89へ進み暖房運転を開始する。
【0091】
ステップS82で制御部50は、第1機能終了時刻t1fが第2機能開始時刻t2sより早いか否かを判定し、早いと判定したときはステップS83へ進み、遅いと判定したときは第6制御フローEへ進む。
【0092】
ステップS83で制御部50は、時刻が第1機能開始時刻t1sに達したか否かを判定し、達したと判定したときはステップS84へ進み、達していないと判定したときは待機して判定を継続する。
【0093】
ステップS84で制御部50は、第1機能を開始する。ステップS85で制御部50は、暖房運転開始指令があったか否かを判定し、その指令があったと判定したときはステップS89へ進んで暖房運転を開始し、その指令がなかったと判定したときはステップS86へ進む。
【0094】
ステップS86で制御部50は、時刻が第1機能終了時刻t1fになったか否かを判定し、第1機能終了時刻t1fになったと判定したときはステップS87に進み、第1機能終了時刻t1fになっていないと判定したときは待機して判定を継続する。
【0095】
ステップS87で制御部50は、第1機能を終了する。ステップS88で制御部50は、時刻が第2機能開始時刻t2sになったか否か判定し、第2機能開始時刻t2sになったと判定したときはステップS89へ進み、第2機能開始時刻t2sになっていないと判定したときは待機して判定を継続する。そして、ステップS89で制御部50は暖房運転を開始する。
【0096】
(4−6)第2機能を優先するフロー・その2
先のステップS82では、制御部50は第1機能終了時刻t1fが第2機能開始時刻t2sより遅いと判定し第6制御フローEのステップS91へ進んでいる。ステップS91では制御部50は、時刻が第1機能開始時刻t1sになったか否か判定し、第1機能開始時刻t1sになったと判定したときはステップS92に進み、第1機能開始時刻t1sになっていないと判定したときは待機して判定を継続する。
【0097】
ステップS92で制御部50は、第1機能を開始する。ステップS93で制御部50は、暖房運転開始指令があったか否かを判定し、その指令があったと判定したときはステップS95へ進んで暖房運転を開始し、その指令がなかったと判定したときはステップS94へ進む。
【0098】
ステップS94で制御部50は、時刻が第2設定時刻t2になったか否かを判定し、第2設定時刻t2になったと判定したときはステップS95に進み、第2設定時刻t2になっていないと判定したときはステップS93へ戻る。ステップS95で制御部50は暖房運転を開始する。
【0099】
(5)特徴
(5−1)
空調機1では、リモコン52に設けられた第1機能設定スイッチ41及び第2機能設定スイッチ42を介して第1機能および第2機能の両方を設定することができる。それゆえ、一方が既に設定されていることを理由に他方が排除されることがない。
【0100】
(5−2)
空調機1では、暖かい空気の吹出方向が固定されることが可能である。それゆえ、ユーザーは寒い早朝でも暖気が到達するゾーンで朝の仕度をすればよいので、便利で快適である。
【0101】
(5−3)
空調機1では、第1機能開始時間t1sと第2機能開始時間t2sとが一致した場合などは、両機能の優先順位の決定を制御部50が行うので、ユーザー自らが考える必要がなく、便利である。
【0102】
(5−4)
空調機1では、部屋全体を設定温度まで暖める第2機能を優先した場合、エネルギー消費を増加させることになるので、第1機能に比べてエネルギー消費の少ない第1機能を優先させることによって、節電効果が得られる。
【0103】
(5−5)
空調機1では、ユーザーがリモコン52の節電モードスイッチ30をオンにするだけで、節電効果のある第1機能が自動的に選択されるので、ユーザーにとって使い勝手がよい。
【0104】
(5−6)
空調機1では、第1機能の設定時間帯t1s〜t1fに第2機能開始時刻t2sおよび第2設定時刻t2の少なくともいずれか一方が存在するような状態のときに、ユーザーの手を煩わせることなく自動的に第1機能を選択し、必要最低限の暖気を供給しながら節電を行うことができる。
【0105】
(5−7)
空調機1では、節電モードにおいて、ユーザーが第1機能の設定時間帯で暖房運転を開始させる時機を逸した場合でも、第2機能の第2設定時刻t2になれば暖房運転が開始されるので、ユーザーは操作の手間を省くことができる。
【0106】
(5−8)
空調機1では、節電モードにおいて、第1機能が終了しても、圧縮機13を停止させることなく暖房運転のために継続させることになるので、圧縮機13への負荷が軽減され、節電効果が得られる。
【0107】
(5−9)
空調機1では、ユーザーが節電よりも快適性を求めることを、リモコン52の節電モードスイッチ30のオフ動作をもって確認でき、それに対して、第2機能によってその求めに応えることができる。
【0108】
(5−10)
空調機1では、第1機能が第2機能より先行している時間帯のみ第1機能を働かせるので、第2機能が開始する前に圧縮機13が温度上昇しているので、圧縮機13への負荷が軽減され、節電効果が得られる。
【0109】
(5−11)
空調機1では、暖房快適性を求めるユーザーに対して、第1機能よりも能力の高い第2機能によって応えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、壁掛け式空調機に有用である。
【符号の説明】
【0111】
40 設定手段
50 制御手段
60 風向調整手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【特許文献1】特開2010−48494号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、減圧機構および蒸発器の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式冷凍サイクルを利用する空調機であって、
所定機能が、前記所定機能を必要とする時刻またはその近傍で働くように設定するための設定手段(40)と、
前記設定手段(40)によって設定された条件に沿って空調運転を行う制御手段(50)と、
を備え、
前記所定機能は、
予熱設定時間帯(t1s〜t1f)に前記圧縮機を低能力で運転して暖房運転時と同じ冷凍サイクルで冷媒を循環させ、暖房運転開始指令を受けたときに暖房運転を開始する第1機能と、
暖房設定時刻(t2)に空調対象空間の温度が設定温度に近づくように自動的に暖房運転を開始する第2機能と、
を含み、
前記設定手段(40)は、前記第1機能および前記第2機能の両方を設定することができる、
空調機。
【請求項2】
調和された空気の吹出方向を調節する風向調節手段(60)をさらに備え、
前記制御手段(50)は、前記第1機能が働いている期間中に暖房運転を開始する指令を受けたとき、前記風向調整手段(60)を介して前記空気の吹出方向を所定領域に向う方向へ固定する、
請求項1に記載の空調機。
【請求項3】
前記制御手段(50)は、前記第1機能と前記第2機能とを両立させることができないと判断したとき、前記第1機能および前記第2機能のいずれか一方の機能を優先させる、
請求項1に記載の空調機。
【請求項4】
前記制御手段(50)は、前記第2機能よりも前記第1機能を優先させる、
請求項3に記載の空調機。
【請求項5】
エネルギー消費を抑制した空調運転を行う節電モードを選択するための選択手段(30)をさらに備え、
前記制御手段(50)は、前記選択手段(30)から前記節電モードを実行する指令を受けたとき、前記第2機能よりも前記第1機能を優先させる、
請求項4に記載の空調機。
【請求項6】
前記制御手段(50)は、前記暖房設定時刻(t2)に基づいて第2機能開始時刻(t2s)を決定し、
さらに、前記制御手段(50)は、前記第2機能開始時刻(t2s)及び前記暖房設定時刻(t2)の少なくともいずれか一方が前記予熱設定時間帯(t1s〜t1f)に存在するとき、前記第2機能よりも前記第1機能を優先させる、
請求項4又は請求項5に記載の空調機。
【請求項7】
さらに、前記制御手段(50)は、前記暖房設定時刻(t2)が前記予熱設定時間帯(t1s〜t1f)に存在するとき、前記暖房設定時刻(t2)に暖房運転を開始する、
請求項6に記載の空調機。
【請求項8】
さらに、前記制御手段(50)は、前記暖房設定時刻(t2)が前記予熱設定時間帯(t1s〜t1f)よりも遅いとき、前記予熱設定時間帯の最終時刻に暖房運転を開始する、
請求項6に記載の空調機。
【請求項9】
エネルギー消費を抑制した空調運転を行う節電モードを選択するための選択手段(30)をさらに備え、
前記制御手段(50)は、前記選択手段(30)から前記節電モードを解除する指令を受けたとき、前記第1機能よりも前記第2機能を優先させる、
請求項3に記載の空調機。
【請求項10】
前記制御手段(50)は、前記暖房設定時刻(t2)に基づいて第2機能開始時刻(t2s)を決定し、
さらに、前記制御手段(50)は、前記第2機能開始時刻(t2s)が前記予熱設定時間帯(t1s〜t1f)に存在するとき、前記第2機能開始時刻(t2s)に暖房運転を開始する、
請求項9に記載の空調機。
【請求項11】
前記制御手段(50)は、前記暖房設定時刻(t2)に基づいて第2機能開始時刻(t2s)を決定し、
さらに、前記制御手段(50)は、前記第2機能開始時刻(t2s)が前記予熱設定時間帯(t1s〜t1f)よりも早く、前記暖房設定時刻(t2)が前記予熱設定時間帯(t1s〜t1f)に存在するとき、前記第2機能開始時刻(t2s)に暖房運転を開始する、
請求項10に記載の空調機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【公開番号】特開2013−100927(P2013−100927A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243827(P2011−243827)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】