説明

空調用フィルタ

【課題】住宅や建物、ビルなどの居住室あるいは医療関係やクリーンルームへの外気取り入れ用フィルタあるいは空気清浄機用フィルタの空調運転の通風時に発生するホルムアルデヒド、トルエン、リン、ボロン、SOX、NOX、CLなどのアウトガス量を減少するようにした空調用フィルタを提供したものである。
【解決手段】濾材をフィルタ枠内にシール材を介して収納、固定した空調用フィルタであって、前記濾材はガラス繊維同士を無機系バインダ単独、または無機系物質および有機樹脂からなる混合バインダで結合した濾材にプリーツ加工を施し、この濾材のプリーツ間をビード状接着剤で繋いだ構造で且つ濾材パックとフィルタ枠のシールに無機系シール材、低発ガスシリコン系シール材、ガラスマットなどでシール保持することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅や建物、ビルなどの居住室内や医療施設への外気取り入れ用エアフィルタ、または室内などに設置する空気清浄機用エアフィルタまたは半導体、液晶、バイオ、食品工業関係のクリーンルームなどに使用する空調用フィルタとして最適、有用なアウトガス量を減少した空調用フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅や建物、ビルや医療施設などにおいて居住者に対するホルムアルデヒドやトルエンあるいはSOX、NOXなどの化学物質などから生じるシックハウスの問題が発生し、さまざまな対策が採られている。
【0003】
そこで住居室内には除塵、有害ガスなどの除去を目的に空調用フィルタを収納した空気清浄機を設置したり、建物やビルなどの外気取り入れ口には空調用フィルタを取り付けて清浄な空気を取り入れている。
【0004】
そして、これらに使用される空調用フィルタはガラス繊維やポリプロピレン、ポリエステル繊維などの合成繊維に強度を持たせ且つ加工性を向上させる目的でフェノール系、アクリル系、酢酸ビニール系、スチレン系、エポキシ系の有機バインダを塗布して形成された長尺状の不織布にプリーツ加工を施した濾材と濾材間に挟み込んだ波形状アルミ材セパレータまたはビード状接着材と、波形状アルミ材セパレータまたはビード状接着剤を挟み込んで形成した濾材を内面全周に合成樹脂のシール材で取り付けたフィルタ枠とから構成されている。
【0005】
しかし、上記ガラス繊維や合成繊維の製造工程においては界面活性剤、可塑剤、難燃材を使用していること、合成樹脂のシール材を使用していることなどから、空調の運転時に通風の際、空調用フィルタからホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、ベンゼン、リン、ボロン、SOX、NOX、などのアウトガスが発生するといったことがあった。
【0006】
このため、住居室内や部屋内のシックハウス対策のためには今一つアウトガス量を減少させること望まれていた。さらには半導体デバイス製造工程においても、アウトガスがシリコンウエハへ付着すると半導体の製品歩留が低下してしまうため、アウトガス量の低減が望まれていた。
【0007】
以上のように、アウトガス量の発生を少なく抑えると同時に圧量損失の低い空調用フィルタの要求が非常に強くのぞまれていた。
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0008】
本発明の目的は通風時に発生するアウトガス量の少ない且つ低圧力損失の空調用フィルタを提供することである。
【0009】
また本発明の目的はアウトガス量の少ない空調用フィルタを収納した空気清浄機を室内に設置し、室内の環境を良好にしてシックハウスの問題を少しでも解決しょうとしたものである。
【0010】
また本発明の目的はクリーンルームなどの外気取り入れ口にアウトガス量の少ない空調用フィルタを設置し、室内の環境を良好にしてクリーンルーム内にて製造する製品の歩留の低下を防止しょうとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の解決手段は、ガラス繊維からなる濾材パックをフィルタ枠にシール材を介して収納固定した空調用フィルタであって、濾材パックはガラス繊維同士を無機系バインダ単独または無機系物質および有機樹脂からなる混合バインダで結合した濾材にプリーツ加工を施こし、この濾材のプリーツ間をビード状接着剤で繋いだ構造あるいはエンボス成形などで間隙を有することを特徴とした空調用エアフィルタを提供しょうとするものである。
【0012】
本発明の第2の解決手段は、ガラス繊維からなる濾材パックをフィルタ枠にシール材を介して収納固定した空調用フィルタであって、濾材パックはガラス繊維同士を無機系バインダ単独または無機系物質および有機樹脂からなる混合バインダで結合した濾材にプリーツ加工を施こし、この濾材のプリーツ間に波形状アルミ材セパレータを挿入した構造を有することを特徴とした空調用フィルタを提供しょうとするものである。
【0013】
本発明の第3の解決手段は、濾材パックとフィルタ枠のシールを無機系シール材、綿状ガラス繊維濾材あるいはシリコーンなどの低有機系シール材などでなした事を特徴とした空調用フィルタを提供しょうとするものである。
【0014】
ここで濾材はガラス繊維同士を混合したガラス繊維を無機系バインダまたは無機系物質と有機物質からなる混合バインダにより結合した構造を有する。この濾材は200〜900μmの厚さを有することが好ましい。
【0015】
そしてガラス繊維は、例えば繊維径0.2〜20μmのものを数種類混合して用いられる。混合比率を変えることにより濾材の孔径を制御して様々な除塵グレードの濾材を得ることができる。
【0016】
無機系バインダとしては例えばシリカ、タルク、カオリン鉱物、ベントナイト(活性ベントナイトを含む)、珪藻土、アルミナ(活性アルミナを含む)、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニム、リボン状構造の含水ケイ酸マグネシウムおよび合成ゼオライトの群から選ばれる少なくとも1種からなる無機系物質を用いることができる。 特に無機バインダとしてはオルガノシランおよびこのオルガノシランの加水分解縮合物であるオルガノシロキサンを原料としたシリカが好ましい。このオルガノシランとしては、例えばテトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、テトラプロピルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラプロピルシラザン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0017】
そして、シリカからなる無機系バインダはガラス繊維に対する結合性が高く且つガラス繊維間に形成された結合膜自体の強度も高いため、添加するシリカ量を少なくしても得られた濾材の強度の向上および濾材のプリーツ加工性を向上できる。なお、前記シリカは後述する濾材の製造においてメチルアルコールのようなアルコールの溶液として用いられる。
【0018】
また混合バインダは無機系物質と共に有機樹脂を含むためガラス繊維を結合して得られた濾材は前記無機系バインダを用いた濾材に比べて適度な柔軟性を有すると共に硬さを高めることができる。その結果、濾材のプリーツ加工性を向上できる。特に、この無機系物質はオルガノシランおよびこのオルガノシランの加水分解縮合物であるオルガノシロキサンを原料としたシリカであることが好ましい。
【0019】
さらに、混合バインダ中の有機樹脂は無機系物質に対して相溶性を有することが好ましく例えばアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系(SBR)樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系(NBR)樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン系(MBR)樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂など、様々な樹脂の中から選択される。特に、アクリル系樹脂は耐候性が高いために好ましい。ここでアクリル系樹脂としてはアクリル酸エステル単独樹脂およびアクリル酸エステルとメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸などとの共重合物などを挙げることができる。
【0020】
そして、ガラス繊維に対する前記混合バインダの付着量は0.5〜10重量%にすることが好ましい。この混合バインダの付着量を0.5重量未満にすると、前記ガラス繊維同士の結合性が低下して十分な強度を有する濾材を得ることが困難になる。一方無機系バインダの付着量が10重量%を超えると得られた濾材の目開きが減少してフィルタ性能が低下する虞がある。
【0021】
バインダとして混合バインダを用いる場合には有機樹脂をスラリー調整時の離解の際に予め添加することを許容する。
【0022】
さらに、バインダの含浸は抄紙直後の湿紙を対象にする場合に限らず一旦乾燥した後の湿紙を対象にしてもよい。この場合、含浸処理後に再度乾燥する。
【0023】
前記プリーツ加工された濾材間を繋ぐビード状接着剤層は1本に限らず複数本してもよい。ビード状接着剤としては通常シリコーン樹脂が用いられるが、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムなどの無機系ペースト状物が好ましい。
【0024】
前記濾材を枠体に固定するためのシール材はセラミックスやガラスなどの無機質状物が好ましい。さらに濾材パックとフィルタ枠の間にシリカ、アルミ系などの無機材を流し込み固化するか低有機系シリコン系のシーリング材を流し込みシールする。また綿状の厚み3〜10mmくらいのガラスマットをシール材として使用してもよい。
【0025】
また上記問題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、空調用エアフィルタを構成する濾材を低アウトガスのバインダを使用したガラス繊維とし、フィルタ枠をアウトガスの発生しない金属枠とし、シール材を低アウトガスの素材とし、濾材のプリーツ間に介在させるビード状接着剤あるいは波形状セパレータを低アウトガス素材としたので、通風時に発生する有害物質などのアウトガス量を低減できるものである。しかも、ガラス繊維に添加するバインダも目詰まりを生じさせる素材でなくまた添加量もその素材に適した量としたので低圧力損失の空調用フィルタを提供できるものである。
【発明の効果】
【0026】
(1)住宅や建物、ビルなどの居住室内へのシックハウスの原因となる化学物質の持込を従来の空調用フィルタよりも飛躍的に少なくすることができる。
(2)従来の空調用フィルタに代えて本発明の空調用フィルタに取り替るだけで、シックハウス、アレルギー症の原因となる化学物質を減少させることが出来るので操作簡単で且つ経済的である。
(3)半導体デバイス製造の際に問題となる有機物や無機物などのアウトガスの発生量を従来の空調用フィルタよりも少なくすることができる。
(4)本発明の空調用フィルタの濾材は従来のものと比較し濾材強度が向上し、低圧損、高捕集効率化しさらに撥水生が向上した点で優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明の空調用エアフィルタを図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(実施形態)
図1中の1は濾材パックである。この濾材パック1はプリーツ加工された濾材2間にビード状接着剤3をその濾材2高さ方向の中間付近で水平方向に延びるように塗布し、前記濾材2間を繋ぎ止めることにより構成されている。そして前記濾材パック1はフィルタ枠4内に収納され且つその濾材パック1はシール材5を介してそのフィルタ枠4に固定されている。
【0029】
また図2に示すように濾材間を繋ぐビード状接着剤層に代えてプリーツ加工された濾材間に例えばアルミニウムからなる波形のセパレータ6をそれぞれ挿入しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【0030】
なお、本発明で述べた空調用フィルタは一般に言われている高性能フィルタ、超高性能フィルタ(ULPA)、中性能フィルタだけでなくプレフィルタでも、ポケット形フィルタであっても良く種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
アウトガスの発生量を従来より少なくした本発明の空調用フィルタは住宅や建物、ビルなどの居住室内への外気取り入れ用エアフィルタや室内などに設置する空気清浄機用エアフィルタまたは医療関係、半導体、液晶、バイオ、食品工業関係のクリーンルーム用エアフィルタとして最適、有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】プリーツ加工された濾材間をビード状接着剤で繋ぎ止めることにより構成された本発明の空調用エアフィルタを示す斜視図。
【図2】プリーツ加工された濾材間にアルミニウムからなる波形のセパレータを挿入して構成した本発明の空調用フィルタを示す斜視図。
【符号の説明】
【0033】
1・・・濾材パック 2・・・濾材 3・・・ビード状接着剤
4・・・フィルタ枠 5・・・シール材 6・・・波形のセパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材をフィルタ枠内にシール材を介して収納、固定した空調用エアフィルタであって、前記濾材はガラス繊維同士を無機系バインダ単独、または無機系物質および有機樹脂からなる混合バインダで結合した濾材にプリーツ加工を施し、この濾材のプリーツ間をビード状接着剤で繋いだ構造を有することを特徴とする空調用フィルタ。
【請求項2】
濾材をフィルタ枠内にシール材を介して収納、固定した空調用フィルタであって、前記濾材はガラス繊維同士を無機系バインダ単独、または無機系物質および有機樹脂からなる混合バインダで結合した濾材にプリーツ加工を施し、この濾材のプリーツ間に波形のセパレータを挿入した構造を有することを特徴とする空調用フィルタ。
【請求項3】
濾材とフィルタ枠とのシール保持に無機系シール材、低発ガス性有機シール材あるいはガラスマットなどを用いた構造を有することを特徴とする請求項1と請求項2の空調用エアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−183926(P2009−183926A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48695(P2008−48695)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000193047)進和テック株式会社 (36)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】