説明

空調用レジスタ

【課題】水平フィンどうしの干渉を防止して下向きへの風向調整を可能とし、下方指向性を向上させる。
【解決手段】水平面に対する少なくとも一つの水平フィン2の揺動角度に応じて、その水平フィン2の揺動軸20をリテーナ1に対して前後に移動可能とする移動手段を有する。
水平フィン2の揺動軸20を後方へ移動させることができ、水平面に対する水平フィン群の配列角度(θ’)を水平面に対する吹出開口10の傾斜角度(θ)より大きくすることができる。これにより水平フィン2どうしの干渉を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内などに設けられて空調用空気を吹き出す開口部を構成する空調用レジスタに関し、詳しくは吹き出す風の下方指向性を改良した空調用レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のインストルメントパネルには、空調装置からの温冷風を吹き出す開口部としてのレジスタが設けられている。このレジスタとしては、空気流路及び吹き出し開口を形成する筒状のリテーナと、リテーナ内に揺動自在に配置された互いに平行な複数の水平フィンと、リテーナ内に揺動自在に配置された互いに平行な複数の垂直フィンと、ノブなど水平フィンと垂直フィンを揺動させてリテーナに対する角度を可変することで送風方向を可変する可変手段と、からなるものが一般的に知られている。このレジスタは、一般に手動により可変手段を駆動して水平フィンと垂直フィンの角度を調節することで送風方向を調節可能とされている。
【0003】
例えば水平フィンは、短辺の一端がそれぞれ側板に枢支され、他端が連結ロッドに枢支されて互いに平行に配置されている。そして、側板がリテーナに固定されるとともに連結ロッドがリンク機構に連結され、リンク機構が連結ロッドを駆動することで、全ての水平フィンが同期して上下方向に揺動するように構成されている。
【0004】
ところで近年の乗用車においては、インストルメントパネルの意匠として、断面形状が滑らかな曲線を描くものが好まれている。すなわち意匠表面がフロントガラスから車室内に向かって滑らかに下降するように、高スラスト化した意匠のインストルメントパネルが好まれている。そのためインストルメントパネルに設けられるレジスタにおいても、形状が変化している。
【0005】
すなわち古くはインストルメントパネルがほぼ垂直に直立した意匠であったために、レジスタの開口面も水平面に対してほぼ直角であった。しかし近年では、レジスタの開口面が水平面に対してなす角度が鋭角となっている。また従来より、吹出開口には垂直フィン群より水平フィン群が表出することが好まれ、意匠上の観点から水平フィン群は開口面に沿って、すなわち水平面に対して傾斜して配列されるようになっている。
【0006】
ところがこのように水平面に対して鋭角に傾斜して配列された水平フィン群においては、風向が下向きとなるように揺動した場合、図14に示すように水平フィン 200どうしが干渉して重なってしまう。そのため下方への風向調節が困難となるばかりか、リテーナ 100の開口 101を閉じた状態となるため風が出ないという不具合が発生する。このような場合にはデザインを変更する必要があるが、レジスタのデザインのみならずインストルメントパネルのデザインまで変更が必要となる場合もあり、設計工数がきわめて多大となるという問題があった。
【0007】
例えば特開平11−139156号公報には、最下部の水平フィンがリテーナの内底壁に干渉して上向きの風向調整が困難になるという問題が記載されている。そしてこの問題を解決するために、連結ロッドに設けられた水平フィンの枢支孔のうち最下部の枢支孔を、円弧状の長穴とすることが記載されている。
【0008】
しかし特開平11−139156号公報に記載の問題は、開口面が水平面に対してなす角度が直角に近いレジスタの場合に発生するものであり、水平面に対して吹出開口のなす角度が鋭角のレジスタの場合には発生しにくい。そして図13に示したような下方への風向調節が困難となるという問題は、リテーナの壁とフィンとの干渉ではなくフィンどうしの干渉に起因するものである。したがって上記公報に記載の技術を応用するだけでは、水平フィンどうしの干渉による下方指向性の制約という問題を解決することが困難である。
【特許文献1】特開平11−139156号
【特許文献2】実用新案登録第 2595402号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、水平フィン群が水平面に対して鋭角となるように傾斜して配列されたレジスタにおいて、水平フィンどうしの干渉を防止して下向きへの風向調整を可能とし、下方指向性を向上させることを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の空調用レジスタの特徴は、吹出開口と空気流路を形成する筒状のリテーナと、揺動軸によってリテーナ内に揺動可能に軸支された複数の水平フィンと、複数の水平フィンを連結する連結ロッドと、連結ロッドを駆動して複数の水平フィンを互いに同期して揺動させる駆動手段と、を備えた空調用レジスタであって、
水平面に対する水平フィンの揺動角度に応じて、水平フィンの揺動軸をリテーナに対して前後に移動可能とする移動手段を有することにある。
【0011】
移動手段は、水平フィンの揺動軸が係合しその揺動軸を前後に案内する前後案内溝と、その水平フィンから延びる作用軸が係合して作用軸を上下に案内する上下案内溝と、からなることが好ましい。
【0012】
この移動手段は、リテーナの側壁に形成することができる。また連結ロッドには、作用軸を前後に案内するロッド溝をさらに有することが望ましい。
【0013】
また、リテーナは吹出開口の下端に下方に向かってなだらかに傾斜する傾斜面を有し、最下部の水平フィンが下方へ揺動したときにその表面が傾斜面と略平行となるように構成することが望ましい。
【0014】
この場合、最下部の水平フィンの後方にはガイドフィンが配置され、ガイドフィンの後端はリテーナの側壁に揺動自在に枢支され、ガイドフィンの前端は最下部の水平フィンに揺動自在に枢支され、最下部の水平フィンが傾斜面と略平行となるように揺動するときにガイドフィンが上方に向かって傾斜するように揺動することがさらに望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の空調用レジスタでは、水平面に対する水平フィンの揺動角度に応じて、水平フィンの揺動軸をリテーナに対して前後に移動可能とする移動手段を有している。したがって例えば下向きの風向とする場合に、水平フィンの揺動軸をリテーナの吹出開口から後方へ移動させることができ、水平面に対する水平フィン群の配列角度(図3のθ’)を水平面に対する吹出開口の開口面の傾斜角度(図3のθ)より大きく(θ’>θ)することができる。
【0016】
したがって水平面に対する水平フィン群の配列角度が鋭角であっても、水平フィンどうしの干渉を防止しつつ、下向きへの風向調整が可能となり下方指向性が向上する。またこのことによりデザイン変更などが不要となり、設計に要する工数を大幅に軽減することができる。
【0017】
またリテーナは吹出開口の下端に下方に向かってなだらかに傾斜する傾斜面を有し、最下部の水平フィンが下方へ揺動したときにその表面が傾斜面と略平行となるようにすれば、最下部の水平フィンによって案内される風が傾斜面の表面に沿って流れ、さらにコアンダ効果も奏される結果、下方指向性が向上する。
【0018】
さらに最下部の水平フィンの後方にガイドフィンを配置し、最下部の水平フィンが傾斜面と略平行となるように揺動するときにガイドフィンが上方に向かって傾斜するように揺動すれば、ガイドフィンで上方へ案内された風が最下部の水平フィンでさらに案内されるので、通風抵抗の増大を回避でき、下方指向性がより向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の空調用レジスタは、吹出開口と空気流路を形成する筒状のリテーナと、揺動軸によってリテーナ内に揺動可能に軸支された複数の水平フィンと、複数の水平フィンを連結する連結ロッドと、連結ロッドを駆動して複数の水平フィンを互いに同期して揺動させる駆動手段とを備えている。
【0020】
本発明の最大の特徴は、水平フィンの揺動軸自体を前後に移動可能としたことにある。すなわち、水平面に対する水平フィンの揺動角度に応じて、水平フィンの揺動軸をリテーナに対して前後に移動可能とする移動手段を有するところにある。
【0021】
この移動手段としては、ラック&ピニオンなどを用いたリンク機構なども考えられるが、水平フィンの揺動軸が係合しその揺動軸を前後に案内する前後案内溝と、その水平フィンから延びる作用軸が係合して作用軸を上下に案内する上下案内溝と、から構成することが好ましい。このような移動手段とすれば、部品点数が少ないので安価となり、作動の信頼性も高い。
【0022】
この移動手段を備えたことにより、駆動手段が連結ロッドを駆動して水平フィン群が同期して揺動するときに、揺動軸を中心として水平フィンの後側端部を上下方向に揺動させることができ、水平フィンの揺動軸をリテーナの開口から後方へ移動させることができる。したがって水平面に対する吹出開口面の角度が鋭角であっても、水平面に対する水平フィン群の配列角度を吹出開口面の鋭角角度より大きくすることができ、水平フィンどうしの干渉を防止しつつ、下方指向性が向上する。
【0023】
上記した移動手段においては、水平フィンは前側端部又は短辺の中央に形成された揺動軸を中心として後側端部が揺動するように構成してもよいし、揺動軸を水平フィンの後側端部又は短辺の中央に形成し、そこを中心として前側端部が揺動するように構成することもできる。
【0024】
前後案内溝及び上下案内溝は、リテーナの側壁に形成することができる。またリテーナ内に配置されたスライド板に揺動軸を枢支し、作用軸を上下に案内する上下案内溝をそのスライド板に形成してもよい。この場合には、スライド板を前後にスライドさせることで揺動軸を前後に移動させることができる。
【0025】
連結ロッドには、作用軸を前後に案内するロッド溝をさらに有することが望ましい。このようにすれば、前後移動と揺動の両方を複数の水平フィンで同期させることができる。
【0026】
ところが上記した本発明の空調用レジスタにおいては、水平フィン群を下方へ揺動させた場合に、下部の水平フィンほど後方への移動量が大きくなり、最下部の水平フィンの表面を延長するとレジスタの内底面と交差する。つまり最下部の水平フィンによって案内される風がレジスタの内底面に衝突するため、下方指向性が低下するという不具合がある。
【0027】
そこで、リテーナは吹出開口の下端に下方に向かってなだらかに傾斜する傾斜面を有し、最下部の水平フィンが下方へ揺動したときに傾斜面と略平行となり最下部の水平フィンの表面が傾斜面と略連続するように構成することが望ましい。このようにすれば、最下部の水平フィンによって案内される風が傾斜面の表面に沿って流れ、下方指向性が向上する。さらにコアンダ効果も奏される結果、最下部の水平フィンの角度及び傾斜面の角度より大きく下方へ傾斜した風向となるため、下方指向性がさらに向上する。したがって、乗員の鳩尾近辺付近まで送風することが可能となり、快適性が向上する。
【0028】
しかしながら上記のように水平フィン群が下方へ傾斜した場合には、最下部の水平フィンとリテーナの内底面との間に密閉状の空間が生じ、その部分に風が衝突して通風抵抗が増大する。またコアンダ効果にも悪影響を与える。
【0029】
そこで最下部の水平フィンの後方にガイドフィンを配置し、ガイドフィンの後端をリテーナの側壁に揺動自在に枢支するとともに、ガイドフィンの前端を最下部の水平フィンに揺動自在に枢支し、最下部の水平フィンが傾斜面と略平行となるように揺動したときにガイドフィンが上方に向かって傾斜するように揺動するように構成することが望ましい。このように構成することで、ガイドフィンで上方へ案内された風が最下部の水平フィンでさらに案内されるので、通風抵抗の増大を回避できるとともにコアンダ効果によって下方へ送風される風量も増大する。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、リテーナの吹出開口側を前方といい、リテーナの内部側を後方という。
【0031】
(実施例1)
図1に本実施例の空調用レジスタの分解斜視図を示す。このレジスタは、インストルメントパネルに固定される筒状のリテーナ1と、リテーナ1の吹出開口10近傍に揺動可能に保持された複数の水平フィン2と、水平フィン2より後方でリテーナ1内に揺動可能に保持された複数の垂直フィン3と、複数の水平フィン2を連結する連結ロッド4と、から主として構成されている。
【0032】
リテーナ1は角筒形状をなし、その吹出開口10は水平面に対して約40°に傾斜した高スラスト意匠を呈している。またその左右側壁の外表面にはそれぞれレール11が形成され、レール11は吹出開口10の表面と平行に、すなわち水平面に対して約40°に傾斜して延びている。このレール11には、連結ロッド4がレール11内をスライド移動可能に保持されている。
【0033】
またリテーナ1の左右側壁には、水平方向に延びる前後案内溝12と、その後方に虫食い穴状の上下案内溝13とが、水平フィン2の数だけそれぞれ形成されている。下側の前後案内溝12ほど長く形成され、最上部の前後案内溝12は丸孔となっている。
【0034】
水平フィン2の側面(短辺)からは、前側突起20と後側突起21がそれぞれ両側に突出形成され、後側突起21は前側突起20より長く形成されている。前側突起20は前後案内溝12にそれぞれ枢支されている。また後側突起21は上下案内溝13をそれぞれ貫通し、水平フィン2の揺動及び前後移動に伴って後側突起21が上下案内溝13内を移動する。つまり複数の水平フィン2はそれぞれ前側突起20を中心として揺動自在であるとともに、前後案内溝12に沿って前後へ移動可能となっている。
【0035】
複数の垂直フィン3の側面(短辺)からはそれぞれ軸部30が突出してリテーナ1の上下壁に形成された軸孔14にそれぞれ枢支されている。上方に突出する軸部30は、軸孔14を貫通し、リテーナ1の上側でそれぞれ腕部31の一端に固定されている。複数の腕部31の他端は連結ロッド32に枢支され、連結ロッド32には図示しない水平ノブが係合している。
【0036】
したがって図示しない水平ノブを回動させると、連結ロッド32が左右方向に移動し、それに伴って全ての垂直フィン3が同期して左右方向に揺動する。これにより、吹出開口10から吹き出す空気流の方向を左右方向に自在に調節することができる。
【0037】
連結ロッド4は、レール11内をスライド移動可能な板状部40と、板状部40から略垂直に突出し吹出開口10の傾斜方向と平行に延びるラック部41とから構成されている。板状部40には、水平方向に延びるロッド溝42が水平フィン2の数だけ形成されている。そして上下案内溝13を貫通して突出する水平フィン2の後側突起21が、ロッド溝42にそれぞれ係合している。またラック部41には、表裏両面にラック歯が形成されている。
【0038】
リテーナ1には一対のピニオンギヤ5が図示しない軸部によって枢軸連結され、同期して回動可能となっている。このピニオンギヤ5は、左右の連結ロッド4のラック部41の後歯にそれぞれ歯合している。また一方のラック部41の前歯には、リテーナ1から延びる図示しないフランジ部に回動可能に枢支されたノブ6が歯合している。したがってノブ6を回動させると、一方の連結ロッド4がレール11内を上下にスライド移動し、ピニオンギヤ5の回動によって他方の連結ロッド4も同期してレール11内を上下にスライド移動する。
【0039】
リテーナ1の上下案内溝13は、図4などに示すように、最上部を除いて、前後案内溝12の一端を中心とする円弧状の円弧部14と、円弧部14に連続する軌跡部15とから構成されている。軌跡部15は、前側突起20が前後案内溝12内を移動し、水平フィン2の後側突起21が水平位置から徐々に上方へ移動したときの、後側突起21の軌跡形状に形成されている。最上部の上下案内溝13は、丸孔の前後案内溝12を中心とする円弧部14のみから形成されている。
【0040】
上記のように構成された本実施例のレジスタでは、先ず風向が上方に向いている場合には、図2及び図4に示すように、水平フィン2の前側突起20は前後案内溝12の前端に位置し、後側突起21は上下案内溝13の円弧部14の下端に位置している。したがって水平フィン2は水平方向から30°上向きとなり、風は吹出開口10から斜め上方へ吹き出す。
【0041】
風向を変更すべくノブ6を下方向へ回動すると、ラック部41が駆動され、両側の連結ロッド4がレール11に案内されて上昇する。それに伴って各水平フィン2の後側突起21は、ロッド溝42内を移動しながら、前後案内溝12の前端を中心とする揺動によって上下案内溝13の円弧部14内を上昇し、各水平フィン2は図5に示す水平位置となる。
【0042】
ノブ6をさらに下方向へ回動すると、各水平フィン2の後側突起21はロッド溝42内を移動し、それに伴って、最上部の水平フィン2を除く各水平フィン2の前側突起20が前後案内溝12内を後方へ移動するとともに、後側突起21は上下案内溝13の軌跡部15内を移動する。したがって最上部の水平フィン2を除く各水平フィン2は、図6の状態を経由して図3又は図7に示す状態で係止される。最上部の水平フィン2のみは、前側突起20が前後に移動することなく、後側突起21が円弧部14内のみを移動する。
【0043】
図3又は図7に示す状態では、各水平フィン2は水平方向から30°下向きに傾斜し、しかも最上部を除く各水平フィン2は前端が吹出開口10から後方へ移動し、下部の水平フィン2ほど移動量が大きい。すなわち水平フィン2群は、水平面に対する配列角度(θ’)が水平面に対する吹出開口10の角度(θ)より大きくなり、高スラスト形状が緩和されている。したがって水平フィン2どうしは干渉することなく、水平フィン2どうしの間に隙間が形成されているので、風は吹出開口10から下向きに吹き出し、下方への指向性が確保されている。
【0044】
(実施例2)
ところが上記した実施例のレジスタにおいては、図3又は図7に示す下方へ送風する場合に、最下部の水平フィンによって案内される風がリテーナ1の内底壁に衝突し、下方指向性が損なわれるという問題がある。
【0045】
この問題を解決する本実施例のレジスタは、図8に示すように、その吹出開口10の下端に下方に向かってなだらかに傾斜する傾斜面16を備えている。他の構成は実施例1とほぼ同様であるので、構成が同じ部分については説明を省略し、構成が異なる部分について以下に説明する。
【0046】
連結ロッド4の最下部のロッド溝42は、図9に示すように水平部43と、水平部43の後端に連通してラック部41と平行に上方へ延びる傾斜部44とから構成されている。すなわち風向を上方とするようにノブ6を上方へ回動すると、最下部の水平フィン22の後側突起21は傾斜部44に係合する。したがって図10に示すように、最下部の水平フィン22は揺動せずに水平状態が維持され、他の水平フィン2で上方指向性が満たされる。
【0047】
下方へ送風する場合には、実施例1と同様にして、全ての水平フィン2が前側突起20を中心に後側が上方へ揺動する。このとき図11に示すように、最下部の水平フィン22の表面は傾斜面16と略平行となる。すなわち最下部の水平フィン22によって案内される風は、壁に衝突することなく傾斜面16に沿って吹き出す。さらに傾斜面16に沿って吹き出した風は、コアンダ効果によってさらに下方へ向かおうとする。したがって本実施例のレジスタは、実施例1のレジスタに比べて下方指向性に優れている。
【0048】
(実施例3)
しかしながら実施例2のレジスタでは、図11に示す下方吹出状態において、最下部の水平フィン22とリテーナ2の内底壁との間に断面三角形状の空間Sが生じる。したがってこの空間Sに流入した風は出口が狭いので空調への寄与率が低い。また通風抵抗が増大し、コアンダ効果にも悪影響を与える。
【0049】
そこで本実施例のレジスタでは、図12に示すように、最下部の水平フィン22の後方にさらにガイドフィン23を備えている。他の構成は実施例1、2と同様である。ガイドフィン23は、前端が最下部の水平フィン22の後側突起21に揺動自在に枢支され、後端がリテーナ1に設けられた長孔17に揺動自在に枢支されている。
【0050】
本実施例のレジスタによれば、図12に示す下方吹出状態においてガイドフィン23は斜め上方へ向かって傾斜して最下部の水平フィン22に連続している。すなわち風はガイドフィン23から最下部の水平フィン22に沿って流れ、さらに傾斜面16に沿って流れる。したがって断面三角形状の空間Sに風が流入するのが抑制され、通風抵抗の増大が防止される。また実施例2のレジスタに比べて、傾斜面16に沿って吹き出す空気の量と流速が増大する結果、下方指向性がさらに向上し快適性が向上する。
【0051】
なお水平フィン2が水平状態あるいは上方吹出状態の場合には、ガイドフィン23の後端が長孔17内を移動した結果、図14に示すようにガイドフィン23は最下部の水平フィン22と同様に水平状態となっている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例に関わるレジスタの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが上向きに揺動した時の透過側面図である。
【図3】本発明の一実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが下向きに揺動した時の透過側面図である。
【図4】本発明の一実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが上向きに揺動した時の要部拡大透過側面図である。
【図5】本発明の一実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが水平状態の時の要部拡大透過側面図である。
【図6】本発明の一実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが下向きに揺動した時の要部拡大透過側面図である。
【図7】本発明の一実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが下向きに揺動した時の要部拡大透過側面図である。
【図8】本発明の第2の実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィン群を除いた状態のリテーナの断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例に関わるレジスタに用いた連結ロッドの要部拡大説明図である。
【図10】本発明の第2実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが上向きに揺動した時の断面図である。
【図11】本発明の第2実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが下向きに揺動した時の断面図である。
【図12】本発明の第3実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが下向きに揺動した時の断面図である。
【図13】本発明の第3実施例に関わるレジスタにおいて、水平フィンが上向きに揺動した時の断面図である。
【図14】従来のレジスタにおいて、水平フィンが下向きに揺動した時の透過側面図である。
【符号の説明】
【0053】
1:リテーナ 2:水平フィン 3:垂直フィン
4:連結ロッド 5:ピニオンギヤ 6:ノブ
10:吹出開口 11:レール 12:前後案内溝
13:上下案内溝 16:傾斜面 20:前側突起(揺動軸)
21:後側突起(作用軸) 41:ラック部 42:ロッド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹出開口と空気流路を形成する筒状のリテーナと、揺動軸によって該リテーナ内に揺動可能に軸支された複数の水平フィンと、複数の該水平フィンを連結する連結ロッドと、該連結ロッドを駆動して複数の該水平フィンを互いに同期して揺動させる駆動手段と、を備えた空調用レジスタであって、
水平面に対する該水平フィンの揺動角度に応じて、該水平フィンの該揺動軸を該リテーナに対して前後に移動可能とする移動手段を有することを特徴とする空調用レジスタ。
【請求項2】
前記移動手段は、前記水平フィンの前記揺動軸が係合して該揺動軸を前後に案内する前後案内溝と、該水平フィンから延びる作用軸が係合して該作用軸を上下に案内する上下案内溝と、からなる請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記移動手段は前記リテーナの側壁に形成されている請求項2に記載の空調用レジスタ。
【請求項4】
前記連結ロッドには前記作用軸を前後に案内するロッド溝が形成されている請求項2又は請求項3に記載の空調用レジスタ。
【請求項5】
前記リテーナは前記吹出開口の下端に下方に向かってなだらかに傾斜する傾斜面を有し、最下部の前記水平フィンは下方へ揺動したときにその表面が該傾斜面と略平行となる請求項2〜4のいずれかに記載の空調用レジスタ。
【請求項6】
最下部の前記水平フィンの後方にはガイドフィンが配置され、該ガイドフィンの後端は前記リテーナの側壁に揺動自在に枢支され、該ガイドフィンの前端は最下部の前記水平フィンに揺動自在に枢支され、
最下部の前記水平フィンが該傾斜面と略平行となるように揺動するときに該ガイドフィンは先端が上方に向かって傾斜するように揺動する請求項5に記載の空調用レジスタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−106391(P2007−106391A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167698(P2006−167698)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】