説明

空調装置および空調装置の製造方法

本発明は、特に乗り物のための空調装置、およびこのような空調装置の製造方法に関する。本発明に係る空調装置は、前もって設定可能な場所にある領域を有し、この領域は、前もって設定された負荷をかけられた状態で、空調装置の当該領域における構造によって、前もって設定された方法で、当該領域の形態を変化させる。前記のような形態の変化に際しては、負荷によって引き起こされる変形エネルギーが解放される。このような空調装置の製造方法においては、前もって設定可能な場所が加工され、それによって、ある領域が形成され、該領域は、前もって設定された負荷をかけられた状態で、空調装置の当該領域における構造によって、前もって設定された方法で、当該領域の形態を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に乗り物のための空調装置、および、このような空調装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乗り物の乗客室に導入される空気を調整する、とりわけ、加熱および冷却する、および/あるいは乗客室を換気するための空調装置は、従来技術から知られている。
【0003】
このような空調装置は、通常ケーシングを有する。ケーシングは、吸気口を介してケーシングに流入するとともに、吹出口を介してケーシングから流出する空気流が貫流するものである。ケーシングには、フラップや、ダクトまたは金属シートなどの、管を形成する流れ部材と、空気流を調整および混合するための手段と、が、設けられている。
【0004】
吸気口と吹出口には、通風管もしくは管出口が設けられ、これらを、流入および流出する空気流が貫流する。通風管には、多くの場合、さらに別の流れ部材、たとえばノズルや接続管などが、支持フランジまたは支持連結部を介して連結され、これによって、流れ経路を所望の空調場所にガイドすることができる。
【0005】
しかしながら、このような空調装置は、剛性を有する部材、特に剛性を有するケーシング部材および管出口から、構成されている、という不利点を有する。これらの部材は、負荷がかかった際に、前もって定められたエネルギーの解放を行うための、機能的および/あるいは構造的な予防措置を何ら有していない。
【0006】
前記のような剛性を有する部材に、たとえば乗り物の衝突により、別の、特に変形しない部材、たとえば操縦室の部材、すなわち、ラジオ、ディスプレイ、暖房もしくはエアコンの操作器、または吹出ノズルなどが、当たった場合、該当する剛性を有する部材における、エネルギーの解放は、特に乗り物の分野におけるようなコンパクトな構造においては、短絡的な変形経路を介して、調整されない状態で行われる。この場合、このような短絡的な変形経路は、特に、部材の剛性に起因する。
【0007】
このような乗り物の乗客にとっては、負傷する危険、たとえば頭部打撲などで負傷する危険が増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、従来の技術において知られている問題を軽減し、廉価に製造できる、特に乗り物のための空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題は、それぞれの独立請求項に記載の特徴を備えた空調装置、および、空調装置のための製造方法によって解決される。
【0010】
有利な実施の形態と、さらなる構成は、従属請求項の対象となる。従属請求項の対象は、本発明に係る空調装置にも、本発明に係る製造方法にも関わる。
【0011】
特に乗り物のための、本発明に係る空調装置は、この空調装置の前もって設定可能な場所にある領域を有し、この領域は、前もって設定された負荷をかけられた状態で、空調装置の当該領域における構造によって、前もって設定された方法で、当該領域の形態を変化させる。
【0012】
前記のような形態の変化においては、負荷によって生じる変形エネルギーが解放される。
【0013】
本発明に係る空調装置のための製造方法においては、この空調装置の前もって設定可能な場所が加工され、それによって、ある領域が形成され、この領域は、前もって設定された負荷をかけられた状態で、空調装置の当該領域における構造によって、前もって設定された方法で、当該領域の形態を変化させる。
【0014】
このとき、「構造によって、前もって設定された方法で」とは、空調装置の構造が、当該領域において特定的に適応させられ、それによって、この領域で負荷がかけられたとき、意識的に生じせしめられた、すなわち、画定され、無調整ではない状態で、形態の変化が行われるという意味である。
【0015】
このように、本発明によって、好適に実現できる点は、変形エネルギー、この記載は以下においては、ひずみエネルギーまたはゆがみエネルギーとも表され、構造によって規定されるが、このようなエネルギーが、特に、負荷をかけられた空調装置において、形態の変化によってより大きな変形経路が生じ、その経路を介して開放されることである。
【0016】
したがって具体的には、変形エネルギーが画定的に解放されるが、その際、特定的に、空調装置もしくは空調装置の容量を、特に延長された変形経路として、同時に利用するのである。
【0017】
さらに、本発明によって、好適に実現できることは、より大きな変形経路を介してエネルギーが画定的に開放されることにより、衝突の際に、乗り物の乗客が負傷する危険が緩和される点である。
【0018】
乗り物に設けられる空調装置、たとえば換気設備、暖房設備、エアコンディショニング設備などは、特に好適な実施の形態によれば、ケーシング壁を備えた少なくとも一つのケーシングと、通風管と、を有し、この通風管は、ケーシングの流れ開口部に設けられている。
【0019】
空調装置は、さらに好適に、接続部材、特に、接続管連結部またはノズルを有し、このような接続部材は、特に、通風管に接続されている。
【0020】
前もって設定可能な場所としては、特に前記のような、空調装置の部材が適している。すなわち、前もって設定可能な場所として、好適に、ケーシング、特にこの場合はケーシング壁、特にケーシングの外壁、または、接続部材、または、ケーシングと接続部材との間の連結領域、が考えられる。
【0021】
前もって設定可能な場所はまた、通風管、特に支持フランジまたはカラーを有してなる管連結部、または、通風管と接続部材との間の連結領域でもよい。
【0022】
形態の変化のための領域は、任意に形成することができる。このような領域は、好適に、点または線として、あるいは、次元の異なる、2次元または3次元の平面または成形体として、特に、略円柱形の成形体として形成されている。
【0023】
特に好適な実施の形態によれば、本発明に係る構造は、ケーシングにおける定格破断部を形成する弱化部である。このような弱化部は、点形状または線形状、あるいは次元の異なる平面として形成することができる。
【0024】
本発明に係る構造は、特に、ケーシング壁または通風管または接続部材に設けられた、定格破断部を形成する溝である。この溝は線形状、あるいは、開放または閉鎖された折れ線、たとえばC形状、T形状、X形状、またはこれらの組み合わせ、であってよい。特に管、円柱形の成形体、または、同様の三次元の成形体においては、この溝は循環することもありうる。
【0025】
本発明に係る構造は、好適にまた、特に前記の、装置の部材において、薄壁部分、ケーシングの中断部あるいはケーシングの開口部、またはこれらを組み合わせたものでもありうる。
【0026】
ケーシングの中断部は、たとえば、さまざまに形成された、もしくは、延在するリブを有するか、または、一般に突出し、かつ、薄壁の隆起部を有する、断続的なリブ構造であってよく、この構造はまた、接続部を接続するためのパッキンの支持体として用いられる。
【0027】
このような断続的なリブ構造は、たとえばX形状もしくはT形状またはC形状のリブ、あるいはこれらの組み合わせによって形成される。このとき断続的というのは、個々のリブが互いに結合されていない、すなわち中断部を有するか、あるいは、リブが縁に対して中断部を有するという意味である。このような断続的なリブ構造は、構造を弱める作用を及ぼす。こうした構造を弱める作用は、リブの間に設けられている溝によってさらに強められる。
【0028】
ケーシングの開口部は、特に、C形状もしくはT形状またはX形状の開口部またはスリット、あるいはこれらの組み合わせとして、形成される。多角形状または線形状または任意の形状をなす、平面状のスリットまたは開口部も想定される。ケーシングの開口部についても、スリット同士の間に、溝またはリブを補足的に形成することができる。
【0029】
さらに別の、特に好適な実施の形態では、本発明に係る構造は、相対移動、特に、長手方向の摺動を可能にする連結部であって、特に、通風管と接続部材との間の連結部である。
【0030】
このような連結は、接続部材の内壁および/あるいは通風管の外壁を循環する溝に嵌入されたリングを用いて、行われる。
【0031】
このような連結において可能となる相対移動によって、長さの調整が行われ、この調整によって、好適に、通風管が、接続部材に対して、長手方向に摺動する。
【0032】
空調装置においては、当然、前記のような構造の任意の組み合わせを、互いに組み合わせることができる。たとえばリブ、特に、C形状もしくはT形状またはX形状のリブを、スリット、特に、C形状もしくはT形状またはX形状のスリットと、組み合わせることができる。溝、特に循環する溝を、リブ、特に、C形状もしくはT形状またはX形状のリブと、組み合わせることもできる。スリット、特に、C形状もしくはT形状またはX形状のスリットを、溝、特にスリット同士の間に設けられた溝状の連結部と組み合わせることもできる。
【0033】
このように組み合わされた構造は、パッキンの支持体になりうる。
【0034】
さらに、長手方向の摺動を可能にする連結部を組み合わせることもできる。
【0035】
前もって設定された形態の変化の態様は、特に好適には、中断、変形、剪断、空調装置の部材同士の摺動および/あるいは相対移動である。
【0036】
本発明に係る構造は、前もって設定された負荷に適合されている。すなわち、一定の負荷の方向もしくは方向成分、および/あるいは一定の負荷の高さ、もしくは、一定の負荷の高さの超過、においてのみ、構造の形態の変化が引き起こされる。
【0037】
このような、負荷に対する構造の適合は、相応の寸法、たとえば、溝の深さ、リブの厚さ、リブの高さ、定格破断部の延在のしかた、あるいは、スリットの幅などによって、実現することができる。
【0038】
負荷に対する構造の適合によって、意図しない、また、制御されない形態の変化を避けることができる。
【0039】
前もって設定された負荷は、空調装置に部材、特に操縦室の部材が突き当たることによって生じる。このような突き当たりは、衝突によって引き起こされるか、もしくは、実現される。
【0040】
以下に、複数の実施の形態にしたがって、本発明と、さらなる有利点について説明するが、それによって、本発明が限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
第一の実施の形態:乗り物のエアコンディショナーのケーシングに設けられた画定された弱化部
図1は、乗り物のエアコンディショナーのケーシング100を示している。このケーシングは参照符号101で示される矢印方向Pにおいて、乗り物のフロントパネル部105に載置されている。ケーシング100の両側には、乗り物の乗客室の底部空間、および、乗客室の側方領域を空調するための、吹出管150から155が、設けられている。
【0042】
ケーシング100の下側107には、乗客室のさらなる空調のための、さらに別の吹出管160から163が、設けられている。
【0043】
乗り物のエアコンディショナーのケーシング100はまた、さらに吹出開口部170,171(部分的にしか見えない)を有する。これらの吹出開口部には、接続フランジ180,181を有してなる管連結部が設けられている。
【0044】
図1はケーシング100の領域110を示している。この領域は同時に、略矩形状をなし、かつ、循環する90°をなす溝111によって縁どりされた枠の領域でもある。この90°をなす溝111は、本図の場合、ケーシング壁の外部表面に形成されており、乗り物のエアコンディショナーのケーシング100における、画定された弱化部、すなわち定格破断部を形成する。
【0045】
乗り物の事故(衝突)が起こった場合、この領域110、すなわち定格破断部は、ラジオ、ディスプレイ、暖房/エアコンディショニング機器などの操縦室の部材が、ケーシング100に当たると、特定的に導かれる破断部となる。つまり、ケーシング100は、画定的かつ特定的に、この位置で破壊される。
【0046】
このように、ケーシング100に画定された弱化部110を設けることによって、通常の弱化されていないケーシング領域に比べて、弱化部では、ほんの少しの運動エネルギー、もしくは、比較的少ない運動エネルギーを消費するだけで、ケーシング壁を貫通もしくは破壊することができる。
【0047】
乗り物のエアコンディショナーのケーシング100は、弱化部において、画定的に弱化されているので、弱化部で、画定的に破壊される。すなわち、一般的に、この弱化部が画定的に変形する。
【0048】
このような状態で事故を起こした乗り物の乗客が、負傷する危険は、このような構成によって減少する。
【0049】
弱化された領域として、任意のほかの形状、たとえば円形、楕円形、正方形、または星形の領域を、それらの形に応じた溝を設けることによって、形成可能であることに、留意すべきである。
【0050】
溝111は、図1に示すように、ケーシング壁の外部表面に、および/あるいはケーシング壁の内部表面に形成することができる。
【0051】
第二の実施の形態:溝によって画定されたケーシング壁の弱化部
図2は、たとえば、乗り物のためのエアコンディショナーのケーシングに見られるような、ケーシング壁200の部分図である。
【0052】
ケーシング壁200の表面201は、本図では、外壁の、外側に向いた表面201が示されているが、この表面に、定格破断部を形成する溝210が、ケーシング壁200における画定された弱化部として、形成されている。
【0053】
矢印220によって示されるのは、溝210によって弱化されたケーシング壁200の領域において、操縦室の部材などの、乗り物の部材が、当たった場合の、それらの加速方向である。
【0054】
たとえば乗り物の衝突の際に、前記のような部材が、矢印方向220において、定格破断部の領域において、ケーシング壁200に当たった場合、あるいは、矢印方向220に運動量を有する場合、ケーシング壁200は、溝210によって弱化された箇所において、画定的に破壊する。
【0055】
溝の形状と溝の深さの選択は、高さおよび方向について、特定の力が作用したときに破損するように、行われる。これによって、定格破断部において、望まない破断が生じることが回避される。
【0056】
定格破断部を形成する溝210を、壁の、外側を向いた表面201に設けるかわりに、対向側の、内側を向いた、壁の表面202にも、まったく同様に設けることができる、という点に留意すべきである。
【0057】
第三の実施の形態:定格破断部を形成し、かつ、溝によって画定された、壁の弱化部を有する管連結部の支持フランジ
図3は、管連結部300の長手方向断面を示す。この管連結部は、略管状の部材であって、管部305を有している。管連結部もしくは管部305の端部301には、カラーとも呼ばれる、支持フランジ330が形成されている(図4,図5aから図5dを参照)。フランジ330が管部305に移行する領域には、循環する溝310が刻まれている。
【0058】
この溝310は、定格破断部を形成する。
【0059】
前もって設定可能な力の作用は、溝310の形状と深さを、特定的に形成することによって、高さおよび方向について制御できるものであり、このような力が作用するとき、フランジ330は、溝310によって形成される、このような定格破断部において、画定的に剪断される。
【0060】
図3の場合、矢印320によって示されるのは、操縦室の部材などの、乗り物の部材が、フランジ330に対する垂直方向において、当たった場合の、それらの加速方向である。
【0061】
前記のような部材が、矢印方向320において、フランジに当たった場合、あるいは、矢印方向320の運動量を有する場合、フランジは、溝310によって弱化された箇所において、画定的に破壊もしくは破断もしくは剪断もしくは切断される。
【0062】
ケーシングの画定された中断部340、たとえば断続されたリブまたはウェブ(図4)などによっても、対応する効果が得られることに留意すべきである。
【0063】
第四の実施の形態:画定的に弱化された、管連結部の支持フランジ(図4)
図4は、管連結部の支持フランジ400を、支持フランジ400の支持面430の平面図で示すものである。
【0064】
管連結部もしくは支持フランジは、図に示すとおり、二つの空気ガイド開口部440,441を有する。これらの空気ガイド開口部は、フランジ400のカラー431によって、縁取りされており、このカラー431は支持面430を形成する。
【0065】
支持面に載置され、かつ、嵌入されたパッキン(図7bの701を参照)は、支持面430を介して、接続管連結部または(図に示されない)ノズルとの、液体を通さない連結部を形成する。
【0066】
このようなパッキン701は、たとえば、さらに支持面430と接着させることもできる。
【0067】
図4はさらに、カラー431もしくは支持面430に配設されているリブ410と、支持面430を外側と内側について画定している縁411とを、概略的に示している。これら、すなわち、リブ410と縁411とは、二つとも、それぞれ所定の高さを有し、これらの高さによって、パッキンの厚さが決定される。本図では、循環する縁411は、リブ410よりも大きな高さを有しており、それによって、パッキン701がずれないように作用する。
【0068】
図に示すとおり、リブ410と縁411とは、投影面から突出しており、これらの高さ、本図の場合は異なる高さは、見て取れない。
【0069】
図4がさらに示すとおり、リブ410は略C形状に形成されているため、一方の側に向かって開放されたフレーム412が形成される。リブ410はまた、リブ同士413も、また、単一の縁411もしくは複数の縁411とも、連結されておらず、それによって、支持面430もしくはカラー431上に、リブ構造もしくは縁構造を有する、画定された中断部413,414が形成される。
【0070】
画定され、負荷の大きさおよび方向に応じて形成可能な、これらの中断部413,414によって、カラー431はこれらの中断部において弱化され、たとえば乗り物の事故もしくは衝突の際に、カラー431に負荷がかかった場合、カラーは、これらの中断部において、画定された定格破断部あるいは変形部を形成する(図5aから図5d参照)。
【0071】
矢印450と、一点鎖線E−Eによって、リブ構造もしくは縁構造を有するカラー431の断面が示されている。図7bは、対応する断面図であり、この図に示される部材は、同一である限り、図4に対応して表されている。
【0072】
図7bはさらに、パッキン701を示す。このパッキンは、リブ410に載置され、カラー431の縁411に限定される。
【0073】
図7bがさらに示すとおり、カラー431は、定格破断部を形成する、さらなる構成要素として、溝711を備える、もしくは溝によって弱化されることもできる。
【0074】
図7bに示すとおり、溝711は縁411に沿って、リブ400と縁411との間の空間に設けられる。
【0075】
このような定格破断部を形成する構造の、さらに別の、択一的な実施の形態を、図7から図9に示し、以下にこれらの図に基づいて説明する。
【0076】
第五の実施の形態:画定的に弱化された、管連結部の支持フランジ
図5aから図5dは、定格破断部510から512を有する、管連結部500もしくは、管連結部500の支持フランジの破断挙動であって、たとえば前記の実施の形態によって実現されるような破断挙動、特に剪断を、示すものである。
【0077】
管連結部500には、定格破断部510から512として、カラー520から管部521(図3参照)への連結箇所、および、カラー520のリブ構造もしくは縁構造における、構造中断部510,511に、溝512が設けられている。(図5aから図5d参照)
【0078】
これらの定格破断部510から512によって、支持フランジは構造上、特定的に弱化され、それによって、カラー520は、図5aから図5dに示すとおり、連結箇所において剪断される。このとき定格破断部の寸法は、負荷が所定の方向において、一定の大きさを超えた場合に、はじめて剪断が行われるように、決定されている。
【0079】
第六の実施の形態:管接続部の二つの管の間の長さ調整を介した変形経路(図6aおよび図6b)
図6aおよび図6bは、二つの管640,650を有してなる(液体を漏らさない)管接続部600を示している。これらの図で、管640は乗り物のエアコンディショナーに設けられた管またはノズルを形成し、管650は乗り物のエアコンディショナーに設けられた空気の吹出部を形成する。
【0080】
二つの管640,650の管径641,651と、二つの管640,650の間に設けられているフランジパッキン670と、少なくとも管650の壁厚652と、は、互いに調整され、それによって、管接続部は、以下に記載するとおり、液体を通さず、かつ、二つの管640,650は画定的な負荷を受けた状態で、長手方向630において、たがいに摺動可能である。図6aおよび図6bが示すように、本実施の形態では、管640は、管650内に摺動可能、あるいは、管650内で摺動可能である。
【0081】
管640の内壁643には、半径方向に循環する溝660が刻まれており、この溝に、相応に適合されたフランジパッキン670が嵌入されている。
【0082】
図6aおよび図6bが示すように、フランジパッキン670は、該フランジパッキンの内径671を有して、管650の表面653に載置されており、それによって、容積や直径を相応に規定した場合、二つの管640,650の間に、液体を通さない接続部を実現することができる。
【0083】
図6aは、二つの管640,650の管接続部600であって、たとえば、このような管接続部600を有する乗り物が、衝突事故を起こすことによって、管640に力が作用する前の、すなわち、通常の状態の管接続部600を示している。
【0084】
図6aにおいて、矢印620によって示されるのは、このような衝突事故もしくはこのような力が作用した際に、見られるような、乗り物の部材もしくは操縦室の部材などが、管接続部600に当たった場合の、それらの部材の加速方向である。
【0085】
図に示す加速方向620は、管640,650の長手方向630、もしくはこれらの管に対して平行である。他の方向に作用する力および加速方向について、本図では、長手方向における対応する分力631として、考えられる。
【0086】
図6bが示すように、力が作用すると、二つの管640,650は、長手方向に630たがいに、摺動する。図6bに示すのは、管650が管640の方向に摺動する場合である。このような摺動は、フランジパッキン670の受容溝660が、管640に刻まれていることによって成立する。
【0087】
図6bにおいて、参照符号Lが示すのは、たとえば、所定の移動経路(長さ調整)631であり、この経路の分だけ、管650は、所定の力が作用する状態で、さらに管640に挿入される。
【0088】
管640,650が、移動経路(長さ調整)631の分だけ変形経路が延長され、たがいに相対的に摺動することによって、この変形経路を介して、衝突する際の操縦室の部材の運動エネルギーが解放される。
【0089】
運動エネルギーは、変形経路が延長されることによって、画定的に、急な衝撃が弱められた状態で、開放される。これによって、乗り物の乗客が負傷する危険は減少する。
【0090】
管接続部600を形成する部材の容積は、すでに述べたとおり、管接続部600が、液体を通さず、かつ、二つの管640,650の間で、長さ調整631を行うことができるように、実現されている。さらに、二つの管の寸法は、管接続部600に対する負荷が、方向と大きさにおいて、限界を超えた場合にはじめて、長さ調整631が行われるように、決められている。これによって、たとえば通常の乗り物の運転において生ずるような、衝撃や力の作用などによって、望まず、また、制御されない長さ調整631が行われるのを、回避することができる。
【0091】
第七から第十の実施の形態:接続フランジの支持面における、定格破断部を形成する、代替的な構造(図7から図9)
以下に述べる、定格破断部を形成する、代替的な構造は、図4に示す、第四の実施の形態として説明されているフランジ400もしくはカラー431に関連するものである。これに応じて、同一の部材は、等しく記載されている。
【0092】
第四の実施の形態による、カラー431の支持面430における、リブ構造もしくは縁構造に替えて、図7aの対応する断面(図4および図7bにおける断面E−E,符号450参照)によって示すように、スリット構造もしくは縁構造を、形成することもできる。
【0093】
この場合、C形状のリブ410に替えて、相応に形成されたC形状のスリット710が、カラー431に刻まれている。この場合、パッキン701は、支持面430に、直接的に載置されている。
【0094】
図8aおよび図8bは、(循環する)溝711を備え、定格破断部を形成する、さらなる代替的な、リブ構造もしくは縁構造800を示す。
【0095】
このさらなる代替的な、リブ構造もしくは縁構造において、図8aは、カラー431の一部分の平面図である。図8bは、図8aにおける参照符号850で表すF−F断面に沿った、カラーの断面図である。
【0096】
本図のリブ構造もしくは縁構造800において、リブ810はX形状に形成されている。これらのリブも、カラー431の縁411に対して、弱化部となる距離414を有している。縁411に沿って、また、リブ810と縁411との間の空間にも、同様に、弱化部となる、循環する溝711が刻まれている。
【0097】
図8bに示すとおり、パッキン701は、本実施の形態では、リブ810に載置され、これらのリブの高さは、縁411よりも低く形成されており、縁411によって、ずれないように画定されている。
【0098】
図9は、フランジ400もしくはカラー431の、さらに別の、代替的な、スリット構造もしくは縁構造900の概略図である。
【0099】
図9が、カラー431の部分として示すように、本実施の形態では、C形状のスリット910が、図に示すように設けられている。個々の二つのスリット910の間では、溝911が、支持面430に刻まれ、この溝は、スリット910を、図に示すように連通させている。スリット910は、本図の場合でも、弱化部となる、縁に対する距離414を有している。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の一実施の形態による、ケーシングに設けられた、定格破断部を形成する弱化部を有してなる乗り物のエアコンディショナーのケーシングの概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態による、定格破断部を形成する弱化部を有してなる、ケーシング壁の概略図である。
【図3】本発明の一実施の形態による、定格破断部を有する支持フランジを有する管連結部の断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態による、定格破断部を形成するための、画定された中断部を有する、管連結部の支持フランジの概略図である。
【図5a】本発明の一実施の形態による、定格破断部を有する、管連結部の支持フランジの概略図である。
【図5b】本発明の一実施の形態による、定格破断部を有する、管連結部の支持フランジの概略図である。
【図5c】本発明の一実施の形態による、定格破断部を有する、管連結部の支持フランジの概略図である。
【図5d】本発明の一実施の形態による、定格破断部を有する、管連結部の支持フランジの概略図である。
【図6a】本発明の一実施の形態による、長さの調整によって(延長された)変形経路を形成する入れ子状の管の概略図である。
【図6b】本発明の一実施の形態による、長さの調整によって(延長された)変形経路を形成する入れ子状の管の概略図である。
【図7a】本発明の複数の実施の形態による、図4によって形成可能な、接続フランジの支持面における、定格破断部を形成する構造の概略図である。
【図7b】本発明の複数の実施の形態による、図4によって形成可能な、接続フランジの支持面における、定格破断部を形成する構造の概略図である。
【図8a】本発明の一実施の形態による、図4によって形成可能な、接続フランジの支持面における、定格破断部を形成する構造の概略図である。
【図8b】本発明の一実施の形態による、図4によって形成可能な、接続フランジの支持面における、定格破断部を形成する構造の概略図である。
【図9】本発明の一実施の形態による、図4によって形成可能な、接続フランジの支持面における、定格破断部を形成する構造の概略図である。
【符号の説明】
【0101】
100 ケーシング
105 フロントパネル部
110 領域
111 溝
200 ケーシング壁
210 溝
300 管連結部
305 管部
310 溝
330 支持フランジ
340 中断部
400 支持フランジ
410 リブ
411 縁
413,414 中断部
414 距離
430 支持面
431 カラー
440,441 空気ガイド開口部
500 管連結部
510,511 構造中断部(定格破断部)
512 溝(定格破断部)
520 カラー
521 管部
600 管接続部
631 移動経路(長さ調整)
640,650 管
660 溝
670 フランジパッキン
701 パッキン
710 スリット
711 溝
800 リブ構造もしくは縁構造
810 リブ
900 スリット構造もしくは縁構造
910 スリット
911 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に乗り物のための空調装置において、
前記空調装置は、前記空調装置の、前もって設定可能な場所にある領域を有し、該領域は、前もって設定された負荷をかけられた状態で、前記空調装置の前記領域における構造によって、前もって設定された方法で、前記領域の形態を変化させ、
前記形態の変化の際に、前記負荷によって引き起こされる変形エネルギーが解放されることを特徴とする、空調装置。
【請求項2】
前記空調装置は、ケーシング壁と、通風管と、を有してなる少なくとも一つのケーシングを備え、前記通風管は、前記ケーシングの流れ開口部に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記空調装置は、接続部材、特に接続管連結部、あるいは、ノズルを有し、前記接続部材は、前記通風管と連結されていることを特徴とする、請求項1から2のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項4】
前記前もって設定可能な場所は、前記ケーシング、あるいは、前記接続管連結部、あるいは、前記ケーシングと前記接続部材との連結領域であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項5】
前記前もって設定可能な場所は、前記ケーシング壁、特に前記ケーシングの外壁、あるいは、前記通風管、特に支持フランジまたはカラーを備えた管連結部、あるいは、前記通風管と前記接続部材との連結領域であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項6】
前記領域は、点または線または平面または成形体、特に略円柱形状の成形体であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項7】
前記構造は、前記ケーシングにおける、定格破断部を形成する弱化部であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項8】
前記弱化部は、点形状または線形状または平面形状に形成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項9】
前記構造は、定格破断部を形成する溝、特に、線形状、および/あるいは、循環する溝として、あるいは、開放または閉鎖された折れ線として、特に前記ケーシング壁または前記通風管または前記接続部材に、形成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項10】
前記構造は、特に前記ケーシング壁または前記通風管または前記接続部材において、定格破断部を形成する、薄壁部分であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項11】
前記構造は、定格破断部を形成する、ケーシングの中断部であって、
特にリブ、特に、C形状またはX形状またはT形状のリブを備えたリブ構造であって、中断部を有するリブ構造、および/あるいは、ケーシングの開口部、特に、C形状またはT形状またはX形状の開口部として、
特に前記ケーシング壁または前記通風管または前記接続部材に形成されている、中断部であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項12】
前記構造は、相対移動、特に、長手方向の摺動を可能にする連結部であって、特に、前記通風管と前記接続部材との間の連結部であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項13】
前記通風管と前記接続部材との間の前記連結部は、前記接続部材の内壁あるいは前記通風管の外壁を循環する溝に嵌入されたリングを用いて、実現されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項14】
前記相対移動の際に、長さの調整が行われ、該調整によって、前記通風管が、前記接続部材に対して、長手方向に、入れ子状に摺動することを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項15】
前記前もって設定された、形態の変化の態様は、中断、変形、剪断、摺動および/あるいは相対移動であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項16】
前記空調装置の前記領域における前記構造は、前記変形エネルギーが、画定的に、特に、比較的長い変形経路を介して開放されるように、形成されることを特徴とする、請求項1から15のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項17】
前記前もって設定された負荷は、量および/あるいは方向に関して前もって設定可能であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項18】
前記前もって設定された負荷は、前記空調装置に部材、特に操縦室の部材が突き当たることによって生じることを特徴とする、請求項1から17のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項19】
前記部材の前記突き当たりは、衝突によって引き起こされることを特徴とする、請求項1から18のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項20】
前記空調装置は、乗り物における、換気設備、暖房設備、または、エアコンディショニング設備であることを特徴とする、請求項1から19のいずれか1項に記載の空調装置。
【請求項21】
特に乗り物のための、空調装置を製造するための方法であって、
前記空調装置は、前記空調装置の、前もって設定可能な場所において加工され、それによって、前記前もって設定可能な場所において、ある領域が形成され、該領域は、前もって設定された負荷をかけられた状態で、前記空調装置の前記領域における構造によって、前もって設定された方法で、前記領域の形態を変化させ、
前記形態の変化の際に、前記負荷によって引き起こされる変形エネルギーが解放されることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−509050(P2008−509050A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525251(P2007−525251)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008693
【国際公開番号】WO2006/018209
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(505006840)ベール・ゲーエムベーハー・ウント・コ・カーゲー (6)
【Fターム(参考)】