説明

空調装置のケース嵌合構造

【課題】嵌合部における隙間の発生をより抑制する。
【解決手段】ケース14が第1、第2、第3ケース部材14a、14b、14cに分割して形成され、第1ケース部材14aと第2ケース部材14bとが第1の方向に嵌合し、第1、第2ケース部材14a、14bと第3ケース部材14cとが第1の方向と交差する第2の方向に嵌合することでケース14が構成されている空調装置のケース嵌合構造であって、第1、第2ケース部材14a、14bを第3ケース部材14cに第2の方向に嵌合させて組み付ける際に第2の方向の組み付け力を第1の方向の組み付け力に変換して第1、第2ケース部材14a、14bを第1の方向に寄せ合わせる寄せ構造34を備え、寄せ構造34は、第1、第2ケース部材14a、14bと第3ケース部材14cとの嵌合部32、33よりもケース内方側またはケース外方側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置のケース嵌合構造に関するものであり、車両用空調装置に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の空調装置のケース嵌合構造が特許文献1に記載されている。この従来技術では、室内への送風空気が通る空気通路を形成するケースが第1ケース部材、第2ケース部材、および第3ケース部材に分割して形成されている。そして、第1ケース部材と第2ケース部材とが第1の方向に嵌合し、第1、第2ケース部材と第3ケース部材とが前記第1の方向と交差する第2の方向に嵌合するようになっている。
【0003】
また、この従来技術では、第1、第2ケース部材同士が嵌合する嵌合部と、第1、第2ケース部材と第3ケース部材とが嵌合する嵌合部とがT字状に当接する部位において、第1、第2ケース部材が第3ケース部材に向かってV字状に突き出しており、第3ケース部材が第1、第2ケース部材のV字状突起に対応してV字状に窪んでいる。
【0004】
このため、第1、第2ケース部材と第3ケース部材とを組み付けると、第1、第2ケース部材のV字状突起が第3ケース部材のV字状窪みに押し当てられることとなって、嵌合部に隙間が発生することが抑制される。
【特許文献1】特開2007−99230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、嵌合部自体にV字状の突起および窪みを形成しているので、第1ケース部材と第2ケース部材との嵌合部がその嵌合方向にV字状に屈曲することとなる。このため、屈曲した嵌合部で嵌合が若干甘くなってしまい、隙間が若干発生しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、嵌合部における隙間の発生をより抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、室内への送風空気が通る空気通路を形成するケース(14)が少なくとも第1ケース部材(14a)、第2ケース部材(14b)、および第3ケース部材(14c)に分割して形成され、
第1ケース部材(14a)と第2ケース部材(14b)とが第1の方向に嵌合し、第1、第2ケース部材(14a、14b)と第3ケース部材(14c)とが第1の方向と交差する第2の方向に嵌合する空調装置のケース嵌合構造であって、
第1、第2ケース部材(14a、14b)を第3ケース部材(14c)に第2の方向に嵌合させて組み付ける際に第2の方向の組み付け力を第1の方向の組み付け力に変換して第1、第2ケース部材(14a、14b)を第1の方向に寄せ合わせる寄せ構造(34)を備え、
寄せ構造(34)は、第1、第2ケース部材(14a、14b)と第3ケース部材(14c)との嵌合部(32、33)よりもケース内方側またはケース外方側に配置されていることを特徴とする。
【0008】
これによると、寄せ構造(34)によって第1、第2ケース部材(14a、14b)をその嵌合方向(第1の方向)に寄せ合わせることができるので、第1、第2ケース部材(14a、14b)の嵌合部(30、31)に隙間が発生することを抑制できる。
【0009】
しかも、寄せ構造(34)を、第1、第2ケース部材(14a、14b)と第3ケース部材(14c)との嵌合部(32、33)よりもケース内方側またはケース外方側に配置しているので、上記従来技術のように当該嵌合部(32、33)自体をその嵌合方向(第2の方向)に屈曲させる必要がない。そのため、上記従来技術に比べて当該嵌合部(32、33)における隙間の発生をより抑制できる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の空調装置のケース嵌合構造において、寄せ構造(34)は、
第1ケース部材(14a)に形成された第1寄せ部(34a)と、
第2ケース部材(14b)に形成された第2寄せ部(34b)と、
第1寄せ部(34a)に対応して第3ケース部材(14c)に形成された第3寄せ部(34c)と、
第2寄せ部(34a、34b)に対応して第3ケース部材(14c)に形成された第4寄せ部(34d)とを有していることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の空調装置のケース嵌合構造において、第1寄せ部(34a)は、嵌合部(32、33)よりもケース内方側またはケース外方側に突出するように第1ケース部材(14a)と一体成形され、
第2寄せ部(34b)は、嵌合部(32、33)よりもケース内方側またはケース外方側に突出するように第2ケース部材(14b)と一体成形され、
第3、第4寄せ部(34c、34d)は、嵌合部(32、33)よりもケース内方側またはケース外方側に突出するように第3ケース部材(14c)と一体成形されていることを特徴とする。
【0012】
これにより、別部品を用いることなく第1、第2ケース部材(14a、14b)を寄せ合わせることができるので、コストを低減できる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項2または3に記載の空調装置のケース嵌合構造において、第1、第2ケース部材(14a、14b)と第3ケース部材(14c)とを嵌合状態で固定する固定構造(35)を備え、
固定構造(35)は、第1、第3寄せ部(34a、34c)と第2、第4寄せ部(34b、34d)との間に配置されていることを特徴とする。
【0014】
これにより、第1、第2ケース部材(14a、14b)をその嵌合方向に寄せ合わせた状態で良好に固定できるので、第1、第2ケース部材(14a、14b)の嵌合部(30、31)に隙間が発生することをより抑制できる。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の空調装置のケース嵌合構造において、固定構造(35)は、第1、第2ケース部材(14a、14b)に形成された爪部(35a)と、第3ケース部材(14c)に形成されて爪部(35a)と係合する係合部(35b)とを有し、
爪部(35a)は第1、第2ケース部材(14a、14b)と一体成形され、
係合部(35b)は第3ケース部材(14c)と一体成形されていることを特徴とする。
【0016】
これにより、締結部材等の別部品を用いることなく第1、第2ケース部材(14a、14b)と第3ケース部材(14c)とを固定することができるので、コストを低減できる。
【0017】
請求項6に記載の発明では、請求項4に記載の空調装置のケース嵌合構造において、固定構造(35)は、第3ケース部材(14c)に形成された爪部(35a)と、第1、第2ケース部材(14a、14b)に形成されて爪部(35a)と係合する係合部(35b)とを有し、
爪部(35a)は第3ケース部材(14c)と一体成形され、
係合部(35b)は第1、第2ケース部材(14a、14b)と一体成形されていることを特徴とする。これにより、上記した請求項5に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
請求項7に記載の発明では、室内への送風空気が通る空気通路を形成するケース(14)が少なくとも3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)および1つのケース部材(14c)に分割して形成され、
3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)が第1の方向に嵌合し、3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)と1つのケース部材(14c)とが第1の方向と交差する第2の方向に嵌合する空調装置のケース嵌合構造であって、
3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)を1つのケース部材(14c)に第2の方向に嵌合させて組み付ける際に第2の方向の組み付け力を第1の方向の組み付け力に変換して3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)を第1の方向に寄せ合わせる寄せ構造(34)を備え、
寄せ構造(34)は、3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)と1つのケース部材(14c)との嵌合部(32、33)よりもケース内方側またはケース外方側に配置されていることを特徴とする。
【0019】
これによると、4つ以上の分割ケース部材(14a〜14d)が嵌合することでケース(14)を構成する空調装置のケース嵌合構造において、上記した請求項1に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0020】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を図1〜図5に基づいて説明する。図1は、本実施形態の車両用空調装置の室内ユニット部の斜視図である。図2は、図1の室内ユニット部の空調ユニット10の断面図である。図中、上下前後左右の各矢印は車両搭載状態における各方向を示している。図2は後述するフェイスモードの状態を示している。
【0022】
本実施形態の室内ユニット部は、空調ユニット10と、この空調ユニット10に空気を送風する送風機ユニット11とに大別される。空調ユニット10は車室内前側の計器盤(図示せず)内側のうち、車両幅方向の略中央部に配置される。これに対し、図示しない送風機ユニット11は車室内前部の計器盤内側のうち、中央部から助手席側(本例では車両左方側)へオフセットして配置されている。
【0023】
送風機ユニット11は、外気(車室外空気)と内気(車室内空気)とを切替導入する内外気切替箱12、および、この内外気切替箱12を通して空気を吸入して送風する送風機13によって構成される。この送風機13は遠心多翼ファン(図示せず)を電動モータ(図示せず)にて駆動するものである。また、電動モータは空調制御装置(図示せず)の制御信号によって作動する。
【0024】
空調ユニット10はケース14を有し、ケース14の内部には車室内へ向かって空気が流れる空気通路が構成される。このケース14は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0025】
ケース14は、第1、第2、第3の3つのケース部材14a、14b、14cに分割して形成され、これら第1、第2、第3ケース部材14a、14b、14c同士を嵌合することで構成される。
【0026】
より具体的には、第1ケース部材14aと第2ケース部材14bとが第1の方向(本例では、車両左右方向)に嵌合し、第1、第2ケース部材14a、14bと第3ケース部材14cとが第1の方向と交差する第2の方向(本例では車両上下方向)に嵌合することでケース14が構成される。
【0027】
換言すれば、ケース14は車両左右方向に延びる分割面で上側ケース部材と下側ケース部材とに上下2分割され、さらに上側ケース部材が車両上下方向に延びる分割面で左側ケース部材と右側ケース部材とに左右2分割されている。これら3つのケース部材14a、14b、14cは、後述する固定構造により嵌合状態を維持して固定される。
【0028】
図2に示すように、ケース14内部の最低部には空気入口空間15が形成され、この空気入口空間15には、送風機ユニット11の送風機13によって送風された空気が流入する。また、空気入口空間15の空気流れ下流側直後には蒸発器16が略水平に配置されている。
【0029】
この蒸発器16は、冷凍サイクル(図示せず)の低圧冷媒が蒸発する際に空気から吸熱して空気を冷却する冷却用熱交換器である。ケース14のうち蒸発器16の下方に位置する底部には、蒸発器16で発生した凝縮水(ドレン水)を排水するドレン排水口(図示せず)が開口している。
【0030】
蒸発器16の空気流れ下流側(上方側)には、所定の間隔を開けてヒータコア17が略水平に配置されている。ヒータコア17は、高温のエンジン冷却水(温水)が内部に導入され、この温水と蒸発器16を通過した冷風とを熱交換させることで冷風を加熱する加熱用熱交換器である。なお、蒸発器16およびヒータコア17を略水平に配置するとは、その熱交換用コア部の面が略水平方向に延びるように配置されることを意味する。
【0031】
ケース14内部の蒸発器16の上方側部位であって、かつ、ヒータコア17の車両後方側部位には、蒸発器16通過後の冷風がヒータコア17をバイパスして流れる冷風バイパス通路18が形成されている。
【0032】
ヒータコア17の空気流れ下流側には、ヒータコア17通過後の温風が流れる温風通路19が形成されている。冷風バイパス通路18および温風通路19の空気流れ下流側には、冷風バイパス通路18を通過した冷風と温風通路19を通過した温風とを混合する混合空間20が形成されている。
【0033】
混合空間20に流入する冷風と温風との風量割合は、第1、第2の2つのエアミックスドア21、22によって調節される。第1エアミックスドア21は、冷風バイパス通路18の出口部に配置され、冷風バイパス通路18の開度を調節することにより、冷風バイパス通路18を通過する冷風の風量を調節する。
【0034】
第2エアミックスドア22は、蒸発器16とヒータコア17との間に配置され、ヒータコア17の入口空気通路の開度を調節することによりヒータコア17で加熱される冷風の風量を調節する。
【0035】
第1、第2エアミックスドア21、22は、ケース14に対して回転可能に支持された回転軸と、回転軸に結合された樹脂製の板ドア部とを有する回転式ドアである。第1、第2エアミックスドア21、22の回転軸は、ケース14左右両側の壁面の軸受穴(図示せず)に回転可能に支持されている。
【0036】
第1、第2エアミックスドア21、22の回転軸の一端部はケース14の外部に突出してドア駆動機構(図示せず)に連結される。本例では、ドア駆動機構としては、空調制御装置(図示せず)の制御信号によって作動する電気式アクチュエータを用いているが、乗員の手動操作により操作力が与えられる手動操作機構を用いてもよい。
【0037】
図2において、第1、第2エアミックスドア21、22の実線位置は、ヒータコア17の入口空気通路を全閉して冷風バイパス通路18を全開する最大冷房位置であり、この最大冷房位置に第1、第2エアミックスドア21、22が回転操作されると、蒸発器16を通過した冷風の全風量が冷風バイパス通路18側へ流れる。
【0038】
ヒータコア17の入口空気通路を全開して冷風バイパス通路18を全閉する最大暖房位置に第1、第2エアミックスドア21、22が回転操作されると、蒸発器16を通過した冷風の全風量がヒータコア17を通過して加熱される。
【0039】
そして、第1、第2エアミックスドア21、22を任意の中間開度位置に回転操作することによって、冷風バイパス通路18を通過する冷風とヒータコア17で加熱されて温風通路19を流れる温風との風量割合が調節される。
【0040】
混合空間20は、ヒータコア17よりも上方側の部位に、前述の冷風バイパス通路18を通過した冷風および温風通路19を通過した温風が流入できるように配置されている。そして、混合空間20において、冷風バイパス通路18から流入した冷風と温風通路19から流入した温風とが混合されて、車室内に吹き出される空調風の温度調整がなされる。従って、第1、第2エアミックスドア21、22の開度位置を調整することによって、空調風の温度を所望温度に調整することができる。
【0041】
ケース14の最上部にはデフロスタ開口部23が配置されている。デフロスタ開口部23は、デフロスタダクト(図示せず)を介して車室内に配置されたデフロスタ吹出口(図示せず)に接続され、デフロスタ吹出口から車両窓ガラスの内面に向けて空調風(主に温風)が吹き出される。
【0042】
デフロスタ開口部23の後方側にはフェイス開口部24が配置されている。このフェイス開口部24は、フェイスダクト(図示せず)を介して車室内に配置されたフェイス吹出口(図示せず)に接続され、フェイス吹出口から前席乗員の上半身側に向けて空調風(主に冷風)が吹き出される。
【0043】
混合空間20後方側におけるケース14両側面部にはフット開口部25が配置されている。このフット開口部25には下方へ垂下するフットダクト(図示せず)が接続され、このフットダクトの下端部のフット吹出口から前席乗員の足元部に空気を吹き出すようになっている。
【0044】
これら各開口部23〜25は、図示しない吹出モード切換ドアによって開閉される。吹出モード切換ドアは、図示しない電気式アクチュエータに連結されて回転操作される。吹出モード切換ドアを手動操作機構に連結して回転操作するようにしてもよい。
【0045】
空調制御装置(図示せず)は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。図示しない車両エンジンのスタートスイッチ(イグニッションスイッチ)の投入状態において空調操作パネルのオートスイッチ(図示せず)が投入されると空調制御装置がROMに記憶している空調装置制御プログラムが実行される。
【0046】
空調装置制御プログラムが実行されると、空調操作パネルの操作信号や各種空調用センサ群により検出された検出信号が読込まれる。そして、これらの信号に基づいて、送風機13により送風される空気の目標送風量、内外気モード、吹出モード、第1、第2エアミックスドア21、22の目標開度、圧縮機の作動等を決定し、決定した制御状態が得られるように各種アクチュエータに制御信号を出力する。
【0047】
ここで、吹出モードは、あらかじめ空調制御装置に記憶された制御マップを参照して決定され、フェイスモード、バイレベルモード、フットモードへと順次切替える。また、空調操作パネルの吹出モードスイッチ(図示せず)が手動操作された場合は、操作信号に応じて、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フット・デフモードおよびデフロスタモードに切替えられる。
【0048】
フェイスモードは、フェイス吹出口から乗員の上半身側に向けて空調風を吹き出すモードである。このフェイスモードでは、吹出モード切換ドアがデフロスタ開口部23およびフット開口部25を全閉し、フェイス開口部24を全開する。
【0049】
なお、フェイスモードでは、主にフェイス吹出口から冷風を吹き出すため、第1、第2エアミックスドア21、22を最大冷房位置(図2の実線位置)にして、冷風バイパス通路18を全開する。もちろん、第1、第2エアミックスドア21、22を中間開度位置にして混合空間20で冷風と温風を混合した空調風をフェイス吹出口から吹き出してもよい。
【0050】
バイレベルモードは、フェイス吹出口から乗員の上半身側に向けて空調風を吹き出し、同時に、フット吹出口から乗員の足元側に向けて空調風を吹き出すモードである。このバイレベルモードでは、吹出モード切換ドアがデフロスタ開口部23を全閉し、フェイス開口部24およびフット開口部25の双方を同程度の中間開度にする。
【0051】
なお、バイレベルモードでは、乗員の好みに応じた温度の空調風をフェイス吹出口、フット吹出口から吹き出すために、第1、第2エアミックスドア21、22の位置は中間開度位置となる。
【0052】
次に、フットモードは、主にフット吹出口から乗員の足元側に向けて空調風を吹き出すモードである。このフットモードでは吹出モード切換ドアがデフロスタ開口部23を僅かに開き、フェイス開口部24を全閉し、フット開口部25を全開する。
【0053】
フットモードは、主として車両外気温が低くなっているときに選択されるので、車両窓ガラスの曇り防止のために、デフロスタ開口部23を僅かに開いた状態になっている。本実施形態では、デフロスタ開口部23の開度を、全開状態に対して2割程度の開度にしている。
【0054】
なお、フットモードでは、主にフット吹出口から温風を吹き出すため、第1、第2エアミックスドア21、22を最大暖房位置(図1の2点鎖線位置)にして、冷風バイパス通路18を全閉する。もちろん、中間開度位置にして混合空間20で冷風と温風を混合した空調風を吹き出してもよい。
【0055】
フット・デフモードは、デフロスタ吹出口およびフット吹出口から同時に車両窓ガラス側および乗員の足元側に向けて空調風を吹き出すモードである。このフット・デフモードでは、吹出モード切換ドアがデフロスタ開口部23を半分程度開き、フェイス開口部24を全閉し、フット開口部25を全開する。
【0056】
なお、フット・デフモードは、乗員の操作によって選択されるモードなので、乗員の好みに応じた温度の空調風をデフロスタ吹出口およびフット吹出口から吹き出すために、第1、第2エアミックスドア21、22の位置は中間開度位置となる。
【0057】
デフロスタモードは、デフロスタ吹出口に向けて空調風を吹き出して車両窓ガラスの曇りを防止するモードである。このデフロスタモードでは、吹出モード切換ドアがデフロスタ開口部23を全開し、フェイス開口部24およびフット開口部25を全閉する。
【0058】
次に、本実施形態の特徴であるケース14の嵌合構造を図3〜図5に基づいて説明する。図3に示すように、左側ケース部材14aと右側ケース部材14bとの嵌合部は、一対の嵌合溝30および嵌合突起31で構成されている。本例では、嵌合溝30が左側ケース部材14aに形成され、嵌合突起31が右側ケース部材14bに形成されている。
【0059】
そして、図4に示すように、嵌合溝30と嵌合突起31との嵌合により左側ケース部材14aと右側ケース部材14bとが結合されてケース14の上側ケース部材が構成される。左側ケース部材14aと右側ケース部材14bは、例えば、爪部(図示せず)および爪部が係合する係合部(図示せず)などで構成される固定構造により嵌合状態で固定される。この固定構造は、嵌合部30、31の長手方向に適宜間隔で配置されている。
【0060】
同様に、上側ケース部材14a、14bと下側ケース部材14cとの嵌合部は、一対の嵌合溝32および嵌合突起33で構成されている。本例では、嵌合溝32が上側ケース部材14a、14bに形成され、嵌合突起33が下側ケース部材14cに形成されている。
【0061】
そして、図5に示すように、嵌合溝32と嵌合突起33との嵌合により上側ケース部材14a、14bと下側ケース部材14cとが結合されてケース14が構成される。上側ケース部材14a、14bと下側ケース部材14cは、例えば、爪部および爪部に係合する係合部で構成される固定構造により嵌合状態で固定される。この固定構造は、上側ケース部材14a、14bと下側ケース部材14cとの嵌合部32、33の長手方向に適宜間隔で配置されている。
【0062】
図示の都合上、図1、図3〜図5では、嵌合部32、33の長手方向に適宜間隔で配置される固定構造のうち、上下両ケース部材の嵌合部32、33と左右両ケース部材の嵌合部30、31とがT字状に当接する部位に配置される固定構造35のみを示している。
【0063】
図3〜図5において、左側ケース部材14aと右側ケース部材14bとをその嵌合方向(本例では、車両左右方向)に寄せ合わせる寄せ構造34は、左側ケース部材14aと一体成形された第1寄せ部34aと、右側ケース部材14bと一体成形された第2寄せ部34bと、下側ケース部材14cと一体成形された第3寄せ部34cおよび第4寄せ部34dとで構成されている。
【0064】
本例では、第1〜第4寄せ部34a〜34dを、上下両ケース部材の嵌合部32、33よりもケース外方側に配置している。第1、第2寄せ部34a、34bは、上方側から下方側に向かうにつれて車両左右方向中央側に向かうように傾斜する傾斜面を有している。
【0065】
換言すれば、第1、第2寄せ部34a、34bの傾斜面は、上下両ケース部材の嵌合方向側に向かうにつれて左右両ケース部材の嵌合方向側に向かうように傾斜している。そして、第3寄せ部34cは第1寄せ部34aの傾斜面に対応する傾斜面を有し、第4寄せ部34dは第2寄せ部34bの傾斜面に対応する傾斜面を有している。
【0066】
固定構造35は、第1、第2寄せ部34a、34bの間に配置された爪部35aと、をし、第3、第4寄せ部34a、34bの間に配置されて爪部35aと係合する係合部35bとで構成されている。
【0067】
爪部35aは、左側ケース部材14a側の部位と右側ケース部材14b側の部位とに分割されて左右両ケース部材14a、14bと一体成形されている。係合部35bは下側ケース部材14cと一体成形されている。
【0068】
なお、本例では、爪部35aおよび係合部35bを、上下両ケース部材の嵌合部32、33よりもケース外方側に配置している。また、本例では、寄せ構造34と固定構造35とを隣接させて一体に設けた構造(一体構造)にしている。
【0069】
本実施形態によると、図5に示すように上側ケース部材14a、14bを下側ケース部材14cにその嵌合方向(本例では、車両上下方向)に組み付けると、第1、第2寄せ部34a、34bの傾斜面が第3、第4寄せ部34c、34dの傾斜面に押圧される。
【0070】
これにより、上下両ケース部材の嵌合方向の組み付け力F1が左右両ケース部材14a、14bをその嵌合方向(本例では、車両左右方向)に寄せ合わせる組み付け力F2、F3に変換されるので、左右両ケース部材14a、14bをその嵌合方向に良好に寄せ合わせることができる。
【0071】
そして、上下両ケース部材が嵌合して爪部35aと係合部35bとが係合することによって、左右両ケース部材14a、14bを良好に寄せ合わせた状態で固定することができる。
【0072】
その結果、左右両ケース部材14a、14bを寄せ合わせる力F2、F3の反発力や室内ユニットを車室内に取り付けた際の歪み等によって左右両ケース部材14a、14bの嵌合部30、31に隙間が発生することを抑制できる。
【0073】
しかも、第1〜第4寄せ部34a〜34dを上下両ケース部材の嵌合部32、33よりもケース外方側に配置しているので、上記従来技術(特許文献1)のように上下両ケース部材の嵌合部32、33自体をその嵌合方向(本例では、車両上下方向)に屈曲させる必要がない。そのため、上記従来技術に比べて上下両ケース部材の嵌合部32、33における隙間の発生をより抑制できる。
【0074】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、3つの分割ケース部材14a、14b、14cの嵌合部に本発明を適用しているが、本第2実施形態では、図6に示すように、4つの分割ケース14a、14b、14c、14dの嵌合部に本発明を適用している。
【0075】
本実施形態では、上側ケース部材を左側ケース部材14aと右側ケース部材14bと中央ケース部材14dの3つのケース部材に分割して形成し、これら3つのケース部材14a、14b、14dを嵌合溝30と嵌合突起31との嵌合により結合することで構成している。そして、爪部35aを中央ケース部材14dと一体形成している。
【0076】
これにより、上記第1実施形態の同様の作用効果を得ることができる。すなわち、4つの分割ケース14a、14b、14c、14dの嵌合部に隙間が発生することを防止できる。このように、本発明は、4つ以上の分割ケース部材の嵌合部にも適用可能である。
【0077】
(第3実施形態)
上記各実施形態では、第1、第2寄せ部34a、34bのうち第3、第4寄せ部34c、34dとの当接部が上下両ケース部材の嵌合方向に対して傾斜した傾斜面になっているが、本第3実施形態では、図7に示すように、当該当接部が上下両ケース部材の嵌合方向と平行な面になっている。
【0078】
なお、図7の例では、上側ケース部材を左側ケース部材14aと右側ケース部材14bの2つのケース部材で構成している。また、図7では、図示の都合上、固定構造35を省略している。
【0079】
本実施形態においても上記第1実施形態の同様の作用効果を得ることができる。このように、第1〜第4寄せ部34a〜34dは、上下両ケース部材の嵌合方向の組み付け力F1を、左右両ケース部材をその嵌合方向に寄せ合わせる組み付け力F2、F3に変換できる形状であれば、傾斜面であっても平行面であってもよく、さらにはそれ以外の形状であってもよい。
【0080】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、第1〜第4寄せ部34a〜34dを上下両ケース部材の嵌合部32、33よりもケース外方側に突出させているが、これとは逆に、第1〜第4寄せ部34a〜34dを上下両ケース部材の嵌合部32、33よりもケース内方側に突出させてもよい。
【0081】
また、上記各実施形態では、爪部35aを上側ケース部材14a、14bに形成し、係合部35bを下側ケース部材14cに形成しているが、これとは逆に、爪部35aを下側ケース部材14cに形成し、係合部35bを上側ケース部材14a、14bに形成してもよい。
【0082】
また、上記各実施形態では、寄せ構造34と固定構造35とを隣接させて一体に設けた構造(一体構造)にしているが、寄せ構造34と固定構造35とを離間させて別々に設けた構造(別構造)にしてもよい。
【0083】
また、上記各実施形態では、寄せ構造34および固定構造35を各ケース部材14a〜14dと一体形成しているが、寄せ構造34および固定構造35を各ケース部材14a〜14dと別体に形成してもよい。
【0084】
また、上記各実施形態は、本発明の適用例を例示したものに過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記各実施形態では本発明を車両用空調装置に適用しているが、据え置き型の空調装置等、種々の空調装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施形態における車両用空調装置の室内ユニットの斜視図である。
【図2】図1の空調ユニットの断面図である。
【図3】図1のケースの嵌合部の正面図であり、嵌合前の状態を示している。
【図4】図1のケースの嵌合部の正面図であり、左側ケース部材と右側ケース部材とを嵌合した状態を示している。
【図5】図1のケースの嵌合部の正面図であり、上側ケース部材と下側ケース部材とを嵌合した状態を示している。
【図6】本発明の第2実施形態におけるケースの嵌合部の模式的な正面図である。
【図7】本発明の第3実施形態におけるケースの嵌合部の模式的な正面図である。
【符号の説明】
【0086】
14 ケース
14a 左側ケース部材(第1ケース部材)
14b 右側ケース部材(第2ケース部材)
14c 下側ケース部材(第3ケース部材)
32 嵌合溝(嵌合部)
33 嵌合突起(嵌合部)
34 寄せ構造
34a 第1寄せ部
34b 第2寄せ部
34c 第3寄せ部
34d 第4寄せ部
35 固定構造
35a 爪部
35b 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内への送風空気が通る空気通路を形成するケース(14)が少なくとも第1ケース部材(14a)、第2ケース部材(14b)、および第3ケース部材(14c)に分割して形成され、
前記第1ケース部材(14a)と前記第2ケース部材(14b)とが第1の方向に嵌合し、前記第1、第2ケース部材(14a、14b)と前記第3ケース部材(14c)とが前記第1の方向と交差する第2の方向に嵌合する空調装置のケース嵌合構造であって、
前記第1、第2ケース部材(14a、14b)を前記第3ケース部材(14c)に前記第2の方向に嵌合させて組み付ける際に前記第2の方向の組み付け力を前記第1の方向の組み付け力に変換して前記第1、第2ケース部材(14a、14b)を前記第1の方向に寄せ合わせる寄せ構造(34)を備え、
前記寄せ構造(34)は、前記第1、第2ケース部材(14a、14b)と前記第3ケース部材(14c)との嵌合部(32、33)よりもケース内方側またはケース外方側に配置されていることを特徴とする空調装置のケース嵌合構造。
【請求項2】
前記寄せ構造(34)は、
前記第1ケース部材(14a)に形成された第1寄せ部(34a)と、
前記第2ケース部材(14b)に形成された第2寄せ部(34b)と、
前記第1寄せ部(34a)に対応して前記第3ケース部材(14c)に形成された第3寄せ部(34c)と、
前記第2寄せ部(34a、34b)に対応して前記第3ケース部材(14c)に形成された第4寄せ部(34d)とを有していることを特徴とする請求項1に記載の空調装置のケース嵌合構造。
【請求項3】
前記第1寄せ部(34a)は、前記嵌合部(32、33)よりも前記ケース内方側または前記ケース外方側に突出するように前記第1ケース部材(14a)と一体成形され、
前記第2寄せ部(34b)は、前記嵌合部(32、33)よりも前記ケース内方側または前記ケース外方側に突出するように前記第2ケース部材(14b)と一体成形され、
前記第3、第4寄せ部(34c、34d)は、前記嵌合部(32、33)よりも前記ケース内方側または前記ケース外方側に突出するように前記第3ケース部材(14c)と一体成形されていることを特徴とする請求項2に記載の空調装置のケース嵌合構造。
【請求項4】
前記第1、第2ケース部材(14a、14b)と前記第3ケース部材(14c)とを嵌合状態で固定する固定構造(35)を備え、
前記固定構造(35)は、前記第1、第3寄せ部(34a、34c)と前記第2、第4寄せ部(34b、34d)との間に配置されていることを特徴とする請求項2または3に記載の空調装置のケース嵌合構造。
【請求項5】
前記固定構造(35)は、前記第1、第2ケース部材(14a、14b)に形成された爪部(35a)と、前記第3ケース部材(14c)に形成されて前記爪部(35a)と係合する係合部(35b)とを有し、
前記爪部(35a)は前記第1、第2ケース部材(14a、14b)と一体成形され、
前記係合部(35b)は前記第3ケース部材(14c)と一体成形されていることを特徴とする請求項4に記載の空調装置のケース嵌合構造。
【請求項6】
前記固定構造(35)は、前記第3ケース部材(14c)に形成された爪部(35a)と、前記第1、第2ケース部材(14a、14b)に形成されて前記爪部(35a)と係合する係合部(35b)とを有し、
前記爪部(35a)は前記第3ケース部材(14c)と一体成形され、
前記係合部(35b)は前記第1、第2ケース部材(14a、14b)と一体成形されていることを特徴とする請求項4に記載の空調装置のケース嵌合構造。
【請求項7】
室内への送風空気が通る空気通路を形成するケース(14)が少なくとも3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)および1つのケース部材(14c)に分割して形成され、
前記3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)が第1の方向に嵌合し、前記3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)と前記1つのケース部材(14c)とが前記第1の方向と交差する第2の方向に嵌合する空調装置のケース嵌合構造であって、
前記3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)を前記1つのケース部材(14c)に前記第2の方向に嵌合させて組み付ける際に前記第2の方向の組み付け力を前記第1の方向の組み付け力に変換して前記3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)を前記第1の方向に寄せ合わせる寄せ構造(34)を備え、
前記寄せ構造(34)は、前記3つ以上のケース部材(14a、14b、14d)と前記1つのケース部材(14c)との嵌合部(32、33)よりもケース内方側またはケース外方側に配置されていることを特徴とする空調装置のケース嵌合構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−298292(P2009−298292A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155000(P2008−155000)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】