説明

空調装置

【課題】 高いエネルギ効率で室内の空調運転が行えるコンパクトな空調装置を提供する。
【解決手段】 室内から吸気路9へ吸引した空気をその吸気路9に設けられた加熱器1にて加熱して室内に通風するように加熱循環作動自在の循環手段2と、吸気路9に設けられた加熱器1を通流した空気の一部を排気路10を通流させて排気する排気作動自在の排気手段3とが設けられている空調装置20であって、吸気路9を通流する空気を除湿し、且つ、排気路10を通流する空気によって再生される除湿作動自在なデシカントロータ4が、室内から吸引された空気を除湿した後で加熱器1へ通流させるように、吸気路9と排気路10とに渡って設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内から吸気路へ吸引した空気をその吸気路に設けられた加熱器にて加熱して室内に通風するように加熱循環作動自在の循環手段と、吸気路に設けられた加熱器を通流した空気の一部を排気路を通流させて排気する排気作動自在の排気手段とが設けられている空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる空調装置は、浴室などに設置されて浴室暖房乾燥機として用いられることがあり、入浴前に予め浴室内を暖房しておくための暖房運転や、浴室内のカビや結露の発生を抑えるための乾燥運転や、浴室内の空気を入れ換えるための換気運転を行うために活用されている。図5に例示する従来の空調装置100では、循環手段としての循環ファン101によって室内102から吸引された空気が、吸気路103に設けられた加熱器104を通流した後でルーバ105から室内に吹き出され、且つ、吸引されて加熱器を通流した空気の一部が排気手段としての排気ファン106によって排気路107に引き込まれて排気されるように構成されている。そして、この空調装置100を暖房運転させるときには、加熱器104を加熱作動させた状態で循環ファン101を作動させてルーバ105を開放することで、室内から吸引した空気が昇温された後で室内に吹き出されるようにしている。また、この空調装置100を乾燥運転させるときには、加熱器104を加熱作動させた状態で循環ファン101を作動させてルーバ105を開放し、且つ、排気ファン106を作動させることで、室内102から吸引した空気が昇温されると共に湿度が低下した後で室内に吹き出され、且つ、室内102から吸引した湿度の高い空気の一部が外部に排気されるようにしている。また更に、この空調装置100を換気運転するときには、排気ファン106を作動させることで、室内102から吸引した空気が外部に排気されるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−289450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の空調装置では、室内の暖房運転と乾燥運転と換気運転とが行えるように構成されているものの、その乾燥運転は、暖房運転と換気運転とを組み合わせただけであり、室内から吸引された空気の水蒸気を積極的に除湿する構成とはなっていない。そのため、室内の乾燥運転の効果が不十分なものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、高いエネルギ効率で室内の乾燥運転が行えるコンパクトな空調装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る空調装置の第1特徴構成は、室内から吸気路へ吸引した空気をその吸気路に設けられた加熱器にて加熱して前記室内に通風するように加熱循環作動自在の循環手段と、前記吸気路に設けられた前記加熱器を通流した空気の一部を排気路を通流させて排気する排気作動自在の排気手段とが設けられている空調装置であって、前記吸気路を通流する空気を除湿し、且つ、前記排気路を通流する空気によって再生される除湿作動自在なデシカントロータが、前記室内から吸引された空気を除湿した後で前記加熱器へ通流させるように、前記吸気路と前記排気路とに渡って設けられている点にある。
【0007】
上記第1特徴構成によれば、室内から吸引された空気を除湿した後で加熱器へ通流させるように、吸気路と排気路とに渡って設けられているデシカントロータが、吸気を通流する空気を除湿し、且つ、排気路を通流する空気によって再生されるように作動する。
つまり、室内の乾燥運転を行うときには、上記加熱器、上記循環手段、上記デシカントロータ、及び、上記排気手段を併せて作動させることで、デシカントロータにおいて、室内から吸引された空気に含まれる湿気が液体から気体へと凝縮されると共に、凝縮した水分量に応じて凝縮熱によって空気が暖められ、次に加熱器にて加熱されて、暖房用の空気として室内に吹き出されることになる。その結果、デシカントロータによって積極的に除湿を行いながら空気の昇温が行われ、その後、加熱器において空気の加熱を行うように、デシカントロータと加熱器とをコンパクトに収容した上で上述のように連動させて運転させているので、室内の空気を暖めるために要するエネルギを低く抑えることが可能となる。
従って、高いエネルギ効率で室内の乾燥運転が行えるコンパクトな空調装置が提供されることになる。
【0008】
本発明に係る空調装置の第2特徴構成は、上記第1特徴構成に加えて、前記排気手段、前記循環手段、及び、前記デシカントロータの作動を制御する制御手段が、前記加熱器を加熱作動させながら前記循環手段を作動させる暖房運転と、前記加熱器を加熱作動させながら前記排気手段と前記循環手段と前記デシカントロータとを作動させる乾燥運転と、前記排気手段を作動させる換気運転とを切替自在に構成されている点にある。
【0009】
上記第2特徴構成によれば、制御手段が、加熱器を加熱作動させながら循環手段を作動させることで室内の暖房運転が行われ、加熱器を作動させながら排気手段と循環手段とデシカントロータとを除湿作動させることで室内の乾燥運転が行われ、排気手段を排気作動させることで室内の排気運転が行われることになり、これら暖房運転と乾燥運転と排気運転とが自在に切り替えられるようになる。その結果、暖房運転と乾燥運転と排気運転とを行うことができる空調装置をコンパクトな構成としながらも、室内の環境を快適に保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の空調装置20について説明する。
図1に示す空調装置20には、室内から吸気路9へ吸引した空気をその吸気路9に設けられた加熱器1にて加熱して室内に通風するように加熱循環作動自在の循環手段としての循環ファン2と、吸気路9に設けられた加熱器1を通流した空気の一部を排気路10を通流させて排気する排気作動自在の排気手段としての排気ファン3と、吸気路9を通流する空気を除湿し、且つ、排気路10を通流する空気によって再生される除湿作動自在であり、室内から吸引された空気を除湿した後で加熱器1へ通流させるように、吸気路9と排気路10とに渡って設けられているデシカントロータ4とが設けられている。
【0011】
加熱器1は、外部の熱源機15にて加熱された熱媒が熱媒流入路11から流入し、熱媒流出路12からその熱源機15へと帰還するように構成されたものであり、流入した高温の熱媒が吸気路9を通流する空気に対して放熱を行うことで、吸気路9を通流する空気の加熱が行われるようになっている。従って、制御部13は、加熱器1を加熱作動させて、吸気路9を通流する空気を加熱させたいときには、熱源機15から加熱器1へと熱媒が流入するように制御し、加熱器1を加熱作動させないときには、熱源機15から加熱器1へと熱媒が流入しないように制御する。
【0012】
デシカントロータ4は、除湿材が充填されて回転可能に構成され、吸気路9を通流する空気と接触した除湿材が、その空気中に含まれる水蒸気を吸着して除湿し、その後、排気路4側へと回転され、排気路4を通流する空気と接触したときに、その空気へ水蒸気を引き渡して除湿材が再生されるように作用する。つまり、室内から吸気路9へ流入した空気中に含まれて除湿材で吸収された水蒸気は、排気路4で除湿材が再生されたときに、排気路10を通流する空気に引き渡されて屋外へと排気されることになる。
【0013】
そして、この空調装置20は、リモコン操作部14からの指令によって室内の乾燥運転、暖房運転と室内温度、及び、換気運転を切替自在に構成されている。図1に例示するのは、リモコン操作部14からの指令によって、制御部13が空調装置20を乾燥運転させている状態を示す図であり、図2に例示するのは制御部13が空調装置20を暖房運転させている状態を示す図であり、図3に例示するのは制御部13が空調装置20を換気運転させている状態を示す図である。
【0014】
図1に示した空調装置20の乾燥運転について説明すると、制御部13は、熱源機15から熱媒を流入させることで加熱器1を加熱作動させながら、排気ファン3と循環ファン2とデシカントロータ4とを作動(除湿作動)させている。その結果、吸気口6を経て室内から吸気路9に流入した空気は、デシカントロータ4によって除湿され、加熱器1によって加熱された後、ルーバ5で風向を制御されながら吹出口7から室内へと吹き出される。また、デシカントロータ4によって除湿され、加熱器1によって加熱された空気の一部は、排気ファン3が作動することによって生じる吸引力によって排気路10に流入し、デシカントロータ4と接触した後で排気口8から屋外へと排気される。そして、デシカントロータ4によって除湿され、加熱器1によって加熱された空気とデシカントロータ4とが接触するとき、温度の高い乾燥した空気と水蒸気を含んだ除湿材とが接触することになるため、その除湿材の再生が行われることになり、同時に屋外へ排出される空気の湿度が上昇することになる。
【0015】
図2に示した空調装置20の暖房運転について説明すると、制御部13は、熱源機15から熱媒を流入させることで加熱器1を加熱作動させながら循環ファン2を作動(暖房作動)させている。このとき、デシカントロータ4と排気ファン3とは作動していない。その結果、吸気口6を経て室内から吸気路9に流入した空気は、加熱器1によって加熱された後、ルーバ5で風向を制御されながら吹出口7から室内へと吹き出される暖房運転が行われる。
【0016】
図3に示した空調装置20の換気運転について説明すると、制御部13は、排気ファン3を作動(換気作動)させている。このとき、熱源機15から加熱器1への熱媒の流入は行われず、デシカントロータ4及び循環ファン2は作動されず、ルーバ5は閉じられている。その結果、排気ファン3の吸引力が作動することによって生じる吸引力によって吸気口6を経て室内から吸気路9に流入された空気は、排気路10を経て排気口8から屋外に排出されることになる。
【0017】
以上のように、制御部13が、加熱器1を加熱作動させながら循環ファン2を作動させることで室内の暖房運転が行われ、加熱器1を作動させながら排気ファン3と循環ファン2とデシカントロータ4とを除湿作動させることで室内の乾燥運転が行われ、排気ファン3を排気作動させることで室内の排気運転が行われることになり、これら暖房運転と乾燥運転と排気運転とが自在に切り替えられるようになる。
【0018】
また、室内の乾燥運転を行うときには、上記加熱器1、上記循環ファン2、上記デシカントロータ4、及び、上記排気ファン3を併せて作動させることで、デシカントロータ4において、室内から吸引された空気に含まれる湿気が液体から気体へと凝縮されると共に、凝縮した水分量に応じて凝縮熱によって空気が暖められ、次に加熱器1にて加熱されて、暖房用の空気として室内に吹き出されることになる。つまり、単に加熱器1において空気の加熱を行うだけでなく、デシカントロータ4によって空気の昇温が行われるようになっているので、室内の空気を暖めるために要するエネルギを低く抑えることが可能となる。
【0019】
次に、図1に例示した本発明のデシカントロータ4を備えている空調装置20を乾燥運転させたときの効果が、図4に例示するデシカントロータ4を備えていない従来型の空調装置30を乾燥運転させたときの効果を上回っていることを表1から表3に示すシミュレーション結果に基づいて説明する。詳細には、デシカントロータ4を備えている空調装置20と、デシカントロータ4を備えていない空調装置30とを用いて、洗濯物が干されている浴室内の乾燥運転を行ったとき、乾燥運転開始直後と、洗濯物から水分が蒸発して湿度が最高になった時点と、その後の乾燥運転途中での室内温度、相対湿度、及び、絶対湿度を比較している。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
表1から表3において明らかであるように、本発明のデシカントロータ4を備えている空調装置20を運転させたときの方が、絶対湿度(空気1kg中に含まれる水蒸気の量)が小さくなっており、デシカントロータ4によって積極的に除湿を行った効果が顕著に表れている。
【0024】
また、図1に例示した本発明のデシカントロータ4を備えている空調装置20を乾燥運転させるときに要するエネルギが、図4に例示するデシカントロータ4を備えていない従来型の空調装置30を乾燥運転させるときに要するエネルギよりも低くなることについて表4に示すように両者を比較して説明する。
【0025】
【表4】

【0026】
表4及び表1から明らかであるように、30℃の空気を50℃にまで昇温しようとしたとき、デシカントロータ4の直後の空気の温度が44℃にまで昇温されているので、加熱器1では、50℃−44℃=6℃昇温させるだけの加熱を行えばよい。他方で、デシカントロータ4を備えていない従来の空調装置30では、加熱器1において50℃−30℃=20℃昇温させるだけの加熱を行わねばならない。このように、本発明の空調装置20では、デシカントロータ4において水分を凝縮させることに伴う空気の温度上昇により、加熱器1で必要となるエネルギ量を小さくすることが可能となる。
【0027】
また、表4及び表2から明らかであるように、40℃の空気を60℃にまで昇温しようとしたとき、デシカントロータ4の直後の空気の温度が52℃にまで昇温されているので、加熱器1では、60℃−52℃=8℃昇温させるだけの加熱を行えばよい。他方で、デシカントロータ4を備えていない従来の空調装置30では、加熱器1において60℃−40℃=20℃昇温させるだけの加熱を行わねばならない。
同様に、表4及び表3から明らかであるように、45℃の空気を65℃にまで昇温しようとしたとき、デシカントロータ4の直後の空気の温度が55℃にまで昇温されているので、加熱器1では、65℃−55℃=10℃昇温させるだけの加熱を行えばよい。他方で、デシカントロータ4を備えていない従来の空調装置30では、加熱器1において65℃−45℃=20℃昇温させるだけの加熱を行わねばならない。
【0028】
以上のように、デシカントロータ4において、室内から吸引された空気に含まれる湿気が液体から気体へと凝縮されると共に凝縮した水分量に応じて空気が暖められ、次に加熱器1にて加熱されて、暖房用の空気として室内に吹き出されることになることで、単に加熱器1において空気の加熱を行うだけでなく、デシカントロータ4によって空気の昇温が行われるようになっているので、室内の空気を暖めるために要するエネルギを低く抑えることが可能となる。
【0029】
<別実施形態>
<1>
上記実施形態では、浴室の空調を行う場合について説明したが、脱衣室やトイレなどの浴室以外の部屋に本発明の空調装置を設置してもよく、その場合にも脱衣室やトイレなどの室内の暖房運転、乾燥運転、及び、換気運転を同様に行うことができる。
【0030】
<2>
上記実施形態では、吸気路に設けられる加熱器として熱媒循環式の熱交換器を採用した形態について説明したが、電気式のヒータなど他の装置を採用した加熱器を用いて空調装置を実現してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の空調装置の概略的な縦断側面図
【図2】本発明の空調装置の概略的な縦断側面図
【図3】本発明の空調装置の概略的な縦断側面図
【図4】比較例の空調装置の概略的な縦断側面図
【図5】従来の空調装置の縦断側面図
【符号の説明】
【0032】
1 加熱器
2 循環ファン(循環手段)
3 排気ファン(排気手段)
4 デシカントロータ
9 吸気路
10 排気路
20 空調装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内から吸気路へ吸引した空気をその吸気路に設けられた加熱器にて加熱して前記室内に通風するように加熱循環作動自在の循環手段と、前記吸気路に設けられた前記加熱器を通流した空気の一部を排気路を通流させて排気する排気作動自在の排気手段とが設けられている空調装置であって、
前記吸気路を通流する空気を除湿し、且つ、前記排気路を通流する空気によって再生される除湿作動自在なデシカントロータが、前記室内から吸引された空気を除湿した後で前記加熱器へ通流させるように、前記吸気路と前記排気路とに渡って設けられている空調装置。
【請求項2】
前記排気手段、前記循環手段、及び、前記デシカントロータの作動を制御する制御手段が、前記加熱器を加熱作動させながら前記循環手段を作動させる暖房運転と、前記加熱器を加熱作動させながら前記排気手段と前記循環手段と前記デシカントロータとを除湿作動させる乾燥運転と、前記排気手段を排気作動させる換気運転とを切替自在に構成されている請求項1記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−52903(P2006−52903A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−235447(P2004−235447)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】