説明

空調装置

【課題】空調ケース内での通気抵抗の増加を招くことなく、光触媒による熱交換器における脱臭を可能とする空調装置を提供する。
【解決手段】空調ケース110内に送風される空調用空気を冷却する冷却用熱交換器150と、冷却用熱交換器150の表面に設けられて、空調用空気に含まれる臭い成分を分解する光触媒160と、光触媒160を活性化させるための光を放射する放射部171〜176とを備える空調装置において、空調ケース110に、冷却用熱交換器150の上流側または下流側で空調用空気の流れ方向を変更させる曲げ部112、112Aを設け、放射部171〜176を、曲げ部112、112Aの形成される壁部に設け、放射部171〜176から放射される光は、壁部のうち、冷却用熱交換器150と対向する壁部115、115A、116から放射されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば空調用空気を冷却する熱交換器に光触媒を用いた空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調用の熱交換器に光触媒を用いた車両用空気調和装置として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1の空気調和装置においては、ケース内には、ブロワによってケース内に流通される空調用空気を冷却するためのエバポレータが設けられており、また、エバポレータの空気流れの上流側には脱臭フィルタが設けられている。脱臭フィルタには、吸着剤と光触媒とが設けられており、また、エバポレータの表面には光触媒が付着されている。また、エバポレータと脱臭フィルタとの間には、紫外線ランプが設けられている。
【0003】
引用文献1では、紫外線ランプは、ブロワの稼働中常に、または間隔をおいて周期的に点灯され、脱臭フィルタに向けて放射された紫外線によって、脱臭フィルタの光触媒は、励起されて、吸着剤に吸着された臭気物質が分解されるようになっている。そして、エバポレータに向けて放射された紫外線によって、エバポレータの光触媒が励起され、エバポレータ表面の細菌が殺菌されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−255257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、ケースの途中部位に紫外線ランプが設けられるようになっているので、ケース内を流通する空調用空気の抵抗となっており、ブロワによる送付能力低下の要因となっている。
【0006】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、空調ケース内での通気抵抗の増加を招くことなく、光触媒による熱交換器における脱臭を可能とする空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
請求項1に記載の発明では、空調ケース(110)内の空気通路(111)を横断するように配設されて、空調ケース(110)内に送風される空調用空気を冷却する冷却用熱交換器(150)と、
冷却用熱交換器(150)の表面に設けられて、空調用空気に含まれる臭い成分を分解する光触媒(160)と、
光触媒(160)を活性化させるための光を放射する放射部(171〜176)とを備える空調装置において、
空調ケース(110)は、冷却用熱交換器(150)の上流側または下流側で、空調用空気の流れ方向を変更させる曲げ部(112、112A)を有しており、
放射部(171〜176)は、曲げ部(112、112A)の形成される壁部に設けられ、
放射部(171〜176)から放射される光は、壁部のうち、冷却用熱交換器(150)と対向する壁部(115、115A、116)から放射されるようにしたことを特徴としている。
【0009】
この発明によれば、放射部(171〜176)は、空調ケース(110)の曲げ部(112、112A)の形成される壁部に配設されるので、空調ケース(110)内において空気通路(111)を横断することがない。よって、放射部(171〜176)による空調ケース(110)内での通気抵抗の増加を招くことなしに、光触媒(160)による冷却用熱交換器(150)における脱臭を行うことができる。そして、放射部(171〜176)から放射される光は、壁部のうち、冷却用熱交換器(150)と対向する壁部(115、115A、116)から放射されるので、冷却用熱交換器(150)の表面に設けられた光触媒(160)に対して光を効果的に放射することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、曲げ部(112、112A)の形成される壁部は、曲面を成しており、
放射部(171〜176)は、壁部の曲面に沿うように形成されたことを特徴としている。
【0011】
この発明によれば、曲げ部(112、112A)の形成される壁部が曲面を成すように形成される場合に、放射部(171〜176)は、壁部の曲面に沿うように形成されるので、空調ケース(110)内において放射部(171〜176)が空気通路(111)内に張出すことがない。よって、放射部(171〜176)による空調ケース(110)内での通気抵抗の増加を招くことがないという効果を維持したまま、光触媒(160)による冷却用熱交換器(150)における脱臭を行うことができる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、冷却用熱交換器(150)は、曲げ部(112、112A)よりも空調用空気の下流側に配設され、
放射部(171〜176)は、冷却用熱交換器(150)の空調用空気流れの上流側に配設されたことを特徴としている。
【0013】
冷却用熱交換器(150)においては空調用空気中に含まれる臭い成分が、空調用空気流れの上流側で付着しやすい。よって、放射部(171〜176)を冷却用熱交換器(150)の空調用空気の上流側に配設することで、臭い成分の付着し易い部位に対して、放射部(171〜176)からの光をより多く放射できるので、光触媒(160)による臭い成分の分解効果を高めることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、放射部(171〜176)は、板状を成して板面全体から光を放射する面光源(172)、あるいは光源部(171a、173a〜175a)からの光を板面全体にわたって平行光にして放射する平行光光源(171、173〜176)であることを特徴としている。
【0015】
この発明によれば、放射部(171〜176)からの光を板面の全体から放射できるので、冷却用熱交換器(150)における光触媒(160)に対して光のムラがないように放射することができ、光触媒(160)による臭い成分の分解効果を高めることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、面光源(172)は、ELランプ(172)であることを特徴としている。
【0017】
この発明によれば、ELランプ(172)を用いることで、容易に、板状を成して板面全体から光を放射する面光源(172)とすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明では、平行光光源(171)は、光源部(171a)が平面状に、あるいは曲面状に複数、点在するように配置されて形成されたことを特徴としている。
【0019】
この発明によれば、所定の光源部(171a)が平面状に、あるいは曲面状に複数、点在されるように配置することで、容易に、所定の光源部(171a)からの光を板面全体にわたって複数の平行光にして放射する平行光光源(171)とすることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明では、平行光光源(173)は、光源部(173a)と、光源部(173a)から放射される光を背面から表面に放射する導光板(173c、173cA)とを備えることを特徴としている。
【0021】
この発明によれば、所定の光源部(173a)と導光板(173c、173cA)とを用いることで、容易に、所定の光源部(173a)からの光を板面全体にわたって複数の平行光にして放射する平行光光源(173)とすることができる。
【0022】
請求項8に記載の発明では、平行光光源(174)は、光源部(174a)と、光源部(174a)から放射される光を面全体に拡散させる拡散板(174b、174c)とを備えることを特徴としている。
【0023】
この発明によれば、所定の光源部(174a)と拡散板(174b、174c)とを用いることで、容易に、所定の光源部(174a)からの光を板面全体にわたって複数の平行光にして放射する平行光光源(174)とすることができる。
【0024】
請求項9に記載の発明のように、拡散板(174c)としては、レンズ(174c)を用いて好適である。
【0025】
請求項10に記載の発明では、平行光光源(175)は、光源部(175a)と、光源部(175a)から放射される光を反射させることで板面全体に拡散させる反射板(175b、175d)とを備えることを特徴としている。
【0026】
この発明によれば、所定の光源部(175a)と反射板(175b、175d)とを用いることで、容易に、所定の光源部(175a)からの光を板面全体にわたって複数の平行光にして放射する平行光光源(175)とすることができる。
【0027】
請求項11に記載の発明のように、反射板(175d)の反射面としては放物線状に形成して、所定の光源部(175c)を放物線の焦点位置に配置することで、焦点位置から放射される光源部(175c)の光を放物線状の反射板(175d)によって板面全体にわたる複数の平行光にして放射することが可能となる。
【0028】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態における空調装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】図1におけるIIから見た放射部を示す断面矢視図である。
【図3】第2実施形態における放射部を示す断面図である。
【図4】第3実施形態における放射部を示す断面図である。
【図5】図4における放射部の詳細を示す斜視図である。
【図6】図5の変形例を示す斜視図である。
【図7】第4実施形態における放射部を示す断面図である。
【図8】図7の変形例を示す断面図である。
【図9】第5実施形態における放射部を示す断面図である。
【図10】図9の変形例を示す断面図である。
【図11】第6実施形態における空調装置の全体構成を示す断面図である。
【図12】図11におけるXIIから見た放射部を示す断面矢視図である。
【図13】第7実施形態における放射部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0031】
(第1実施形態)
第1実施形態の空調装置100Aについて図1、図2を用いて以下説明する。図1は空調装置100Aの全体構成を示す断面図、図2は図1におけるIIから見た放射部171を示す断面矢視図である。
【0032】
空調装置100Aは、例えば自動車の車室内の空調を行う装置であり、空調ケース110、内外気切替ドア120、送風機130、脱臭フィルタ140、蒸発器150、光触媒160、および放射部171等を備えている。
【0033】
空調ケース110は、内部に空調用の空気が流通する空気通路111が形成されたケースであり、一端側に空調用空気の導入口として、内気導入口113、および外気導入口114が形成されている。内気導入口113は、車両の内部空気を導入する開口部であり、また、外気導入口114は、車両の外部空気を導入する開口部である。空調ケース110の一端側から他端側に向かう途中部分には、空調用空気の流れ方向を変更させる曲げ部112が形成されて、空調ケース110(空気通路111)は、L字状を呈している。空調ケース110がL字状を呈していることから、曲げ部112を形成する壁部は、平面によって形成された壁部となっている。
【0034】
内外気切替ドア120は、図1中の一点鎖線矢印のように回動することで内気導入口113、および外気導入口114を開閉する板状の開閉手段(板ドア)であり、開同軸は両導入口113、114の間に配置されている。内外気切替ドア120は、両導入口113、114を開閉することで、空調用の空気として、内気あるいは外気を選択するようになっている。
【0035】
送風機130は、モータによって駆動されるファン(例えばシロッコファン)を備えており、空調ケース110内において内外気切替ドア120の下流側に配設されている。送風機130は、内外気切替ドア120によって選択された内気あるいは外気を図1中の実線矢印のように空調ケース110内に吸入すると共に、吸入した空気を空調用空気として下流側となる蒸発器150側に送風する送風手段である。
【0036】
脱臭フィルタ140は、送風機130によって送風される空調用空気の臭い成分を吸着する吸着剤を備えるフィルタであり、空調ケース110内において、送風機130の下流側で、曲げ部112の上流側に、空気通路111を横断するように配設されている。吸着剤としては、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカゲル等の粉末が使用される。
【0037】
蒸発器150は、空調用空気を冷却する冷却用熱交換器であり、空調ケース110の曲げ部112の下流側に、空気通路111を横断するように配設されている。蒸発器150は、冷媒チューブとコルゲート状のアウターフィンとが交互に積層されて形成される熱交換部を有している。熱交換部の両端にはヘッダタンクが接続されている。熱交換部は、空気通路111の大半を横断するように配設されている。熱交換部の冷媒チューブ内には、低温低圧の冷媒が流通され、この冷媒が蒸発する際に、熱交換部を通過する空調用空気から蒸発潜熱を奪うことで、蒸発器150は空調用空気を冷却するようになっている。尚、蒸発器150を構成する各構成部材(冷媒チューブ、アウターフィン、およびヘッダタンク等)の表面には、抗菌剤が塗布されており(抗菌処理されており)、細菌の繁殖を防止するようになっている。
【0038】
光触媒160は、放射部171から放射される光を受けて活性化して、空調用空気中に含まれる臭い成分を分解する触媒であり、蒸発器150の表面(各構成部材の表面)全体に担持されている。光触媒160としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物の粉末、あるいは可視光活性型の光触媒(例えば特開2001−205094)等が使用される。
【0039】
放射部171は、蒸発器150に担持された光触媒160に対して所定波長の光(例えば紫外光)を放射する平行光光源である。放射部171は、図2に示すように、空調ケース120の曲げ部112を形成する壁部に配設されている。更に具体的には、放射部171は、空調ケース110の曲げ部112を形成する壁部のうち、蒸発器150よりも上流側であって、蒸発器150の熱交換部と対向する対向壁部115に配設されている。第1実施形態の放射部171は、光を放射する光源部としてLED(Light Emitting Diode)171aを使用すると共に、LED171aの点灯時の熱を放射する放熱板171bを設けたものとしている。
【0040】
LED171aは、発光ダイオードを用いた照明器具(ランプ)である。放熱板171bは、例えば対向する蒸発器150のアウトラインと同等の矩形状の熱伝導性に優れる板部材であり、対向壁部115に固定されている。そして、LED171aは、放熱板171bの蒸発器150側となる面に複数点在するように配置されている。具体的には、複数のLED171aは、例えば放熱板171bの面上で、等間隔で格子状に描かれた縦横仮想線の各交点に配置されている。
【0041】
次に、上記構成に基づく空調装置100Aの作動および作用効果について説明する。
【0042】
空調装置100Aが作動されると、送風機130が作動されると共に、内外気切替ドア120によって内気導入口113あるいは外気気導入口114のいずれかが開かれる。また、空調装置100Aの作動中においては、常時、あるいは所定時間間隔で、LED171aが点灯される。
【0043】
そして、送風機130の作動によって、内気導入口113から内気が、あるいは外気導入口114から外気が空調ケース110内に吸引され、吸引された空気は空調用空気として下流側へ送風される。送風機130の下流側では、まず、脱臭フィルタ140に設けられた吸着剤によって空調用空気中の臭い成分が吸着される。そして、ある程度脱臭された空調用空気は蒸発器150によって冷却されて、車室内に送風される。
【0044】
ここで、蒸発器150に担持された光触媒160は、対向壁部115に設けられたLED171aから放射される光によって活性化し、以下のような超親水作用と、臭い成分の分解作用を発揮する。尚、LED171aの点灯時の熱は、放熱板171bから空調ケース110の対向壁部115を介して外部に放出される。
【0045】
1)超親水作用について
蒸発器150においては、空調用空気が冷却される際に、冷却された空気温度が空気中に含まれる水蒸気の露点温度を下回ると、水蒸気は凝縮して凝縮水となるが、生成された凝縮水は、光触媒160の超親水作用によって、蒸発器150の表面において水滴(水の粒)とは成らずに、表面全体に薄く濡れた状態となる。つまり、凝縮水は、アウターフィンの波部の内側などに水滴となって詰まるように溜まることなく、下方へ流れ落ちていく。これにより、水滴による熱抵抗の増加を抑制して、蒸発器150の熱交換性能の低下を抑制することができる。
【0046】
2)臭い成分の分解作用について
本願発明者らは、空調装置における臭いの問題に関しては、車室内外の臭い成分が蒸発器150の表面に生成される凝縮水に溶け込み、凝縮水が乾燥したときに臭い成分が空気中に放出されることで、臭いとなって快適性が損なわれることを突き止めた。よって、凝縮水が生成されて乾燥されるまでの間に、凝縮水に溶け込んだ臭い成分が、凝縮水の乾燥時においても臭わない成分量となるように、光触媒160によって臭い成分を分解することで、空調装置100Aの作動中における不快な臭いの発生を抑制できるようにしている。
【0047】
ここで、光触媒160を活性化させるための光を放射する放射部171を、空調ケース110の曲げ部112の形成される壁部、ここでは蒸発器150と対向する対向壁部115に配設するようにしているので、放射部171が空調ケース110内において、先に説明した従来技術のように空気通路111を横断することがない。よって、放射部171による空調ケース110内での通気抵抗の増加を招くことなしに、光触媒160による蒸発器150における脱臭を行うことができる。そして、放射部171から放射される光は、壁部のうち、蒸発器150と対向する対向壁部115から放射されるので、蒸発器150の表面に設けられた光触媒160に対して光を効果的に放射することができる。
【0048】
また、放射部171は、蒸発器150の上流側に配設されるようにしている。蒸発器150においては空調用空気中に含まれる臭い成分が、空調用空気流れの上流側で付着しやすい。よって、放射部171を蒸発器150の空調用空気の上流側に配設することで、臭い成分の付着し易い部位に対して、放射部171からの光をより多く放射できるので、光触媒160による臭い成分の分解効果を高めることができる。
【0049】
また、放射部171は、LED171aを用いて放熱板171bの面上に点在するようにしている。よって、放射部171からの光を放熱板171bの板面の全体から放射できるので、蒸発器150における光触媒160に対して光のムラがないように放射することができ、光触媒160による臭い成分の分解効果を高めることができる。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態の放射部172を図3に示す。第2実施形態は、上記第1実施形態の放射部171に対して、放射部172としたものである。放射部172は、板状を成して板面全体から光を放射する面光源としている。具体的には、電圧を掛けることで面全体が光る面状発光体としてのEL(Electroluminescen)ランプ172を使用している。ELランプ172は、第1実施形態と同様に、空調ケース110の対向壁部115に配設されている。
【0051】
このELランプ172によって、板状を成して板面全体から光を放射する面光源とすることができる。よって、第1実施形態と同様に、光触媒160の超親水作用による凝縮水の排水性向上、および凝縮水による熱抵抗増加の抑制を図ると共に、通気抵抗の増加を招くことなく、臭い成分の分解が可能となる。
【0052】
(第3実施形態)
第3実施形態の放射部173を図4、図5に示す。第3実施形態は、上記第1実施形態の放射部171に対して、放射部173としたものである。放射部173は、平行光光源であり、光源部としてのLED173aと、導光板173cとによって形成されている。
【0053】
LED173aは、複数設けられて、導光板173cの一端側の一辺に沿うように配設されて、保持部173bによって導光板173cに保持されている。
【0054】
導光板173cは、透過性の樹脂から成り、外形が四角形の平板状の部材である。樹脂材としては、例えばアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が用いられている。導光板173cの一方の面には、反射シート173dが設けられ反射面となっており、また、対向する他方の面には拡散シート173eが設けられ出射面となっている。反射シート173dには、反射面側から出射面側へ光を反射させるための複数のドットが点在するように設けられている。拡散シート173eは、反射面側からの光を出射面から拡散させるシートである。放射部173は、出射面側が蒸発器150と対向するようにして、第1実施形態と同様に、空調ケース110の対向壁部115に配設されている。
【0055】
導光板173cにおいては、LED173bから放射される光は、主に導光板173cの反射面および出射面の間で反射を繰り返し、導光板173の一端側から他端側へ向けて進んでいく。そして、反射シート173dによって、反射面側から出射面側への反射光が形成されて、更に出射面では拡散シート173eによって拡散されて、蒸発器150側に放射される。
【0056】
第3実施形態においても、放射部173の具体的な構成が異なるのみであって、基本的な構成は上記第1、第2実施形態と同一であり、同様の効果を得ることができる。
【0057】
尚、放射部173の光源部として、図5で説明したLED173aに代えて、図6に示すように、外観形状が管状を成す管状光源173fとしても良い。この場合は、導光板173cの一端側の一辺に沿う1つの管状光源とするので、導光板173cとの組付けが容易となる。
【0058】
(第4実施形態)
第4実施形態の放射部174を図7に示す。第4実施形態は、上記第1実施形態の放射部171に対して、放射部174としたものである。放射部174は、平行光光源であり、光源部としてのLED174aと、拡散板174bとによって形成されている。
【0059】
光源部としてのLED174aは、対向壁部115に配設されている。拡散板174bは、LED174aから放射される光を散乱、あるいは拡散させる半透明の板部材であり、対向壁部115においてLED174aよりも蒸発器150側となるように配設されている。放射部174においては、LED174aから放射される光は、拡散板174bによって、拡散板174bの面全体に拡がって蒸発器150側に放射される。
【0060】
第4実施形態においても、放射部174の具体的な構成が異なるのみであって、基本的な構成は上記第1〜第3実施形態と同一であり、同様の効果を得ることができる。
【0061】
尚、放射部174の拡散板174bに代えて、図8に示すように、レンズ(凸レンズ)174cとしても良い。レンズ174cの焦点位置にLED174aを配置することで、LED174aからの光をレンズ174cの板面全体にわたって拡げて、平行光にして放射する平行光光源とすることができる。つまり、蒸発器150に対して光のムラの無い放射部とすることができる。
【0062】
(第5実施形態)
第5実施形態の放射部175を図9に示す。第5実施形態は、上記第1実施形態の放射部171に対して、放射部175としたものである。放射部175は、平行光光源であり、光源部としての管状光源175aと、反射板175bとによって形成されている。
【0063】
反射板175bは、管状を成す管状光源175aから放射される光を反射させる板部材であり、両端部側から中央部に向けて順次板厚が薄くなるように形成されて、中央部が谷状になっている。反射板175bは、谷状部が蒸発器150側を向くように、対向壁部115に配設されている。管状光源175aは、反射板175bの谷状部に沿うように反射板175bの蒸発器150側に配設されている。放射部175においては、管状光源175aから放射される光は、反射板175bによって、反射板175bの面全体から反射されて蒸発器150側に放射される。
【0064】
第5実施形態においても、放射部175の具体的な構成が異なるのみであって、基本的な構成は上記第1〜第4実施形態と同一であり、同様の効果を得ることができる。
【0065】
尚、放射部175において、板状の反射板175bに代えて、図10に示すように、光源部としてのLED175cと、放物線を成す反射シート(反射板)175dとから形成されるものとしても良い。反射シート175dは、対向壁部115に配設されている。また、LED175cは、曲げ部112を形成する壁部のうち、曲げられた内側となる壁部(曲げ部112の内側角部)であって、反射シート175dの放物線の焦点に対応する位置に設けられている。これにより、焦点位置から放射されるLED175cの光を放物線状の反射シート175dによって板面全体にわたる平行光にして放射することが可能となる。つまり、蒸発器150に対して光のムラの無い放射部とすることができる。
【0066】
(第6実施形態)
第6実施形態の空調装置100Bを図11、図12に示す。第6実施形態は、上記第1実施形態に対して蒸発器150と放射部171との位置関係を変更したものである。
【0067】
蒸発器150は、空調ケース110の曲げ部112よりも上流側に、空気通路111を横断するように配設されている。そして、放射部171は、図12に示すように、空調ケース110の曲げ部112を形成する壁部のうち、蒸発器150よりも下流側であって、蒸発器150の熱交換部と対向する対向壁部116に配設されている。
【0068】
第6実施形態においても、放射部171は、対向壁部116に配設されるようにしているので、放射部171が空調ケース110内において、先に説明した従来技術のように空気通路111を横断することがない。よって、放射部171による空調ケース110内での通気抵抗の増加を招くことなしに、光触媒160による蒸発器150における脱臭を行うことができる。
【0069】
尚、第6実施形態において、放射部171としては、上記第2〜第5実施形態で説明した放射部172〜175としても良い。
【0070】
(第7実施形態)
第7実施形態の空調装置100Cにおける放射部176を図13に示す。第7実施形態は、上記第3実施形態の曲げ部112、および放射部173の形状を変更して、曲げ部112A、放射部176としたものである。
【0071】
本実施形態では、空調ケース110の曲げ部112Aは、空調用空気の流れの乱れが生じないように、また、車両搭載時に隣接する他部品との干渉を避けるために、滑らかに曲げられた形状となっている。つまり、曲げ部112Aを形成する壁部のうち、対向壁部115Aは、曲面によって形成された壁部となっている。
【0072】
放射部176は、平行光光源であり、光源部としてのLED173aと、導光板173cAとによって形成されている。導光板173cAは、対向壁部115Aの曲面に沿うような板状部材として形成されており、対向壁部115Aに配設されている。尚、第3実施形態と同様に、LED173aは保持部173b(図13中では省略)によって導光板173cAに保持されており、また、導光板173cAには、反射シート173d、拡散シート173e(図13中では省略)が設けられている。
【0073】
第7実施形態においても、曲げ部112A、および放射部176の具体的な形状が異なるのみであって、基本的な構成は上記第3実施形態と同一であり、同様の効果を得ることができる。
【0074】
特に、第7実施形態においては、曲げ部112Aの形成される壁部(対向壁部115A)が曲面を成すように形成される場合に、放射部176(導光板173cA)は、壁部の曲面に沿うように形成されるので、空調ケース110内において放射部176が空気通路111内に張出すことがない。よって、放射部176による空調ケース110内での通気抵抗の増加を招くことがないという効果を維持したまま、光触媒160による蒸発器150における脱臭を行うことができる。
【0075】
尚、本第7実施形態は、上記第3実施形態に対する変形形態として説明したが、これに限らず、上記第1、2、4〜6実施形態に対する変形形態として適用することができる。つまり、上記第1、2、4〜6実施形態において、曲げ部112(対向壁部115、116)を対向壁部115Aのように曲面を有する壁部によって曲げ部112Aとする場合に、第1実施形態の放熱板171b、第2実施形態のELランプ172、第4実施形態の拡散板174b、レンズ174c、第5実施形態の反射板175b、反射シート(反射板)175d、第6実施形態の放熱板171b等を曲げ部112Aに沿うように形成することができる。
【0076】
(その他の実施形態)
空調装置の形状、構造等については、上記各実施形態で説明した空調装置100A、100B、100Cに限定されるものではない。例えば、内外気切替ドア120として、板ドアを用いたものを説明したが、他の例として、フィルムドア、ロータリドア、更にはスライドドア等を用いたものとしても良い。
【符号の説明】
【0077】
100A、100B、100C 空調装置
110 空調ケース
111 空気通路
112、112A 曲げ部
115、115A、116 対向壁部(壁部)
150 蒸発器(冷却用熱交換器)
160 光触媒
171 放射部(平行光光源)
171a LED(光源部)
172 放射部、ELランプ(面光源)
173 放射部(平行光光源)
173a LED(光源部)
173c、173cA 導光板
174 放射部(平行光光源)
174a LED(光源部)
174b 拡散板
174c レンズ(拡散板)
175 放射部(平行光光源)
175a 管状光源(光源部)
175b 反射板
175c LED(光源部)
175d 反射シート(反射板)
176 放射部(平行光光源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ケース(110)内の空気通路(111)を横断するように配設されて、前記空調ケース(110)内に送風される空調用空気を冷却する冷却用熱交換器(150)と、
前記冷却用熱交換器(150)の表面に設けられて、前記空調用空気に含まれる臭い成分を分解する光触媒(160)と、
前記光触媒(160)を活性化させるための光を放射する放射部(171〜176)とを備える空調装置において、
前記空調ケース(110)は、前記冷却用熱交換器(150)の上流側または下流側で、前記空調用空気の流れ方向を変更させる曲げ部(112、112A)を有しており、
前記放射部(171〜176)は、前記曲げ部(112、112A)の形成される壁部に設けられ、
前記放射部(171〜176)から放射される光は、前記壁部のうち、前記冷却用熱交換器(150)と対向する壁部(115、115A、116)から放射されるようにしたことを特徴とする空調装置。
【請求項2】
前記曲げ部(112、112A)の形成される壁部は、曲面を成しており、
前記放射部(171〜176)は、前記壁部の曲面に沿うように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の空調装置。
【請求項3】
前記冷却用熱交換器(150)は、前記曲げ部(112、112A)よりも前記空調用空気の下流側に配設され、
前記放射部(171〜176)は、前記冷却用熱交換器(150)の前記空調用空気流れの上流側に配設されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空調装置。
【請求項4】
前記放射部(171〜176)は、板状を成して板面全体から光を放射する面光源(172)、あるいは光源部(171a、173a〜175a)からの光を板面全体にわたって平行光にして放射する平行光光源(171、173〜176)であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の空調装置。
【請求項5】
前記面光源(172)は、ELランプ(172)であることを特徴とする請求項4に記載の空調装置。
【請求項6】
前記平行光光源(171)は、前記光源部(171a)が平面状に、あるいは曲面状に複数、点在するように配置されて形成されたことを特徴とする請求項4に記載の空調装置。
【請求項7】
前記平行光光源(173)は、前記光源部(173a)と、前記光源部(173a)から放射される光を背面から表面に放射する導光板(173c、173cA)とを備えることを特徴とする請求項4に記載の空調装置。
【請求項8】
前記平行光光源(174)は、前記光源部(174a)と、前記光源部(174a)から放射される光を面全体に拡散させる拡散板(174b、174c)とを備えることを特徴とする請求項4に記載の空調装置。
【請求項9】
前記拡散板(174c)は、レンズ(174c)であることを特徴とする請求項8に記載の空調装置。
【請求項10】
前記平行光光源(175)は、前記光源部(175a)と、前記光源部(175a)から放射される光を反射させることで板面全体に拡散させる反射板(175b、175d)とを備えることを特徴とする請求項4に記載の空調装置。
【請求項11】
前記反射板(175d)の反射面は、放物線状を成して、
前記光源部(175c)は、前記放物線の焦点位置に配置されたことを特徴とする請求項10に記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−158320(P2012−158320A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−265136(P2011−265136)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】