説明

空調運転開始時の室圧制御方法

【課題】クリーンルームに対する空調運転開始時にクリーンルームの室内気圧が負圧になることがなく、クリーンルームの汚染を防ぐことができる空調運転開始時の室圧制御方法を提供する。
【解決手段】空調運転開始時の室圧制御方法では、ホルムアルデヒドガスによって燻蒸・除染した後のクリーンルーム11A,11Bに対する空調運転開始時から所定時間が経過するまでの間に微陽圧保持手段を実行する。微陽圧保持手段では、モーターダンパ17A,17Bを利用してクリーンルーム11A,11Bからの空気の排気量を調節し、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を予め設定された微陽圧に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調空間を有する空調室に対する空調運転開始時に、空調室への空気の給気量と空調室からの空気の排気量との少なくとも一方を調節して空調室の室内気圧を制御する空調運転開始時の室圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数空調室に対する給気量を目標給気量に調整する給気量制御手段と、それら空調室からの排気量を調整して各空調室の室圧を目標室圧に調整する室圧制御手段とを設ける構成において、給排気運転の起動時に各空調室の目標給気量を0とするとともに、給排気運転の起動後に目標室圧の高い空調室から順に目標給気量を設定必要給気量へ増大させる起動時給気量変更手段を設けた室圧制御装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示の室圧制御装置は、給排気運転の起動時に各空調室の目標給気量を0とし、各空調室への給気開始を牽制することにより、給気の開始による室圧の立ち上がり開始そのものがない状態を各空調室について一律に現出させる。次に、目標室圧の最も高い空調室の目標給気量を設定必要給気量に向けて増大させることで、他の空調室については目標給気量が0で給気開始による室圧の立ち上がり開始そのものがない状態で、目標室圧の最も高い空調室についてのみ給気開始による室圧の立ち上がりを生じさせる。このように、目標室圧の高い空調室から順に目標給気量を設定必要給気量へと増大させることにより、給気開始による室圧の立ち上がり開始そのものを目標室圧の高い空調室から順に生じさせることができる。
【特許文献1】特開平6−281217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の室圧制御装置は、給排気運転の起動時に各空調室の目標給気量を0としつつ、給排気運転を起動するから、空調室の室内気圧が外乱(ドアの開閉、窓の開閉、局所給気装置の起動・停止、局所排気装置の起動・停止等)によって変動したときに、空調室の室内気圧が一時的に負圧になる場合があり、空調室の外部から空気が進入し、空調室が汚染されてしまう場合がある。
【0005】
また、空調運転開始時(給排気運転起動時)に空調室の室内気圧を一気に陽圧に上昇させるため、空調運転開始時に15〜40Paの設定陽圧で運転すると、空調運転開始時に通常の陽圧運転を実行した場合の室内気圧の変動の一例である図7に示すように、空調室の室内気圧が一時的に急上昇し、設定された目標室内気圧を超え、空調室の建具の目地から空気が漏出し、空調運転を開始した空調室から通路や隣室に空気が漏れてしまう場合がある。
【0006】
本発明の目的は、空調室に対する空調運転開始時に空調室の室内気圧が負圧になることがなく、空調室の汚染を防ぐことができる空調運転開始時の室圧制御方法を提供することにある。さらに、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる空調運転開始時の室圧制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、空調空間を有する空調室に対する空調運転開始時に、空調室への空気の給気量と空調室からの空気の排気量との少なくとも一方を調節して空調室の室内気圧を制御する空調運転開始時の室圧制御方法である。
【0008】
前記前提における本発明の室圧制御方法の特徴は、空調運転開始時に、給気量と排気量とのうちの少なくとも一方を調節して空調室の室内気圧を予め設定された微陽圧に保持する微陽圧保持手段を実行することにある。
【0009】
本発明にかかる室圧制御方法の一例としては、微陽圧保持手段が空調室に燻蒸・除染用薬品を充満させて空調室を燻蒸・除染した後のその空調室に対して実行される。
【0010】
本発明にかかる室圧制御方法の他の一例として、室圧制御方法では、微陽圧保持手段を実行してから所定時間経過した後に、給気量と排気量とのうちの少なくとも一方を調節して空調室の室内気圧を微陽圧保持手段におけるそれよりも高い予め設定された陽圧に保持する陽圧保持手段を実行する。
【0011】
本発明にかかる室圧制御方法の他の一例としては、所定時間が空調室に残留する燻蒸・除染用薬品の濃度が下がるまでの予め設定された時間である。
【0012】
本発明にかかる室圧制御方法の他の一例としては、微陽圧保持手段と陽圧保持手段とが、空調室に空気を給気する給気ファンと、空調室から空気を排気する排気ファンと、ダンパ開度によって空調室への空気の給気量と空調室からの空気の排気量とのいずれかを調節可能なモーターダンパとを利用して実行される。
【0013】
本発明にかかる室圧制御方法の他の一例として、微陽圧保持手段では、所定時間が経過するまでの間に、空調室の室内気圧が予め設定された微陽圧から外れると、モーターダンパのダンパ開度を調節して室内気圧を設定された微陽圧に戻す。
【0014】
本発明にかかる室圧制御方法の他の一例として、室圧制御方法では、空調室に残留する燻蒸・除染用薬品の濃度が設定値よりも下がった後に、給気量と排気量とのうちの少なくとも一方を調節して空調室の室内気圧を微陽圧保持手段におけるそれよりも高い予め設定された陽圧に保持する陽圧保持手段を実行する。
【0015】
本発明にかかる室圧制御方法の他の一例としては、微陽圧保持手段と陽圧保持手段とが、空調室に空気を給気する給気装置と、空調室から空気を排気する排気装置と、ダンパ開度によって空調室への空気の給気量と空調室からの空気の排気量とのいずれかを調節可能なモーターダンパと、空調室の燻蒸・除染用薬品の濃度を測定する濃度センサとを利用して実行される。
【0016】
本発明にかかる室圧制御方法の他の一例として、微陽圧保持手段では、空調室に残留する燻蒸・除染用薬品の濃度が設定値を超えている間に、空調室の室内気圧が予め設定された微陽圧から外れると、モーターダンパのダンパ開度を調節して室内気圧を設定された微陽圧に戻す。
【0017】
本発明にかかる室圧制御方法の他の一例としては、微陽圧保持手段によって保持される空調室の予め設定された室内気圧が+3〜+10Paの範囲にあり、陽圧保持手段によって保持される空調室の予め設定された室内気圧が+10〜+60Paの範囲にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる空調運転開始時の室圧制御方法によれば、空調室に対する空調運転開始時に給気量と排気量とのうちの少なくとも一方を調節してその空調室の室内気圧を予め設定された微陽圧に保持する微陽圧保持手段を実行するから、空調室の室内気圧が外乱によって変動したとしても、微陽圧保持手段によって空調室の室内気圧を微陽圧に保持することができ、空調室に対する空調運転開始時に空調室の室内気圧が負圧になることはなく、外部から空調室に空気が進入することによる空調室の汚染を防ぐことができる。室圧制御方法は、空調運転開始時に空調室の室内気圧を微陽圧に保持するから、空調運転開始時に微陽圧よりも高い陽圧で空調運転を実施する場合と比較し、空調室の室内気圧が急上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの空気の漏出を防ぐことができ、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる。
【0019】
微陽圧保持手段が空調室に燻蒸・除染用薬品を充満させて空調室を燻蒸・除染した後のその空調室に対して実行される室圧制御方法は、燻蒸・除染した後のその空調室に対する空調運転開始時に微陽圧保持手段を実行するから、空調室の室内気圧を微陽圧に保持することができ、空調室の室内気圧が負圧になることはなく、外部の空気が進入することによる空調室の汚染を防ぎつつ、燻蒸・除染用薬品(燻蒸・除染用ガス)を空調室から室外に排気することができる。室圧制御方法は、空調運転開始時に空調室の室内気圧を微陽圧に保持するから、空調運転開始時に微陽圧よりも高い陽圧で空調運転を実施する場合と比較し、空調室の室内気圧が急上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの燻蒸・除染用薬品の漏出を防ぐことができ、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への燻蒸・除染用薬品の漏出を防ぐことができる。
【0020】
微陽圧保持手段を実行してから所定時間経過した後に、給気量と排気量とのうちの少なくとも一方を調節して空調室の室内気圧を微陽圧保持手段におけるそれよりも高い予め設定された陽圧に保持する陽圧保持手段を実行する室圧制御方法は、微陽圧保持手段を所定時間実行した後に陽圧保持手段を実行するから、空調室の室内気圧を微陽圧から陽圧に変更したとしても、空調運転開始時に直ちに陽圧保持手段を実行する場合と比較し、陽圧保持手段を実行したとしても空調室の室内気圧が急激に上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの空気の漏出を防ぐことができ、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる。
【0021】
所定時間が空調室に残留する燻蒸・除染用薬品の濃度が下がるまでの予め設定された時間である室圧制御方法は、設定された時間の経過によって空調室に残留する燻蒸・除染用薬品の濃度(残留ガス濃度)が下がるから、その間に微陽圧保持手段を実行することで、空調室の室内気圧を微陽圧に保持して空調室の汚染を防ぎつつ、燻蒸・除染用薬品(燻蒸・除染用ガス)を空調室から室外に排気することができる。室圧制御方法は、所定時間微陽圧保持手段を実行するから、空調室の建具の目地から燻蒸・除染用薬品が漏出することはなく、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への燻蒸・除染用薬品の漏出を防ぐことができる。室圧制御方法は、所定時間経過後に微陽圧保持手段から陽圧保持手段に切り替えるから、陽圧保持手段を実行したとしても空調室の室内気圧が急激に上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの空気の漏出を防ぐことができ、空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる。
【0022】
空調室に空気を給気する給気ファンと空調室から空気を排気する排気ファンとダンパ開度によって空気の給気量と空気の排気量とのいずれかを調節可能なモーターダンパとを利用して微陽圧保持手段と陽圧保持手段とが実行される室圧制御方法は、微陽圧保持手段においてモーターダンパのダンパ開度を調節することで、空調運転開始時から所定時間が経過するまでの間に空調室の室内気圧を微陽圧に保持することができ、空調室の室内気圧が負圧になることはなく、外部から空調室に空気が進入することによる空調室の汚染を防ぐことができる。室圧制御方法は、空調運転開始時から所定時間が経過するまでの間に空調室の室内気圧を微陽圧に保持するとともに、微陽圧保持手段を所定時間実行した後に陽圧保持手段を実行するから、空調運転開始時に直ちに陽圧保持手段を実行する場合と比較し、陽圧保持手段を実行したとしても空調室の室内気圧が急激に上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの空気の漏出を防ぐことができ、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる。
【0023】
微陽圧保持手段において、所定時間が経過するまでの間に空調室の室内気圧が予め設定された微陽圧から外れると、モーターダンパのダンパ開度を調節して室内気圧を設定された微陽圧に戻す室圧制御方法は、モーターダンパを利用して空調運転開始時から所定時間が経過するまでの間、空調室の室内気圧を微陽圧に保持することができ、空調室の室内気圧が負圧になることはなく、外部から空調室に空気が進入することによる空調室の汚染を防ぐことができる。室圧制御方法は、空調運転開始時から所定時間が経過するまでの間、モーターダンパによって空調室の室内気圧が微陽圧に保持されるから、空調運転開始時に直ちに陽圧保持手段を実行する場合と比較し、陽圧保持手段を実行したとしても空調室の室内気圧が急激に上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの空気の漏出を防ぐことができ、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる。
【0024】
空調室に残留する燻蒸・除染薬品の濃度が設定値よりも下がった後に、給気量と排気量とのうちの少なくとも一方を調節して空調室の室内気圧を微陽圧保持手段におけるそれよりも高い予め設定された陽圧に保持する陽圧保持手段を実行する室圧制御方法は、空調室に残留する燻蒸・除染用薬品の濃度(残留ガス濃度)が下がるまでの間に微陽圧保持手段を実行することで、空調室の室内気圧を微陽圧に保持しつつ、燻蒸・除染用薬品を空調室から室外に排気することができる。室圧制御方法は、燻蒸・除染用薬品(燻蒸・除染用ガス)の濃度が下がるまでの間、微陽圧保持手段を実行するから、空調室の建具の目地から燻蒸・除染用薬品が漏出することはなく、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への燻蒸・除染用薬品の漏出を防ぐことができる。室圧制御方法は、燻蒸・除染用薬品の濃度が設定値よりも下がった後に微陽圧保持手段から陽圧保持手段に切り替えるから、陽圧保持手段を実行したとしても空調室の室内気圧が急激に上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの空気の漏出を防ぐことができ、空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる。
【0025】
空調室に空気を給気する給気装置と空調室から空気を排気する排気装置とダンパ開度によって空気の給気量と空気の排気量とのいずれかを調節可能なモーターダンパと空調室の燻蒸・除染用薬品の濃度を測定する濃度センサとを利用して微陽圧保持手段と陽圧保持手段とが実行される室圧制御方法は、モーターダンパを利用して空調運転開始時から燻蒸・除染用薬品の濃度(残留ガス濃度)が下がるまでの間、空調室の室内気圧を微陽圧に保持することができ、空調室の室内気圧が負圧になることはなく、外部から空調室に空気が進入することによる空調室の汚染を防ぐことができる。室圧制御方法は、空調運転開始時から燻蒸・除染用薬品(燻蒸・除染用ガス)の濃度が下がるまでの間、モーターダンパによって空調室の室内気圧が微陽圧に保持されるから、空調運転開始時に直ちに陽圧保持手段を実行する場合と比較し、陽圧保持手段を実行したとしても空調室の室内気圧が急激に上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの空気の漏出を防ぐことができ、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる。
【0026】
微陽圧保持手段において、空調室に残留する燻蒸・除染用薬品の濃度が設定値を超えている間に、空調室の室内気圧が予め設定された微陽圧から外れると、モーターダンパのダンパ開度を調節して室内気圧を設定された微陽圧に戻す室圧制御方法は、モーターダンパを利用して空調運転開始時から燻蒸・除染用薬品の濃度(残留ガス濃度)が設定値を超えている間、空調室の室内気圧を微陽圧に保持することができ、空調室の室内気圧が負圧になることはなく、外部から空調室に空気が進入することによる空調室の汚染を防ぐことができる。室圧制御方法は、空調運転開始時から燻蒸・除染用薬品(燻蒸・除染用ガス)の濃度が設定値を超えている間、モーターダンパによって空調室の室内気圧が微陽圧に保持されるから、空調運転開始時に直ちに陽圧保持手段を実行する場合と比較し、陽圧保持手段を実行したとしても空調室の室内気圧が急激に上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの空気の漏出を防ぐことができ、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる。
【0027】
微陽圧保持手段によって保持される空調室の予め設定された室内気圧が+3〜+10Paの範囲にあり、陽圧保持手段によって保持される空調室の予め設定された室内気圧が+10〜+60Paの範囲にある室圧制御方法は、空調運転開始時に空調室の室内気圧を前記範囲の微陽圧に保持するから、空調室の室内気圧が外乱によって変動したとしても、微陽圧保持手段によって空調室の室内気圧を微陽圧に保持することができ、空調室に対する空調運転開始時に空調室の室内気圧が負圧になることはなく、外部から空調室に空気が進入することによる空調室の汚染を防ぐことができる。室圧制御方法は、空調運転開始時に空調室の室内気圧を前記範囲の微陽圧に保持するから、前記範囲を超える高い陽圧で空調運転を開始する場合と比較し、空調室の室内気圧が急上昇することがないとともに、空調室の室内気圧が目標のそれを超えることはなく、空調室の建具の目地からの空気の漏出を防ぐことができ、空調運転を開始した空調室から通路や隣室への空気の漏出を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】室圧制御方法を実施する建造物の一例を示す設備構成図。
【図2】室圧制御方法を説明するフローチャートの一例。
【図3】空調運転開始時から所定時間までの間に微陽圧保持手段を実行した場合の室内気圧の変動の一例を示す図。
【図4】室圧制御方法を実施する建造物の他の一例を示す設備構成図。
【図5】室圧制御方法を説明するフローチャートの他の一例。
【図6】空調運転開始時からガス濃度が下がるまでの間に微陽圧保持手段を実行した場合の室内気圧の変動の他の一例を示す図。
【図7】空調運転開始時に通常の陽圧運転を実行した場合の室内気圧の変動の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明にかかる室圧制御方法を実施する建造物10の一例を示す設備構成図である図1等の添付の図面を参照し、本発明の空調運転開始時の室圧制御方法を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、本発明の室圧制御方法を説明するフローチャートの一例であり、図3は、空調運転開始時から所定時間までの間に微陽圧保持手段を実行した場合の室内気圧の変動の一例を示す図である。図3では、クリーンルーム11A,11B(空調室)にホルムアルデヒドガス(燻蒸・除染用薬品)充満させ、クリーンルーム11A,11Bをホルムアルデヒドガスで燻蒸・除染した後に微陽圧保持手段を実行し、微陽圧保持手段を実行してから所定時間経過後に陽圧保持手段を実行した場合の室内気圧の変動を示す。なお、燻蒸・除染用薬品としてホルムアルデヒドガスの他に、オゾン、NO、過酸化水素水等を使用することもできる。
【0030】
図1は、第1および第2クリーンルーム11A,11Bをその側方から示している。図1では2室のクリーンルーム11A,11Bを図示しているが、クリーンルームを2室に限定するものではなく、3室以上の第1〜第nクリーンルームに対してこの室圧制御方法を実施することもできる。また、この室圧制御方法は、クリーンルーム11A,11Bのみならず、他のあらゆる種類の空調室において実施することができる。
【0031】
クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を基準圧よりも高い陽圧に保持する場合を例としてこの室圧制御方法を説明する。一例として示す室圧制御方法を実施する建造物10は、屋外の空気を建造物10内に施設されたそれらクリーンルーム11A,11Bに供給する給気ダクト12と、それらクリーンルーム11A,11Bから屋外に空気を排出する排気ダクト13と、クリーンルーム11A,11Bに空気を給気する給気ファン14と、クリーンルーム11A,11Bから空気を排気する排気ファン15と、定風量ユニット16A,16Bおよびモーターダンパ17A,17Bと、圧力センサ18,19およびコントローラ20(制御盤)とを備えている。なお、給気ファン14や排気ファン15、定風量ユニット16A,16B、モーターダンパ17A,17B、圧力センサ18,19、コントローラ20には、図示はしていないが、給電線を介して所定の電力が供給されている。
【0032】
クリーンルーム11A,11Bは、天井および床と前後壁および側壁とに囲繞された所定容積の気密な空調空間を有し、天井、床、それら壁によって室外と仕切られている。天井には、給気ダクト12から供給される空気をクリーンルーム11A,11Bに取り入れるための給気口(図示せず)が施設されている。側壁には、クリーンルーム11A,11Bの空気を排気ダクト13に取り入れるための排気口(図示せず)が施設されている。クリーンルーム11A,11Bには、図示はしていないが、そこに出入りするための扉が設置されている。クリーンルーム11A,11Bは、その室内気圧が厳密に管理され、通常の使用状態において室内気圧が基準圧よりも高い予め設定された適正範囲の陽圧(設定陽圧)に保持される。
【0033】
給気ダクト12は、建造物の屋外とクリーンルーム11A,11Bとを連結している。給気ダクト12は、基幹ダクト12Aと、基幹ダクト12Aから分岐して各クリーンルーム11A,11Bに向かって延びる2本の分岐ダクト12Bとから形成されている。分岐ダクト12A,12Bは、クリーンルーム11A,11Bの天井に施設された給気口につながっている。給気ファン14は、基幹ダクト12Aに設置され、所定量の空気をクリーンルーム11A,11Bに強制的に給気する。給気ファン14は、インターフェイス21を介してコントローラ20に接続されている。給気ファン14はその稼働中における風量(風速)が設定され、ファン14から給気される風量が一定に保持される。
【0034】
圧力センサ18は、一方の検出部18Aが給気ファン14の近傍における基幹ダクト12Aの内部に設置され、他方の検出部18Bが建造物10内に設置されている。検出部18Bの設置箇所である建造物10内には、たとえば、建造物10の天井裏や廊下、床下等があるが、建造物10内であれば設置箇所に特に限定はない。なお、他方の検出部18Bが建造物10の外に設置される場合もある。圧力センサ18は、インターフェイス21を介してコントローラ20に接続されている。圧力センサ18は、給気ダクト12内の静圧信号を計測し、計測した静圧信号をコントローラ20に送信する。
【0035】
各定風量ユニット16A,16Bは、それらクリーンルーム11A,11Bにつながる分岐ダクト12Bに設置されている。各定風量ユニット16A,16Bは、インターフェイス21を介してコントローラ20に接続されている。定風量ユニット16A,16Bは、各分岐ダクト12Bの内部気圧の変動に対してユニット16A,16B内を通る空気通過量を調節し、クリーンルーム11A,11Bへ供給する空気量を一定に保持する。定風量ユニット16A,16Bは、図示はしていないが、モーターダンパおよび制御器と、風速計およびそれらを収容する筐体とから形成されている。各定風量ユニット16A,16Bは、そこを通る空気通過量(給気量)を風速計を介して計測し、計測した空気通過量をコントローラ20に送信する。
【0036】
排気ダクト13は、クリーンルーム11A,11Bと建造物10の屋外とを連結している。排気ダクト13は、各クリーンルーム11A,11Bから延びる2本の分岐ダクト13Bと、それら分岐ダクト13Bがつながる基幹ダクト13Aとから形成されている。分岐ダクト13Bは、クリーンルーム11A,11Bの側壁に施設された排気口につながっている。排気ファン15は、基幹ダクト13Aに設置され、所定量の空気をクリーンルーム11A,11Bから強制的に排気する。排気ファン15は、インターフェイス21を介してコントローラ20に接続されている。排気ファン15はその稼働中における風量(風速)が設定され、ファン15から排気される風量が一定に保持される。
【0037】
圧力センサ19は、一方の検出部19Aが排気ファン15の近傍における基幹ダクト13Aの内部に設置され、他方の検出部19Bが建造物10内に設置されている。なお、他方の検出部19Bが建造物10の外に設置される場合もある。圧力センサ19は、インターフェイス21を介してコントローラ20に接続されている。圧力センサ19は、排気ダクト13内の静圧信号を計測し、計測した静圧信号をコントローラ20に送信する。
【0038】
それらモーターダンパ17A,17Bは、クリーンルーム11A,11Bから延びる分岐ダクト13Bに設置されている。モーターダンパ17A,17Bは、モジュトロールモーター(図示せず)と、モーターの駆動力によって旋回する旋回羽根22と、旋回羽根22の旋回によって開閉される空気流路(図示せず)とから形成されている。モーターダンパ17A,17Bは、旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を調節し、それによって各クリーンルーム11A,11Bから排気される空気の流量(排気量)を調節する。
【0039】
それらモーターダンパ17A,17Bには、平行翼ダンパまたは対向翼ダンパを使用することができる。なお、モーターダンパ17A,17Bがクリーンルーム11A,11Bにつながる分岐ダクト12Bに設置されていてもよい。この場合は、旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を調節し、それによってクリーンルーム11A,11Bに給気される空気の流量(給気量)を調節する。
【0040】
それらモーターダンパ17A,17Bには、差圧センサ(図示せず)が内蔵され、制御装置(図示せず)が附属している。制御装置は、演算処理を行う中央処理部と各種データを記憶可能な主記憶部(メモリ)とを有するマイクロプロセッサである。モーターダンパ17A,17B(制御装置)は、インターフェイス21を介してコントローラ20に接続されている。
【0041】
差圧センサは、一方の検出部23Aがクリーンルーム11A,11Bに設置され、他方の検出部23Bが建造物10内に設置されている。なお、他方の検出部23Bが建造物10の外に設置される場合もある。差圧センサは、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧(一方の検出部23Aが検出した圧力)と基準圧(他方の検出部23Bが検出した圧力)との差圧を計測する。モーターダンパ17A,17Bの制御装置は、差圧センサが計測した差圧信号をコントローラ20に送信する。
【0042】
モーターダンパ17A,17Bの制御装置の主記憶部には、各クリーンルーム11A,11Bに適用される予め設定された微陽圧の値(所定範囲の設定微陽圧値または1つの設定微陽圧値)が格納されている。設定微陽圧値の適正な範囲は、+3〜+10Pa、好ましくは、+3〜+5Paである。設定微陽圧値は、その範囲において任意に設定することができる。さらに、主記憶部には、各クリーンルーム11A,11Bに適用される予め設定された陽圧の値(所定範囲の設定陽圧値または1つの設定陽圧値)が格納されている。設定陽圧値の適正な範囲は、+10〜+60Pa、好ましくは、+15〜+40Paである。設定陽圧値は、その範囲において任意に設定することができる。
【0043】
モーターダンパ17A,17Bの制御装置の主記憶部には、各クリーンルーム11A,11Bに適用される微陽圧の値とダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量との相関関係が格納され、微陽圧に対応する空気通過量とその空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)との相関関係が格納されている。さらに、各クリーンルーム11A,11Bに適用される陽圧の値とダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量との相関関係が格納され、陽圧に対応する空気通過量とその空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度との相関関係が格納されている。
【0044】
モーターダンパ17A,17Bの制御装置は、ダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を所定の角度(所定の開度)に設定または保持、あるいは所定の角度に変更する開度制御信号をダンパ17A,17Bに出力することで、空気流路の開度を所定の開度に調節する。モーターダンパ17A,17Bでは、制御装置から出力された開度制御信号によってモジュトロールモータが回転し、それによって旋回羽根22が所定角度に旋回する。旋回羽根22が所定角度に旋回すると、ダンパ17A,17Bの空気流路の開度が変わり、空気流路を通過する空気の流量が変更されてクリーンルーム11A,11Bから排気される排気量が変わるとともに、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が変わる。
【0045】
コントローラ20は、演算処理を行う中央処理装置と各種データを記憶可能な主記憶装置(メモリ)とを有するコンピュータである。コントローラ20には、各種条件を入力するための入力装置、入力確認のための表示装置がインターフェイスを介して接続されている(図示せず)。コントローラ20の主記憶装置には、後記する微陽圧保持手段を実行してから陽圧保持手段の実行を開始するまでの待機時間(所定時間)(微陽圧保持手段を実行する実行時間)の算出式が格納され、算出式によって算出された各クリーンルーム11A,11B毎の微陽圧保持手段の実行時間が格納されている。なお、前記算出式は、以下のとおりである。
【数1】

t:待機時間(min)
Y:残留ガス濃度(個/cft)
a:初期残留ガス濃度(個/cft)
b:換気回数(回/h)
α:拡散係数(≦1.0,完全拡散の場合は1.0)
【0046】
図2のフローチャートに基づいて、図1の建造物10における室圧制御方法の手順の一例を説明すると、以下のとおりである。なお、クリーンルーム11A,11Bにホルムアルデヒドガス(燻蒸・除染用薬品)を充満させ、クリーンルーム11A,11Bがホルムアルデヒドガスによって燻蒸・除染されており、燻蒸・除染されたクリーンルーム11A,11Bに対して室圧制御方法が実施されるものとする。
【0047】
クリーンルーム11A,11Bがホルムアルデヒドガスによって燻蒸・除染された後、建造物10の各設備を起動させる。各設備を起動させると、コントローラ20には、給気ファン14の起動信号(ON信号)がファン14から送信され、排気ファン15の起動信号(ON信号)がファン15から送信されるとともに、圧力センサ18が計測した給気ダクト12の静圧信号がセンサ18から送信される。
【0048】
コントローラ20には、圧力センサ19が計測した排気ダクト13の静圧信号がセンサ19から送信され、クリーンルーム11Aへの給気量が定風量ユニット16Aから送信されるとともに、クリーンルーム11Bへの給気量が定風量ユニット16Bから送信される。さらに、モーターダンパ17Aの差圧センサが計測したクリーンルーム11Aの差圧信号が差圧センサから送信され、ダンパ17Bの差圧センサが計測したクリーンルーム11Bの差圧信号が差圧センサから送信されるとともに、各モーターダンパ17A,17Bの起動信号(ON信号)がダンパ17A,17Bの制御装置から送信される。
【0049】
コントローラ20は、給気ファン14からその起動信号を受信すると、ファン14が起動したものと判断し、排気ファン15からその起動信号を受信すると、ファン15が起動したものと判断する。コントローラ20は、定風量ユニット16A,16Bから給気量を受信すると、クリーンルーム11A,11Bへの給気量が上昇したものと判断し、圧力センサ18から給気ダクト12の静圧信号を受信すると、ダクト12において給気量が上昇したものと判断する。コントローラ20は、圧力センサ19から排気ダクト13の静圧信号を受信すると、ダクト13において排気量が上昇したものと判断し、差圧センサからクリーンルーム11A,11Bの差圧信号を受信すると、それらクリーンルーム11A,11Bの室内気圧が上昇したものと判断するとともに、モーターダンパ17A,17Bからその起動信号を受信すると、ダンパ17A,17Bが起動したものと判断する。
【0050】
コントローラ20は、給気ファン14の起動信号、排気ファン15の起動信号、定風量ユニット16A,16Bによって計測された給気量(クリーンルーム11A,11Bへの給気量の上昇)、圧力センサ18によって計測された給気ダクト12の静圧信号(給気ダクト12における給気量の上昇)、圧力センサ19によって計測された排気ダクト13の静圧信号(排気ダクト13における排気量の上昇)、差圧センサによって計測された差圧信号(クリーンルーム11A,11Bの室内気圧の上昇)、モーターダンパ17A,17Bの起動信号を受信する(S−10)。
【0051】
コントローラ20は、それらのうちの少なくとも1つをトリガーとし、それらのうちの少なくとも1つを受信した後、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を予め設定された微陽圧の値に保持する微陽圧保持手段を実行するとともに、微陽圧保持手段を実行してからの待機時間(所定時間)を計測する時間計測手段を実行する(S−11)。
【0052】
微陽圧保持手段の具体例としては、コントローラ20が微陽圧保持信号をモーターダンパ17A,17Bの制御部に送信し、ダンパ17A,17Bの制御部がコントローラ20から受信した微陽圧保持信号にしたがって、微陽圧の値(微陽圧の範囲)に対応するダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量を主記憶部から抽出し、抽出した空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を主記憶部から抽出しつつ、ダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を抽出した旋回角度に調節する。それによって、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が微陽圧の範囲内に保持される。
【0053】
なお、微陽圧保持手段を開始するトリガーとして、給気ファン14の起動信号、排気ファン15の起動信号、定風量ユニット16A,16Bからの給気量、給気ダクト12の静圧信号、排気ダクト13の静圧信号、クリーンルーム11A,11Bの差圧信号、モーターダンパ17A,17Bの起動信号のうちの少なくとも1つをトリガーとするときは、それらのうちの最低1つを受信した場合のみならず、それらのうちの2つ以上を受信した場合を含む。ただし、トリガーはそれらに限定されず、空調室における他の事象をトリガーとすることもできる。
【0054】
微陽圧保持手段の実行中では、各クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が+3〜+10Pa(好ましくは、+3〜+5Pa)の微陽圧に保持され、クリーンルーム11A,11Bに残留するホルムアルデヒドガス(残留ガス)が排気ダクト13から建造物10の外部に次第に排気され、クリーンルーム11A,11Bのホルムアルデヒドガスの濃度が次第に低下する。なお、微陽圧保持手段の実行中において、各クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が微陽圧に保持されるから、外部からクリーンルーム11A,11Bに空気が進入することはない。
【0055】
次に、コントローラ20は、微陽圧保持手段を実行してから待機時間(所定時間)が経過したかを判断する(S−12)。待機時間は、前記算出式によって算出された時間であり、クリーンルーム11A,11B毎に設定されている。コントローラ20は、待機時間が経過していないと判断すると、それらクリーンルーム11A,11Bに対して引き続き微陽圧保持手段を実行する(S−13)。
【0056】
微陽圧保持手段の継続中において、モーターダンパ17A,17Bに内蔵された差圧センサは、それらクリーンルーム11A,11Bの室内気圧と基準圧との差圧を計測する(S−14)。モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧センサが計測した差圧が予め設定された微陽圧(+3〜+10Pa)の範囲内にあるかを判断する(S−15)。各種の外乱(ドアの開閉、窓の開閉、局所給気装置の起動・停止、局所排気装置の起動・停止等)によって各クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が変動し、差圧が微陽圧の範囲から外れると、モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧が微陽圧の範囲内にないと判断する。
【0057】
差圧が微陽圧の範囲内にない判断とすると、モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧を微陽圧の範囲に戻すために必要なダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量を主記憶部から抽出し、抽出した空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を主記憶部から抽出しつつ、ダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を抽出した旋回角度に調節する(S−16)。
【0058】
モーターダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を調節することによって、ダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量が変わり、クリーンルーム11A,11Bからの空気の排気量が変化する(S−17)。それによってクリーンルーム11A,11Bの室内気圧が微陽圧の範囲に復帰する(S−18)。モーターダンパ17A,17Bの制御部は、フィードバック制御を実行しつつ、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を微陽圧の範囲内に保持する。
【0059】
モーターダンパ17A,17Bの制御部は、コントローラ20から微陽圧保持信号を受信した後、コントローラ20から陽圧保持信号(微陽圧終了信号)を受信するまでの間、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を微陽圧に保持する。微陽圧保持手段を実行中にコントローラ20は、微陽圧保持信号をダンパ17A,17Bの制御部に送信してからの時間の計測を継続し(S−11)、微陽圧保持手段を実行してから待機時間(所定時間)が経過したかを判断する(S−12)。待機時間が経過していない場合、それらクリーンルーム11A,11Bに対して引き続き微陽圧保持手段が実行される。
【0060】
ステップ12(S−12)において、コントローラ20は、微陽圧保持手段を実行してから待機時間(所定時間)が経過したと判断すると、微陽圧保持手段を終了し、陽圧保持手段を実行する(S−19)。陽圧保持手段では、コントローラ20が微陽圧終了信号をモーターダンパ17A,17Bの制御部に送信するとともに、陽圧保持信号をダンパ17A,17Bの制御部に送信する。モーターダンパ17A,17Bの制御部は、微陽圧終了信号にしたがって微陽圧保持を終了するとともに、陽圧保持信号にしたがってクリーンルーム11A,11Bの室内気圧を微陽圧から陽圧に変更する。
【0061】
なお、コントローラ20は、クリーンルーム11A,11Bのうちの一方の待機時間が経過し、他方の待機時間が未経過の場合、クリーンルーム11A,11Bの一方に対して微陽圧保持手段を終了して陽圧保持手段を実行し(S−19)、クリーンルーム11A,11Bの他方に対して微陽圧保持手段を引き続き実行する。
【0062】
コントローラ20から陽圧保持信号を受信したモーターダンパ17A,17Bの制御部は、陽圧の値(陽圧の範囲)に対応するダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量を主記憶部から抽出し、抽出した空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を主記憶部から抽出しつつ、ダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を抽出した旋回角度に調節する。それによって、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が陽圧の範囲内に保持される。陽圧保持手段の実行中において、各クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が陽圧に保持されるから、外部からクリーンルーム11A,11Bに空気が進入することはない。
【0063】
陽圧保持手段の実行中では、各クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が+10〜+60Pa(好ましくは、+15〜+45Pa)の陽圧に保持される。なお、待機時間(所定時間)が経過した場合、クリーンルーム11A,11Bに残留するホルムアルデヒドガス(残留ガス)が排気ダクト13から建造物10の外部に排気され、クリーンルーム11A,11Bのホルムアルデヒドガスのガス濃度が低濃度または略0になっている。
【0064】
モーターダンパ17A,17Bに内蔵された差圧センサは、それらクリーンルーム11A,11Bの室内気圧と基準圧との差圧を計測する(S−20)。モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧センサが計測した差圧が予め設定された陽圧(+10〜+60Pa)の範囲内にあるかを判断する(S−21)。各種の外乱によって各クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が変動し、差圧が陽圧の範囲から外れると、モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧が陽圧の範囲内にないと判断する。
【0065】
差圧が陽圧の範囲内にない判断とすると、モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧を陽圧の範囲に戻すために必要なダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量を主記憶部から抽出し、抽出した空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を主記憶部から抽出しつつ、ダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を抽出した旋回角度に調節する(S−22)。
【0066】
モーターダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を調節することによって、ダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量が変わり、クリーンルーム11A,11Bからの空気の排気量が変化する(S−23)。それによって、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が陽圧の範囲に復帰する(S−24)。モーターダンパ17A,17Bの制御部は、フィードバック制御を実行しつつ、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を陽圧の範囲内に保持する。
【0067】
陽圧保持手段を実行中にコントローラ20は、この室圧制御方法を終了するかを判断する(S−25)。室圧制御方法を終了する信号が入力されると、コントローラ20は、各設備のスイッチをOFFにして室圧制御方法を終了する。室圧制御方法を継続する場合、各設備のスイッチがON状態のままとなり、ステップ20(S−20)からの手順を実施し、陽圧保持手段を継続して実行する。
【0068】
図1の建造物10において実施される室圧制御方法は、クリーンルーム11A,11Bに対する空調運転開始時にモーターダンパ17A,17Bを利用して排気量を調節し、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を予め設定された微陽圧に保持するから、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が外乱によって変動したとしても、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を微陽圧に保持することができ、クリーンルーム11A,11Bに対する空調運転開始時から微陽圧保持手段の終了時までの間にクリーンルーム11A,11Bの室内気圧が負圧になることはなく、外部からクリーンルーム11A,11Bに空気が進入することによるクリーンルーム11A,11Bの汚染を防ぐことができる。
【0069】
室圧制御方法は、微陽圧保持手段を実行してから所定時間経過後に陽圧保持手段を実行するから、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が外乱によって変動したとしても、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を陽圧に保持することができ、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が負圧になることはなく、外部からクリーンルーム11A,11Bに空気が進入することによるクリーンルーム11A,11Bの汚染を防ぐことができる。
【0070】
この室圧制御方法は、燻蒸・除染した後のクリーンルーム11A,11Bに対する空調運転開始時から所定時間経過までの間に微陽圧保持手段を実行するから、ホルムアルデヒドガス(燻蒸・除染用薬品)をクリーンルーム11A,11Bから室外に排気することができるのみならず、調運転開始時からクリーンルーム11A,11Bの室内気圧が微陽圧に保持され、調運転開始時に陽圧保持手段を直ちに実行する場合と比較し、所定時間経過後に微陽圧保持手段から陽圧保持手段に切り替えたとしても、図3に示すように、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が急上昇することはなく、クリーンルーム11A,11Bの建具の目地からのホルムアルデヒドガスの漏出を防ぐことができ、空調運転を開始したクリーンルーム11A,11Bから通路や隣室へのホルムアルデヒドガスの漏出を防ぐことができる。
【0071】
図4は、室圧制御方法を実施する建造物10の他の一例を示す設備構成図であり、図5は、本発明の室圧制御方法を説明するフローチャートの他の一例である。図6は、空調運転開始時からガス濃度が下がるまでの間に微陽圧保持手段を実行した場合の室内気圧の変動の他の一例を示す図である。図6では、クリーンルーム11A,11B(空調室)にホルムアルデヒドガス(燻蒸・除染用薬品)を充満させ、クリーンルーム11A,11Bをホルムアルデヒドガスで燻蒸・除染した後に微陽圧保持手段を実行し、微陽圧保持手段を実行してからクリーンルーム11A,11Bの測定ガス濃度(残留ガス)が設定ガス濃度よりも下がった後に陽圧保持手段を実行した場合の室内気圧の変動を示す。
【0072】
図4の建造物10が図1のそれと異なるところは、濃度センサ24,25を備えている点にあり、その他の構成は図1の建造物10と同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、図4の建造物10におけるその他の構成の詳細な説明は省略する。
【0073】
他の一例として示す室圧制御方法を実施する建造物10は、屋外の空気を建造物10内に施設されたそれらクリーンルーム11A,11Bに供給する給気ダクト12と、それらクリーンルーム11A,11Bから屋外に空気を排出する排気ダクト13と、クリーンルーム11A,11Bに空気を給気する給気ファン14と、クリーンルーム11A,11Bから空気を排気する排気ファン15と、定風量ユニット16A,16Bおよびモーターダンパ17A,17Bと、圧力センサ18,19および濃度センサ24,25と、コントローラ20(制御盤)とを備えている。
【0074】
濃度センサ24は、インターフェイス21を介してコントローラ20に接続され、その検出部24Aがクリーンルーム11Aに設置されている。濃度センサ24は、クリーンルーム11Aに残存するホルムアルデヒドガスのガス濃度を測定し、測定したガス濃度信号をコントローラ20に送信する。濃度センサ25は、インターフェイス21を介してコントローラ20に接続され、その検出部25Aがクリーンルーム11Bに設置されている。濃度センサ25は、クリーンルーム11Bに残存するホルムアルデヒドガスのガス濃度を測定し、測定したガス濃度信号をコントローラ20に送信する。
【0075】
図5のフローチャートに基づいて、図4の建造物10における室圧制御方法の手順の一例を説明すると、以下のとおりである。なお、図1の建造物10と同様に、クリーンルーム11A,11Bにホルムアルデヒドガス(燻蒸・除染用薬品)を充満させ、クリーンルーム11A,11Bがホルムアルデヒドガスによって燻蒸・除染されており、燻蒸・除染されたクリーンルーム11A,11Bに対して室圧制御方法が実施されるものとする。
【0076】
なお、コントローラ20の主記憶装置には、微陽圧保持手段を実行してから陽圧保持手段の実行を開始するまでの待機時間(所定時間)の計算式やその算出式によって算出された各クリーンルーム11A,11B毎の微陽圧保持手段の実行時間は格納されておらず、その代わりに各クリーンルーム11A,11Bにおけるホルムアルデヒドガスの設定ガス濃度(微陽圧保持手段から陽圧保持手段に切り替えるためのガス濃度)が格納されている。
【0077】
また、モーターダンパ17A,17Bの制御装置の主記憶部には、クリーンルーム11A,11Bの予め設定された微陽圧の範囲(+3〜+10Pa)が格納され、クリーンルーム11A,11Bの予め設定された陽圧の範囲(+10〜+60Pa)が格納されている。ダンパ17A,17Bの制御装置の主記憶部には、クリーンルーム11A,11Bに設定された微陽圧の範囲とダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量との相関関係が格納され、微陽圧に対応する空気通過量とその空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度との相関関係が格納されている。クリーンルーム11A,11Bに設定された陽圧の範囲とダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量との相関関係が格納され、陽圧に対応する空気通過量とその空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度との相関関係が格納されている。
【0078】
クリーンルーム11A,11Bがホルムアルデヒドガスによって燻蒸・除染された後、建造物10の各設備を起動させる。各設備を起動させると、コントローラ20には、給気ファン14の起動信号(ON信号)がファン14から送信され、排気ファン15の起動信号(ON信号)がファン15から送信されるとともに、圧力センサ18が計測した給気ダクト12の静圧信号がセンサ18から送信される。コントローラ20には、圧力センサ19が計測した排気ダクト13の静圧信号がセンサ19から送信され、クリーンルーム11Aへの給気量が定風量ユニット16Aから送信されるとともに、クリーンルーム11Aへの給気量が定風量ユニット16Bから送信される。
【0079】
コントローラ20には、モーターダンパ17Aの差圧センサが計測したクリーンルーム11Aの差圧信号が差圧センサから送信され、ダンパ17Bの差圧センサが計測したクリーンルーム11Bの差圧信号が差圧センサから送信されるとともに、各モーターダンパ17A,17Bの起動信号(ON信号)がダンパ17A,17Bの制御装置から送信される。コントローラ20には、濃度センサ24が測定したクリーンルーム11Aのホルムアルデヒドガスの測定ガス濃度信号がセンサ24から送信され、濃度センサ25が測定したクリーンルーム11Bのホルムアルデヒドガスの測定ガス濃度信号がセンサ25から送信される。
【0080】
コントローラ20は、給気ファン14の起動信号、排気ファン15の起動信号、定風量ユニット16A,16Bによって計測された給気量(クリーンルーム11A,11Bへの給気量の上昇)、圧力センサ18によって計測された給気ダクト12の静圧信号(給気ダクト12における給気量の上昇)、圧力センサ19によって計測された排気ダクト13の静圧信号(排気ダクト13における排気量の上昇)、差圧センサによって計測された差圧信号(クリーンルーム11A,11Bの室内気圧の上昇)、モーターダンパ17A,17Bの起動信号、クリーンルーム11A,11Bのホルムアルデヒドガスの測定ガス濃度信号を受信する(S−30)。
【0081】
コントローラ20は、それらのうちの少なくとも1つをトリガーとし、それらのうちの少なくとも1つを受信した後、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を予め設定された微陽圧の値に保持する微陽圧保持手段を実行する。さらに、コントローラ20は、濃度センサ24,25が測定したクリーンルーム11A,11Bに残存するホルムアルデヒドガスの測定ガス濃度と主記憶装置に格納した設定ガス濃度とを比較するガス濃度比較手段を実行する(S−31)。
【0082】
給気ファン14の起動信号、排気ファン15の起動信号、定風量ユニット16A,16Bからの給気量、給気ダクト12の静圧信号、排気ダクト13の静圧、クリーンルーム11A,11Bの差圧信号、モーターダンパ17A,17Bの起動信号、ホルムアルデヒドガスの測定ガス濃度信号のうちの少なくとも1つをトリガーとするとは、それらのうちの最低1つを受信した場合のみならず、それらのうちの2つ以上を受信した場合を含む。
【0083】
微陽圧保持手段では、コントローラ20が微陽圧保持信号をモーターダンパ17A,17Bの制御部に送信し、ダンパ17A,17Bの制御部がコントローラ20から受信した微陽圧保持信号にしたがって、微陽圧の値に対応するダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量を主記憶部から抽出し、抽出した空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を主記憶部から抽出しつつ、ダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を抽出した旋回角度に調節する。
【0084】
微陽圧保持手段の実行中では、各クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が+3〜+10Paの微陽圧に保持され、クリーンルーム11A,11Bに残留するホルムアルデヒドガス(残留ガス)が排気ダクト13から建造物10の外部に次第に排気され、クリーンルーム11A,11Bのホルムアルデヒドガスのガス濃度が次第に低下する。微陽圧保持手段の実行中、濃度センサ24,25は、クリーンルーム11A,11Bのホルムアルデヒドガスのガス濃度を測定し、測定したガス濃度信号をコントローラ20に送信する。
【0085】
コントローラ20は、微陽圧保持手段を実行しつつ、クリーンルーム11A,11Bのホルムアルデヒドガスの測定ガス濃度が設定ガス濃度以下に下がったかを判断する(S−32)。設定ガス濃度は、クリーンルーム11A,11B毎に設定されている。コントローラ20は、測定ガス濃度が設定ガス濃度以下ではないと判断すると、それらクリーンルーム11A,11Bに対して引き続き微陽圧保持手段を実行する(S−33)。
【0086】
微陽圧保持手段の継続中において、モーターダンパ17A,17Bに内蔵された差圧センサは、それらクリーンルーム11A,11Bの室内気圧と基準圧との差圧を計測する(S−34)。モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧センサが計測した差圧が予め設定された微陽圧の範囲内にあるかを判断する(S−35)。各種の外乱によって各クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が変動し、差圧が微陽圧の範囲から外れると、モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧が微陽圧の範囲内にないと判断する。
【0087】
差圧が微陽圧の範囲内にない判断とすると、モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧を微陽圧の範囲に戻すために必要なダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量を主記憶部から抽出し、抽出した空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を主記憶部から抽出しつつ、ダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を抽出した旋回角度に調節する(S−36)。
【0088】
モーターダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を調節することによって、ダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量が変わり、クリーンルーム11A,11Bからの空気の排気量が変化する(S−37)。それによって、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が微陽圧の範囲に復帰する(S−38)。
【0089】
モーターダンパ17A,17Bの制御部は、コントローラ20から微陽圧保持信号を受信した後、コントローラ20から陽圧保持信号(微陽圧終了信号)を受信するまでの間、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を微陽圧に保持する。微陽圧保持手段を実行中にコントローラ20は、クリーンルーム11A,11Bに残存するホルムアルデヒドガスの測定ガス濃度と設定ガス濃度とを比較するガス濃度比較手段を継続し(S−31)、クリーンルーム11A,11Bのホルムアルデヒドガスの測定ガス濃度が設定ガス濃度以下に下がったかを判断する(S−32)。測定ガス濃度が設定ガス濃度以下でない場合、それらクリーンルーム11A,11Bに対して引き続き微陽圧保持手段が実行される。
【0090】
ステップ32(S−32)において、コントローラ20は、クリーンルーム11A,11Bのホルムアルデヒドガスの測定ガス濃度が設定ガス濃度以下に下がったと判断すると、微陽圧保持手段を終了し、陽圧保持手段を実行する(S−39)。コントローラ20は、微陽圧終了信号をモーターダンパ17A,17Bの制御部に送信するとともに、陽圧保持信号をダンパ17A,17Bの制御部に送信する。モーターダンパ17A,17Bの制御部は、微陽圧終了信号にしたがって微陽圧保持を終了するとともに、陽圧保持信号にしたがってクリーンルーム11A,11Bの室内気圧を微陽圧から陽圧に変更する。
【0091】
なお、コントローラ20は、クリーンルーム11A,11Bのうちの一方の測定ガス濃度が設定ガス濃度以下に下がり、他方の測定ガス濃度が設定ガス濃度を超過する場合、クリーンルーム11A,11Bの一方に対して微陽圧保持手段を終了して陽圧保持手段を実行し(S−39)、クリーンルーム11A,11Bの他方に対して微陽圧保持手段を引き続き実行する。
【0092】
陽圧保持手段においてモーターダンパ17A,17Bの制御部は、陽圧の範囲に対応するダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量を主記憶部から抽出し、抽出した空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度(ダンパ開度)を主記憶部から抽出しつつ、ダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を抽出した旋回角度に調節する。それによって、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が陽圧の範囲(+15〜+45Pa)内に保持される。なお、陽圧保持手段の実行時では、クリーンルーム11A,11Bのホルムアルデヒドガスのガス濃度が低濃度または略0になっている。
【0093】
モーターダンパ17A,17Bに内蔵された差圧センサは、それらクリーンルーム11A,11Bの室内気圧と基準圧との差圧を計測する(S−40)。モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧センサが計測した差圧が予め設定された陽圧の範囲(+10〜+60Pa)内にあるかを判断する(S−41)。各種の外乱によって各クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が変動し、差圧が陽圧の範囲から外れると、モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧が陽圧の範囲内にないと判断する。
【0094】
差圧が陽圧の範囲内にない判断とすると、モーターダンパ17A,17Bの制御部は、差圧を陽圧の範囲に戻すために必要なダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量を主記憶部から抽出し、抽出した空気通過量に対応するダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を主記憶部から抽出しつつ、ダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を抽出した旋回角度に調節する(S−42)。
【0095】
モーターダンパ17A,17Bの旋回羽根22の旋回角度を調節することによって、ダンパ17A,17Bの空気流路を通過する空気通過量が変わり、クリーンルーム11A,11Bからの空気の排気量が変化する(S−43)。それによって、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が陽圧の範囲に復帰する(S−44)。
【0096】
陽圧保持手段を実行中にコントローラ20は、この室圧制御方法を終了するかを判断する(S−45)。室圧制御方法を終了する信号が入力されると、コントローラ20は、各設備のスイッチをOFFにして室圧制御方法を終了する。室圧制御方法を継続する場合、各設備のスイッチがON状態のままとなり、ステップ40(S−40)からの手順を実施し、陽圧保持手段を継続して実行する。
【0097】
図4の建造物10において実施される室圧制御方法は、クリーンルーム11A,11Bに対する空調運転開始時にモーターダンパ17A,17Bを利用して排気量を調節し、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を予め設定された微陽圧に保持するから、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が外乱によって変動したとしても、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を微陽圧に保持することができ、クリーンルーム11A,11Bに対する空調運転開始時から微陽圧保持手段の終了時までの間にクリーンルーム11A,11Bの室内気圧が負圧になることはなく、外部からクリーンルーム11A,11Bに空気が進入することによるクリーンルーム11A,11Bの汚染を防ぐことができる。
【0098】
室圧制御方法は、微陽圧保持手段を実行してから測定ガス濃度が設定ガス濃度以下に下がった後に陽圧保持手段を実行するから、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が外乱によって変動したとしても、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧を陽圧に保持することができ、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が負圧になることはなく、外部からクリーンルーム11A,11Bに空気が進入することによるクリーンルーム11A,11Bの汚染を防ぐことができる。
【0099】
この室圧制御方法は、燻蒸・除染した後のクリーンルーム11A,11Bに対する空調運転開始時からホルムアルデヒドガス(燻蒸・除染用薬品)の濃度が下がるまでの間に微陽圧保持手段を実行するから、ホルムアルデヒドガスをクリーンルーム11A,11Bから室外に排気することができるのみならず、調運転開始時からクリーンルーム11A,11Bの室内気圧が微陽圧に保持され、調運転開始時から陽圧保持手段を直ちに実行する場合と比較し、ホルムアルデヒドガスの濃度が下がった後に微陽圧保持手段から陽圧保持手段に切り替えたとしても、図6に示すように、クリーンルーム11A,11Bの室内気圧が急上昇することはなく、クリーンルーム11A,11Bの建具の目地からのホルムアルデヒドガスの漏出を防ぐことができ、空調運転を開始したクリーンルーム11A,11Bから通路や隣室へのホルムアルデヒドガスの漏出を防ぐことができる。
【0100】
図1または図4では、ホルムアルデヒドガスによって燻蒸・除染されたクリーンルーム11A,11Bに対して室圧制御方法が実施される場合を説明したが、単に空調運転を開始する建造物10において、図2または図5のフローチャートに基づく室圧制御方法を実施することもできる。
【符号の説明】
【0101】
10 建造物
11A,B クリーンルーム
12 給気ダクト
13 排気ダクト
14 給気ファン
15 排気ファン
16A,B 定風量ユニット
17A,B モーターダンパ
18 圧力センサ
19 圧力センサ
20 コントローラ(制御盤)
24 濃度センサ
25 濃度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調空間を有する空調室に対する空調運転開始時に、前記空調室への空気の給気量と該空調室からの空気の排気量との少なくとも一方を調節して該空調室の室内気圧を制御する空調運転開始時の室圧制御方法において、
前記空調運転開始時に、前記給気量と前記排気量とのうちの少なくとも一方を調節して前記空調室の室内気圧を予め設定された微陽圧に保持する微陽圧保持手段を実行することを特徴とする空調運転開始時の室圧制御方法。
【請求項2】
前記微陽圧保持手段が、前記空調室に燻蒸・除染用薬品を充満させて該空調室を燻蒸・除染した後のその空調室に対して実行される請求項1に記載の室圧制御方法。
【請求項3】
前記室圧制御方法では、前記微陽圧保持手段を実行してから所定時間経過した後に、前記給気量と前記排気量とのうちの少なくとも一方を調節して前記空調室の室内気圧を前記微陽圧保持手段におけるそれよりも高い予め設定された陽圧に保持する陽圧保持手段を実行する請求項1または請求項2に記載の室圧制御方法。
【請求項4】
前記所定時間が、前記空調室に残留する前記燻蒸・除染用薬品の濃度が下がるまでの予め設定された時間である請求項3に記載の室圧制御方法。
【請求項5】
前記微陽圧保持手段と前記陽圧保持手段とが、前記空調室に空気を給気する給気ファンと、前記空調室から空気を排気する排気ファンと、ダンパ開度によって前記空調室への空気の給気量と該空調室からの空気の排気量とのいずれかを調節可能なモーターダンパとを利用して実行される請求項3または請求項4に記載の室圧制御方法。
【請求項6】
前記微陽圧保持手段では、前記所定時間が経過するまでの間に、前記空調室の室内気圧が予め設定された微陽圧から外れると、前記モーターダンパのダンパ開度を調節して前記室内気圧を設定された微陽圧に戻す請求項5に記載の室圧制御方法。
【請求項7】
前記室圧制御方法では、前記空調室に残留する前記燻蒸・除染用薬品の濃度が設定値よりも下がった後に、前記給気量と前記排気量とのうちの少なくとも一方を調節して前記空調室の室内気圧を前記微陽圧保持手段におけるそれよりも高い予め設定された陽圧に保持する陽圧保持手段を実行する請求項2に記載の室圧制御方法。
【請求項8】
前記微陽圧保持手段と前記陽圧保持手段とが、前記空調室に空気を給気する給気装置と、前記空調室から空気を排気する排気装置と、ダンパ開度によって前記空調室への空気の給気量と該空調室からの空気の排気量とのいずれかを調節可能なモーターダンパと、前記空調室の前記燻蒸・除染用薬品の濃度を測定する濃度センサとを利用して実行される請求項7に記載の室圧制御方法。
【請求項9】
前記微陽圧保持手段では、前記空調室に残留する前記燻蒸・除染用薬品の濃度が設定値を超えている間に、前記空調室の室内気圧が予め設定された微陽圧から外れると、前記モーターダンパのダンパ開度を調節して前記室内気圧を設定された微陽圧に戻す請求項8に記載の室圧制御方法。
【請求項10】
前記微陽圧保持手段によって保持される前記空調室の予め設定された室内気圧が、+3〜+10Paの範囲にあり、前記陽圧保持手段によって保持される前記空調室の予め設定された室内気圧が、+10〜+60Paの範囲にある請求項3ないし請求項9いずれかに記載の室圧制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate