説明

空間光変調器の製造方法、空間光変調器、照明光発生装置および露光装置

【課題】空間光変調素子の製造方法。
【解決手段】空間光変調器の製造方法であって、電気信号により伸縮する電気機械変換部の一端を、駆動側基板に結合する結合ステップと、光を反射する反射部を支持する被駆動側基板における反射部を支持する面の裏面に、変形可能な応力緩和部を形成する形成ステップと、電気機械変換部の他端を応力緩和部に結合して、駆動側基板および被駆動側基板を一体化する一体化ステップとを備える。上記結合ステップにおいて、駆動側基板に電気機械変換部を複数結合し、形成ステップにおいて、被駆動側基板に応力緩和部を複数形成し、一体化ステップにおいて、電気機械変換部および応力緩和部を複数一括して結合してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間光変調器の製造方法、空間光変調器、照明光発生装置および露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子で発生した駆動力を、弾性部材を介して伝えることによりマイクロミラーを揺動させる構造を有して、高速且つ正確に動作するマイクロミラーデバイスがある(特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特許第4335114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
空間光変調器の製造において、圧電素子、弾性部材およびマイクロミラーは互いに異なる材料で個別に作製される。このため、空間光変調器は組み立て工数が多く、生産性を向上させることが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決すべく、本発明の第一態様として、空間光変調器の製造方法であって、電気信号により伸縮する電気機械変換部の一端を、駆動側基板に結合する結合ステップと、光を反射する反射部を支持する被駆動側基板における反射部を支持する面の裏面に、変形可能な応力緩和部を形成する形成ステップと、電気機械変換部の他端を応力緩和部に結合して、駆動側基板および被駆動側基板を一体化する一体化ステップとを備える製造方法が提供される。
【0005】
また、本発明の第二態様として、上記製造方法により製造された空間光変調器が提供される。更に、本発明の第三態様として、上記空間光変調器を備えた照明光発生装置が提供される。また更に、本発明の第四態様として、上記照明光発生装置を備えた露光装置が提供される。
【0006】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】空間光変調器100の外観を示す模式的な斜視図である。
【図2】単位素子200の分解斜視図である。
【図3】単位素子200の断面図である。
【図4】単位素子200の断面図である。
【図5】空間光変調器100の製造過程を示す断面図である。
【図6】空間光変調器100の製造過程を示す断面図である。
【図7】空間光変調器100の製造過程を示す断面図である。
【図8】空間光変調器100の製造過程を示す断面図である。
【図9】空間光変調器100の製造過程を示す断面図である。
【図10】空間光変調器100の製造過程を示す断面図である。
【図11】空間光変調器100の外観を示す模式的な斜視図である。
【図12】単位素子200の分解斜視図である。
【図13】単位素子200の断面図である。
【図14】単位素子200の断面図である。
【図15】単位素子200の分解斜視図である。
【図16】単位素子200の断面図である。
【図17】単位素子200の断面図である。
【図18】単位素子200の分解斜視図である。
【図19】単位素子200の断面図である。
【図20】単位素子200の断面図である。
【図21】単位素子200の分解斜視図である。
【図22】単位素子200の断面図である。
【図23】単位素子200の断面図である。
【図24】露光装置400の模式図である。
【図25】露光装置400における空間光変調器100の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、空間光変調器100の外観を示す模式的斜視図である。空間光変調器100は、基板210と、基板210上に二次元的に配列された複数の単位素子200を備える。単位素子200の各々は駆動部220と反射面232を有する。
【0010】
基板210の上でマトリクスを形成する複数の反射面232の各々は、駆動部220を介して基板から支持される。また、反射面232は、それぞれ数μmから百数十μm程度の寸法を有して、基板210に対して個別に揺動させることができる。図示のように一部の反射部230が揺動して、基板210に対して傾斜した状態で光を反射させると、反射光の照度分布が変化する。これにより、反射部230の揺動を制御することにより任意の照度分布を形成できる。
【0011】
図2は、ひとつの単位素子200の模式的な分解斜視図である。単位素子200の各々は、駆動部220と反射部230とを組み合わせて形成され、空間光変調器100においては、複数の単位素子200のそれぞれが個別に同様の構造を有する。
【0012】
駆動部220は、基板210の上面に対して直立する、互いに平行な一対の圧電素子222を含む。圧電素子222の各々は、柱状の圧電材料と、圧電材料の両端に配されて圧電材料に駆動電圧を印加する図示していない一対の電極とを含む電気機械変換部を形成する。
【0013】
また、圧電素子222の各々の上端面は、絶縁部224により被覆される。圧電素子222の各々の下端面は、図中に点線で示すように、基板210の上面に固定される。なお、圧電素子222の各々は、PZT等、印加電圧により伸長または収縮する圧電材料により形成される。また、この実施形態では圧電材料を用いたが、電歪材料を使用してもよい。
【0014】
反射部230は、反射面232、反射面支持部234およびフレクチャ236を有する。反射面支持部234は反射面232となる層を支持する基板であって、反射面232を全体に支持してその平坦性を維持する。一対のフレクチャ236は、反射面支持部234の下面から下方に伸びる。
【0015】
反射面支持部234およびフレクチャ236は一体的に形成されるが、反射面支持部234は十分な厚さを有して高い曲げ剛性を有する。これに対して、フレクチャ236は、反射面支持部234の厚さに対して相対的に細く、曲げ剛性も相対的に低い。
【0016】
フレクチャ236の下端は、接着材238を介して、圧電素子222の上端面に個別に固定される。接着材238としては、エポキシ樹脂等の接着材の他、はんだ合金等を使用することもできる。
【0017】
なお、反射面支持部234およびフレクチャ236は、例えば、リソグラフィ技術により整形された単結晶シリコンにより一体に形成できる。また、反射面232は、反射面支持部234の上面に堆積させた金属膜、例えば、アルミニウム薄膜により形成できる。
【0018】
図3は、単位素子200の模式的な断面図であり、図2に示したA−A断面を示す。図2と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0019】
図示のように、一対の圧電素子222の下端は、基板210の上面に固定される。一対の圧電素子222の上端は、絶縁部224および接着材238を介して、フレクチャ236の下端に個別に結合される。フレクチャ236は、反射面支持部234を下方から支持する。反射面支持部234の上面には、略水平に反射面232が支持される。
【0020】
図4は、単位素子200の模式的な断面図であり、図3に示した単位素子200の圧電素子222に駆動電圧が印加された状態を示す。図2および図3と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0021】
図示のように、図中で左側の圧電素子222は、図3に示した状態に対して収縮している。また、図中で右側の圧電素子222は、図3に示した状態に対して伸長している。これにより、反射面支持部234の図中左側は降下して、反射面支持部234の図中右側は上昇する。よって、反射面232は、図中左方に向かって傾斜する。圧電素子222に加える駆動電圧を変化させることにより、傾斜の大きさ、傾斜方向を変化させることができることはいうまでもない。
【0022】
また、反射面232が傾斜した場合、フレクチャ236は細いので容易に変形する。これにより、反射面支持部234が揺動した場合に生じる応力が緩和され、当該応力による反射面232の変形が防止される。
【0023】
なお、図4では、一対の圧電素子222の一方を収縮させ、他方を伸長させた。しかしながら、一方を伸縮させ、他方を固定したままでも反射部230を揺動させることができる。また、圧電素子222を形成し得る圧電材料の多くは圧縮強度が高いので、圧電素子222を収縮方向に限って動作させてもよい。
【0024】
再び図1を参照すると、反射部230のそれぞれに設けた上記のような構造に対して駆動電力を個別に制御することにより、複数の反射部230のそれぞれを個別に制御できる。よって、空間光変調器100にいったん反射させることにより任意の照射パターンを形成でき、可変光源、露光装置、画像表示装置、光スイッチ等として使用できる。
【0025】
図5から図10までは、図1から図4までに示した空間光変調器100の製造過程を示す断面図である。なお、図5から図10までに示すのは作製過程なので、空間光変調器100の対応する要素が異なる形状または状態で含まれている場合がある。そこで、これらの図について固有の参照番号を付与して各図の内容を説明した上で、図10において、空間光変調器100の要素との対応関係を示す。
【0026】
まず、図5に示すように、基板310上に、圧電材料を一面に堆積させる。これにより、基板310上に、圧電材料層320が形成される。
【0027】
基板210の材料としては、シリコン単結晶基板の他、化合物半導体基板、セラミックス基板等、平坦な表面を有する部材を広く使用できる。圧電材料層320の材料としては、例えば、基板310の材料の酸化物、窒化物等を使用できる。また、圧電材料層320の成膜方法としては、材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
【0028】
次に、図6に示すように、圧電材料層320の上面に、絶縁材料を一面に堆積させる。これにより、基板310、圧電材料層320および絶縁材料層330が積層された積層構造が形成される。絶縁材料層330の材料としては、例えば、基板310の材料の酸化物、窒化物等を使用できる。また、絶縁材料層330は、誘電率の高い多孔質体であってもよい。絶縁材料層330の成膜方法は、材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法から適宜選択できる。
【0029】
次に、図7に示すように、上記積層体をパターニングして、基板310上で柱状に成形する。ここで、例えば、加工対象を冷却しながら高密度プラズマによりブランク領域を除去する深堀り反応性イオンエッチング法により、圧電材料層320を柱状にパターニングできる。また、エッチング側面をフッ素系ガスにより保護しながら六フッ化硫黄ガス等で加工対象をエッチングするボッシュプロセスによっても圧電材料層320を柱状にパターニングできる。
【0030】
こうして、各々が柱状で一端が基板310に結合された圧電材料層320が基板310上にマトリクス状に配された部品が得られる。圧電材料層320の各々の下端は、基板310に対して固定されている。よって、圧電材料層320に対して駆動電圧が印加された場合、圧電材料層320は、基板310の法線方向に伸縮する。
【0031】
なお、図示は省いたが、圧電材料層320の表面には、圧電材料層320に駆動電圧を印加する電極を形成する段階も含まれる。また、基板310に、上記電極に電圧を供給する配線が設けられる場合もある。
【0032】
一方、図8に示すように、別途用意した基板340の一面をフォトリソグラフィにより加工して、多数の柱状部342を形成する。これにより、基板340の裏面に、複数の柱状部342を一括して形成できる。こうして、基板340の一面に、変形可能な柱状部342が形成される。
【0033】
柱状部342の各々は基板340全体に対して細いので曲げ剛性が低く、応力が作用した場合に容易に変形する。また、柱状部342が変形した場合でも、当該変形に起因する応力が、基板340の表面に及ぶことがない。
【0034】
なお、基板340単独の状態では、柱状部342は折れやすい。そこで、図中に点線で示すように、基板340の裏面に形成した犠牲層350により柱状部342を養生して、基板340の裏面を平坦化する。なお、犠牲層350としては、レジスト等を用いることができる。
【0035】
次に、図9に示すように、図8に示した基板340を、図7に示したパターニングされた積層体の上に接着する。このとき、基板340の柱状部342の各々が、柱状の積層体上面に一括して結合される。また、柱状部342の各々において、接着箇所は下端に限られる。こうして、圧電材料層320を備えた基板310と、柱状部342を有する基板340とが一体化される。
【0036】
更に、基板340の平坦な表面に反射膜材料が堆積され、反射膜360が形成される。反射膜360の材料としては、アルミニウム、銅、クロミウム等の金属またはその合金を例示できる。反射膜360の成膜方法は、材料に応じて、各種の物理気相析出法、化学気相析出法、鍍金法等から適宜選択できる。
【0037】
なお、反射膜360の形成に先立って、その下地となる基板340の表面を化学機械研磨して鏡面化してもよい。また、反射膜360そのものの表面を化学機械研磨して鏡面化してもよい。更に、基板340および反射膜360の両方を化学機械研磨してもよい。
【0038】
次に、図10に示すように、まず、犠牲層350を残したまま基板340を裁断した後、犠牲層350を除去する。ここで、犠牲層350を残したまま基板340を裁断することにより柱状部342が保護される。基板340は、例えば、レーザ加工により裁断できる。また、裁断により基板340の表面側と犠牲層350とが連通するので、液体または気体のエッチ剤により犠牲層350を容易に除去できる。
【0039】
こうして、図1から図4までに示した空間光変調器100と同じ構造を有する空間光変調器100が形成される。即ち、基板310は基板210に、圧電材料層320および絶縁材料層330は駆動部220に、基板340および反射膜360は反射部230にそれぞれ相当する。また、図8に示した柱状部342がフレクチャ236に相当する。
【0040】
上記のような空間光変調器100の製造方法では、微細な構造を有するフレクチャ236をリソグラフィ技術により基板340の裏面に一括して形成できるので生産性に優れる。また、複数の反射部230に相当する基板340を複数の駆動部220に対して一括して接着するので、空間光変調器100の製造工数を削減できる。
【0041】
更に、一体的に形成された反射面支持部234およびフレクチャ236を犠牲層350により保護した状態で裁断して分割するので、フレクチャ236が傷むことが防止される。よって、空間光変調器100の製造歩留りが高くなる。
【0042】
図11は、他の構造を有する空間光変調器100の斜視図である。この空間光変調器100は、以下に説明する部分を除くと、図2に示した空間光変調器100と同じ構造を有する。そこで、図1と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0043】
空間光変調器100は、順次積層された基板210、駆動部220および反射部230を備える点で、図1に示した空間光変調器100と共通する構造を有する。ただし、駆動部220は、ひとつの反射面232に対してより多数に分割されている。これにより、反射面232は複数の揺動軸について揺動する。
【0044】
図12は、図11に示した空間光変調器100の単位素子200の分解斜視図である。図11と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0045】
駆動部220は、基板210の上に矩形の四隅に配された柱状の二対の圧電素子222を有する。圧電素子222の各々は、基板210の上面に、互いに平行に略垂直に起立する。圧電素子222の各々は、図示していない一対の電極を有して、当該電極に印加される電圧に応じて個別に伸縮する電気機械変換部を形成する。
【0046】
反射部230は、反射面232、反射面支持部234およびフレクチャ236を有する。ここで、フレクチャ236の数は、対応する圧電素子222の数に応じて増加しており、反射面支持部234の四隅に対応して4本形成される。また、フレクチャ236の各々は、長方形の水平断面形状を有して、長辺が反射面支持部234の中心を包囲するように配される。
【0047】
反射面支持部234およびフレクチャ236は一体的に形成されているが、反射面支持部234は十分な厚さを有して高い曲げ剛性を有する。これに対して、フレクチャ236は、反射面支持部234の厚さに対して相対的に細く、相対的に曲げ剛性は低い。
【0048】
図13は、単位素子200の模式的な断面図であり、図12に示すB−B断面を示す。図11および図12と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0049】
図示のように、圧電素子222の下端は、基板210の上面に固定される。圧電素子222の上端は、絶縁部224および接着材238を介して、フレクチャ236の下端に個別に結合される。フレクチャ236は、反射面支持部234を下方から支持する。反射面支持部234の上面には、略水平に反射面232が支持される。
【0050】
図14は、単位素子200の模式的な断面図であり、図13に示した単位素子200の圧電素子222に駆動電圧が印加された状態を示す。図12および図13と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0051】
図示のように、図中で左側の圧電素子222は、図13に示した状態に対して収縮している。また、図中で右側の圧電素子222は、図13に示した状態に対して伸長している。なお、図示された一対の圧電素子222が伸縮するのに対して、図示されていない一対の圧電素子222は、収縮も伸長もしていない。
【0052】
これにより、反射面支持部234の図中左側は降下して、反射面支持部234の図中右側は上昇する。よって、反射面232は、図中左方に向かって傾斜する。図12に示したように、この単位素子200は2対の圧電素子222を有するので、伸縮させる圧電素子222の組み合わせを変更することにより、任意の揺動軸の回りに反射面支持部234を揺動させることができる。また、圧電素子222に加える駆動電圧を変化させることにより、傾斜の大きさ、傾斜方向を変化させることができる。
【0053】
更に、反射面支持部234および反射面232が揺動した場合、細いフレクチャ236は容易に変形する。これにより、反射面支持部234が揺動した場合に生じる応力が緩和されるので、当該応力による反射面232の変形が防止される。
【0054】
このように、多数の圧電素子222を備えた単位素子200により形成された空間光変調器100も、図5から図10に示した一連の製造工程により製造できる。即ち、図7に示した、圧電材料層および絶縁材料層の積層体をパターニングする段階において、積層体の分割パターンを変更することにより、上記の空間光変調器100の駆動部220を製造できる。
【0055】
また、図8に示した、基板340の裏面に柱状部342を形成する段階においてパターンを変更することにより、反射面支持部234およびフレクチャ236が一体となった部品を製造できる。更に、駆動部220とフレクチャ236を接着等により結合することにより、基板310および基板340を一体化できる。以下、反射面232を形成して、基板340を分割する工程は、図9および図10に示した場合と同様となる。
【0056】
図15は、他の構造を有する単位素子200の分解斜視図である。この単位素子200は、以下に説明する部分を除くと、図12に示した単位素子200と同じ構造を有する。また、この単位素子200は、図12に示した単位素子200に代えて、図11に示した空間光変調器100を形成できる。そこで、図12と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0057】
単位素子200は、フレクチャ236に固有の構造を有する。即ち、フレクチャ236は、反射面支持部234の下面と平行で、反射面支持部234の対角線方向に延在する長尺の板状部材を含む。フレクチャ236の一端は、反射面支持部234の下面において、当該下面の四隅に、接着材235によりそれぞれ接着される。フレクチャ236の他端は、絶縁部224の各々の上面において、内側の隅部に接着材238により接着される。
【0058】
また、フレクチャ236の少なくとも一部は、幅を減じられて曲げ剛性を下げられている。これにより、フレクチャ236は容易に曲げ変形を生じる。更に、フレクチャ236において幅が狭い部分には、陥没穴237が形成される。これにより、接着材238に対して狭い接着面積で高い接着強度が得られる。
【0059】
図16は、単位素子200の模式的な断面図であり、図15に示すC−C断面を示す。図15と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0060】
図示のように、接着材235、238は、フレクチャ236を接着した後も、それ自体の厚さを有する。これにより、接着されたフレクチャ236の各々の中央部は、反射面支持部234からも絶縁部224からも離間した状態になる。よって、フレクチャ236は、反射面支持部234に影響を与えることなく、独自に変形できる。
【0061】
図17は、単位素子200の模式的な断面図であり、図16に示した単位素子200の圧電素子222に駆動電圧が印加された状態を示す。図15および図16と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0062】
図示のように、図中で左側の圧電素子222は、図16に示した状態に対して収縮している。また、図中で右側の圧電素子222は、図16に示した状態に対して伸長している。更に、単位素子200において、図示されていない一対の圧電素子222は、収縮も伸長もしていない。これにより、反射面支持部234は図示のように揺動する。
【0063】
反射面支持部234および反射面232が揺動した場合、フレクチャ236は容易に変形して、反射面支持部234に生じる応力を緩和させる。これにより、反射面232の変形が防止される。
【0064】
上記のような単位素子200を複数備えた空間光変調器100も、図5から図10に示した一連の製造工程により製造できる。図8に示した、基板340の裏面に柱状部342を形成する段階を変更すれば、基板310および基板340を一体化する段階および基板340を分割する工程は、図9および図10に示した場合と同様に実施できる。
【0065】
なお、フレクチャ236は、反射面支持部234と同じ材料で作製できる。また、フレクチャ236は、金属膜等の他の材料により作製してもよい。接着材235、238としては、はんだ合金、樹脂等を使用できる。
【0066】
更に、フレクチャ236は、接着材235を省いて、反射面支持部234と一体的に形成してもよい。そのようなフレクチャ236は、反射面支持部234の裏面をフォトリソグラフィにより加工して形成できる。ただし、その場合も、フレクチャ236の一部が反射面支持部234の裏面から離間する形状とすることが好ましい。
【0067】
図18は、他の構造を有する単位素子200の分解斜視図である。この単位素子200は、以下に説明する部分を除くと、図12および図15に示した単位素子200と同じ構造を有する。また、この単位素子200は、図12および図15に示した単位素子200に代えて、図11に示した空間光変調器100を形成できる。そこで、図12および図15と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0068】
単位素子200は、フレクチャ236として、弾性変形し易い材料により形成された弾性シートを用いている。フレクチャ236の材料としては、シリコンゴム等のエラストマ等のシートを用いることができる。弾性シートにより形成されたフレクチャ236は、反射面支持部234の下面と略同じ面積を有する。
【0069】
ただし、図中に斜線で示すように、フレクチャ236は、反射面支持部234の下面に対して、部分的な接着領域で、接着材235により接着される。また、同様に、絶縁部224の上端面に対しても、部分的な接着領域で接着材238により接着される。接着材235、238としては、変成シリコン、エポキシ樹脂等、絶縁部224、反射面支持部234およびフレクチャ236のいずれに対しても接着強度が高いものを選択することが好ましい。また、接着材235、238それ自体が弾性変形し易い材料であることも好ましい。
【0070】
図19は、単位素子200の模式的な断面図であり、図18に示すD−D断面を示す。図18と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0071】
図示のように、フレクチャ236は、絶縁部224および反射面支持部234の間全体に埋めている。ただし、フレクチャ236が接着材235、238により結合されているのは、反射面支持部234または絶縁部224の一部である。なお、図示の例では、接着材235、238は同じ位置に配されているが、フレクチャ236の表裏で接着材235、238の位置をずらしてもよい。これにより、フレクチャ236の面方向の変形も利用できる。
【0072】
図20は、単位素子200の模式的な断面図であり、図19に示した単位素子200の圧電素子222に駆動電圧が印加された状態を示す。図18および図19と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0073】
図示のように、図中で左側の圧電素子222は、図19に示した状態に対して収縮している。また、図中で右側の圧電素子222は、図19に示した状態に対して伸長している。単位素子200において、図示されていない一対の圧電素子222は、収縮も伸長もしていない。これにより、反射面支持部234は図示のように揺動する。
【0074】
反射面支持部234および反射面232が揺動した場合、フレクチャ236は容易に変形して、反射面支持部234に生じる応力を緩和させる。これにより、反射面232の変形が防止される。
【0075】
上記のような単位素子200を複数備えた空間光変調器100も、図5から図10に示した一連の製造工程により製造できる。図8に示した、基板340の裏面に柱状部342を形成する段階を、弾性シートを貼付するように変更すれば、基板310および基板340を一体化する段階および基板340を分割する段階は、図9および図10に示した場合と同様に実施できる。フレクチャ236としての弾性シートは、基板340と共に分割される。
【0076】
図21は、他の構造を有する単位素子200の分解斜視図である。この単位素子200は、以下に説明する部分を除くと、図12、図15および図18に示した単位素子200と同じ構造を有する。また、この単位素子200は、図12、図15および図18に示した単位素子200に代えて、図11に示した空間光変調器100を形成できる。図12、図15および図18と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0077】
単位素子200は、フレクチャ236に固有の構造を有する。即ち、フレクチャ236は、反射面支持部234の下面に付着した、略球状のはんだ合金により形成される。フレクチャ236の下端は、絶縁部224の各々の上面に接着される。
【0078】
はんだ合金により形成されたフレクチャ236は、反射面支持部234および絶縁部224に対する接着剤を兼ねる。このため、この単位素子200では、接着材238は省かれる。
【0079】
また、はんだ合金により形成されたフレクチャ236は、それ自体が変形することにより、反射面支持部234に生じる応力を緩和する。よって、固体の状態で曲げ剛性の低いはんだ合金が好ましく選択される。
【0080】
更に、はんだ合金は、基板210、圧電素子222、絶縁部224および反射面支持部234のいずれと比較しても低い融点を有することが好ましい。これにより、熱により既存の部品を傷めることなくフレクチャ236を溶融させて、駆動部220および反射部230を結合できる。
【0081】
図22は、単位素子200の断面図であり、図21に示すE−E断面を示す。図21と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0082】
図示のように、はんだ合金により形成されたフレクチャ236は、反射面支持部234および絶縁部224に接着された後も、それ自体の高さを有する。これにより、フレクチャ236の各々の中央部は、反射面支持部234および絶縁部224の傾斜が相互に変化した場合に、反射面支持部234を変形させることなく自身が変形する。
【0083】
図23は、単位素子200模式的の断面図であり、図22に示した単位素子200の圧電素子222に駆動電圧が印加された状態を示す。図21および図22と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0084】
図示のように、図中で左側の圧電素子222は、図22に示した状態に対して収縮している。また、図中で右側の圧電素子222は、図22に示した状態に対して伸長している。更に、単位素子200において、図示されていない一対の圧電素子222は、収縮も伸長もしていない。これにより、反射面支持部234は図示のように揺動する。
【0085】
反射面支持部234および反射面232が揺動した場合、フレクチャ236は変形して反射面支持部234に生じる応力を緩和させる。これにより、反射面232の変形が防止される。
【0086】
上記のような単位素子200を複数備えた空間光変調器100も、図5から図10に示した一連の製造工程により製造できる。図8に示した、基板340の裏面に柱状部342を形成する段階を省くことができる。基板310および基板340を一体化する段階および基板340を分割する工程は、図9および図10に示した場合と同様に実施できる。
【0087】
図24は、露光装置400の模式図である。この露光装置400は、空間光変調器100を備え、光源マスク最適化法を実行する場合に、照明光学系600に任意の照度分布を有する照明光を入射できる。即ち、露光装置400は、照明光発生部500、照明光学系600および投影光学系700を備える。
【0088】
照明光発生部500は、光源520、制御部510、空間光変調器100、プリズム530、結像光学系540、ビームスプリッタ550および計測部560を含む。光源520は、照明光Lを発生する。光源520が発生した照明光Lは、光源520の発光機構の特性に応じた照度分布を有する。このため、照明光Lは、照明光Lの光路と直交する断面において原画像Iを有する。
【0089】
光源520から出射された照明光Lは、プリズム530に入射する。プリズム530は、照明光Lを空間光変調器100に導いた後、再び外部に出射させる。空間光変調器100は、制御部510の制御の下に入射した照明光Lを変調する。空間光変調器100の構造と動作については、既に説明した通りである。
【0090】
空間光変調器100を経てプリズム530から出射された照明光Lは、結像光学系540を経て、後段の照明光学系600に入射される。結像光学系540は、照明光学系600の入射面612に照明光画像Iを形成する。
【0091】
ビームスプリッタ550は、結像光学系540および照明光学系の間において、照明光Lの光路上に配される。ビームスプリッタ550は、照明光学系600に入射する前の照明光Lの一部を分離して計測部560に導く。
【0092】
計測部560は、照明光学系600の入射面612と光学的に共役な位置で照明光Lの画像を計測する。これにより、計測部560は、照明光学系600に入射する照明光画像Iと同じ画像を計測する。よって、制御部510は、計測部560により計測される照明光画像Iを参照して、空間光変調器100を帰還制御できる。
【0093】
照明光学系600は、フライアイレンズ610、コンデンサ光学系620、視野絞り630および結像光学系640を含む。照明光学系600の出射端には、マスク710を保持したマスクステージ720が配される。
【0094】
フライアイレンズ610は、並列的に緻密に配された多数のレンズ素子を備え、後側焦点面にレンズ素子の数と同数の照明光画像Iを含む2次光源を形成する。コンデンサ光学系620は、フライアイレンズ610から出射された照明光Lを集光して視野絞り630を重畳的に照明する。
【0095】
視野絞り630を経た照明光Lは、結像光学系640により、マスク710のパターン面に、視野絞り630の開口部の像である照射光画像Iを形成する。こうして、照明光学系600は、その出射端に配されたマスク710のパターン面を、照射光画像Iによりケーラー照明する。
【0096】
なお、照明光学系600の入射面612でもあるフライアイレンズ610の入射端に形成される照度分布は、フライアイレンズ610の出射端に形成される2次光源全体の大局的な照度分布と高い相関を示す。よって、照明光発生部500が照明光学系600に入射させる照明光画像Iは、照明光学系600がマスク710に照射する照明光Lの照度分布である照射光画像Iにも反映される。
【0097】
投影光学系700はマスクステージ720の直後に配され、開口絞り730を備える。開口絞り730は、照明光学系600のフライアイレンズ610の出射端と光学的に共役な位置に配される。投影光学系700の出射端には、感光性材料を塗布された基板810を保持する基板ステージ820が配される。
【0098】
マスクステージ720に保持されたマスク710は、照明光学系600により照射された照明光Lを反射または透過する領域と吸収する領域とを含むマスクパターンを有する。よって、マスク710に照明光画像Iを照射することにより、マスク710のマスクパターンと照明光画像I自体の照度分布との相互作用により投影光画像Iが生成される。投影光画像Iは、基板810の感光性材料に投影されて、要求されたパターンを有するレジスト層を基板810の表面に形成する。
【0099】
なお、図24では照明光Lの光路を直線状に描いているが、照明光Lの光路を屈曲させることにより露光装置400を小型化できる。また、図24は、照明光Lがマスク710を透過するように描いているが、反射型のマスク710が用いられる場合もある。
【0100】
図25は、照明光発生部500の部分拡大図であり、露光装置400における空間光変調器100の役割を示す図である。プリズム530は、一対の反射面532、534を有する。プリズム530に入射した照明光Lは、一方の反射面532により、空間光変調器100に向かって照射される。
【0101】
既に説明した通り、空間光変調器100は、個別に揺動させることができる複数の反射部230を有する。よって、制御部510が空間光変調器100を制御することにより、要求に応じた任意の光源画像Iを形成できる。
【0102】
空間光変調器100から出射された光源画像Iは、プリズム530の他方の反射面534により反射され、図中のプリズム530右端面から出射される。プリズム530から出射された光源画像Iは、結像光学系540により、照明光学系600の入射面612に照明光画像Iを形成する。
【0103】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0104】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置およびシステムの動作、手順、ステップおよび段階等の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、前の処理の出力を後の処理で用いる場合でない限り、任意の順序で実現し得る。特許請求の範囲、明細書および図面において、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。
【符号の説明】
【0105】
100 空間光変調器、200 単位素子、210、310、340 基板、220 駆動部、222 圧電素子、224 絶縁部、230 反射部、232 反射面、234 反射面支持部、235、238 接着材、236 フレクチャ、237 陥没穴、320 圧電材料層、330 絶縁材料層、342 柱状部、350 犠牲層、360 反射膜、400 露光装置、500 照明光発生部、510 制御部、520 光源、530 プリズム、532、534 反射面、540、640 結像光学系、550 ビームスプリッタ、560 計測部、600 照明光学系、612 入射面、610 フライアイレンズ、620 コンデンサ光学系、630 視野絞り、700 投影光学系、710 マスク、720 マスクステージ、730 開口絞り、810 基板、820 基板ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間光変調器の製造方法であって、
電気信号により伸縮する電気機械変換部の一端を、駆動側基板に結合する結合ステップと、
光を反射する反射部を支持する被駆動側基板における前記反射部を支持する面の裏面に、変形可能な応力緩和部を形成する形成ステップと、
前記電気機械変換部の他端を前記応力緩和部に結合して、前記駆動側基板および前記被駆動側基板を一体化する一体化ステップと
を備える製造方法。
【請求項2】
前記結合ステップにおいて、前記駆動側基板に前記電気機械変換部を複数結合し、
前記形成ステップにおいて、前記被駆動側基板に前記応力緩和部を複数形成し、
前記一体化ステップにおいて、前記電気機械変換部および前記応力緩和部を複数一括して結合する
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記一体化ステップの後に、前記被駆動側基板を切断して分割する分割ステップを更に備える請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記形成ステップにおいて、前記応力緩和部は、前記駆動側基板の裏面をフォトリソグラフィにより加工するフォトリソグラフィ段階を含む請求項1から請求項3までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記フォトリソグラフィ段階は、前記被駆動側基板の裏面から突出する前記応力緩和部を形成する段階を含む請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記フォトリソグラフィ段階は、一端を前記被駆動側基板の裏面に結合され、前記被駆動側基板の裏面から離間しつつ前記裏面と平行に延在する前記応力緩和部を形成する段階を含む請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記形成ステップは、前記被駆動側基板の裏面に弾性シートを貼付する段階を含む請求項1から請求項3までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記形成ステップは、前記駆動側基板および前記被駆動側基板よりも剛性および融点が低い材料により形成された前記応力緩和部を、前記被駆動側基板の前記裏面に付着させる段階を含む請求項1から請求項3までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記形成ステップは、前記被駆動側基板の裏面にはんだ合金により形成された球体を付着させる段階を含む請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載の方法で製造された空間光変調器。
【請求項11】
請求項10に記載の空間光変調器を備えた照明光発生装置。
【請求項12】
請求項11に記載の照明光発生装置を備えた露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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