説明

空間映像表示装置

【課題】 低コストで空間映像表示を可能にした空間映像表示装置を提供する。
【解決手段】 実体部と、その実体部からの表示光を観察者に向けて反射する光反射光学素子とを備え、光反射光学素子は第1及び第2光反射面を有する微小ミラーユニットがマトリクス状に配列された構造体で構成され、実体部からの表示光を第1及び第2光反射面により2回反射させて鏡映像を作り出す空間映像表示装置。光反射光学素子は、1つの光反射面を有する複数の長手部材をその光反射面が同一方向側となるように平行に配列した第1集合体及び第2集合体を、その光反射面が交差するように重ね合わせて構成されてなり、第1集合体の光反射面が微小ミラーユニットの第1光反射面を構成しかつ第2集合体の光反射面が微小ミラーユニットの第2光反射面を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間中に映像を表示する空間映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リアルな3次元空中映像を実現するために、光線を細かく分割する微細加工技術に着目し、鏡に映った像鏡映像を虚像でなく実像で空中に結像させることを可能とするナノ加工技術を用いた受動光学素子が開発されている(非特許文献1参照)。
【0003】
かかる光学素子の素子面には1辺100μm、深さ100μmの微小な貫通穴が多数開いている。この穴の内壁がマイクロミラーとなっており、隣接する2面のマイクロミラーによって2面コーナーリフレクターが構成されている。穴を通過する光はこのマイクロミラーに2回反射されることで鏡映像が形成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】空中映像を結像する「鏡」の開発に成功〜リアルな3次元空中映像の実現に向けて〜、[平成20年4月28日検索]、(URL:http://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h18/061124-2/061124-2.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の光学素子には非常に微細な加工技術が要求されるために、そのような光学素子を用いた空間映像表示装置では製造コストがかかるという問題点がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題には、上記の問題点が一例として挙げられ、低コストで空間映像表示を可能にした空間映像表示装置を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の空間映像表示装置は、実体部と、前記実体部からの表示光を観察者に向けて反射する光反射光学素子とを備え、前記光反射光学素子は第1及び第2光反射面を有する微小ミラーユニットがマトリクス状に配列された構造体で構成され、前記実体部からの表示光を前記第1及び第2光反射面により2回反射させて鏡映像を作り出す空間映像表示装置であって、前記光反射光学素子は、1つの光反射面を有する複数の長手部材をその光反射面が同一方向側となるように平行に配列した第1集合体及び第2集合体を、その光反射面が交差するように重ね合わせて構成されてなり、前記第1集合体の光反射面が前記微小ミラーユニットの第1光反射面を構成しかつ前記第2集合体の光反射面が前記微小ミラーユニットの第2光反射面を構成することを特徴と
している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一態様の空間映像表示装置においては、第1及び第2光反射面を有する微小ミラーユニットがマトリクス状に配列された構造体で構成された光反射光学素子が備えられている。光反射光学素子は、1つの光反射面を有する複数の長手部材をその光反射面が同一方向側となるように平行に配列した第1集合体及び第2集合体を、その光反射面が交差するように重ね合わせて構成されてなり、第1集合体の光反射面が微小ミラーユニットの第1光反射面を構成し、第2集合体の光反射面が微小ミラーユニットの第2光反射面を構成し、実体部からの表示光を第1及び第2光反射面により2回反射させて鏡映像を作り出すことが行われる。よって、光反射光学素子の製作にはコスト高となるような微細な加工技術が要求されないので、低コストで空間映像を実像表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示す光学系図である。
【図2】図1の空間映像表示装置のミラー及びディスプレイ部の他の配置を示す光学系図である。
【図3】図1の空間映像表示装置のミラー及びディスプレイ部の他の配置を示す光学系図である。
【図4】図1の空間映像表示装置のミラーを示す図である。
【図5】ミラーを構成する直方体材を示す図である。
【図6】ミラーを形成する2つのシート部の組み合わせを示す図である。
【図7】ミラーにおける表示光の2回反射を示す図である。
【図8】シート部の厚みを求めるためのミラーの法線に対する観察方向の角度を示す図である。
【図9】ディスプレイ部とミラーとの配置関係を示す図である。
【図10】本発明の他の実施例を示す光学系図である。
【図11】本発明の他の実施例を示す光学系図である。
【図12】本発明の他の実施例を示す光学系図である。
【図13】図12の装置において表示光が視点から見て前後方向の光に分かれて2回反射して実像を形成する状態を示す図である。
【図14】図12の装置において表示光が視点から見て左右方向の光に分かれて2回反射して実像を形成する状態を示す図である。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の一態様の空間映像表示装置の光学系を示している。この空間映像表示装置は、実体部であるディスプレイ部1と光反射光学素子であるミラー2とからなる。ディスプレイ部1は映像供給部(図示せず)から供給される映像信号に応じて映像を表示する。ミラー2はディスプレイ部1に表示された映像を観察者の目E(観察位置)に向けて反射し、観察者に対して空間に実像3を視覚的に与える。
【0012】
ミラー2は図1に示すように平面板状であり、観察者の目Eの観察方向に対して斜めに配置される。ミラー2の一方の面がディスプレイ部1側に向けられ、他方の面が観察者の観察位置側に向けられている。
【0013】
図1のディスプレイ部1及びミラー2の配置では、ディスプレイ部1の表示面はミラー2の下方で若干、観察位置側(前方側)にあってミラー2に斜めに向けられている。表示面に垂直でミラー2に至る直線と上記観察方向の直線とがミラー2のほぼ中央で交わり、その2つの直線がなす角度を2等分する角度位置にミラー2は配置されている。
【0014】
ディスプレイ部1及びミラー2の配置は図2に示すように、ミラー2の下方でディスプレイ部1の表示面が水平にされ、その表示面からミラー2に至る垂直線と上記観察方向の直線とが90度の角度でミラー2で交差するようにしても良い。また、図3に示すように、ディスプレイ部1の表示面はミラー2の下方で若干、ミラー2より後方側にあってミラー2に斜めに向けられた配置でも良い。
【0015】
ミラー2は図4に示すように、各々が同数の棒状の直方体材20を並列に密着させることにより形成された2つのシート部(第1集合体及び第2集合体)21,22を有する。図1〜図3におけるミラー2の両端部A,Bは図4のミラー2の対向角A,Bに対応している。端部Aが下端部とし、端部Bが上端部とする。
【0016】
直方体材20は、長手部材であり、長手方向に垂直な方向、すなわち短手方向の四角形の断面の一辺が数百μmないし数cm前後の透明なアクリルに代表されるプラスチック又はガラスの棒からなる。長さは投影する画像の大きさによって変化するが、数十mm 〜数m程度である。また、長手方向に伸長した4面のうちの3面は光の透過又は反射に使用する面であるから、滑らかな状態にする。直方体材20はシート部21,22各々で100本〜20000本程度用いられる。
【0017】
図5に示すように、直方体材20の長手方向に伸長した1面には光反射膜23が形成される。光反射膜23はアルミや銀の蒸着或いはスパッタなどによって形成される。その光反射膜23を形成した面とは反対側の面には光吸収膜24が形成され、それにより光吸収面とすることが望ましい。光吸収膜24はつや消しの黒塗料などを用いたり、黒色の薄いシートを密着させて形成しても良い。
【0018】
このような複数の直方体材20について、1つの直方体材20の光吸収膜面と別の直方体材20の光反射膜面を密着させてシート部21,22が形成される。シート部21,22は、図6に示すように、直方体材20の並列方向が交差するようにいずれか一方を90度回転させた状態で貼り合わせられ、それによってミラー2が形成される。シート部21の各直方体材20とシート部22の各直方体材20とが交差する部分が微小ミラーユニットを構成し、各微小ミラーユニットのシート部21の光反射膜面が第1集合体の第1光反射面であり、シート部22の光反射膜面が第2集合体の第2光反射面である。
【0019】
なお、シート部21,22を形成する際に、1つの直方体材20の光吸収膜面と別の直方体材20の光反射膜面を密着させるので、光吸収膜24は光反射膜23の上に積層して形成しておいても良い。
【0020】
かかる構成の空間映像表示装置においては、ディスプレイ部1の表示面に表示された映像はミラー2の各光反射膜面によって反射されて視線上に空間実像3として形成される。すなわち、図7に示すように、ディスプレイ部1からの表示光は矢印Y1の方向でシート部22の光反射膜面23に反射し、その反射表示光は矢印Y2の方向でシート部21の光反射膜面23に反射し、その反射表示光は矢印Y3の方向で観察者に向けて進み、このように2回反射させて鏡映像を作り出すことが行われる。
【0021】
よって、ミラー2の製作にはコスト高となるような微細な加工技術が要求されないので、低コストで空間に実像表示することが可能となる。
【0022】
図8に示すように、ミラー2の法線に対する観察方向の角度をθ、シート部21,22各々に形成された平行ミラー(光反射膜面)の間隔(=直方体材20の短手方向の幅)をW、シート部21,22各々を構成する直方体材20の光学屈折率をnとすると、1シート部当たりの厚み(すなわち直方体材20の長手方向の長さ)をDとすると、厚みDは、
【数1】

の如く表すことができる。Xはミラー2の中での法線に対する光線軸の傾き角である。
【0023】
θ=60度、W=1mm、n=1.5の場合には Dは約2.0mmとなる。
【0024】
θ=45度、W=1mm、n=1.5の場合には Dは約2.7mmとなる。
【0025】
θ=30度、W=1mm、n=1.5の場合には Dは約4.0mmとなる。
【0026】
更に、直方体材20はプラスチック樹脂やガラスなどによって形成されているため、約1.5程度の屈折率を持っているが、このことによって表面反射が起こる場合がある。そこで、ミラー2の実体(ディスプレイ部1)側及び実像3側の面に減反射コーティングを施すことにより鮮明な実像を空間に形成することができる。
【0027】
上記の実施例では、ミラー2を構成する長手部材として各直方体材20をアクリル樹脂やガラス等によって透明層として形成して、メンテナンスなどを容易にする構成を示したが、これらの代わりに、長手部材としてごく薄いミラーシートを多数用いても同様の効果は得られる。構造的には平行するミラー群を2層に直交配置する構造である。レイアウト設計においては光学屈折率n=1で計算すれば良い。
【0028】
また、ミラー2の各直方体材20としてガラス、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、UV硬化樹脂等の材料を用いると、ミラー2と空気との間に大きな屈折率差を持つために表面反射が発生する。そこで、ミラー2の表面に減反射蒸着コーティングを施すことで、表面反射の少ない高品位の空間映像を得ることができる。減反射蒸着コーティングの代わりにAR(アンチリフレクション)シート又は減反射フィルムをミラー2の表面に貼り合わせても同様である。
【0029】
ミラー2で2回反射せず、1回だけ反射した光は図9に示すようにミラー2の法線方向に光軸を持っている。そこで、この1回反射光を回避するために観察される実像の範囲に1回反射光の範囲が重ならない位置に実体であるディスプレイ部1を設置すれば良い。この手法によって一回反射光は全く観察されなくなり、画像の品位を良好に保つことができる。
【0030】
ミラー2の各直方体材20の光反射膜23はアルミや銀の蒸着、スパッタ膜、或いは銀等の金属反射膜によって形成されるが、金属以外の光反射膜でも良い。金属以外の光反射膜としては、屈折率が大きく異なる樹脂を積層したり、誘電体膜を形成することで同様の反射を得ることができる。屈折率差による反射では例えば光ファイバーの芯(コア)に使われるような高屈折率のガラス又は樹脂を基材として使用し、光ファイバーの外周(クラッド)に使われる様な低屈折率のガラス又は樹脂を金属の代わりに反射膜として使用する。
【0031】
この時積層する材料は光学ガラス又は樹脂であり、ミラーシートを構成する部分品の全てが物理特性の比較的近い材料で構成できるので、機械的な強度分布が面内で均一になるばかりでなく、反射性能の劣化が起こりにくくできる。同時にこの方法によれば、接着(結合)部分の均一性にも寄与するため、反射膜間の平行精度を向上にも有効な手法となる。
【0032】
また、光反射膜23においては、アルミの蒸着膜やスパッタ膜、或いは銀などの金属反射膜上にクロム蒸着、黒色クロムめっき、ニッケル-クロムめっきや亜鉛めっき(黒色クロメート)、黒色アルマイトや銅の黒染め(化成処理膜)等の金属系の防錆層を積層することで、反射率の劣化を抑制することができる。また、これらの多くは黒色から暗青色を呈するものが多く、光吸収膜を兼ねることも可能である。
【0033】
図10は本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示している。図10の空間映像表示装置においては、図2の空間映像表示装置と同様に、ディスプレイ部1とミラー2とが備えられている。同一部分は同一符号を用いて示している。図10の空間映像表示装置は更にディスプレイ部4とハーフミラー5とを備えている。ディスプレイ部4は映像供給部から供給される映像信号に応じて映像を表示する。ディスプレイ部4に表示される映像はディスプレイ部1のそれとは異なるとする。ディスプレイ部1には背景映像供給部(図示せず)から背景を示す映像信号が供給され、ディスプレイ部4には近景映像供給部(図示せず)から近景を示す映像信号が供給される。
【0034】
ハーフミラー5はディスプレイ部1とミラー2との間に配置され、ディスプレイ部1に表示された映像をミラー2に向けて透過させると共にディスプレイ部4に表示された映像をミラー2に向けて反射する。ディスプレイ部1からミラー2に至る光軸とハーフミラー5からミラー2に至る光軸とは同一直線上にある。ディスプレイ部4からミラー2に至る光経路の距離はディスプレイ部1からミラー2に至る光経路の距離より長い。
【0035】
かかる構成の図10の空間映像表示装置においては、ディスプレイ部1の表示面に表示された映像はハーフミラー5を透過してミラー2に到達し、ミラー2の各光反射膜面によって反射されて視線上に空間実像3として形成される。それと同時に、ディスプレイ部4の表示面に表示された映像はハーフミラー5によって反射されてミラー2に到達し、ミラー2の各光反射膜面によって反射されて視線上に別の空間実像6として形成される。すなわち、複数の空間映像を同時に投射することが可能となり、観察者はそれら複数の空間映像を視認することができる。
【0036】
図10の空間映像表示装置においてディスプレイ部1,4としてプラズマディスプレイを用いる場合には、一般的なプラズマディスプレイの表面に取り付けてある減光フィルタを取り外すことができる。これはハーフミラー5が減光フィルタと同等の役割を果たすためである。プラズマディスプレイの減光フィルタを取り外すことにより、プラズマディスプレイの表示面から得られる光量が約3倍になり、最終的に投影される実像の明るさも3倍になり、仮想現実感を更に増大させることができる。
【0037】
また、図10の空間映像表示装置においては、ディスプレイ部1には背景映像供給部が接続され、ディスプレイ部4には近景映像供給部が接続されているが、電子情報技術産業協会(JEITA)が規格化している2次元画像とそれに適合したDepth(奥行き信号)マップを用いれば、2次元画像から容易に近景/遠景の映像信号を取り出すことができる。
【0038】
図11は更に、本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示している。図11の空間映像表示装置においては、図10の空間映像表示装置に更にディスプレイ部7とハーフミラー8とが追加されている。ディスプレイ部7は映像供給部から供給される映像信号に応じて映像を表示する。ディスプレイ部7に表示される映像はディスプレイ部1,4のそれとは異なるが、同一映像の一部である。すなわち、1つの画像が上中下の3部に分割される。ディスプレイ部1には下部の画像が表示され、ディスプレイ部4には上部の画像が表示され、ディスプレイ部7には中部の画像が表示される。
【0039】
ハーフミラー8はディスプレイ部1とハーフミラー5との間に配置され、ディスプレイ部1に表示された映像をハーフミラー5に向けて透過させると共にディスプレイ部7に表示された映像をハーフミラー5に向けて反射する。ディスプレイ部1からミラー2に至る光軸とハーフミラー8からハーフミラー5に至る光軸とは同一直線上にある。その他の構成は図10の装置と同様である。ただし、各ディスプレイ部1,4,7からミラー2に至る光経路の距離は互いに等しい。
【0040】
かかる構成の図11の空間映像表示装置においては、ディスプレイ部1の表示面に表示された映像はハーフミラー8,5を透過してミラー2に到達し、ミラー2の各光反射膜面によって反射されて視線上に上部実像9aとして形成される。それと同時に、ディスプレイ部4の表示面に表示された映像はハーフミラー5によって反射されてミラー2に到達し、ミラー2の各光反射膜面によって反射されて視線上に下部実像9bとして形成される。ディスプレイ部7の表示面に表示された映像はハーフミラー8によって反射されて更にハーフミラー5を透過してミラー2に到達し、ミラー2の各光反射膜面によって反射されて視線上に中部実像9cとして形成される。実像9a〜9cは1つの空間画像として視線上の同一位置に組み合わされて形成されるので、大きなサイズの実像、すなわちディスプレイとして観察者は観ることができる。
【0041】
例えば、縦1m横2mの表示面を有するディスプレイ部を72個を備えた場合には、縦横が約12m×12mの巨大な空間映像を得ることができる。
【0042】
また、図11の空間映像表示装置においては、シームレスな1つの画像を得るためにディスプレイ部1,4,7を互いに接することなく配置したレイアウトにすることができる。なお、図11においてはディスプレイ部1,4,7各々の実線が表示される実体部分であり、破線部分は観察者が観る空間映像のサイズに対応した実体以外の部分である。破線部分は存在しなくて良い。
【0043】
なお、各直方体材としてガラスミラーを使用する場合には、カットの際に切断面が傾いたり表面に微小な凹凸が発生するが、これが結合像をぼけさせる大きな要因となる。そこで、表面に低粘度のエポキシ樹脂やUV硬化樹脂をコーティングすることにより、ミラーの表面が滑らかになり、結果として光軸ズレの少ない鮮明な実像を得ることができるようになる。コーティングする面はミラーの両面が最も効果的であるが、2つのシート部の貼り合わせ面にも施して2つのシート部の接着層としても良い。
【0044】
図12は更に、本発明の他の実施例として空間映像表示装置の光学系を示している。図12の空間映像表示装置において、ミラー2はくさび状の断面にされている。すなわち、ミラー2の厚さDが下端部Aから上端部Bに向けて徐々に減少している。視線の入射角度が小さい下端部Aの厚さが最大DAであり、視線の入射角度が大きい上端部Bの厚さDBが最小である。
【0045】
図12に示したように、ミラー2における視線の中心位置が法線に対して角度θであると、その視線の中心位置から下方に−a度、上方に+b度が視角となる。ミラー2の下端部Aでは入射する視線の傾きはθ−a度となり、上端部Bでは入射する視線の傾きはθ+b度となる。この角度により上記の式(1)によりミラー2における視線の中心位置の厚みDの他に、下端部A及び上端部B各々の厚みDをDA及びDBとして算出することができる。
【0046】
ミラー2の厚みDは連続的に変化するので、図12の装置中のミラー2を作製するに当たっては、先ず、下端部Aの厚みDAが得られるように直方体材20の短手方向の四角形の辺の長さが決定され、そのような寸法の直方体材20で上記したようにシート部21,22が形成される。そして、そのシート部21,22を貼り合わせて全面で同じ厚みDAのミラー2を作製することが行われる。その後、そのミラー2の両表面が研磨され、それにより上端部Bに向けて厚みが徐々に薄くなるようにされる。その結果、図12のように下端部Aでは厚みDA、上端部Bでは厚みDB、そして断面がくさび状のミラー2が得られる。
【0047】
また、図12のミラー2の他の作製方法としては、図12のミラー2を形成する直方体材20各々の寸法を厚みDの変化(分布)に基づいて予め算出しておき、その寸法に従って直方体材20各々を形成して上記と同様にしてミラー2を作製しても良い。
【0048】
図13は図12に示した空間映像表示装置において、ディスプレイ部1の実体からの表示光(矢印)が視点から見て前後方向の光に分かれてミラー2において2回反射して実像を形成する状態をミラー2の前面、側面及び上面から各々示している。また、図14は図12に示した空間映像表示装置において、ディスプレイ部1の実体からの表示光(矢印)が視点から見て左右方向の光に分かれてミラー2において2回反射して実像を形成する状態をミラー2の前面、側面及び上面から各々示している。
【0049】
ディスプレイ部1から出射した表示光はミラー2の第1層目であるシート部22のミラー群(光反射膜面23)により反射され、第1層目のミラー群とは90度直交してミラー2に配置された第2層目のシート部21のミラー群(光反射膜面23)へ導かれ、この第1層目からの反射光は第2層目のミラー群によって再び反射され、実体とは第1層目ミラー群と第2層目ミラー群の貼り合せ面を面対称とする位置に実像を形成する。
【0050】
よって、観察者は視角内において空間映像3を全体的に均一な明るさでかつ良好な鮮明度で視認することができる。
【0051】
更に、上記した各実施例においてディスプレイ部1は映像を表示するが、それに限定されず、写真プリント、人形等の実体物であっても良い。
【符号の説明】
【0052】
1,4,7 ディスプレイ部
2 ミラー
5,8 ハーフミラー
20 直方体材
21,22 シート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実体部と、前記実体部からの表示光を観察者に向けて反射する光反射光学素子とを備え、前記光反射光学素子は第1及び第2光反射面を有する微小ミラーユニットがマトリクス状に配列された構造体で構成され、前記実体部からの表示光を前記第1及び第2光反射面により2回反射させて鏡映像を作り出す空間映像表示装置であって、
前記光反射光学素子は、1つの光反射面を有する複数の長手部材をその光反射面が同一方向側となるように平行に配列した第1集合体及び第2集合体を、その光反射面が交差するように重ね合わせて構成されてなり、前記第1集合体の光反射面が前記微小ミラーユニットの第1光反射面を構成しかつ前記第2集合体の光反射面が前記微小ミラーユニットの第2光反射面を構成し、
前記光反射光学素子の法線範囲内に前記実体部の表示面が重ならないように前記光反射光学素子と前記実体部とが配置されていることを特徴とする空間映像表示装置。
【請求項2】
前記光反射光学素子において前記複数の長手部材各々は長手方向に伸張した4つの面を有する透光の直方体からなり、前記4つの面のうちの1面が前記光反射面であり、前記第1集合体及び前記第2集合体各々において1つの直方体の光反射面が隣接の直方体の前記4つの面のうちの前記光反射面とは反対側の面と当接するように前記直方体が配列されていることを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項3】
前記光反射光学素子において前記複数の長手部材各々の光反射面の裏面は光吸収面をなすことを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。
【請求項4】
前記光反射光学素子において前記直方体各々の前記4つの面のうちの前記光反射面とは反対側の面は光吸収面をなすことを特徴とする請求項2記載の空間映像表示装置。
【請求項5】
前記光反射光学素子は、観察者からの視線の入射角度の大きい位置での厚みが、観察者からの視線の入射角度の小さい位置での厚みより薄く形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1記載の空間映像表示装置。
【請求項6】
前記光反射光学素子は、前記入射角度の大きい位置から前記入射角度の小さい位置に向けて前記厚みが連続的に減少するように形成されていることを特徴とする請求項5記載の空間映像表示装置。
【請求項7】
前記光反射光学素子の表面に減反射処理を施したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1記載の空間映像表示装置。
【請求項8】
前記光反射光学素子の前記微小ミラーユニットの前記第1及び第2光反射面の反射材料として、屈折率が大きく異なる複数の樹脂層又は誘電体膜を用いることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1記載の空間映像表示装置。
【請求項9】
前記光反射光学素子の前記微小ミラーユニットの前記第1及び第2光反射面の反射材料上に金属系の防錆層を積層することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1記載の空間映像表示装置。
【請求項10】
前記ミラーの前記微小ミラーユニットの前記第1及び第2光反射面の反射材料上に金属系の減反射層を積層することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1記載の空間映像表示装置。
【請求項11】
前記実体部と前記光反射光学素子との間に、ハーフミラーが配置され、複数の実体部の表示光が前記ハーフミラーで合成され前記光反射光学素子に入射することを特徴とする請求項1記載の空間映像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−177922(P2012−177922A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−63079(P2012−63079)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【分割の表示】特願2010−511059(P2010−511059)の分割
【原出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】