説明

空隙を有する発泡成形体の製造方法

【課題】 高い空隙率と強固な接着強度を併せ持つ空隙を有するポリオレフィン系樹脂発泡成形体を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】 変性ポリオレフィン樹脂および/または変性ポリスチレン樹脂を0.5重量%以上10重量%以下含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の見掛け体積に対して1.5体積%以上10体積%以下のモイスチャー・キュアタイプのポリウレタン系接着剤で、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子表面積の60%以上を被覆した後、ポリウレタン系接着剤を固化させて空隙を有する発泡成形体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空隙を有する発泡成形体およびその製造方法、より詳しくはポリオレフィン系樹脂発泡粒子同士をポリウレタン系接着剤で点接着あるいは面接着させて得られる空隙を有する発泡成形体およびその製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空隙を有するポリオレフィン系樹脂発泡成形体は、緩衝性、軽量性、成形性、断熱性、耐熱性などのポリオレフィン系樹脂発泡成形体が本来有する特性に加えて、透水性、通気性、吸音性などを合わせ持つことから、種々の分野で活用されている。例えば、透水性を利用して、ゴルフ場やサッカーグランドなどの水はけを改良するためのドレイン材に活用されている。また、通気性を利用して、パッド、プロテクター、ヘルメットなどのスポーツ・ギアに用いるショック・アブソーバーの通気性改良にも利用されている。加えて、その吸音性を利用して、自動車分野ではフロアー・スペーサーやティビア・パッドなどの自動車内装部材への適用、建築分野では床下下地材や壁材、工業部材ではエアコンなどの空調機器や、ブロアー、ダクトといった送風機器、コンプレッサー、モーターなどの静音化に利用されている。
【0003】
空隙を有するポリオレフィン系樹脂発泡成形体(以下、EPOと言う場合がある)の製造方法として、特許文献1には、特定形状の貫通穴を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子(以下、EPO粒子と言う場合がある)を金型に充填し、蒸気で加熱、融着させる方法が開示されている。例えばマカロニ形状のような筒型のEPO粒子を用いることにより、空隙を形成するものである。EPO粒子を金型に充填し、蒸気で加熱、融着させてEPOを成形する方法は一般に用いられているものである。この際、EPO粒子は蒸気による加熱により、軟化し、膨張することにより隣接するEPO粒子との間に融着を形成する。つまり、軟化した状態で膨張力によりEPO粒子同士が押し合うことにより融着が形成される。成形に用いる蒸気圧力が高い(蒸気温度が高い)ほど、軟化の度合いが大きく、より強い膨張力を持ち、より強固な融着を形成するが、同時にEPO粒子に形成した貫通穴が膨張により狭まったり、閉塞したりする。よって、空隙を維持したまま、強固な融着を形成することが困難であり、可能であっても成形条件の幅は非常に狭いものとなる。このため、大型成形体や複雑形状の成形体のように、蒸気による加熱ムラが発生し易い場合には、部分的に融着不良を起こしたり、空隙が閉塞したりする問題がある。また、床下下地材のように厚み3〜8mm程度のシートとする用途では、より強固な融着が求められ、十分な空隙を保持して、十分な融着を確保することは非常に困難である。
【0004】
特許文献2には、特定の鼓形状のEPO粒子を金型に充填し、蒸気で加熱、融着させる方法が開示されている。一般に用いられているEPO粒子は、略球状や平均直径と高さの比が1に近い楕円柱形状であり、充填方法にも拠るが、金型に充填された際にEPO粒子間に10〜30%程度の空隙が形成される。ここでは、EPO粒子を特定の鼓形状とすることにより、金型に充填した際のEPO粒子間により多くの空隙が形成され、高い空隙率を有するEPOが容易に得られるとしている。しかし、成形方法は蒸気により加熱、融着させる方法をとっており、前記特許文献1と同様に、高い空隙率と十分な融着の両立には課題を残している。
【0005】
特許文献3には、樹脂発泡粒子の表面に該粒子の軟化発泡温度よりも低い温度で熱接着し得る接着用樹脂を添着することにより、隣接する樹脂発泡粒子間の接着を容易にし、空隙率の高い樹脂発泡成形体を得る方法が開示されている。樹脂発泡粒子の表面に上記熱接着性樹脂を添着することは、樹脂発泡粒子が熱軟化し高度に膨張するに至る前、即ち、元の容積の1.08〜1.41倍の容積となる温度で熱接着でき、その結果として樹脂発泡粒子の熱膨張が低減され高い空隙率を維持させることが可能となるとしている。接着用樹脂としては、例えば熱可塑性接着剤として分類されるビニル系の酢酸ビニル系接着剤、アクリル系接着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合接着剤やポリアミド系接着剤、ポリエステル系接着剤、熱可塑性ポリウレタン系接着剤、および、極性基を有する熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリルースチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル系樹脂が例示されている。樹脂発泡粒子の基材樹脂としてポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂も使用可能と記載されている。しかし、ポリオレフィン系樹脂は表面エネルギーが低いために、これら接着用樹脂と強固に接着することができず、EPO粒子を用いた場合、その接着強度には課題を残している。より詳細に例示されているポリ塩化ビニリデン樹脂発泡粒子のように表面エネルギーの高い基材樹脂の場合には、高い接着強度が得られるが、表面エネルギーが低いEPO粒子の場合には、接着強度が低くなり、実用上問題となる場合がある。
【0006】
特許文献4には、コロナ放電処理やプラズマ処理のような電気的励起ゾーン処理をしたEPO粒子を接着剤で接着する方法が開示されている。接着剤は固化後に約Shore A50から約Shore A95の硬度を持ち、EPO粒子は表面の50%以上が接着剤で覆われている必要があるとしている。接着剤としては、熱可塑性樹脂接着剤または熱硬化性樹脂接着剤が好ましいと記載されており、ポリウレタン系接着剤が例示され、実施例に用いられている。コロナ放電処理やプラズマ処理のような電気的励起ゾーン処理により、EPO粒子表面には種々の極性官能基が生成し、表面エネルギーが高くなる。このため、EPO粒子と接着剤は強固な接着を形成することが可能となり、高い接着強度と高い空隙率の両立が可能となっている。しかし、ここでの問題点は、一つには電気的励起ゾーン処理により形成された高表面エネルギーの状態は時間とともに減衰することであり、一つには工業的規模で電気的励起ゾーン処理をおこなうためには高額な設備投資が必要であることである。一般に、電気的励起ゾーン処理により高められた表面エネルギーは一週間程度で低下してしまうため、電気的励起ゾーン処理したEPO粒子は、この間に接着処理する必要がある。このため、長期の在庫は元より、長距離輸送するには利便性に欠け、電気的励起ゾーン処理する工程と接着処理工程は連続しているか、近距離に位置していることが不可欠となる。また、EPO粒子表面を比較的均一に電気的励起ゾーン処理を工業的規模で行う場合、十分な処理量を得るには大型の処理設備とするか、処理設備を多数有する必要があり、設備投資は高額となり、経済的に不利である。
【0007】
特許文献5には、樹脂発泡体粒子同士が接着剤で固定された吸音部材とその製造方法が開示されている。裁断機等でカッティングされた粒子状あるいは柱状のポリウレタンフォームを始めとした樹脂発泡体をポリウレタン系等の接着剤で被覆し、接着剤を硬化させることにより空隙を有した吸音部材を得る方法であり、ポリウレタン系などの極性をもつ接着剤は、本発明の対象としている極性構造を持たないポリオレフィン系樹脂発泡粒子と親和性がないためポリオレフィン系樹脂発泡粒子同士を接着させ、空隙を有する発泡成形体を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5622756号明細書
【特許文献2】特開2000−302909号公報
【特許文献3】特開平7−168577号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/25956号明細書
【特許文献5】国際公開第2004/82319号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高い空隙率と強固な接着強度を併せ持つ空隙を有するポリオレフィン系樹脂発泡成形体を簡便な方法で製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、極性基を有する特定の樹脂を含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用いることにより、モイスチャー・キュアタイプのポリウレタン系接着剤と強固な接着を形成できることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕樹脂発泡粒子同士を接着剤で点接着あるいは面接着させることにより空隙を有する発泡成形体を製造する方法であって、変性ポリオレフィン樹脂および/または変性ポリスチレン樹脂を0.5重量%以上10重量%以下含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の見掛け体積に対して1.5体積%以上10体積%以下のモイスチャー・キュアタイプのポリウレタン系接着剤で、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子表面積の60%以上を被覆した後、ポリウレタン系接着剤を固化させて空隙を有する発泡成形体を製造する方法、
〔2〕ポリオレフィン系樹脂発泡粒子がホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、直鎖状低密度ポリエチレンのいずれかを基材樹脂とする前記〔1〕記載の製造方法、
〔3〕変性ポリオレフィン樹脂が、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、変性ポリスチレン樹脂がスチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ジメチルアミノプロピルアミンマレイミド共重合体の群の中から選ばれる前記〔1〕記載の製造方法、
〔4〕変性ポリオレフィン樹脂が、下記(A)および(B)の条件を満たす酸化ポリエチレンワックスである前記〔1〕記載の製造方法、
(A)ASTM D3236に準拠して150℃で測定される粘度が5〜800mPa・s
(B)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が5〜50mgKOH/g
〔5〕変性ポリオレフィン樹脂が、下記(C)および(D)の条件を満たす酸化ポリプロピレンワックスである前記〔1〕記載の製造方法、
(C)ASTM D3236に準拠して170℃で測定される粘度が50〜1500mPa・s
(D)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が5〜50mgKOH/g
〔6〕変性ポリオレフィン樹脂が、下記(E)および(F)の条件を満たす無水マレイン酸変性ポリエチレンである前記〔1〕記載の製造方法、
(E)ASTM D3236に準拠して150℃で測定される粘度が1000〜10000mPa・s
(F)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が5〜50mgKOH/g
〔7〕変性ポリオレフィン樹脂が、下記(G)および(H)の条件を満たす無水マレイン酸変性ポリプロピレンである前記〔1〕記載の製造方法、
(G)ASTM D3236に準拠して190℃で測定される粘度が100〜3000mPa・s
(H)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が10〜100mgKOH/g
〔8〕変性ポリスチレン樹脂が下記(I)および(J)の条件を満たすスチレン−無水マレイン酸共重合体である前記〔1〕記載の製造方法、
(I)ASTM D3236に準拠して180℃で測定される粘度が50〜1000mPa・s
(J)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が50〜800mgKOH/g
〔9〕ポリウレタン系接着剤が、液状の末端水酸化共役ジエンポリマー、液状の末端水酸化水添ポリオレフィンの少なくともいずれか一つを1〜8重量%含有する前記〔1〕記載の製造方法、
〔10〕末端水酸化共役ジエンポリマーが、末端水酸化ポリブタジエン、末端水酸化ポリイソプレン、末端水酸化水添ポリオレフィンが末端水酸化ポリブタジエン水添物、末端水酸化ポリイソプレン水添物から選ばれる前記〔9〕記載の製造方法、
〔11〕ポリウレタン系接着剤100重量部に対して、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤の少なくともいずれか一つを0.5〜5重量部添加する前記〔1〕記載の製造方法、
〔12〕ポリウレタン系接着剤100重量部に対して、架橋剤を0.02〜0.10重量部添加する前記〔1〕記載の製造方法、
〔13〕ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の一粒の重量が0.5〜4.5mgである前記〔1〕記載の製造方法、
〔14〕ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度が15〜150g/Lである前記〔1〕記載の製造方法、
〔15〕ポリオレフィン系樹脂発泡粒子がポリプロピレン系樹脂発泡粒子である前記〔1〕記載の製造方法、
〔16〕ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が2000〜10000ppmの付着分散剤を有する前記〔1〕記載の製造方法、
〔17〕前記〔1〕〜〔16〕いずれかに記載の製造方法により得られる発泡成形体、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
電気的励起ゾーン処理装置のような特殊な装置を必要とすることなく、従来のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の製造装置を用いてポリウレタン系接着剤によりポリオレフィン系樹脂発泡粒子どうしを強固に接着することで、空隙を有する発泡成形体を製造できる。
また、本発明では、ポリウレタン系接着剤との接着性が時間とともに減衰することはなく、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子製造工程と接着工程の時間的、距離的な制約は生じない。
また、本発明では、蒸気による加熱、融着させることなく成形が可能であるので、蒸気加熱時の膨張により空隙が狭まったり、閉塞したりすることがなく、高い空隙率を維持できる。
よって、本発明により、高い空隙率と強固な接着力を併せ持つ空隙を有するポリオレフィン系樹脂発泡成形体を簡便な方法で製造可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明には、変性ポリオレフィン樹脂および/または変性ポリスチレン樹脂を0.5重量%以上10重量%以下含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子(以下、EPO粒子と言う場合がある)を用いる。
【0014】
本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の基材樹脂の具体例としては、たとえばホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、1−ブテン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−1−ブテン−プロピレンランダム3元共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、1−ブテン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−1−ブテン−プロピレンブロック共重合体などのポリプロピレン系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂;ポリブテン、ポリペンテンなどがあげられる。これらを単独あるいは混合して用いることができる。
【0015】
これらの内、比較的発泡倍率の制御が容易で、バラツキの少ない発泡粒子を得やすいホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく使用される。
【0016】
基材樹脂は、主に最終製品に求められる剛性や柔軟性、耐熱性の観点から選択される。より高い剛性や耐熱性が求められる場合はポリプロピレン系樹脂、より柔軟性が求められる場合にはポリエチレン系樹脂が選択される。
【0017】
EPO粒子を製造する際に破泡することなく、所望の発泡倍率にコントロールすることを容易にするため、ASTM D1238に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が適切な範囲にあるものを選択することが好ましい。ポリプロピレン系樹脂の場合は、230℃、2.16kg荷重で測定されるMFRが1〜20g/10分、ポリエチレン系樹脂の場合は、180℃、2.16kg荷重で測定されるMFRが0.3〜15g/10分の範囲にあるものが好適に使用される。
【0018】
本発明におけるEPO粒子には、変性ポリオレフィン樹脂および/または変性ポリスチレン樹脂が0.5重量%以上10重量%以下含有される。変性ポリオレフィン樹脂、変性ポリスチレン樹脂は単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。
【0019】
変性ポリオレフィン樹脂は、ホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、1−ブテン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−1−ブテン−プロピレンランダム3元共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、1−ブテン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−1−ブテン−プロピレンブロック共重合体などのポリプロピレン系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂に極性官能基を導入した樹脂である。化学的あるいは物理的手法による酸化処理や、極性官能基を有するモノマーをグラフト重合や末端重合或いは共重合することにより、極性官能基が導入される。
【0020】
極性官能基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エステル基、スルフォン基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシルアミン基、ヒドロキシルアミド基、無水マレイン酸残基などが挙げられる。
【0021】
変性ポリオレフィン樹脂の具体例としては、酸化ポリエチレンワックス(以下、酸化PE−Wax)、酸化ポリプロピレンワックス(以下、酸化PP−Wax)、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、スルホン酸変性ポリエチレン、スルホン酸変性ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体などが例示される。基材樹脂であるポリオレフィン系樹脂と混錬加工する上で、酸化PE−Wax、酸化PP−Wax、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好適に使用される。
【0022】
変性ポリスチレン樹脂は、ポリスチレン樹脂に極性官能基を導入した樹脂である。通常、スチレンモノマーと極性官能基を有するビニルモノマーとの共重合より、極性官能基が導入される。
【0023】
共重合に用いる極性官能基を有するビニルモノマーとしては、無水マレイン酸、ジメチルアミノプロピルアミンマレイミド、メタクリル酸、メタクリル酸メチルなどが挙げられる。基材樹脂であるポリオレフィン系樹脂と混錬加工する上で、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ジメチルアミノプロピルアミンマレイミド共重合体がより好適に使用される。
【0024】
市販されている変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂の具体例としては、Murcus Oil and Chemical製のMurcus(商標)M3300、M3400P、M3400T、M3500、Eastman Chemical Company製のEpolene(商標)C-16、C-19、C-26、E-10、E-14E、E-16、E-25、E-43、Hase Petroleum Wax Company製の301E、4052E、4202E、CWP(商標)OXシリーズ、Gong Myoung Technologies Company製GMT-1200シリーズ、GMT-1800シリーズ、GMT-2500シリーズ、The Dow Chemical Company製AMPLIFY(商標)GRシリーズ、三洋化成工業株式会社製SANWAX(商標)シリーズ、日本製紙ケミカル株式会社製アウローレン(商標)シリーズ、Equistar Chemicals, LP製Plexar(商標)6000シリーズ、Sartomer Company, Inc.製SMA(商標)シリーズなどが挙げられる。
【0025】
これら変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂は0.5重量%以上10重量%以下の範囲で基材樹脂に含有される。0.5重量%未満ではポリウレタン系接着剤と十分な接着力を得ることができない。10重量%までで接着力の向上はほぼ飽和する。10重量%超としても更なる接着力の向上が望めないばかりか、EPO粒子製造の際に分散媒中での安定性が低下したり、破泡が発生し易くなったりする不具合が生じてくる。
【0026】
これら変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂は、EPO粒子の製造工程で受ける熱処理により、EPO粒子表面に移動し、EPO粒子表面に極性官能基が局在することとなり、接着剤との接着性を高める働きをしているものと思われる。EPO粒子表面への移動は、変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂とEPO粒子を形成する基材であるポリオレフィン樹脂との親和性が低い、或いは絡み合いが少ない方が有利である。親和性は変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂の極性度に依存し、極性度が高い程、基材ポリオレフィン樹脂との親和性が低くなり、EPO粒子表面に移動し易い。つまり、変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂の骨格を形成する樹脂の極性度が高い、極性官能基の極性度が高い、極性官能基の数が多い程、EPO粒子表面に移動し易くなる。また絡み合いは、変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂の分子量、主鎖骨格の分岐度、或いはそれらの尺度である溶融粘度に依存し、分子量が低い、分岐度が低い、或いは溶融粘度が低い程、絡み合いが少なく、EPO粒子表面に移動し易くなる。
【0027】
一方で、変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂の極性度が高すぎたり、分子量が低すぎたり、或いは溶融粘度が低すぎると、EPO粒子表面に留まることができず、脱落や溶出が起こり、ポリウレタン系接着剤と高い接着性を得ることができない。
【0028】
更に、ポリウレタン系接着剤との接着性は、極性官能基の種類に大きく依存し、ポリウレタン系接着剤との親和性或いは反応性が高いほど、より良好な接着性を得ることができる。また、同一極性官能基では極性官能基数が多い程、高い接着性を得ることができる。
【0029】
従い、より高い接着性を得るには、変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂の骨格を形成する樹脂の種類、極性官能基の種類と数、分子量或いは溶融粘度のバランスが重要である。
【0030】
酸化PE−Waxの場合、ASTM D3236に準拠して150℃で測定される粘度が5〜800mPa・sかつASTM D1386に準拠して測定される酸価が5〜50mgKOH/gであることが、より高い接着性を得る上で好ましい。更には、粘度が10〜500mPa・s、酸価が10〜30mgKOH/gであることがより好ましい。数平均分子量は、分岐構造等により異なるが、多くの場合、500〜5000の範囲である。
【0031】
酸化PP−Waxの場合、ASTM D3236に準拠して170℃で測定される粘度が50〜1500mPa・sかつASTM D1386に準拠して測定される酸価が5〜50mgKOH/gであることが、より高い接着性を得る上で好ましい。更には、粘度が100〜300mPa・s、酸価が10〜30mgKOH/gであることがより好ましい。数平均分子量は分岐構造等により異なるが、多くの場合、1000〜10000の範囲である。
【0032】
無水マレイン酸変性ポリエチレンの場合、ASTM D3236に準拠して150℃で測定される粘度が1000〜10000mPa・sかつASTM D1386に準拠して測定される酸価5〜50mgKOH/gであることが、より高い接着性を得る上で好ましい。更には、粘度が2000〜8000mPa・s、酸価が8〜35mgKOH/gであることがより好ましい。数平均分子量は分岐構造等により異なるが、多くの場合、4000〜20000の範囲である。
【0033】
無水マレイン酸変性ポリプロピレンの場合、ASTM D3236に準拠して190℃で測定される粘度が100〜3000mPa・sかつASTM D1386に準拠して測定される酸価が10〜100mgKOH/gであることが、より高い接着性を得る上で好ましい。更には、粘度が200〜1000mPa・s、酸価が15〜60mgKOH/gであることがより好ましい。数平均分子量は分岐構造等により異なるが、多くの場合、2000〜20000の範囲である。
【0034】
スチレン−無水マレイン酸共重合体の場合、ASTM D3236に準拠して180℃で測定される粘度が50〜1000mPa・sかつASTM D1386に準拠して測定される酸価が50〜800mgKOH/gであることが、より高い接着性を得る上で好ましい。更には、粘度が200〜800mPa・s、酸価が100〜500mgKOH/gであることがより好ましい。数平均分子量は分岐構造等により異なるが、多くの場合、2000〜20000の範囲である。
【0035】
本発明では、EPO粒子の見掛け体積に対して、1.5体積%以上10体積%以下のモイスチャー・キュアタイプのポリウレタン系接着剤(以下、PU接着剤ということがある)で、EPO粒子表面積の60%以上が被覆される。1.5体積%未満では十分な接着力が得られない。PU接着剤の使用量を増やすと接着力の向上を図れるが、得られる成形体の空隙率が減少する。EPO粒子間に形成される空隙は、EPO粒子の形状や型への充填方法に依るが、通常、成形体体積の25〜40%の範囲である。高い空隙率を維持して十分な接着力を得るには、10体積%が上限となる。更に好ましくは、2.5体積%以上5.0体積%以下である。
【0036】
EPO粒子とPU接着剤をブレンドすることにより、EPO粒子表面をPU接着剤で容易に被覆することができる。通常のEPO粒子では、前記の通り、表面エネルギーが低いため極性の高いPU接着剤で表面を濡らして被覆するのは簡単ではない。本発明のEPO粒子は変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂を含有することにより、PU接着剤との親和性が向上しており、容易にPU接着剤で表面を濡らすことができる。EPO粒子とPU接着剤のブレンドには一般に粉体やゾルのブレンドに用いられているブレンダーを活用することができる。例えば、コンクリートミキサー中にEPO粒子を仕込み、撹拌しながらPU接着剤を添加する方法が使用できる。
【0037】
部分的な接着不良を避けるために、PU接着剤でEPO粒子表面は最低限60%被覆されている必要がある。EPO粒子表面がPU接着剤で実質的に100%に被覆されていることが最も好ましい。被覆される割合はブレンダーの形状や回転速度、ブレンド時間等に依存するが、上記の通り、表面濡れ性が向上している本発明のEPO粒子を用いれば、十分なブレンドを実施することによりPU接着剤で実質的に100%被覆されたEPO粒子を容易に得ることができる。
【0038】
本発明に用いるモイスチャー・キュアタイプのPU接着剤とは、空気中の水分と反応することにより固化するPU接着剤である。市販されているモイスチャー・キュアタイプのPU接着剤が使用される。一液型と二液型のPU接着剤が市販されているが、一液型の方が生産プロセスを設計する上で好ましい。
【0039】
多くの場合、モイスチャー・キュアタイプのPU接着剤は、ジフェニルメタンジイソシナネート(MDI)とポリオールをMDIのイソシアネート基過剰条件で反応させて得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを主成分として含む。2,4’−MDIと4,4’−MDIが一般に用いられるが、2,4’−MDIと4,4’−MDI以外のMDI異性体や芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、またはビュレット変性体やカルボジイミド変性体、ウレトニミン変性体、アダクト変性体、イソシアヌレート変性体、ウレトジオン変性体などの変性ポリイソシアネートなどが必要により含まれる場合もある。
【0040】
ポリオールは、ポリオキシエチレングリコールやポリオキシプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオールが一般に用いられるが、エチレングリコールやプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどの低分子量ポリオール、ポリオールに換えてアミン類が必要により含まれる場合もある。
【0041】
上記ポリオールに加えて、液状の末端水酸化共役ジエンポリマー、液状の末端水酸化水添ポリオレフィンの少なくともいずれか一つのポリオールをPU接着剤全体に対して1〜8重量%含有することが、より高い接着性を得る上で好ましい。より好ましくは2〜6重量%である。これらをポリオールの一部として含むことで、EPO粒子との接着性はより向上する。
【0042】
末端水酸化共役ジエンポリマー、末端水酸化水添ポリオレフィンを含めた全ポリオール含量は使用するポリオールの種類、ポリイソシアネートの種類等に依るが、通常、PU接着剤のイソシアネート基含有量が5〜20重量%となる範囲に調整される。また、全ポリオール中の末端水酸化共役ジエンポリマー、末端水酸化水添ポリオレフィン比率が高い程、EPO粒子との接着性は向上するが、その比率が高くなると一般にPU接着剤の粘度が高くなる傾向にあり、流動性が低下するため、送液やEPO粒子との混合の際に不具合が生じる。この様な不具合を避けるため、通常、25℃における粘度が1000〜4000mPa・sの範囲となる様に調整される。
【0043】
末端水酸化共役ジエンポリマーは、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンが1,2結合または1,4結合で重合したポリマーであり、ポリマー末端に水酸基が導入されている。1,2結合比率が高い場合は、一部側鎖末端にも水酸基が導入されている。接着性の向上を得るには、これは常温で液体である必要がある。末端水酸化ポリブタジエン、末端水酸化ポリイソプレンが好適に使用される。
【0044】
末端水酸化水添ポリオレフィンは、上記末端水酸化共役ジエンポリマーの分子内二重結合を水素化して得られる樹脂である。接着性の向上を得るには、これは常温で液体である必要がある。末端水酸化ポリブタジエン水添物、末端水酸化ポリイソプレン水添物が好適に使用される。耐候性、耐熱性の向上を図るには、実質的に分子内に二重結合を含まない末端水酸化水添ポリオレフィンが好ましい。
【0045】
更に、ポリウレタン系接着剤100重量部に対して、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤の少なくともいずれか一つを0.5〜5重量部添加することにより更に接着力の向上を図ることができる。更に好ましくは1〜3重量部である。カップリング剤の化学構造によっては、触媒効果によりPU接着剤のキュアリング時間を短縮できるものもある。触媒効果を期待する場合は、チタン系カップリング剤が好適に使用される。
【0046】
これらカップリング剤はPU接着剤と十分に混合した後、速やかにEPO粒子と混合することが好ましいが、PU接着剤の種類とカップリング剤の種類によっては混合後、数時間〜数日間保存可能な場合もある。
【0047】
本発明に用いるカップリング剤とは、カルボキシル基や水酸基などの活性水素を有する官能基と反応し、或いは酸素、硫黄、窒素などの不対電子対を有する原子を含む官能基と反応し、化学結合を生成し得る有機金属化合物である。中心金属としてチタン、アルミニウムまたはジルコニウムを有する有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物または有機ジルコニウム化合物が好適に使用される。通常、中心金属は4つの配位子を有し、その内少なくとも1つの配位子はアルコキシ基或いはその誘導体である。アルコキシ基或いはその誘導体が開裂し、基質表面に存在する活性水素を有する官能基と水素置換反応して、或いは酸素、硫黄、窒素などの原子を含む官能基と反応して、化学結合を生成し、残る配位子と他の基質との化学反応或いは親和性により異なる二つの基質の接着性や分散性を高める働きをする。米国特許第4069192号、米国特許第4087402号、米国特許第4094853号、米国特許第4098758号、米国特許第4122062号、米国特許第4600789号、米国特許第4634785号などの明細書に多くの例が開示されている。
【0048】
ポリウレタン接着剤との反応性或いは親和性を有するアミノ基やスルフォニル基、フォスフェイト基を有する配位子を含むカップリング剤がより好適に用いられる。例えば、チタンIV,トリス[2−[(2−アミノエチル)アミノ] エタノラト−O],2−プロパノラトや、チタニウム[トリス(ドデシルベンゼンスルフォネート)]イソプロポオキサイド、イソプロピル[トリス(ジオクチルピロフォスフェイト)]チタネートなどが例示される。
【0049】
また、本発明にはポリウレタン系接着剤100重量部に対して、架橋剤を0.02〜0.10重量部添加することができる。架橋剤は固化後のポリウレタン接着剤の物性を調整したい場合や、固化速度を速めたい場合などに添加される。十分な効果を得るには0.02重量部以上添加することが好ましい。0.10重量部を超えて添加すると粘度が著しく上昇して、EPO粒子との混合が困難となる場合がある。架橋剤は上記カップリング剤と併用することができる。
【0050】
架橋剤はウレタン系接着剤と混合した後、速やかにEPO粒子と混合することが好ましい。一般に、架橋剤とウレタン接着剤との反応が進むと粘度が上昇して、EPO粒子との混合が困難となる。
【0051】
架橋剤は、ポリウレタンに一般に用いられている官能基を2〜4個含む低分子量多官能アルコールや低分子量多官能アミンが使用される。例えば、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのジオール類、グリセリンやトリメチロールプロパンなどのトリオール類、オキシプロピレイテドエチレンジアミンやテトラ−オキシアルキレイテド-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどのテトラオール類、エチレンジアミンやヘキサメチレンジアミンなどのジアミン類、ジエタノールアミンやアミノエチルエタノールアミンなどのアミノアルコール類が例示される。固化後のタフネスを高める上では、ジエタノールアミンやアミノエチルエタノールアミンなどのアミノアルコール類がより好適に使用される。
【0052】
本発明に用いるPU接着剤は淡黄色から茶褐色に着色している場合が多い。この様な場合、一般にポリウレタンに用いられている着色剤を添加して、発泡成形体の外観、見栄えを向上させることができる。着色剤としては例えば、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、ウルトラマリンブルー等の無機顔料、フタロシアニンブルー、キナクリドンイエロー、アイアンブルー、ナフトブルーなどの有機顔料が例示される。顔料を多く添加するほど、着色が強くなるが、過度に添加すると接着を阻害することがあるので、注意が必要である。顔料の添加量は、顔料の種類により一概には決められないが、概ねPU接着剤100重量部に対して、0.01〜0.50重量部の範囲である。
【0053】
また、PU接着剤の固化速度を制御するために、一般にポリウレタンに用いられている触媒、遅延活性触媒、反応抑制剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で、添加しても構わない。例えば、テトラメチルブタンジアミンやN−エチルモルフォリン、1,4−ジアザ(2,2,2)バイシクロオクタンなどのアミン触媒やオクタン酸スズやジラウリル酸ジブチルスズ、ジマレイン酸ジメチルスズなどの有機スズ触媒が例示される。
【0054】
更に、必要により、一般にポリウレタンに用いられているフィラー、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤などの添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で添加できる。
【0055】
上記EPO粒子は従来から知られている方法で製造することができる。例えば、次の方法が挙げられる。
【0056】
基材樹脂であるポリオレフィン系樹脂は、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱、楕円柱、球、立方体、直方体等の形状の樹脂粒子に加工される。この際、上記変性ポリオレフィン樹脂、変性ポリスチレン樹脂をポリオレフィン系樹脂とプリブレンドしておくことにより、添加することができる。また、溶融したポリオレフィン系樹脂中に添加してもよい。更に、必要に応じて、一般に用いられている酸化防止剤、加工安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、セル造核剤、気泡調整剤、帯電防止剤、フィラーなどの添加剤を添加できる。
【0057】
樹脂粒子の大きさは、EPO粒子の大きさに影響する。EPO粒子が小さ過ぎると、比表面積が大きくなり、EPO粒子表面にPU接着剤層が薄くなるため、接着性に不利となる。また、EPO粒子が大き過ぎると、単位体積あたりのEPO粒子間の接合点あるは接合面の数が少なくなり、接着性に不利となる。この観点から、EPO粒子一粒の重量は0.5mg〜4.5mgであることが好ましく、1.0mg〜3.0mgがより好ましい。EPO粒子の一粒の重量は、ランダムに選んだ100粒のEPO粒子から得られる平均樹脂粒子重量であり、mg/粒で表示する。
【0058】
この樹脂粒子を耐圧容器内で分散媒に分散させ、発泡剤を添加する。次に樹脂粒子が軟化する温度以上、好ましくは樹脂粒子の融点−25℃以上で樹脂粒子の融点+25℃以下の範囲の温度に加熱し、加圧して、樹脂粒子内に発泡剤を含浸させる。この後、耐圧容器の一端を開放して樹脂粒子を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気中に放出することによりEPO粒子を製造する。
【0059】
樹脂粒子を分散させる耐圧容器には特に制限はなく、EPO粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0060】
得られるEPO粒子の嵩密度は上記耐圧容器内の温度、圧力により調整され、温度あるいは圧力が高い程、嵩密度は低く(発泡倍率が高く)なる。求められる機械特性に応じてEPO粒子の嵩密度は調整される。嵩密度が低い(発泡倍率が高い)と軟らかく、嵩密度が高い(発泡倍率が低い)と硬くなる。多くの場合、嵩密度が15〜150g/Lの範囲のEPO粒子が好適に使用される。
【0061】
前記分散媒としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、水等が使用できるが、中でも水を使用することが好ましい。
【0062】
分散媒中、樹脂粒子同士の合着を防止するために、分散剤を使用することが好ましい。分散剤として、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレー等の無機系分散剤が例示できる。
【0063】
また、分散剤と共に分散助剤を使用することが好ましい。分散助剤の例としては、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド等のカルボン酸塩型、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩等のスルホン酸塩型、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル型、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンリン酸塩、アルキルアリルエーテル硫酸塩等のリン酸エステル型等の陰イオン界面活性剤をあげることができる。また、マレイン酸共重合体塩、ポリアクリル酸塩等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリスチレンスルホン酸塩、ナフタルスルホン酸ホルマリン縮合物塩などの多価陰イオン高分子界面活性剤も使用することができる。
【0064】
分散助剤として、スルホン酸塩型の陰イオン界面活性剤を使用することが好ましく、さらには、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩から選ばれた1種もしくは2種以上の混合物を用いるのが好ましい。
【0065】
この様にして得られたEPO粒子表面には、使用した上記分散剤が一部残存している。これを付着分散剤と称する。これは、EPO粒子重量に対する付着分散剤重量の重量比として求められ、ppmで表示する。蒸気等でEPO粒子を加熱、融着させる通常の成形方法では、良好な融着を得るために、付着分散剤は少なければ少ないほど好ましいが、本発明においては、付着分散剤はPU接着剤との接着力を向上させる働きを持ち、多いほど好ましい。しかし、過度に存在すると付着分散剤層内で剥離する場合があり、2000ppm〜10000ppmの範囲が好ましい。更に好ましくは、5000ppm〜9000ppmである。
【0066】
PU接着剤とより良好な接着力を得る上で、上記で例示した中で、分散剤として第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、硫酸バリウムまたはカオリン、分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダまたはアルキルベンゼンスルホン酸ソーダが好ましい。
【0067】
付着分散剤量は、分散剤および分散助剤の使用量により調整できる。基本的には分散剤および分散助剤の使用量を多くすると付着分散剤量は増加するが、分散助剤に対する分散剤の重量比がある一定値以下となると、つまり、分散助剤が特定量より過多となると、分散助剤の二重配位が起こり、突然に分散能を失うので注意が必要である。分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリオレフィン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、分散媒100重量部に対して分散剤0.2〜3重量部、分散助剤0.001〜0.1重量部の範囲である。また、樹脂粒子は、分散媒中での分散性を良好なものにするために、通常、分散媒100重量部に対して、20〜100重量部使用するのが好ましい。
【0068】
EPO粒子を製造するに当たり、発泡剤の種類に特に制限はなく、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水等およびそれらの混合物を用いることができる。これらの中で高発泡倍率の発泡粒子を得るにはイソブタンが好ましく、低発泡倍率の発泡粒子を得るには、二酸化炭素が好ましい。発泡剤として水を使用する場合、分散媒として使用する水を使用することが出来る。
【0069】
一旦製造されたEPO粒子に空気等の不活性ガスを含浸させて発泡力を付与した後、加熱により更に発泡させてより高倍率のEPO粒子を製造する二段発泡法を採用することもできる。この方法により高発泡倍率のEPO発泡粒子を得ることができる。また、二段発泡されたEPO発泡粒子をさらに二段発泡させてもよい。
【0070】
こうして製造したEPO粒子は、モイスチャー・キュアタイプの前記PU接着剤とブレンドすることにより、或いは前記PU接着剤をスプレーすることにより、EPO粒子表面積の60%以上をPU接着剤で被覆させる。前記の通り、ブレンドには一般に粉体やゾルのブレンドに用いられているブレンダーを活用することができる。例えば、コンクリートミキサー中にEPO粒子を仕込み、撹拌しながらPU接着剤を添加する方法が使用できる。
【0071】
次いで、EPO粒子の表面を被覆しているPU接着剤を固化させて空隙を有する発泡成形体を製造する。例えば、PU接着剤で被覆されたEPO粒子は、金型あるいは型枠に充填され、PU接着剤が空気中の水分と反応して固化するまで放置された後、離型され、所望の形状に成形される。或いは、ブロック形状の成形体とした後、切削や張り合わせにより所望の形状とすることもできる。
【実施例】
【0072】
EPO粒子の製造
(エチレン−プロピレンランダム共重合体発泡粒子)
融点147℃、MFR6g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体にタルク500ppm、ステアリン酸カルシウム1500ppmおよび変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂の所定量をスーパーミキサーでブレンドし、58mm二軸押出機に投入して溶融(200℃)、混錬し、直径2.2mmの穴を複数個有するダイプレートを通してストランド状に押し出した。押し出したストランドを水槽に通して冷却後、ペレタイザーにより、所定の粒重量の円柱状ペレットにカットした。このペレット100重量部に対して水200重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム、分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ソーダを所定量、およびイソブタンをオートクレーブ型耐圧容器に仕込み、撹拌しながら昇温して所定の温度(発泡温度)で保持した後、イソブタンを圧入して缶内を所定の圧力(発泡圧力)に調整した。この状態で30分間保持した後、イソブタンで前記発泡圧力に缶内圧を保持しながら、直径4mmの穴を有するオリフィス板を通して大気圧下に放出し、エチレン−プロピレンランダム共重合体発泡粒子を得た。得られたエチレン−プロピレンランダム共重合体発泡粒子は水洗後、60℃のオーブンで乾燥し、成形に供した。
【0073】
(ホモポリプロピレン発泡粒子)
融点160℃、MFR7g/10分のホモポリプロピレンを用いた以外は、上記エチレン−プロピレンランダム共重合体発泡粒子と同様の方法でホモポリプロピレン発泡粒子を得、成形に供した。
【0074】
(直鎖状低密度ポリエチレン発泡粒子)
融点114℃、MFR2g/10分、密度0.935g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレンを用い、ステアリン酸カルシウム500ppmおよび変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂の所定量を添加した以外は、上記エチレン−プロピレンランダム共重合体発泡粒子と同様の方法で直鎖状低密度ポリエチレン発泡粒子を得、成形に供した。
【0075】
EPO粒子の製造に使用した変性ポリオレフィン樹脂/変性ポリスチレン樹脂を表1に記載する。
【0076】
【表1】

【0077】
なお、EPO粒子の嵩密度は、乾燥した予備発泡粒子を容積約10Lのバケツに掬い取り、予備発泡粒子の重量を測定し、次の式にしたがって求めた。

嵩密度(g/L)=予備発泡粒子の重量(g)/バケツの容量(L)
【0078】
成形体の製造
メスシリンダーで見掛け体積16リットルのEPO粒子を量りとり、Hover Trowel Inc.製のKOL batch mixer(パドルとしてHT-KR-1010を備えたHT-K3-60型)に投入した。PU接着剤としてHuntsman Corporation製Suprasec9594に所定量のカップリング剤、架橋剤および着色剤としてカーボンブラックを混合してPU接着剤組成物を調整した。調整後、速やかに所定量のPU接着剤組成物を、該ミキサー内で撹拌されているEPO粒子上に投入し、2分間混合した。該混合物を長さ30cm、幅16cm、高さ11cmの直方体ダンボール箱に充填し、木製の蓋をした後、4kgの錘を載せた状態で、室温下に放置してPU接着剤組成物を固化させて成形体を得た。
使用したPU接着剤、カップリング剤、架橋剤、カーボンブラック(着色剤、CB)を表2に記載する。
【0079】
【表2】

【0080】
成形体の評価
(接着性テスト)
得られた成形体から長さ25cm、幅10cmで厚み5mm、10mmおよび15mmのシート状サンプルをバーチカルスライサーで切り出した。3種の厚みのサンプルをそれぞれ長さ方向略中央部で180°折り曲げ、以下の基準で評価した。
◎:割れることなく、完全に接着を保持している。
○:ビーズ数粒の範囲で接着剤−EPO粒子界面での剥がれが見られるが、折り曲げ線上の90%以上は接着を保持している。
△:一部クラックが入るが、折り曲げ線上の60%以上は接着を保持している。
×:折り曲げ線山側の大部分が破断し、谷側の表面層のみ接着を保持している。
××:完全に破断。
【0081】
(空隙率)
得られた成形体から約15mm×15mm×40mmの直方体をバーチカルスライサーで切り出した。ノギスで測定した外寸から計算される見掛け体積をVa(cm3)、ピクノメーターで測定される大気と連通していない部分の体積Vp(cm3)から以下の式で空隙率を計算した。
空隙率(%)=(Va−Vp)/Va×100
【0082】
(実施例1)
前記のエチレン−プロピレンランダム共重合体発泡粒子の製造方法に従い、変性ポリオレフィン樹脂としてHase Petroleum Wax Company製の酸化ポリエチレンワックスであるCWP(商標)OX−18を2.0重量%含有し、粒重量1.2mg/粒、嵩密度48.8g/L、付着分散剤6250ppmのEPO粒子を製造した。この際、第三リン酸カルシウム、n−パラフィンスルホン酸ソーダはそれぞれペレット100重量部に対して2.5重量部、0.055重量部使用し、発泡温度および発泡圧力はそれぞれ147.0℃、225psig(1.55MPa)とした。
【0083】
前記の成形体の製造方法に従い、成形体を製造した。この際、PU接着剤(Huntsman corporation製Suprasec(商標)9594)100重量部に対して、カーボンブラック(Degussa AG製Printex(商標)G)を0.02重量部添加したPU接着剤組成物をEPO粒子の見掛け体積に対して、3.5体積%使用した。成形体は約4日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は31%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で◎、10mm厚では○、15mm厚では△の評価結果であった。
【0084】
(実施例2)
実施例1と同じEPO粒子を用い、PU接着剤100重量部に対してチタン系カップリング剤であるKenrich Petrochemicals, Inc.製Ken-React(商標)KR44を0.5重量部、カーボンブラックを0.02重量部添加したPU接着剤組成物をEPO粒子の見掛け体積に対して、3.5体積%使用し、上記成形体の製造方法に従い、成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は30%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で◎、10mm厚および15mm厚では○の評価結果であった。
【0085】
(実施例3)
チタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR44を2.0重量部とした以外は実施例2と同様の方法で、成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は29%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚および10mm厚で◎、15mm厚では○の評価結果であった。
【0086】
(実施例4)
チタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR44を5.0重量部とし、PU接着剤組成物をEPO粒子の見掛け体積に対して、4.0体積%添加した以外は実施例2と同様の方法で、成形体を製造した。成形体は約2日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は28%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚、10mm厚および15mm厚の全てで◎の評価結果であった。
【0087】
(実施例5)
実施例1と同じEPO粒子を用い、PU接着剤100重量部に対してチタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR44を2.0重量部、架橋剤であるアミノエチルエタノールアミン(AEEA)を0.05重量部、カーボンブラックを0.02重量部添加したPU接着剤組成物をEPO粒子の見掛け体積に対して、5.0体積%使用し、上記成形体の製造方法に従い、成形体を製造した。但し、AEEAの添加によりPU接着剤組成物の粘度が上昇したので、EPO粒子と均一に混合するために混合時間を3分間に延長した。成形体は約2日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は26%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚、10mm厚および15mm厚の全てで◎の評価結果であった。
【0088】
(実施例6)
PU接着剤組成物をEPO粒子の見掛け体積に対して、2.0体積%使用した以外は、実施例2と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は32%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で○、10mm厚および15mm厚では△の評価結果であった。
【0089】
(実施例7)
前記のエチレン−プロピレンランダム共重合体発泡粒子の製造方法に従い、変性ポリオレフィン樹脂として酸化ポリエチレンワックスであるCWP(商標)OX−18を0.5重量%含有し、粒重量1.2mg/粒、嵩密度56.1g/L、付着分散剤4320ppmのEPO粒子を製造した。この際、第三リン酸カルシウム、n−パラフィンスルホン酸ソーダはそれぞれEPO粒子のペレット100重量部に対して2.5重量部、0.035重量部使用し、発泡温度および発泡圧力はそれぞれ147.0℃、220psig(1.52MPa)とした。
該EPO粒子を用いた以外は、実施例3と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は30%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚および10mm厚で○、15mm厚では△の評価結果であった。
【0090】
(実施例8)
酸化ポリエチレンワックスであるCWP(商標)OX−18を5.0重量%とし、実施例7と同様にして、粒重量1.2mg/粒、嵩密度37.5g/L、付着分散剤7230ppmのEPO粒子を製造した。この際、第三リン酸カルシウム、n−パラフィンスルホン酸ソーダはそれぞれペレット100重量部に対して3.0重量部、0.095重量部使用し、発泡温度および発泡圧力はそれぞれ147.0℃、225psig(1.55MPa)とした。
該EPO粒子を用いた以外は、実施例3と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は28%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚、10mm厚および15mm厚の全てで◎の評価結果であった。
【0091】
(実施例9)
前記のエチレン−プロピレンランダム共重合体発泡粒子の製造方法に従い、変性ポリオレフィン樹脂として酸化ポリエチレンワックスであるMurcus Oil and Chemical製M3400Tを2.0重量%含有する粒重量1.0mg/粒のペレットを製造した。第三リン酸カルシウム、n−パラフィンスルホン酸ソーダはそれぞれペレット100重量部に対して2.5重量部、0.055重量部使用し、発泡温度および発泡圧力はそれぞれ147.6℃、195psig(1.34MPa)として、嵩密度42.6g/L、付着分散剤5860ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、PU接着剤100重量部に対してチタン系カップリング剤であるKen-React KR44を2.0重量部、カーボンブラックを0.02重量部添加したPU接着剤組成物をEPO粒子の見掛け体積に対して、3.5体積%使用し、上記成形体の製造方法に従い、成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は29%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚および10mm厚で◎、15mm厚では○の評価結果であった。
【0092】
(実施例10)
変性ポリオレフィン樹脂として酸化ポリプロピレンワックスであるGong Myoung Technologies Company製GMT-2516を2.0重量%添加し、発泡温度および発泡圧力をそれぞれ147.9℃、200psig(1.38MPa)として実施例9と同様の方法で、嵩密度39.7g/L、付着分散剤6810ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、実施例9と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は28%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で◎、10mm厚および15mm厚では○の評価結果であった。
【0093】
(実施例11)
変性ポリオレフィン樹脂として無水マレイン酸グラフト低密度ポリエチレンであるThe Dow Chemical Company製AMPLIFY(商標)GR202を2.0重量%添加し、発泡温度および発泡圧力をそれぞれ147.3℃、210psig(1.45MPa)として実施例9と同様の方法で、嵩密度42.9g/L、付着分散剤6750ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、チタン系カップリング剤であるKenrich Petrochemicals, Inc.製Ken-React(商標)KR9Sを用いた以外は実施例9と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は29%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚および10mm厚で◎、15mm厚では○の評価結果であった。
【0094】
(実施例12)
変性ポリオレフィン樹脂として無水マレイン酸グラフト高密度ポリエチレンであるThe Dow Chemical Company製AMPLIFY(商標)GR204を2.0重量%添加し、発泡温度および発泡圧力をそれぞれ147.0℃、200psig(1.38MPa)として実施例9と同様の方法で、嵩密度56.1g/L、付着分散剤6900ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、チタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR9Sを用いた以外は実施例9と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は30%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で◎、10mm厚および15mm厚では○の評価結果であった。
【0095】
(実施例13)
変性ポリオレフィン樹脂として無水マレイン酸変性ポリプロピレンであるEastman Chemical Company製Epolene(商標)E-43を2.0重量%添加し、発泡温度および発泡圧力をそれぞれ147.8℃、195psig(1.34MPa)として実施例9と同様の方法で、嵩密度42.0g/L、付着分散剤7820ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、チタン系カップリング剤であるKenrich Petrochemicals, Inc.製Ken-React(商標)KR38Sを用いた以外は実施例9と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は29%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚および10mm厚で◎、15mm厚では○の評価結果であった。
【0096】
(実施例14)
変性ポリスチレン樹脂としてスチレン−無水マレイン酸共重合体であるSartomer製SMA(商標)EF60を2.0重量%添加し、発泡温度および発泡圧力をそれぞれ147.6℃、195psig(1.34MPa)として実施例9と同様の方法で、嵩密度39.2g/L、付着分散剤3860ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、チタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR38Sを用いた以外は実施例9と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は28%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で◎、10mm厚および15mm厚では○の評価結果であった。
【0097】
(実施例15)
変性ポリスチレン樹脂としてスチレン−無水マレイン酸共重合体であるSartomer製SMA(商標)3000を2.0重量%添加し、発泡温度および発泡圧力をそれぞれ147.6℃、195psig(1.34MPa)として実施例9と同様の方法で、嵩密度38.9g/L、付着分散剤3670ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、チタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR38Sを用いた以外は実施例9と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は28%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚および10mm厚で◎、15mm厚では○の評価結果であった。
【0098】
(実施例16)
変性ポリプロピレン樹脂であるEquistar製Plexar(商標)6006を2.0重量%添加し、発泡温度および発泡圧力をそれぞれ147.3℃、200psig(1.38MPa)として実施例9と同様の方法で、嵩密度40.8g/L、付着分散剤5980ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、実施例9と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は29%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で◎、10mm厚では○、15mm厚では△の評価結果であった。
【0099】
(実施例17)
前記のホモポリプロピレン発泡粒子の製造方法に従い、変性ポリオレフィン樹脂として酸化ポリエチレンワックスであるCWP(商標)OX−18を2.0重量%含有する粒重量1.2mg/粒のペレットを製造した。第三リン酸カルシウム、n−パラフィンスルホン酸ソーダはそれぞれペレット100重量部に対して2.5重量部、0.075重量部使用し、発泡温度および発泡圧力はそれぞれ158.2℃、190psig(1.31MPa)として、嵩密度61.2g/L、付着分散剤6620ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、PU接着剤100重量部に対してチタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR44を2.0重量部、カーボンブラックを0.02重量部添加したPU接着剤組成物をEPO粒子の見掛け体積に対して、3.5体積%使用し、上記成形体の製造方法に従い、成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は30%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚および10mm厚で◎、15mm厚では○の評価結果であった。
【0100】
(実施例18)
変性ポリスチレン樹脂としてスチレン−無水マレイン酸共重合体であるSartomer製SMA(商標)EF60を2.0重量%添加した以外は実施例17と同様の方法で、嵩密度64.8g/L、付着分散剤4930ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、チタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR38Sを用いた以外は実施例17と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は30%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で◎、10mm厚および15mm厚では○の評価結果であった。
【0101】
(実施例19)
変性ポリオレフィン樹脂として無水マレイン酸グラフト低密度ポリエチレンであるAMPLIFY(商標)GR202を用いた以外は実施例17と同様の方法で、嵩密度63.6g/L、付着分散剤7390ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、チタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR38S 1.5重量部を用いた以外は実施例17と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は30%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で◎、10mm厚および15mm厚では○の評価結果であった。
【0102】
(実施例20)
前記直鎖状低密度ポリエチレン発泡粒子の製造方法に従い、変性ポリオレフィン樹脂として酸化ポリエチレンワックスであるCWP(商標)OX−18を3.0重量%含有する粒重量2.2mg/粒のペレットを製造した。第三リン酸カルシウム、n−パラフィンスルホン酸ソーダはそれぞれペレット100重量部に対して2.5重量部、0.095重量部使用し、発泡温度および発泡圧力はそれぞれ114.5℃、260psig(1.79MPa)として、嵩密度21.3g/L、付着分散剤7920ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、PU接着剤100重量部に対してチタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR44を2.0重量部、カーボンブラックを0.02重量部添加したPU接着剤組成物をEPO粒子の見掛け体積に対して、3.5体積%使用し、上記成形体の製造方法に従い、成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は25%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚、10mm厚および15mm厚の全てで◎の評価結果であった。
【0103】
(実施例21)
変性ポリスチレン樹脂としてスチレン−無水マレイン酸共重合体であるSartomer製SMA(商標)EF60を2.0重量%添加した以外は実施例20と同様の方法で、嵩密度24.6g/L、付着分散剤5990ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、チタン系カップリング剤であるKen-React(商標)KR9Sを用いた以外は実施例20と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は25%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚で◎、10mm厚および15mm厚では○の評価結果であった。
【0104】
(比較例1)
EPO粒子としてエチレン−プロピレンランダム共重合体を基材樹脂とするKanekatexas Corporationから市販されているL18S(粒重量1.2mg/粒、嵩密度42.8g/L、付着分散剤320ppm)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体はバーチカルスライサーでの切削時にEPO粒子が数個欠落する場合もあったが、どうにか切削可能であった。得られた成形体の空隙率は30%であった。接着性テストにおいて5mm厚、10mm厚および15mm厚のいずれのサンプルもEPO粒子とPU接着剤界面で完全に破断した。
【0105】
(比較例2)
EPO粒子としてエチレン−プロピレンランダム共重合体を基材樹脂とするKanekatexas Corporationから市販されているL18S(粒重量1.2mg/粒、嵩密度42.8g/L、付着分散剤320ppm)を用い、PU接着剤組成物をEPO粒子の見掛け体積に対して5体積%とした以外は実施例3と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体はバーチカルスライサーでの切削時にEPO粒子が欠落することはなかったが、接着性テストにおいて5mm厚では、折り曲げ線谷側の表面層のみかろうじて接着を保持したが、10mm厚および15mm厚のサンプルではEPO粒子とPU接着剤界面で完全に破断した。空隙率は28%であった。
【0106】
(比較例3)
変性ポリオレフィン樹脂として酸化ポリエチレンワックスであるCWP(商標)OX−18を0.1重量%とした以外は実施例8と同様の方法で嵩密度49.7g/L、付着分散剤5890ppmのEPO粒子を製造した。
得られたEPO粒子を用い、実施例8と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体は29%の空隙率を持ち、接着性テストにおいて5mm厚および10mm厚では、折り曲げ線谷側の表面層のみかろうじて接着を保持したが、15mm厚では完全に破断した。
【0107】
(比較例4)
EPO粒子として直鎖状低密度ポリエチレンを基材樹脂とするKanekatexas Corporationから市販されているXL38M(粒重量2.2mg/粒、嵩密度20.1g/L、付着分散剤280ppm)を用いた以外は、実施例20と同様の方法で成形体を製造した。成形体は約3日で固化してダンボール箱から取り出し可能であった。
得られた成形体はバーチカルスライサーでの切削時にEPO粒子が数個欠落する場合もあったが、どうにか切削可能であった。得られた成形体の空隙率は25%であった。接着性テストにおいて5mm厚、10mm厚および15mm厚のいずれのサンプルもEPO粒子とPU接着剤界面で完全に破断した。
これら実施例および比較例の内容について表3に記載した。以上の実施例および比較例から明らかなように、本発明により高い空隙率と強固な接着強度を併せ持つ空隙を有するポリオレフィン系樹脂発泡成形体が製造可能である。
【0108】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡粒子同士を接着剤で点接着あるいは面接着させることにより空隙を有する発泡成形体を製造する方法であって、変性ポリオレフィン樹脂および/または変性ポリスチレン樹脂を0.5重量%以上10重量%以下含有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の見掛け体積に対して1.5体積%以上10体積%以下のモイスチャー・キュアタイプのポリウレタン系接着剤で、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子表面積の60%以上を被覆した後、ポリウレタン系接着剤を固化させて空隙を有する発泡成形体を製造する方法。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子がホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、直鎖状低密度ポリエチレンのいずれかを基材樹脂とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
変性ポリオレフィン樹脂が、酸化ポリエチレンワックス、酸化ポリプロピレンワックス、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、変性ポリスチレン樹脂がスチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ジメチルアミノプロピルアミンマレイミド共重合体の群の中から選ばれる請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
変性ポリオレフィン樹脂が、下記(A)および(B)の条件を満たす酸化ポリエチレンワックスである請求項1記載の製造方法。
(A)ASTM D3236に準拠して150℃で測定される粘度が5〜800mPa・s
(B)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が5〜50mgKOH/g
【請求項5】
変性ポリオレフィン樹脂が、下記(C)および(D)の条件を満たす酸化ポリプロピレンワックスである請求項1記載の製造方法。
(C)ASTM D3236に準拠して170℃で測定される粘度が50〜1500mPa・s
(D)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が5〜50mgKOH/g
【請求項6】
変性ポリオレフィン樹脂が、下記(E)および(F)の条件を満たす無水マレイン酸変性ポリエチレンである請求項1記載の製造方法。
(E)ASTM D3236に準拠して150℃で測定される粘度が1000〜10000mPa・s
(F)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が5〜50mgKOH/g
【請求項7】
変性ポリオレフィン樹脂が、下記(G)および(H)の条件を満たす無水マレイン酸変性ポリプロピレンである請求項1記載の製造方法。
(G)ASTM D3236に準拠して190℃で測定される粘度が100〜3000mPa・s
(H)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が10〜100mgKOH/g
【請求項8】
変性ポリスチレン樹脂が下記(I)および(J)の条件を満たすスチレン−無水マレイン酸共重合体である請求項1記載の製造方法。
(I)ASTM D3236に準拠して180℃で測定される粘度が50〜1000mPa・s
(J)ASTM D1386に準拠して測定される酸価が50〜800mgKOH/g
【請求項9】
ポリウレタン系接着剤が、液状の末端水酸化共役ジエンポリマー、液状の末端水酸化水添ポリオレフィンの少なくともいずれか一つを1〜8重量%含有する請求項1記載の製造方法。
【請求項10】
末端水酸化共役ジエンポリマーが末端水酸化ポリブタジエン、末端水酸化ポリイソプレン、末端水酸化水添ポリオレフィンが末端水酸化ポリブタジエン水添物、末端水酸化ポリイソプレン水添物から選ばれる請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
ポリウレタン系接着剤100重量部に対して、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤の少なくともいずれか一つを0.5〜5重量部添加する請求項1記載の製造方法。
【請求項12】
ポリウレタン系接着剤100重量部に対して、架橋剤を0.02〜0.10重量部添加する請求項1記載の製造方法。
【請求項13】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の一粒の重量が0.5〜4.5mgである請求項1記載の製造方法。
【請求項14】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度が15〜150g/Lである請求項1記載の製造方法。
【請求項15】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子がポリプロピレン系樹脂発泡粒子である請求項1記載の製造方法。
【請求項16】
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が2000〜10000ppmの付着分散剤を有する請求項1記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16いずれかに記載の製造方法により得られる発泡成形体。

【公開番号】特開2011−99101(P2011−99101A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247441(P2010−247441)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】