説明

穿刺支援システム

【課題】 簡単な操作でターゲットに穿刺針を自動的に到達させること。
【解決手段】 穿刺支援システム10は、超音波診断装置11によって取得した超音波断層画像に基づき、穿刺針Nを動作させてターゲットTに穿刺を行う穿刺支援ロボット12を備えている。穿刺支援ロボット12は、プローブ15の位置及び姿勢を検出するためのマーカ24及び3次元運動計測装置25と、プローブ15の位置及び姿勢に、そのときのプローブ15から得られた超音波断層画像を対応させることで、対象組織P内に設定されたターゲットTの3次元位置を求める3次元位置検出手段41と、穿刺針Nを動作させる穿刺針動作装置22と、3次元位置検出手段41で検出されたターゲットTの3次元位置に基づき、ターゲットTに穿刺針Nが到達するように、穿刺針動作装置22の動作を制御する動作制御手段42とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波ガイド下における穿刺を支援するためのシステムに係り、更に詳しくは、超音波診断装置によって取得した超音波断層画像を利用し、体内の対象組織内のターゲットに対して穿刺を簡易且つ迅速に行うための穿刺支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内組織への穿刺は、医療の様々な場面に用いられており、例えば、静脈にカテーテルを挿入して輸液を行うための中心静脈穿刺や、肝がん、乳がんへの経皮的治療等に用いられている。このような穿刺は、超音波診断装置で取得した患者の体内組織の超音波断層画像を目視しながら医師の手で行われる。この際、穿刺針を確実にターゲットまで到達させて停止することが必要となるが、超音波断層画像内における穿刺針の位置が視認しにくいことから、医師の手の動作と穿刺針の動作の関係が把握しにくく、医師が穿刺を正確に行うためには熟練した技術を要する。
【0003】
ところで、特許文献1には、体表から体内のターゲットに向かう穿刺針のルートを超音波断層画像上に表示可能な超音波診断装置が開示されている。この超音波診断装置に用いられるプローブの側部には、穿刺針の挿入位置をガイドする挿入部ガイドが設けられており、この挿入部ガイドは、穿刺針が挿入される複数の挿入孔を備えている。特許文献1の超音波診断装置では、医師が、超音波断層画像を目視しながら、挿入部ガイドの位置とターゲットの位置とを結ぶ穿刺ルートを模擬的に設定して超音波断層画像上に表示させ、当該表示に従い、医師の手で、当該穿刺ルートに穿刺可能となる位置の挿入孔から穿刺針を挿入して穿刺を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−298476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の発明にあっては、医師が超音波断層画像を見ながらマニュアル的に穿刺ルートを設定しなければならない。これにより、当該穿刺ルートを設定した後で、患者に対してプローブが移動し、超音波断層画像内でターゲットが僅かでも移動した場合には、穿刺ルートを再度設定しなければならず面倒であり、穿刺を迅速に行えない。このため、穿刺ルートを設定する間は、比較的長時間に亘って患者に対して同一姿勢を維持して貰いながら、医師が同一位置にプローブを静止保持しておく必要があり、患者及び医師の双方に苦痛をもたらすことになる。しかも、医師は、プローブを患者の体表部分に当てて静止したまま、穿刺ルートの設定用のキーボード操作やマウス操作等が必要になるため、これを一人の医師で行うと、長時間の両手操作を強いられることになり、簡単且つ迅速な穿刺が行えない。
【0006】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、簡単な操作でターゲットに穿刺針を自動的に到達させることができる穿刺支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)前記目的を達成するため、本発明は、患者の皮膚にプローブを接触させることで、当該プローブが接触する皮膚の下の体内部分の超音波断層画像を取得する超音波診断装置からの前記超音波断層画像に基づき、前記体内部分に存在する対象組織内のターゲットに穿刺を行う穿刺支援システムであって、
前記プローブの位置及び姿勢を検出するプローブ位置姿勢検出手段と、前記プローブ位置姿勢検出手段により検出された前記プローブの位置及び姿勢に、当該位置及び姿勢のときの前記プローブから得られた前記超音波断層画像を対応させることで、前記対象組織内に設定されたターゲットの3次元位置を求める3次元位置検出手段と、前記ターゲットに穿刺を行うための穿刺針を動作させる穿刺針動作手段と、前記3次元位置検出手段で検出された前記ターゲットの3次元位置に基づき、当該ターゲットに前記穿刺針が到達するように、前記穿刺針動作手段の動作を制御する動作制御手段とを備える、という構成を採っている。
【0008】
(2)また、予め設定した前記対象組織を前記超音波断層画像の中から特定する対象組織特定手段を更に備え、
前記3次元位置検出手段では、前記プローブの移動によって得られた複数の前記超音波断層画像から、前記対象組織特定手段で特定された前記対象組織の各構成部分の3次元位置を求め、当該各構成部分の3次元位置から前記ターゲットの3次元位置を求める、という構成を採ることができる。
【0009】
(3)更に、患者の一定部位の位置及び姿勢を検出する患者位置姿勢検出手段を更に備え、
前記3次元位置検出手段では、前記プローブ位置姿勢検出手段及び前記患者位置姿勢検出手段の検出結果と、その際に得られた前記超音波断層画像とを対応させることで、前記ターゲットの3次元位置を求める、という構成も併せて採用するとよい。
【0010】
(4)また、前記穿刺針動作手段は、前記プローブに一体的に取り付けられ、当該プローブで得られた前記超音波断層画像内の範囲で前記穿刺針を動作可能に設けられる、という構成を採用することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、穿刺のターゲットとなる部分を有する対象組織が映る超音波断層画像を得るために、医師がプローブを患者の皮膚上の所定範囲を移動する操作を行うだけで、ターゲットへの穿刺を自動的に行うことができる。すなわち、プローブの移動によって得られた超音波断層画像と、そのときのプローブの位置及び姿勢とから、前記ターゲットの3次元位置が自動的に求められ、当該3次元位置に穿刺針を到達させるように、穿刺針動作手段が動作することになる。従って、前記特許文献1のように医師の手で穿刺ラインを設定する必要がなく、好適な位置の超音波断層画像を取得する要領で、簡単且つ迅速に穿刺を行うことが可能になる。
【0012】
特に、前記(3)のように構成することで、ターゲットの3次元位置を求めた後で患者が動いてターゲットの3次元位置が変わった場合でも、ターゲットの正確な3次元位置を求めることができ、患者の動きに追従した自動的な穿刺が可能になる。
【0013】
また、前記(4)の構成によれば、穿刺針動作手段は、超音波断層画像の2次元平面上を自由に動かせる3自由度の構成で足りることになり、穿刺針動作手段の構造を簡素化し、穿刺針動作手段をコンパクトにすることができる。このため、穿刺針動作手段をプローブと一体化しても、医師の手によるプローブ操作の妨げにならないように構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る穿刺支援システムの概略構成図。
【図2】超音波断層画像内における穿刺針の動作を説明するための超音波断層画像の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1には、本実施形態に係る穿刺支援システムの概略構成図が示されている。この図において、穿刺支援システム10は、患者の体内のターゲットTに向かって患者の体表から穿刺針Nを刺入する医療行為である穿刺を超音波断層画像に基づいて自動的に行うシステムである。この穿刺支援システム10は、皮下の体内部分の超音波断層画像を取得可能な超音波診断装置11と、超音波診断装置11によって取得した超音波断層画像に基づき、穿刺針Nを動作させてターゲットTに穿刺を行う穿刺支援ロボット12とにより構成されている。
【0017】
前記超音波診断装置11は、患者の皮膚Sに接触して超音波パルスの送波及びエコーの受波を行うプローブ15(超音波探触子)と、プローブ15からの信号によって、プローブ15が接触する皮膚Sの下の体内部分Hの超音波断層画像(Bモード)を生成する断層画像生成手段17と、断層画像生成手段17で生成された超音波断層画像を表示するモニタ18とを備えた公知の構造となっている。
【0018】
前記穿刺支援ロボット12は、プローブ15及び穿刺針Nをそれぞれ保持するようになっており、医師が超音波断層画像を取得するためにプローブ15の移動を手動で行える一方で、穿刺針Nの移動を自動で行える手持ち型のロボットとなっている。
【0019】
この穿刺支援ロボット12は、プローブ15を保持するプローブホルダー20と、当該プローブホルダー20に一体的に設けられるとともに、穿刺針Nを保持して動作させる穿刺針動作手段としての穿刺針動作装置22と、プローブホルダー20に取り付けられ、赤外線を発生させるマーカ24と、マーカ24の位置及び姿勢を測定する3次元位置計測装置25と、穿刺針動作装置22を動作させるための各種処理及び指令を行う処理指令装置26とを備えて構成されている。
【0020】
前記プローブホルダー20は、プローブ15が着脱自在に取り付けられるプローブ取付部30と、プローブ取付部30の近傍に位置し、医師等の操作者が把持するためのグリップ31と、当該グリップ31の一部分に設けられ、穿刺針Nの動作指令を行う押しボタン式のスイッチ33と、プローブ取付部30に取り付けられ、プローブ15に対して移動不能にマーカ24を固定するマーカ固定部35とを備えている。
【0021】
前記穿刺針動作装置22は、プローブホルダー20に保持されたプローブ15に対して穿刺針Nが所定の範囲の空間内で移動可能になるように、図示省略した各種モータ、リンク等の各種部材や機構によって構成されている。
【0022】
具体的に、この穿刺針動作装置22は、プローブ15が接触する皮膚Sの下の体内部分Hの超音波断層画像内の範囲で穿刺針Nが移動可能となるように、3自由度の動作が可能な構造となっており、以下のように穿刺針Nが移動可能となっている。すなわち、図2に示されるように、穿刺針Nは、その先端側が超音波断層画像G内で左右方向(同図中矢印A方向)に移動可能となっており、当該移動により、撮像された体内部分Hのうちの穿刺の対象となる対象組織P(例えば、血管、臓器等の器官や癌細胞等)の刺入位置の調整が可能になる。また、穿刺針Nは、その先端側が超音波断層画像G内で上下方向(同図中矢印B方向)に移動可能になっており、当該移動により、対象組織Pへの刺入深さの調整が可能になる。更に、穿刺針Nは、その先端側が超音波断層画像Gに直交する軸線周りの方向(同図中矢印C方向)に回転可能になっており、当該回転により、対象組織Pに対する刺入角度の調整が可能になる。
【0023】
前記3次元運動計測装置25は、マーカ24から発生した赤外線を受光可能となるように移動不能に固定配置され、移動するマーカ24からの赤外線の受光状態からマーカ24の位置及び姿勢をリアルタイムに測定可能な公知の構成となっている。つまり、3次元運動計測装置25により、所定の固定点を原点とする絶対座標系におけるマーカ24の3次元の位置及び姿勢が逐次求められ、当該マーカ24は、プローブ15に対する位置及び姿勢が不変であるため、マーカ24の3次元の位置及び姿勢からプローブ15の3次元の位置及び姿勢が一義的に求められる。従って、マーカ24及び3次元運動計測装置25は、プローブ15の絶対座標系における位置及び姿勢を逐次検出するプローブ位置姿勢検出手段を構成する。
【0024】
なお、プローブ位置姿勢検出手段は、プローブ15の絶対座標系における位置及び姿勢を逐次検出できる限り、マーカ25及び3次元運動計測装置25による検出に限らず、加速度センサを使用する等、他の構成を採用することもできる。
【0025】
前記処理指令装置26は、CPU等の演算処理装置及びメモリやハードディスク等の記憶装置等からなるコンピュータによって構成され、当該コンピュータを以下の各手段として機能させるためのプログラムがインストールされている。
【0026】
すなわち、この処理指令装置26は、取得した超音波断層画像の中から、穿刺の対象となる血管や臓器等の器官や癌細胞等の対象組織Pの部分を特定する対象組織特定手段40と、3次元運動計測装置25により測定されたプローブ15の位置及び姿勢を用い、対象組織P内のターゲットTの3次元位置を求める3次元位置検出手段41と、3次元位置検出手段41で求めたターゲットTの3次元位置に基づき、当該ターゲットTに穿刺針Nが到達するように穿刺針動作装置22の動作を制御する動作制御手段42とを備えている。
【0027】
前記対象組織特定手段40では、処理指令装置26内に予め記憶された複数の対象組織Pの中から、医師等の操作者が所望の対象組織Pを指定すると、得られた超音波断層画像の画像処理により、当該超音波断層画像に映る各種組織の中から、対象組織Pの部分を特定するようになっている。ここでの画像処理は、予め記憶された対象組織Pに係るテンプレートとのマッチングを用い、或いは、超音波診断装置11にカラードプラモードを備えている場合における当該カラードプラモードによる結果の利用等により、体内部分Hを撮像した超音波断層画像から、血管や臓器等の器官、或いは癌細胞等の対象組織Pを自動的に特定する公知の技術が用いられる。
【0028】
なお、本発明において、前記対象組織特定手段40としては、取得した超音波断層画像の中から、操作者が指定した対象組織Pを自動的に特定できる限りにおいて、種々の画像処理手法を適用することが可能である。
【0029】
前記3次元位置検出手段25では、対象組織特定手段40で特定された超音波断層画像内の対象組織Pを構成する各部分について、そのときのプローブ15の位置及び姿勢から、絶対座標系における3次元位置を演算により求めるようになっている。すなわち、得られた超音波断層画像内で特定された対象組織Pの各部分について、画像座標系における2次元座標が特定され、3次元運動計測装置による測定値から、予め記憶された変換式によって、対象組織Pの各部分の絶対座標系における3次元位置が求められる。また、操作者が患者の皮膚S上の複数位置でプローブ15を接触させたときに、各位置で取得した超音波断層画像について同じ演算処理がなされ、対象組織Pの各部分の絶対座標系における3次元位置を蓄積することで、所定の空間領域内での対象組織Pの3次元形状が特定されることになる。
【0030】
そして、穿刺針Nの先端を到達させる対象組織P内のターゲットTは、対象組織Pに対応して予め記憶されており、3次元位置検出手段25では、対象組織Pの3次元形状が特定されると、ターゲットTの3次元位置が演算によって自動的に求められることになる。
【0031】
例えば、対象組織Pが血管の場合には、血管内腔部分の中心線上の部分がターゲットTとして設定されており、当該中心線上の部分の中からターゲットTの位置が次のようにして特定される。すなわち、先に求めた血管の3次元形状から血管内腔部分の中心線(軸線)が求められ、現在のプローブ15の位置から、穿刺針動作装置22での動作範囲を考慮し、処理指令装置26に操作者が予め入力した刺入角度で刺入した際に到達可能となる血管内腔部分の中心線上の位置をターゲットTとして決定し、当該ターゲットTの3次元位置が特定される。
【0032】
また、対象組織Pが癌細胞の場合には、癌細胞の中心部分がターゲットTとして設定され、先に求めた癌細胞の3次元形状から、その中心点における絶対座標系の座標を求めることで、ターゲットTの3次元位置が求められる。
【0033】
前記動作制御手段42では、3次元位置検出手段41で求めたターゲットTの3次元位置と、予め設定した穿刺針Nの刺入角度とから、ターゲットTへの刺入ラインL(図2参照)を生成し、当該刺入ラインL上を穿刺針Nが通ってターゲットTに到達して停止するように、穿刺針動作装置22の動作を制御する。
【0034】
次に、前記穿刺支援システム10を用いた穿刺動作について、血管内への穿刺を例として説明する。
【0035】
先ず、医師等の操作者は、グリップ31を手で把持し、プローブ15を患者の皮膚Sに接触させながら所定範囲内で移動することで、穿刺を行う血管を探索し、モニタ18を見ながら、穿刺を行いたい部位が超音波断層画像上に表れたらプローブ15の移動を停止する。この際、超音波診断装置11の断層画像生成手段17では、プローブ15が接触する皮膚Sの下の体内部分Hの超音波断層画像が逐次生成されることになり、当該超音波断層画像がモニタ18に写し出される。なお、操作者は、予め、ターゲットTへの刺入角度(例えば、15度等)を穿刺支援ロボット12に入力しておく。
【0036】
プローブ15の移動に伴って逐次生成された超音波断層画像は、それぞれ以下の処理が行われる。すなわち、絶対座標系におけるプローブ15の位置及び姿勢が3次元運動計測装置25によって計測され、計測されたプローブ15の位置及び姿勢に、当該位置及び姿勢のときのプローブ15によって得られた超音波断層画像を対応させる。また、対象組織特定手段40によって、得られた超音波断層画像内から血管の各構成部分(血管壁部分、血管内腔部分)が特定される。そして、3次元位置検出手段41により、得られた超音波断層画像それぞれについて、血管の各構成部分における超音波断層画像内の各点(ピクセル)を画像座標系から絶対座標系に変換することで当該各点の3次元位置が求められる。これら3次元位置の蓄積によって、血管の3次元形状が特定され、血管内腔部分の中心線上の位置からターゲットTが特定される。つまり、プローブ15の移動により多くの超音波断層画像を取得することで、血管の各構成部分の3次元位置が多数求められ、これら3次元位置を構成部分毎に蓄積することにより、血管壁部分や血管内腔部分の3次元形状が特定され、血管内腔部分の中心線の中からターゲットTが特定され、ターゲットTの3次元座標が求められる。
【0037】
そして、穿刺針Nの先端が予め設定された刺入角度でターゲットTに到達するように、絶対座標系における穿刺針Nの刺入ラインLが自動的に設定される。その後、操作者がグリップ31に設けられたスイッチ33を押すと、穿刺針Nが刺入ラインL上を移動するように、穿刺針動作装置22が動作制御手段42で制御されながら動作する。つまり、穿刺針動作装置22により、穿刺針Nは、体外側から皮膚Sに刺入されてターゲットTまで自動的に移動し、予め設定された刺入角度でターゲットTに穿刺されることになる。
【0038】
また、操作者がプローブ15の動作を止めた後、プローブ15が不意に動いてターゲットTが超音波断層画像上で多少ずれたとしても、穿刺針動作装置22による穿刺針Nの可動範囲である限り、絶対座標系におけるターゲットTの3次元位置が特定されているため、動作制御手段42による穿刺針動作装置22の動作制御により、先に特定した刺入ラインL上を穿刺針Nが移動することになる。
【0039】
更に、患者が動く等の理由により血管の3次元位置が変わった場合には、超音波断層画像中で再度ターゲットTを探索する要領で、プローブ15を所定範囲内で移動させることにより、前述と同様の手順により、新たな穿刺ラインLが再度構築され、穿刺針動作装置22によるターゲットTへの穿刺が可能になる。
【0040】
従って、このような実施形態によれば、超音波断層画像を取得するためのプローブ15の動作は、医師等の操作者が手動で行う一方、ターゲットへの穿刺針Nの動作は穿刺針動作装置22により自動で行われる。このため、操作者が、体内部分Hに存在する穿刺のターゲットTを探索するためにプローブ15で体表をスキャンする操作を行うだけで、穿刺支援ロボット12によりターゲットTに自動的に穿刺することができ、操作者は、超音波断層画像を見ながら穿刺針Nの動作をコントロールする煩わしさを解消できるという効果を得る。
【0041】
また、超音波断層画像に映る範囲で穿刺針Nの動作がコントロールされるため、操作者が超音波断層画像上で穿刺針Nを視認でき、操作者の目視による穿刺確認を行えるばかりか、穿刺針動作装置22での動作が3自由度で済むことになり、手持ち型となる穿刺支援ロボット12の小型化、軽量化を図ることができる。
【0042】
なお、穿刺のターゲットTは、手入力で任意に設定できるようにしてもよい。例えば、刺入位置と刺入角度を処理指令装置26に入力することで、先に求めた対象組織Pの3次元形状からターゲットTの3次元位置を演算によって求めることが可能になる。また、操作者がプローブ15を動かしながら都度得られる超音波断層画像をモニタ18上で見ながら、操作者の判断で、超音波断層画像中の穿刺部分を図示しないマウス等でクリックすることで、ターゲットTを設定することもできる。この場合は、クリックされた超音波断層画像を得たときのプローブ15の位置及び姿勢が検出されているため、対象組織Pの3次元形状を求めなくても、ターゲットTの3次元座標を求めることが可能になり、対象組織特定手段40を省くことができる。更に、超音波断層画像の中央に映る部分をターゲットTとすることもでき、この場合には、操作者がプローブ15を手で動かして穿刺したい部分が超音波断層画像の中央に表れたときに、スイッチ33を押すことで穿刺針Nの動作をさせるようにすれば良い。この場合においても、超音波断層画像中の穿刺部分をマウス等でクリックする場合と同様、対象組織Pの3次元形状を求めなくても、ターゲットTの3次元座標を求めることが可能になり、対象組織特定手段40を省くことができる。
【0043】
また、患者の一定部位の位置及び姿勢を検出する患者位置姿勢検出手段を設け、3次元位置検出手段41では、前記プローブ位置姿勢検出手段及び前記患者位置姿勢検出手段の検出結果から、プローブ15と前記患者の一定部位のそれぞれの位置及び姿勢に、これらの位置及び姿勢のときに得られた超音波断層画像を対応させることで、ターゲットTの3次元位置を求めるようにしてもよい。前記患者位置姿勢検出手段としては、前記マーカ24及び3次元運動計測装置25と同様の構成を例示でき、穿刺部分の近傍となる患者の体表部分にマーカ24を固定し、当該マーカ24の位置及び姿勢を3次元運動計測装置25で計測することで、マーカ24が固定された患者の体表部分の位置及び姿勢が求められる。このようにすれば、刺入ラインLが設定された後、患者が動く等の理由により対象組織Pの3次元位置が変わったときでも、再度、プローブ15を所定範囲内で移動させずに、穿刺針動作装置22により、患者の動きに追従して穿刺針Nを動作させることができる。
【0044】
更に、図2に示されるように、自動的に設定された刺入ラインLを、超音波断層画像G中に重畳させて模擬的に表示することも可能である。この場合には、操作者は、超音波断層画像Gを見ながら、ターゲットTへの穿刺のイメージをより具体的に把握することができる。これによって、例えば、操作者は、刺入ラインLの途中に、穿刺針Nの通過を許容できない組織が存在するか否かを把握し易くなり、その場合は、刺入位置を変えたり、ターゲットTを別の位置に設定し直す等の判断が行い易くなる。
【0045】
また、前記グリップ31に図示しない力覚提示装置を設けるとともに、ターゲットTが穿刺針動作装置22による穿刺針Nの可動範囲外に存在するか否かを判断する手段を設けることもできる。この構成では、ターゲットTが穿刺針Nの可動範囲外に存在する場合、当該可動範囲内にターゲットTが位置するように、前記力覚提示装置により、プローブホルダー20と穿刺針動作装置22を移動させる方向に操作者に力覚が提示される。このようにすることで、操作者の手により、プローブホルダー20及び穿刺針動作装置22を穿刺可能な位置に短時間で移動させることができ、迅速な穿刺が一層可能になる。ここで、前記力覚提示装置を用いずに音声を発生させることにより、プローブホルダー20と穿刺針動作装置22をターゲットTへの穿刺が可能になる位置を操作者に音声で知らせるようにしてもよい。
【0046】
更に、前記実施形態では、穿刺針動作装置22をプローブホルダー20に一体化して、3自由度の動作を可能にしたが、本発明はこれに限らず、穿刺針動作装置22をプローブホルダー20と別体化し、更に多自由度の動作が可能となる構造を採用することもできる。
【0047】
また、対象組織特定手段40及び3次元位置検出手段41は、穿刺支援ロボット12側に設けずに、超音波診断装置11側に設けてもよい。
【0048】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 穿刺支援システム
15 プローブ
22 穿刺針動作装置(穿刺針動作手段)
24 マーカ(プローブ位置姿勢検出手段)
25 3次元運動計測装置(プローブ位置姿勢検出手段)
40 対象組織特定手段
41 3次元位置検出手段
42 動作制御手段
G 超音波断層画像
H 体内部分
N 穿刺針
P 対象組織
S 皮膚
T ターゲット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚にプローブを接触させることで、当該プローブが接触する皮膚の下の体内部分の超音波断層画像を取得する超音波診断装置からの前記超音波断層画像に基づき、前記体内部分に存在する対象組織内のターゲットに穿刺を行う穿刺支援システムであって、
前記プローブの位置及び姿勢を検出するプローブ位置姿勢検出手段と、前記プローブ位置姿勢検出手段により検出された前記プローブの位置及び姿勢に、当該位置及び姿勢のときの前記プローブから得られた前記超音波断層画像を対応させることで、前記対象組織内に設定されたターゲットの3次元位置を求める3次元位置検出手段と、前記ターゲットに穿刺を行うための穿刺針を動作させる穿刺針動作手段と、前記3次元位置検出手段で検出された前記ターゲットの3次元位置に基づき、当該ターゲットに前記穿刺針が到達するように、前記穿刺針動作手段の動作を制御する動作制御手段とを備えたことを特徴とする穿刺支援システム。
【請求項2】
予め設定した前記対象組織を前記超音波断層画像の中から特定する対象組織特定手段を更に備え、
前記3次元位置検出手段では、前記プローブの移動によって得られた複数の前記超音波断層画像から、前記対象組織特定手段で特定された前記対象組織の各構成部分の3次元位置を求め、当該各構成部分の3次元位置から前記ターゲットの3次元位置を求めることを特徴とする請求項1記載の穿刺支援システム。
【請求項3】
患者の一定部位の位置及び姿勢を検出する患者位置姿勢検出手段を更に備え、
前記3次元位置検出手段では、前記プローブ位置姿勢検出手段及び前記患者位置姿勢検出手段の検出結果と、その際に得られた前記超音波断層画像とを対応させることで、前記ターゲットの3次元位置を求めることを特徴とする請求項1又は2記載の穿刺支援システム。
【請求項4】
前記穿刺針動作手段は、前記プローブに一体的に取り付けられ、当該プローブで得られた前記超音波断層画像内の範囲で前記穿刺針を動作可能に設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の穿刺支援システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35010(P2012−35010A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180559(P2010−180559)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】