説明

突起が設けられた碗部を備えたピストンを有する、特に直接噴射型の内燃機関

本発明は、特に直接噴射の内燃機関であって、シリンダ(10)と、シリンダ内を滑動するピストン(30)と、凹状碗部(32)を備え頂角(a2)の突起(34)が凹状碗部の内部に配置されたピストンの上面によって一方の側が画定された燃焼室(26)と、CDをシリンダ(10)の直径、Fを噴射ノズルからの燃料ジェットの噴射点と、上死点(TDC)に対する50度のクランク角に対応するピストンの位置との間の距離としたときに、2Arctg(CD/2F)以下の噴射ナップ角度(a1)で燃料を噴射する燃料噴射ノズルと、を少なくとも有する内燃機関に関する。本発明は、突起(34)の頂角(a2)は、30度から60度の範囲の角度だけ噴射ナップ角度(a1)より大きいことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、突起が設けられた碗部を備えたピストンを有する、特に直接噴射型の内燃機関に関する。
【0002】
本発明は特に、2つの燃焼モードで作動することのできるディーゼル型直接噴射機関に関する。低機関負荷用及び中機関負荷用の燃料噴射を伴う均質モードでは、燃焼が開始する前に、燃料を空気と均質に混合するか、または燃料を空気と再循環排ガスとの混合物と均質に混合することができる。もう一つの燃焼モードは、従来、燃焼と呼ばれるもので、ピストン上死点付近の燃料噴射と拡散燃焼とからなり、このモードは、高負荷で使用することが好ましい。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本願出願人によって出願されたフランス特許出願第2,818,324号及び第2,818,325号により細かく記載されているこのようなタイプの機関は、シリンダと、このシリンダ内を滑動するピストンと、凹状碗部の中心に配置された突起を有するピストンの上面によって一方の側が画定された燃焼室と、2Arctg(CD/2F)以下のナップ角度で燃料を噴射する少なくとも1つの噴射ノズルと、を少なくとも有している。ここで、CDはシリンダの直径であり、Fは、噴射ノズルからの燃料ジェットの噴射点と、上死点に対するクランク角50度に対応するピストンの位置との間の距離である。
【0004】
したがって、初期の噴射の場合、すなわち、ピストンの位置が選択された噴射フェーズでピストン上死点に対してクランク角50度付近にあるとき、燃料はシリンダ壁に接触せず、燃焼室に存在する空気と混合するか、または燃焼室に存在する空気と再循環排ガスとの混合物と混合する。
【0005】
この種の機関において、本願出願人は、噴射時に燃料混合物を均質に混合することを可能にする突起の頂角として特定の値(ナップ角度の値より0度〜30度大きい)を有する碗部を使用していた。
【0006】
本願出願人は、この頂角について研究を続け、出力及びすすなどの汚染物質の排出に関する機関性能を向上させつつ、この頂角をさらに大きくすることを可能とする結果を得た。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、特に直接噴射型の内燃機関であって、シリンダと、シリンダ内を滑動するピストンと、凹状碗部を備え頂角の突起が凹状碗部の内部に配置されたピストンの上面によって一方の側が画定された燃焼室と、CDをシリンダの直径、Fを噴射ノズルからの燃料ジェットの噴射点と、上死点に対する50度のクランク角に対応するピストンの位置との間の距離としたときに、2Arctg(CD/2F)以下の噴射ナップ角度で燃料を噴射する燃料噴射ノズルと、を少なくとも有する内燃機関において、突起の頂角は、30度より大きく60度より小さい角度だけ噴射ナップ角度より大きいことを特徴とする内燃機関に関する。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、非制限的な例として示された以下の説明を読むことによって明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
詳細な説明
図1に関して、直接噴射内燃機関、特にディーゼル型の直接噴射内燃機関は、直径CDのシリンダ10と、シリンダヘッド12と、を少なくとも有し、シリンダヘッド12は、吸気手段と燃焼ガス排気手段、本実施形態ではそれぞれ、空気または空気と再循環排ガス(EGR)の混合物等のガス状流体用の少なくとも1本の吸気管14と、少なくとも1本の燃焼ガス排気管16と、を保持している。これらの管の開閉は、吸気弁18及び排気弁20によって制御される。シリンダヘッドはまた、燃料噴射ノズル22を保持している。燃料噴射ノズル22は、好ましくはシリンダの軸と同軸であり、ノーズ24の付近に、燃料がジェット28の形態で燃焼室26内に噴霧されるときに通る複数のオリフィスを有している。燃焼室は、シリンダ10内を直進往復運動しながら滑動するピストン30の上面と、シリンダヘッド12のピストンと向かい合う内面と、これら2つの面の間に含まれるシリンダ10の円形壁と、によって画定されている。ピストンの上面は凹状碗部32を有し、その内部で、碗部のほぼ中央に配置された突起34が、シリンダヘッド12の方へ立ち上がっている。
【0010】
本願出願人によって出願されたフランス特許第2,818,324号及び第2,818,325号により細かく記載されているように、燃料噴射ノズル22は噴射ナップ角度a1が小さいタイプのノズルである。この角度a1は、+50度から+α度の間または−50度から−α度の間のピストン30のいかなる位置でも、シリンダ10の壁が燃料によって濡れることのないように選択される。ここで、αは、選択された噴射フェーズでのピストン上死点に対するクランク角を表し、この角度αは、均質型の燃焼が得られるように、50度より大きくかつ180度以下である。
【0011】
CDがシリンダ10の直径を表し(mm単位)、Fが燃料ジェット28の噴射点とクランク角50度に対応するピストンの位置との間の距離(mm単位)であるとすると、ナップ角度a1(度単位)は2Arctg(CD/2F)以下である。
【0012】
ナップ角度は、ノズルから出されるコーンであって、その仮想周囲壁が燃料ジェット28のすべての軸を通過するコーンによって形成される頂角の意味で用いられる。
【0013】
ナップ角度a1の角度範囲は120度以下であることが有利であり、40度から100度の間であることが好ましい。
【0014】
上述のように、ピストン30は、凹面がシリンダヘッドの方へ向けられ、突起34を備える碗部32を有している。
【0015】
突起は、碗部32の中央に配置され、燃料噴射ナップa1の軸と同軸であってもよい。突起は、わずかに丸められた頂点36を備えた円錐形状を有している。この頂点から、碗部の底部40の方向にほぼ直線状に傾斜する側部38が続いている。突起の頂角a2は、燃料がほぼこの突起の側部38に沿って噴射されるようにナップ角度a1に適合されている。この突起の頂角a2は、ナップ角度a1より30度は大きく、かつナップ角度より60度は小さいことが好ましい。
【0016】
図2と図3は、突起の頂角a2と燃料噴射ナップ角度a1との差に対する、汚染物質、特にすすの排出量及び機関出力(P)の変動を示している。これらの図において、出願人は、突起の頂角と燃料噴射ナップ角度a1との差が25度から60度の範囲である突起を備えたピストンを有する機関に関する研究結果を示している。
【0017】
図2では、フランス特許出願第2,818,324号及び第2,818,325号に記載された25度から30度の範囲の角度差a2−a1で、すすの量が著しく減少することに留意されたい。驚くべきことに、このすす量は、角度差a2−a1が30度より大きくかつ40度以下であるときにさらに著しく減少し、角度差a2−a1が40度より大きくかつ60度以下であるときに角度差25度のレベルに達するまで増加する。したがって、汚染物質の排出量を制限するには、突起の頂角は、噴射ナップ角度より30度を超えかつ60度より小さい角度だけ大きいと考えることができる。
【0018】
このことは図3を見ても分かり、図3では、機関出力(P)は、角度差a2−a1が25度から30度の範囲で増大し、角度差が30度から40度のときに引き続き増大し(角度差30度で想定される出力に対して2%程度)、最終的に、角度差25度で想定される出力より高い出力を維持しつつ角度差60度に達するまで減少する。
【0019】
本発明は、一例として上述した実施形態に限定されず、あらゆる変形実施形態及び等価な実施形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による内燃機関を概略的に示す図である。
【図2】突起の頂角と燃料噴射ナップ角度との度単位の差(a2−a1)に対する、すすの量(S)の変化を示すグラフである。
【図3】突起の頂角と燃料噴射ナップ角度との度単位の差(a2−a1)に対する、機関が発生する出力レベル(P)の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に直接噴射型の内燃機関であって、シリンダ(10)と、該シリンダ内を滑動するピストン(30)と、凹状碗部(32)を備え頂角(a2)の突起(34)が該凹状碗部の内部に配置された前記ピストンの上面によって一方の側が画定された燃焼室(26)と、CDを前記シリンダ(10)の直径、Fを前記噴射ノズルからの燃料ジェットの噴射点と、上死点(TDC)に対する50度のクランク角に対応する前記ピストンの位置との間の距離としたときに、2Arctg(CD/2F)以下の噴射ナップ角度(a1)で燃料を噴射する燃料噴射ノズルと、を少なくとも有する内燃機関において、前記突起(34)の前記頂角(a2)は、30度より大きく60度より小さい角度だけ前記噴射ナップ角度(a1)より大きいことを特徴とする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−533379(P2008−533379A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501375(P2008−501375)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000593
【国際公開番号】WO2006/097639
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(591007826)イエフペ (261)
【Fターム(参考)】