説明

窒化物半導体結晶の測定方法、ドメインの検出方法および窒化物半導体結晶の評価方法

【課題】微細な構造を有する窒化物半導体結晶を広い範囲にわたって的確かつ簡便に測定できる方法を提供する。
【解決手段】分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、ビームの窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間を少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得て;窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に同じ測定を繰り返し;得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を測定する方法に関する。また本発明は、測定した結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を利用してドメインを検出する方法や、窒化物半導体結晶を評価する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)に代表される窒化物半導体結晶は、発光ダイオードやレーザーダイオード等の発光デバイスやHEMTやHBT等の高周波および高出力の電子デバイスに適用される物質として有用である。これらのデバイスの有用性は、デバイスに使用される窒化物半導体結晶の結晶性により大きく左右される。このため、窒化物半導体結晶の結晶性を的確に評価して、高品質な窒化物半導体結晶を用いることが必要とされている。
【0003】
窒化ガリウムに代表される窒化物半導体結晶は、Siなどと比較すると貫通転位が極めて多く、微細なドメイン構造を有している。デバイスへの応用に際しては、このような貫通転位を始めとする欠陥の種類や数に加えて、欠陥周辺の広い範囲でのひずみも性能に影響を与える。このため、窒化物半導体結晶表面の微細な構造を比較的広い範囲にわたって的確かつ簡便に測定することができる方法があれば便利である。
【0004】
しかしながら、結晶品質が総じて良好なSiなどの測定や評価に用いられている方法は、極めて大雑把なひずみ測定法であり、Siに適用されている方法をそのまま窒化物半導体結晶の測定に流用しても、微細な構造を的確に評価することはできない。また、カソードルミネッセンス法やTEMでは、微細な構造を測定することはできても、広い範囲にわたってひずみを測定することはできない。
【0005】
上記以外の手法として、非特許文献1にはX線トポグラフィーによる結晶のひずみ測定方法が記載されている。この文献には、結晶の表面数点についてX線トポグラフ像を測定した後、測定面内で180°回転させて再びX線トポグラフ像を測定することにより、結晶のひずみを解析することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】JJAP, Vol.5, No.11 (1966) p.1047
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1で測定しているものは、完全結晶に近いSiであり、わずか5点の測定点による測定結果に基づいて結晶表面全体を議論している。このため、窒化物半導体結晶のような微細な構造を有するものに対して非特許文献1に記載される手法をそのまま用いても、微細な構造を的確に測定して評価することは不可能である。このように、従来提案されている方法では、窒化物半導体結晶のような微細な構造をもつ表面を広い範囲にわたって的確に測定し評価することができなかった。
【0008】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、微細な構造を有する窒化物半導体結晶を広い範囲にわたって的確かつ簡便に測定できる方法を提供することを目的として検討を進めた。その結果、以下に記載される構成を有する本発明によれば、目的を達成できることを見出した。
【0009】
[1] 窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を測定する方法であって、
(1) 分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第1測定工程、
(2) 前記窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に、前記ビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第2測定工程、および、
(3) 前記第1測定工程および前記第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、前記窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する算出工程、
を含むことを特徴とする方法。
[2] 前記検出器のピクセル数が30×30以上であることを特徴とする[1]に記載の測定方法。
[3] 前記検出器がCCDカメラであることを特徴とする[2]に記載の測定方法。
[4] 前記第1測定工程および前記第2測定工程において、測定ステップを0.2〜10arcsecごとに変化させながら、前記検出光強度の検出を行うことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の測定方法。
[5] 前記第2工程における180°回転後の位置合わせを、X線トポグラフ像の明暗コントラストを回転前後で一致させることにより行うことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の測定方法。
【0010】
[6] 窒化物半導体結晶表面におけるドメインの検出方法であって、
(1) 分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第1測定工程、
(2) 前記窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に、前記ビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第2測定工程、
(3) 前記第1測定工程および前記第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、前記窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する算出工程、および
(4) 前記結晶面の傾きのずれ(Δθ)と前記結晶面間隔の伸縮(Δd/d)がそれぞれ特定の変動幅の中におさまっている連続領域をドメインとして検出するドメイン特定工程、
を含むことを特徴とするドメインの検出方法。
[7] 前記ドメイン検出工程において、前記結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変動幅が15arcsec以下であって、前記結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅が15×10-5以下である連続領域をドメインとして検出することを特徴とする[6]に記載のドメインの検出方法。
[8] 前記ドメイン検出工程において、前記特定の変動幅の中におさまっている連続領域であり、且つ、当該領域の面積が10000μm2以上である連続領域をドメインとして検出することを特徴とする[6]または[7]に記載のドメインの検出方法。
[9] 結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変動幅が13arcsec以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメインの長さが50μm以上であることを特徴とする、窒化物半導体結晶。
[10] 結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅が11.4×10-5以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメインの長さが50μm以上であることを特徴とする、窒化物半導体結晶。
[11] 結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅が15.49×10-5以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメインの長さが500μm以上であることを特徴とする、窒化物半導体結晶。
【0011】
[12] 窒化物半導体結晶の評価方法であって、
(1) 分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを前記窒化物半導体結晶の表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第1測定工程、
(2) 前記窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に、前記ビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第2測定工程、
(3) 前記第1測定工程および前記第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、前記窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する算出工程、および
(4) 得られた結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)に基づいて前記窒化物半導体結晶を評価する評価工程
を含むことを特徴とする評価方法。
[13] 前記評価工程において、結晶面の傾きのずれ(Δθ)と前記結晶面間隔の伸縮(Δd/d)がそれぞれ特定の変動幅の中におさまっている連続領域をドメインとして検出し、最大のドメインの面積に基づいて前記窒化物半導体結晶を評価することを特徴とする[12]に記載の評価方法。
[14] 結晶面の傾きのずれ(Δθ)を測定するためのビームの入射方向に対して平行なライン上の250μmの範囲におけるΔθが100arcsec以下である窒化物半導体結晶。
[15] 結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を測定するためのビームの入射方向に対して平行なライン上の250μmの範囲におけるΔd/dが5×10-4以下である窒化物半導体結晶。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、微細な構造を有する窒化物半導体結晶表面について、μmオーダーで結晶面の傾きのずれ(Δθ)や結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を数cm□の広い領域にわたって簡便に測定することができる。また、本発明によれば、窒化物半導体結晶の表面状態から窒化物半導体結晶を容易に評価することが可能であり、また、窒化物半導体結晶表面のドメインを特定することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例で用いた測定装置の概略断面図である。
【図2】本発明の実施例における分析手順を説明するための概略図である。
【図3】本発明におけるΔθとΔd/dの測定原理を説明するための概略図である。
【図4】窒化物半導体結晶の直線領域における結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変化を示すグラフである。
【図5】窒化物半導体結晶の直線領域における結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変化を示すグラフである。
【図6】実施例で用いた結晶製造装置の構成の概要を説明するための図である。
【図7】窒化物半導体結晶の直線領域における結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変化を示すグラフである。
【図8】窒化物半導体結晶の直線領域における結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明の窒化物半導体結晶の測定方法等について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
[窒化物半導体結晶の測定方法]
(特徴)
本発明の窒化物半導体結晶の測定方法は、窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を測定する方法である。その特徴は、以下の3つの工程を含む点にある。
(1) 分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながらX線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第1測定工程
(2) 前記窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に、前記ビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながらX線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第2測定工程
(3) 前記第1測定工程および前記第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、前記窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する算出工程。
【0016】
(ビーム)
本発明の測定方法では、分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを用いる。発散角は8arcsec以下であることが好ましく、4arcsec以下であることがより好ましい。下限値については、例えば0.1arcsec以上とすることができる。単色性については、2×10-4以下であることが好ましく、1×10-4以下であることがより好ましい。下限値については、例えば1×10-5以上とすることができる。本発明の測定方法において、分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを用いることによって、微小なドメインの結晶面間隔の傾きや伸縮を検出できるという利点がある。
【0017】
ビーム発生装置の種類や機構については特に制限はないが、高分解能、高精度、短時間で測定するためにはたとえばシンクロトロン放射光源等が適している。分光結晶による発散角や単色性については、公知の手段により上記の範囲に制御することが可能である。例えば、図1に示すように、放射光X線光源1から放射されるX線を、前置結晶であるSi(111)の二結晶分光器2、次いでSi(111)面の一枚置き分光結晶3で処理することにより、分光結晶による発散角や単色性を調整することができる。
【0018】
ビームは特定の入射角で窒化物半導体結晶に入射させる。
【0019】
(検出器)
窒化物半導体結晶の表面に入射したビームの反射光は検出器によりその強度が測定される。このとき、検出器のピクセルごとに検出する。本明細書において、「ピクセル」とは光の強度を測定することができる機能を有する要素を意味し、複数のピクセルが集合体となって検出器を構成する。各ピクセルのサイズは小さくて高機能であるものが好ましい。例えば、径が100μm以下であるものが好ましく、50μm以下であるものがより好ましく、10μm以下であるものがさらに好ましい。下限値については、例えば7μm以上とすることができる。検出器を構成するピクセルの総数は、30×30個以上であることが好ましく、300×300個以上であることがより好ましく、3000×3000個以上であることがさらに好ましい。上限値としては、例えば3247×4871個以下にすることができる。複数のピクセルからなる検出器の断面は、正方形、長方形、円形、楕円形のいずれであってもよい。
【0020】
検出器で検出された反射光強度は、各ピクセルごとにデータ処理される。反射光強度は、X線トポグラフ像の黒化度から求めることもできる。
本発明では、検出器としてCCDカメラ、X線フィルム、原子核乾板などを用いることが可能であり、CCDカメラを用いることが特に好ましい。
【0021】
(ロッキングカーブの取得)
本発明の測定方法では、窒化物半導体結晶に対するビームの入射角を変えながら反射光強度を測定する。すなわち、ある入射角で反射光強度を測定した後に、入射角を変えて反射光強度を測定する。このように入射角を変えて反射光強度を測定するステップは、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施する。前記ステップを実施する点数としては、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも15点以上であることが好ましく、50点以上であることがより好ましく、100点以上であることがさらに好ましい。前記ステップを実施する点数は多いほど測定精度は向上するが、ある程度の点数を超えると精度向上は頭打ちとなる。このため、上限値については、例え500点以下にすることができ、200点以下にすることが好ましい。
【0022】
入射角は一定の間隔で変化させることが好ましい。間隔は、0.2arcsec以上とすることが好ましく、0.5arcsec以上とすることがより好ましく、1arcsec以上とすることがさらに好ましい。また間隔は、10arcsec以下とすることが好ましく、5arcsec以下とすることがより好ましく、2arcsec以下とすることがさらに好ましい。また、ロッキングカーブの半値幅との関係で言うと、半値幅の1/10以上であることが好ましく、1/50以上であることがより好ましく、また、1/100以下であることが好ましい。なお、本発明では、集中的に測定したい領域だけを高精度で測定することなどを目的として、当該領域内における間隔を狭くすることもできる。
【0023】
各ピクセルごとに得られた入射角と反射光強度の対応データを利用して、各ピクセルごとにロッキングカーブを取得する。入射角と反射光強度の対応データからロッキングカーブを取得する方法については、公知の方法を採用することができる。中でも好ましいのは、CCDカメラの強度データを用いることによりロッキングカーブを取得する方法である。
【0024】
また、データ処理を行うに際しては、各ピクセルからの画像について適宜補正を行ってもよい。例えば、各ピクセルからの画像の伸縮補正を行うことができる。伸縮補正の種類については特に制限されないが、例えば特徴的な形のある箇所8点を補正用のポイントとして選んで、これら全ての画像についてシフト量を算出し補正する方法などを好ましい例として挙げることができる。
【0025】
(180°回転)
第1測定工程における反射光強度の測定後に、本発明では、窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させて第2測定工程を実施する。回転の方法については特に制限されないが、例えば回転がパルスモーター等で制御された高精度なステージに試料を固定して回転させることが可能であり、ゴニオメーターを用いることが好ましい。
回転後の位置合わせの手段として、例えばX線トポグラフ像の明暗コントラストが大きい部分を選定し、2つの画像の座標を補正する方法を挙げることができる。
180°回転後は、第1測定工程と同じ方法にしたがって第2測定工程を実施することができる。
【0026】
(算出)
第1測定工程および第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、そのピクセルに対応する窒化物半導体結晶表面位置における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する。従来は、結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出するという発想がなかったが、本発明にしたがって分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを採用し、入射角を変えながら10回以上繰り返して反射光強度を測定することにより、分解して算出することが可能になった。
【0027】
この算出に際して利用される原理を図3を用いて具体的に説明する。同じ面間隔でΔθが存在している領域(図3(b))と存在しない領域(図3(a))を比べると、X線の測定で試料の角度を変えていくとブラッグピークのあらわれる角度がΔθだけ異なる。そして、試料を測定面内で180°回転させた後、試料の角度を同じ向きに変えていくと、Δθが存在している領域のピークはΔθが存在しない領域のピークを中心にΔθ反転した位置にピークが現れる。一方、結晶面の傾きはなくΔd/dが存在する領域(図3(c))と存在しない領域(図3(a))を比べると、試料の角度を変えていくとピークの現れる角度が異なる。試料の面内で180°回転させた後、試料の角度を同じ向きに変えていっても、Δd/dが存在している領域と存在しない領域のピークの関係は面内の角度を変えない場合と同様になる。
【0028】
上記原理に基づいて、第1測定工程で得られた各ピクセルのロッキングカーブの最大強度を示す反射角の平均値ωmax(0°)と、第2測定工程で得られた各ピクセルのロッキングカーブの最大強度を示す反射角の平均値ωmax(180°)を求め、その差を計算して2で割ることによりΔθを求めることができる。また、Δd/dについては、測定により得られるトポグラフ像全体のωの基準値を決定して、算出することができる。画像全体におけるωmaxの基準値は、トポグラフ像の明暗コントラストが小さい領域、試料同一箇所における0度と180度のω値の差が小さい箇所、ω値の変動が小さい領域から求めることができる。具体的には、領域全体の平均値を求めることにより決定することが好ましい。ωmax(0°)とωmax(180°)の平均値と、決定したωmaxの基準値との差を、ブラッグ条件を微分したΔd/dの式に代入することにより、Δdを求めることができる。なお、ブラッグ条件を微分したΔd/dの式については、後掲の実施例を参照することができる。
【0029】
[ドメインの検出方法]
(特徴)
本発明の窒化物半導体結晶表面におけるドメインの検出方法は、以下の4つの工程を含むことを特徴とする。
(1) 分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第1測定工程
(2) 前記窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に、前記ビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第2測定工程
(3) 前記第1測定工程および前記第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、前記窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する算出工程
(4) 前記結晶面の傾きのずれ(Δθ)と前記結晶面間隔の伸縮(Δd/d)がそれぞれ特定の変動幅の中におさまっている連続領域をドメインとして検出するドメイン特定工程
【0030】
(ドメインの検出)
上記の第1測定工程、第2測定工程および算出工程については、本発明の測定方法における対応する説明を参照することができる。
ドメイン特定工程では、測定した結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)がそれぞれ特定の変動幅の中におさまっている連続領域を特定して、それをドメインとするものである。変動幅は、要求される窒化物半導体結晶の性能や使用態様などに応じて決定することができる。結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変動幅は15arcsec以下にすることが好ましく、13arcsec以下にすることがより好ましく、10arcsec以下にすることが特に好ましく、5arcsec以下にすることがさらに好ましい。また、下限値は例えば0.5arcsec以上にすることができる。結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅は、16×10-5以下にすることが好ましく、12×10-5以下にすることがより好ましく、10×10-5以下にすることが特に好ましく、5×10-5以下にすることがさらに好ましい。また、下限値は例えば1×10-6以上にすることができる。
【0031】
図4は、ある特定の直線領域における窒化物半導体結晶の結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変化をグラフ化したものである。ここでは、結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変動幅が13arcsec以下である連続領域をドメインとして検出している。また、図5は、ある特定の直線領域における窒化物半導体結晶の結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変化をグラフ化したものである。ここでは、結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変動幅が11.4×10-5以下である連続領域をドメインとして検出している。
【0032】
ドメインの検出条件として、上記以外に加重する条件や上記以外の条件を設定することも可能である。例えば、上記の条件にプラスして、少なくとも一定の長さ(径)以上を有するものだけをドメインとして検出することにしてもよい。このときの長さ(径)の下限値としては、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、500μm以上が特に好ましく、700μm以上がさらに好ましい。また、上限値は例えば1000μm以下にすることができる。また、上記の条件にプラスして、少なくとも一定の面積以上であるものだけをドメインとして検出することにしてもよい。このときの面積の下限値としては、10000μm2以上が好ましく、250000μm2以上がより好ましく、500000μm2以上がさらに好ましい。また、上限値は例えば1000000μm2以下にすることができる。
【0033】
[窒化物半導体結晶の評価方法]
(特徴)
本発明の窒化物半導体結晶の評価方法は、以下の4つの工程を含むことを特徴とする。
(1) 分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを前記窒化物半導体結晶の表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第1測定工程
(2) 前記窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に、前記ビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第2測定工程
(3) 前記第1測定工程および前記第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、前記窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する算出工程
(4) 得られた結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)に基づいて前記窒化物半導体結晶を評価する評価工程
【0034】
(評価)
上記の第1測定工程、第2測定工程および算出工程については、本発明の測定方法における対応する説明を参照することができる。
評価工程では、得られた結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)に基づいて前記窒化物半導体結晶を評価する。評価の基準は、種々のものを採用することが可能である。
【0035】
例えば、結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)がそれぞれ特定の変動幅の中におさまっている連続領域をドメインとして検出し、該ドメイン間での結晶面の傾きのずれ(Δθ)の差異や結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の差異に基づいて窒化物半導体結晶を評価することができる。ドメイン間のΔθの差異は200arcsec以下であることが好ましく、100arcsec以下であることがより好ましく、50arcsec以下であることがさらに好ましく、0arcsecであることがもっとも好ましいと考えられるが、実質的には10arcsec以上であっても結晶性は十分良好であるといえる。また、ドメイン間のΔd/dの差異は8×10-4以下であることが好ましく、5×10-4以下であることがより好ましく、2×10-4以下であることがさらに好ましく、0であることがもっとも好ましいと考えられるが、実質的には1×10-5以上であっても結晶性は十分良好であるといえる。
ここで、ドメイン間のΔθの差異またはΔd/dの差異を求める場合には、検出した各ドメインにおけるΔθまたはΔd/dの平均値を算出し、各ドメイン間の該平均値の差異として決定する。
【0036】
さらに別の評価方法として、結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)がそれぞれ特定の変動幅の中におさまっている連続領域をドメインとして検出し、最大のドメインの面積に基づいて窒化物半導体結晶を評価することもできる。最大のドメインの面積は、10000μm2以上が好ましく、250000μm2以上がより好ましく、500000μm2以上がさらに好ましい。また、上限値は例えば1000000μm2以下にすることができる。
【0037】
[好ましい結晶]
(好ましい結晶の製造)
本発明の方法は、特に結晶性が良好な高品質な窒化物半導体結晶を選別するために好ましく用いることができる。また、そのような選別を行うことによって、高品質な窒化物半導体結晶の好ましい製造方法も追究することが可能になる。
例えば、溝加工基板などのような下地基板上に成長させる結晶との間に空洞を形成するような構造を有する下地基板およびファセット成長により、高品質な窒化物半導体結晶を製造することが可能である。この方法を採用することにより、結晶全領域でμmオーダーの分解能で解析したドメイン間のΔθの差異が45arcsec以下であり、Δd/dの差異が1.4×10-4以下である窒化ガリウムなどの窒化物半導体結晶を提供することができる。
【0038】
(溝加工方法)
エピタキシャル成長させる窒化物半導体単結晶と下地基板との間に空洞を形成するには、公知の手法を用いることができる。例えば、下地基板上の任意の部分にマスクを形成した後にエピタキシャル成長を行い、ウェットエッチングで上記マスクを溶解させて空洞を形成する方法や、下地基板に凹凸を形成しエピタキシャル成長時に窒化物半導体結晶を横方向成長(ラテラル成長)させる方法等が挙げられる。
【0039】
以下では、下地基板上の任意の部分にマスクを形成した後にエピタキシャル成長を行い、ウェットエッチングでマスクを溶解させて空洞を形成する方法について、その詳細を説明する。例えば、予め、下地基板の主面にエピタキシャル結晶成長を阻害する様なマスクを成膜する。このマスク用の膜としては、例えば酸化珪素、窒化珪素などの絶縁膜が挙げられる。マスク成膜の手法に特別な制限はないが、スパッタリング法、プラズマCVD法、EB−PVD法等が例示される。このマスク膜の厚さは、好ましくは1nm〜10μm、更に好ましくは5nm〜8μmであり、最も好ましくは10nm〜5μmである。厚みが薄過ぎると空洞としての機能を発現するための高さの基板面内均一性の確保が困難であり、厚過ぎると後のエッチングによる除去や化合物半導体結晶の横方向成長の制御が困難になる。
【0040】
このマスク膜にプライマーとしてヘキサメチルジシラザンを塗布し、続いてフォトレジストを塗布する。プライマーをフォトレジストの下に塗布することにより、マスク膜の疎水性を高めてフォトレジストの密着性を高めることができる。
【0041】
次に、任意のパターンが形成されたフォトマスクを介してh線等を含む水銀灯で露光し、有機アミンであるテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液によりアルカリ現像を行う。これにより、フォトレジストのパターニングが行われる。パターンは任意の形状とすることができる。例えば、ストライプ、格子、四角形、ドット、ホール等の形状が挙げられる。ストライプ等の方位も特に限定は無いが、好ましくは(11−20)等のa面や(1−100)等のm面に平行であることが望ましい。
【0042】
ポジ型のフォトレジストを用いた場合、フォトマスクを介して露光された箇所のフォトレジストが現像で溶解し、予め成膜を行ったマスク膜が現れる。続いて、バッファードフッ酸(NH4HF2)により、フォトレジストのパターンが除去された部分(露光部)のマスク膜をウェットエッチングで取り除く。この後、露光されていない箇所(未露光部)のフォトレジストをアセトンで溶解させる。これにより、主面の任意の箇所にマスク膜が形成され、マスク部としてパターニングされた基板が得られる。
【0043】
続いて、有機金属気相成長法(MOVPE)を用い、下地基板主面上にマスク膜が形成されていない領域(開口部)から窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させる。なお、窒化物半導体結晶のエピタキシャル成長は、ハイドライド気相成長法(HVPE)や分子線気相成長法(MBE)等によってもよい。エピタキシャル成長の条件を制御することにより、開口部からエピタキシャル成長した窒化物半導体結晶の厚みがマスク部の高さを越えた後に横方向成長させ、更に、互いに隣接する開口部から成長した窒化物半導体結晶同士が完全には接合しない状態とすることができる。続いて、隣接する開口部から成長した化合物半導体結晶同士が完全には接合しない状態の基板をフッ酸に浸漬し、マスク膜を溶出させる。このような手順により、空洞部を有する窒化物半導体結晶層が得られる。
【0044】
以下では、下地基板に凹凸を形成する方法について、その詳細を説明する。下地基板の主面に窒化珪素や酸化珪素等のエピタキシャル結晶成長を阻害するマスク膜を成膜した後にマスク膜をパターニングする段階までは、上述した空洞形成の手法と同じである。
【0045】
パターニングの後、誘導結合型反応性エッチングにて、マスク膜が無い開口に溝を設けることにより、下地基板主面に任意のパターンで凹凸を形成することができる。このエッチング量を多くすることにより、溝を深くした下地基板を作製し、窒化物半導体単結晶をエピタキシャル成長させる際の横方向成長を速くする条件とすれば、下地基板と窒化物半導体単結晶との間に自然と空洞が形成される。
【0046】
また、溝の底面や側壁に窒化珪素や酸化珪素等のマスク膜を形成すると、より簡単に、下地基板と窒化物半導体単結晶との間に空洞を形成することができる。溝の底面や側壁のみにマスク膜を形成する方法としては、リフトオフ法や、フォトレジストを用いたセルフアライン法、あるいは、パターンニング等により保護層を形成した後にドライエッチングやウェットエッチングを行う方法等が挙げられる。
【0047】
凹凸の構造については、結晶内の歪みを緩和するために十分な空洞を形成するのに適した溝深さ、溝幅、テラス幅であることが望ましい。溝深さは0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上が最も好ましい。溝幅は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、2μm以上が最も好ましい。テラス幅は、25μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が最も好ましい。
【0048】
下地基板の主面がc面であり、HVPE法により溝加工基板上に直接成長を行い、c面を主面としたエピタキシャル成長を促進させる場合は、テラス幅は1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましく、5μm以上が最も好ましい。また主面をc面とした下地基板であって、HVPE成長法で直接溝加工基板上に非c面ファセット成長を促進させる場合は、テラス幅を5μm以下とすることが好ましい。
【0049】
(ファセット成長)
[HVPE成長]
上記の条件で凹凸加工を行ったGaN基板上に、HVPE法によるGaN厚膜の結晶成長を行うことができる。成長面としては、極性面のみを成長面としてもよいし、極性面以外のファセット面を成長面としながら成長してもよいが、結晶のゆがみが小さくなると考えられることから極性面以外のファセット面を成長面としながら成長をおこなうファセット成長を採用することが好ましい。
【0050】
図6は、このHVPE法によるGaN成長に用いる装置の一構成例の概要を説明する図で、図中の符号100はリアクタ、101〜104はガス導入管、105はリザーバ、106はヒータ、107は基板ホルダ、108はガス排出管である。また、G1〜4はそれぞれ、H2キャリアガス、N2キャリアガス、III族原料ガス、およびV族原料ガスである。
【0051】
リアクタ100の材質としては、石英、多結晶ボロンナイトライド(BN)ステンレス等が用いられる。好ましい材質は石英である。リアクタ100内には、反応開始前にあらかじめ雰囲気ガスを充填しておく。雰囲気ガスとしては、例えばH2ガス、N2ガス、He、Ne、Arのような不活性ガス等を挙げることができる。これらのガスは混合して用いてもよい。
【0052】
基板ホルダ107の材質としてはカーボンが好ましく、SiCで表面をコーティングしているものがより好ましい。基板ホルダ107の形状は、本発明の下地基板112を設置することができる形状であれば特に制限されないが、結晶成長する際に成長している結晶の上流側に構造物が存在しないものであることが好ましい。上流側に結晶が成長する可能性のある構造物が存在すると、そこに多結晶体が付着し、その生成物としてHClガスが発生して結晶成長させようとしている結晶に悪影響が及んでしまう。基板ホルダ107の下地基板載置面の大きさは、載置する下地基板よりも小さいことが好ましい。すなわち、ガス上流側から見たときに、下地基板の大きさで基板ホルダ107が隠れるくらいの大きさであることがさらに好ましい。
【0053】
下地基板を基板ホルダ107に載置するとき、下地基板の成長面はガス流れの上流側(図6ではリアクタの上方)を向くように載置することが好ましい。すなわち、空洞を形成し得る面または下地基板の凹凸を有する面に向かってガスが流れるように載置することが好ましく、空洞を形成し得る面または下地基板の凹凸を有する面に垂直な方向からガスが流れるようにすることがより好ましい。このように下地基板を載置することによって、より均一で結晶性に優れたIII族窒化物結晶を得ることができる。
【0054】
リザーバ105には、III族源となる原料を入れる。そのようなIII族源となる原料として、Ga、Al、Inなどを挙げることができる。リザーバ105にガスを導入するための導入管103からは、リザーバ105に入れた原料と反応するガスを供給する。例えば、リザーバ105にIII族源となる原料を入れた場合は、導入管103からHClガスを供給することができる。このとき、HClガスとともに、導入管103からキャリアガスを供給してもよい。キャリアガスとしては、例えばH2ガス、N2ガス、He、Ne、Arのような不活性ガス等を挙げることができる。これらのガスは混合して用いてもよい。キャリアガスは雰囲気ガスと同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0055】
導入管101からは、窒素源となる原料ガスを供給する。通常はNH3ガスを供給する。また、導入管102からは、キャリアガスを供給する。キャリアガスとしては、導入管103から供給するキャリアガスと同じものを例示することができる。導入管102から供給するキャリアガスと導入管103から供給するキャリアガスは同じものであることが好ましい。また、導入管102からは、ドーパントガスを供給することもできる。例えば、SiH4やSiH2Cl2等のn型のドーパントガスを供給することができる。
【0056】
導入管104からは、エッチングガスを供給することができる。エッチングガスとしては、塩素系のガスを挙げることができ、HClガスを用いることが好ましい。エッチングガスの流量を総流量に対して0.1%〜3%程度とすることによりエッチングを行うことができる。好ましい流量は総流量に対して1%程度である。ガスの流量はマスフローコントロラー(MFC)等で制御することができ、個別のガスの流量は常にMFCで監視することが好ましい。
【0057】
導入管101、102、104から供給する上記ガスは、それぞれ互いに入れ替えて別の導入管から供給しても構わない。また、V族源となる原料ガスとキャリアガスは、同じ導入管から混合して供給してもよい。さらに他の導入管からキャリアガスを混合してもよい。これらの供給態様は、リアクタ100の大きさや形状、原料の反応性、目的とする結晶成長速度などに応じて、適宜決定することができる。
【0058】
ガス排出管108は、ガス導入のための導入管101〜104とは反対側のリアクタ内壁から排出することができるように設置するのが一般的である。図6では、ガス導入のための導入管101〜104が設置されているリアクタ上面とは反対に位置するリアクタ底面にガス排出管108が設置されている。ガス導入のための導入管がリアクタ右側面に設置されている場合は、ガス排出管はリアクタ左側面に設置されていることが好ましい。このような態様を採用することによって、一定方向に向けて安定にガスの流れを形成することができる。
【0059】
HVPE法による結晶成長は、通常は800℃〜1200℃で行い、900℃〜1100℃で行うことが好ましく、925℃〜1070℃で行うことがより好ましく、950℃から1050℃で行うことがさらに好ましい。リアクタ内の圧力は10kPa〜200kPaであるのが好ましく、30kPa〜150kPaであるのがより好ましく、50kPa〜120kPaであるのがさらに好ましい。エッチングを行うときのエッチング温度や圧力は、上記の結晶成長の温度や圧力と同一であっても異なっていてもよい。
【0060】
(好ましい結晶の特徴)
上記のような方法を採用して製造した本発明の窒化物半導体結晶は、結晶性が良好であるため、微細なドメイン構造を有するものの、従来のよりも大きなドメインで構成されるという特徴を有する。具体的には、本発明の窒化物半導体結晶は結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変動幅が13arcsec以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメインの長さが50μm以上であり、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは150μm以上である。また、本発明の窒化物半導体結晶は結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅が11.4×10-5以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメインの長さが50μm以上であり、より好ましくは100μm以上であり、さらに好ましくは150μm以上である。さらに、本発明の窒化物半導体結晶のより広範囲な領域を観察すると、結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅が15.49×10-5以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメインの長さが500μm以上であり、より好ましくは550μm以上であり、さらに好ましくは600μm以上である。
【0061】
また、本発明の窒化物半導体結晶は、結晶性が良好であるため、別の特徴としては結晶面の傾きのずれ(Δθ)や結晶面間隔の伸縮(Δd/d)が小さいとの特徴を有する。具体的には、本発明の窒化物半導体結晶は結晶面の傾きのずれ(Δθ)を測定するためのビームの入射方向に対して平行なライン上の250μmの範囲におけるΔθが100arcsec以下であり、好ましくは80arcsec以下であり、より好ましくは50arcsec以下である。また、本発明の窒化物半導体結晶は結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を測定するためのビームの入射方向に対して平行なライン上の250μmの範囲におけるΔd/dが5×10-4以下であり、好ましくは3×10-4以下であり、より好ましくは1×10-4以下である。
【0062】
さらに、本発明の窒化物半導体結晶は、結晶性が良好であるため、別の特徴としてはドメイン間の結晶面の傾きのずれ(Δθ)の差異や結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の差異が小さいとの特徴を有する。具体例としては、結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変動幅が13arcsec以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメイン間のΔθの差異は100arcsec以下であり、好ましくは75arcsec以下であり、より好ましくは50arcsec以下である。また、結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅が11.4×10-4以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメイン間のΔd/dの差異は5×10-4以下であり、好ましくは3×10-4以下であり、より好ましくは2×10-4以下である。ここで、ドメイン間のΔθの差異またはΔd/dの差異を求める場合には、検出した各ドメインにおけるΔθまたはΔd/dの平均値を算出し、各ドメイン間の該平均値の差異として決定する。
【実施例】
【0063】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0064】
(X線トポグラフ像の測定)
本実施例では、図1に示す装置を用いて測定を行った。放射光X線光源1としては、シンクロトロン放射光を用いた。使用したX線の波長は1.24Aで、X線ビームの単色化と平行化は、前置結晶としてSi(111)の二結晶分光器2を用い、後段にSi(111)面の一枚置き分光結晶3を平行配置にした。試料4に照射するビームの分光結晶による発散角は4.3arcsecであり、単色性は1.0×10-4であった。試料は、ω回転、面内回転、あおり回転のできるゴニオメータにセットして、分光結晶の下流側に配置した。X線の入射角度はGaN(104)反射が得られる角度にセットした。ゴニオメータの各軸の回転精度は、ω回転:1/100arcsec、面内回転:1/100度、あおり回転:1/500度であった。X線トポグラフ像の測定は試料4から約26cmの位置にCCDカメラ5を置き、CCDカメラの制御は専用の制御装置で行った。CCDカメラの画素数は3247×4871、空間分解能は7.4μmであった。
X線トポグラフ像の測定方法は、次のように行った。窒化ガリウム(GaN)結晶のGaN(104)の回折角2θの位置にX線検出器をセットし、2θ、ω、あおり角度それぞれを調整しながら、GaN(104)反射が得られる角度を見付けた。X線検出器のすぐ後ろにCCDカメラを置き、X線検出器を取り除き、CCDカメラでX線トポグラフ像を測定した。ω角度を低角度側及び高角度側に動かすことによって、X線トポグラフ像が得られる範囲を決定し、低角度側から2arcsec刻みで高角度側にω角度を変えながら、各刻み毎にX線トポグラフ像を観測した。ゴニオメータの面内回転によって試料を180度回転し、同様の操作によってX線トポグラフ像を測定した。
【0065】
(X線トポグラフ像の解析)
面内180度回転して測定したトポグラフ像について、画像処理ソフトを用いて、逆方向に180度回転を行い、ファイルを保存する。面内0度の画像と面内180度の画像は、試料のセッティング時のずれによって完全な回転対称ではない。そこで、2arcsec刻みで測定された多数枚の画像から全面が広く写っている中心付近の画像を選び出し、トポグラフ像の明暗コントラストが大きい部分を2カ所選定し、2つの画像の座標の補正に用いた。この時、1カ所はX方向に明暗コントラストが大きく、もう1カ所はY方向に明暗コントラストが大きい箇所を選定することで、X,Y両方向の補正が容易になる。面内0度と補正した180度の画像の解析したい部分(明暗コントラストが大きい部分等)を選択し、この周囲の303×303ピクセル分の画像を切り出した。次に、2arcsec刻みで測定した全ての画像について、座標軸の補正を行った。入射角ωを微小に変えて測定しているため、試料同一箇所におけるトポグラフ像上の座標が徐々にシフトする。そこで、特徴的な形のある箇所8点を補正用のポイントとして選んで、これら全ての画像についてシフト量の補正を実施した。
【0066】
表計算ソフト等を用いて、CCDカメラの強度データをから、図2[A]に示すようなスプレッドシートを作成した。次に、図2[B]の形にスプレッドシートを書き替え、図2[C]のようにω−Iのグラフを303×303枚作成した。これらの操作を面内0度と面内180度の画像シリーズそれぞれについて実施した。それぞれのω−Iのグラフからωの最大値を読み取り、それら全ての平均値を算出した。画像全体におけるωの基準値は次の要領で決定した。
1)トポグラフ像の明暗コントラストが小さい領域、
2)試料同一箇所における0度と180度のω値の差が小さい箇所、
3)ω値の変動が小さい領域
画像中のΔθ、Δd/dを算出したい領域を選択し、以下の方法で計算した。
Δθの算出:同一箇所における面内0度と面内180度のω値の差を2で割ることにより求めた

Δd/dの算出:面内0度と面内180度のω値の平均と、基準との差を、ブラッグ条件を微分したΔd/dの下記式に代入することにより求めた。
【数1】

【0067】
(結晶の測定1)
上記の測定法を用いて、実際に結晶を測定した。
基板の中央部において、溝深さ5μm、テラス幅2μm、溝幅4μmとなるように溝を作成した凹凸を有する下地基板を用いてファセット成長によりGaN基板を製造した。具体的には、図6に示す製造装置を用いて、以下の手順で製造した。
まず、基板10を、直径70mm、厚さ20mmのSiCコーティングしたカーボン製の基板ホルダ107上に置き、HVPE装置のリアクタ100内に配置した。リアクタ100内を1020℃まで昇温した後、H2キャリアガスG1と、N2キャリアガスG2と、GaとHClの反応生成物であるGaClガスG3と、NH3ガスG4とを、導入管101〜104からそれぞれ供給しながら、GaN層を15時間成長させた。このGaN成長工程では、成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスG3の分圧を6.51×102Paとし、NH3ガスG4の分圧を7.53×103Paとした。また、N2ガスの分圧を1.14×104Pa、H2ガスの分圧を8.13×104Pa、ジクロロシラン(SiH2Cl2)の分圧を5.54×10-1Paとした。得られたGaN単結晶の形状は、表面が全面非C面ファセット成長した円状であり、C軸方向の膜厚が約2.4mmであった。
得られたGaN基板について、上記の方法にしたがって測定を行った。その結果、境界をまたいで、−30arcsecから11arcsecまでΔθの符号が逆転する領域が観測された。Δd/dはほとんどの領域では10-5オーダーであったが、約50μm□の領域において、大きなΔd/d(Δd/d=1.9×10-4)が存在することが確認された。
【0068】
図4は、得られたGaN基板のC面におけるm軸方向の特定の直線領域における窒化物半導体結晶の結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変化をグラフ化したものである。ここでは、結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変動幅が13arcsec以下である連続領域をドメインとして検出している。そのようにして検出されたドメインの長さはドメイン1は103.6μm、ドメイン2は103.6μmであった。また、ドメイン1とドメイン2との間のΔθの差異は32.0arcsecであった。
また、図5は、得られたGaN基板のC面におけるM軸方向のある特定の直線領域における窒化物半導体結晶の結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変化をグラフ化したものである。ここでは、結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変動幅が11.4x10-5以下である連続領域をドメインとして検出している。そのようにして検出されたドメインの長さはドメイン3は103.6μm、ドメイン4は103.6μmであった。また、ドメイン3とドメイン4との間のΔd/dの差異は3.3×10-5であり、ドメイン間での結晶面間隔の伸縮率が極めて小さく良好な結晶であることがわかった。
【0069】
図7はより広域の直線領域における窒化物半導体結晶の結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変化をグラフ化したものである。領域1において結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変動幅が15.49x10-5以下である連続領域をドメインとして検出すると、ドメインの長さは606.8μmであった。また領域2において結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変動幅が15.49x10-5以下である連続領域をドメインとして検出すると、ドメインの長さは710.4μmであった。
【0070】
図8は、得られたGaN基板のC面におけるM軸方向の図5とは異なるある特定の直線領域における窒化物半導体結晶の結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変化をグラフ化したものである。ここでは、結晶面間隔の伸縮率(Δd/d)の変動幅が11.4x10-5以下である連続領域をドメインとして検出している。そのようにして検出されたドメインの長さはドメイン5は59.2μm、ドメイン6は44.4μmであった。また、ドメイン5とドメイン6との間のΔd/dの差異は1.4×10-4であった。ここで、ドメイン5のΔd/dの最小値とドメイン6のΔd/dの最大値との差異は1.9×10-4であった。図8で示される特定の直線領域は、結晶の広域のΔd/d変化を観察した直線領域(図7)のうちドメイン間のΔd/dの差異が特に大きい領域を選択したものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、窒化物半導体結晶表面についてμmオーダーで結晶面の傾きのずれ(Δθ)や結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を簡便に測定することができる。また、本発明によれば、窒化物半導体結晶の表面状態から窒化物半導体結晶を容易に評価することが可能であり、また、窒化物半導体結晶表面のドメインを特定することも可能である。このため、本発明は工業的に生産される窒化物半導体結晶の品質評価に利用されうるものであるとともに、高品質な結晶を製造するための製造条件の特定や制御にも役立つものである。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0072】
1 放射光X線光源
2 二結晶分光器
3 一枚置き分光結晶
4 試料
5 CCDカメラ
100 リアクタ
101〜104 導入管
105 リザーバ
106 ヒータ
107 基板ホルダ
108 ガス排出管
G1 H2キャリアガス
G2 N2キャリアガス
G3 III族原料ガス
G4 V族原料ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を測定する方法であって、
(1) 分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第1測定工程、
(2) 前記窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に、前記ビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第2測定工程、および、
(3) 前記第1測定工程および前記第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、前記窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する算出工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記検出器のピクセル数が30×30以上であることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記検出器がCCDカメラであることを特徴とする請求項2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記第1測定工程および前記第2測定工程において、測定ステップを0.2〜10arcsecごとに変化させながら、前記検出光強度の検出を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項5】
前記第2工程における180°回転後の位置合わせを、X線トポグラフ像の明暗コントラストを回転前後で一致させることにより行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項6】
窒化物半導体結晶表面におけるドメインの検出方法であって、
(1) 分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第1測定工程、
(2) 前記窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に、前記ビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間の少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第2測定工程、
(3) 前記第1測定工程および前記第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、前記窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する算出工程、および
(4) 前記結晶面の傾きのずれ(Δθ)と前記結晶面間隔の伸縮(Δd/d)がそれぞれ特定の変動幅の中におさまっている連続領域をドメインとして検出するドメイン特定工程、
を含むことを特徴とするドメインの検出方法。
【請求項7】
前記ドメイン検出工程において、前記結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変動幅が15arcsec以下であって、前記結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅が15×10-5以下である連続領域をドメインとして検出することを特徴とする請求項6に記載のドメインの検出方法。
【請求項8】
前記ドメイン検出工程において、前記特定の変動幅の中におさまっている連続領域であり、且つ、当該領域の面積が10000μm2以上である連続領域をドメインとして検出することを特徴とする請求項6または7に記載のドメインの検出方法。
【請求項9】
結晶面の傾きのずれ(Δθ)の変動幅が13arcsec以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメインの長さが50μm以上であることを特徴とする、窒化物半導体結晶。
【請求項10】
結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅が11.4×10-5以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメインの長さが50μm以上であることを特徴とする、窒化物半導体結晶。
【請求項11】
結晶面間隔の伸縮(Δd/d)の変動幅が15.49×10-5以下の連続領域をドメインとして検出した場合に、ドメインの長さが500μm以上であることを特徴とする、窒化物半導体結晶。
【請求項12】
窒化物半導体結晶の評価方法であって、
(1) 分光結晶による発散角が10arcsec以下であり、単色性が4.0×10-4以下であるビームを前記窒化物半導体結晶の表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間を少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第1測定工程、
(2) 前記窒化物半導体結晶を測定面内において180°回転させた後に、前記ビームを前記窒化物半導体結晶表面に照射してその反射光強度を検出器の各ピクセルごとに検出するステップを、前記ビームの前記窒化物半導体結晶表面に対する入射角を変えながら、X線トポグラフ像の強度が0超になる開始角度から0以下になる終了角度までの間を少なくとも10点以上について実施し、それによって得られた前記入射角と検出光強度の関係から各ピクセルごとのロッキングカーブを得る第2測定工程、
(3) 前記第1測定工程および前記第2測定工程において得られた各ピクセルごとのロッキングカーブから、前記窒化物半導体結晶表面における結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を分解して算出する算出工程、および
(4) 得られた結晶面の傾きのずれ(Δθ)と結晶面間隔の伸縮(Δd/d)に基づいて前記窒化物半導体結晶を評価する評価工程
を含むことを特徴とする評価方法。
【請求項13】
前記評価工程において、結晶面の傾きのずれ(Δθ)と前記結晶面間隔の伸縮(Δd/d)がそれぞれ特定の変動幅の中におさまっている連続領域をドメインとして検出し、最大のドメインの面積に基づいて前記窒化物半導体結晶を評価することを特徴とする請求項12に記載の評価方法。
【請求項14】
結晶面の傾きのずれ(Δθ)を測定するためのビームの入射方向に対して平行なライン上の250μmの範囲におけるΔθが100arcsec以下である窒化物半導体結晶。
【請求項15】
結晶面間隔の伸縮(Δd/d)を測定するためのビームの入射方向に対して平行なライン上の250μmの範囲におけるΔd/dが5×10-4以下である窒化物半導体結晶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−40060(P2013−40060A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176546(P2011−176546)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】