説明

窒素ガス発生装置

【課題】 大気中のエアーを圧縮供給して窒素ガスを発生する窒素ガス発生装置の提供。
【解決手段】 エアー中に混在する不純物を取除く為のフイルターを設け、該フイルターから出たエアーを加熱するヒーター1を備え、そして該ヒーター1を通過することで所定の温度に加熱されたエアーが通る窒素分離器7を設けている。窒素分離器7は圧力容器内に多数本の中空糸膜9,9・・・を収束して収めた構造とし、窒素分離器の後方には濃度調整バルブを取付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大気中の酸素(O)を排除して任意濃度の窒素ガス(N)をタイヤに充填することが出来る窒素ガス発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤにも色々な型式並びにサイズが存在しているが、何れのタイヤもホイールに装着されて車輪として構成され、該車輪は車両を支えると共に走行を可能としている。そこで、タイヤには高圧エアーが充填されるが、その為にホイールにはエアーバルブが設けられ、このエアーバルブを介してエアー充填装置から所定のエアー圧に充填される。
【0003】
ところで、タイヤに充填されたエアーは、エアーバルブが故障すればその箇所から漏れるが、その他にもタイヤ自体から微量のエアーが漏れる。すなわち、拡散現象を伴ってエアーが極僅かづつ漏れる。その為に、エアーバルブが故障していないにも関わらず、長期間が経過するとタイヤ圧は低下する。エアー圧が低下した状態で車両が走行するならば、燃費が悪化すると共にタイヤの寿命を短くすることになる為に、タイヤのエアー圧は定期的に点検を行うことが必要である。
【0004】
窒素ガスはエアーに比べてゴム中の拡散速度が25〜40%も小さい。又窒素ガスは高温下の特殊条件では反応して窒素酸化物を生成するが、生活温度域では不活性であり、それに水分を殆ど含んでいない。その結果、ゴムやタイヤ内部に埋着している金属ワイヤーの酸化変質を防止し、タイヤ内部のリム表面のサビを防止して寿命を延ばすことが出来る。その結果、タイヤは長持ちしてタイヤの廃棄物は減少し、又適正なエアー圧を維持することが出来る為に燃費は向上すると共に、足回りは良好となる。
【0005】
大気中のエアーは窒素78.08%、酸素20.95%、アルゴン0.93%、二酸化炭素0.04%から成り、タイヤに窒素ガスを充填する方がエアー漏れが減少することは従来から知られており、その為に窒素ガス充填装置が使用されている。特に過酷な使用が強いられているレーシングカーのタイヤ、又安全の確保が重要な航空機のタイヤには従来からこの窒素ガスが充填されている。
【0006】
特開2003−331353号に係る「窒素ガス充填装置」は、タイヤ等にとって有利な窒素ガスを、適正な料金の下に、適正な量の充填を行うことを可能とする装置である。そこで、複数の容器内の窒素ガスを貨幣の投入額に応じて所定量をタイヤ内に充填するように制御される制御装置に、窒素ガスを充填すべきタイヤ本数あるいはタイヤサイズに基づいて、ガス充填駆動回路による充填がなされる容器の選定を行う充填パターン選択制御回路を設け、窒素ガスタンクのガス源から分離された装置内に配設される容器を車両1台分のタイヤへの充填量だけ確保して窒素ガス充填装置を小型化でき、投入金額、充填パターンの選択によって窒素ガス充填量の見積りが容易で、窒素ガス充填装置内に組み合わせて配設された容器を選定して、適正な量の充填を行うことで明瞭かつ適正な料金の下に窒素ガスを充填することが可能となる。
【0007】
特開2008−222189号に係る「タイヤへの窒素ガス充填装置」は、窒素を自動車のタイヤに充填するための効率的な窒素充填設備である。そこで、水素製造所から配管を用いて、水素を水素充填所に水素・窒素の混合ガスとして受け入れ、水素・窒素分離器を用いて同ガスから水素ガスを分離して、燃料電池車の水素貯蔵設備に貯蔵し、残った窒素ガスを燃料電池車および一般自動車のタイヤの充填用ガスとして利用する。
【0008】
このようにタイヤに窒素ガスを充填する為の装置は色々知られているが、充填する窒素ガスの濃度を制御して充填することが出来る充填装置ではない。
【特許文献1】特開2003−331353号に係る「窒素ガス充填装置」
【特許文献2】特開2008−222189号に係る「タイヤへの窒素ガス充填装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように窒素ガス充填装置は色々存在しているが、充填される窒素ガスの濃度を大気中のエアーを用いて調整することは出来ない。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、大気中のエアーを供給することで任意の濃度の窒素ガスを安定して発生することが出来る窒素ガス発生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る窒素ガス発生装置は大気中のエアーを供給し、このエアーを加熱することが出来るヒーターを備え、該エアーはヒーターを通過して所定の温度に加熱される。ここで、該ヒーターの具体的な構造は限定しないことにする。加熱された圧縮エアーは窒素分離器を通過することで、主として酸素を排出することが出来、その結果、エアーの窒素ガス含有率が高くなる。エアー供給口とヒーターの間にはエアーフイルター及びオイルミストフイルターが設けられ、不純物が除去されて上記窒素分離器を通過する。
【0011】
ここで、窒素分離器とは筒形容器に軸方向に配列した多数本の中空糸膜を収束して収容し、入口から流入する圧縮エアーは上記中空糸膜の穴を流れることで酸素は中空糸膜を通過することが出来る。中空糸膜を収容した上記窒素分離器に関しては従来から周知の技術であり、窒素分離器によって酸素が排出されることで窒素ガスが作られて出口から流出する。そして、窒素分離器の後方には窒素濃度調整バルブ及び流量調整バルブと濃度センサーが設けられている。所定の濃度の窒素ガスはエアーチャックへ導かれ、タイヤに充填することが出来る。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る窒素ガス発生装置は空気中のエアーを使用し、このエアーが窒素分離器を通過することで主として酸素を排出し、窒素ガスの濃度を高めることが出来る。そして、窒素分離器の手前にヒーターを配置して流入する圧縮エアーを加熱することで窒素ガスの濃度を効率よく高めることが出来る。また、ヒーターの手前にはエアーフイルター及びオイルミストフイルターが配置されていることで、不純物の無い窒素ガスとなる。
【0013】
そして、窒素分離器の後方には濃度センサー、流量調整バルブ、及び濃度調整バルブが設けられている為に、任意の濃度に設定された窒素ガスを発生することが可能と成る。この窒素ガスを用いてタイヤに充填するならば、該窒素ガスの漏れを極力抑制されてタイヤ圧の低下が抑制される。また、充填される酸素の量が少ないことで、ホイールのサビ並びにタイヤ内部に埋着されている金属製ワイヤーのサビを抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】窒素ガス発生装置のエアーの流れを示す概略図。
【図2】ヒーターの具体例。
【図3】(a)は窒素分離器、(b)は窒素分離器内部の中空糸膜を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る窒素ガス発生装置のエアーの流れを示している。この窒素ガス発生装置は大気中のエアーを高圧に圧縮して供給し、余分なガスを排出することで濃度の高い窒素ガスを発生するように構成している。大気中のエアーには不純物が混在している為に、これら不純物を除去する為に、先ずエアーフイルターとオイルミストフイルターを通過する。ここで、該エアーフイルターとしては目の粗い5μmと目の細かい0.3μmの2種類が用いられる。また、オイルミストフイルターとしては、0.01μmの非常に細かい目のフイルターが使用される。勿論、これらフイルターはあくまでも1具体例であり、限定するものではない。
【0016】
上記各フイルターを通過した圧縮エアーはヒーターへ導かれて加熱される。該ヒーターの具体的な構造は自由であるが、図2にその1具体例を示している。ヒーター軸2の周囲には螺旋状のフィン3が巻付き、該ヒーター軸2はヒーター管4の中心軸に位置して取付けられている。ヒーター管4には入口5と出口6が設けられ、入口5から流入するエアーはヒーター管4の内部で加熱されて出口6から所定の温度になって流出する。
【0017】
ヒーター軸2に通電することで加熱され、しかも螺旋状に巻き付けたフィン3も加熱されることで表面積は大きくなり、ヒーター管4の内部を通過するエアーは効率よく加熱されて出口6から流出することが出来る。そして所定の温度に加熱されたエアーは窒素分離器へ導かれて、エアーの成分である酸素が主に排出されて窒素濃度が高くなる。
【0018】
ところで、窒素ガスを得る方法としては、深冷分離法、吸着法、膜分離法の3種類が一般的であるが、本発明では上記膜分離法を採用しており、この膜分離法を採用して窒素ガスを発生することが出来る窒素分離器を図3に示している。この窒素分離器7は筒形の圧力容器8の内部に高分子ポリイミドを素材とする多数本の中空糸膜9,9・・・を収束して収めたもので、これに圧縮エアーを供給することで窒素ガスが作られる。
【0019】
ここで、窒素ガスの発生量と濃度は圧縮エアーの供給圧と温度に依存し、濃度が一定の時は圧縮エアーが高圧、また供給エアーの温度が高温になるにしたがって窒素ガスの発生量は多くなる。図3(b)には中空糸膜9の拡大図を示しているように、窒素分離器7の入口10から流入した圧縮エアーは中空糸膜9の穴11に流入し、該圧縮エアーは酸素(O)が分離糸膜9の外側壁12を通過して外へ排出される。勿論、窒素も漏れるが酸素に比べて少なく、その為に出口13からは濃度の高い窒素が流出することになり窒素ガスが作られる。
【0020】
ところで、前記図1に窒素ガス発生装置の全体の流れを示しているが、窒素分離器7の後方に濃度調整バルブを設けている。この濃度調整バルブは窒素分離器7から流出する窒素ガスの量をコントロールすることで、窒素ガスの濃度が調整される。例えば、濃度調整バルブを絞って流量を少なくするならば、窒素ガスの濃度は高くなる。勿論、ヒーター1によって供給エアーの温度を高くすることで酸素の排出量が多くなって窒素ガス濃度を高くすることも出来る。
【0021】
従って、本発明ではヒーター1及び濃度調整バルブを備えることで、任意の濃度の窒素ガスを発生することが可能となる。そして、発生する窒素ガスの発生量を安定させる為にヒーター1にて入力圧縮エアーの温度を安定させる。ところで、該窒素ガス発生装置によって発生した窒素ガスは、エアー充填装置へ送られてタイヤに窒素ガスが所定のタイヤ圧になるように充填される。ここで、該エアー充填装置は従来のものが用いられる。
【符号の説明】
【0022】
1 ヒーター
2 ヒーター軸
3 フィン
4 ヒーター管
5 入口
6 出口
7 窒素分離器
8 圧力容器
9 中空糸膜
10 入口
11 穴
12 外側壁
13 出口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気中のエアーを圧縮供給して窒素ガスを発生する窒素ガス発生装置において、エアー中に混在する不純物を取除く為のフイルターを設け、該フイルターから出たエアーを加熱するヒーターを備え、そして該ヒーターを通過することで所定の温度に加熱されたエアーが流れる窒素分離器を設け、該窒素分離器は圧力容器内に多数本の中空糸膜を収束して収めた構造としたことを特徴とする窒素ガス発生装置。
【請求項2】
上記フイルターは大きな目と小さい目の2種類のエレメントとホイルミストフイルターを組み合わせた請求項1記載の窒素ガス発生装置。
【請求項3】
上記ヒーターはヒーター管にヒーター軸を取付け、そして該ヒーター軸にはフィンを設けて表面積を大きくした請求項1、又は請求項2記載の窒素ガス発生装置。
【請求項4】
窒素分離器の後方には濃度調整バルブを取付けた請求項1、請求項2、又は請求項3記載の窒素ガス発生装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−192360(P2012−192360A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59223(P2011−59223)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000185916)小野谷機工株式会社 (38)
【Fターム(参考)】