説明

窒素供給システム

【課題】 液化窒素を気化させて窒素ガスを供給するに際して、安定した電力を発生し、発電後の窒素ガスの圧力を安定させる、窒素供給システムを提供する。
【解決手段】 液化窒素を貯留した貯留タンク2と、貯留タンク2から液化窒素を移送する配管4と、を備えた窒素供給システム1である。この配管4に設けられて、配管4中を流れる液化窒素と熱交換することで液化窒素を気化させるための熱交換部5と、廃熱源を冷却した後の熱媒を熱交換部5に供給するとともに、供給した熱媒の熱交換部5での熱交換量を、略一定にする熱交換手段20と、配管4の、熱交換部5より下流側に設けられて、熱交換部5で熱交換されて気化した窒素ガスが流入することで発電する発電手段6と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化窒素が気化して生成された窒素ガスは、様々な用途に用いられていて、例えば半導体産業では、半導体装置の各製造工程の中で、ウエハ表面の酸化を防止に用いたり、半導体の製造装置内から材料ガスをパージするといった用途に用いられている。
ところで、このような液化窒素及び窒素ガスの他の用途として、液化窒素が気化する際の気化熱を利用し、コンピュータや大容量の通信機器等が発生する熱を冷却する。そして、液化窒素が気化して窒素ガスとなった際の体積の増加によって生じた高圧の窒素ガスを利用することで、タービンを回転させて、このタービンによって発電機を駆動させて発電する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この技術では電力を発生した後に、窒素ガスを大気中に放出しているため、液化窒素の有効活用ができていなかった。
また、液化窒素等を含む液体材料を気化させる方法として、例えば工場等で発生した廃熱を利用することで、液体材料を気化させて高圧ガスを生成し、その高圧ガスによってタービン及び発電機等からなる発電手段を駆動させて発電する技術もある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
そこで、これらの技術を用いることで、廃熱を利用して液化窒素を気化させ、発生した高圧の窒素ガスを利用して発電し、発電後の窒素ガスを無駄にすることなく、例えば窒素ガスを使用する装置まで窒素を移送する技術が考えられる。
【特許文献1】特開2003−120218号公報
【特許文献2】特開平8−338206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液化窒素を気化させる際に廃熱を利用する場合に、廃熱源での廃熱の発生量によって液化窒素に与える熱量が異なってしまう。すると、液化窒素から生成される窒素ガスの量が一定とならず、発電手段によって安定した発電を行うことができない。また、発生した窒素ガスの量が一定でないため、発電のエネルギとして利用した後の窒素ガスの圧力を一定とすることが難しかった。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、液化窒素を気化させて窒素ガスを供給するに際して、安定した電力を発生し、発電後の窒素ガスの圧力を安定させる、窒素供給システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の窒素供給システムは、液化窒素を貯留した貯留タンクと、該貯留タンクから前記液化窒素を移送する配管と、を備えた窒素供給システムであって、前記配管に設けられて、該配管中を流れる前記液化窒素と熱交換することで該液化窒素を気化させるための熱交換部と、廃熱源を冷却した後の熱媒を前記熱交換部に供給するとともに、供給した熱媒の前記熱交換部での熱交換量を、略一定にする熱交換手段と、前記配管の、前記熱交換部より下流側に設けられて、前記熱交換部で熱交換されて気化した窒素ガスが流入することで発電する発電手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の窒素供給システムによれば、熱交換部に廃熱源を冷却した後の熱媒を供給することで、配管中を流れる液化窒素を気化させるようにしている。このとき、前記熱交換部に供給した熱媒とこの熱交換部との熱交換量が略一定となるように液化窒素を気化しているので、配管内には前記熱交換量に対応した略一定量の窒素ガスが発生するようになる。ここで、液化窒素が気化して窒素ガスとなる場合、体積が膨張するようになる。よって、配管内が膨張した一定量の窒素ガスによって満たされることで、前記配管内には略一定の圧力となる高圧窒素ガスが発生するようになる。
そして、このような一定の圧力の高圧窒素ガスが流入することで発電手段を駆動することで、一定の発電量を得ることができる。
また、前記発電手段によって発電すると、高圧窒素ガスの圧力は発電したエネルギ分だけ低下するようになる。よって、例えば前記発電手段が発電する際の高圧窒素ガスのエネルギ使用量を一定とすれば、前記発電手段で発電した後の窒素ガスの圧力は一定となる。また、窒素ガスを前記配管内に一定の圧力で圧送することができ、窒素ガスを圧送するためのポンプを不要とすることができる。
したがって、貯留タンクから窒素ガスを供給する際に、安定した電力を発生し、一定の圧力の窒素ガスを安定して供給するとができる。
【0008】
また、前記窒素供給システムにおいては、前記廃熱源の廃熱が工場で生成した廃熱であることが好ましい。
このようにすれば、工場が生成した、例えば余分な電力等の廃熱を冷却する熱媒を液化窒素を気化させる際に利用しているので、工場の廃熱から得られるエネルギを効率的に利用することができる。
【0009】
また、前記窒素供給システムにおいては、前記熱交換手段が、前記熱交換部で前記液化窒素との熱交換を行う前の熱媒の温度を検出する前記温度検出手段と、前記熱交換部に供給される熱媒の温度を調節する温度調節手段と、前記温度検出手段の結果を基に前記温度調節手段を制御し、前記熱媒が予め設定した温度となるように制御する温度制御部と、を備えたことが好ましい。
このようにすれば、温度検出手段によって前記熱交換部で液化窒素との熱交換を行う前の熱媒の温度を検出した際に、熱媒の温度が予め設定した温度より低い場合は、例えば温度調節手段として設けたヒータを加熱制御することで熱媒の温度を前述した設定した温度に調節することができる。よって、予め設定した温度の熱媒によって液化窒素と熱交換を行うことによって、前記熱媒と前記液化窒素との間の熱交換量を一定とすることができる。
また、例えば熱媒の温度が予め定めた温度より高い場合は、例えば温度調節手段として設けた冷却装置を制御することで熱媒を冷却の温度を予め設定した温度に調整することができる。よって、予め設定した温度の熱媒によって液化窒素と熱交換を行うことによって、前記熱媒と前記液化窒素との間の熱交換量を一定とすることができる。
よって、前記熱交換部に供給する前の熱媒の温度が一定でない場合でも、液化窒素に対して一定の熱交換を行うことができる。
【0010】
また、前記窒素供給システムにおいては、前記熱交換手段が、前記熱交換部で前記液化窒素との熱交換を行う前の熱媒の温度を検出する温度検出手段と、前記熱交換部での熱媒の流量を調節する流量調節手段と、前記温度検出手段の結果を基に前記流量調節手段を制御する流量制御部と、を備えたことが好ましい。
このようにすれば、温度検出手段によって前記熱交換部で液化窒素との熱交換を行う前の熱媒の熱媒の温度を検出した際に、熱媒の温度が予め定めた温度より高い場合は、例えば流量調節手段として、前記熱交換部を流れる熱媒を分岐するバイパス管を設け、このバイパス管を流れる熱媒の流量を調節する流量調節弁の開度を調節して熱媒の流量を減少させることで、前記熱交換部に流れ込んだ熱媒の持つ熱交換量を一定とし、前記熱媒と液化窒素との熱交換量を一定とすることができる。
また、熱媒の温度が予め定めた温度より低い場合にも、熱媒の温度が予め定めた温度より高い場合と同様に、前記バイパス管を流れる熱媒の流量を調節し、熱交換部に供給される熱媒の流量を増加させることで、前記熱交換部に流れ込んだ熱媒の持つ熱交換量を一定とし、前記熱媒と液化窒素との熱交換量を一定とすることができる。
【0011】
また、前記窒素供給システムにおいては、前記熱交換手段が、前記熱交換部で熱交換した後の熱媒を前記廃熱源に循環することが好ましい。
このようにすれば、廃熱源の冷却に利用した熱媒を液化窒素との熱交換に利用し、熱交換後の熱媒を排出することなく廃熱源に循環させているので、熱媒を効率的に利用し、環境に与える負荷を無くすことができる。
【0012】
また、前記窒素供給システムにおいては、前記熱交換手段が、前記熱交換部で熱交換した後の熱媒を冷却する冷却槽を備えたことが好ましい。
このようにすれば、前記熱交換部に供給されることで前記液化窒素との熱交換に使用した熱媒を、冷却槽によって自然冷却させることで一定温度とした後、前記廃熱源を冷却する際の熱媒とすることで、熱媒の温度を一定温度にでき、したがって、熱媒の持つ廃熱源に対する冷却能力を一定に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の窒素供給システムについて説明する。
図1は、本発明の窒素供給システムを模式的に示した図である。
図1に示すように、窒素供給システム1は、液化窒素を貯留した窒素貯留タンク(貯留タンク)2と、この窒素貯留タンク2から前記液化窒素を移送する配管4と、を備えている。そして、この窒素供給システム1は、例えば工場内に設けられた半導体装置の製造装置などの窒素ガスを使用する窒素使用装置3に、前記液化窒素を後述するように気化させて窒素ガスとして供給するようになっている。なお、液化窒素は、例えば窒素貯留タンク2と配管4との接続部に設けられた弁(図示せず)を開くことで、前記貯留窒素タンク2内から自重によって配管4内に流れ込むようになっている。
【0014】
また、前記配管4には、前記貯留窒素タンク3から配管4内を流れてきた液化窒素に対して熱交換を行うことで、この液化窒素を気化させて窒素ガスを生成するための熱交換部5が設けられている。なお、前記窒素貯留タンク2から前記配管4内に流れる液化窒素の流量は一定となっていて、この配管4に設けられた前記熱交換部5には一定流量の液化窒素が流れ込むようになっている。
前記熱交換部5は、図1に示すように例えば、配管4の一部がU字形状に複数回折り返され、見掛け上の大きさが小さくなるように形成されたものである。よって、後述するように、工場内の廃熱を冷却するための熱媒との熱交換面積を大きくすることで、この熱交換部5に供給される前記熱媒と配管4内の液化窒素との熱交換率が高くなるようにしている。なお、前記熱交換部5の配管4の表面に冷却フィン形状(図示せず)を設けることで、熱媒との接触面積をより拡大して、熱交換率をより向上させるようにしてもよい。
【0015】
ところで、例えば工場(廃熱源)の装置の無駄となった動力等が廃熱となるが、工場内には、この廃熱を冷却するための冷却装置20が設けられている。この冷却装置20は、熱媒として水を工場内に循環させることで工場内で発生した廃熱を冷却するようにしている。
また、本発明では、この冷却装置(熱交換手段)20を循環する循環水(熱媒)が、前述した配管4に設けられた熱交換部5に供給されることで、前記配管4内の液化窒素と熱交換し、窒素ガスを生成するようになっている。また、前記冷却装置20は、後述するように前記液化窒素と前記循環水との熱交換量が略一定となるようにして前記液化窒素を気化させるようになっている。なお、熱交換量を略一定にするとは、前記熱交換部5に供給する前記液化窒素と熱交換する循環水の温度を完全に一定にするのでなく、液化窒素の気化量に実質的な変動を与えない、許容される範囲内となるように制御するとの意味である。
【0016】
前記冷却装置20には、循環水が流れる管路21が設けられていて、この管路21には前記循環水を循環させるための移送ポンプ(図示せず)が設けられている。よって、この移送ポンプによって前記冷却装置20内を一定流量の循環水が流れるようになっている。
本実施形態では、例えば前記管路21内を流れる循環水が前記熱交換部5と接触することで、前記熱交換部5内を流れる液化窒素と非接触に熱交換を行い窒素ガスを生成するようになっている。
【0017】
本実施形態では、前記循環水は工場内で発生した廃熱を冷却(熱交換)した後、この廃熱によって温められた循環水は、工場内で発生した平均的な廃熱を冷却した場合、30℃の循環水となり液化窒素と熱交換を行うようになっている。このとき、液化窒素を気化させる際の熱交換を行う熱媒として30℃の循環水は、液化窒素の気化温度(−196℃)に対して十分な温度差を有しているので、前記熱交換部5での熱交換を良好に行うことができる。
本実施形態においては、30℃の循環水が前記熱交換部5において液化窒素と熱交換する量を設定値とし、循環水の温度が30℃となるように冷却装置20を駆動するものとした。
なお、前記循環水の設定温度は、工場で使用する冷却温度や必要とする熱交換量等により適宜設定できるものである。
【0018】
前記循環水は図1中矢印方向に流れるようになっている。ここで、工場内の廃熱を冷却した循環水が流れ出す管路21側を上流とし、この循環水が熱交換部5によって液化窒素を気化させた後、再び工場内に戻る管路21側を下流とする。
そして、本実施形態では、前述した熱交換部5よりも上流側の管路21には、前記熱交換部5で前記液化窒素との熱交換を行う前の循環水の温度を検出する温度検出手段として、温度計22が設けられている。また、前記温度計22よりも下流側の管路21には、この温度計22の検出した温度に基づいて、循環水を加熱するためのヒータHが設けられている。また、例えばコンピュータなどからなる温度制御部26が、前記温度計22及びヒータHに電気的に接続されていることで、前記温度計22の検出温度に基づいて、前記ヒータHを予め設定した温度に制御するようになっている。
このヒータHは、例えば、工場内で発生した廃熱が小さい場合には、前記熱交換部5で液化窒素を気化させるための熱量の不足を補うようになっている。よって、前記ヒータHによって加熱されて予め設定した温度(30℃)となった循環水によって液化窒素と熱交換を行うことによって、前記熱媒と前記液化窒素との間の熱交換量を一定とすることができる。
【0019】
また、前記温度計22と前記熱交換部5との間の管路21には、前記管路21内の循環水を前記熱交換部5への流れと、熱交換部5を迂回する流れとに分岐する分岐部24aが形成されている。また、この分岐部24aには、熱交換部5を迂回する循環水が流れるバイパス管23aが接続されている。そして、このバイパス管23は、熱交換部5によって液化窒素と熱交換をした後の循環水が流れる管路21と再び合流部24bによって合流するようになっている。前記バイパス管23aには、前記温度計22の検出した温度に基づいて、このバイパス管23a内を流れる循環水の流量を調節するための流量調節弁(流量調節手段)23が設けられている。また、例えばコンピュータなどからなる流量制御部27が、前記温度計22及び流量調節弁23に電気的に接続されていて、前記温度計22の検出温度に基づいて、前記流量調節弁23の開度を制御することで、前記バイパス管23aに流れる循環水の流量を調節するようにしている。
また、例えば工場内で発生した廃熱の量が通常時より多い場合に、前記熱交換部22に流れ込む循環水の流量を調節するようになっている。そこで、工場内で発生した廃熱が大きい場合には、前記バイパス管23aに循環水が流れることで、前記熱交換部5に流れる循環水の量が減って、熱交換部5と液化窒素との熱交換量を間接的に減少させるようになっている。よって、前記熱交換部5を介して略一定の熱交換量によって液化窒素を気化させることができる。
【0020】
また、前記バイパス管23aと管路21との合流部24bの下流側となる管路21には、熱交換した後の循環水を冷却するための冷却槽25が設けられている。この冷熱槽25は、例えば循環水を一定時間貯留することで自然冷却するようになっている。そして、前記冷熱槽25で冷却された後に、循環水は略一定の温度(25℃)となるようにしている。よって、前記冷却装置20は、常に一定温度(25℃)の循環水で工場内の廃熱を冷却することで前記冷却装置20の冷却の信頼性を向上するようにしている。
【0021】
前記配管4には、前記熱交換器5による熱交換によって配管4内に発生した窒素ガスが流入することで発電するタービン型の発電機(発電手段)6が設けられている。
ところで、液化窒素が気化して窒素ガスとなる場合、体積が膨張するようになる。よって、配管4内が膨張した窒素ガスによって満たされることで、前記配管4内には高圧窒素ガスが発生するようになっている。
よって、前記発電機6は、高圧の窒素ガスによって駆動することで発電するようになっている。
【0022】
前記熱交換部5と前記発電機6との間の配管4には、前記発電機6に流入する前の窒素ガスの入力圧力Pinを測定するための圧力計8aが設けられている。また、前記発電機6と前記窒素使用装置3との間の配管4には、発電に使用された後前記発電機6から出力される窒素ガスの出力圧力Poutを測定するための圧力計8bが設けられている。よって、発電機6によってPin−Poutの圧力変化のエネルギ量が、電気エネルギに変換されることで、前記発電機6が発電するようになっている。
【0023】
このような構成の基に、本発明の窒素供給システム1は、液化窒素を気化させて窒素ガスとした後、工場内に設けられた窒素使用装置3に供給するようになっている。
【0024】
次に、本発明の窒素供給システム1の使用形態について説明する。
まず、工場内で使用する液化窒素を貯留した窒素貯留タンク2から、例えば重力を利用することで、配管4内を液化窒素が流れ込む。そして、前述したように前記窒素貯留タンク2から前記配管4内に流れ込む液化窒素の量は一定となっているので、熱交換部5内には常に一定量の液化窒素が流れる。
【0025】
そして、前記配管4に設けられた前記熱交換部5を介して、工場内の廃熱を冷却した循環水と配管4内の液化窒素との熱交換を行う。ここで、前記熱交換部5によって気化される液化窒素の量は循環水の温度に依存するので、本実施形態においては、前記熱交換部5との熱交換には、前述したように循環水の温度が30℃となるように調節することで、液化窒素と循環水との熱交換量を略一定としている。
【0026】
工場内の廃熱を冷却するための循環水は、前述したように冷却槽25によって略一定の温度(25℃)となる。そして、この循環水は、工場内で発生した廃熱の量によって、冷却後の温度が変動する。なお、この循環水は冷却装置20の管路21内を、ポンプによって熱交換部5に向かって圧送される。
このとき、前記循環水の温度を前記管路21に設けた温度計22が検出する。このとき、工場内で発生した廃熱が低く冷却後の循環水の温度が予め設定した温度(30℃)よりも低い場合には、前記温度計22が検出した温度データに基づいて、温度制御部26からヒータHを制御することで循環水を加熱して、30℃の循環水とする。すなわち、ヒータHによって予め設定した温度の循環水とすることで、液化窒素と熱交換を行うことによって、前記循環水と前記液化窒素との間の熱交換量を一定とすることができる。
【0027】
また、前記循環水の温度を前記管路21に設けた温度計22が検出した際に、工場内で発生した廃熱が高く冷却後の循環水の温度が予め設定した温度(30℃)よりも高い場合には、前記温度計22が検出した温度データに基づいて、前記流量制御部27が熱交換部5を迂回するバイパス管23aの流量調節弁23の開度を制御することで循環水の流量を調節し、このバイパス管23a内に循環水を流すことで、管路21内に流れる循環水の流れを分岐する。そして、熱交換器5に供給する循環水の量を減少させる。すると、単位流量辺りの熱量が高い循環水の流量を減らすことで、前記熱交換器5に供給する熱交換量を、予め設定した温度における循環水が持つ熱交換量と等しくすることができる。
よって、前記熱交換部5に供給する熱媒の持つ熱交換量を略一定とし、前記熱媒と液化窒素との熱交換量を一定とすることができる。
また、バイパス管23a内を流れた循環水は、管路21の合流部24bにて再び合流する。そして、前記熱交換部5によって液化窒素と熱交換した後の循環水は、前記冷熱槽25で一定時間貯留し、一定の温度(25℃)になるまで自然冷却される。このようにして、前記冷却装置20は、常に一定温度(25℃)の循環水で工場内の廃熱を冷却し、廃熱に対する熱交換量を一定とすることができる。よって、冷却装置20は、工場の廃熱に対して信頼性の高い熱交換能力を備えたものとなる。
また、前記冷却装置20は、廃熱の冷却に利用した循環水を液化窒素との熱交換に利用し、熱交換後の循環水を排出することなく工場内の廃熱に循環させているので、循環水を効率的に利用し、環境に与える負荷を無くすようにしている。
【0028】
ところで、配管4に設けられた熱交換部5に液化窒素との熱交換量が略一定となるように循環水を供給することで、液化窒素を気化しているので、配管4内には前記熱交換量に対応した一定量の窒素ガスが発生する。
ここで、窒素ガスの体積は、例えば常圧の条件では液化窒素の体積の約700倍に膨張する。したがって、前記配管4内で膨張した窒素ガスは、この配管4内で高圧の窒素ガスとなる。このようにして発生した窒素ガスは、配管4内を流れて発電機6に流入する。本実施例では、このとき、前記発電機6に流入した窒素ガスの圧力は、20kg/cmとなっている。
【0029】
すなわち、発電機6は、高圧の窒素ガスが流入することでタービン部が回転することで駆動し発電する。このとき、発電された電力は、例えば工場内の照明を点ける電力として利用したり、前記ヒータHを動作するための電力として利用することができる。
そして、前記発電機6によって電力に変換された後の窒素ガスの圧力は、圧力計8bから、7kg/cmとなる。すなわち、差圧分となる13kg/cmの窒素ガスのエネルギが発電機6を回転駆動させることで、電力として変換されたことになる。
また、発電機6から出力された後の窒素ガスの圧力(7kg/cm)は、窒素使用装置3に圧送されるまでに配管4内における圧損分を含んだ圧力となっている。
【0030】
前述したように、本発明の窒素供給システム1は、前記熱交換部5と液化窒素との熱交換量を一定となるようにして、窒素ガスを発生しているので、発電機6に流入する窒素ガスの圧力は、常に20kg/cmとなる。
また、本発明では、前記発電機6が発電する際に窒素ガスのエネルギの使用量(13kg/cm)を一定とした。よって、前記発電機6で発電した後の窒素ガスの圧力は所定の一定値(7kg/cm)となる。
従来は工場に窒素ガスの圧力を供給するために必要な移送ポンプが設けてあり、その移送ポンプにより窒素ガスの圧力を7kg/cmまで加圧していた。そこで、本実施例では、発電機で発電した後の窒素ガスの圧力が7kg/cmとなるように調節した。
したがって、前記発電後の窒素ガスの圧力を所定の一定値とすることで、配管4に窒素ガスを圧送するための移送ポンプを設けることなく窒素ガスを前記配管4内に安定的に圧送することができ、窒素ガスの移送経路の構造を簡略化することができる。よって、例えば窒素貯留タンク2から略一定の圧力の窒素ガスを安定し確実に供給することができる。
このようにして、窒素貯留タンク2から液化窒素を工場内に設けられた窒素使用装置3に安定供給することができる。
【0031】
本発明の窒素供給システム1によれば、配管4に設けられた熱交換部5を介して、液化窒素と工場から発生した廃熱を冷却する循環水との熱交換量が略一定となるように液化窒素を気化させているので、配管4内には前記熱交換量に対応した略一定量の高圧窒素ガスが発生するようになる。
本発明の窒素供給システム1によれば、熱交換部5に工場の廃熱を冷却した後の循環水を供給することで、この循環水と熱交換部5との熱交換量が略一定となるように液化窒素を気化しているので、配管4内には前記熱交換量に対応した略一定量の窒素ガスが発生するようになる。
そして、このような一定圧力の高圧窒素ガスが流入することで発電機6を駆動することで、一定の発電量を得ることができる。また、配管4に一定圧力の窒素ガスを供給するため窒素ガスを圧送するための移送ポンプを不要にでき、配管4の構造を簡単にできる。
よって、例えば貯留タンク2から略一定の圧力の窒素ガスを安定し、確実に窒素使用装置3に供給することができる。
【0032】
また、廃熱源としての工場が生成した廃熱を、例えば余分な電力等の廃熱を冷却する循環水を液化窒素を気化させる際に利用しているので、工場の廃熱から得られるエネルギを効率的に利用できる。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本実施形態においては、工場内の廃熱が低い場合に、温度調整手段としてヒータHを用いて循環水を加熱することで、熱交換量を一定にするようにしたが、例えば循環水がバイパス管23及び管路21に流れるようにしておくことで、前記バイパス管23を流れる循環水の流量を流量調節弁23によって調節し、熱交換部5に供給される循環水を増加させることで、循環水と液化窒素との熱交換量を一定にするようにしてもよい。
また、本実施形態においては、工場内の廃熱が高い場合に、バイパス管23aと流量調節弁23とを用いることで、熱交換部5に供給する循環水の流量を減少させて熱交換量を一定にするようにしたが、例えば冷却器を循環水の管路21に設けることで、循環水を冷却することで、循環水と液化窒素との熱交換量を一定にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】窒素供給システムを示す模式図。
【符号の説明】
【0035】
1…窒素供給システム、2…窒素貯留タンク(貯留タンク)、4…配管、
5…熱交換部、6…発電機(発電手段)、20…冷却装置(熱交換手段)、
22…温度計(温度検出手段)、25…冷熱槽、26…温度制御部、
27…流量制御部、H…ヒータ(温度調節手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化窒素を貯留した貯留タンクと、該貯留タンクから前記液化窒素を移送する配管と、を備えた窒素供給システムであって、
前記配管に設けられて、該配管中を流れる前記液化窒素と熱交換することで該液化窒素を気化させるための熱交換部と、
廃熱源を冷却した後の熱媒を前記熱交換部に供給するとともに、供給した熱媒の前記熱交換部での熱交換量を、略一定にする熱交換手段と、
前記配管の、前記熱交換部より下流側に設けられて、前記熱交換部で熱交換されて気化した窒素ガスが流入することで発電する発電手段と、を備えたことを特徴とする窒素供給システム。
【請求項2】
前記廃熱源の廃熱が工場で生成した廃熱であることを特徴とする請求項1に記載の窒素供給システム。
【請求項3】
前記熱交換手段が、前記熱交換部で前記液化窒素との熱交換を行う前の熱媒の温度を検出する前記温度検出手段と、前記熱交換部に供給される熱媒の温度を調節する温度調節手段と、前記温度検出手段の結果を基に前記温度調節手段を制御し、前記熱媒が予め設定した温度となるように制御する温度制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒素供給システム。
【請求項4】
前記熱交換手段が、前記熱交換部で前記液化窒素との熱交換を行う前の熱媒の温度を検出する温度検出手段と、前記熱交換部での熱媒の流量を調節する流量調節手段と、前記温度検出手段の結果を基に前記流量調節手段を制御する流量制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の窒素供給システム。
【請求項5】
前記熱交換手段が、前記熱交換部で熱交換した後の熱媒を前記廃熱源に循環することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の窒素供給システム。
【請求項6】
前記熱交換手段が、前記熱交換部で熱交換した後の熱媒を冷却する冷却槽を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の窒素供給システム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−194337(P2006−194337A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−6013(P2005−6013)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】