説明

窯業建材用多孔質材料、窯業建材およびそれらの製造方法

【課題】表面の凹凸が大きく、シャープな模様を有する窯業建材を抄造法によって製造するために使用される窯業建材用多孔質材料、それを用いた窯業建材およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】多孔質材料が、多孔質材料が、第1の圧力により圧縮される第1圧縮工程と、多孔質材料が、第1の圧力より高い第2の圧力により圧縮される第2圧縮工程と、を含んで製造される窯業建材の、製造材料用の多孔質材料であって、少なくとも2種類の、第1の圧力および第2の圧力による体積縮小率が異なる多孔質材料を含み、体積縮小率が、元の圧力のときの体積に対する所定の圧力を載荷することによって縮小した部分の体積の比である、窯業建材用多孔質材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式抄造法により製造される窯業建材の原料に好適に用いられる多孔質材料、それを用いた窯業建材およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁用の外装材には、従来から、窯業建材が広く使用されている。窯業建材の製造方法の一つである湿式抄造法では、原料に、セメント等の水硬性粉末、パルプやビニロン等の補強繊維、軽量化や抄造時の濾水性を改善するとともに、窯業建材の軽量化をはかるためのパーライト等の多孔質材料である軽量骨材を使用する。これら原料の混合物を水に分散させてスラリーとし、このスラリーを抄造して、グリーンシートを形成する。このグリーンシートをメーキングロールと呼ばれるドラム状の脱水機等で脱水する。更に成型機により高圧プレスして意匠性を高めるために模様を付ける。その後、養生、乾燥、裁断、塗装仕上げの工程を経て、窯業建材が製造される。このような抄造法による建材の製造方法は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
メーキングロールで加圧・脱水する工程において、グリーンシートが受ける圧力は、概ね1.0N/mmである。この工程では、多孔質材料ができるだけ圧潰しないことが望ましい。多孔質材料が圧潰すると、多孔質材料の使用目的である濾水性の改善効果が損なわれ、グリーンシート内に、局所的な水の抜け道が形成され、その後の養生、乾燥工程で、厚さ方向の層間剥離が発生する割合が高くなる等の問題が生じることが多い。さらに、多孔質材料による窯業建材の軽量化の効果も不十分となる。
【0004】
また、窯業建材は、近年、意匠性の高い製品が望まれるようになり、表面の凹凸が大きく、シャープな模様を有するものの需要が大幅に増大している。表面の凹凸が大きく、シャープな模様を付けるためには、成型機で型付けする際の圧力を高くする必要がある。しかしながら、このような成型を行うことができる成型機の設備コストは高いという問題がある。それに加えて、抄造法で得られるグリーンシートは比較的含水率が高いため、加圧の圧力が高すぎると脱水による水の抜け道が形成されるために、その後の養生、乾燥工程において厚さ方向に層間剥離が発生する割合が高くなるという問題がある。さらに、グリーンシートを高圧で加圧した場合、圧力による変形が元に戻る現象(いわゆるスプリングバック)が発生して、シャープな凹凸模様を形成することが困難であるという問題もある。
【0005】
一方、特許文献2には、塗装に頼ることなく、高い意匠性を備えた凹凸模様を付与することができる無機質板の製造方法と、それにより製造された表面に凹凸模様を有する無機質板に関する技術が開示されている。具体的には、セメントおよび骨材を主成分とするグリーンシートを加圧成型して、グリーンシート表面に凹凸模様を付与する無機質板の製造方法において、骨材の一部として、加圧成型時にグリーンシートの凹凸模様の凹部における加圧圧力により破壊する模様付け軽量骨材を用いる無機質板の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−130946号公報
【特許文献2】特開2003−236820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、軽量で、表面の凹凸が大きく、シャープな模様を有する窯業建材を抄造法によって製造するために使用される窯業建材用多孔質材料、それを用いた窯業建材およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、次のような特性を有する多孔質材料を、抄造法で製造される窯業建材の原料の軽量骨材として使用することにより、軽量性を保ちつつ、表面の凹凸が大きく、シャープな模様を有する窯業建材を製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、多孔質材料が、第1の圧力により圧縮される第1圧縮工程と、
多孔質材料が、第1の圧力より高い第2の圧力により圧縮される第2圧縮工程と、
を含んで製造される窯業建材の、製造材料用の多孔質材料であって、
少なくとも2種類の、第1の圧力および第2の圧力による体積縮小率が異なる多孔質材料を含み、体積縮小率が、元の圧力のときの体積に対する所定の圧力を載荷することによって縮小した部分の体積の比である、窯業建材用多孔質材料である。
【0009】
好ましくは、多孔質材料が、
第1の圧力による体積縮小率が30%以下、かつ、第2の圧力による体積縮小率が50%以下である多孔質材料Aと、
第1の圧力による体積縮小率が35%以上、かつ、第2の圧力による体積縮小率が60%以上である多孔質材料Bと、
を含み、体積縮小率が、元の圧力のときの体積に対する所定の圧力を載荷することによって縮小した部分の体積の比である、窯業建材用多孔質材料である。
【0010】
また、好ましくは、第1の圧力が、0.8〜1.2N/mmであり、第2の圧力が、3.5〜4.5N/mmである、窯業建材用多孔質材料である。
【0011】
また、好ましくは、多孔質材料が、
圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が30%以下、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が50%以下である多孔質材料Aと、
圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が35%以上、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が60%以上である多孔質材料Bと、
を含む、窯業建材用多孔質材料である。
【0012】
また、好ましくは、多孔質材料Aと多孔質材料Bとの合計質量100質量%に対して、多孔質材料Aの割合が、20〜90質量%である、窯業建材用多孔質材料である。また、好ましくは、多孔質材料が、パーライト、珪藻土、シラスバルーン、石炭ガス化スラグを加熱発泡させた軽量骨材、ガラスバルーン、アルミナバブル、フライアッシュバルーンおよび焼成ひる石から選択される少なくとも1つである、窯業建材用多孔質材料である。また、好ましくは、多孔質材料が、単位容積質量0.02〜0.5kg/リットルのパーライトである、窯業建材用多孔質材料である。また、好ましくは、パーライトが、黒曜石、真珠岩および松脂岩系パーライトから選択される少なくとも1つである、窯業建材用多孔質材料である。
【0013】
また、本発明は、窯業建材用多孔質材料を含む、窯業建材である。
【0014】
また、本発明は、圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が、30%以下、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が、50%以下である多孔質材料A、および
圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が、35%以上、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が、60%以上である多孔質材料Bを、それぞれ選別する選別工程と、
多孔質材料Aと多孔質材料Bとを混合する混合工程と
を含み、体積縮小率が、元の圧力のときの体積に対する所定の圧力を載荷することによって縮小した部分の体積の比である、窯業建材用多孔質材料の製造方法である。
【0015】
好ましくは、混合工程が、多孔質材料Aと多孔質材料Bとの合計質量100質量%に対して、多孔質材料Aを20〜90質量%の割合で混合する工程である、窯業建材用多孔質材料の製造方法である。また、好ましくは、体積縮小率が、直径40mm、高さ80mmの円筒容器に多孔質材料を充填した後、プランジャーを用いて多孔質材料に圧力を加えたときの多孔質材料の体積変化に基づき測定される、窯業建材用多孔質材料の製造方法である。
【0016】
また、好ましくは、多孔質材料が、パーライト、珪藻土、シラスバルーン、石炭ガス化スラグを加熱発泡させた軽量骨材、ガラスバルーン、アルミナバブル、フライアッシュバルーンおよび焼成ひる石から選択される少なくとも1つである、窯業建材用多孔質材料の製造方法である。また、好ましくは、多孔質材料が、単位容積質量0.02〜0.5kg/リットルのパーライトである、窯業建材用多孔質材料の製造方法である。また、好ましくは、パーライトが、黒曜石、真珠岩および松脂岩系パーライトから選択される少なくとも1つである、窯業建材用多孔質材料の製造方法である。
【0017】
また、本発明は、多孔質材料が、第1の圧力により圧縮される第1圧縮工程と、
多孔質材料が、第1の圧力より高い第2の圧力により圧縮される第2圧縮工程と、
を含む窯業建材の製造方法であって、
多孔質材料が、多孔質材料である、窯業建材の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の窯業建材用多孔質材料、それを用いた窯業建材およびそれらの製造方法により、軽量で、表面の凹凸が大きく、シャープな模様を有する窯業建材を抄造法によって製造することができることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、窯業建材を抄造法によって製造するのに適した窯業建材用多孔質材料、それを用いた窯業建材およびそれらの製造方法である。
【0020】
湿式抄造法、特に長網法を用いた窯業建材の製造方法では、パーライト等の多孔質材料を含む原料スラリーを抄造し、得られたグリーンシートを、メーキングロールと呼ばれるドラム状の脱水機等で加圧・脱水する。その後、さらに成型機を用いて、高圧で加圧することによりグリーンシート表面に凹凸模様を形成する。その後、養生、乾燥、裁断、塗装仕上げして、窯業建材が製造される。メーキングロールで加圧・脱水する工程でグリーンシートが受ける圧力は、概ね1.0N/mmであり、この工程では、多孔質材料ができるだけ圧潰しないことが望ましい。多孔質材料が圧潰すると、多孔質材料の使用目的である濾水性の改善効果が損なわれ、グリーンシート内に、局所的な水の抜け道が形成され、その後の養生、乾燥工程で、厚さ方向の層間剥離が発生する割合が高くなる等の問題が生じてしまうためである。さらに、多孔質材料による軽量化の効果も不十分となる。
【0021】
一方、成型機を用いて、高圧で加圧することによりグリーンシート表面に凹凸模様を付ける工程では、概ね4.0N/mmの圧力がグリーンシートに加わる。この工程では、特にグリーンシートの凹部に成型圧力が加わり、その部分に含まれる多孔質材料が一気に圧潰する特性を有することが望ましい。このような特性を有すると、グリーンシートのスプリングバックが無く、シャープな凹凸模様を有する窯業建材を製造することが可能となる。さらに、成型機の能力を過剰に高める必要が無いため、設備コストの低減にもつながる。しかしながら、一種類の多孔質材料おいては、加える圧力と圧潰量との間には、一般的に、直線的な相関関係しかないため、上記のような特性を得ることができなかった。
【0022】
そこで、本発明者は、圧潰強度の異なる二種類の多孔質材料を混合することにより、メーキングロールを用いて加圧・脱水する工程での圧力では圧潰しにくく、成型機の圧力で一気に圧潰する特性を有する多孔質材料を得ることができることを見出した。
【0023】
すなわち、窯業建材の製造のために用いる多孔質材料が、2種類の多孔質材料(圧潰強度が高い多孔質材料Aと圧潰強度が低い多孔質材料B)を混合して含む場合、グリーンシートの脱水を行なうために加圧する1.0N/mm程度の低い圧力を載荷した時には、圧潰強度が低い多孔質材料Bが潰れることにより、圧潰強度の高い多孔質材料Aの潰れを緩和することができる。また、圧潰強度が低い多孔質材料Bは、全体の多孔質材料の一部しか混合されていないため、多孔質材料Aと多孔質材料Bの混合物が潰れる絶対量は、多孔質材料Bを単独で使用した場合に比べて、大幅に少なくすることができる。
【0024】
一方、凹凸模様を付ける4.0N/mm程度の高圧を載荷する過程でグリーンシートの凹部では、圧潰強度が低い多孔質材料Bの大部分が潰れるのに加え、多孔質材料Bによる緩衝効果がなくなり、圧潰強度が高い多孔質材料Aも単独で使用した場合と同程度潰れるため、多孔質材料Bによる潰れも加わる。そのため、多孔質材料Aと多孔質材料Bの混合物が潰れる絶対量は、多孔質材料Aを単独で使用した場合よりも大幅に増大することとなる。多孔質材料がこのような圧潰特性を有すると、シャープな凹凸模様を有する窯業建材を製造することが可能となる。また、高圧を載荷する過程でグリーンシートの凸部には凹部のような高圧が載荷されないため、先工程の低圧の載荷によっても破壊せずに残存していた多孔質材料Aは、高圧の載荷過程でも破壊せずに大半が残存し、窯業建材に良好な軽量性を保持させることが可能となる。
【0025】
以下、本発明について、具体的に説明する。なお、本明細書では、元の圧力(圧力を載荷しない状態)のときの体積と、所定の圧力を載荷することによって縮小した部分の体積との比を「体積縮小率」という。すなわち、体積縮小率は、圧力の載荷により縮小した部分の体積を、元の圧力のときの体積で割った値である。体積縮小率と圧潰強度とは直接的な関係があり、体積縮小率が小さい場合には、所定の圧力を載荷したときの体積の収縮は小さく、したがって圧潰強度が高いといえる。また、体積縮小率が大きい場合には、所定の圧力を載荷したときの体積の収縮は大きく、したがって圧潰強度が小さいといえる。
【0026】
本発明は、窯業建材用の多孔質材料に関するものである。窯業建材を製造する際に、その原料となる多孔質材料は、ある圧力(以下、「第1の圧力」という)により圧縮される工程(以下、「第1圧縮工程」という)において、脱水のために圧縮される。その後、その多孔質材料は、第1の圧力より高い圧力(以下、「第2の圧力」という)により圧縮される工程(以下、「第2圧縮工程」という)において圧縮され、凹凸模様が形成される。本発明は、これらの工程を経て製造される窯業建材において、その窯業建材の製造材料用の多孔質材料が、少なくとも2種類の、異なる体積縮小率を有する多孔質材料を含むことに特徴がある。そのため本発明の多孔質材料は、上述のような、シャープな凹凸模様を有する窯業建材を製造することが可能となるような圧潰特性を有することとなる。
【0027】
また、別の態様において、本発明の窯業建材用多孔質材料には、所定の2種類の多孔質材料、すなわち多孔質材料Aおよび多孔質材料Bが含まれる。ここで、多孔質材料Aは、第1の圧力による体積縮小率が30%以下、かつ、第2の圧力による体積縮小率が50%以下である。また、多孔質材料Bは、第1の圧力による体積縮小率が35%以上、かつ、第2の圧力による体積縮小率が60%以上である。このように、2種類の多孔質材料において、所定の圧力を載荷した場合における体積縮小率がそれぞれ所定の値であると、上記のような2つの圧縮工程の際に、多孔質材料がそれぞれ所定の圧潰をすることができる。
【0028】
第1の圧力および第2の圧力の具体的な値は、窯業建材の種類により異なる。しかし、脱水を適切に行い、所定の模様を有する窯業建材を得るためには、一般的に、第1の圧力が、0.8〜1.2N/mm(1.0±0.2N/mm)であり、第2の圧力が、3.5〜4.5N/mm(4.0±0.5N/mm)であることが好ましい。
【0029】
また、別の態様において、本発明の窯業建材用多孔質材料には、2種類の多孔質材料、すなわち多孔質材料Aおよび多孔質材料Bが含まれる。このとき、多孔質材料Aは、圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が30%以下、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が50%以下である。また、多孔質材料Bは、圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が35%以上、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が60%以上である。このように、2種類の多孔質材料において、所定の圧力を載荷した場合における体積縮小率がそれぞれ所定の値であると、上記のような2つの圧縮工程の際に、多孔質材料がそれぞれ所定の圧潰をすることができる。
【0030】
また、多孔質材料Aと多孔質材料Bとの割合は、多孔質材料Aと多孔質材料Bとの合計質量(100質量%)に対して、多孔質材料Aの割合が、20〜90質量%であることが好ましい。多孔質材料Aの割合は、好ましくは、30〜90質量%、さらに好ましくは、40〜85質量%、より好ましくは、50〜80質量%、特に好ましくは、55〜75質量%である。多孔質材料中の多孔質材料Aの割合が、このような、より好ましい割合の場合、上記のような2つの圧縮工程の際に、多孔質材料のそれぞれ所定の圧潰を、より確実に行うことができ、より表面の凹凸が大きく、よりシャープな凹凸模様を形成することができる。
【0031】
多孔質材料は、窯業建材用に用いることができるものであれば、その種類は問わない。例えば、多孔質材料として、パーライト、珪藻土、シラスバルーン、ガラスバルーン、アルミナバブル、フライアッシュバルーンおよび焼成ひる石を用いることができる。シラスバルーンとは、シラスと呼ばれる白色砂質堆積物を特殊な条件で加熱し、微細中空ガラス球としたものであり、安価で軽いために、超高層ビルに用いられるコンクリート建材の軽量化材などに用いられている。また、多孔質材料として、石炭ガス化スラグを加熱発泡させた軽量骨材を用いることもできる。また、多孔質材料は、上記の材料から1種類を選択して用いてもよいし、複数の材料を混合して用いてもよい。
【0032】
材料調達の容易性およびコストの観点から、多孔質材料は、パーライトであることが好ましい。窯業建材は軽量であることが好ましいので、多孔質材料は単位容積質量0.02〜0.5kg/リットルの多孔質材料、特にパーライトであることが好ましい。パーライトは黒曜石、真珠岩、松脂岩等の天然ガラスを急速加熱し発泡させて得られる粉粒体であり、左官材やボード等の建材用途の分野において、軽量骨材として広く使用されている。しかし、パーライトは発泡体であるため、軽量ではあるが強度が弱い。そのため、1種類のパーライトを用いる場合、製造工程において加圧成形等を行うと、パーライトが容易に潰れてしまう欠点がある。本発明のように、少なくとも2種類の異なる体積縮小率を有する多孔質材料(パーライト)を窯業建材の材料として用いることにより、このような1種類のパーライトを用いる場合に生じていた欠点を克服することができる。
【0033】
また、パーライトは、黒曜石、真珠岩および松脂岩系パーライトから選択される少なくとも1つであることが好ましい。パーライトの圧潰強度は、パーライト原石の種類や産地に由来する。そのため、黒曜石、真珠岩、松脂岩の中から、前記特性を有するパーライトを選定し、使用することができる。
【0034】
上述した本発明の窯業建材用多孔質材料は、窯業建材の原料として用いることができる。その際、本発明の窯業建材は、本発明の窯業建材用多孔質材料を2〜20%含むことができる。また、本発明の窯業建材には、必要に応じて、珪砂、珪石粉等の混和材、増粘剤、消泡剤、減水剤、遅延剤等の混和剤、アクリル粉末やEVA等の樹脂、フライアッシュ、シリカフューム等の潜在水硬性材料、寒水石粉や石灰石粉等の増量剤等を含んでもよい。本発明の窯業建材は、具体的には、セメントを20〜50%、フライアッシュを10〜50%、有機繊維を0〜5%、再生粉を0〜20%、パルプを0〜20%含むことができる。
【0035】
次に、本発明の窯業建材用多孔質材料の製造方法について述べる。窯業建材用多孔質材料の製造方法は、多孔質材料Aと多孔質材料Bとを混合する混合工程を含む。ここで多孔質材料Aは、圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が30%以下、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が50%以下である。また、多孔質材料Bは、圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が35%以上、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が60%以上である。
【0036】
また、この混合工程において、多孔質材料Aと多孔質材料Bとの合計質量(100質量%)に対して、多孔質材料Aを20〜90質量%の割合で混合することが好ましい。
【0037】
また、体積縮小率は、直径40mm、高さ80mmの円筒容器に多孔質材料を充填した後、プランジャーを用いて多孔質材料に圧力を加えたときの多孔質材料の体積変化に基づき測定された値を用いることが好ましい。プランジャーで試料に圧力を加えて、圧力毎の試料の沈下量を測定し、下式により体積縮小率を算出することができる。なお、円筒容器の断面積は一定なので、沈下量は体積変化量と同等である。
体積縮小率(%)=〔試料の沈下量(mm)/80(mm)〕×100
【0038】
本発明の製造方法に用いる多孔質材料は、窯業建材用に用いることができるものであれば、その種類は問わない。例えば、多孔質材料として、パーライト、珪藻土及びシラスバルーン、ガラスバルーン、アルミナバブル、フライアッシュバルーンおよび焼成ひる石等を用いることができる。また、多孔質材料として、石炭ガス化スラグを加熱発泡させた軽量骨材を用いることもできる。多孔質材料は、上記の材料から1種類を選択して用いることができ、また、これらのうちの複数を混合して用いてもよい。
【0039】
窯業建材は、軽量であることが好ましいので、本発明の製造方法に用いる多孔質材料は、単位容積質量0.02〜0.5kg/リットルの多孔質材料、特にパーライトであることが好ましい。
【0040】
パーライトを本発明の製造方法に用いる場合には、黒曜石、真珠岩および松脂岩系パーライトから選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0041】
次に、本発明の窯業建材の製造方法について説明する。本発明の多孔質材料は、窯業建材の製造方法が、第1の圧力により圧縮される第1圧縮工程と、第1の圧力より高い第2の圧力により圧縮される第2圧縮工程とを有する場合に、優れた効果を発揮する。このような製造方法の具体例としては、湿式抄造法の一種である丸網抄造法や長網抄造法が知られている。
【0042】
丸網抄造法や長網抄造法では、パーライト等の多孔質材料を含む原料スラリーを抄造し、得られたグリーンシートを、メーキングロールと呼ばれるドラム状の脱水機等で加圧・脱水する。このときに多孔質材料の受ける圧力が、「第1の圧力」に相当する。その後、さらに成型機を用いて、高圧で加圧成型することによりグリーンシート表面に凹凸模様を形成する。この加圧成型の際の圧力が、「第2の圧力」に相当する。
【0043】
以上、本発明について述べたが、本発明の範囲は上記内容にとどまらず、当業者にとって容易な、様々な変更を含むものである。例えば、三回以上の圧縮工程を有するような場合には、3種類以上の異なった体積縮小率を有する多孔質材料を用いることもできる。
【実施例1】
【0044】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明の多孔質材料の製造について具体的に説明する。
【0045】
原料となる多孔質材料Aとして、中国産松脂岩を0.6mm以下に粉砕して、竪型気流焼成炉で焼成・発泡させて、JISA5007に準拠して測定した単位容積質量が0.256kg/リットルのパーライトAを製造した。得られたパーライトAを、直径40mm、高さ80mmの円筒容器に充填した後、プランジャーで試料に圧力を加えて、圧力毎の試料の沈下量を測定し、下式により体積縮小率を算出した。
体積縮小率(%)=〔試料の沈下量(mm)/80(mm)〕×100
【0046】
パーライトAの、プランジャーによる圧力1.0N/mmを載荷したときの体積縮小率は23.2%、圧力4.0N/mmを載荷したときの体積縮小率は45.8%であった。
【0047】
原料となる多孔質材料Bとして、大分県産真珠岩を0.6mm以下に粉砕して、竪型気流焼成炉で焼成・発泡させて、単位容積質量0.217kg/リットルのパーライトBを製造した。上記と同様にして、圧力毎の試料の沈下量を測定し、体積縮小率を求めた。プランジャーによる圧力1.0N/mmを載荷したときの体積縮小率は40.2%、圧力4.0N/mmを載荷したときの体積縮小率は66.2%であった。
【0048】
パーライトAとパーライトBを質量比で75:25(実施例1)、50:50(実施例2)および25:75(実施例3)で混合して、上記と同様に単位容積質量および体積縮小率を求めた。その結果を表1に示す。また、表1の数値を用いて、体積縮小率と、パーライトAとパーライトBの質量比との関係を図示したものを図1に示す。なお、図1に示す破線は、2種類のパーライト(多孔質材料)を混合した際に、その相乗効果が得られないと仮定した場合の理論直線である。この理論直線と実測値の乖離dが大きいほど、2種類のパーライト(多孔質材料)を混合した効果、すなわち本発明の優れた効果を発揮することができることを示している。また、これらのことから、多孔質材料A(パーライトA)と多孔質材料B(パーライトB)との質量比が少なくとも20:80〜90:10の範囲において、本発明の効果の発揮が比較的顕著であることが明らかである。
【0049】
表1および図1に示すように、体積縮小率が小さい、すなわち圧潰強度の高いパーライトAと、体積縮小率が大きい、すなわち圧潰強度の低いパーライトBを混合して使用することにより、窯業建材用多孔質材料として好適に使用することができることがわかる。この窯業建材用多孔質材料を用いて窯業建材を抄造法によって製造すると、軽量性を保ちつつ、表面の凹凸が大きく、シャープな模様を有する窯業建材を得ることができる。
【0050】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】体積縮小率と、パーライトAとパーライトBの質量比との関係を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料が、第1の圧力により圧縮される第1圧縮工程と、
多孔質材料が、第1の圧力より高い第2の圧力により圧縮される第2圧縮工程と、
を含んで製造される窯業建材の、製造材料用の多孔質材料であって、
少なくとも2種類の、第1の圧力および第2の圧力による体積縮小率が異なる多孔質材料を含み、体積縮小率が、元の圧力のときの体積に対する所定の圧力を載荷することによって縮小した部分の体積の比である、窯業建材用多孔質材料。
【請求項2】
多孔質材料が、
第1の圧力による体積縮小率が30%以下、かつ、第2の圧力による体積縮小率が50%以下である多孔質材料Aと、
第1の圧力による体積縮小率が35%以上、かつ、第2の圧力による体積縮小率が60%以上である多孔質材料Bと、
を含み、体積縮小率が、元の圧力のときの体積に対する所定の圧力を載荷することによって縮小した部分の体積の比である、請求項1記載の窯業建材用多孔質材料。
【請求項3】
第1の圧力が、0.8〜1.2N/mmであり、
第2の圧力が、3.5〜4.5N/mmである、
請求項2記載の窯業建材用多孔質材料。
【請求項4】
多孔質材料が、
圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が30%以下、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が50%以下である多孔質材料Aと、
圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が35%以上、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が60%以上である多孔質材料Bと、
を含む、請求項1記載の窯業建材用多孔質材料。
【請求項5】
多孔質材料Aと多孔質材料Bとの合計質量100質量%に対して、多孔質材料Aの割合が、20〜90質量%である、請求項2〜4記載の窯業建材用多孔質材料。
【請求項6】
多孔質材料が、パーライト、珪藻土、シラスバルーン、石炭ガス化スラグを加熱発泡させた軽量骨材、ガラスバルーン、アルミナバブル、フライアッシュバルーンおよび焼成ひる石から選択される少なくとも1つである、請求項1〜5記載の窯業建材用多孔質材料。
【請求項7】
多孔質材料が、単位容積質量0.02〜0.5kg/リットルのパーライトである、請求項1〜6記載の窯業建材用多孔質材料。
【請求項8】
パーライトが、黒曜石、真珠岩および松脂岩系パーライトから選択される少なくとも1つである、請求項6または7記載の窯業建材用多孔質材料。
【請求項9】
請求項1〜8記載の窯業建材用多孔質材料を含む、窯業建材。
【請求項10】
圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が、30%以下、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が、50%以下である多孔質材料A、および
圧力1.0N/mmの載荷による体積縮小率が、35%以上、かつ、圧力4.0N/mmの載荷による体積縮小率が、60%以上である多孔質材料Bを、それぞれ選別する選別工程と、
多孔質材料Aと多孔質材料Bとを混合する混合工程と
を含み、体積縮小率が、元の圧力のときの体積に対する所定の圧力を載荷することによって縮小した部分の体積の比である、窯業建材用多孔質材料の製造方法。
【請求項11】
混合工程が、多孔質材料Aと多孔質材料Bとの合計質量100質量%に対して、多孔質材料Aを20〜90質量%の割合で混合する工程である、請求項10記載の窯業建材用多孔質材料の製造方法。
【請求項12】
体積縮小率が、直径40mm、高さ80mmの円筒容器に多孔質材料を充填した後、プランジャーを用いて多孔質材料に圧力を加えたときの多孔質材料の体積変化に基づき測定される、請求項10または11記載の窯業建材用多孔質材料の製造方法。
【請求項13】
多孔質材料が、パーライト、珪藻土、シラスバルーン、石炭ガス化スラグを加熱発泡させた軽量骨材、ガラスバルーン、アルミナバブル、フライアッシュバルーンおよび焼成ひる石から選択される少なくとも1つである、請求項10〜12記載の窯業建材用多孔質材料の製造方法。
【請求項14】
多孔質材料が、単位容積質量0.02〜0.5kg/リットルのパーライトである、請求項10〜13記載の窯業建材用多孔質材料の製造方法。
【請求項15】
パーライトが、黒曜石、真珠岩および松脂岩系パーライトから選択される少なくとも1つである、請求項13または14記載の窯業建材用多孔質材料の製造方法。
【請求項16】
多孔質材料が、第1の圧力により圧縮される第1圧縮工程と、
多孔質材料が、第1の圧力より高い第2の圧力により圧縮される第2圧縮工程と、
を含む窯業建材の製造方法であって、
多孔質材料が、請求項1〜8記載の多孔質材料である、窯業建材の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−29643(P2009−29643A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193123(P2007−193123)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】