説明

窯業用スライド万線転写紙の製造方法とそれを用いて製造した窯業製品。

【課題】 従来、万線印刷の応用としては銀行券、株券、有価証券、通行券、カード等の偽造、変造を防止する必要性のあるものが対象であった。本発明は陶磁器、ガラスやホーローなどのセラミック製品に万線図柄を安価に精度良く且つ耐久性が良く転写し、高温で焼成しても立体感のある万線図柄を形成する事にあった。
【解決手段】 スクリーン印刷において製版の総厚(紗厚プラス乳剤厚)、乳剤の種類、インクの種類をお互いに組み合わせる事により、転写紙に印刷が可能となり且つ陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品に転写、高温で焼成しても万線効果が発揮できる製品が出来た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品の表面に絵付けを施すための窯業用万線転写紙の製造方法とそれを用いてなる万線図柄窯業製品。
【背景技術】
【0002】
万線印刷の大きな目的は、銀行券、株券、有価証券、通行券、カード等の偽造、変造を防止する必要性のあるものが対象である(特許文献1、特許文献2)。
【特許文献1】特開2004−209646
【特許文献2】特開2005−119098
【0003】
万線パターンの製造方法としては例えば万線パターン郡でなる微細な凹凸部が施されている金属板をロールに装着し、ダイスから押し出した溶融合成樹脂を金属板の装着されたロールに押し出し、冷却するなどの方法がある(特許文献3)。
【特許文献3】特開2007−118274
【0004】
又、模様などの印刷が施された紙容器の板紙上に、万線パターンを設けた板エンボス用の凹版を加熱および加圧により押圧し、板紙表面に万線パターンの表面加飾を施すなどの方法もある。
【特許文献4】特開2006−225004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明で言う万線とは立体(厚み5ミクロン以上)万線を使用することで、万線で構成される画像の表面の反射光を制御し、意図した画像を浮かび上がらせる効果を得るものである。
【0006】
万線印刷をスクリーン法で印刷形成する場合、そのほとんどが銀行券などの偽造防止を目的としていた。
【0007】
万線の図柄を形成する方法としては、例えば金型を用いたエンボス加工の様な手法では3次元や曲面もしくは凹凸のある陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品の表面に適応する事は不可能であった。
【0008】
同様に金型を用いて陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品に万線を形成する為には、金型の内側に万線図柄を作っておく必要があるがこの場合でも陶磁器などを高温で焼成するために使用する釉薬で万線図柄がつぶれ万線効果を出す事が出来なかった。
【0009】
本発明はスクリーン印刷を用いて従来不可能であった陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品に大量に精度良く且つ低コストで万線図柄を形成する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一般的な転写紙に反射率が高く焼成後に鏡面光沢のあるインクを使用し、250メッシュから420メッシュのSXスクリーン製版もしくはステンレススクリーン製版を用いて通常のスクリーン印刷機で総厚が45ミクロンから73ミクロンの範囲で且つ、万線図柄のパターンは線幅0.07mmから0.12mmで線と線の間隔も0.07mmから0.12mmの範囲で印刷し、その上にカバーコートを印刷した。
【0011】
印刷された転写紙を通常の水で絵柄を浮かせ、被転写物(陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品)にスライド水転写した。
【0012】
陶磁器用インクを使用した場合は摂氏800度で、又ガラス用インクを使用した場合は摂氏600度で10分〜15分焼成した。
【0013】
焼成された被印刷物の万線効果を目視で確認した。
【発明の効果】
【0014】
通常のスクリーン印刷インクはスクリーン印刷適性及び対候性を考慮すれば良かったが、万線効果を効率よく発揮させる為には印刷適性及び耐候性に加え、印刷インクの反射率が重要なポイントであり、鏡面光沢のあるインクを使用した。
【0015】
万線効果を発揮させる為にはスクリーン印刷精度を上げなければならない。本発明では、使用する製版を250メッシュから420メッシュを用いる事により立体的な良好な万線効果を得た。
【0016】
同じく製版の総厚(紗厚プラス乳剤厚)は45ミクロンから73ミクロンで最良なる立体感のある万線効果を確認できた。
【0017】
但し、製版のメッシュが250から420の範囲であり、且つ製版の総厚が45ミクロンから73ミクロンの範囲でも製版の乳剤種類の最適化やスキージオイルの最適化及び線幅や線と線の間隔も考慮しないと立体的な万線効果を得る事が出来ない。
【0018】
スクリーン印刷で万線効果を発揮させる為にはデザインも重要である。本発明では陶磁器などに転写し、焼成しても万線効果が確認できる図柄は線幅0.08mmから0.3mm、線と線の間隔0.08mmから0.3mmであった。(但し0.3mmについては実施例に明示していない)。
【0019】
線幅及び線と線の間隔の最適化を図っても、立体的な万線効果を発揮せしめる為には、上記のように製版のメッシュカウントや製版の総厚の効果的な組み合わせが必要である事はいうまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
スクリーン印刷で万線図柄パターンを転写紙に印刷し、陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品にスライド水転写し、焼成して立体感のある万線絵柄の上記製品を得る為に最良の方法を考案した。
以下実施例の結果を表1に記す。
【表1】

【実施例1】
【0021】
転写紙は丸繁紙工株式会社製SPAを使用した。
インクの調合はフリットとしてヘレウス株式会社製H15000を10部に対しスキージオイルは互応化学株式会社製OS−721を5部添加し、攪拌、調合した。
印刷機は株式会社桜井グラフィックスシステムズのシリンダー印刷機を使用した。
ゴム硬度80度のスキージを使用し、角度は15度とした。
印刷圧力は0.3MPaに設定した。
製版は株式会社ムラカミのSXスクリーンの300メッシュのノーマル張りを使用し、乳剤は互応化学工業株式会社製のプラスプリント235Eを使用し、紗厚と乳剤厚みの合計(総厚)は57ミクロンとした。万線の図柄は線幅0.12mm、線と線の間隔も0.12mmのパターンとした。
上記条件で転写紙(図1−101,102)に万線図柄をスクリーン印刷(図1−103)し、支持体として互応化学工業のLO−210をカバーコート(図1−104)として印刷形成した。
その転写紙を用い、被転写物として陶磁器製の白色皿にスライド水転写し、焼成後、立体感が出ているかの万線効果を目視で評価した。
【実施例2】
【0022】
実施例1において、製版を350メッシュのノーマル張りを使用し総厚を51ミクロンとする以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例3】
【0023】
実施例1において、製版を250メッシュのノーマル張りを使用し総厚を65ミクロンとする以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例4】
【0024】
実施例1において、製版を225メッシュのノーマル張りを使用し総厚を67ミクロンとする以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例5】
【0025】
実施例1において、製版を420メッシュのノーマル張りを使用し総厚を45ミクロンとする以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例6】
【0026】
実施例1において、乳剤を株式会社ムラカミのSP−9400とする以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例7】
【0027】
実施例1において、インクの調合はフリットとしてヘレウス株式会社製H15000を10部に対し、スキージオイルを互応化学株式会社製OS−7250を6部添加し、攪拌、調合した以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例8】
【0028】
実施例1において、製版を株式会社ムラカミのステンレススクリーンの300メッシュのノーマル張りを使用し、総厚を73ミクロンとする以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例9】
【0029】
実施例1において、製版を株式会社ムラカミのステンレススクリーンの500メッシュのノーマル張りを使用し、総厚を42ミクロンとする以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例10】
【0030】
実施例1において、インクの調合をフリットとして株式会社イザワピグメンツ製13200を10部に対しスキージオイルは互応化学株式会社製OS−721を5部添加し、攪拌、調合した。それ以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例11】
【0031】
実施例1において、インクの調合をフリットとして株式会社イザワピグメンツ製13200を10部に対しスキージオイルは互応化学株式会社製OS−721を5部添加し、攪拌、調合した。製版を250メッシュのノーマル張りを使用し総厚を65ミクロンとする以外は実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例12】
【0032】
実施例1において、インクの調合をフリットとして株式会社イザワピグメンツ製13200を10部に対しスキージオイルは互応化学株式会社製OS−721を5部添加し、攪拌、調合した。製版をステンレススクリーン300メッシュのノーマル張りを使用し総厚を73ミクロンとした以外は実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例13】
【0033】
実施例1において、製版を270メッシュのノーマル張りを使用し総厚を57ミクロンとした以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例14】
【0034】
実施例1において、製版を420メッシュのノーマル張りを使用し、総厚を45ミクロンにし、万線の図柄は線幅0.08mm、線と線の間隔も0.08mmのパターンとした
以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例15】
【0035】
実施例1において、製版を420メッシュのノーマル張りを使用し、総厚を45ミクロンにし、万線の図柄は線幅0.07mm、線と線の間隔も0.07mmのパターンとした
以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例16】
【0036】
実施例1において、製版を株式会社ムラカミのステンレススクリーンの500メッシュのノーマル張りを使用し、総厚を42ミクロンにし、万線の図柄は線幅0.07mm、線と線の間隔も0.07mmのパターンとした以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例17】
【0037】
実施例1において、万線の図柄は線幅0.10mm、線と線の間隔も0.10mmのパターンとした以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例18】
【0038】
実施例1において、製版を350メッシュのノーマル張りを使用し、総厚を51ミクロンにし、万線の図柄は線幅0.10mm、線と線の間隔も0.10mmのパターンとした
以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【実施例19】
【0039】
実施例1において、製版を200メッシュのノーマル張りを使用し、総厚を77ミクロンにした以外は、実施例1と同様にして万線効果を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品の表面に万線の絵付けを施す為の窯業用転写紙を製造する産業やその転写紙を用いて絵付けを行う産業で利用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】万線図柄印刷後の概略図
【符号の説明】
【0042】
101転写用台紙
102デキストリン
103万線図柄パターン
104カバーコート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン印刷で転写紙に万線図柄を印刷し、陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品の表面に絵付けを行う事を目的とする転写紙。
【請求項2】
請求項1の転写紙の図柄を水スライド転写してなる陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品。
【請求項3】
スクリーン印刷に於いて250メッシュから420メッシュの製版を使用し、総厚(紗厚プラス乳剤厚み)が45ミクロンから73ミクロンからなる事を特徴とする万線印刷用製版を使用してなる万線図柄転写紙。
【請求項4】
請求項3の転写紙の図柄を水スライド転写してなる陶磁器、ガラス、ホーロー等の窯業製品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−101566(P2009−101566A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274802(P2007−274802)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(307010683)株式会社青木転写 (4)
【Fターム(参考)】