説明

窯業系サイディング材、出隅材及びその製造方法

【課題】施工後に純正品かどうかの識別が容易な窯業系サイディング材及び出隅材を提供する。
【解決手段】窯業系サイディング材Bは、セメントを主成分とする。基材1表面にレーザーにより刻印2が施され、前記刻印2が認識可能なように前記刻印2を含む基材1表面が塗装されている。出隅材Aは、セメントを主成分とする窯業系サイディング材により構成される。出隅材Aの基材1は、所定の角度を有する二つの平材5,5の端部同士が突き合わされて形成されている。出隅頂部3は、面取りにより略平坦な面として形成されている。前記出隅頂部3にレーザーにより刻印2が施され、前記刻印2が認識可能なように前記刻印2を含む出隅頂部3が塗装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯業系サイディング材及び出隅材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外壁材などとして用いられている窯業系サイディング材にあっては、純正品かどうかを識別するために印刷や刻印などでマークや識別番号などを施すことが行われている。例えば、純正品であることを示すマークやロゴ、ロット番号を印字すると、生産日時、生産工場、塗装グレードなどが判別可能となる。このようなマーク等は、通常、サイディング材の裏面や木口(端面)や他の部材が重なる隠蔽部分などに施されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ここで、純正品でないサイディング材が純正品に混在すると、建物の品質が低下するおそれがある。そのため、施工前及び施工時には、純正品であることを確認してサイディング材を使用することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−213897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、施工業者は必ずしも純正品のみを用いているとは限られず、施工後において不具合が生じたときなど、施工後において純正品であるかどうかを確認する必要が生じる場合がある。純正品でないサイディング材の混在は、建物の品質を悪化させてしまうおそれがあり、その防止のためには、施工後も純正品かどうかを確認できることが求められるのである。また、純正品でないものが混在して形成された劣悪な建物では、純正品として提供した者の信用を落とすことにもなり得る。このとき、サイディング材の裏面などにマークがある場合、施工後に純正品かどうかを識別するためには、サイディング材を建物から剥がして確認しなければならない。施工後にサイディング材を剥がすと、建物を破損してしまうことになり好ましくない。また、確認のために取り外したサイディング材は廃棄することになり、新しいサイディング材を用意しなければならず、シーリングの打ち替え工事も必要となり、工事の手間や無駄が発生してしまう。
【0006】
また、出隅材は二つの平板状の壁材を切断し端部を貼り合わせて形成される場合があるが、そのような出隅材においては、純正品の業者(正規メーカー)でない者が、純正品の壁材を用いて勝手に出隅材を形成することがある。その場合、純正品でない出隅材により、建物の品質を低下させてしまうおそれがあり、また純正品の業者の信用を低下させるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、施工後に純正品かどうかの識別が容易な窯業系サイディング材、出隅材、及び、出隅材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る窯業系サイディング材は、セメントを主成分とする窯業系サイディング材であって、基材表面にレーザーにより刻印が施され、前記刻印が認識可能なように前記刻印を含む基材表面が塗装されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る出隅材は、セメントを主成分とする窯業系サイディング材により構成される出隅材であって、基材は、所定の角度を有する二つの平材の端部同士が突き合わされて形成され、出隅頂部は、面取りにより略平坦な面として形成され、前記出隅頂部にレーザーにより刻印が施され、前記刻印が認識可能なように前記刻印を含む出隅頂部が塗装されていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る出隅材の製造方法は、セメントを主成分とする窯業系サイディング材により構成される出隅材の製造方法であって、所定の角度を有する二つの平材の端部同士を突き合わせて基材を形成し、出隅頂部を面取りにより略平坦な面として形成し、前記出隅頂部にレーザーにより刻印を施した後、前記刻印が認識可能なように前記刻印を含む出隅頂部を塗装することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、施工した後でも純正品かどうかを確認することができ、建物の品質を低下させることのない窯業系サイディング材及び出隅材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の出隅材の実施形態の一例を示し、(a)は概略図、(b)は一部の断面図である。
【図2】本発明の窯業系サイディング材の実施形態の一例を示す概略図である。
【図3】(a)〜(f)は、出隅材を製造する方法の一例を示す概略図である。
【図4】(a)及び(b)は、塗装前後の刻印の一例を示す写真である。
【図5】(a)及び(b)は、サイディング材の比較の形態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
窯業系サイディング材は、セメントを主成分とする材料により形成されるものである。窯業系サイディング材は、例えば、原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料等を配合し、成形した後に養生硬化させて作製される。水硬性膠着材としては、特に限定されるものではないが、例えばポルトランドセメント、高炉セメントなどのセメント材料を1種又は複数種で用いることができる。また、セメント材料に、高炉スラグ、ケイ酸カルシウム、石膏などを1種又は複数種、混合してもよい。また、無機充填剤としてはフライアッシュ、ミクロシリカ、珪砂等を用いることができる。また、繊維質材料としてはパルプ、合成繊維、アスベスト等の無機繊維や、スチールファイバー等の金属繊維を、それぞれ単独であるいは複数種併せて用いることができる。成形は押出成形や注型成形、抄造成形、プレス成形等の方法により行なうことができ、成形の後、必要に応じてオートクレーブ養生、蒸気養生、常温養生を行なって、外壁材などに使用される窯業系サイディング材の基材を作製することができる。
【0014】
図1は、窯業系サイディング材により構成される出隅材Aの一例である。出隅材Aは建物の外壁の出隅部に用いられるものであり、同質出隅と称せられる外壁材である。
【0015】
出隅材Aの基材1は、側端部の端面が表面に対して所定の角度を有する二つの平材5,5を用い、この平材5,5の端部同士を突き合わせて形成されている。一方の平材5と他方の平材5は平面視L字状となるように垂直に突き合わされ、貼り付けられている。それぞれの平材5は、平板状の壁材が短冊状に切断されて形成されたものであり矩形状となっている。平材5において、突き合わせられる端面は、平材5の表面(又は裏面)と約45度の傾斜角度で形成されており、それにより、二つの平材5,5が垂直に配置されて基材1を構成するようになっている。なお、平材5の端面の傾斜角度は、突き合せて垂直になるのであれば45度に限定されるものではなく、例えば、一方を30度にして他方を60度にしてもよく、平材5,5を垂直に突き合わせる場合、要するに角度の合計が90度になればよい。所定の角度を有する平材5の端面は、切断や削り落としなどの切削加工により形成されてもよいが、成形の際にあらかじめ形成されていてもよい。なお、出隅材Aの多くは出隅の角度が通常90度であるが、施工される建物の形状によっては90度より大きくなったり、小さくなったりする場合もある。その場合、平材5の端面は突き合わせる角度に応じてその傾斜角度を設定することができる。そして、平材5の端面を平行にし、平材5,5を垂直よりも大きい角度で、あるいは、垂直よりも小さい角度で突き合わせることができる。
【0016】
平材5,5の端部が突き合わされて形成された出隅材Aの頂部である出隅頂部3は、面取りにより略平坦な面として形成されている。略平坦な面は、例えば、基材1(平材5)の表面の凹凸に倣って、表面凹凸を付けて面取りされた面であってもよい。出隅頂部3は、平材5,5の表面とのなす角度が約45度の面であってもよいが、これに限定されるものではない。面取りは、出隅材Aの角部の切り落とし(削り落とし)であり、好ましくは角部での基材1の厚みが平材5の厚みを下回らない程度で行われている。
【0017】
出隅頂部3には、レーザーにより施された刻印2が設けられている。刻印2は、出隅材Aの上下方向の端部に形成されていることが好ましい。刻印2を端部に形成することにより、必要以上に目立つことを抑えることができ、また、刻印2の場所を容易に認識できて視認性が向上する。また、出隅頂部3は略平坦な面となっているが、表面に凹凸が形成されている場合もあり、略平坦な面の中でも比較的水平な箇所を選択して刻印2が形成されることも好ましい。そして、刻印2は、レーザーの焦点距離が一定になって形成されることが好ましく、そのためには、より水平な箇所を選択したり、レーザー照射装置を凹凸に倣って移動させたりしてレーザーを照射することができる。
【0018】
刻印2の溝の深さは、例えば10μm〜1.0mm程度にすることができる。刻印2の溝がこの範囲であることにより、刻印2が必要以上に深くなることがないとともに、塗装後も視認が容易な刻印2を形成することができる。
【0019】
刻印2は、純正品であることを示すマーク(標識)にすることができる。図示の形態では、会社ロゴを示す「KMEW」の文字列の刻印2が施されている。刻印2により純正品かどうかを識別できれば、表面を確認するだけで純正品であることが認識でき、施工後に出隅材Aを引き剥がす必要がなくなる。
【0020】
また、製造ロット番号などの刻印2以外の情報は、基材1の裏面や端面に設けることができる。製造ロット番号など、製品の生産日時や生産工場、塗装グレードを判別するのに必要な情報を基材1の外部から視認できない面に設けることで、外観のよい出隅材Aを形成することができる。これらの情報は、刻印してもよいし、印字してもよい。
【0021】
基材1の表面には塗装層4が形成されている。図1(b)に示すように、この塗装層4は、刻印2が認識可能なように刻印2を含む基材表面に設けられている。そして、刻印2の表面に形成された塗装層4には、刻印2の溝により塗装溝4aが形成されている。この塗装溝4aによって、出隅材Aを表面から見たときに、刻印2の形状が視認可能となるものである。塗装層4は、一層であってもよいが、複数層であってもよい。また、塗装層4を複数の層で形成する場合、刻印2の表面に、平材5の表面に施される塗装層の一部の塗装層が塗装されるようにしてもよい。塗装層4の厚みは、例えば10μm〜50μmm程度にすることができる。このように、刻印2の表面に塗装層4が設けられることによって、刻印2によりできた溝で基材表面が外部に露出することがなく、刻印2での塗膜の剥がれを抑制することができ、また、刻印2での変色を抑え、刻印2からの水分の吸収を防ぐことができるものである。
【0022】
ここで、出隅材Aにおいては、レーザーによる刻印2の形成の後に塗装が施されるものである。
【0023】
図5に、比較の形態として、塗装が施された後にレーザーにより刻印2が形成されたサイディング材の表面の例を示す。図5(a)では、レーザーにより刻印2を施したときに、レーザーが塗装層4を貫通し、塗膜が破壊されてしまっている。そして、刻印2の溝により基材1の表面が外部に露出している。このように、塗装後にレーザーで刻印2を形成すると、塗膜が剥がれる可能性があり、刻印2の周辺で変色する可能性があり、刻印2により露出した基材表面から水分を吸収してサイディング材が劣化する可能性があるものである。
【0024】
また、図5(b)の形態は、複数の塗装層41,42で塗装層4を形成するようにし、塗装層4の範囲においてレーザーで刻印2を施すようにしたものである。この形態では、塗装層4の厚みの範囲で刻印2を形成しているため基材1の表面が露出することを防ぐことができるものの、刻印2の溝が浅いため、視認性が悪くなる可能性がある。また、塗装層4のうち外部側に配置される塗装層41の塗膜を破壊しているため、塗装層41が着色層である場合は着色が削られてしまったり、塗装層41がコーティング層である場合はコーティングが削り取られてしまったりする。そして、塗膜が破壊されると、刻印2部分が変色したり、刻印2部分から水分を吸収したりしてサイディング材が劣化する可能性があるものである。
【0025】
それに対し、図1に示す形態の出隅材Aでは、レーザーによる刻印2の形成の後に塗装が施されているので、表面塗膜に傷がつけられておらず、塗膜の剥がれを防ぎ、刻印2の周辺での変色を抑制し、刻印2から水分が吸収されることを抑えることができるものであり、サイディング材の劣化を低減することができるものである。
【0026】
また、刻印2はレーザーにより形成されているので、レーザーの焦点距離が一定になり、刻印2の溝の深さが安定し、識別しやすく外観のよい刻印2を形成することができる。そして、塗装により塗装層4を形成した際には、塗装溝4aが刻印2の表面において刻印2の形状に沿って形成されるので、刻印2が識別しやすくなる。また、刻印2の溝の表面で、塗装層4は塗膜表面が滑らかな曲面となって形成されるので、刻印2が必要以上に目立つようなことを防止し、刻印2を視認可能にしつつも外観のよい出隅材Aを形成することができるものである。
【0027】
図2は、刻印2が施された窯業系サイディング材Bの一例である。窯業系サイディング材Bは、外壁材の他、内壁材、屋根材、などにも用いることができる。図示の窯業系サイディング材Bは、矩形状に形成され、その隅部に刻印2が施されている。刻印2を隅部に設けることにより、必要以上に刻印2が目立つことを防ぐことができる。
【0028】
刻印2は、基材1の表面にレーザーを施すことにより形成されている。刻印2の溝の深さは、出隅材Aの場合と同様の深さ程度にすることができる。刻印2は、純正品であることを示すマークにすることができる。図示の形態では、会社ロゴを示す「KMEW」の文字列の刻印2が施されている。刻印2により純正品かどうかを識別できれば、表面を確認するだけで純正品であることが認識でき、施工後に窯業系サイディング材Bを引き剥がす必要がなくなる。裏面には製造ロットなどを刻印又は印字してもよい。
【0029】
この形態にあっても、基材1の表面に形成された塗装層4が、図1(b)の形態と同様に、刻印2が認識可能なように刻印2を含む基材表面に設けられている。そして、刻印2の表面に形成された塗装層4には、刻印2の溝により塗装溝4aが形成されている(図1(b)参照)。この塗装溝4aによって、窯業系サイディング材Bを表面から見たときに、刻印2の形状が視認可能となるものである。塗装層4は、一層であってもよいが、複数層であってもよい。このように、刻印2の表面に塗装層4が設けられることによって、刻印2によりできた溝が外面に露出することがなく、刻印2での塗膜の剥がれを抑制することができ、また、刻印2での変色を抑え、刻印2からの水分の吸収を防ぐことができるものである。
【0030】
図3は、図1の形態の出隅材Aを製造する方法の一例を示す概略図である。
【0031】
出隅材Aを形成するにあたっては、まず、一組(二枚)の平材5,5を準備する。平材5は窯業系サイディング材により構成されるものであり、窯業系サイディング材の材料が成形されたものであってもよく、あるいは、成形された窯業系サイディング材の端部が切断されたものであってもよい。平材5としては、表面に塗装層が設けられているものを使用することができる。
【0032】
そして、平材5の対向する各側端部を裏面側の角を切り取るように斜め方向に切断する。切断面5aの角度は、所定の角度にすることができ、例えば表面との角度45度にすることができる。図3(a)では、切断面5aを形成する切断線を破線により示している。このとき、平材5の対向配置する二つの切断面5a,5aは、二つの平材5を垂直に配置したときに、平行になる面として形成される。そして、図3(b)に示すように、切断面5a,5aを合わせるように二つの平材5を突き合せて貼り付ける。なお、貼り合わせには接着剤などを使用することができる。これにより、図3(c)に示すように、平面視L字型の基材1が形成される。
【0033】
そして、図3(d)に示すように、基材1の角部3a(出隅部)を切削により面取りして略平坦な面として出隅頂部3を形成する。このとき、出隅頂部3には微細な凹凸が形成されていてもよい。微細な凹凸により刻印2を目立ちにくくすることができる。次に、図3(e)に示すように、出隅頂部3の上側又は下側の端部にレーザーにより刻印2を施す。このとき、レーザーの焦点距離が一定になるようにすることが好ましい。刻印2は二つの平材5,5を跨ぐように形成することができる。このとき、出隅頂部3は面取りにより塗装層がなくなっており、直接、基材1の表面に刻印2が刻み込まれる。そして、刻印2を含む出隅頂部3にシーラーを塗布した後、平材5の表面の塗装に用いた塗料と同種の塗料で構成される補修用塗料で出隅頂部3を塗装する。図3(f)では、補修用塗料を塗装する部分を斜線領域で示している。なお、補修用塗料は少なくとも出隅頂部3に塗布されるものであるが、平材5の表面の一部に塗布されてもよい。平材5の表面を跨って塗布されると自然な塗装層4を形成することができる。また、補修用塗料により形成された塗装層4は、表面に微細な凹凸を有していてもよい。微細な凹凸により刻印2を目立ちにくくすることができる。
【0034】
このように補修用塗料で塗装することにより、平材5の表面と同様に、出隅頂部3に塗装層4が形成され、この部分での塗膜性能を確保することができる。また、突き合わせ部分の境界を分かりにくくして意匠性を良好にすることができる。また、二つの平材5を突き合わせて形成した出隅材Aにあっては、面取りして塗装が除去された出隅頂部3に塗装を施して補修する必要が元来あるため、レーザーにより刻印2を施す工程を追加するだけで、刻印2の形成と刻印2の認識が可能な塗装とを行えるものである。
【0035】
そして、図1(b)に示すように、塗装層4は、刻印2の表面に沿うとともに、塗装溝4aの側面同士や塗装溝4aと塗装表面との境界が滑らかな曲面となって形成されるものであるので、刻印2の印影を和らげて刻印2を目立ちにくくすることができる。また、出隅頂部3の塗装層4は、平材5の塗装層と同種のもの(色味など)が用いられているので、出隅頂部3の色が異なって目立つようなことを防ぐことができるものである。
【0036】
ここで、出隅材Aにあっては、純正品の平材5を用いて純正品の業者でない者が、勝手に出隅材Aを形成することがあるが、上記の出隅材Aにおいては、出隅頂部3に刻印2が施されているため、純正品の出隅材Aかどうかを簡単に識別することが可能である。すなわち、出隅頂部3は二つの平材5を跨って形成される部分であるため、平材5に純正品を示すマークや刻印があったとしても、突き合わせ後に刻印2を施さない限り、出隅頂部3に純正品であることを示す刻印2が配置されることはない。よって、出隅頂部3に刻印2を形成することによって、出隅材Aが純正品であることを簡単に判別できるのである。
【0037】
図4は、刻印2に塗装を施す前後の様子の一例を示す写真である。図4(a)では、レーザーによる刻印2の形成により、はっきりとした印影で刻印2が刻み込まれている。そして、この刻印2を含めて出隅頂部3に塗装を施すことにより、図4(b)のように、塗装層4が形成される。図4(b)では、刻印2の文字が判別できる程度に認識可能であるとともに、刻印2が目立ちにくくなっており、視認性と意匠性の両方に優れたものとなっている。また、窯業系の材料が面取りされて形成された出隅頂部3の表面には、微細な凹凸が形成されている。このため、塗装層4の表面には微細な凹凸を有する塗装面が形成されるので、刻印2の溝がこの微細な凹凸に紛れることによって、刻印2が目立ちにくくなるものである。
【0038】
ところで、上記では、予め塗装が施された平材5を用い、出隅頂部3に補修用塗料を塗布して塗装層4を形成するようにしたが、塗料の塗装の順序はこの方法に限られない。例えば、塗装が施されていない平材5、あるいは、下層のみ塗装が施された平材5を用い、出隅頂部3を形成した後、レーザーで刻印2を施し、その後、刻印2が形成された出隅頂部3を含む基材1全体を塗装するようにしてもよい。また、二つの平材5を用いて出隅材Aの基材1を構成した形態を示したが、出隅材Aの基材1はこれに限られない。例えば、基材1として、成形によりあらかじめL字型に形成された基材1を用いてもよい。
【0039】
なお、図2の形態の窯業系サイディング材を製造する方法は、上記の方法と同様にすることができる。例えば、窯業系サイディング材の材料から基材1を成形し、レーザーにより刻印2を施した後、この刻印2を含む基材1表面を塗装することにより、刻印2に塗装層4が形成された窯業系サイディング材Bを得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
A 出隅材
B 窯業系サイディング材
1 基材
2 刻印
3 出隅頂部
4 塗装層
5 平材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを主成分とする窯業系サイディング材であって、基材表面にレーザーにより刻印が施され、前記刻印が認識可能なように前記刻印を含む基材表面が塗装されていることを特徴とする、窯業系サイディング材。
【請求項2】
セメントを主成分とする窯業系サイディング材により構成される出隅材であって、基材は、所定の角度を有する二つの平材の端部同士が突き合わされて形成され、出隅頂部は、面取りにより略平坦な面として形成され、前記出隅頂部にレーザーにより刻印が施され、前記刻印が認識可能なように前記刻印を含む出隅頂部が塗装されていることを特徴とする、出隅材。
【請求項3】
セメントを主成分とする窯業系サイディング材により構成される出隅材の製造方法であって、所定の角度を有する二つの平材の端部同士を突き合わせて基材を形成し、出隅頂部を面取りにより略平坦な面として形成し、前記出隅頂部にレーザーにより刻印を施した後、前記刻印が認識可能なように前記刻印を含む出隅頂部を塗装することを特徴とする、出隅材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−132215(P2012−132215A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285461(P2010−285461)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(503367376)ケイミュー株式会社 (467)
【Fターム(参考)】