説明

窯炉側壁の築炉構造

【課題】本発明は、炉内側へ耐火物の押し出しを防止し、耐火物の寿命を延長するようにした窯炉側壁の築炉構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明による窯炉側壁の築炉構造は、最下段耐火物(1)の上面には傾斜面(30)が形成され、中間段耐火物(2)の厚さは炉内側(21a)から炉外側(21b)にかけて厚くなり、最上段耐火物(3)は鉄皮(20)の天端鉄皮(4)により押圧されて配設され、各耐火物(1,2,3)が炉内側(21a)に押し出されないように配設された構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窯炉側壁の築炉構造に関し、特に、電気炉の内側に凸となるような部分での築炉構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窯炉では、鉄皮の内側に耐火物をライニングしているが、一般的な窯炉は、真上から見ると丸形ないし矩形の形状をしており、鉄皮構造は直線ないし内側に凹で外側に凸となる構造をしている。したがってその内側に施工される耐火物も同様に内側に直線ないし凹となる。この場合、窯炉内部が高温になると、耐火物同士が熱膨張で迫り合い、耐火物が鉄皮側に押し付けられるような力が働く。
しかし、例外的には、多くの部分では凹であるが、一部分だけ凸とならざるを得ないような窯炉が存在する。このような場合、この凸の部分の先端部では、窯炉内部が高温になると耐火物同士が熱膨張で迫り合い、この凸の部分にある耐火物を鉄皮から離し、炉内側へ押し出すような力が働く。この場合、先端部の耐火物が炉内へ押し出されて損傷し、さらにはその部分の耐火物が無くなることで損傷が拡大するという問題があった。
【0003】
この問題に対し、いくつかの改善案が提案されている。
すなわち、特許文献1では、鋼の連続鋳造に用いられるタンディッシュにおける同様な部分の耐火物を背面側の金物とアンカーでつなぎ止める構造を示すと共に、積み重なる煉瓦の上下面に凸部と凹部を作り、嵌合させる煉瓦構造を提案している。
また、特許文献2には不定形耐火物を施工する場合、鉄皮に取り付けられたアンカーブロックによって、当該部分の耐火物の炉内側への迫り出しを抑制しようとする試みが紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−117975号公報
【特許文献2】特開2009−45654公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の窯炉側壁の耐火物構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1の構成においては、これを電気炉に適用しようとすると、アンカー部から耐火物が割れたり、嵌合部から煉瓦が割れたりして、損傷するという問題点があった。電気炉では、タンディシュに比較し、大型の耐火物を使用しており、また、炉内の温度が高いということが影響し、大きな応力集中が起きたものと推定される。
【0006】
また、特許文献2の構成においては、電気炉のような大型の形状に適用すると、アンカーブロックへの応力集中によってアンカーブロックが折損するという問題点があった。
本発明は、電気炉の内側に凸となるような部分で、凸となっている側壁を構成する耐火物の炉内側への迫り出しを抑制するための築炉構造を提供しようとするものである。すなわち、本出願人は、大型の耐火物を使用して目地そのものの数を減らして目地損傷を抑制し、熱膨張による耐火物同士が押し合う力を凸部の鉄皮側へ向かう力と変換するような構造を検討し本発明に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による窯炉側壁の築炉構造は、窯炉の鉄皮の内側に突出する凸部炉壁を有し、前記凸部炉壁が高さ方向に積層される最下段耐火物と中間段耐火物と最上段耐火物によって構成される窯炉側壁の築炉構造において、前記最下段耐火物は、炉内へ押し出されないように拘束されていると共に、その上面に形成され炉内側が高く前記鉄皮の側壁側鉄皮側で炉内側よりも低くなるような傾斜面と、前記中間段耐火物の垂直方向の厚さとして形成され、前記炉内側に位置する第1厚さと、前記中間段耐火物の前記側壁側鉄皮側に形成され前記第1厚さよりも厚い第2厚さと、前記最上段耐火物は炉内へ押し出されないように拘束されていると共に、前記最上段耐火物を下方へ向けて押圧するために配設された天端鉄皮と、からなる構成であり、また、前記最下段耐火物は、前記炉内に設けられた炉底煉瓦により炉内側へ押し出されないように拘束、又は、アンカーによって固定、又は、炉底煉瓦とアンカーにより固定、又は金物により固定、又は、アンカーと金物により固定されている構成であり、また、前記最上段耐火物は、アンカー又は固定ピンによって炉内側へ押し出されないように固定されている構成であり、また、前記最下段耐火物と中間段耐火物との間には、キー煉瓦が設けられている構成であり、また、前記最下段耐火物の上面が水平方向となす傾斜角度は、5度〜35度の範囲である構成であり、また、前記中間段耐火物は、1個から6個の何れかよりなる構成であり、また、前記中間段耐火物の上面方向と下面方向のなす面角度差は、1度〜10度の範囲である構成であり、また、前記最上段耐火物と前記天端鉄皮との間には、膨張代として可縮性充填材が設けられている構成である。
【発明の効果】
【0008】
本発明による窯炉側壁の築炉構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、窯炉の鉄皮の内側に突出する凸部炉壁を有し、前記凸部炉壁が高さ方向に積層される最下段耐火物と中間段耐火物と最上段耐火物によって構成される窯炉側壁の築炉構造において、前記最下段耐火物は、炉内へ押し出されないように拘束されていると共に、その上面に形成され炉内側が高く前記鉄皮の側壁側鉄皮側で炉内側よりも低くなるような傾斜面と、前記中間段耐火物の垂直方向の厚さとして形成され、前記炉内側に位置する第1厚さと、前記中間段耐火物の前記側壁側鉄皮側に形成され前記第1厚さよりも厚い第2厚さと、前記最上段耐火物は炉内へ押し出されないように拘束されていると共に、前記最上段耐火物を下方へ向けて押圧するために配設された天端鉄皮と、からなる構成であるため、電気炉のような大型の窯炉で炉内側へ凸となるような部分での耐火物の損傷を抑制でき、窯炉の寿命を飛躍的に延長することが可能となった。
また、前記最下段耐火物は、前記炉内に設けられた炉底煉瓦により炉内側へ押し出されないように拘束、又は、アンカーによって固定、又は、炉底煉瓦とアンカーにより固定、又は金物により固定、又は、アンカーと金物により固定されていることにより、最下段耐火物の固定を確実とすることができる。
また、前記最下段耐火物と中間段耐火物との間には、キー煉瓦が設けられていることにより、各耐火物の炉内側への押し出しを確実に防止できる。
また、前記最下段耐火物の上面が水平方向となす傾斜角度は、5度〜35度の範囲であることにより、最下段耐火物の炉内側への押し出しを防止できる。
また、前記中間段耐火物は、1個から6個の何れかよりなることにより、製造が容易でかつ築炉作業も容易である。
また、前記中間段耐火物の上面方向と下面方向のなす面角度差は、1度〜10度の範囲であることにより、炉内側で厚さを薄く、炉外側で厚くすることができ、熱膨張による迫り力によって炉外側へ向かう力を働かせることができる。
前記最上段耐火物と前記天端鉄皮との間には、膨張代として可縮性充填材が設けられていることにより、各耐火物の上下方向の熱膨張を吸収し、各耐火物の損傷等を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の築炉構造の一例を示す垂直方向断面図である。
【図2】本発明の築炉構造の一例を示す水平方向断面図である。
【図3】本発明の最下段の耐火物の垂直方向断面の一例を示す図である。
【図4】本発明の中間段の耐火物の垂直方向断面の一例を示す図である。
【図5】比較例1の築炉構造を示す垂直方向断面図である。
【図6】比較例2の築炉構造を示す垂直方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、電気炉の内側に凸となる部分の耐火物の積層構造を改良し、炉内側への耐火物の押し出しを防止し、耐火物の寿命を延長するようにした築炉構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明による窯炉側壁の築炉構造の好適な実施の形態について説明する。
図1において、符号100で示されるものは窯炉であり、この窯炉100の一部に内方に向けて突出して形成される凸部炉壁101では、鉄皮20の一部が曲折されて上部鉄皮9、天端鉄皮4、側壁側鉄皮7及び底部鉄皮8が形成されている。
【0012】
前記底部鉄皮8上には、側壁側鉄皮7に沿ってパーマ耐火物10及び図2の炉壁ウェアー耐火物が積層されており、このパーマ耐火物10の一部に炉内21の炉底裏張りスタンプ11上の炉底煉瓦12に一部が接する状態で積層耐火物22が設けられている。
【0013】
前記炉底煉瓦12上に位置する溶融金属14Aは、前記積層耐火物22の一部に接している。
前記積層耐火物22は、その底部側から、最下段耐火物1、中間段耐火物2、最上段耐火物3によって構成され、各耐火物1,2の間には各耐火物1,2が炉内21側へ押し出されることのないようにキー煉瓦5が設けられている。
前記天端鉄皮4に設けられた固定ピン6は、最上段耐火物3と天端鉄皮4との間に設けられた可縮性充填材13を貫通して最上段耐火物3に螺入されることにより、最上段耐火物3の炉内側21aへ押し出されることを防止している。
尚、この可縮性充填材13は、各耐火物1,2,3の膨張代としての吸収作用を有している。
【0014】
次に、図1〜図4について、より具体的に説明する。
本発明の第1は、窯炉100がその内側に凸となる凸部炉壁101部分において、
炉内21へ押し出されないように拘束された最下段耐火物1(図3に示す)であって、その上面は炉内側21aが高く、側壁側鉄皮7側で低くなるような傾斜面30を持つ最下段耐火物1と、
1個ないし複数個の中間段耐火物2(図4で示す)であって、前記中間段の各段の耐火物の垂直方向の厚さは炉内側21aで薄く、炉外側21bで厚い中間段耐火物2と、
最上段耐火物3であって、炉内21へ押し出されないように拘束された最上段耐火物3と、
最上段耐火物3を下側に向かって押えるように設置された天端鉄皮4と、
からなる耐火物の築炉構造である。
【0015】
また、その第2は、発明1の最下段耐火物1が、それより炉内側21aに設置された炉底煉瓦12によって炉内側21aへ押し出されないように拘束、及び/または図示しないアンカーによって固定、及び/または図示しない金物によって固定されている耐火物の築炉構造である。
その第3は、発明1及び2において、最上段耐火物3が図示しないアンカーによって固定、または固定ピン6によって固定されている耐火物の築炉構造である。
その第4は、発明1〜3において各耐火物1,2,2,2の間にキー煉瓦5を入れた耐火物の築炉構造である。
【0016】
前記炉内側21aへ凸となるような耐火物部材を構築する場合、大型の耐火物を用いることが必要であるが、通常サイズの耐火物で施工すると、目地が多く含まれるため、その部分から損傷が起こる。これを抑制するためには、目地そのものを少なくする必要がある。このための対策としては、大型の耐火物構造とし、水平方向のブロック数としては、1〜3個程度のブロックとすることが好ましい。より好ましくは、1ないし2個である。2ないし3個に分割する場合、縦方向で通し目地とすることは好ましくなく、縦方向の目地が通し目地とならないように目地をずらす、いわゆる千鳥目地とすることが好ましい。
前記最下段耐火物1は、何らかの方法で炉内21へ押し出されないようにすることが必要である。炉内21へ押し出されないようにするためには、いくつかの手段を取り得る。その一つの例は、最下段耐火物1の炉内側21a前面に、炉底煉瓦12を施工することである。また、別の手段は、最下段耐火物1を図示しないアンカーまたは金物により鉄皮20と結合させ、炉内側21aへ押し出すように働く力を受け止めることである。この最下段耐火物1が押し出されないような対策を取らないと、最下段耐火物1は隣接する耐火物の熱膨張によって炉内側21aへ押し出される。
【0017】
前記最下段耐火物1の上面30が炉内側21aで高く、一方で、炉外側21bで低くなるように傾斜を付与することが必要である。その例示図を図3に示す。
すなわち、最下段耐火物1の炉内側内面16から側壁側外面17にかけて下がるような傾斜面30が形成されている。この傾斜により、この上に設置する複数個の耐火物を保持し、かつ後述する天端鉄皮4との間の拘束力によってそれらのブロックに炉外側21bへ向かう力を与える。
前記最下段耐火物1の上面すなわち傾斜面30が水平方向Hとなす傾斜角度Aは5度〜35度の範囲となるようにすることが好ましい。前記角度が5度未満では、中間段耐火物2の炉内側21aへ迫り出しを抑えることができず好ましくない。一方、前記角度が35度を超えると中間段耐火物2から最下段耐火物1へかかる迫り力が炉内側21aへ働く力として大きくなりすぎ、際す段耐火物1が炉内側21aへ押し出される可能性が大きくなる。その角度はより好ましくは8度〜25度の範囲である。
【0018】
前記中間段耐火物2は、各段の耐火物の垂直方向の厚さが炉内側21aで薄く、炉外側21bで厚い、1個ないし複数個の耐火物から形成される。その例示図を図4に示す。すなわち、中間段耐火物2の内側の炉内側内面18の垂直方向の高さである第1厚さTは、外側の側壁側外面19の垂直方向の高さである第2厚さTより小となるように構成されている。
各耐火物の垂直方向の厚さを炉内側21aで薄く、炉外側21bで厚くすることと、それらを垂直方向で上下から拘束することとで、熱膨張によって垂直方向の迫り力を発生させ、かつその迫り力によって炉外側21bに向かう力を働かせることが可能となる。耐火物の垂直方向の厚さを炉内側21aで薄く、炉外側21bで厚くすることは、耐火物の上下方向の2面である上面方向Mと下面方向Nのなす面角度差Bで定義できる。この面角度差Bは、1〜10度が好ましい。面角度差Bが1度より小さければ、迫り力が十分に働かず、中間段耐火物2が炉内に押し出される。一方、面角度差Bが10度より大きければ、最下段耐火物1に対する複数個の耐火物で炉内耐火物を構成することが困難になる。より好ましくは、3〜8度である。複数個の耐火物の面角度差Bは必ずしも同一とする必然性はなく、段によって面角度差Bを変更してもかまわない。
【0019】
前記中間段耐火物2の高さ方向の個数は、1〜6個とする。個数が少ない場合、耐火物が大型となり製造、築炉作業が困難となる。反対に、耐火物の個数が多いと、製造は容易になるが、目地部が増えてその部分での耐食性が劣るようになるなどの問題を生じる。より好ましい個数は、2〜4個である。
【0020】
前記中間段耐火物2を特許文献1に紹介されている金物及びアンカーによってつなぎ止める方法と、耐火物の上下面に凹凸を作り嵌合させる方法及び、特許文献2のアンカーブロックで抑える方法とを電気炉の凸となる部分で試みたが、何れも中間段耐火物2に亀裂が入ってしまい効果がなかった。これは、電気炉のような大型の構造体が必要な場合、より大きな力が耐火物にかかり耐火物が破壊されたものと推定される。
最上段耐火物3を介して、最下段耐火物1と中間段耐火物2に発生した力を天端鉄皮4に伝え、また、前記鉄皮4から垂直下方に働く力を中間段耐火物2に伝える。また、最下段耐火物1と中間段耐火物2同様、最上段耐火物3には、水平方向の熱膨張による迫りによって炉内側へ押し出されるような力が働く。
【0021】
図1に示した本発明の例示図では、最上段耐火物3の上下面は平行な形状とした例を示す。築炉上の都合により、天端鉄皮4と中間段耐火物2との間に最上段耐火物3を最後に入れるため、最上段耐火物3の上下面は平行とした。しかし、本発明ではこれに特定されない。例えば、天端鉄皮4を後から取り付ける構造であれば、中間段耐火物2のように炉内側21aで薄く、炉外側21bで厚くなるように傾斜を付けてもかまわない。このような傾斜を付けた場合には、前述の垂直方向の迫り力によってこの最上段耐火物3が炉外側21bへ押し出されるような力が働く。
【0022】
一方、図1のように平行とした場合には迫り力によって炉外側21bへ押し出す力が働かず、炉内側21aへ押し出されるような力のみがかかる。この場合には、この力によって炉内側21aへ押し出されないように、図示しないアンカーまたは金物によって天端鉄皮4側につなぎ止めることが必要となる。最上段耐火物3は、電気炉の湯面より高い位置にあるため最下段耐火物1や中間段耐火物2よりも熱負荷が小さく、図示しないアンカー又は金物、固定ピン6を取り付けたとしても、耐火物に亀裂が入り、破壊されることはない。また、最下段耐火物1、中間段耐火物2及び最上段耐火物3の上下方向の熱膨張を吸収させるために、最上段耐火物3と天端鉄皮4との間には、膨張代として可縮性充填材13を設けている。前記可縮性充填材13には、スタンプ材、ファイバーボード、耐火性ブランケット、プラスチック耐火物などを使用することが可能である。前記固定ピン6には金属製、耐火物製、セラミック製など公知の材質を用いることができる。炉底煉瓦12には定形煉瓦またはスタンプ材といった不定形耐火物を使用することができる。炉底煉瓦12が溶損して残寸が減少した場合には、補修用耐火物で適宜補修しても良い。
上記に加えて、耐火物の目地方向への滑り出し、移動を妨げるために耐火物同士の間にキー煉瓦5をかませて設けることが可能である。キー煉瓦の大きさや形状、個数は通常に使用されているもので差し支えない。
【0023】
本発明に使用される耐火物及びキー煉瓦5には、電気炉の炉壁用に用いられる一般的な材質で良く、特には限定されないが、その例を挙げれば、マグネシア・カーボン質、マグネシア質、ドロマイト質、ドロマイト・カーボン質、マグネシア・ドロマイト質、マグネシア・ドロマイト・カーボン質、マグネシア・ライム・カーボン質、マグネシア・クロム質などである。不定形耐火物のプレキャストブロックも使用可能であるが、耐食性の点でやや劣る欠点がある。より好ましくは、定形材質の耐火物を用いるのが良い。
施工方法には特に限定されることはなく、一般の施工方法が利用できる。目地モルタルを使用することが好ましいが、目地モルタルを使用しない施工にも、応用可能である。
【0024】
実施例
図1及び図2に、140トン電気炉の炉内側21aへ凸となるような耐火物施工部分に本発明になる築炉構造を適用した際の垂直方向断面図と水平方向断面図を示す。最下段耐火物1は、その炉内側21aに小割した煉瓦を施工することで炉内側21aへ押し出そうという力を支えた。最下段耐火物1の上面傾斜角度Aは12度とした。中間段耐火物2は垂直方向に3個の定形耐火物で形成され、各耐火物の上面方向Mと下面方向Nとのなす面角度差Bを4度とした。最上段の耐火物3は上下面が平行で、その上面側を固定ピン6によって天端鉄皮4につなぎ止めた。最上段耐火物3の上方には天端鉄皮4があり、下側からの突き上げ力を押さえ込む構造とした。また、最下段耐火物1と中間段耐火物2との間及び複数の中間段耐火物2同志の間には、キー煉瓦5を設置した。前記キー煉瓦5の形状は円柱形状で、大きさはφ70mm、高さは50mmとした。最上段耐火物3と天端鉄皮4との間には、可縮性充填材13として100mm厚のスタンプ材を施工した。大型耐火物の炉内側21aから炉外側21bへ向かう厚さ、いわゆる施工厚は700mmとした。また、最下段から最上段までの5つの耐火物1〜3の垂直方向での厚さは1500mmであった。また、水平方向での大型耐火物の総幅は1720mmとし、水平方向で2分割した。また、材質は大型耐火物、キー煉瓦のどちらもマグネシア・カーボン質とした。
このように施工された本発明に係る築炉構造の電気炉では、1年間以上の操業が可能となり、2556チャージの寿命となった。損傷の状態を使用した耐火物を回収して解析したところ、本発明になる大型耐火物には亀裂、剥離などの大きな損傷はなく、目地がしっかりしていて、耐火物が炉内へ押し出されるような形跡はなかった。損傷の主因は溶損であり、本発明の優位性が確認された。
【0025】
比較例
図5に比較例1の垂直方向の断面図を示す。耐火物の施工圧、施工高さ、水平方向での幅は前述の実施例と同一であり、耐火物材質も同一とした。
高さ方向で見ると、最下段、中間段、最上段と全ての上下面が平行な耐火物1,2,3を施工し、最下段耐火物1は、実施例同様、炉内側に小割した煉瓦を施工したものである。このような構造にすることで炉内側21aへ押し出そうという力を支えた。下側2段目の耐火物から最上段耐火物3は、天端鉄皮4から伸びた固定ピン6によって前記鉄皮4につなぎ止めた。上記比較例1に係る施工体を実施例と同一の電気炉で使用し、かつ基本的な操業条件は変化させずに使用した。
比較例1は約5ヶ月で寿命となり、使用回数は1051チャージであった。損傷の状態を使用した耐火物を回収して解析したところ、中間段耐火物2は固定ピン6で固定していたが炉内側へ迫り出そうとする力が強く、固定ピン6を通す穴から亀裂が生じ、結果的に炉内側に迫り出してしまったことが解った。
【0026】
次に図6に比較例2の垂直方向の断面図を示す。高さ方向で見ると、最下段、中間段、最上段と全ての上下面が平行な耐火物1,2,3を施工し、最下段耐火物1は炉内側に小割した煉瓦を施工しているところは比較例1と同じであるが、最下段耐火物1と下側2段目の耐火物との間、下側3段目の耐火物と下側4段目の耐火物との間にキー煉瓦をかませている点、そして天端鉄皮4から伸びた固定ピン6は最上段耐火物3だけをつなぎ止めたという点が比較例1と異なる。
比較例2は約7ヶ月で寿命となり、使用回数は1210チャージであった。比較例1と同様に、使用した耐火物を回収して解析したところ、最上段耐火物3には特に損傷は見られなかったが、中間段耐火物2は炉内側に迫り出していた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明による窯炉側壁の築炉構造は、電気炉だけではなく、他の溶融金属容器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 最下段耐火物
2 中間段耐火物
3 最上段耐火物
4 天端鉄皮
5 キー煉瓦
6 固定ピン
7 側壁側鉄皮
8 底部鉄皮
9 上部鉄皮
10 パーマ耐火物
11 炉底裏張りスタンプ材
12 炉底煉瓦
13 可縮性充填材
14 溶融金属湯面
14A 溶融金属
15 炉壁ウェアー耐火物
16 炉内側内面
17 側壁側外面
18 炉内側内面
19 側壁側外面
20 鉄皮
21 炉内
21a 炉内側
21b 炉外側
100 窯炉
101 凸部炉壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窯炉(100)の鉄皮(20)の内側に突出する凸部炉壁(101)を有し、前記凸部炉壁(101)が高さ方向に積層される最下段耐火物(1)と中間段耐火物(2)と最上段耐火物(3)によって構成される窯炉側壁の築炉構造において、
前記最下段耐火物(1)は、炉内(21)へ押し出されないように拘束されていると共に、その上面に形成され炉内側(21a)が高く前記鉄皮(20)の側壁側鉄皮(7)側で炉内側(21a)よりも低くなるような傾斜面(30)と、
前記中間段耐火物(2)の垂直方向の厚さとして形成され、前記炉内側(21a)に位置する第1厚さ(T1)と、前記中間段耐火物(2)の前記側壁側鉄皮(20)側に形成され前記第1厚さ(T1)よりも厚い第2厚さ(T2)と、
前記最上段耐火物(3)は炉内(21)へ押し出されないように拘束されていると共に、前記最上段耐火物(3)を下方へ向けて押圧するために配設された天端鉄皮(4)と、
からなることを特徴とする窯炉側壁の築炉構造。
【請求項2】
前記最下段耐火物(1)は、前記炉内(21)に設けられた炉底煉瓦(12)により炉内側(21a)へ押し出されないように拘束、又は、アンカーによって固定、又は、炉底煉瓦(12)とアンカーにより固定、又は金物により固定、又は、アンカーと金物により固定されていることを特徴とする請求項1記載の窯炉側壁の築炉構造。
【請求項3】
前記最上段耐火物(3)は、アンカー又は固定ピン(6)によって炉内側(21a)へ押し出されないように固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の窯炉側壁の築炉構造。
【請求項4】
前記最下段耐火物(1)と中間段耐火物(2)との間には、キー煉瓦(5)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の窯炉側壁の築炉構造。
【請求項5】
前記最下段耐火物(1)の上面が水平方向(H)となす傾斜角度(A)は、5度〜35度の範囲であることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の窯炉側壁の築炉構造。
【請求項6】
前記中間段耐火物(2)は、1個から6個の何れかよりなることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の窯炉側壁の築炉構造。
【請求項7】
前記中間段耐火物(2)の上面方向(M)と下面方向(N)のなす面角度差(B)は、1度〜10度の範囲であることを特徴とする請求項1ないし6記載の窯炉側壁の築炉構造。
【請求項8】
前記最上段耐火物(3)と前記天端鉄皮(4)との間には、膨張代として可縮性充填材(13)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の窯炉側壁の築炉構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−52731(P2012−52731A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195527(P2010−195527)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】