立体映像変換装置及び立体映像表示装置
【課題】立体視用の映像を表示する際に、画面サイズによらず引っ込み方向の視差量を、所定の視差以下で表示することができる立体映像変換装置を提供する。
【解決手段】立体映像変換装置100は、左右映像を撮像した際の撮像条件である輻輳角変換情報を抽出する撮像条件抽出部111と、左右映像を撮像した際の輻輳角を変更する映像変換部112とを備える。映像変換部112は、撮像条件抽出部111で抽出された輻輳角変換情報及び左右映像を表示させる表示画面の表示サイズ情報に基づいて、左右映像の最大視差量を算出し、算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出する輻輳角補正値算出部と、算出した輻輳角補正値に基づいて左右映像を撮像した際の輻輳角を変更させた映像を生成する輻輳角変換処理部とを備える。
【解決手段】立体映像変換装置100は、左右映像を撮像した際の撮像条件である輻輳角変換情報を抽出する撮像条件抽出部111と、左右映像を撮像した際の輻輳角を変更する映像変換部112とを備える。映像変換部112は、撮像条件抽出部111で抽出された輻輳角変換情報及び左右映像を表示させる表示画面の表示サイズ情報に基づいて、左右映像の最大視差量を算出し、算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出する輻輳角補正値算出部と、算出した輻輳角補正値に基づいて左右映像を撮像した際の輻輳角を変更させた映像を生成する輻輳角変換処理部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示する画面サイズに関係なく、規定した視差量以下の立体映像に変換、表示することが可能な立体映像変換装置及び該装置を備えた立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示装置を用いて立体映像の立体視を行うには、左眼と右眼とにそれぞれの視点に合った異なる映像を表示する必要がある。この異なる映像は両眼視差をもって撮影された左右画像であり、視聴者の両眼にそれぞれの左右画像を入射させることで、左右画像の視差量に応じた立体視が可能となる。
【0003】
左右画像の視差量は、立体視する際にどの程度ディスプレイ面より手前側に飛び出させるか、または、ディスプレイ面より奥方向に引っ込ませるかの大きな要因となる。例えば、表示装置の手前に飛び出させる場合には右眼用の画像は左眼用の画像と比較し左側に、左眼用の画像は右眼用の画像と比較し右側に表示させることで達成される。この時、左右画像の視差量が大きいほど飛び出し量は大きくなる。また、逆の視差量をもたせることで、表示装置の表示面の奥側に引っ込ませて表示をすることが可能となる。例えば、右眼用の画像は左眼用の画像と比較し右側に、左眼用の画像は右眼用の画像と比較し左側に表示させることでディスプレイ面の奥方向に引っ込ませて立体視させることができる。この時、左右画像の視差量が大きくなるほど、奥方向への引っ込み量は大きくなる。また、左右画像の視差がない場合は、ディスプレイ面上に表示されているように見える。
【0004】
つまり、表示された左右画像の視差量に応じて、立体視した際の奥行きが変わることになる。表示させる視差量に関しては、大きな視差量で表示することで眼精疲労の原因になったり、融合できなかったりする(融合限界)可能性が示唆されているため、注意が必要である。このような立体表示時の視差量に関する注意事項に関しては3Dコンソーシアムから発行されている「3DC安全ガイドライン」などでも提起されている。特に、奥行き方向に引っ込ませて表示する場合には、視聴者の瞳孔間隔以上の視差がついた表示では左右の眼球が開放方向を向くことになるため、眼精疲労の原因になり易く注意が必要である。ここで、同じ撮影条件で撮影されて、保存された左右画像を表示する際に、表示装置の大きさによって視差量が変わるため、大画面での視聴では大きな視差で表示される問題がある。
【0005】
画面サイズの違いによる視差の問題に関して図13に基づいて説明する。図13(A),(B)はそれぞれ画面サイズの異なる立体映像表示装置を視聴している状況を示した概要図で、図中、303は立体映像表示装置を示す。図13(A),(B)では表示サイズ以外の視聴条件は同一のもとしており、両眼間隔300の視聴者Xが共に同じ左右の映像データを表示した立体映像表示装置303を視聴している。図13(A)では立体映像表示装置303の画面幅はWaであり、図13(B)では立体映像表示装置303の画面幅はWbとなっており、Wa<Wbの関係となっている。
【0006】
映像データは同一であるため、図13(A)における左右映像中の対象点302L,302Rは、図13(B)においてはそれぞれ画面サイズの大きさに比例した位置である対象点302L′、302R′に表示される。ここで対象点の視差量は図13(A)では視差量daであるが、図13(B)の場合、画面サイズが変わるため、表示画面サイズに応じて視差量dbのように拡大されて表示される。このため、図13(B)のように両眼間隔300以上の視差がつく場合が生じる。このように同じ左右の映像データであってもどのようなサイズで表示するかが重要となる。
【0007】
ここで、撮影画像の視差に関して簡単に説明する。
左右映像を撮影する立体撮像装置では立体映像表示時での立体感を変化させるために2つの撮像装置の光軸に角度をつけて輻輳配置にした撮像システムがある。このように2つの撮像装置が内側を向くように輻輳を付けて左右に配置した場合、右側の撮像装置の撮像視野と左側の撮像装置の撮像視野との関係は、被写体の奥行きに応じて変化する。被写体が手前にある場合は、右側の撮像装置の撮像視野は右側に、左側の撮像装置の撮像視野は左側に位置するが、左右の撮像装置の光軸が交差する点である輻輳点では右側の撮像装置の撮像視野と左側の撮像装置の撮像視野とが一致する。さらに奥の被写体では、右側の撮像装置の撮像視野は左側に、左側の撮像装置の撮像視野は右側に位置し、左右の関係が逆転する。これを表示装置に、右側の撮像装置の画像を右眼に、左側の撮像装置の画像を左眼に表示させると、手前の被写体に対しては表示装置の手前に飛び出して見え、輻輳点の被写体は表示装置の表示面と同じ位置に見え、それより奥の被写体は表示装置の表示面より引っ込んで見えるようになる。
【0008】
各撮像装置単体の撮影条件が変わらない場合、このような2つの撮像装置の光軸のなす角である輻輳角や輻輳点により、ディスプレイ面の位置や視差量が規定される。輻輳を調整することで、注目する被写体への奥行き感の調整が行いやすいといった特徴がある一方で、輻輳のついた撮像装置で撮影された画像では背景などの遠方被写体の視差がつきやすいという問題がある。そのため、このような輻輳で撮影された画像に対しては特に、上記したように表示される画面サイズにおける視差量への注意が必要となる。
【0009】
上記した表示サイズによる視差量の調整に関して、左右画像の対応する領域ごとの視差量を算出し、算出された視差量に合わせて、撮像装置で撮影された左右画像の水平方向の表示位置である相対位置を変えて表示させる技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に記載の技術は、再生する画像の左右の相対位置を変えることで左右画像の視差量を変化させるもので、表示装置ごとに異なった表示位置で再生し、視差量を変化させることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−9421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ディスプレイの奥方向に表示される被写体の視差量を小さくさせるように左右画像の相対位置を変化させると、輻輳点より前に写る被写体(ディスプレイより前に飛び出し表示される)の視差量は急激に増加してしまう。また、逆に手前の視差量を小さくするように左右画像の相対位置を変化させると、輻輳点より後ろに写る被写体(ディスプレイより奥に引っ込み表示される)の視差量は急激に増加してしまうという課題がある。この視差量の変化に関して図14に基づいて簡単に説明する。
【0012】
図14は、輻輳のついた2つの撮像装置で得られた画像の相対位置を変化させた場合の視差量の変化を模式的に示した図である。図14において2つの撮像装置311L、311Rのそれぞれの光学中心を312L、312Rとし、距離Lpの位置にある点Pを輻輳点とする。この時の距離L1、L2のある一点での視差量は314a、314bである。背景の視差量を低減させるように相対位置を変化させた場合、左右の撮像装置311L、311Rの光学中心はそれぞれの光学中心313L、313Rとなる。
【0013】
この時、視差量314a、314bはそれぞれ視差量315a、315bとなり、輻輳点Pより後方では低減されているものの、輻輳点Pより前方では大きく拡大していることがわかる。また、立体視の際には輻輳点Pの位置がディスプレイ面上に見えていたが、左右画像の相対位置を変化させることでディスプレイ面は点Qの位置(距離Lq)へと変化する。このため、立体視の際には輻輳点の位置が変わったように認識され、ディスプレイ面上に表示される被写体の位置も変化してしまい、表示画像における飛び出しと引っ込みの割合が異なった立体表示となる(視差0の位置が大きく変化する)。さらには左右映像の領域ごとの視差量の算出が必要であり、処理量が非常に大きなものとなってしまう。
【0014】
本発明は、上述の実情に鑑みてなされたもので、立体視用の映像を表示する際に、画面サイズによらず引っ込み方向の視差量を、所定の視差以下で表示することができる立体映像変換装置及び該装置を備えた立体映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、視点の異なる2つ以上の映像を入力し、該入力した2つ以上の映像の輻輳角を変更して出力する立体映像変換装置であって、前記2つ以上の映像を撮像した際の撮像条件である輻輳角変換情報を抽出する撮像条件抽出部と、前記2つ以上の映像を撮像した際の輻輳角を変更する映像変換部とを備え、該映像変換部は、前記撮像条件抽出部により抽出された輻輳角変換情報及び前記2つ以上の映像を表示させる表示画面の表示サイズ情報に基づいて、前記2つ以上の映像の最大視差量を算出し、該算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出する輻輳角補正値算出部と、該算出した輻輳角補正値に基づいて前記2つ以上の映像を撮像した際の輻輳角を変更させた映像を生成する輻輳角変換処理部とを備えたことを特徴としたものである。
【0016】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記映像変換部は、前記輻輳角変更前の輻輳点の位置と前記輻輳角変更後の輻輳点の位置とが一致するように前記輻輳角変換処理部で生成された映像の相対位置を変換する相対位置変換処理部を備えたことを特徴としたものである。
【0017】
第3の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記輻輳角変換処理部は、前記2つ以上の映像の最大視差量を低減させるように輻輳角を変更させることを特徴としたものである。
【0018】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段において、前記予め指定された最大視差量は、視聴者の目幅間隔であることを特徴としたものである。
【0019】
第5の技術手段は、第4の技術手段において、前記視聴者の目幅間隔は、5cmであることを特徴としたものである。
【0020】
第6の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記輻輳角変換処理部は、前記2つ以上の映像の最大視差量を拡大させるように輻輳角を変更させることを特徴としたものである。
【0021】
第7の技術手段は、第1〜第6のいずれか1の技術手段において、前記撮像条件抽出部は、前記撮像条件として、さらに、前記2つ以上の映像を撮像した際の基線長情報及び画角情報を抽出し、前記輻輳角補正値算出部は、前記表示サイズ情報、前記輻輳角情報、前記基線長情報、及び前記画角情報に基づいて、前記2つ以上の映像の最大視差量を算出し、該算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出することを特徴としたものである。
【0022】
第8の技術手段は、第1〜第7のいずれか1の技術手段において、前記撮像条件抽出部は、前記2つ以上の映像のメタデータから前記撮像条件を抽出することを特徴としたものである。
【0023】
第9の技術手段は、第1〜第7のいずれか1の技術手段において、前記撮像条件抽出部は、前記2つ以上の映像それぞれを撮像した撮像装置を特定する機器情報に基づいて、該機器情報と前記撮像条件とが対応付けられたテーブルを参照することで前記撮像条件を抽出することを特徴としたものである。
【0024】
第10の技術手段は、第1〜第9のいずれか1の技術手段における立体映像変換装置を備えた立体映像表示装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、どのような画面サイズで表示しても輻輳点の変位と飛び出しの視差の拡大を低減しつつ、引っ込み方向の視差量を所定の視差量以下に調整して表示させることができるため、視聴者に眼精疲労などの負担をかけることがない。
また、輻輳点の位置を変化させずに、引っ込み方向の視差量を所定の視差量以下に調整することができるため、ディスプレイ面上に表示される視差0の被写体位置が変化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による立体映像変換装置の概略構成例を示す図である。
【図2】輻輳のついた撮像装置で撮影した場合の光学系を上方から見た場合の概略図である。
【図3】輻輳配置となった2つの撮像装置の視差に関して説明するための図である。
【図4】表示画面上での視差量を示す図である。
【図5】画面幅に対する視差量の割合と視距離との対応関係の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る映像変換部の構成例を示すブロック図である。
【図7】輻輳角補正値算出部の処理の一例を説明するためのフロー図である。
【図8】本発明の第1の実施例における輻輳角変換処理の概要を説明するための図である。
【図9】輻輳角変換による視差量と左右画像の相対位置を変えた場合の視差量とを比較して説明するための概念図である。
【図10】本発明の第2の実施例に係る映像変換部の構成例を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施例における輻輳角変換処理及び映像相対位置変換処理の概要を説明するための図である。
【図12】片側の撮像装置にのみ輻輳角がついた場合の輻輳角変換処理の概要を説明するための図である。
【図13】画面サイズの違いによる視差の問題に関して説明するための図である。
【図14】輻輳のついた2つの撮像装置で得られた画像の相対位置を変化させた場合の視差量の変化を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係わる立体映像変換装置及び該装置を備えた立体映像表示装置について各実施例を挙げ図面を参照しながら説明する。
【0028】
<第1の実施例>
図1は、本発明による立体映像変換装置の概略構成例を示す図である。図1(A)は立体映像変換装置を含む立体映像変換システムの構成例を示す図で、図中、100は立体映像変換装置、101は映像入力装置、102は映像出力装置を示す。また、図1(B)は立体映像変換装置100の構成例を示すブロック図である。この立体映像変換装置100は、撮像条件抽出部111、映像変換部112を備え、映像入力装置101から得られる2つ以上の視点の異なる映像の一例として左右の映像を撮像した際の輻輳角を変更(例えば、射影変換など)し、この輻輳角が変更された左右映像を映像出力装置102に出力する。
【0029】
また、映像入力装置101または立体映像変換装置100に入力する左右映像は、例えばサイド・バイ・サイド方式のように1枚の映像(1フレーム)中に異なる視点の映像が混在している場合も含み、2つ以上の視点の異なる映像が映像入力装置101または立体映像変換装置100に入力されればよく、2つ以上の視点の異なる映像を転送する方式(フォーマット)はどのようなものであっても良い。
【0030】
映像入力装置101は、例えば、立体映像撮像装置101a、再生装置101b、通信ネットワーク101cなどであり、両眼視差をもつ左眼・右眼用の映像を立体映像変換装置100へ入力する。立体映像変換装置100は、映像入力装置101から入力された左右映像に対して、指定最大視差量、表示画面の表示サイズ情報、及び撮像条件情報に基づいて、映像変換部112が左右映像の例えば射影変換を行い、表示画面サイズの大きさに関わらず、予め指定された最大視差量以内で表示させる左右映像を生成する。映像変換部112で生成された左右映像は映像出力装置102に渡される。映像出力装置102は、左右映像を立体映像として表示する立体映像表示装置102a、左右映像を保存する記録装置102b、左右映像の伝送を行う通信ネットワーク102cなど、目的に応じて立体映像変換装置100からの左右映像を出力するものである。なお、立体映像表示装置102aが立体映像変換装置100を一体的に備える構成としてもよい。
【0031】
以下では、立体映像変換装置100への入力映像は輻輳のついた撮像装置で撮影された両眼視差をもつ立体視用の映像である場合を代表例として説明する。
図2は、輻輳のついた撮像装置で撮影した場合の光学系に関して上方から見た場合の概略図である。図2では簡略化のため2次元で表記し、2つの撮像装置のうち片側の撮像装置のみ記載している。2つの撮像装置201Lと201Rが基準面202上に左側に左撮像装置201L、右側に右撮像装置201Rとなるように距離Wbの間隔で配置されている。
【0032】
撮像装置201L、201Rはそれぞれ内側に傾くような輻輳をもっており、その時の左撮像装置201Lの光学中心を中心軸CLとする。また、左撮像装置201Lは撮影画角203で撮影され、その場合の撮影範囲の両端が左端204aと右端204bである。撮像装置201Lで撮影された映像では画角203内(左端204aと右端204bの間の領域)に配置されている被写体が撮影される。ここで、基準面202から距離Lo離れた平面205上に被写体Oがあり、被写体Oを通り中心軸CLに対して垂直でかつ画角端204a、204bの範囲の平面を206、また、中心軸CLに対して垂直でかつ撮像装置201Lの原点(基準面202と中心軸CLとの交点)から焦点距離f離れた平面上にある仮想のセンサ面を207とすると、被写体Oはセンサ面207上の結像点O′に結像される。
【0033】
この時、センサ面207の幅wcに対するセンサ面207上で中心軸CLと結像点O′間の距離w′の割合は平面206の幅wに対する平面206上での中心軸CLと被写体Oとの距離dLとの割合と等価である。ここで、この割合を距離Loでの画像幅に対する視差の割合をDLとすると、視差の割合DLは下記のように示される。
DL = w’/wc = dL/ w …式(1)
これより、撮像装置201Lで撮影された映像をそのまま表示させると表示画面幅Wに対して(W×DL)分だけ中心よりずれた位置に被写体Oが表示されることになる。
【0034】
ここで、同様に右の撮像装置でも考える。図3には左右の撮像装置が互いに内側に向くように輻輳して配置されている状態を示している。図2と同じ記号に関しては同様のものを示している。図3において、2つの撮像装置201Lと201Rは距離Wbの間隔で配置され、それぞれの撮像装置の中心軸は撮像装置201Lでは中心軸CL、撮像装置201Rでは中心軸CRとなっている。2つの中心軸CLとCRの交点は輻輳点Pであり、基準面202から輻輳点Pまでの距離を輻輳点距離Lp、光軸CL,CRのなす角を輻輳角θとする。ここで、基準面202から距離Lo離れたところに被写体Oが存在する場合、図2での説明と同様に2つの撮像装置での撮影画像での被写体Oの画像幅に視差の割合DL,DRは、被写体Oを通りそれぞれの光軸に対して垂直な面上での距離dL,dRを用いて、
DL = dL/ wL …式(2)
DR = dR/ wR …式(3)
と表される。ここでwL、wRは前述の図2のwに対応し、それぞれのカメラにおいての点Oを通り、光軸に垂直でかつ撮影画角内における幅に相当する。
【0035】
そして、2つの撮像装置で撮影された画像を立体視用の画像として表示した場合、図4に示す表示画面400により例示すると、被写体Oは撮像装置201Lの画像ではOLに、撮像装置201Rの画像ではORにと左右画像で異なった位置に表示される。この時の表示上の視差量を視差量dとする。視差量dは視差の割合DL,DRに応じた視差の合計で決まり、例えば、表示画面400の画面幅がWの場合には、
d=(DL+DR)×W …式(4)
で示される。
【0036】
つまり、距離Lo上に存在する被写体Oは画面幅Wで表示される場合には視差量dとして表示されることがわかる。ただし、ここでは撮像装置からの取得画像をそのまま表示させた場合として説明している。左右映像の切り出しなどをおこなっている場合は、切り出し位置やサイズに応じた補正が必要である。その場合、光学中心と切り出し中心の位置や切り出しサイズの割合を係数として視差量dを補正する。また、輻輳がついているため、基準面202と各撮像装置の光軸と垂直な平面とが平行ではないが、輻輳角による左右映像間の歪みを補正するために同一平面上に補正する場合は、入力映像は基準面202と平行な面に変換した画像でも構わない。その場合、視差量dは変換パラメータに応じた補正を加えればよい。また、厳密には撮像装置201のセンサは画素をもつため、画素被写体の結像点O′はセンサ面207上のある画素に結像されることになる。そのため、画素ピッチや大きさによって画素単位で変位することになるが、微小量であるためここでは画素の概念を外して説明している。
【0037】
次に、輻輳角による遠景の最大視差に関して説明する。
通常の映像には視差量の大きな被写体と視差量の小さな被写体とが含まれているが、例えば、入力映像に含まれるある被写体の視差量が表示画面幅Wに対してt%であれば、表示装置で表示される視差量は表示画面幅Wのt%となり、視差量は、W×t/100、となる。ここで、被写体距離と視差の対応関係について例を用いて説明する。例えば、前述の図3において、撮像装置の間隔Wbを65mm、撮像装置の画角を52度、輻輳角θを2.5度とした場合、輻輳点までの距離は約1.5mとなり、1.5mより遠方の被写体には引っ込み方向の視差がつく。このような撮影条件において、被写体Oの距離Loの値を輻輳点からさらに遠方に変化させた場合に被写体Oにおける画面幅に対する視差量の割合がどのように変化するのかを図5に示す。図5に示すように被写体Oが無限遠にある場合には表示画面幅に対する視差量の割合はある一定の値の約4.5%に収束する。この場合、例えば表示画面幅が132.9cmである映像表示装置に表示した際には、最大視差量は132.9×4.5/100≒6.0cmとなり、子供の平均的な目幅間隔の5cmよりも大きな視差となる。
【0038】
一般的に2つの撮像装置から得られた遠方の視差の割合は無限遠で収束し、この収束値は撮像装置間の輻輳角や基線長、撮像装置の画角によっても変化する。例えば、被写体Oにおける視差の割合DL+DRは、2つの撮像装置の画角を同じ値θvとし、2つの撮像装置の光軸となす角度が平面202に対して垂直な面上で等分されるとすると、Oが無限遠にあるものとした場合、撮像装置の画角θvと2つの輻輳角θを使って近似的に、
DL+DR≒α×(Tan(θ/2)/Tan(θv/2)) …式(5)
と示すことができる。ここでαはカメラ配置やカメラパラメータで決まる画角と輻輳角に依存しない係数である。つまり、最大の視差の割合である収束値は輻輳角θと撮像装置の画角θvによって示すことができる。ただし、ここでは無限遠L0に対して基線長は十分に小さくなる値としている。また、θが0の場合、つまり2つの撮像装置が平行に配置されている場合は、無限遠の視差の割合は0に収束する。
【0039】
このような収束値を遠方の最大視差の割合Xとすると、輻輳の構成で撮影された映像を画面幅Wのディスプレイで表示した場合、引っ込み方向の視差として最大でW×X/100の視差がつく場合がある。前述したように立体視において、引っ込み方向の視差が視聴者の目幅間隔以下にするなど、ある規定値以下に抑えて表示する必要がある。このように、最大視差の割合Xは撮像条件情報からを算出することが可能であり、また、その対象となる画像においては得られた最大視差の割合を超える視差はつかないとも言えるため、左右映像の最大視差量の割合Xを基準とすることで表示される最大視差量を規定することができる。図5で示すように、一般的に距離に対する視差の割合は急激に増加するため、ユーザが輻輳のついた撮像装置で撮影した場合には、背景に遠方の被写体が入る場合が多く、画像の立体視時での背景の視差が最大視差の割合Xに近い視差となる可能性は高くなり、左右映像の最大視差W×X/100であるとみなしてもさほど問題とはならない。そのため、本発明では左右映像の最大視差量の割合Xを基準とすることで画面全体の視差量の制御を行う。
【0040】
撮像条件抽出部111は、前述したような左右映像の最大視差の割合を算出するための撮像条件を抽出する。具体的には、入力された左右映像について、撮像装置の位置関係を示すパラメータと撮像装置のカメラパラメータとを取得し、変換に必要な情報である輻輳角変換情報を映像変換部112へと受け渡す。撮像装置の位置関係を示すパラメータとしては、左右映像を撮像した2つの撮像装置の光軸間の角度である輻輳角情報や、2つの撮像装置の間隔(すなわち、2つの撮像装置の光学中心の間隔)を示す基線長情報を抽出する。この輻輳角は、輻輳点までの距離情報と基線長から算出しても構わない。また、撮像装置のカメラパラメータとしては、撮像装置の撮影範囲を示す画角情報と撮影解像度とを抽出する。画角情報は撮像装置の焦点距離とセンササイズの情報を用いることで算出しても構わない。
【0041】
このような撮像装置間の位置関係を示すパラメータや、個々のカメラの撮影条件を示すパラメータを抽出する一つの方法としては、左右映像を記録した映像ファイルのメタデータから抽出することが考えられる。例えば、静止画の場合、左右画像を格納するファイルフォーマットとして、一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)が規格化している「CIPA DC−007 マルチピクチャーフォーマット(MPF)」があり、このようなファイルには、メタデータに基線長情報や輻輳角情報を入力する領域が存在する。このようなファイルのメタデータから必要なパラメータを抽出することができる。撮影画角などの撮像装置の光学情報は、各画像のExifデータより抽出することも可能である。例えば、撮影画像のExifデータのうち撮影時の焦点距離情報や画像サイズ、画素密度情報などから画角を求めてもよい。撮影画角に関しては3D表示時の画角を基準とし、切り出しなどされている場合は、切り出しサイズ分の補正が必要である。
【0042】
もし、メタデータから必要な情報が得られない場合は、左右映像を撮像した撮像装置を特定する機器情報に基づいて、その機器情報と、位置関係を示すパラメータや個々のカメラの撮影条件を示すパラメータとが対応付けられたテーブルを参照することで輻輳角情報などの必要なパラメータを取得するものでも構わない。例えば、撮像条件抽出部111が、撮像装置の機器情報(機器固有の機器名など)と、上記の各パラメータとを対応付けたパラメータ参照テーブルを保持してもよい。撮像条件抽出部111は、左右映像を撮像した撮像装置の機器名を取得すると、パラメータ参照テーブルからその機器名に対応したパラメータを抽出する。なお、機器名は画像ファイルのExifやHDMI(High Definition Multimedia Interface)で接続した際にEDID(Extended Display Identification Data)などから取得できる。機器名とパラメータはネットワークや放送波などを利用して更新することも可能である。また、パラメータ参照テーブルは、撮像条件抽出部111に保持しているものとして説明したが、このテーブルが外部にあり、ネットワークを通じて参照する方法でも構わない。撮像条件抽出部111ではこのようにして得られた変換用のパラメータを映像変換部112へと出力する。
【0043】
次に、表示サイズ情報に関して説明する。ここでの表示サイズ情報は、映像変換部112から出力される左右映像が表示される表示画面の画面サイズを示し、実際に表示される画面幅に関する情報である。立体映像表示装置102aに接続された場合には、立体映像表示装置102aから表示画面サイズを取得し、また、記録装置102bへの保存や、通信ネットワーク102cに出力する場合には想定される表示画面サイズとなる。想定される表示画面サイズは例えばユーザが指定する方法などでも構わない。このように、立体映像表示装置102aから取得またはユーザにより指定された表示サイズ情報は立体映像変換装置100の映像変換部112へ入力される。
【0044】
次に、指定最大視差量に関して説明する。指定最大視差量は立体表示された場合に、実際に表示される引っ込み方向の最大視差量の値であり、視聴者が表示画面を見た際に視認される視差量(実寸値)である。例えば、引っ込み方向の視差量は目幅間隔以上では眼精疲労の原因になりやすいため、最大視差量は視聴者の目幅間隔以下に設定する。視聴者の目幅間隔は一般的には大人では65mm、子供では50mmと言われている。そのため、子供の視聴も考慮して指定最大視差量を子供の平均目幅間隔である50mm以下とするのが望ましい。このため、指定最大視差量として例えば50mmを指定すると、出力映像を表示サイズ情報に対応したサイズで立体表示させた際には、引っ込み方向の視差は50mm以下として表示される。なお、ここでは指定最大視差量を50mmに指定したが、ユーザが適宜指定するものでもよく、ユーザの好み、個人差を考慮した視差量での表示が可能となる。このように指定された指定最大視差量は立体映像変換装置100の映像変換部112へ入力される。
【0045】
〔映像変換部〕
図6は、本発明の第1の実施例に係る映像変換部112の構成例を示すブロック図である。映像変換部112は、撮像条件抽出部111で抽出された輻輳角変換情報及び左右映像を表示させる表示画面の表示サイズ情報に基づいて、左右映像の最大視差量を算出し、算出した最大視差量が予め指定された指定最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出する輻輳角補正値算出部112aと、輻輳角補正値算出部112aで算出した輻輳角補正値に基づいて左右映像を撮像した際の輻輳角を変更させた映像を生成する輻輳角変換処理部112bとから構成される。
【0046】
すなわち、映像変換部112は、撮像条件抽出部111から入力される左右映像の輻輳角変換情報と、左右映像を表示する表示画面の表示サイズ情報とから、表示装置の表示画面より奥側に引っ込む方向の最大視差量を算出し、算出した最大視差量が指定最大視差量を超えていないかを判定する。超えている場合は、表示装置の表示画面より奥側に引っ込む方向の最大視差量が指定最大視差量以下の視差量となるように、左右映像の輻輳角を調整した映像を生成し、これを出力する。また、算出した最大視差量が指定最大視差量を超えていない場合は、左右映像をそのまま出力する。
【0047】
〔輻輳角補正値算出部〕
次に、輻輳角補正値算出部112aの処理の一例について、図7のフローチャートに基づいて説明する。輻輳角補正値算出部112aは、左右入力映像の輻輳角変換情報と、左右入力映像を表示する表示装置の表示サイズ情報とを入力し、表示装置の表示画面より奥側に引っ込む方向の最大視差量を算出する(ステップS1)。そして、算出した最大視差値が最大視差量情報によって示される指定最大視差量を超えているか否かを判定する(ステップS2)。指定最大視差量を超えている場合(YESの場合)、表示装置の表示画面より奥側に引っ込む方向の左右入力映像の最大視差値が指定最大視差量以下となるように輻輳角を調整するための輻輳角補正値を左右入力映像毎に算出する(ステップS3)。また、ステップS2において、指定最大視差量を超えていない場合(NOの場合)、左右入力映像の輻輳角補正値をともに0にする(ステップS4)。そして、算出した左右入力映像毎の輻輳角補正値を輻輳角変換処理部112bへ出力する。
【0048】
ステップS1での入力画像に対応する最大視差量の算出には、前述したように、撮像条件抽出部111から受け渡された輻輳角情報や撮影画角情報などの輻輳角変換情報を用いて入力画像の最大視差の割合Xを算出する。この場合、表示サイズ情報より表示画面の幅Wが得られるので、その表示サイズで入力画像を表示した場合には最大視差量dは、d=W×X/100となる。次に、ステップS2において、入力された指定最大視差量d’と比較を行い、d>d’であればステップS3にて指定最大視差量以下となるように補正値算出を行う。ここで、視差量をd’とするためには補正後の視差の割合X’が、X’=d’/W×100(%)となるように輻輳角を変換する必要がある。撮影画角が固定である場合、最大の視差の割合は輻輳角によって規定できるため、最大の視差の割合がXとなる場合の輻輳角をθ、最大の視差が割合X’となる場合の輻輳角をθ’とすると、輻輳角の変化量Δθ=θ’−θに対応する左右入力映像ごとの輻輳角補正値を輻輳角変換処理部112bへ出力する。
【0049】
本例では、指定最大視差量を例えば、5cm、表示サイズ情報から得られた表示画面幅が101.8cmとした場合に、入力画像の最大視差の割合と表示画像幅101.8cmから算出した視差量が5cmを超えている場合には変換が必要になる。変換後の最大視差の割合X’はX’=50/1018×100から求められ、この場合、X’=4.9%となる。前述の式(5)より、この場合での輻輳角θ’を算出し、撮像条件抽出部111から得られた輻輳角θとの差分Δθに対応する左右画像の輻輳角補正値をそれぞれ求める。例えば左右の撮像装置が同量の輻輳角で配置されている場合には、左右画像の輻輳角補正値はΔθ/2となる。
【0050】
〔輻輳角変換処理部〕
次に、輻輳角変換処理部112bについて説明する。輻輳角変換処理部112bは、輻輳角補正値算出部112aにて算出した左右入力映像毎の輻輳角補正値に基づいて、入力左右映像の映像変換を行って、最大視差量が指定最大視差量以下となるように輻輳角を変換した左右映像を出力する。
【0051】
以下、図8に基づいて輻輳角変換による画像変換処理について説明する。まず、基本的なモデルとして輻輳のない平行配置から輻輳を付けた配置への変換を例にしての輻輳角変換に関して述べる。左撮像装置201Lと右撮像装置201Rが平行法にて立体画像を撮影する場合は、各撮像装置の光軸がベースラインWbと垂直となるように設置する。平行法の場合の左右撮像装置の光軸をZpL、ZpRとすると、各々の光軸は平行となる。また、左右撮像装置が交差法にて立体画像を撮影する場合は、左右撮像装置の光軸が交差する点(以下、クロスポイント)が発生する。このクロスポイントを通り、平行法の場合の左右撮像装置の光軸ZpL、ZpRと平行である軸をZCとする。
【0052】
ここで、クロスポイントが図8に示すZC軸上の点Pの位置となるように左撮像装置201Lに輻輳角を付けるには、光学中心OcLを中心にθLだけ光軸ZpLを紙面右側に回転させる。同様に、右撮像装置201Rに輻輳角を付けるには、光学中心OcRを中心にθRだけ光軸ZpRを紙面左側に回転させる。回転後の左撮像装置201Lの3次元座標系は、光軸(Z軸)がZcL、X軸がXcL、Y軸が図8の紙面奥側と表わすことができる。同様に、回転後の右撮像装置201Rの3次元座標系は光軸(Z軸)がZcR、X軸がXcR、Y軸が図8の紙面奥側と表わすことができる。左撮像装置201Lの輻輳角成分θLと、右撮像装置201Rの輻輳角成分θRを用いてクロスポイントPの輻輳角θを表すと、下記のようにθLとθRの和で表わすことができる。
θ=θL+θR …式(6)
【0053】
次に、本実施例における輻輳角の変換方法について詳細に説明する。左撮像装置201Lおよび右撮像装置201Rの各3次元座標系について、各々のY軸を中心に回転させることにより輻輳角を変換することができる。左撮像装置201Lは、光学中心OcLを中心に−θyLだけ光軸ZcLを紙面左側に回転させる。同様に、右撮像装置201Rは、光学中心OcRを中心にθyRだけ光軸ZcRを紙面右側に回転させる。
【0054】
回転後(輻輳角変換後)の左撮像装置201Lの3次元座標系は、光軸(Z軸)がZcL′、X軸がXcL′、Y軸が図8の紙面奥側となる。同様に、右撮像装置201Rの3次元座標系は、光軸(Z軸)がZcR′、X軸がXcR′、Y軸が図8の紙面奥側となる。輻輳角の変換によって、変換前のクロスポイントPがP′に移動する。クロスポイントP′の左撮像装置201Lの輻輳角成分θL′と、右撮像装置201Rの輻輳角成分θR′は、下記のように表すことができる。
θL′=θL−θyL …式(7)
θR′=θR−θyR …式(8)
なお、θyL及びθyRは輻輳角補正値に相当する。
【0055】
さらに、クロスポイントP′の輻輳角θ′は、θL′とθR′の和で表わすことができる。
θ′=θL′+θR′ …式(9)
【0056】
〔輻輳角変換画像の生成〕
次に、クロスポイントがP、輻輳角θで撮影された画像を、クロスポイントP′、輻輳角θ′の画像に変換する方法について説明する。3次元上の点X= [Xx Xy Xz]Tを撮像装置の3次元座標系のY軸を中心に回転させた点X′= [X’x X’y X’z]Tは、下記の式(10)で示されるY軸回転式で表わすことができる。
X′=RX …式(10)
【数1】
R:Y軸の回転を表す回転行列
θy:Y軸の回転角(回転方向は右ねじの方向)
【0057】
つまり、これは、回転前の点Xに回転行列Rを乗ずることにより点X′に変換(回転)する。Y軸を右ねじの方向にθyだけ回転させたとすると、回転行列Rは、θyのsin、cos関数の組み合わせで表わすことができる。
【0058】
以上の説明は、3次元上の点Xを回転させるものであるが、これを撮影画像上の点x=[Xx Xy 1]Tについて回転させる方法について説明する。左撮像装置201Lによって輻輳角θLで撮影された画像上の点xを、輻輳角θL′の画像上の点x′=[xx’ xy’ 1]Tに変換(回転)するには、下記の式(11)で示される輻輳角変換式によって行う。
sx′=ARA−1x …式(11)
【数2】
A:カメラ内部のパラメータ
fx,fy:X,Y軸成分の焦点距離
cx,cy:主点座標
s:スケール係数(右辺のz成分の逆数)
【0059】
左撮像装置201LのX軸成分の焦点距離をfx、Y軸成分の焦点距離をfy、撮影画像面と光軸ZcLが交わる点(以下、主点座標)をcx、cyとすると、左撮像装置201Lの光学特性を表すパラメータ(以下、内部パラメータ)は、3×3の行列Aで表わすことができる。ここで、主点座標を表す座標系は、2次元の撮影画像面上であり、原点は撮影画像の左上座標、X軸は撮影画像右方向が正、Y軸は撮影画像下方向が正である。また、輻輳角θL′へ回転させるための回転行列Rは、前述の式(10)の回転行列Rのθyに、Y軸を中心に回転させる回転角−θyLを代入することで表わすことができる。
【0060】
輻輳角θL′への変換は、内部パラメータAと回転行列Rによって行う。第一に、輻輳角θLの撮影画像上の点xに内部パラメータAの逆行列を乗じて、z成分の大きさが1の正規化座標系に変換する。第二に、Y軸周りに−θyL回転する回転行列Rを乗じた後、内部パラメータAを乗ずることで、輻輳角θL′の画像上の点に回転(変換)される。ここで、変換結果座標(式(11)の右辺の算出結果)のz成分は大きさが1とはならない。そのため第三として、z成分が1となるように変換結果座標に対し、変換結果座標のz成分の逆数sを乗じてスケーリングする。
【0061】
以上の変換により、輻輳角θLの画像上の点xを輻輳角θL′の画像上の点x′に変換することができる。これを左撮像装置201Lの輻輳角θLの画像上の全ての点で行うことで、輻輳角がθL′となる画像を生成することができる。
【0062】
次に、右撮像装置201Rによって輻輳角θRで撮影された画像上の点xを、輻輳角θR′の画像上の点x′= [xx’ xy’ 1]Tに変換(回転)する方法について説明する。右撮像装置201Rの内部パラメータをAとし、輻輳角θR′へ回転させるための前述の式(10)の回転行列Rのθyに、Y軸を中心に回転させる回転角θyRを代入して求めた値とすることを除いて、前述の左撮像装置201Lの画像生成方法と同様である。
【0063】
〔輻輳角変換と相対位置変換の視差量比較〕
図9は、輻輳角変換による視差量と左右画像の相対位置を変えた場合の視差量とを比較して説明するための概念図である。本発明での左右画像の相対位置とはどちらか片側の画像に対してもう片側の画像を水平方向にシフトさせることや両画像共にシフトさせることを意味し、今後の記載で相対位置とはこのように定義するものとする。2つの撮像装置201L、201Rの光軸がそれぞれCL、CRであり、基線長Wb、輻輳角θとなった配置となっている。この時輻輳点はPの位置(基準面202からの距離Lp)になる。また、基準面202から距離Loでの視差量を視差量d、低減後の視差量を視差量d′とする。実際には表示サイズと視差の割合によって表示上の視差量が規定されるが、説明の簡略化のため、ここでは表示サイズ、撮影画角を同じ条件とし、視差量dとd’の相対値がそのまま表示上の視差の相対値になるものとしている。
【0064】
上述した輻輳角変換によって視差量d′に収まるように輻輳角θをθ′に変換した場合の中心軸をCL′、CR′とし、その時の輻輳点はP′の位置(基準面202からの距離Lp′)になる。また、従来技術として左右映像の相対位置を変化させて視差量dを視差量d′にした場合、それぞれの光軸がCL0、CR0となり、その輻輳点はQの位置になる。図9からも分かるように、本発明による輻輳角変換を行った場合、相対位置を変化させる従来技術と比べ、輻輳点後方、つまり背景の方向の視差量を共に同じ視差量以内になるようにすると輻輳点前方の視差の拡大量が低減されていることがわかる。また、変換前の輻輳点Pからの変位量(P〜P′)が相対位置を変化させる場合の変位量(P〜Q)に比べて低減されている。厳密には輻輳点は2つの撮像装置の光軸の交わる点で規定されるが、ここでの輻輳点位置は立体視した際の見た目上での輻輳点の位置(視差が0になる位置)としている。
【0065】
このように、本実施例によれば、輻輳点前方被写体の視差量の増加量を低減させつつ、引っ込み方向の視差量を指定する視差量以下として表示することが可能となる。また、表示させる画面サイズに関わらず指定する視差量以下にして表示することが可能であるので、どのような画面サイズの表示装置にも適用が可能であり、眼精疲労の原因となる視差の大きな映像であっても、許容される視差量の映像に変換して表示させることができる。
【0066】
さらには、輻輳点が大きく変位することなく視差制御が可能であるので、立体視した際に飛び出しと引っ込みの位置関係を大きく変えることなく、撮影者の意図を反映させた立体表示が可能となる。
また、視差量を調整する手法として2つの撮像装置から得られた画像から領域ごとの視差情報を算出し、この視差情報を用いて画像変換させるという手法もあるが、視差算出のための処理量が膨大であることや画像領域全体で精度のよい視差情報を得ることが困難であるなどの大きな課題もある。本発明ではこのような視差算出を行う必要がなく、簡単且つ低負荷の処理で視差制御が可能であり、リアルタイムでの変換処理が可能となる。
【0067】
<第2の実施例>
図10は、本発明の第2の実施例に係る映像変換部の構成例を示すブロック図である。図10の映像変換部112は、前述の第1の実施例の映像変換部112(図6)の構成を変更したものであり、図6の映像変換部112を除いた構成に関しては、第1の実施例と同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0068】
図10の映像変換部112は、前述の図6に示した輻輳角補正値算出部112aと、輻輳角変換処理部112bとに加え、さらに、相対位置変換処理部112cを含んで構成される。輻輳角補正値算出部112aと輻輳角変換処理部112bに関しては前述の第1の実施例に記載した処理内容と同じであるため、ここでの説明は省略する。相対位置変換処理部112cは、射影変換前の輻輳点の位置と射影変換後の輻輳点の位置とが一致するように輻輳角変換処理部112bで射影変換された映像の相対位置を変換する。
【0069】
図11は、輻輳角変換処理及び映像相対位置変換処理による視差量制御の一例を説明するための図である。前述の第1の実施例による輻輳角変換処理では、表示装置より奥側の最大視差量を指定最大視差量以下とすることができる。しかし、輻輳角変換前よりクロスポイントが3次元上の奥側(図11の点Pから点P′)に移動し、表示装置の表示画面より手前に飛び出す被写体が変わってしまう。例えば、3次元上での被写体の位置が輻輳角変換前のクロスポイントPにあるとすると、輻輳角変換前(左右光軸がCLとCR)では左右映像の視差量が0である。
【0070】
しかし、輻輳角変換後(左右光軸がCL′、CR′)では、視差が発生する。左撮像装置201LではCL′の右側、右撮像装置201RではCR′の左側に点Pが投影されるため、これら投影点間の距離だけ視差量が発生することになる。そのため、輻輳角変換前の点Pは、表示装置の表示画面上にあったが、輻輳角変換により点Pは表示画面の手前側に移動して立体視されることになる。これは、第1の実施例の輻輳角変換処理によって、映像制作者の意図と異なる映像に変換することになり、映像変換として適切でない場合がある。
【0071】
表示装置の表示画面に位置するべき被写体(クロスポイントの位置)を変えずに、表示面奥側の最大視差量を指定最大視差量以下とするには、例えば、輻輳角変換前のクロスポイントPを中心に左右光軸(CL、CR)を回転させることによって達成できる。これについて図11を例にとって説明する。図11の輻輳角変換前の光軸CLとCRでは、最大視差量dが指定最大視差量Dlimitを超えている。これを補正するために、クロスポイントPを回転中心とし、光軸CLを紙面に向かって左回り、光軸CRを紙面に向かって右まわりに回転させることによって、クロスポイントPを移動させることなく、表示装置の表示画面の奥側の最大視差量が指定最大視差量Dlimit以下とすることが可能となる。
【0072】
この回転によって左撮像装置201Lの光学中心OLはOL′に、右撮像装置201Rの光学中心ORはOR′に移動し、左撮像装置201Lの光軸CLはCL′′に、右撮像装置201Rの光軸CRはCR′′に回転する。回転後の輻輳角はθ′となる。
以上のように、左右映像をクロスポイントPを中心に回転することによって、表示画面奥側の最大視差量を指定最大視差量以下とし、クロスポイントが移動しない映像に変換することができる。
【0073】
しかしながら、左右撮像映像からクロスポイントPを中心に各映像を回転させることは容易ではない。そこで、第1の実施例による輻輳角変換処理と、変換後の左右映像の相対位置を変換する処理とを組み合わせることによって、表示画面奥側の最大視差量を指定最大視差量以下とし、クロスポイントが移動しない映像に変換する処理を実現させる。これについて図11に基づいて説明する。
【0074】
図11において、輻輳角変換前の左右撮像装置201L、201Rの光軸をそれぞれCL、CR、その輻輳角をθで表わしている。このままでは、表示装置の表示画面奥側の最大視差量dが指定最大視差量Dlimitを超えているため、第1の実施例で行った輻輳角変換処理を行う。輻輳角変換処理では、クロスポイントPを中心に回転させた場合の輻輳角θ′と同じ輻輳角となるように左右の光軸CL、CRをそれぞれ光学中心OL、ORを中心に回転させる。
【0075】
輻輳角変換処理を行った後の左右の光軸は、CLがCL′、CRがCR′となり、このときの輻輳角はθ′となる。この輻輳角変換処理により表示画面奥側の最大視差量d′は、指定最大視差量Dlimitより小さくなるが、クロスポイントPがP′に移動する。そこで、クロスポイントP′をPの位置に戻すため、輻輳角変換処理後の左右映像全体を、左映像は紙面に向かって右側、右映像は紙面に向かって左側にシフトさせる。そのシフト量は、3次元上のクロスポイントPの位置の左右投影点間の視差が0となるように左右映像全体をシフトさせる。左右映像のシフトの結果、光学中心OL、ORがそれぞれOL′、OR′に移動し、光軸CL′、CR′がそれぞれCL′′、CR′′に移動する。これは、クロスポイントPを中心に回転させた場合と同じ映像変換処理したものとみなすことができる。
【0076】
以上により、輻輳角変換後の輻輳角θ′を保ったまま、輻輳角変換後のクロスポイントP′を輻輳角変換前のクロスポイントPに戻すことが可能となる。本実施例の処理を行うことにより、第1の実施例の輻輳角変換処理のみの場合と比較して、クロスポイント前方の視差量の増加がなく、かつ、クロスポイントの移動が発生しない立体映像変換が可能となる。
【0077】
以上、本発明の実施例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も本発明の適用範囲に含まれる。
【0078】
例えば、図12に示すように2つの撮像装置のうち一方の撮像装置の光軸が基準面202に対して垂直である場合であっても輻輳角がついたもう一方の撮像装置の画像に対して同様な変換をすることで同様の効果が得られる。
【0079】
また、本発明の第1の実施例および第2の実施例においては視差量を低減させる処理に関して述べてきたが、これに限定されるものではなく、指定最大視差量以内の表示に視差量を拡大するものでも構わない。例えば、前述の図11に基づいて説明すると上述の各実施例とは逆に変換前の最大視差量をDlimit、変換後に指定最大視差量d以下になるように輻輳角を調整する。つまり、輻輳点Pを中心に輻輳角をθ′からθにするように本実施例に記載した手法と同様の手法にて変換することで視差量を指定最大視差量dまで拡大することができる。
【0080】
このようにすることで、視差量を拡大したい場合には、表示するディスプレイサイズに応じて指定最大視差量まで最大視差量を容易に拡大することができる。このような視差量の拡大は例えばモバイルの立体映像表示装置で視聴した場合は、視差量が小さく奥行きが感じ難いが、最大視差量を指定最大視差量まで拡大することで小型なディスプレイであっても十分な立体視が可能となる。
【0081】
また、本発明の第1の実施例および第2の実施例においては輻輳のある入力画像を用いて説明したが、それに係るものではなく、撮像装置が平行配置の場合であっても構わない。この場合、輻輳角を0度とすることで同様の処理を行うことで視差調整が可能である。
【0082】
このように本発明によれば、どのような表示サイズであっても、最大視差量を指定最大視差量以内とした制御を簡単に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0083】
100…立体映像変換装置、101…映像入力装置、101a…立体映像撮像装置、101b…再生装置、101c,102c…通信ネットワーク、102…映像出力装置、102a…立体映像表示装置、102b…記録装置、111…撮像条件抽出部、112…映像変換部、112a…輻輳角補正値算出部、112b…輻輳角変換処理部、112c…相対位置変換処理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示する画面サイズに関係なく、規定した視差量以下の立体映像に変換、表示することが可能な立体映像変換装置及び該装置を備えた立体映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
立体表示装置を用いて立体映像の立体視を行うには、左眼と右眼とにそれぞれの視点に合った異なる映像を表示する必要がある。この異なる映像は両眼視差をもって撮影された左右画像であり、視聴者の両眼にそれぞれの左右画像を入射させることで、左右画像の視差量に応じた立体視が可能となる。
【0003】
左右画像の視差量は、立体視する際にどの程度ディスプレイ面より手前側に飛び出させるか、または、ディスプレイ面より奥方向に引っ込ませるかの大きな要因となる。例えば、表示装置の手前に飛び出させる場合には右眼用の画像は左眼用の画像と比較し左側に、左眼用の画像は右眼用の画像と比較し右側に表示させることで達成される。この時、左右画像の視差量が大きいほど飛び出し量は大きくなる。また、逆の視差量をもたせることで、表示装置の表示面の奥側に引っ込ませて表示をすることが可能となる。例えば、右眼用の画像は左眼用の画像と比較し右側に、左眼用の画像は右眼用の画像と比較し左側に表示させることでディスプレイ面の奥方向に引っ込ませて立体視させることができる。この時、左右画像の視差量が大きくなるほど、奥方向への引っ込み量は大きくなる。また、左右画像の視差がない場合は、ディスプレイ面上に表示されているように見える。
【0004】
つまり、表示された左右画像の視差量に応じて、立体視した際の奥行きが変わることになる。表示させる視差量に関しては、大きな視差量で表示することで眼精疲労の原因になったり、融合できなかったりする(融合限界)可能性が示唆されているため、注意が必要である。このような立体表示時の視差量に関する注意事項に関しては3Dコンソーシアムから発行されている「3DC安全ガイドライン」などでも提起されている。特に、奥行き方向に引っ込ませて表示する場合には、視聴者の瞳孔間隔以上の視差がついた表示では左右の眼球が開放方向を向くことになるため、眼精疲労の原因になり易く注意が必要である。ここで、同じ撮影条件で撮影されて、保存された左右画像を表示する際に、表示装置の大きさによって視差量が変わるため、大画面での視聴では大きな視差で表示される問題がある。
【0005】
画面サイズの違いによる視差の問題に関して図13に基づいて説明する。図13(A),(B)はそれぞれ画面サイズの異なる立体映像表示装置を視聴している状況を示した概要図で、図中、303は立体映像表示装置を示す。図13(A),(B)では表示サイズ以外の視聴条件は同一のもとしており、両眼間隔300の視聴者Xが共に同じ左右の映像データを表示した立体映像表示装置303を視聴している。図13(A)では立体映像表示装置303の画面幅はWaであり、図13(B)では立体映像表示装置303の画面幅はWbとなっており、Wa<Wbの関係となっている。
【0006】
映像データは同一であるため、図13(A)における左右映像中の対象点302L,302Rは、図13(B)においてはそれぞれ画面サイズの大きさに比例した位置である対象点302L′、302R′に表示される。ここで対象点の視差量は図13(A)では視差量daであるが、図13(B)の場合、画面サイズが変わるため、表示画面サイズに応じて視差量dbのように拡大されて表示される。このため、図13(B)のように両眼間隔300以上の視差がつく場合が生じる。このように同じ左右の映像データであってもどのようなサイズで表示するかが重要となる。
【0007】
ここで、撮影画像の視差に関して簡単に説明する。
左右映像を撮影する立体撮像装置では立体映像表示時での立体感を変化させるために2つの撮像装置の光軸に角度をつけて輻輳配置にした撮像システムがある。このように2つの撮像装置が内側を向くように輻輳を付けて左右に配置した場合、右側の撮像装置の撮像視野と左側の撮像装置の撮像視野との関係は、被写体の奥行きに応じて変化する。被写体が手前にある場合は、右側の撮像装置の撮像視野は右側に、左側の撮像装置の撮像視野は左側に位置するが、左右の撮像装置の光軸が交差する点である輻輳点では右側の撮像装置の撮像視野と左側の撮像装置の撮像視野とが一致する。さらに奥の被写体では、右側の撮像装置の撮像視野は左側に、左側の撮像装置の撮像視野は右側に位置し、左右の関係が逆転する。これを表示装置に、右側の撮像装置の画像を右眼に、左側の撮像装置の画像を左眼に表示させると、手前の被写体に対しては表示装置の手前に飛び出して見え、輻輳点の被写体は表示装置の表示面と同じ位置に見え、それより奥の被写体は表示装置の表示面より引っ込んで見えるようになる。
【0008】
各撮像装置単体の撮影条件が変わらない場合、このような2つの撮像装置の光軸のなす角である輻輳角や輻輳点により、ディスプレイ面の位置や視差量が規定される。輻輳を調整することで、注目する被写体への奥行き感の調整が行いやすいといった特徴がある一方で、輻輳のついた撮像装置で撮影された画像では背景などの遠方被写体の視差がつきやすいという問題がある。そのため、このような輻輳で撮影された画像に対しては特に、上記したように表示される画面サイズにおける視差量への注意が必要となる。
【0009】
上記した表示サイズによる視差量の調整に関して、左右画像の対応する領域ごとの視差量を算出し、算出された視差量に合わせて、撮像装置で撮影された左右画像の水平方向の表示位置である相対位置を変えて表示させる技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に記載の技術は、再生する画像の左右の相対位置を変えることで左右画像の視差量を変化させるもので、表示装置ごとに異なった表示位置で再生し、視差量を変化させることを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−9421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ディスプレイの奥方向に表示される被写体の視差量を小さくさせるように左右画像の相対位置を変化させると、輻輳点より前に写る被写体(ディスプレイより前に飛び出し表示される)の視差量は急激に増加してしまう。また、逆に手前の視差量を小さくするように左右画像の相対位置を変化させると、輻輳点より後ろに写る被写体(ディスプレイより奥に引っ込み表示される)の視差量は急激に増加してしまうという課題がある。この視差量の変化に関して図14に基づいて簡単に説明する。
【0012】
図14は、輻輳のついた2つの撮像装置で得られた画像の相対位置を変化させた場合の視差量の変化を模式的に示した図である。図14において2つの撮像装置311L、311Rのそれぞれの光学中心を312L、312Rとし、距離Lpの位置にある点Pを輻輳点とする。この時の距離L1、L2のある一点での視差量は314a、314bである。背景の視差量を低減させるように相対位置を変化させた場合、左右の撮像装置311L、311Rの光学中心はそれぞれの光学中心313L、313Rとなる。
【0013】
この時、視差量314a、314bはそれぞれ視差量315a、315bとなり、輻輳点Pより後方では低減されているものの、輻輳点Pより前方では大きく拡大していることがわかる。また、立体視の際には輻輳点Pの位置がディスプレイ面上に見えていたが、左右画像の相対位置を変化させることでディスプレイ面は点Qの位置(距離Lq)へと変化する。このため、立体視の際には輻輳点の位置が変わったように認識され、ディスプレイ面上に表示される被写体の位置も変化してしまい、表示画像における飛び出しと引っ込みの割合が異なった立体表示となる(視差0の位置が大きく変化する)。さらには左右映像の領域ごとの視差量の算出が必要であり、処理量が非常に大きなものとなってしまう。
【0014】
本発明は、上述の実情に鑑みてなされたもので、立体視用の映像を表示する際に、画面サイズによらず引っ込み方向の視差量を、所定の視差以下で表示することができる立体映像変換装置及び該装置を備えた立体映像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、視点の異なる2つ以上の映像を入力し、該入力した2つ以上の映像の輻輳角を変更して出力する立体映像変換装置であって、前記2つ以上の映像を撮像した際の撮像条件である輻輳角変換情報を抽出する撮像条件抽出部と、前記2つ以上の映像を撮像した際の輻輳角を変更する映像変換部とを備え、該映像変換部は、前記撮像条件抽出部により抽出された輻輳角変換情報及び前記2つ以上の映像を表示させる表示画面の表示サイズ情報に基づいて、前記2つ以上の映像の最大視差量を算出し、該算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出する輻輳角補正値算出部と、該算出した輻輳角補正値に基づいて前記2つ以上の映像を撮像した際の輻輳角を変更させた映像を生成する輻輳角変換処理部とを備えたことを特徴としたものである。
【0016】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記映像変換部は、前記輻輳角変更前の輻輳点の位置と前記輻輳角変更後の輻輳点の位置とが一致するように前記輻輳角変換処理部で生成された映像の相対位置を変換する相対位置変換処理部を備えたことを特徴としたものである。
【0017】
第3の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記輻輳角変換処理部は、前記2つ以上の映像の最大視差量を低減させるように輻輳角を変更させることを特徴としたものである。
【0018】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段において、前記予め指定された最大視差量は、視聴者の目幅間隔であることを特徴としたものである。
【0019】
第5の技術手段は、第4の技術手段において、前記視聴者の目幅間隔は、5cmであることを特徴としたものである。
【0020】
第6の技術手段は、第1又は第2の技術手段において、前記輻輳角変換処理部は、前記2つ以上の映像の最大視差量を拡大させるように輻輳角を変更させることを特徴としたものである。
【0021】
第7の技術手段は、第1〜第6のいずれか1の技術手段において、前記撮像条件抽出部は、前記撮像条件として、さらに、前記2つ以上の映像を撮像した際の基線長情報及び画角情報を抽出し、前記輻輳角補正値算出部は、前記表示サイズ情報、前記輻輳角情報、前記基線長情報、及び前記画角情報に基づいて、前記2つ以上の映像の最大視差量を算出し、該算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出することを特徴としたものである。
【0022】
第8の技術手段は、第1〜第7のいずれか1の技術手段において、前記撮像条件抽出部は、前記2つ以上の映像のメタデータから前記撮像条件を抽出することを特徴としたものである。
【0023】
第9の技術手段は、第1〜第7のいずれか1の技術手段において、前記撮像条件抽出部は、前記2つ以上の映像それぞれを撮像した撮像装置を特定する機器情報に基づいて、該機器情報と前記撮像条件とが対応付けられたテーブルを参照することで前記撮像条件を抽出することを特徴としたものである。
【0024】
第10の技術手段は、第1〜第9のいずれか1の技術手段における立体映像変換装置を備えた立体映像表示装置である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、どのような画面サイズで表示しても輻輳点の変位と飛び出しの視差の拡大を低減しつつ、引っ込み方向の視差量を所定の視差量以下に調整して表示させることができるため、視聴者に眼精疲労などの負担をかけることがない。
また、輻輳点の位置を変化させずに、引っ込み方向の視差量を所定の視差量以下に調整することができるため、ディスプレイ面上に表示される視差0の被写体位置が変化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による立体映像変換装置の概略構成例を示す図である。
【図2】輻輳のついた撮像装置で撮影した場合の光学系を上方から見た場合の概略図である。
【図3】輻輳配置となった2つの撮像装置の視差に関して説明するための図である。
【図4】表示画面上での視差量を示す図である。
【図5】画面幅に対する視差量の割合と視距離との対応関係の一例を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る映像変換部の構成例を示すブロック図である。
【図7】輻輳角補正値算出部の処理の一例を説明するためのフロー図である。
【図8】本発明の第1の実施例における輻輳角変換処理の概要を説明するための図である。
【図9】輻輳角変換による視差量と左右画像の相対位置を変えた場合の視差量とを比較して説明するための概念図である。
【図10】本発明の第2の実施例に係る映像変換部の構成例を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施例における輻輳角変換処理及び映像相対位置変換処理の概要を説明するための図である。
【図12】片側の撮像装置にのみ輻輳角がついた場合の輻輳角変換処理の概要を説明するための図である。
【図13】画面サイズの違いによる視差の問題に関して説明するための図である。
【図14】輻輳のついた2つの撮像装置で得られた画像の相対位置を変化させた場合の視差量の変化を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係わる立体映像変換装置及び該装置を備えた立体映像表示装置について各実施例を挙げ図面を参照しながら説明する。
【0028】
<第1の実施例>
図1は、本発明による立体映像変換装置の概略構成例を示す図である。図1(A)は立体映像変換装置を含む立体映像変換システムの構成例を示す図で、図中、100は立体映像変換装置、101は映像入力装置、102は映像出力装置を示す。また、図1(B)は立体映像変換装置100の構成例を示すブロック図である。この立体映像変換装置100は、撮像条件抽出部111、映像変換部112を備え、映像入力装置101から得られる2つ以上の視点の異なる映像の一例として左右の映像を撮像した際の輻輳角を変更(例えば、射影変換など)し、この輻輳角が変更された左右映像を映像出力装置102に出力する。
【0029】
また、映像入力装置101または立体映像変換装置100に入力する左右映像は、例えばサイド・バイ・サイド方式のように1枚の映像(1フレーム)中に異なる視点の映像が混在している場合も含み、2つ以上の視点の異なる映像が映像入力装置101または立体映像変換装置100に入力されればよく、2つ以上の視点の異なる映像を転送する方式(フォーマット)はどのようなものであっても良い。
【0030】
映像入力装置101は、例えば、立体映像撮像装置101a、再生装置101b、通信ネットワーク101cなどであり、両眼視差をもつ左眼・右眼用の映像を立体映像変換装置100へ入力する。立体映像変換装置100は、映像入力装置101から入力された左右映像に対して、指定最大視差量、表示画面の表示サイズ情報、及び撮像条件情報に基づいて、映像変換部112が左右映像の例えば射影変換を行い、表示画面サイズの大きさに関わらず、予め指定された最大視差量以内で表示させる左右映像を生成する。映像変換部112で生成された左右映像は映像出力装置102に渡される。映像出力装置102は、左右映像を立体映像として表示する立体映像表示装置102a、左右映像を保存する記録装置102b、左右映像の伝送を行う通信ネットワーク102cなど、目的に応じて立体映像変換装置100からの左右映像を出力するものである。なお、立体映像表示装置102aが立体映像変換装置100を一体的に備える構成としてもよい。
【0031】
以下では、立体映像変換装置100への入力映像は輻輳のついた撮像装置で撮影された両眼視差をもつ立体視用の映像である場合を代表例として説明する。
図2は、輻輳のついた撮像装置で撮影した場合の光学系に関して上方から見た場合の概略図である。図2では簡略化のため2次元で表記し、2つの撮像装置のうち片側の撮像装置のみ記載している。2つの撮像装置201Lと201Rが基準面202上に左側に左撮像装置201L、右側に右撮像装置201Rとなるように距離Wbの間隔で配置されている。
【0032】
撮像装置201L、201Rはそれぞれ内側に傾くような輻輳をもっており、その時の左撮像装置201Lの光学中心を中心軸CLとする。また、左撮像装置201Lは撮影画角203で撮影され、その場合の撮影範囲の両端が左端204aと右端204bである。撮像装置201Lで撮影された映像では画角203内(左端204aと右端204bの間の領域)に配置されている被写体が撮影される。ここで、基準面202から距離Lo離れた平面205上に被写体Oがあり、被写体Oを通り中心軸CLに対して垂直でかつ画角端204a、204bの範囲の平面を206、また、中心軸CLに対して垂直でかつ撮像装置201Lの原点(基準面202と中心軸CLとの交点)から焦点距離f離れた平面上にある仮想のセンサ面を207とすると、被写体Oはセンサ面207上の結像点O′に結像される。
【0033】
この時、センサ面207の幅wcに対するセンサ面207上で中心軸CLと結像点O′間の距離w′の割合は平面206の幅wに対する平面206上での中心軸CLと被写体Oとの距離dLとの割合と等価である。ここで、この割合を距離Loでの画像幅に対する視差の割合をDLとすると、視差の割合DLは下記のように示される。
DL = w’/wc = dL/ w …式(1)
これより、撮像装置201Lで撮影された映像をそのまま表示させると表示画面幅Wに対して(W×DL)分だけ中心よりずれた位置に被写体Oが表示されることになる。
【0034】
ここで、同様に右の撮像装置でも考える。図3には左右の撮像装置が互いに内側に向くように輻輳して配置されている状態を示している。図2と同じ記号に関しては同様のものを示している。図3において、2つの撮像装置201Lと201Rは距離Wbの間隔で配置され、それぞれの撮像装置の中心軸は撮像装置201Lでは中心軸CL、撮像装置201Rでは中心軸CRとなっている。2つの中心軸CLとCRの交点は輻輳点Pであり、基準面202から輻輳点Pまでの距離を輻輳点距離Lp、光軸CL,CRのなす角を輻輳角θとする。ここで、基準面202から距離Lo離れたところに被写体Oが存在する場合、図2での説明と同様に2つの撮像装置での撮影画像での被写体Oの画像幅に視差の割合DL,DRは、被写体Oを通りそれぞれの光軸に対して垂直な面上での距離dL,dRを用いて、
DL = dL/ wL …式(2)
DR = dR/ wR …式(3)
と表される。ここでwL、wRは前述の図2のwに対応し、それぞれのカメラにおいての点Oを通り、光軸に垂直でかつ撮影画角内における幅に相当する。
【0035】
そして、2つの撮像装置で撮影された画像を立体視用の画像として表示した場合、図4に示す表示画面400により例示すると、被写体Oは撮像装置201Lの画像ではOLに、撮像装置201Rの画像ではORにと左右画像で異なった位置に表示される。この時の表示上の視差量を視差量dとする。視差量dは視差の割合DL,DRに応じた視差の合計で決まり、例えば、表示画面400の画面幅がWの場合には、
d=(DL+DR)×W …式(4)
で示される。
【0036】
つまり、距離Lo上に存在する被写体Oは画面幅Wで表示される場合には視差量dとして表示されることがわかる。ただし、ここでは撮像装置からの取得画像をそのまま表示させた場合として説明している。左右映像の切り出しなどをおこなっている場合は、切り出し位置やサイズに応じた補正が必要である。その場合、光学中心と切り出し中心の位置や切り出しサイズの割合を係数として視差量dを補正する。また、輻輳がついているため、基準面202と各撮像装置の光軸と垂直な平面とが平行ではないが、輻輳角による左右映像間の歪みを補正するために同一平面上に補正する場合は、入力映像は基準面202と平行な面に変換した画像でも構わない。その場合、視差量dは変換パラメータに応じた補正を加えればよい。また、厳密には撮像装置201のセンサは画素をもつため、画素被写体の結像点O′はセンサ面207上のある画素に結像されることになる。そのため、画素ピッチや大きさによって画素単位で変位することになるが、微小量であるためここでは画素の概念を外して説明している。
【0037】
次に、輻輳角による遠景の最大視差に関して説明する。
通常の映像には視差量の大きな被写体と視差量の小さな被写体とが含まれているが、例えば、入力映像に含まれるある被写体の視差量が表示画面幅Wに対してt%であれば、表示装置で表示される視差量は表示画面幅Wのt%となり、視差量は、W×t/100、となる。ここで、被写体距離と視差の対応関係について例を用いて説明する。例えば、前述の図3において、撮像装置の間隔Wbを65mm、撮像装置の画角を52度、輻輳角θを2.5度とした場合、輻輳点までの距離は約1.5mとなり、1.5mより遠方の被写体には引っ込み方向の視差がつく。このような撮影条件において、被写体Oの距離Loの値を輻輳点からさらに遠方に変化させた場合に被写体Oにおける画面幅に対する視差量の割合がどのように変化するのかを図5に示す。図5に示すように被写体Oが無限遠にある場合には表示画面幅に対する視差量の割合はある一定の値の約4.5%に収束する。この場合、例えば表示画面幅が132.9cmである映像表示装置に表示した際には、最大視差量は132.9×4.5/100≒6.0cmとなり、子供の平均的な目幅間隔の5cmよりも大きな視差となる。
【0038】
一般的に2つの撮像装置から得られた遠方の視差の割合は無限遠で収束し、この収束値は撮像装置間の輻輳角や基線長、撮像装置の画角によっても変化する。例えば、被写体Oにおける視差の割合DL+DRは、2つの撮像装置の画角を同じ値θvとし、2つの撮像装置の光軸となす角度が平面202に対して垂直な面上で等分されるとすると、Oが無限遠にあるものとした場合、撮像装置の画角θvと2つの輻輳角θを使って近似的に、
DL+DR≒α×(Tan(θ/2)/Tan(θv/2)) …式(5)
と示すことができる。ここでαはカメラ配置やカメラパラメータで決まる画角と輻輳角に依存しない係数である。つまり、最大の視差の割合である収束値は輻輳角θと撮像装置の画角θvによって示すことができる。ただし、ここでは無限遠L0に対して基線長は十分に小さくなる値としている。また、θが0の場合、つまり2つの撮像装置が平行に配置されている場合は、無限遠の視差の割合は0に収束する。
【0039】
このような収束値を遠方の最大視差の割合Xとすると、輻輳の構成で撮影された映像を画面幅Wのディスプレイで表示した場合、引っ込み方向の視差として最大でW×X/100の視差がつく場合がある。前述したように立体視において、引っ込み方向の視差が視聴者の目幅間隔以下にするなど、ある規定値以下に抑えて表示する必要がある。このように、最大視差の割合Xは撮像条件情報からを算出することが可能であり、また、その対象となる画像においては得られた最大視差の割合を超える視差はつかないとも言えるため、左右映像の最大視差量の割合Xを基準とすることで表示される最大視差量を規定することができる。図5で示すように、一般的に距離に対する視差の割合は急激に増加するため、ユーザが輻輳のついた撮像装置で撮影した場合には、背景に遠方の被写体が入る場合が多く、画像の立体視時での背景の視差が最大視差の割合Xに近い視差となる可能性は高くなり、左右映像の最大視差W×X/100であるとみなしてもさほど問題とはならない。そのため、本発明では左右映像の最大視差量の割合Xを基準とすることで画面全体の視差量の制御を行う。
【0040】
撮像条件抽出部111は、前述したような左右映像の最大視差の割合を算出するための撮像条件を抽出する。具体的には、入力された左右映像について、撮像装置の位置関係を示すパラメータと撮像装置のカメラパラメータとを取得し、変換に必要な情報である輻輳角変換情報を映像変換部112へと受け渡す。撮像装置の位置関係を示すパラメータとしては、左右映像を撮像した2つの撮像装置の光軸間の角度である輻輳角情報や、2つの撮像装置の間隔(すなわち、2つの撮像装置の光学中心の間隔)を示す基線長情報を抽出する。この輻輳角は、輻輳点までの距離情報と基線長から算出しても構わない。また、撮像装置のカメラパラメータとしては、撮像装置の撮影範囲を示す画角情報と撮影解像度とを抽出する。画角情報は撮像装置の焦点距離とセンササイズの情報を用いることで算出しても構わない。
【0041】
このような撮像装置間の位置関係を示すパラメータや、個々のカメラの撮影条件を示すパラメータを抽出する一つの方法としては、左右映像を記録した映像ファイルのメタデータから抽出することが考えられる。例えば、静止画の場合、左右画像を格納するファイルフォーマットとして、一般社団法人カメラ映像機器工業会(CIPA)が規格化している「CIPA DC−007 マルチピクチャーフォーマット(MPF)」があり、このようなファイルには、メタデータに基線長情報や輻輳角情報を入力する領域が存在する。このようなファイルのメタデータから必要なパラメータを抽出することができる。撮影画角などの撮像装置の光学情報は、各画像のExifデータより抽出することも可能である。例えば、撮影画像のExifデータのうち撮影時の焦点距離情報や画像サイズ、画素密度情報などから画角を求めてもよい。撮影画角に関しては3D表示時の画角を基準とし、切り出しなどされている場合は、切り出しサイズ分の補正が必要である。
【0042】
もし、メタデータから必要な情報が得られない場合は、左右映像を撮像した撮像装置を特定する機器情報に基づいて、その機器情報と、位置関係を示すパラメータや個々のカメラの撮影条件を示すパラメータとが対応付けられたテーブルを参照することで輻輳角情報などの必要なパラメータを取得するものでも構わない。例えば、撮像条件抽出部111が、撮像装置の機器情報(機器固有の機器名など)と、上記の各パラメータとを対応付けたパラメータ参照テーブルを保持してもよい。撮像条件抽出部111は、左右映像を撮像した撮像装置の機器名を取得すると、パラメータ参照テーブルからその機器名に対応したパラメータを抽出する。なお、機器名は画像ファイルのExifやHDMI(High Definition Multimedia Interface)で接続した際にEDID(Extended Display Identification Data)などから取得できる。機器名とパラメータはネットワークや放送波などを利用して更新することも可能である。また、パラメータ参照テーブルは、撮像条件抽出部111に保持しているものとして説明したが、このテーブルが外部にあり、ネットワークを通じて参照する方法でも構わない。撮像条件抽出部111ではこのようにして得られた変換用のパラメータを映像変換部112へと出力する。
【0043】
次に、表示サイズ情報に関して説明する。ここでの表示サイズ情報は、映像変換部112から出力される左右映像が表示される表示画面の画面サイズを示し、実際に表示される画面幅に関する情報である。立体映像表示装置102aに接続された場合には、立体映像表示装置102aから表示画面サイズを取得し、また、記録装置102bへの保存や、通信ネットワーク102cに出力する場合には想定される表示画面サイズとなる。想定される表示画面サイズは例えばユーザが指定する方法などでも構わない。このように、立体映像表示装置102aから取得またはユーザにより指定された表示サイズ情報は立体映像変換装置100の映像変換部112へ入力される。
【0044】
次に、指定最大視差量に関して説明する。指定最大視差量は立体表示された場合に、実際に表示される引っ込み方向の最大視差量の値であり、視聴者が表示画面を見た際に視認される視差量(実寸値)である。例えば、引っ込み方向の視差量は目幅間隔以上では眼精疲労の原因になりやすいため、最大視差量は視聴者の目幅間隔以下に設定する。視聴者の目幅間隔は一般的には大人では65mm、子供では50mmと言われている。そのため、子供の視聴も考慮して指定最大視差量を子供の平均目幅間隔である50mm以下とするのが望ましい。このため、指定最大視差量として例えば50mmを指定すると、出力映像を表示サイズ情報に対応したサイズで立体表示させた際には、引っ込み方向の視差は50mm以下として表示される。なお、ここでは指定最大視差量を50mmに指定したが、ユーザが適宜指定するものでもよく、ユーザの好み、個人差を考慮した視差量での表示が可能となる。このように指定された指定最大視差量は立体映像変換装置100の映像変換部112へ入力される。
【0045】
〔映像変換部〕
図6は、本発明の第1の実施例に係る映像変換部112の構成例を示すブロック図である。映像変換部112は、撮像条件抽出部111で抽出された輻輳角変換情報及び左右映像を表示させる表示画面の表示サイズ情報に基づいて、左右映像の最大視差量を算出し、算出した最大視差量が予め指定された指定最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出する輻輳角補正値算出部112aと、輻輳角補正値算出部112aで算出した輻輳角補正値に基づいて左右映像を撮像した際の輻輳角を変更させた映像を生成する輻輳角変換処理部112bとから構成される。
【0046】
すなわち、映像変換部112は、撮像条件抽出部111から入力される左右映像の輻輳角変換情報と、左右映像を表示する表示画面の表示サイズ情報とから、表示装置の表示画面より奥側に引っ込む方向の最大視差量を算出し、算出した最大視差量が指定最大視差量を超えていないかを判定する。超えている場合は、表示装置の表示画面より奥側に引っ込む方向の最大視差量が指定最大視差量以下の視差量となるように、左右映像の輻輳角を調整した映像を生成し、これを出力する。また、算出した最大視差量が指定最大視差量を超えていない場合は、左右映像をそのまま出力する。
【0047】
〔輻輳角補正値算出部〕
次に、輻輳角補正値算出部112aの処理の一例について、図7のフローチャートに基づいて説明する。輻輳角補正値算出部112aは、左右入力映像の輻輳角変換情報と、左右入力映像を表示する表示装置の表示サイズ情報とを入力し、表示装置の表示画面より奥側に引っ込む方向の最大視差量を算出する(ステップS1)。そして、算出した最大視差値が最大視差量情報によって示される指定最大視差量を超えているか否かを判定する(ステップS2)。指定最大視差量を超えている場合(YESの場合)、表示装置の表示画面より奥側に引っ込む方向の左右入力映像の最大視差値が指定最大視差量以下となるように輻輳角を調整するための輻輳角補正値を左右入力映像毎に算出する(ステップS3)。また、ステップS2において、指定最大視差量を超えていない場合(NOの場合)、左右入力映像の輻輳角補正値をともに0にする(ステップS4)。そして、算出した左右入力映像毎の輻輳角補正値を輻輳角変換処理部112bへ出力する。
【0048】
ステップS1での入力画像に対応する最大視差量の算出には、前述したように、撮像条件抽出部111から受け渡された輻輳角情報や撮影画角情報などの輻輳角変換情報を用いて入力画像の最大視差の割合Xを算出する。この場合、表示サイズ情報より表示画面の幅Wが得られるので、その表示サイズで入力画像を表示した場合には最大視差量dは、d=W×X/100となる。次に、ステップS2において、入力された指定最大視差量d’と比較を行い、d>d’であればステップS3にて指定最大視差量以下となるように補正値算出を行う。ここで、視差量をd’とするためには補正後の視差の割合X’が、X’=d’/W×100(%)となるように輻輳角を変換する必要がある。撮影画角が固定である場合、最大の視差の割合は輻輳角によって規定できるため、最大の視差の割合がXとなる場合の輻輳角をθ、最大の視差が割合X’となる場合の輻輳角をθ’とすると、輻輳角の変化量Δθ=θ’−θに対応する左右入力映像ごとの輻輳角補正値を輻輳角変換処理部112bへ出力する。
【0049】
本例では、指定最大視差量を例えば、5cm、表示サイズ情報から得られた表示画面幅が101.8cmとした場合に、入力画像の最大視差の割合と表示画像幅101.8cmから算出した視差量が5cmを超えている場合には変換が必要になる。変換後の最大視差の割合X’はX’=50/1018×100から求められ、この場合、X’=4.9%となる。前述の式(5)より、この場合での輻輳角θ’を算出し、撮像条件抽出部111から得られた輻輳角θとの差分Δθに対応する左右画像の輻輳角補正値をそれぞれ求める。例えば左右の撮像装置が同量の輻輳角で配置されている場合には、左右画像の輻輳角補正値はΔθ/2となる。
【0050】
〔輻輳角変換処理部〕
次に、輻輳角変換処理部112bについて説明する。輻輳角変換処理部112bは、輻輳角補正値算出部112aにて算出した左右入力映像毎の輻輳角補正値に基づいて、入力左右映像の映像変換を行って、最大視差量が指定最大視差量以下となるように輻輳角を変換した左右映像を出力する。
【0051】
以下、図8に基づいて輻輳角変換による画像変換処理について説明する。まず、基本的なモデルとして輻輳のない平行配置から輻輳を付けた配置への変換を例にしての輻輳角変換に関して述べる。左撮像装置201Lと右撮像装置201Rが平行法にて立体画像を撮影する場合は、各撮像装置の光軸がベースラインWbと垂直となるように設置する。平行法の場合の左右撮像装置の光軸をZpL、ZpRとすると、各々の光軸は平行となる。また、左右撮像装置が交差法にて立体画像を撮影する場合は、左右撮像装置の光軸が交差する点(以下、クロスポイント)が発生する。このクロスポイントを通り、平行法の場合の左右撮像装置の光軸ZpL、ZpRと平行である軸をZCとする。
【0052】
ここで、クロスポイントが図8に示すZC軸上の点Pの位置となるように左撮像装置201Lに輻輳角を付けるには、光学中心OcLを中心にθLだけ光軸ZpLを紙面右側に回転させる。同様に、右撮像装置201Rに輻輳角を付けるには、光学中心OcRを中心にθRだけ光軸ZpRを紙面左側に回転させる。回転後の左撮像装置201Lの3次元座標系は、光軸(Z軸)がZcL、X軸がXcL、Y軸が図8の紙面奥側と表わすことができる。同様に、回転後の右撮像装置201Rの3次元座標系は光軸(Z軸)がZcR、X軸がXcR、Y軸が図8の紙面奥側と表わすことができる。左撮像装置201Lの輻輳角成分θLと、右撮像装置201Rの輻輳角成分θRを用いてクロスポイントPの輻輳角θを表すと、下記のようにθLとθRの和で表わすことができる。
θ=θL+θR …式(6)
【0053】
次に、本実施例における輻輳角の変換方法について詳細に説明する。左撮像装置201Lおよび右撮像装置201Rの各3次元座標系について、各々のY軸を中心に回転させることにより輻輳角を変換することができる。左撮像装置201Lは、光学中心OcLを中心に−θyLだけ光軸ZcLを紙面左側に回転させる。同様に、右撮像装置201Rは、光学中心OcRを中心にθyRだけ光軸ZcRを紙面右側に回転させる。
【0054】
回転後(輻輳角変換後)の左撮像装置201Lの3次元座標系は、光軸(Z軸)がZcL′、X軸がXcL′、Y軸が図8の紙面奥側となる。同様に、右撮像装置201Rの3次元座標系は、光軸(Z軸)がZcR′、X軸がXcR′、Y軸が図8の紙面奥側となる。輻輳角の変換によって、変換前のクロスポイントPがP′に移動する。クロスポイントP′の左撮像装置201Lの輻輳角成分θL′と、右撮像装置201Rの輻輳角成分θR′は、下記のように表すことができる。
θL′=θL−θyL …式(7)
θR′=θR−θyR …式(8)
なお、θyL及びθyRは輻輳角補正値に相当する。
【0055】
さらに、クロスポイントP′の輻輳角θ′は、θL′とθR′の和で表わすことができる。
θ′=θL′+θR′ …式(9)
【0056】
〔輻輳角変換画像の生成〕
次に、クロスポイントがP、輻輳角θで撮影された画像を、クロスポイントP′、輻輳角θ′の画像に変換する方法について説明する。3次元上の点X= [Xx Xy Xz]Tを撮像装置の3次元座標系のY軸を中心に回転させた点X′= [X’x X’y X’z]Tは、下記の式(10)で示されるY軸回転式で表わすことができる。
X′=RX …式(10)
【数1】
R:Y軸の回転を表す回転行列
θy:Y軸の回転角(回転方向は右ねじの方向)
【0057】
つまり、これは、回転前の点Xに回転行列Rを乗ずることにより点X′に変換(回転)する。Y軸を右ねじの方向にθyだけ回転させたとすると、回転行列Rは、θyのsin、cos関数の組み合わせで表わすことができる。
【0058】
以上の説明は、3次元上の点Xを回転させるものであるが、これを撮影画像上の点x=[Xx Xy 1]Tについて回転させる方法について説明する。左撮像装置201Lによって輻輳角θLで撮影された画像上の点xを、輻輳角θL′の画像上の点x′=[xx’ xy’ 1]Tに変換(回転)するには、下記の式(11)で示される輻輳角変換式によって行う。
sx′=ARA−1x …式(11)
【数2】
A:カメラ内部のパラメータ
fx,fy:X,Y軸成分の焦点距離
cx,cy:主点座標
s:スケール係数(右辺のz成分の逆数)
【0059】
左撮像装置201LのX軸成分の焦点距離をfx、Y軸成分の焦点距離をfy、撮影画像面と光軸ZcLが交わる点(以下、主点座標)をcx、cyとすると、左撮像装置201Lの光学特性を表すパラメータ(以下、内部パラメータ)は、3×3の行列Aで表わすことができる。ここで、主点座標を表す座標系は、2次元の撮影画像面上であり、原点は撮影画像の左上座標、X軸は撮影画像右方向が正、Y軸は撮影画像下方向が正である。また、輻輳角θL′へ回転させるための回転行列Rは、前述の式(10)の回転行列Rのθyに、Y軸を中心に回転させる回転角−θyLを代入することで表わすことができる。
【0060】
輻輳角θL′への変換は、内部パラメータAと回転行列Rによって行う。第一に、輻輳角θLの撮影画像上の点xに内部パラメータAの逆行列を乗じて、z成分の大きさが1の正規化座標系に変換する。第二に、Y軸周りに−θyL回転する回転行列Rを乗じた後、内部パラメータAを乗ずることで、輻輳角θL′の画像上の点に回転(変換)される。ここで、変換結果座標(式(11)の右辺の算出結果)のz成分は大きさが1とはならない。そのため第三として、z成分が1となるように変換結果座標に対し、変換結果座標のz成分の逆数sを乗じてスケーリングする。
【0061】
以上の変換により、輻輳角θLの画像上の点xを輻輳角θL′の画像上の点x′に変換することができる。これを左撮像装置201Lの輻輳角θLの画像上の全ての点で行うことで、輻輳角がθL′となる画像を生成することができる。
【0062】
次に、右撮像装置201Rによって輻輳角θRで撮影された画像上の点xを、輻輳角θR′の画像上の点x′= [xx’ xy’ 1]Tに変換(回転)する方法について説明する。右撮像装置201Rの内部パラメータをAとし、輻輳角θR′へ回転させるための前述の式(10)の回転行列Rのθyに、Y軸を中心に回転させる回転角θyRを代入して求めた値とすることを除いて、前述の左撮像装置201Lの画像生成方法と同様である。
【0063】
〔輻輳角変換と相対位置変換の視差量比較〕
図9は、輻輳角変換による視差量と左右画像の相対位置を変えた場合の視差量とを比較して説明するための概念図である。本発明での左右画像の相対位置とはどちらか片側の画像に対してもう片側の画像を水平方向にシフトさせることや両画像共にシフトさせることを意味し、今後の記載で相対位置とはこのように定義するものとする。2つの撮像装置201L、201Rの光軸がそれぞれCL、CRであり、基線長Wb、輻輳角θとなった配置となっている。この時輻輳点はPの位置(基準面202からの距離Lp)になる。また、基準面202から距離Loでの視差量を視差量d、低減後の視差量を視差量d′とする。実際には表示サイズと視差の割合によって表示上の視差量が規定されるが、説明の簡略化のため、ここでは表示サイズ、撮影画角を同じ条件とし、視差量dとd’の相対値がそのまま表示上の視差の相対値になるものとしている。
【0064】
上述した輻輳角変換によって視差量d′に収まるように輻輳角θをθ′に変換した場合の中心軸をCL′、CR′とし、その時の輻輳点はP′の位置(基準面202からの距離Lp′)になる。また、従来技術として左右映像の相対位置を変化させて視差量dを視差量d′にした場合、それぞれの光軸がCL0、CR0となり、その輻輳点はQの位置になる。図9からも分かるように、本発明による輻輳角変換を行った場合、相対位置を変化させる従来技術と比べ、輻輳点後方、つまり背景の方向の視差量を共に同じ視差量以内になるようにすると輻輳点前方の視差の拡大量が低減されていることがわかる。また、変換前の輻輳点Pからの変位量(P〜P′)が相対位置を変化させる場合の変位量(P〜Q)に比べて低減されている。厳密には輻輳点は2つの撮像装置の光軸の交わる点で規定されるが、ここでの輻輳点位置は立体視した際の見た目上での輻輳点の位置(視差が0になる位置)としている。
【0065】
このように、本実施例によれば、輻輳点前方被写体の視差量の増加量を低減させつつ、引っ込み方向の視差量を指定する視差量以下として表示することが可能となる。また、表示させる画面サイズに関わらず指定する視差量以下にして表示することが可能であるので、どのような画面サイズの表示装置にも適用が可能であり、眼精疲労の原因となる視差の大きな映像であっても、許容される視差量の映像に変換して表示させることができる。
【0066】
さらには、輻輳点が大きく変位することなく視差制御が可能であるので、立体視した際に飛び出しと引っ込みの位置関係を大きく変えることなく、撮影者の意図を反映させた立体表示が可能となる。
また、視差量を調整する手法として2つの撮像装置から得られた画像から領域ごとの視差情報を算出し、この視差情報を用いて画像変換させるという手法もあるが、視差算出のための処理量が膨大であることや画像領域全体で精度のよい視差情報を得ることが困難であるなどの大きな課題もある。本発明ではこのような視差算出を行う必要がなく、簡単且つ低負荷の処理で視差制御が可能であり、リアルタイムでの変換処理が可能となる。
【0067】
<第2の実施例>
図10は、本発明の第2の実施例に係る映像変換部の構成例を示すブロック図である。図10の映像変換部112は、前述の第1の実施例の映像変換部112(図6)の構成を変更したものであり、図6の映像変換部112を除いた構成に関しては、第1の実施例と同じであるため、ここでの説明は省略する。
【0068】
図10の映像変換部112は、前述の図6に示した輻輳角補正値算出部112aと、輻輳角変換処理部112bとに加え、さらに、相対位置変換処理部112cを含んで構成される。輻輳角補正値算出部112aと輻輳角変換処理部112bに関しては前述の第1の実施例に記載した処理内容と同じであるため、ここでの説明は省略する。相対位置変換処理部112cは、射影変換前の輻輳点の位置と射影変換後の輻輳点の位置とが一致するように輻輳角変換処理部112bで射影変換された映像の相対位置を変換する。
【0069】
図11は、輻輳角変換処理及び映像相対位置変換処理による視差量制御の一例を説明するための図である。前述の第1の実施例による輻輳角変換処理では、表示装置より奥側の最大視差量を指定最大視差量以下とすることができる。しかし、輻輳角変換前よりクロスポイントが3次元上の奥側(図11の点Pから点P′)に移動し、表示装置の表示画面より手前に飛び出す被写体が変わってしまう。例えば、3次元上での被写体の位置が輻輳角変換前のクロスポイントPにあるとすると、輻輳角変換前(左右光軸がCLとCR)では左右映像の視差量が0である。
【0070】
しかし、輻輳角変換後(左右光軸がCL′、CR′)では、視差が発生する。左撮像装置201LではCL′の右側、右撮像装置201RではCR′の左側に点Pが投影されるため、これら投影点間の距離だけ視差量が発生することになる。そのため、輻輳角変換前の点Pは、表示装置の表示画面上にあったが、輻輳角変換により点Pは表示画面の手前側に移動して立体視されることになる。これは、第1の実施例の輻輳角変換処理によって、映像制作者の意図と異なる映像に変換することになり、映像変換として適切でない場合がある。
【0071】
表示装置の表示画面に位置するべき被写体(クロスポイントの位置)を変えずに、表示面奥側の最大視差量を指定最大視差量以下とするには、例えば、輻輳角変換前のクロスポイントPを中心に左右光軸(CL、CR)を回転させることによって達成できる。これについて図11を例にとって説明する。図11の輻輳角変換前の光軸CLとCRでは、最大視差量dが指定最大視差量Dlimitを超えている。これを補正するために、クロスポイントPを回転中心とし、光軸CLを紙面に向かって左回り、光軸CRを紙面に向かって右まわりに回転させることによって、クロスポイントPを移動させることなく、表示装置の表示画面の奥側の最大視差量が指定最大視差量Dlimit以下とすることが可能となる。
【0072】
この回転によって左撮像装置201Lの光学中心OLはOL′に、右撮像装置201Rの光学中心ORはOR′に移動し、左撮像装置201Lの光軸CLはCL′′に、右撮像装置201Rの光軸CRはCR′′に回転する。回転後の輻輳角はθ′となる。
以上のように、左右映像をクロスポイントPを中心に回転することによって、表示画面奥側の最大視差量を指定最大視差量以下とし、クロスポイントが移動しない映像に変換することができる。
【0073】
しかしながら、左右撮像映像からクロスポイントPを中心に各映像を回転させることは容易ではない。そこで、第1の実施例による輻輳角変換処理と、変換後の左右映像の相対位置を変換する処理とを組み合わせることによって、表示画面奥側の最大視差量を指定最大視差量以下とし、クロスポイントが移動しない映像に変換する処理を実現させる。これについて図11に基づいて説明する。
【0074】
図11において、輻輳角変換前の左右撮像装置201L、201Rの光軸をそれぞれCL、CR、その輻輳角をθで表わしている。このままでは、表示装置の表示画面奥側の最大視差量dが指定最大視差量Dlimitを超えているため、第1の実施例で行った輻輳角変換処理を行う。輻輳角変換処理では、クロスポイントPを中心に回転させた場合の輻輳角θ′と同じ輻輳角となるように左右の光軸CL、CRをそれぞれ光学中心OL、ORを中心に回転させる。
【0075】
輻輳角変換処理を行った後の左右の光軸は、CLがCL′、CRがCR′となり、このときの輻輳角はθ′となる。この輻輳角変換処理により表示画面奥側の最大視差量d′は、指定最大視差量Dlimitより小さくなるが、クロスポイントPがP′に移動する。そこで、クロスポイントP′をPの位置に戻すため、輻輳角変換処理後の左右映像全体を、左映像は紙面に向かって右側、右映像は紙面に向かって左側にシフトさせる。そのシフト量は、3次元上のクロスポイントPの位置の左右投影点間の視差が0となるように左右映像全体をシフトさせる。左右映像のシフトの結果、光学中心OL、ORがそれぞれOL′、OR′に移動し、光軸CL′、CR′がそれぞれCL′′、CR′′に移動する。これは、クロスポイントPを中心に回転させた場合と同じ映像変換処理したものとみなすことができる。
【0076】
以上により、輻輳角変換後の輻輳角θ′を保ったまま、輻輳角変換後のクロスポイントP′を輻輳角変換前のクロスポイントPに戻すことが可能となる。本実施例の処理を行うことにより、第1の実施例の輻輳角変換処理のみの場合と比較して、クロスポイント前方の視差量の増加がなく、かつ、クロスポイントの移動が発生しない立体映像変換が可能となる。
【0077】
以上、本発明の実施例について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も本発明の適用範囲に含まれる。
【0078】
例えば、図12に示すように2つの撮像装置のうち一方の撮像装置の光軸が基準面202に対して垂直である場合であっても輻輳角がついたもう一方の撮像装置の画像に対して同様な変換をすることで同様の効果が得られる。
【0079】
また、本発明の第1の実施例および第2の実施例においては視差量を低減させる処理に関して述べてきたが、これに限定されるものではなく、指定最大視差量以内の表示に視差量を拡大するものでも構わない。例えば、前述の図11に基づいて説明すると上述の各実施例とは逆に変換前の最大視差量をDlimit、変換後に指定最大視差量d以下になるように輻輳角を調整する。つまり、輻輳点Pを中心に輻輳角をθ′からθにするように本実施例に記載した手法と同様の手法にて変換することで視差量を指定最大視差量dまで拡大することができる。
【0080】
このようにすることで、視差量を拡大したい場合には、表示するディスプレイサイズに応じて指定最大視差量まで最大視差量を容易に拡大することができる。このような視差量の拡大は例えばモバイルの立体映像表示装置で視聴した場合は、視差量が小さく奥行きが感じ難いが、最大視差量を指定最大視差量まで拡大することで小型なディスプレイであっても十分な立体視が可能となる。
【0081】
また、本発明の第1の実施例および第2の実施例においては輻輳のある入力画像を用いて説明したが、それに係るものではなく、撮像装置が平行配置の場合であっても構わない。この場合、輻輳角を0度とすることで同様の処理を行うことで視差調整が可能である。
【0082】
このように本発明によれば、どのような表示サイズであっても、最大視差量を指定最大視差量以内とした制御を簡単に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0083】
100…立体映像変換装置、101…映像入力装置、101a…立体映像撮像装置、101b…再生装置、101c,102c…通信ネットワーク、102…映像出力装置、102a…立体映像表示装置、102b…記録装置、111…撮像条件抽出部、112…映像変換部、112a…輻輳角補正値算出部、112b…輻輳角変換処理部、112c…相対位置変換処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視点の異なる2つ以上の映像を入力し、該入力した2つ以上の映像の輻輳角を変更して出力する立体映像変換装置であって、
前記2つ以上の映像を撮像した際の撮像条件である輻輳角変換情報を抽出する撮像条件抽出部と、前記2つ以上の映像を撮像した際の輻輳角を変更する映像変換部とを備え、
該映像変換部は、前記撮像条件抽出部により抽出された輻輳角変換情報及び前記2つ以上の映像を表示させる表示画面の表示サイズ情報に基づいて、前記2つ以上の映像の最大視差量を算出し、該算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出する輻輳角補正値算出部と、該算出した輻輳角補正値に基づいて前記2つ以上の映像を撮像した際の輻輳角を変更させた映像を生成する輻輳角変換処理部とを備えたことを特徴とする立体映像変換装置。
【請求項2】
前記映像変換部は、前記輻輳角変更前の輻輳点の位置と前記輻輳角変更後の輻輳点の位置とが一致するように前記輻輳角変換処理部で生成された映像の相対位置を変換する相対位置変換処理部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の立体映像変換装置。
【請求項3】
前記輻輳角変換処理部は、前記2つ以上の映像の最大視差量を低減させるように輻輳角を変更させることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体映像変換装置。
【請求項4】
前記予め指定された最大視差量は、視聴者の目幅間隔であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体映像変換装置。
【請求項5】
前記視聴者の目幅間隔は、5cmであることを特徴とする請求項4に記載の立体映像変換装置。
【請求項6】
前記輻輳角変換処理部は、前記2つ以上の映像の最大視差量を拡大させるように輻輳角を変更させることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体映像変換装置。
【請求項7】
前記撮像条件抽出部は、前記撮像条件として、さらに、前記2つ以上の映像を撮像した際の基線長情報及び画角情報を抽出し、前記輻輳角補正値算出部は、前記表示サイズ情報、前記輻輳角情報、前記基線長情報、及び前記画角情報に基づいて、前記2つ以上の映像の最大視差量を算出し、該算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の立体映像変換装置。
【請求項8】
前記撮像条件抽出部は、前記2つ以上の映像のメタデータから前記撮像条件を抽出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体映像変換装置。
【請求項9】
前記撮像条件抽出部は、前記2つ以上の映像それぞれを撮像した撮像装置を特定する機器情報に基づいて、該機器情報と前記撮像条件とが対応付けられたテーブルを参照することによって前記撮像条件を抽出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体映像変換装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の立体映像変換装置を備えたことを特徴とする立体映像表示装置。
【請求項1】
視点の異なる2つ以上の映像を入力し、該入力した2つ以上の映像の輻輳角を変更して出力する立体映像変換装置であって、
前記2つ以上の映像を撮像した際の撮像条件である輻輳角変換情報を抽出する撮像条件抽出部と、前記2つ以上の映像を撮像した際の輻輳角を変更する映像変換部とを備え、
該映像変換部は、前記撮像条件抽出部により抽出された輻輳角変換情報及び前記2つ以上の映像を表示させる表示画面の表示サイズ情報に基づいて、前記2つ以上の映像の最大視差量を算出し、該算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出する輻輳角補正値算出部と、該算出した輻輳角補正値に基づいて前記2つ以上の映像を撮像した際の輻輳角を変更させた映像を生成する輻輳角変換処理部とを備えたことを特徴とする立体映像変換装置。
【請求項2】
前記映像変換部は、前記輻輳角変更前の輻輳点の位置と前記輻輳角変更後の輻輳点の位置とが一致するように前記輻輳角変換処理部で生成された映像の相対位置を変換する相対位置変換処理部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の立体映像変換装置。
【請求項3】
前記輻輳角変換処理部は、前記2つ以上の映像の最大視差量を低減させるように輻輳角を変更させることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体映像変換装置。
【請求項4】
前記予め指定された最大視差量は、視聴者の目幅間隔であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の立体映像変換装置。
【請求項5】
前記視聴者の目幅間隔は、5cmであることを特徴とする請求項4に記載の立体映像変換装置。
【請求項6】
前記輻輳角変換処理部は、前記2つ以上の映像の最大視差量を拡大させるように輻輳角を変更させることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体映像変換装置。
【請求項7】
前記撮像条件抽出部は、前記撮像条件として、さらに、前記2つ以上の映像を撮像した際の基線長情報及び画角情報を抽出し、前記輻輳角補正値算出部は、前記表示サイズ情報、前記輻輳角情報、前記基線長情報、及び前記画角情報に基づいて、前記2つ以上の映像の最大視差量を算出し、該算出した最大視差量が予め指定された最大視差量以下となる輻輳角補正値を算出することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の立体映像変換装置。
【請求項8】
前記撮像条件抽出部は、前記2つ以上の映像のメタデータから前記撮像条件を抽出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体映像変換装置。
【請求項9】
前記撮像条件抽出部は、前記2つ以上の映像それぞれを撮像した撮像装置を特定する機器情報に基づいて、該機器情報と前記撮像条件とが対応付けられたテーブルを参照することによって前記撮像条件を抽出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の立体映像変換装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の立体映像変換装置を備えたことを特徴とする立体映像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−85102(P2012−85102A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229607(P2010−229607)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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