説明

立体画像の映写構造

【課題】光の屈折によりシート材料の表面から浮いて見える合成画像を、より鮮明に出現させ、観察者が容易かつ明確に認識することができるとともに、容器の加飾としても応用し得る立体画像の映写構造を提供する。
【解決手段】シート材料40と反射材料38を備え、入射する光L1を反射材料38で反射させ、反射した光L2はマイクロレンズシート材料40を透過し、透過光L3により各マイクロレンズに結びついた各画像が結像し、合成画像が出現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射光を利用してシート材料の表面から浮いて見える合成画像を映写するための立体画像の映写構造に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、プラスチック成形品などの工業製品、特に化粧品容器においては、消費者が視覚的にも満足できるような外観が美麗で目立つもの望まれている。近年では、図形や文字などの画像を、光の屈折や干渉を利用して、物品の表面から離れた位置に結像することにより、文字等が浮き上がって見えるシート材料が知られており(特許文献1)、このようなシート材料を化粧品容器に接着し、立体画像を映し出すことも可能である(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、シート材料に光を照射し、シート材料から反射する光を利用して立体画像を結像する場合には、結像する光は、入射する光のうち一部の光であるため、立体画像に十分な明るさがなく、鮮明さに欠けるものであったため、観察者が立体画像を容易かつ明確に認識するためには、不十分であった。
【0004】
一方、シート材料に光を照射し、シート材料を透過する光を利用して立体画像を結像する場合には、結像する光は、反射する光を利用する場合に比べて光のエネルギー損失が小さくでき、立体画像は明るく、鮮明であることが期待できるものの、どのようにシート材料に光を透過するかが問題となる。特に、シート材料による立体画像を容器表面の加飾に利用する場合に、シート材料を透過するための光を照射するための構造を設けることは困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2010−222716号公報
【特許文献2】特開平6−263487号公報
【特許文献3】特表2003−524205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、光の屈折によりシート材料の表面から浮いて見える合成画像を、より鮮明に出現させ、観察者が容易かつ明確に認識することができるとともに、容器の加飾としても応用し得る立体画像の映写構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明者らが検討を行った結果、所定のシート材料に反射材料で反射した光を透過することにより、該シート材料の表面から浮いて見える合成画像が鮮明に出現し、観察者が容易かつ明確に立体画像を認識し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記(a)乃至(c)からなるシート材料と反射材料を備え、反射材料で反射した光をシート材料に透過することにより複数の画像を合成し、合成した画像をシート材料の表面から浮いて見えるように映し出すことを特徴とする立体画像の映写構造である。
(a)複数のマイクロレンズを配列した第1および第2の面を有する少なくとも1つのマイクロレンズ層、
(b)該マイクロレンズ層の第1の面に近接して配置された材料層、
(c)複数のマイクロレンズのそれぞれに関連づけられて材料中に形成され、該材料とコントラストをなす少なくとも部分的な画像
【0009】
さらに本発明は、シート材料と反射材料との間に透明材料を配したことを特徴とする立体画像の映写構造である。
【0010】
さらに本発明は、透明材料が第1および第2の面を有し、第1の面にシート材料を隣接して配し、第2の面に金属を蒸着して形成した被膜を反射材料とすることにより、反射材料で反射した光をシート材料に透過して画像を合成し、合成した画像をシート材料の表面から浮いて見えるように映し出すことを特徴とする立体画像の映写構造である。
【0011】
さらに本発明は、反射材料の表面を凹状の湾曲面とし、反射材料の表面に入射する光がシート材料に向けて反射することを特徴とする立体画像の映写構造である。
【0012】
また本発明は、反射材料の表面に傾斜面を設け、反射材料の表面に入射する光がシート材料に向けて反射することを特徴とする立体画像の映写構造である。
【0013】
また本発明は、反射材料を容器の蓋表面に設置し、シート材料を蓋カバーに設置することにより、反射材料で反射した光をシート材料に透過して画像を合成し、合成した画像をシート材料の表面から浮いて見えるように映し出すことを特徴とする前記立体画像の映写構造を備える容器。
【0014】
また本発明は、前記のシート材料と反射材料を備え、反射材料で反射した光をシート材料に透過することにより複数の画像を合成し、合成した画像をシート材料の表面から浮いて見えるように映し出すことを特徴とする立体画像の映写方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シート材料の表面から浮いて見える合成画像を鮮明に出現させることができ、観察者が容易かつ明確に画像を認識することができる立体画像の映写構造を提供することができる。
【0016】
また、本発明の立体画像の映写構造を容器に備えることにより、美麗に加飾された容器を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】「レンズ露出」型マイクロレンズシート材料の拡大断面図である。
【図2】「レンズ埋め込み」型マイクロレンズシート材料の拡大断面図である。
【図3】マイクロレンズアレーによるマイクロレンズシート材料の拡大断面図である。
【図4】微小球からなるマイクロレンズシート材料に侵入する分散エネルギーを示した模式図である。
【図5】個々の微小球に近接する材料層中に記録された標本画像を示し、さらに、記録された画像が合成画像の完全複製から部分複製の範囲にあることを示すマイクロレンズシート材料部の平面図である。
【図6】マイクロレンズシート材料の上に浮いて現れる合成画像形成の幾何光学的表示である。
【図7】シート材料を透過光線の方向において見る場合にシート材料の上に浮いて現れる合成画像を有するシート材料の模式図である。
【図8】シート材料に合成画像を形成するために用いられた分散エネルギーを生み出すための光学系の模式図である。
【図9】シート材料に合成画像を形成するために用いられた分散エネルギーを生み出すための第2光学系の模式図である。
【図10】シート材料に合成画像を形成するために用いられた分散エネルギーを生み出すための第3光学系の模式図である。
【図11】合成画像を映写する立体画像の映写構造(第1の実施態様)である。
【図12】合成画像を映写する立体画像の映写構造(第2の実施態様)である。
【図13】合成画像を映写する立体画像の映写構造(第3の実施態様)である。
【図14】合成画像を映写する立体画像の映写構造(第4の実施態様)である。
【図15】合成画像を映写する立体画像の映写構造(第5の実施態様)である。
【図16】合成画像を映写する立体画像の映写構造(第6の実施態様)である。
【図17】合成画像を映写する立体画像の映写構造(第7の実施態様)である。
【図18】合成画像を映写する立体画像の映写構造(第8の実施態様)である。
【図19】立体画像の映写構造をファンデーション容器に応用した実施態様である。
【図20】立体画像の映写構造をクリーム瓶容器に応用した実施態様である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に用いるシート材料は、シート材料に照射した光の透過により、多くのマイクロレンズと結びついた個々の画像が結像し、観察者にはシート材料の上に合成画像が浮いているように見える効果がある。以下、シート材料の構成を詳述する。
【0019】
「シート材料」
シート材料は、マイクロレンズ層とこの層に近接して配置される材料層を持つ。図1に、一般的に高分子材料である結合剤層(3)中に部分的に埋め込まれた透明微小球(2)の単層を含む「レンズ露出」型マイクロレンズシート材料(1)を示す。微小球は、材料層を画像化するために用いることが可能である照射波長、および合成画像が中で見られる波長の両方に対して透過性である。材料層(4)は各微小球の後部表面に設置され、微小球(2)のそれぞれの表面の一部分のみに接触する。
【0020】
図2は、図1とは別の型のシート材料を示す。このシート材料(5)は、微小球レンズ(6)が一般に高分子材料である透明な保護膜(7)中に埋め込まれる「レンズ埋め込み」型シート材料である。材料(8)の層は、一般に高分子材料である透明なスペーサ層(9)の裏側の微小球の後ろに配置される。
【0021】
図3は、さらに別の型のシート材料を示す。第1面(11)は実質的に平面であり、第2面は実質的に半球状または非半球状マイクロレンズ(12)のアレーを有する。マイクロレンズの形状および厚さは、アレーに入射する平行光線がほぼ第1面で収束するように選択される。材料層(13)は第1面上に供給される。
【0022】
シート材料のマイクロレンズは、均一な屈折率を有する。マイクロレンズ表面は、好ましくは球状であるが、非球状表面であってもよい。マイクロレンズは、実際の画像が屈折表面により形成されるならば、円柱状または球状のようなあらゆる対称性を有することが可能である。マイクロレンズそれら自体は、円形の平凸小型レンズ、円形の二重凸状小型レンズ、ロッド、微小球、ビーズ、または円柱形小型レンズなどの独立した形態から成ることができる。マイクロレンズを形成することができる材料には、ガラス、ポリマー、無機物、結晶、半導体およびこれらおよび他の材料の組合せが挙げられる。また、個々のマイクロレンズは独立しておらず、一部が連続していても構わない。従って、複製または浮き彫り加工から形成されるマイクロレンズも用いることができる。
【0023】
マイクロレンズは、可視光線および赤外線の波長にわたり1.5〜3.0間の均一な屈折率を有することが好ましい。また、マイクロレンズ材料は、可視光線の吸収が小さいことが望ましい。これは、感光層を画像化するために照射するエネルギー源からのエネルギーをマイクロレンズが吸収することを少なくするためである。マイクロレンズが独立的あるいは連続的などの型にかからず、また、マイクロレンズが作製される材料にかかわらず、マイクロレンズによる光線の屈折は、レンズ表面に入射する光線が屈折し、マイクロレンズの反対側上、すなわちマイクロレンズの裏側表面上またはマイクロレンズに近接する材料上のいずれかに収束するようなものとする。感光性の材料層には縮小された実際の画像が複数のマイクロレンズに結びついて形成される。画像の縮小は、約100〜800倍であることが、良好な解像度を有する画像を形成するために好ましい。
【0024】
マイクロレンズは、15μm〜275μmの範囲の直径を持つ微小球が好ましいが、他サイズの微小球も用いることもできる。マイクロレンズから比較的近い位置に合成画像を現すためには、直径が小さいマイクロレンズが適し、マイクロレンズから比較的遠い位置に合成画像を現すためには、直径が大きいマイクロレンズが適する。
【0025】
「材料層」
上述のように、材料層はマイクロレンズに近接して設置される。複数のマイクロレンズと結びついた材料中に形成される個々の画像は、反射または透過光により、合成画像としてシート材料の上に現れる。材料層は、光照射により画像を記録できるよう感光材料を使用することが好ましい。
【0026】
感光材料は、金属、高分子および半導体材料およびこれらの混合物の皮膜およ
びフィルムであって、所定レベルの可視光線または他の光の照射にさらされると露出された材料の状態が変化し、照射にさらされなかった材料とのコントラストを提供する感光性を有するものである。感光材料の組成的変化、材料の除去またはアブレーション、相変化、または感光皮膜の重合により画像が記録される。感光金属フィルム材料の例としては、アルミニウム、銀、銅、金、チタン、亜鉛、錫、クロム、バナジウム、タンタル、およびこれら金属の合金が挙げられる。これらの金属は、光を照射したことにより金属が変色するため、光を照射した部分とそうでない部分とでコントラストが生じる。また、画像は、光照射だけでなく、上述のようにアブレーションによるか、または加熱するなどの方法によって画像化することもできる。
【0027】
金属合金に加えて、金属酸化物および金属亜酸化物も感光材料として用いることができる。これらの材料には、アルミニウム、鉄、銅、錫およびクロムから形成される酸化物化合物が挙げられる。また、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、二酸化ケイ素、酸化錫インジウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウムおよびケイ素などの非金属材料によっても、色またはコントラストを得ることができる。
【0028】
多層の薄膜材料も感光材料として用いることができる。これらの多層材料は、色またはコントラスト剤の出現または除去により対比変化を提供するように設定することができる。代表的な構築物には、特定の照射波長により画像化するように(例えば色の変化により)設計される光学的スタックまたは同調キャビティが挙げられる。一つの特定例が、誘電ミラーとしての氷晶石/亜鉛硫化物(NaAlF/ZnS)の使用を開示している米国特許第3,801,183号に記載されている。別の例は、クロム/ポリマー(プラズマ重合ブタジエンなど)/二酸化ケイ素/アルミニウムから成る光学的スタックであり、これらの層の厚さは、クロムに対して4nm、ポリマーに対して20nm〜60nmの間、二酸化ケイ素に対して20nm〜60nmの間、およびアルミニウムに対して80nm〜100nmの間の範囲であり、およびそこでの個々の層厚さは可視スペクトルにおける特定の色反射率を提供するために選択される。薄膜同調キャビティは前に検討した単一層薄膜のいずれとも一緒に用いることができるであろう。例えば、約4nm厚さのクロム層および約100nm〜300nmの間の二酸化ケイ素層を持つ同調キャビティであって、二酸化ケイ素層の厚さは照射光の特定の照射波長に反応して色画像化されて提供するように調整される。
【0029】
材料層には、サーモクロミック材料を使用することもできる。サーモクロミック材料は温度変化にさらされる場合に色を変える材料のことを指す。本発明において有用なサーモクロミック材料として、例えば、炭酸銅、チオ尿素を伴う硝酸銅、およびチオール、チオエーテル、スルホキシド、およびスルホンなどの硫黄含有化合物を伴う炭酸銅が挙げられる。他の適するサーモクロミック化合物の例には、水和硫酸塩およびホウ素の窒化物、アルミニウム、およびビスマス、およびホウ素、鉄、および燐の酸化物および水和酸化物が挙げられる。
【0030】
照射源を用いて感光性の材料層に画像化することが製造の効率性から好ましい。但し、照射源を用いずに画像化することも可能であり、その場合は、感光性の材料層を使用する必要はない。
【0031】
「照射源」
感光材料を画像化するために照射源を用い、マイクロレンズに近接する材料層上に画像パターンを付与する。望ましい輝度および波長の照射を提供するあらゆるエネルギー源が、本発明の方法により用いることができる。照射源としては、200nm〜11μmの間の波長を有する光を照射できる素子が好ましく、電力照射源の例として、エキシマーフラッシュランプ、無抵抗Q−スイッチ型マイクロチップレーザー、およびQ−スイッチ型ネオジムドープ−イットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAGと短縮される)、ネオジムドープ−イットリウムリチウムフッ化物(Nd:YLFと短縮される)およびチタンドープ−サファイア(Ti:サファイアと短縮される)レーザーが挙げられる。これらの高ピーク電力源は、アブレーション−材料の除去を通して、または多光子吸収工程において画像を形成する感光材料により最も有用となる。有用な照射源の他の例には、半導体レーザー、イオンレーザー、非Q−スイッチ型固体レーザー、金属蒸気レーザー、ガスレーザー、アーク灯などの低ピーク電力および高電力白熱光源を与える素子が挙げられる。これらの供給源は、感光媒体が非アブレーション的方法により画像化される場合に特に有用である。
【0032】
照射源から分散光をマイクロレンズシート材料に向けて当てる。図9、図10、および図11に示すように紫外線、可視、又は赤外線の電磁スペクトルを発散し所期の角度でマイクロレンズに近接する材料層を照射するようにシート材料に向け光線を照射する。合成画像は、好ましくは、0.3以上の開口数(最大分散光の半角のサインとして定義される)を持つ光発散素子を用いることにより得られる。より大きな開口数を持つ光発散素子は、より大きな視角、およびより大きな範囲の画像仮現運動を有する合成画像を生成する。
【0033】
「画像化法」
代表的な画像化法は、レンズを通したレーザーからの平行光線をマイクロレンズシート材料に向けて方向付ける。さらに以下で説明するように、浮遊画像を有するシート材料を創造するために、光線は高開口数(NA)を持つ分散レンズを通して透過されて高度に分散された光の円錐体を生成する。高NAレンズとは0.3以上のNAを有するレンズである。微小球の照射感光皮膜側は、光円錐体の軸(光学軸)がマイクロレンズシート材料の平面に垂直であるように、レンズからの位置を合わせる。
【0034】
個々のマイクロレンズはそれぞれ光学軸に対して独自の位置を占めるので、各マイクロレンズに侵入する光線は互いのマイクロレンズ上に入射する光に対し独自の入射角を有する。従って、光は各マイクロレンズにより材料層上の独自の位置に透過され、独自の画像を形成する。ここで、単一光パルスは材料層上に単一の画像化ドットしか生成しないので、そこで隣接する各マイクロレンズの画像を提供するために、多パルス光を用いて多画像化ドットからの画像を創造する。各パルスに対して、光学軸は前パルス間の光学軸の位置に比べて新しい所に位置付けられる。これらのマイクロレンズに対する光学軸位置の連続的な変化は、対応した各マイクロレンズ上への入射角を変化させ、材料層中に創造された画像化ドットの位置の変化をもたらす。その結果、微小球の裏側に収束する入射光は、感光層中の選択されたパターンを画像化する。各微小球の位置がすべての光学軸に対して独自であるので、各微小球に対して感光材料中に形成される画像はすべての他の微小球に関係する画像とは異なる。
【0035】
浮遊合成画像を形成するための別の方法は、レンズアレーを用いて高度に分散された光を生成してマイクロレンズ化材料を画像化することである。レンズアレーは、すべてが平面空間に整列された高開口数を持つ多数の小レンズから成る。アレーが光源により照射される場合、アレーは多錐体の高度に分散された光を生成し、それぞれ個々の錐体はアレー中のその対応レンズに集中する。アレーの物理的寸法は合成画像の最大の横サイズを収容できるように選択される。アレーサイズによって、小型レンズにより形成される個々のエネルギー錐体は、あたかも個々のレンズが光パルスを受けている間アレーのすべての点で順次位置付けられているかのようにマイクロレンズ化材料を露光する。どのレンズが入射光を受け取るかの選択は反射マスクの使用によって生じる。このマスクは、合成画像部分に対応し露光するための透過面と露光しない反射面を有する。レンズアレーの横方向範囲のせいで、画像を追跡するために多光パルスを用いることは必要ない。
【0036】
マスクを入射エネルギーで十分に照射させることにより、エネルギーが通過することを可能とするマスクの部分は、あたかも画像が単一レンズにより追跡されたかのように浮遊画像の輪郭を描く高度に分散された光の多くの個別の錐体を形成する。その結果、単一光パルスのみがマイクロレンズシート材料中の全体合成画像を形成するために必要とされる。あるいは、反射マスクの代わりに、電流測定xyスキャナーなどの光線位置付けシステムが局部的にレンズアレーを照射しアレー上に合成画像をなぞることができる。この技術によりエネルギーが空間的に局限されるので、アレー中の少しの小型レンズのみがいかなる所定の時間においても照射される。照射される小型レンズは、高度に分散した光の円錐体を提供し、これによりマイクロレンズ化材料を露光してシート材料中に合成画像が形成される。
【0037】
レンズアレーは個別の小型レンズから製作することができるほか、エッチング法によりレンズのモノリシックアレーとして製作することができる。レンズに適する材料は、入射エネルギーの波長において非吸収性であるものである。アレー中の個々のレンズは、0.3より大きい開口数で30μmより大きく10mmより小さい直径を有するものが好ましい。これらのアレーは、反射防止皮膜を有してレンズ材料への内部損傷を引き起こし得る背面反射の影響を減少させることができる。加えて、有効な負の焦点距離およびレンズアレーに相当する寸法を有する単一レンズも、アレーを離れる光の発散を増大するために用いることが可能である。モノリシックアレー中の個々の小型レンズの形状は、高開口数を有し、約60%を超える大きな充填比を提供するために適している。
【0038】
図4はマイクロレンズシート材料に侵入する発散エネルギーの図式的な略図である。画像Iは、各々のマイクロレンズを通して各々異なる入射光により各マイクロレンズに結びつく材料層中に形成される。
【0039】
画像化後、延在する被写体のサイズに依存して、被写体の全部または一部分の画像が、それぞれのマイクロレンズ(微小球)の背後にある感光材料の中に存在するであろう。実際の被写体が微小球の背後に画像として再生される度合は、マイクロレンズに入射するエネルギー密度に依存する。延在する被写体の部分は、それらのマイクロレンズに入射するエネルギーが、その材料を改変するのに必要な照射のレベルよりも低いエネルギー密度を有するマイクロレンズの領域から十分に遠く離れているであろう。さらに、空間的に拡大された画像に対して、固定NAレンズにより画像化する場合、シート材料のすべての部分が拡大対象物のすべての部分に対する入射光にさらされるとは限らない。結果として、対象物のそれらの部分は感光媒体中では修正されなくて、対象物の部分画像のみが微小球の後ろに現れる。図5は個々の微小球に近接する感光層中に形成される標本画像を表すマイクロレンズシート材料の断面透視図であり、さらに、記録された画像は合成画像の完全な複製から部分的な複製までの範囲にあることを示す。
【0040】
これらの合成画像は、不完全あるいは完全のいずれかであり、すべて実際の対象物から異なる視界を持つ多くの画像を一緒に総合化して得られる。多くの独特の画像は、それらのすべてが対象物を「見る」かまたは異なる視界から画像化するマイクロレンズのアレーを通して形成される。個々のマイクロレンズの後ろで、画像の形状およびそこから画像化エネルギー源を受け取る方向に依存する画像の透視図が材料層中に創造される。しかし、レンズの見るすべてのものが感光材料中に記録されるわけではない。レンズにより見られる画像または対象物のうち、感光材料を修正するために十分なエネルギーを有する部分のみが記録される。
【0041】
画像化しようとする「対象物」は、「対象物」の外形を描くかまたはマスクの使用のいずれかにより強い光源を使用して形成される。合成態様を有する画像を記録するために、対象物からの光は広範囲の角度にわたり照射されねばならない。対象物から照射される光が対象物の単一点から来ると共に、広範囲の角度にわたり照射する場合、すべての光線は対象物についての情報を運んでいるが、しかし、情報は光線の視角からのものであるが、その単一点からのみのものである。今、光線により運ばれる通りの対象物に関する比較的完全な情報を得るために、光は対象物を構成する点の収集から広範囲の角度にわたり照射しなければならないことを考察する。本発明において、対象物から発散する光線の角度の範囲は、対象物とマイクロレンズ材料の間に置かれた光学要素により制御される。これらの光学要素は合成画像を生成するために必要な最適範囲の角度を与えるように選択される。光学要素の最善の選択は光の円錐体をもたらし、それによって円錐体の頂点は対象物の位置で止まる。最適円錐角度は約40度より大きい。
【0042】
対象物はマイクロレンズにより縮小され、対象物からの光はマイクロレンズの裏側に接触するエネルギー感光皮膜上に収束される。収束点またはレンズの裏側での画像の実際の位置は、対象物から生じる入射光線の方向に応じて決まる。対象物上の点から発散する光の各円錐体はマイクロレンズの一部を照射し、十分なエネルギーにより照射されたマイクロレンズのみが対象物のその点の恒久的な画像を記録する。
【0043】
以下に画像化法の実施形態を具体的に記載する。
【0044】
「A.シート材料の上に浮遊する合成画像の形成」
図6において、入射エネルギー(14)(本例においては光)は、光源中のあらゆる非均一性を均質化するために光拡散器(15)上に導かれる。拡散的に散乱された光(14a)は光コリメータ(16)により捕捉され平行化され、光コリメータ(16)は均一に分布した光(14b)を分散レンズ(17)に導く。分散レンズから、光線(14c)がマイクロレンズシート材料(18)に向けて分散していく。
【0045】
マイクロレンズシート材料(18)に侵入する光線のエネルギーは個々のマイクロレンズ(20)により材料層(説明のための実施形態図中の感光皮膜(21))上に収束される。この収束されたエネルギーは感光皮膜(21)を修正して、光線と感光皮膜間の相互作用に応じて決まる画像、サイズ、形状、および外見を提供する。
【0046】
図6に示す配置は、レンズを通して後ろ側に延長する場合に分散光(14c)が分散レンズの焦点(19)で交差することから、以下に説明するように観察者には合成画像がシート材料の上に浮遊しているように見える。つまり、仮定の「画像線」が各微小球を通して材料層から描かれ分散レンズを通して逆行させられ、焦点(19)で収束することにより合成画像が現れる。
【0047】
「B.シート材料の上に浮く合成画像の出現」
シート材料の合成画像は、シート材料の観察者とは反対側から、シート材料に侵入する光(透過光)を用いて見ることができる。
【0048】
画像化シート材料は、図7に見られるように透過光により見ることができる。例えば、材料層の画像化部分が半透明であり、非画像化部分がそうでない場合、次に大部分の光L2は材料層により吸収されるかまたは反射されるが、一方で透過光L3は材料層の画像化部分を通過し、マイクロレンズにより焦点(19)に向けて進む。合成画像は焦点で見られ、それは本実施例においてシート材料の残分よりも明るく見られる。焦点(19)で画像を創造するものが実際の光であり、光の不在ではないので、この合成画像は「実際の画像」と呼ぶことが可能である。
【0049】
あるいは、材料層の画像化部分が半透明でないがしかし材料層の残分がそうである場合、次に、画像部分における透過光の不在はシート材料の残分よりも暗く見える合成画像を提供する。
【0050】
このようにマイクロレンズシート材料が得られるが、該マイクロレンズシート材料は、たとえば特表2003−524205号公報に記載されている。
【0051】
本発明の立体画像の映写構造は、前記マイクロレンズシート材料と反射材料を備え、反射材料で反射した光をマイクロレンズシート材料に透過することにより、マイクロレンズシート材料の表面から浮いて見える合成画像を映し出すものである。そしてこのような映写構造とすることにより、立体画像を鮮明に出現させることができ、観察者は容易かつ明確に立体画像を認識することができる。
【0052】
以下、本発明の立体画像の映写構造について詳述する。
【0053】
「反射材料」
反射材料(38)は、入射した光を反射してマイクロレンズシート材料(40)に光を透過するためのものである。図11に示すように、反射材料(38)により反射した光はマイクロレンズシート材料(40)を透過し、透過光L3により各マイクロレンズに結びついた各画像が結像し合成画像が出現する。マイクロレンズシート材料と反射材料との間隔は、入射光L1をマイクロレンズシート材料に向けて反射するため、0.5〜5mmが好ましい。
【0054】
反射材料(38)は、可視光線を反射するものであれば特に限定するものではなく、例えば、鏡のように反射材料の表面で光を反射するものや、光を反射する金属等の物質を配合した透明材料を使用することができる。
【0055】
また、反射材料(38)は、図12に示すように、反射材料支持シート(39)の表面
に光を反射する物質で皮膜を形成することにより得ることができる。例えば、反射材料支持シート(39)の表面をアルミニウムや銀等の金属で蒸着することにより皮膜を形成し、これを反射材料(38)とすることができる。
【0056】
「透明材料」
図13は、マイクロレンズシート材料(40)と反射材料(38)との間に透明材料(41)を配した映写構造である。透明材料(41)を配する目的は、マイクロレンズシート材料(40)を固定し、マイクロレンズシート材料(40)と反射材料(38)を一定の間隔で設置し、あるいは、反射材料(38)を固定することにある。また、透明材料(40)を有色あるいは無色の半透明にすることにより、反射材料からの光の反射強度を調整することができるとともに、立体画像に色のコントラストを与え、美麗に出現させることができる。透明材料(41)は、図14に示すように、2つの透明材料を間隔をあけて配することもできる。
【0057】
図15は、透明材料(41)の第1の面(45)にマイクロレンズシート材料(40)を隣接して配し、第2の面(46)に反射材料(38)を配した構造を示す。反射材料(38)は、透明材料とは別に用意し、透明材料(41)の第2の面(46)に接着固定してもよいが、透明材料(41)の第2の面(46)にアルミニウムや銀等を金属蒸着して皮膜を形成し、これを反射材料(38)とすることもできる。
【0058】
透明材料は、その材質が特に制限されるものではないが、透明性に優れ、反射光のエネルギー消失が少ない、スチロール系、ポリエステル系、あるいはアクリル系などの合成樹脂を用いることが好ましい。また、透明材料の厚さは、図15に示す形態であれば、0.5〜3mmとすることが好ましい。入射光L1を反射するためには、マイクロレンズシート材料(40)と反射材料(38)との間隔は0.5〜3mmであることが好ましく、透明材料の厚さをこれに合わせるためである。
【0059】
図16に示すように、反射材料の表面を凹状の湾曲面とし、反射材料の表面に入射する光がシート材料に向けて反射させることができる。このように反射材料の表面を凹状の湾曲面とすることにより、より広い範囲の入射光L1をマイクロレンズシート材料(40)に透過することができる。湾曲面の曲率半径は、50〜200mmであることが好ましい。
【0060】
図17に示すように、透明材料の第2の面(46)を湾曲面とし、その表面を金属蒸着することにより形成された被膜を反射材料(38)とすることができる。
【0061】
反射材料(38)の表面は、図18に示すように、傾斜面を設けることができる。このように反射材料の表面に傾斜面を設けることにより、広い範囲の入射光L1をマイクロレンズシート材料に反射させ透過させることができる。このような傾斜面は、湾曲面を同心円状の領域に分割し、ノコギリ状の断面を有するように形成される。
【0062】
「容器への応用」
本発明の映写構造は、容器の加飾に応用することができる。図19には、ファンデーション容器に応用した例を示す。容器の蓋(43)表面に反射材料(38)を固定し、更に蓋(43)を覆う蓋カバー(42)にマイクロレンズシート材料(40)を固定する。このような容器にすることにより、反射材料(38)から反射した光をマイクロレンズシート材料(40)に透過し、蓋カバーの表面から浮いて見える画像を映し出すことができる。
【0063】
さらに図20には、クリーム瓶容器に本発明の映写構造を取り入れた例を示す。容器の蓋(43)表面に反射材(38)を固定し、更に蓋(43)を覆う蓋カバー(42)にマイクロレンズシート材料(40)を固定することにより、反射材料(38)から反射した光をマイクロレンズシート材料(40)に透過し、蓋カバーの表面から浮いて見える画像を映し出すことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 「レンズ露出」型マイクロレンズシート材料
2 透明微小球
3 結合剤層
4 材料層
5 「レンズ埋め込み」型マイクロレンズシート材料
6 微小球レンズ
7 保護膜
8 材料層
9 スペーサ層
10 マイクロレンズシート材料
11 第1面
12 マイクロレンズアレー
13 材料層
14 入射エネルギー(光)
14a 散乱された光
14b 均一に分布した光
14c 光線
15 光拡散器
16 光コリメータ
17 分散レンズ
18 マイクロレンズシート材料
19 分散レンズの焦点
20 マイクロレンズ
21 感光被膜
22 YAGレーザー
23 反射型反射鏡
24 すりガラス
25 ビーム拡大望遠鏡
26 非球面レンズ
27 試料台
28 シート材料
29 2次元レンズアレー
30 反射マスク
31 双凹レンズ
32 マイクロレンズシート材料
33 YAGレーザー
34 望遠鏡
35 セラミックビーズ
36 XY試料台
37 マイクロレンズシート材料
38 反射材料
39 反射材料支持シート
40 マイクロレンズシート材料
41 透明材料
42 蓋カバー
43 蓋
44 容器本体
45 第1の面(上方面)
46 第2の面(下方面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)乃至(c)からなるシート材料と反射材料を備え、反射材料で反射した光をシート材料に透過することにより複数の画像を合成し、合成した画像をシート材料の表面から浮いて見えるように映し出すことを特徴とする立体画像の映写構造。
(a)複数のマイクロレンズを配列した第1および第2の面を有する少なくとも1つのマイクロレンズ層、
(b)該マイクロレンズ層の第1の面に近接して配置された材料層、
(c)複数のマイクロレンズのそれぞれに関連づけられて材料中に形成され、該材料とコントラストをなす少なくとも部分的な画像
【請求項2】
シート材料と反射材料との間に透明材料を配したことを特徴とする請求項1記載の立体画像の映写構造。
【請求項3】
透明材料が第1および第2の面を有し、第1の面にシート材料を隣接して配し、第2の面に金属を蒸着して形成した皮膜を反射材料とすることにより、反射材料で反射した光をシート材料に透過して画像を合成し、合成した画像をシート材料の表面から浮いて見えるように映し出すことを特徴とする請求項2記載の立体画像の映写構造。
【請求項4】
反射材料の表面を凹状の湾曲面とし、反射材料の表面に入射する光がシート材料に向けて反射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の立体画像の映写構造。
【請求項5】
反射材料の表面に傾斜面を設け、反射材料の表面に入射する光がシート材料に向けて反射することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の立体画像の映写構造。
【請求項6】
反射材料を容器の蓋表面に設置し、シート材料を蓋カバーに設置することにより、反射材料で反射した光をシート材料に透過して画像を合成し、合成した画像をシート材料の表面から浮いて見えるように映し出すことを特徴とする請求項1又は2記載の立体画像の映写構造を備える容器。
【請求項7】
下記(a)乃至(c)からなるシート材料と反射材料を備え、反射材料で反射した光をシート材料に透過することにより複数の画像を合成し、合成した画像をシート材料の表面から浮いて見えるように映し出すことを特徴とする立体画像の映写方法。
(a)複数のマイクロレンズを配列した第1および第2の面を有する少なくとも1つのマイクロレンズ層、
(b)該マイクロレンズ層の第1の面に近接して配置された材料層、
(c)複数のマイクロレンズのそれぞれに関連づけられて材料中に形成され、該材料とコントラストをなす少なくとも部分的な画像

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−103289(P2012−103289A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249025(P2010−249025)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】