説明

立体音響再生装置

【課題】立体音響を再生するフィルタ係数が異なる音響再生機器を接続し、聞き手に立体感を感じさせることができる立体音響再生装置を提供する。
【解決手段】音響再生機器20の種別に応じたフィルタ係数を記憶する係数記憶手段14と、接続された音響再生機器の種別を判別する接続機器判別手段15と、音響再生機器20の種別に対応するフィルタ係数を外部より取得して係数記憶手段14に記録する係数取得制御手段16と、元音信号を入力する元音信号入力手段11と、音響再生機器20の種別と係数記憶手段14に記憶されたフィルタ係数とに応じて立体音響信号処理する立体音響処理手段12と、立体音響信号を出力する音響信号処理手段13を備える。
本構成により、音響再生機器20に対応するフィルタ係数を外部より取得処理して、各機器に適切な立体音響を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体音響再生装置に関し、特に、音響データを出力する音響再生機器に適した立体音響効果のある音響信号を生成する立体音響再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音響再生機器への出力信号を制御して、聞き手が音源の音を聴いたときにその音の方向や距離を認識させる、仮想的な音響空間を再現する立体音響再生装置がすでに実用化されている。図10にその原理方式を示す。図10では、元音信号(S0)を聞き手(R)の右前方の位置から聞こえるようにするときの立体音響再生装置の構成を示している。聞き手(R)には、2つのスピーカ(SP1、SP2)を用いて立体音響を聞かせる。スピーカ(SP1、SP2)については、フィルタ(FIR1、FIR2)と、DAコンバータ(DAC1、DAC2)を用いて、元音信号に対し、たとえば、インパルス応答測定結果に基づく疑似的な伝達関数であるFIRフィルタ(Finite Impulse Response filter:有限インパルス応答フィルタ)を、頭部伝達関数として付加するよう信号処理することにより、聴感上、実際に拡声しているスピーカ位置とは異なる位置(S1)に音源があるかのように、聞き手Rに聞こえさせることができる。この処理により現れる仮想的な音源を、仮想音源と呼び、立体音響処理により音源を仮想音源に配置させることを、音像の定位という。
【0003】
また、スピーカをヘッドフォンに置きかえるというように、接続した機器を変更して再生特性であるモード特性が異なる音響再生機器で音響再生する場合にも適切な信号を生成して、聞き手に対して音像定位を継続させる技術として、次のようなものが知られている。すなわち、音響再生機器のモード特性として、その機器のスピーカ用とヘッドフォン用の信号演算の処理手順とフィルタ係数とをあらかじめ記憶しておき、信号の基本出力先をスピーカと想定している構成において、ヘッドフォンジャックにピンプラグが挿され、信号の出力先が変更されたことを検知し、スピーカ用からヘッドフォン用へモード特性に応じたフィルタ係数に設定変更して元音信号を演算処理することによって、モード切替え時も臨場感を損なわないようにしている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−70795号公報(第7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、装置に接続されているスピーカと、ヘッドフォンジャックを介して接続するヘッドフォンとの間で、フィルタ係数を切替えるにとどまり、異なる特性を持つスピーカや家電機器に内蔵されたスピーカなどを接続した場合に、その機器の種別や、信号処理の機能や能力に応じて適切な演算手順とフィルタ係数を選択して、家電機器など各種音響再生機器を接続したときに適切な定位効果を得るよう音響信号を生成する方法については示しておらず、示唆もない。
【0005】
また、スピーカの種類や2つのスピーカ間の音孔距離、あるいは、音像を定位させる位置によって頭部伝達関数が異なることから、頭部伝達関数によって一意に決まるフィルタ係数は、音響機器の種類やスピーカなどの配置状況、定位位置に応じて多数用意する必要がある。そのため、演算手順とフィルタ係数の取得方法については、ROMなどの立体音響再生装置内部の記憶手段やCD−ROMなどの外部記憶手段を参照する、あるいは、他のコンピュータより取得することになるが、機器状況に応じて適切なフィルタ係数を選択、取得して、接続した機器の状況に応じて適切な定位効果を得る音響信号を生成するのは簡単に実行できる作業ではないという問題があった。
【0006】
本発明は、音響信号の出力先に接続された音響再生機器の種別に応じて、さらには、信号処理手段の立体音響処理機能や能力に応じてフィルタ係数を設定し、立体音響効果のある音響信号を生成する立体音響再生装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、通信端末装置として、外部のサーバもしくは接続された音響再生機器などから元音信号を含むコンテンツを受信し、コンテンツに含まれる元音信号データを接続されている音響再生機器の特性に応じて立体音響信号処理する立体音響再生システムを提供することを目的とする。
【0008】
また、携帯無線端末として、コアネットワーク上のサーバなどより、表示データと、元音信号データとフィルタ係数を含むアプリケーションコンテンツをダウンロードし、接続されたテレビなどの映像音響再生機器に表示信号、ならびに、特性に応じた立体音響信号を出力する立体音響再生システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するために、本発明の立体音響再生装置は、音響データを出力する音響再生機器の種別に応じた立体音響用のフィルタ係数を記憶する係数記憶手段と、音響再生機器の種別の入力を受ける、もしくは、音響再生機器の種別を音響再生機器より取得し、接続された音響再生機器の種別を判別する接続機器判別手段と、接続機器判別手段にて判別した音響再生機器の種別に対応するフィルタ係数が係数記憶手段に記憶されていない場合に、外部の記憶手段より取得し、係数記憶手段に記録する係数取得制御手段と、元音信号を入力する元音信号入力手段と、接続機器判別手段にて判別した音響再生機器の種別と、係数記憶手段に記憶されたフィルタ係数とに応じて、元音信号入力手段にて入力された元音信号に立体音響効果をつける立体音響信号処理して立体音響信号を生成する立体音響処理手段と、立体音響処理手段にて生成した立体音響信号を出力する音響信号処理手段を備える。
【0010】
また、本発明の立体音響再生装置を搭載する立体音響再生システムは、立体音響データとフィルタ係数に基づいて立体音響信号を生成する立体音響処理部と、ユーザ操作の入力を受ける操作入力部と、外部の記憶手段であるサーバとコンテンツや係数などのデータ通信するデータ通信部と、データを記憶する記録部と、立体音響再生システムの全体を制御する制御部と、音響再生機器とデータ通信する機器通信部と、入力された立体音響信号を内部スピーカもしくは外部に出力するオーディオ出力部を備える。
【0011】
また、本発明の立体音響再生装置を搭載する立体音響再生システムは、内部モニタもしくは外部に出力するコンテンツ表示処理部を新たに備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ユーザの操作入力もしくは機器の接続を受けて音響再生機器の種別を判別し、対応するフィルタ係数を保持していない場合には外部のサーバより取得処理し、あらかじめ記憶している元音信号もしくは外部より受信した元音信号について、先に判別した種別に対応するフィルタ係数を用いて立体音響処理し、生成した立体音響信号を音響再生機器に出力することにより、接続された音響再生機器に適した立体音響効果音を再生する効果のある立体音響再生装置を提供することができる。
【0013】
また、本発明は、内部にスピーカなどの音響出力部と音響再生機器に音響出力が可能なオーディオ出力部を新たに備えて構成することにより、外部のサーバもしくは接続された音響再生機器などから元音信号を含むコンテンツを受信し、コンテンツに含まれる元音信号データを接続されている音響再生機器の特性に応じて立体音響信号処理する立体音響再
生システムを提供することができる。
【0014】
また、本発明は、表示データと、少なくとも元音信号データと、フィルタ係数を含むコンテンツを取得し、含まれるコンテンツに応じた表示処理ならびに音響処理し、接続されたテレビなどの映像音響再生機器に表示信号、ならびに、特性に応じた立体音響信号を出力する立体音響再生システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(実施の形態1)
本発明の立体音響再生装置は、元音信号の入力を受け、音響信号の出力先に接続された音響再生機器の特性に応じて、適切なフィルタ係数を選択して立体音響処理し、音響データを出力している。以下、本発明の実施の形態にかかる立体音響再生装置について、図面を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態にかかる立体音響再生装置の構成を示すブロック図である。図1において、立体音響再生装置10は、スピーカやヘッドフォンなどの音響再生機器20の種別に応じた立体音響用のフィルタ係数を記憶するための係数記憶手段14と、音響再生機器20の種別を判別する接続機器判別手段15と、音響再生機器20に対応するフィルタ係数が係数記憶手段14に記憶されていない場合に、外部の記憶手段であるサーバ30より取得し、係数記憶手段14に記録する係数取得制御手段16を設けている。接続機器判別手段15は、音響再生機器20の種別について、ユーザの指示入力、もしくは、音響再生機器20と通信をして接続された音響再生機器20の種別を判別している。係数取得制御手段16は、接続機器判別手段15にて判別した音響再生機器20の種別に対応するフィルタ係数が、係数記憶手段14に記憶されていない場合に、外部のサーバ30より取得し、係数記憶手段14に記録する。
【0017】
また、立体音響再生装置10は、元音信号を入力する元音信号入力手段11と、立体音響処理する立体音響処理手段12と、音響信号を出力する音響信号出力手段13を備えている。元音信号入力手段11は、元音信号を入力し、立体音響処理手段12は、接続機器判別手段15にて判別した音響再生機器の種別と、係数記憶手段14に記憶されたフィルタ係数とから、元音信号入力手段11にて入力された元音信号に立体音響効果をつける立体音響信号処理して立体音響信号を生成する。音響信号出力手段13は、立体音響処理手段12にて生成した立体音響信号を音響再生機器20に出力している。
【0018】
図2に、本発明にかかる立体音響再生装置10の各手段間で授受するデータ構造を示す。図2(a)は、音響再生機器20の種別を表す機器種別情報41のデータ構造を示している。音響再生機器20の種別は、接続機器判別手段15にて判別される。図2(a)では、音響再生機器20の種別が「a」である例を示している。
【0019】
図2(b)は、フィルタ係数42のデータ構造を示している。フィルタ係数42は、あらかじめ係数記憶手段14に記憶されるものと、係数取得制御手段16にて外部のサーバ30より取得されて係数記憶手段14に記憶されるものがある。そして立体音響処理手段12に読み込まれ立体音響処理に使用する。図2(b)では、フィルタ係数が「α」である例を示している。
【0020】
図2(c)は、係数記憶手段14に記憶されるフィルタ係数テーブル43の構造を示している。フィルタ係数テーブル43の各レコードは、音響再生機器の機器種別情報41と、それに対応するフィルタ係数42とで構成される。図2(c)では、音響再生機器20の種別が「a」である場合のフィルタ係数が「α1」、音響再生機器20の種別が「b」である場合のフィルタ係数が「α2」、音響再生機器20の種別が「c」である場合のフ
ィルタ係数が「α3」、である例を示している。
【0021】
次に、本発明の立体音響再生装置10の動作について図3を用いて説明する。図3に、立体音響再生装置10の音響処理のフローチャートを示す。
【0022】
まず、処理が始まると、接続機器判別手段15は、内部設定を確認し(ステップS501)、音響信号を音響再生機器20に出力する場合には、接続機器判別手段15にて、音響再生機器20と通信して種別を判別する(ステップ502)。
【0023】
つづいて、係数取得制御手段16にて、接続機器判別手段15にて判別した音響再生機器20の種別に対応するフィルタ係数が係数記憶手段14のフィルタ係数テーブル43にすでに記憶されているかを判定し(ステップS503)、記憶されていなければ、ネットワーク90を経由して接続されている外部のサーバ30より、フィルタ係数42を検索取得し、係数記憶手段14のフィルタ係数テーブル43に記憶する(ステップ504)。
【0024】
つづいて、立体音響処理手段12は、接続機器判別手段15にて判別した音響再生機器の機器種別情報41を元に、係数記憶手段14に記憶しているフィルタ係数テーブル43を検索して、音響再生機器20に対するフィルタ係数42を取得し、内部に設定する(ステップ505)。
【0025】
つづいて、元音信号入力手段11より元音信号が入力されると、立体音響処理を開始して(ステップS506)、立体音響処理手段12にて先のフィルタ係数42にもとづいて信号処理し(ステップS507)、音響信号出力手段13より音響再生機器20に立体音響信号を出力する(ステップS508)。
【0026】
なお、ステップS501にて、出力しない設定の場合には処理を終了する。
【0027】
以上説明したように本発明の実施の形態では、音響信号の出力先に接続された音響再生機器を判別し、音響再生機器の特性に応じた適切なフィルタ係数を必要に応じて外部のサーバから取得し、元音信号の入力を受け、先のフィルタ係数で立体音響処理し、音響再生機器に立体音響信号を出力している。
【0028】
なお、上記実施の形態の説明では、接続機器判別手段15が、音響再生機器20より型番など機器固有の情報を受けて種別を判別する形態について説明したが、ユーザから入力を受けて種別を判別する形態としても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0029】
また、上記実施の形態の説明では、係数取得制御手段16にてフィルタ係数を外部のサーバ30より取得する形態としたが、立体音響再生装置10の周辺機器として設けた大容量の二次記憶装置から取得する形態や、音響再生機器20と通信して取得するようにしても、上記実施の形態と同様の効果を奏する。
【0030】
(実施の形態2)
以下、本発明の第二の実施の形態にかかる立体音響再生装置について説明する。立体音響処理手段12を含む信号処理機能や能力が必ずしも同一でない立体音響再生装置、すなわち、異なる種別の立体音響再生装置を混在して動作させるときの構成を図4に示す。図4には、機器種別「a」の音響再生機器20aが装置種別「A」の立体音響再生装置10Aに接続され、機器種別「b」の音響再生機器20bが装置種別「B」の立体音響再生装置10Bに接続され、機器種別「c」の音響再生機器20cが装置種別「C」の立体音響再生装置10Cに接続されている。そして、各音響再生装置20a、20b、20cがそれぞれネットワーク90を介して、サーバ30と接続されている。
【0031】
図5に、本発明の第二の実施の形態にかかる立体音響再生装置10の各手段間で授受するデータ構造を示す。
【0032】
図5(a)は、本発明の第二の実施の形態にかかる立体音響再生装置10の種別を表す装置種別情報44のデータ構造例を示している。装置種別情報44は、主に立体音響処理手段12の機能や能力など、立体音響再生装置10の種別を表すデータとして、接続機器判別手段15に記憶される。図5(a)では、立体音響再生装置10の種別が「A」である例を示している。
【0033】
図5(b)は、本発明の第二の実施の形態にかかる立体音響再生装置10がアクセスするサーバ30に記憶されるフィルタ係数データベース45の構造例を示している。フィルタ係数データベース45の各レコードは、装置種別情報44と機器種別情報41の組合せと、それに対応するフィルタ係数42とで構成される。図5(b)では、立体音響再生装置10の種別が「A」で、かつ、音響再生機器の種別が「a」であるときに、フィルタ係数が「α11」、立体音響再生装置10の種別が「A」で、かつ、音響再生機器の種別が「b」であるときに、フィルタ係数が「α12」、立体音響再生装置10の種別が「A」で、かつ、音響再生機器の種別が「c」であるときに、フィルタ係数が「α13」、である例を示している。同様に、立体音響再生装置10の種別が「B」、かつ、音響再生機器の種別が「a」であるときに、フィルタ係数が「α21」、立体音響再生装置10の種別が「B」、かつ、音響再生機器の種別が「b」であるときに、フィルタ係数が「α22」、立体音響再生装置10の種別が「B」、かつ、音響再生機器の種別が「c」であるときに、フィルタ係数が「α23」、である。
【0034】
次に、本発明の第二の実施の形態にかかる立体音響再生装置10の動作を説明する。基本動作は、上記実施の形態1とほぼ同様であるが、図3のステップS504、すなわち、フィルタ係数42を外部のサーバ30より検索取得する際に、装置種別情報44を検索条件として追加して用いる点が、一部異なっている。フィルタ係数を検索した後に、係数記憶手段14のフィルタ係数テーブル43に記憶する処理以降は、本発明の実施の形態1と同様である。
【0035】
以上説明したように本発明の第二の実施の形態では、立体音響処理装置の種別を新たに別途記憶するようにし、音響再生機器20の種別とともに、フィルタ係数の検索条件に用いて外部の係数サーバを検索し、立体音響処理手段12を含む信号処理機能や能力が必ずしも同一でない立体音響装置、すなわち、異なる機種の立体音響再生装置10を混在して動作している。
【0036】
(実施の形態3)
以下、本発明の第三の実施の形態にかかる立体音響再生装置について説明する。図6は、本発明の第三の実施の形態にかかる立体音響再生装置を搭載する立体音響再生システム60の構成を示している。立体音響再生システム60は、立体音響データとフィルタ係数に基づいて立体音響信号を生成する立体音響処理部67、ユーザ操作の入力を受ける操作入力部61、外部の記憶手段であるサーバ30と通信しコンテンツやフィルタ係数などを取得するデータ通信部62、データを記憶する記録部63、立体音響再生システム60の全体を制御する制御部64、音響再生機器20とデータ通信する機器通信部65、入力された立体音響信号を内部スピーカもしくは外部に出力するオーディオ出力部66より構成される。また、音響再生機器20は、立体音響再生システム60と通信する機器制御部21と、オーディオ信号を入力する音響入力部22、ならびに、DAコンバータ、スピーカなどで構成される。
【0037】
こうした構成で、立体音響再生システム60は、まず、操作入力部61よりユーザの操作入力を受けるか、もしくは、機器通信部65を介して機器と通信して音響再生機器20の種別を判別する。ここで、判別した音響再生機器20の種別に対応するフィルタ係数をデータ記憶部63に保持していない場合には、データ通信部62を通じて外部のサーバ30より取得処理し、記録する。そして、あらかじめデータ記録部63に記憶している元音信号を含むコンテンツ、もしくは、データ通信部62を介してサーバ30より受信した元音信号を含むコンテンツについて、機器の種別に対応するフィルタ係数を用いて音響処理する。オーディオ出力部66は、生成した立体音響信号を内部スピーカもしくは音響再生機器20に出力する。
【0038】
次に、本発明の第三の実施の形態にかかる立体音響再生システム60の動作について図7を用いて説明する。図7に、立体音響再生システム60の立体音響処理部67、および、オーディオ出力部66における処理のフローチャートを示す。
【0039】
まず、処理の開始後、立体音響処理部67は、内部設定の音響信号の出力先が、外部の音響生成機器20になっているか、それとも、外部に出力せず内部スピーカへの出力となっているか、を判定する(ステップS501)。音響再生機器20への出力となっている場合には、実施の形態1で説明した立体音響再生装置の動作フローと同様の処理を実施し、オーディオ出力部66より音響再生機器20に立体音響信号を出力する(ステップS502からS508)。
【0040】
つづいて、ステップ501にて出力先を内部スピーカと判定した場合には、元音信号の入力を受けて立体音響処理を開始して(ステップS509)、あらかじめ設定してある内部スピーカ用のフィルタ係数42にもとづいて信号処理し(ステップS510)、内部スピーカに立体音響信号を出力する(ステップS511)。
【0041】
以上説明したように、本発明の第三の実施の形態では、入力された立体音響信号を内部スピーカもしくは外部に出力するオーディオ出力部を新たに備え、内部にスピーカなどの音響出力機能を有する第1の音響再生機器を構成し、外部に第2の音響再生機器を接続する形態で、内部スピーカもしくは外部の第2の音響再生機器に適したフィルタ係数で立体音響処理し、立体音響信号を出力している。
【0042】
なお、上記実施の形態では、あらかじめデータ記録部63に記憶している元音信号を含むコンテンツ、もしくは、データ通信部62を介してサーバ30より受信した元音信号を含むコンテンツとしたが、図6に示すように、立体音響再生システム60にCD−ROMドライブやハードディスクなどの周辺機器31を設けてコンテンツを取得する形態、あるいは、音響再生機器20に同じくCD−ROMドライブやハードディスクなどの周辺機器32を設けて機器制御部21ならびに機器通信部65を介してコンテンツを取得する形態としても同様の効果を奏する。
【0043】
(実施の形態4)
以下、本発明の第四の実施の形態にかかる立体音響再生装置について説明する。図8は、本発明の第四の実施の形態にかかる立体音響再生装置を搭載する立体音響再生システム70の構成を示している。立体音響再生システム70の構成は、立体音響データとフィルタ係数に基づいて立体音響信号を生成する立体音響処理部77、ユーザ操作の入力を受ける操作入力部71、外部の記憶手段であるサーバ30と通信しコンテンツやフィルタ係数などを取得する無線データ通信部72、データを記憶する記録部73、立体音響再生システム70の全体を制御する制御部74、音響映像再生機器29とデータ通信する機器通信部75、入力された立体音響信号を内部スピーカもしくは外部に出力するオーディオ出力部76に加え、入力された表示データを映像処理して内部モニタもしくは外部に出力する
コンテンツ表示処理部78を設けた構成をしている。なお、本実施の形態では、実施の形態3で説明した立体音響再生システム60の構成とほぼ同じであるが、立体音響再生システムとして携帯電話などの携帯無線端末を想定して、データ通信部を無線データ通信部72としている。また、入力された表示データを映像処理して内部モニタもしくは外部に出力するコンテンツ表示処理部78を新たに設け、映像ならびに音響を再生する機器として、テレビなどの音響映像再生機器29を接続している。音響映像再生機器29は、立体音響再生システム70と通信する機器制御部21と、オーディオ信号を入力する音響入力部22、ならびに、DAコンバータ、スピーカなどを有し、さらに、映像データの入力を受けて表示モニタに表示する映像入力部23を新たに設けた構成をしている。
【0044】
次に、本発明の第四の実施の形態にかかる立体音響再生装置を搭載する立体音響再生システム70で処理するコンテンツ80について説明する。図9は、立体音響再生システム70で処理するコンテンツ80の構造例を示している。コンテンツ80は、プログラムデータPを含むアプリ部81、および、表示データD1、元音データD2、フィルタ係数データD3を含むデータ部82で構成される。プログラムデータPは、データ処理や、ユーザとの入出力処理、コンテンツの表示処理などするプログラムコードである。また、表示データD1は、ビデオや、イメージ、図形などの表示データであり、元音データD2は、音楽や、音声、効果音などの音響データである。また、フィルタ係数データD3は、フィルタ係数である。
【0045】
このような構成で、本発明の第四の実施の形態にかかる立体音響再生装置を搭載する立体音響再生システム70でコンテンツ80を処理する動作について説明する。制御部74は、サーバ30からコンテンツ80を取得すると、プログラムデータPに応じてデータ処理、たとえば、操作入力部71でのユーザ操作の入力処理や、コンテンツ表示処理部78での表示データD1の表示出力処理、立体音響処理部77での元音データD2の立体音響処理を開始する。ここで、元音データD2の立体音響処理に関する基本処理動作は、実施の形態3とほぼ同様であるが、図7のステップS503からS505に示したサーバからフィルタ係数を取得して決定する処理において、コンテンツ80にフィルタ係数データD3が含まれている場合にはそれを立体音響処理の係数として決定する点が異なっている。このようにして、コンテンツ80に含まれる表示データD1および元音データD2より、音響映像再生機器29に適した映像信号および立体音響信号を生成し出力する。
【0046】
以上説明したように、本発明の第四の実施の形態では、入力された表示データを映像処理して内部モニタもしくは外部に出力するコンテンツ表示処理部78を新たに設けた構成で、プログラムデータや表示データ、元音データ、フィルタ係数データを含む構造のコンテンツを処理し、接続された映像音響再生機器に表示信号ならびに立体音響信号を出力している。
【0047】
こうして、本発明の第四の実施の形態の実施により、ユーザは、立体音響効果の付いたコンテンツをサイトから携帯電話などの携帯無線端末にダウンロードして保存して、自動的に更新したり、ネットワークと接続していないときに、再生したりする場合に、携帯無線端末とテレビなどの映像音響再生機器をケーブルで接続し、立体音響音とともに映像をテレビの画面やスピーカで再生することができるという効果を得る。
【0048】
なお、上記実施の形態では、制御部74が、アプリ部81のプログラムデータPに応じて表示処理ならびに音響処理制御するとしたが、アプリ部81を含まずデータ部82のみで構成されるコンテンツを受信して、表示データD1と元音データD2をそれぞれコンテンツ表示処理部78と立体音響処理部77へ転送し、データ処理するようにしても同様の効果を奏することは言うまでもない。また、フィルタ係数データD3を含まないコンテンツを受信した場合には、別途取得処理をするようにしても同様の効果を奏することはいう
までもない。
【0049】
また、音響映像再生機器29に出力するコンテンツデータの表示データD1と元音データD2を処理して、映像データのみを外部に出力して音響データは内部スピーカに出力する、あるいは、その逆に音響データのみを外部に出力して映像データは内部モニタに出力する、など、どちらか一方のみを外部に出力するようにしてもよい。
【0050】
また、無線携帯端末とテレビ間の接続にケーブルなどの有線手段に変え、短距離無線などの無線手段を使用してもよい。
【0051】
また、無線携帯端末のモニタ画面やスピーカからテレビなど映像音響再生機器の画面やスピーカへ出力先を切替える処理は、ユーザからの操作指示のほか、近接する機器を検知して自動的に切替えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる立体音響再生装置の構成を示すブロック図
【図2】(a)本発明の実施の形態1にかかる立体音響再生装置で処理する機器種別データの構造例を示す図(b)本発明の実施の形態1にかかる立体音響再生装置で処理するフィルタ係数の構造例を示す図(c)本発明の実施の形態1にかかる立体音響再生装置で処理するフィルタ係数テーブルの構造例を示す図
【図3】本発明の実施の形態1にかかる立体音響再生装置の全体処理のフローチャート
【図4】本発明の実施の形態2にかかる立体音響再生装置をネットワーク接続する構成例を示すブロック図
【図5】(a)本発明の実施の形態2にかかる立体音響再生装置で処理する装置種別データの構造例を示す図(b)本発明の実施の形態2にかかる立体音響再生装置で処理する立体音響再生装置が検索する外部記憶手段内フィルタ係数データベースの構造例を示す図
【図6】本発明の実施の形態3にかかる立体音響再生装置を搭載する立体音響システムの構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態3にかかる立体音響再生装置を搭載する立体音響システムの処理のフローチャート
【図8】本発明の実施の形態4にかかる立体音響再生装置を搭載する立体音響システムの構成を示すブロック図
【図9】本発明の実施の形態4にかかる立体音響再生装置を搭載する立体音響システムで処理するコンテンツの構造例を示す図
【図10】従来技術における元音信号を立体音響処理して聞き手が音像を定位する原理の概念図
【符号の説明】
【0053】
10 立体音響再生装置
20 音響再生機器
29 音響映像再生機器
30 サーバ
31、32 周辺機器
41 機器種別情報
42 フィルタ係数
43 フィルタ係数テーブル
44 装置種別情報
45 フィルタ係数データベース
60、70 立体音響再生システム
80 コンテンツ
90 ネットワーク



【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響データを出力する音響再生機器の種別に応じた立体音響用のフィルタ係数を記憶する係数記憶手段と、
音響再生機器の種別の入力を受ける、もしくは、音響再生機器の種別を音響再生機器より取得し、接続された音響再生機器の種別を判別する接続機器判別手段と、
前記接続機器判別手段にて判別した音響再生機器の種別に対応するフィルタ係数が前記係数記憶手段に記憶されていない場合に、外部の記憶手段より取得し、前記係数記憶手段に記録する係数取得制御手段と、
元音信号を入力する元音信号入力手段と、
前記接続機器判別手段にて判別した音響再生機器の種別と、記係数記憶手段に記憶されたフィルタ係数とに応じて、前記元音信号入力手段にて入力された元音信号に立体音響効果をつける立体音響信号処理して立体音響信号を生成する立体音響処理手段と、
前記立体音響処理手段にて生成した立体音響信号を出力する音響信号処理手段と
を具備することを特徴とする立体音響再生装置。
【請求項2】
前記係数取得制御手段は、立体音響再生装置の種別を新たに記憶し、外部の記憶手段よりフィルタ係数を取得する際に、音響再生機器の種別と立体音響再生装置の種別とに応じてフィルタ係数を取得するようにしたことを特徴とする請求項1記載の立体音響再生装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の立体音響再生装置を具備し、前記立体音響再生装置の出力する立体音響信号を内部スピーカもしくは外部に出力可能なオーディオ出力部をさらに備えた立体音響再生システムであって、前記音響再生機器の種別を判別し、判別した種別に対応するフィルタ係数を保持していない場合には外部の記憶手段より取得し、あらかじめ記憶している元音信号を含むコンテンツもしくは外部の記憶手段より受信した元音信号を含むコンテンツについて、内部のスピーカもしくは先に判別した前記音響再生機器の種別に対応するフィルタ係数を用いて立体音響信号を生成し出力することを特徴とする立体音響再生システム。
【請求項4】
請求項1または2記載の立体音響再生装置を具備し、前記立体音響再生装置の出力する立体音響信号を内部スピーカもしくは外部に出力可能なオーディオ出力部をさらに備えた立体音響再生システムであって、少なくとも元音信号データとフィルタ係数とを含むコンテンツを取得し、元音信号データについて受信したコンテンツに含まれるフィルタ係数にて立体音響信号処理して立体音響信号を生成し、内部スピーカもしくは外部へ立体音響信号を出力することを特徴とする立体音響再生システム。
【請求項5】
表示データをさらに含む前記コンテンツを受信し、受信した前記コンテンツに含まれる表示データより映像信号を生成し、内部モニタもしくは外部へ生成した映像信号を出力するコンテンツ表示処理部をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の立体音響再生システム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の立体音響再生装置を具備する携帯無線端末。
【請求項7】
請求項3から5のいずれかに記載の立体音響再生システムを具備する携帯無線端末。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−60616(P2008−60616A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338453(P2004−338453)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】