説明

立坑内における台車入替装置

【課題】掘削ズリ等を搬送する複数の台車が掘進組立作業現場から出発して帰ってくるまでの時間を効果的に短縮できる立坑内における台車入替装置を提供する。
【解決手段】シールド工事で構築される立坑21内に設けられて、バッテリーロコ14の駆動によりトンネル坑内22に敷設した軌条13に沿って移動する台車11a,11b,11c,12を入れ替えるための台車入替装置10であって、軌条13の延長上に設けられた固定軌条15を有する中央固定部16と、ドーナツ状の平面形状を備え、中央固定部16を中心とする放射方向に延設する複数の移動軌条17が設けられると共に、中央固定部16の外周を周方向に回動可能なターンテーブル18とからなり、ターンテーブル18には、往復移動する複数の台車11a,11b,11c,12の2倍の数の移動軌条17が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネル工事で構築される立坑内において、トンネル坑内を往復移動する複数の台車を入れ替えるための立坑内における台車入替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネル工事は、シールド掘進機の後方にセグメントをリング状に組み立てながら発進立坑から到達立坑に向けてシールド掘進機を掘進させることにより、セグメントによるトンネルを地中に形成するものである。シールドトンネル工事では、発進立坑や到達立坑等の立坑は、例えば都市部における狭い作業ヤードにおいて、限られら領域内に地表面からトンネルが設置される所定の深さまで鉛直に掘り下げて形成されるものであり、これらの立坑を介して、シールド掘進機によるトンネル坑内に各種の資器材を搬入したり、掘削ズリ等をトンネル坑内から地上に搬出するようになっている。
【0003】
また、シールドトンネル工事では、トンネル坑内に一対のレール部材からなる軌条を敷設しておき、敷設した軌条に沿ってズリトロ台車やセグメント台車等の複数の台車を、サーボロコやバッテリーロコ等の駆動台車に連結して、これらの駆動台車の駆動によって、シールド掘進機による掘進組立作業現場と立坑との間で往復移動させることにより、掘進組立作業現場から立坑に掘削ズリを搬出したり、立坑から掘進組立作業現場にセグメント等の資器材を搬入したりするようになっている。
【0004】
さらに、立坑の上方の地上部分には、天井クレーン等の吊上げ重機が設けられており、これらの吊上げ重機によって、台車によって立坑に搬送された掘削ズリを地上に搬出したり、掘進組立作業現場に搬送すべきセグメント等の資器材を立坑内の台車に積み込むようになっている。
【0005】
そして、このような立坑を介した掘削ズリの搬出や資機材の搬入等の作業を効率良く行えるようにするための、いわゆるトラバーサと呼ばれる装置が種々開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−18800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のトラバーサ装置では、狭い立坑内において、掘削ズリの搬出や資器材の搬入等を吊上げ重機によって行う作業位置まで、複数の台車を各々短時間で高能率に移動させることは可能であるが、吊上げ重機による作業位置で一つの台車に対して掘削ズリの搬出や資器材の搬入等の作業を行っている間は、他の台車についてはこれらの作業を同時に行うことができないため、複数の台車を掘進組立作業現場から立坑内に移動させた後に、これらの台車を掘進組立作業現場に向けて再度送り出すまでに相当の時間を要することになる。
【0008】
特に、シールド掘進機による掘進が進行して、トンネル坑内を介した立坑から掘進組立作業現場までの距離が長くなると、掘進組立作業現場において所定のリング分のシールド掘進機の掘進及びセグメントの組立作業に費やされる時間よりも、掘削ズリやセグメントを搬送する台車が掘進組立作業現場と立坑との間を往復移動する時間及び立坑内で吊上げ重機によって行われる作業時間の方が長くなることから、これらの移動時間及び作業時間がクリティカルになって、工期の短縮に大きな影響を及ぼすことになる。したがって、掘削ズリやセグメント等を搬送する複数の台車が掘進組立作業現場から出発して再び掘進組立作業現場に帰ってくるまでの時間を、できるだけ短くすることが望まれる。
【0009】
一方、このような時間を短縮するためには、例えば立坑内において、掘削ズリや資器材等を吊上げ重機によって吊り上げたり吊り降ろしたりする昇降速度を速くして、吊上げ重機による作業時間を短縮することも考えられるが、天井クレーン等の吊上げ重機の巻上げ速度には法定上の規制があるため、これによって時間短縮を図るには限界があった。
【0010】
本発明は、掘削ズリやセグメント等を搬送する複数の台車が掘進組立作業現場から出発して再び掘進組立作業現場に帰ってくるまでの時間を、効果的に短縮することのできる立坑内における台車入替装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シールドトンネル工事で構築される立坑内に設けられて、駆動台車の駆動によりトンネル坑内に敷設した軌条に沿って往復移動する複数の台車を入れ替えるための台車入替装置であって、前記軌道の延長上に設けられた固定軌条を有する中央固定部と、該中央固定部を中央に配置したドーナツ状の平面形状を備え、該中央固定部を中心とする放射方向に延設する複数の移動軌条が設けられると共に、該中央固定部の外周を周方向に回動可能なターンテーブルとからなり、該ターンテーブルには、前記往復移動する複数の台車の2倍以上の数の前記移動軌条が設けられている立坑内における台車入替装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0012】
そして、本発明の立坑内における台車入替装置は、前記中央固定部が、前記駆動台車の長さと略同じ直径の円形の平面形状を備えており、前記ターンテーブルは、前記台車の長さと略同じ幅のドーナツ状の平面形状を備えていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の立坑内における台車入替装置は、前記ターンテーブルには、前記往復移動する複数の台車の2倍の数の前記移動軌条が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の立坑内における台車入替装置によれば、掘削ズリやセグメント等を搬送する複数の台車が掘進組立作業現場から出発して再び掘進組立作業現場に帰ってくるまでの時間を、効果的に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の好ましい一実施形態に係る立坑内における台車入替装置の略示平面図、(b)は(a)のA−Aに沿った断面図である。
【図2】シールドトンネル工事の掘進組立作業現場を説明する略示縦断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の好ましい一実施形態に係る立坑内における台車入替装置を用いて複数の台車を入れ替える状況を説明する略示平面図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の好ましい一実施形態に係る立坑内における台車入替装置を用いて複数の台車を入れ替える状況を説明する略示平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の好ましい一実施形態に係る立坑内における台車入替装置10は、図1(a),(b)に示すように、シールドトンネル工事として、例えば泥土圧式シールド掘進機20(図2参照)によるトンネル工事において、立坑21とトンネル坑内22の先端部分の掘進組立作業現場23(図2参照)との間で往復移動して掘削ズリ24やセグメント25等の資器材を搬送する複数の台車11a,11b,11c,12を、立坑21内において効率良くスムーズに入れ替えて、複数の台車11a,11b,11c,12が掘進組立作業現場23から出発して再び掘進組立作業現場23に帰ってくるまでの時間を効果的に短縮できるようにするために、立坑21の底部に設置して設けられたものである。
【0017】
ここで、泥土圧式シールド掘進機20は、図2に示すように、掘削した土砂を土圧室26内に取り込んで作泥材と混合することにより泥土として充填し、泥土による充填圧力によって切羽面からの土圧に対抗しつつ掘削作業を行うと共に、土圧室26内の充填圧力を保持したまま、スクリュ−コンベア27を介して土圧室26から泥土を掘削ズリ24として排土しつつ掘進作業を行う公知のシールド掘進機である。また泥土圧式シールド掘進機20は、土圧室26の後方のスキンプレート28の内部において、セグメント組立装置29を用いて搬送されてきたセグメント25をリング状に組み立てるようになっており、組み立てたセグメント25から反力を得て、伸縮ジャッキ(図示せず)を伸縮しつつ前進することができるようになっている。
【0018】
また、本実施形態では、土圧室26からスクリュ−コンベア27を経て排土された掘削ズリ24は、排土用ベルトコンベア28を介して搬送されて、掘進組立作業現場23の後方に移動してきた3台のズリトロ台車11a,11b,11cに積み込まれるようになっていると共に、土圧室26の後方でリング状に組み立てられるセグメント25は、立坑21内でセグメント台車12に積み込まれた後に、掘進組立作業現場23の後方まで搬送されてくるようになっている。
【0019】
さらに、本実施形態では、立坑21から掘進組立作業現場23に至るトンネル坑内22には、一対のレール部材からなる軌条13が敷設されており、3台のズリトロ台車11a,11b,11c及びセグメント台車12は、掘進方向Xの後方側(立坑21側)から順番に連結されて直列状に配置されると共に、掘進方向Xの後端部に配設された駆動台車としてのバッテリーロコ14と連結されており、このバッテリーロコ14の駆動によって牽引されて、軌条13に沿って立坑21と掘進組立作業現場23との間を往復移動することができるようになっている。
【0020】
そして、本実施形態の台車入替装置10は、図1(a),(b)に示すように、シールドトンネル工事で構築される立坑21内に設けられて、バッテリーロコ14の駆動によりトンネル坑内22に敷設した軌条13に沿って往復移動する複数の台車11a,11b,11c,12を入れ替えるための入替装置であって、軌条13の延長上に設けられた固定軌条15を有する中央固定部16と、中央固定部16を中央に配置したドーナツ状の平面形状を備え、中央固定部16を中心とする放射方向に延設する複数の移動軌条17が設けられると共に、中央固定部16の外周を周方向に回動可能なターンテーブル18とからなり、ターンテーブル18には、往復移動する複数の台車11a,11b,11c,12(本実施形態では4台)の2倍の数(本実施形態では8箇所)の移動軌条17が設けられている。
【0021】
また、本実施形態では、好ましくは、中央固定部16は、バッテリーロコ14の長さと略同じ直径の円形の平面形状を備えており、ターンテーブル18は、各台車11a,11b,11c,12の長さと略同じ幅のドーナツ状の平面形状を備えている。
【0022】
ここで、3台のズリトロ台車11a,11b,11cは、泥土圧式シールド工法において掘削ズリを搬送する台車として公知のものであり、セグメント台車12は、各種のシールド工法においてセグメントを搬送する台車として公知のものである。本実施形態では、3台のズリトロ台車11a,11b,11cとセグメント台車12は、略同じ長さの縦長矩形の平面形状を有している。また、バッテリーロコ14は、各種のトンネル工事において、複数の台車を軌条に沿って移動させる駆動台車として公知のものである。
【0023】
そして、本実施形態の台車入替装置10は、例えば直径が9.0m程度の中空の円形断面を有するように形成された発進用の立坑21の、シールドトンネルが構築される所定の深さの底部分に設けられた円盤形状の入替装置であって、円形の平面形状を有する中央固定部16と、中央固定部16の外周を周方向に回動可能なドーナツ状の平面形状を有するターンテーブル18とによって構成される。
【0024】
本実施形態では、中央固定部16は、その中心を立坑21の中心よりも掘進方向Xの後方側に僅かにずらした状態で、立坑21の底面21aから一体として突出する円形ドラム形状の固定台として設けられる。中央固定部16は、バッテリーロコ14の長さと略同様の2.2m程度の直径を有するように形成されており、この中央固定部16には、トンネル坑内22に敷設された軌条13の延長上に配置されて、一対のレール部材からなる固定軌条15が、中央固定部16の中央を直径方向に横断するようにして設けられている。
【0025】
この固定軌条15は、ターンテーブル18に設けられた8箇所の移動軌条17のうちの一つがこれの延長上に合致することにより、当該移動軌条17を介してトンネル坑内22に敷設した軌条13と連続することなる。これによって、トンネル坑内22の軌条13に沿って台車11a,11b,11c,12を牽引しながら移動してきたバッテリーロコ14を、立坑21内において中央固定部16までさらに移動させることが可能になると共に、ターンテーブル18を回動しつつ各台車11a,11b,11c,12を交換している間、バッテリーロコ14を中央固定部16に仮置きしておくことができ、また各台車11a,11b,11c,12を交換した後に、これらの台車11a,11b,11c,12を、トンネル坑内22の軌条13に沿って掘進組立作業現場23に向けて再び牽引してゆくことができるようになっている(図3、図4参照)。
【0026】
ターンテーブル18は、中央固定部16の外周部分に沿ってこれと同心状に配置される、円環ドーナツ形状の部分である。ターンテーブル18は、ズリトロ台車11a,11b,11cやセグメント台車12の長さと略同様の、2.7m程度の幅を有するように形成されており、このターンテーブル18には、中央固定部16の中心を中心とする放射方向に延設して、移動軌条17が、周方向に等角度ピッチで8箇所に設けられている。また、ターンテーブル18は、中央固定部16と、立坑21の底部内周面に沿って設けられた外側支持台19との間に、遊嵌状態で支持されて設けられており、例えば中央固定部16や外側支持台19を介して取り付けられたテーブル回転駆動機構(図示せず)の駆動によって、中央固定部16の外周に沿って周方向に回動することができるようになっている。
【0027】
そして、ターンテーブル18に設けられた8箇所の移動軌条17は、ターンテーブル18の例えば45°毎の回動によって、トンネル坑内22の軌条13と中央固定部16の固定軌条15との間に順次配置されることになる。これによって、交換すべき台車11a,11b,11c,12をターンテーブル18上に順次仮置きすることが可能になると共に、交換された台車11a,11b,11c,12を、掘進組立作業現場23に向けて順次送り出すことができるようになっている(図3、図4参照)。
【0028】
なお、ターンテーブル18を回動させるテーブル回転駆動機構としては、例えば特開平10−18800号公報に記載の環状ラックと駆動モータと駆動ギアとからなる回転駆動機構等の、公知の各種のテーブル回転駆動機構を採用することができる。また、固定軌条15や移動軌条17には、仮置きしたバッテリーロコ14や台車11a,11b,11c,12を仮固定しておくための例えば起伏式の車止め等が設けられている。
【0029】
さらに、立坑21の内部には、台車入替装置10の上方に位置して、監視ステージ30が、昇降設備31を介して昇降可能に設けられており、この監視ステージ30から、台車11a,11b,11c,12の入替作業を管理することができるようになっている。さらにまた、中央固定部16やターンテーブル18を囲む適宜の位置には、立入禁止柵32が設けられていると共に、トンネル坑内22の出入り口と隣接する壁面には、操作盤33が設けられている。
【0030】
そして、上述の構成を備える本実施形態の台車入替装置10によれば、図3(a)〜(d)及び図4(a)〜(d)に示すように、以下のようにして、ズリトロ台車11a,11b,11c及びセグメント台車12の入れ替えを、容易に且つ迅速に行うことが可能になる。
【0031】
ズリトロ台車11a,11b,11c及びセグメント台車12を入れ替えるには、まず、掘進組立作業現場23から掘削ズリ24を積み込んだズリトロ台車11a,11b,11c及び空のセグメント台車12が立坑21まで搬送されてくるのに先立って、予め、ターンテーブル18の移動軌条17に、入れ替え用の空のズリトロ台車11a’,11b’,11c’及びセグメント25を積み込んだセグメント台車12’を仮置きする作業を行う。
【0032】
すなわち、本実施形態では、地上に設置した天井クレーン等の吊上げ重機を用いて、適宜ターンテーブル18を回動させながら、セグメント25を積み込んだセグメント台車12’を、中央固定部16を挟んだトンネル坑内22とは反対側に位置する移動軌条17に仮置きする(図3(a)参照)。また、3台の空のズリトロ台車11a’,11b’,11c’を、セグメント台車12’から、ターンテーブル18の回動方向Yである反時計回りとは反対の、時計回りに隣接する移動軌条17に、第3ズリトロ台車11c’、第2ズリトロ台車11b’、第1ズリトロ台車11a’の順番で仮置きする(図3(a)参照)。この状態では、セグメント台車12’が仮置きされた移動軌条17とは反対側に位置する移動軌条17は、空まま中央固定部16の固定軌条15とトンネル坑内22の軌条13との間に直線状に配置されることになる。
【0033】
そして、この状態で、掘進組立作業現場23から掘削ズリ24を積み込んだズリトロ台車11a,11b,11c及び空のセグメント台車12が立坑21まで搬送されてきたら、図3(a)に示すように、先頭のバッテリーロコ14を、中央固定部16の固定軌条15まで移動させると共に、バッテリーロコ14と先頭の第1ズリトロ台車11aとの連結を解放する。また、第1ズリトロ台車11aと次の第2ズリトロ台車11bとの連結を解放する。これによって、第1ズリトロ台車11aは、前後の連結が解除された状態でターンテーブル18の移動軌条17に仮置きされることになるので、ターンテーブル18を回動方向Yに回動させることが可能になる。
【0034】
この状態から、ターンテーブル18を回動方向Yに45°回動させれば、次の移動軌条17が空のまま中央固定部16の固定軌条15とトンネル坑内22の軌条13との間に直線状に配置されるので、図3(b)に示すように、残りの台車11b,11c,12をターンテーブル18側に前進させて、第2ズリトロ台車11bを移動軌条17に仮置きすると共に、第2ズリトロ台車11bと次の第3ズリトロ台車11cとの連結を解放する。しかる後に、ターンテーブル18を回動方向Yにさらに45°回動させれば、次の移動軌条17が空のまま中央固定部16の固定軌条15とトンネル坑内22の軌条13との間に配置されるので、図3(c)に示すように、残りの台車11c,12をターンテーブル18側に前進させて、第3ズリトロ台車11cを移動軌条17に仮置きすると共に、第3ズリトロ台車11cと次のセグメント台車12との連結を解放する。引き続いて、ターンテーブル18を回動方向Yにさらに45°回動させれば、最後に残った空のままの移動軌条17が中央固定部16の固定軌条15とトンネル坑内22の軌条13との間に配置されるので、図3(d)に示すように、セグメント台車12をターンテーブル18側に前進させて移動軌条17に仮置きする。
【0035】
これによって、ターンテーブル18上には、入れ替え用の空のズリトロ台車11a’,11b’,11c’及びセグメント25を積み込んだセグメント台車12’と、掘進組立作業現場23から搬送されてきた掘削ズリ24を積み込んだズリトロ台車11a,11b,11c及び空のセグメント台車12とが同時に仮置きされると共に、ターンテーブル18によって囲まれる中央固定部16上には、バッテリーロコ14が仮置きされることになる。
【0036】
ここで、バッテリーロコ14から切り離した後のズリトロ台車11a,11b,11cやセグメント台車12の移動は、例えば簡易なウィンチを用いたり人力作業によって容易に行うことができる。
【0037】
そして、入れ替え用のズリトロ台車11a’,11b’,11c’及びセグメント台車12’と、掘進組立作業現場23から搬送されてきたズリトロ台車11a,11b,11c及びセグメント台車12とが仮置きされている図3(d)の状態から、ターンテーブル18を回動方向Yにさらに45°回動させれば、図4(a)に示すように、セグメント台車12’を仮置きした移動軌条17が、中央固定部16の固定軌条15とトンネル坑内22の軌条13との間に配置されるので、図4(b)に示すように、セグメント25を積み込んだセグメント台車12’を、掘進方向Xに移動させて軌条13上に配置させると共に、ターンテーブル18を回動方向Yにさらに45°回動させて、空の第3ズリトロ台車11c’をセグメント台車12’の後方に配置する。
【0038】
しかる後に、第3ズリトロ台車11c’をセグメント台車12’と連結し、図4(c)に示すように、これらを掘進方向Xに移動させて軌条13上に配置させると共に、ターンテーブル18を回動方向Yにさらに45°回動させて、空の第2ズリトロ台車11b’を第3ズリトロ台車11c’の後方に配置する。引き続いて、第2ズリトロ台車11c’を第3ズリトロ台車11c’と連結し、図4(d)に示すように、セグメント台車12’と一緒にこれらを掘進方向Xに移動させて軌条13上に配置させると共に、ターンテーブル18を回動方向Yにさらに45°回動させて、空の第1ズリトロ台車11a’を第2ズリトロ台車11b’の後方に配置する。
【0039】
これによって、掘進方向Xの前方側から、セグメント25を積み込んだセグメント台車12’と、空の第3ズリトロ台車11c’と、空の第2ズリトロ台車11c’と、空の第1ズリトロ台車11a’と、中央固定部16に仮置きされたバッテリーロコ14とが一直線上に並ぶことになる。したがって、第2ズリトロ台車11c’と第1ズリトロ台車11a’とを連結すると共に、第1ズリトロ台車11a’とバッテリーロコ14とを連結することにより、掘進組立作業現場23から搬送されてきたズリトロ台車11a,11b,11c及びセグメント台車12と入れ替えられられた、ズリトロ台車11a’,11b’,11c’及びセグメント台車12’を、バッテリーロコ14の駆動よって、トンネル坑内22の掘進組立作業現場23に向けて再び搬送してゆくことが可能になる。
【0040】
また、本実施形態では、掘進組立作業現場23に向けてズリトロ台車11a’,11b’,11c’及びセグメント台車12’がトンネル坑内22に搬送された後に、立坑21内の台車入替装置10の上に残置された、ズリトロ台車11a,11b,11c及びセグメント台車12は、例えばズリトロ台車11a’,11b’,11c’が掘進組立作業現場23で掘削ズリ24を積み込んで再び立立坑21に戻ってくるまでの間に、適宜天井クレーン等の吊上げ重機を用いて地上に吊上げて、掘削ズリ24を排除したり、セグメント台車12にセグメント25を積み込んだりして、図3(a)におけるバッテリーロコ14や台車が11a,11b,11c,12が掘進組立作業現場23から搬送されてくる前の状態で、これらの到着を待機することになる。
【0041】
このようにして、本実施形態の台車入替装置10によれば、掘進組立作業現場23から搬送されてきた台車11a,11b,11c,12を、入れ替え用の台車11a’,11b’,11c’,12’と立坑21内で入れ替える作業を、吊上げ重機による各台車11a,11b,11c,12の吊り上げや吊り降ろしを行うことなく、ターンテーブル18の45°毎の回動と、各台車11a,11b,11c,12の僅かな移動によって行うことができるので、入れ替え時間を大幅に短縮することが可能になり、これによって、掘削ズリ24やセグメント25等を搬送する複数の台車11a,11b,11c,12が掘進組立作業現場23から出発して再び掘進組立作業現場23に帰ってくるまでの時間を、効果的に短縮することが可能になる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の台車入替装置によって入れ替えられる台車の数は、4台である必要は必ずしもなく、3台又は5台以上であっても良い。また、ターンテーブルに設けられる移動軌条の数は、入れ替えられる台車の数の2倍である必要は必ずしも無く、それよりも多い移動軌条が設けられていても良い。さらに、本発明の台車入替装置は、泥土圧式シールド掘進機によるシールドンネル工事に限定されることなく、泥水式等、その他の種々のシールドンネル工事において、台車を入れ替えるための装置として用いることができる。さらにまた、中央固定部は、駆動台車の長さと略同じ直径の円形の平面形状を備えている必要は必ずしもなく、ターンテーブルは、台車の長さと略同じ幅を備えている必要は必ずしも無い。
【符号の説明】
【0043】
10 台車入替装置
11a,11a’ 第1ズリトロ台車
11b,11b’ 第2ズリトロ台車
11c,11c’ 第3ズリトロ台車
12,12’ セグメント台車
13 軌条
14 バッテリーロコ(駆動台車)
15 固定軌条
16 中央固定部
17 移動軌条
18 ターンテーブル
19 外側支持台
20 泥土圧式シールド掘進機
21 立坑
22 トンネル坑内
23 掘進組立作業現場
24 掘削ズリ
25 セグメント
X 掘進方向
Y 回動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネル工事で構築される立坑内に設けられて、駆動台車の駆動によりトンネル坑内に敷設した軌条に沿って往復移動する複数の台車を入れ替えるための台車入替装置であって、
前記軌道の延長上に設けられた固定軌条を有する中央固定部と、該中央固定部を中央に配置したドーナツ状の平面形状を備え、該中央固定部を中心とする放射方向に延設する複数の移動軌条が設けられると共に、該中央固定部の外周を周方向に回動可能なターンテーブルとからなり、
該ターンテーブルには、前記往復移動する複数の台車の2倍以上の数の前記移動軌条が設けられている立坑内における台車入替装置。
【請求項2】
前記中央固定部は、前記駆動台車の長さと略同じ直径の円形の平面形状を備えており、前記ターンテーブルは、前記台車の長さと略同じ幅のドーナツ状の平面形状を備えている請求項1記載の立坑内における台車入替装置。
【請求項3】
前記ターンテーブルには、前記往復移動する複数の台車の2倍の数の前記移動軌条が設けられている請求項1又は2記載の立坑内における台車入替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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