説明

端子取付構造

【課題】従来のコネクタでは、キャビティ穴の延設方向と端子の挿入方向とが一致しないと、端子をキャビティ穴内にスムーズに挿入できなかった。
【解決手段】端子取付構造は、インサート端子1をキャビティ穴42に挿通させてハウジング4に取り付けて構成されている。ハウジング4は、端子本体2の挿入方向に沿ってキャビティ穴42の内周面に延びた溝43を備えている。インサート端子1が備えるインサート成型部3は、端子本体2に固定された本体31と、本体31から延びた一対の係止用アーム32と、端子本体2の挿入方向に沿って本体31に形成された案内部材33とを備えている。係止用アーム32は、本体31を挟んでキャビティ穴42内を延びてキャビティ穴42の内周面に弾接し、ハウジング4に係止する。案内部材33は、溝43内に配置されて溝43の内周面に弾接することで端子本体2の挿入方向を案内する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングが備えるキャビティ穴内に端子を挿入して取り付ける端子取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタでは、ハウジングが備えるキャビティ穴を通してキャビティ内に端子が取り付けられている。下記の特許文献1では、箱形のハウジングの側壁に形成されたキャビティ穴を通して、コンタクト(端子)の接触部をハウジング内に配置している。
【0003】
また、下記の特許文献2では、雌型端子の外周部を覆うようにして樹脂製のモールド部材を設け、モールド部材の突起部材をハウジングがキャビティ穴に備える凹部に係合させることで、端子がハウジングに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−208189号公報
【特許文献2】特開2000−133357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のコネクタでは、キャビティ穴の延設方向と端子の挿入方向とが一致しないと、キャビティ穴の内周面と端子との接触で端子をキャビティ穴内にスムーズに挿入することができなかった。
【0006】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、上記課題を解決することのできる端子取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の端子取付構造は、ハウジングが備えるキャビティ穴内に端子を挿入して取り付ける端子取付構造であって、前記端子が、導電性を有する端子本体と、係止用アーム及び案内部材を有して前記端子本体に固定されたインサート成型部とを備え、前記ハウジングが、前記キャビティ穴内に挿入された前記係止用アームが係止する係止面と、前記キャビティ穴内で前記案内部材を案内する案内溝とを備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記係止用アームが、前記インサート成型部の本体の両側に形成されており、前記本体の両側に沿って前記端子本体の延伸方向に延びていることを特徴とする。
また、本発明は、前記案内部材が、前記案内溝の内周面に弾接することで前記キャビティ穴内を案内されることを特徴とする。
また、本発明は、前記案内部材が、前記本体から延びて互いの間に間隙を設けて配置された一対の案内板から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャビティ穴の延設方向に対する端子の挿入方向のずれを抑えて、キャビティ穴内に端子をスムーズに挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態のインサート端子及びハウジングを示す図であり、(a)はインサート端子の斜視図,(b)はハウジングの後壁を部分的に示す斜視図である。
【図2】(a)は図1の端子本体を示す斜視図,(b)はインサート成型部を示す斜視図である。
【図3】図1の後壁を示す図であり、(a)は正面図,(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】ハウジングに対するインサート端子の取付方法を示す図である。
【図5】ハウジングのキャビティ穴に挿入されたインサート端子を図3のA−A矢視断面で示す図である。
【図6】ハウジングのキャビティ穴に挿入されたインサート端子を示す図であり、(a)は図3のB−B矢視断面図,(b)は枠C内の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のインサート端子1及びハウジング4を示す図である。図2はインサート端子1を構成する端子本体2及びインサート成型部3を別個に示した斜視図である。図3は、ハウジング4の後壁41を示す図である。なお、以下の説明で用いる上下,前後,左右の各方向は説明に用いる各図に示している。この上下は説明のために記載したもので、実際の配置と異なってよいことはもちろんである。
【0011】
本実施形態の端子取付構造は、図1(a)に示すインサート端子1を図1(b)に示すハウジング4のキャビティ穴42に挿通させ、ハウジング4にインサート端子1を取り付けて構成される。
【0012】
図1(a)に示すように、インサート端子1は、端子本体2にインサート成形でインサート成型部3を設けて構成されている。図2(a)に示すように、端子本体2は、前後の端部にテーパ部2aを備えた金属製の四角棒状体から構成されている。端子本体2の前後方向の中央部には、端子本体2の上下及び左右の角部を窪ませて構成された定着部21が備えられている。定着部21は、インサート成型部3の前後方向への移動を規制して、インサート成型部3を端子本体2に定着させるためのものである。
【0013】
図2(b)に示すように、インサート成型部3は、端子本体2の定着部21の形成箇所を覆って前後方向に延びた四角ブロック状の本体31と、本体31の左右の側面に突設された一対の係止用アーム32と、本体31の上下の側面に形成された一対の案内部材33とを備えている。インサート成型部3は、端子本体2の先端部分が突出するように、端子本体2に固定される。
【0014】
係止用アーム32は、本体31の左右の側面の上下方向の中央部に突設されている。係止用アーム32は、本体31の左右の側面の前端部から左右の側方に延びた後に後方に屈曲し、本体31の左右の側面に沿って後方に延びている。係止用アーム32の後端部の左側又は右側の外面には、係止突起32aが突設されている。係止突起32aの後端面は、後端から前端側にかけて外側に向けて傾斜した傾斜面となっている。
【0015】
案内部材33は、本体31の上下の側面の左右方向の中央部から上下の側方に延びた一対の案内板33aから構成されている。両案内板33aは、本体31の上下の側面の前端から後端にかけて矩形の平板状を呈して延びており、互いの主面の間に間隙を設けて平行に並んで配置されている。案内板33aの先端部は、先端側にかけて徐々に肉薄となるように構成されている。
【0016】
図3に示すように、ハウジング4は、後壁41の前面に開口したキャビティ穴42を備えている。キャビティ穴42は、方形の開口形状を有して後壁41の前端から後端部にまで延びている。キャビティ穴42の後端部には、後壁41の前側と後側とを隔てる隔壁42aが設けられている。
【0017】
隔壁42aの左右の端部には、一対の連通部44が設けられている。両連通部44は、隔壁42aの上下方向の中央部に設けられており、方形の開口形状を有して隔壁42aを前後方向に貫通している。連通部44には、インサート端子1の係止用アーム32が挿通される。連通部44の後端開口部の周縁に位置する後壁41の裏面は、係止用アーム32の係止突起32aが係止される係止面となっている。両連通部44の間に位置する隔壁42aの中央部には、方形の開口形状を有して隔壁42aを前後方向に貫通した挿通部45が設けられている。挿通部45には、インサート端子1の端子本体2が挿通される。
【0018】
キャビティ穴42の上下の内側面には、キャビティ穴42の前端開口部から隔壁42aにかけて延びた案内溝43が設けられている。案内溝43は、矩形の開口形状を有しており、キャビティ穴42の上下の内側面の左右方向の中央部に位置している。案内溝43は、キャビティ穴42に対するインサート端子1の挿入方向に沿って、前後方向に延びている。
【0019】
インサート端子1は、図4(a)に示すように、係止用アーム32の延出方向を向いた端子本体2の後端をキャビティ穴42の前端開口部と向き合わせて、図4(b)に示すようにキャビティ穴42内に挿入され、図4(c)に示すようにインサート成型部3がキャビティ穴42内に没入するまで嵌め合わされて、端子本体2の前端部分(先端部分)が突出するようにハウジング4に取り付けられる。
【0020】
キャビティ穴42内に挿入されたインサート端子1は、図5(a)に示すように、端子本体2を挿通部45に挿通させて後壁41の後方まで延出させ、図5(a),図6(a)に示すように、係止用アーム32の係止突起32aをキャビティ穴42の左右の内側面に弾接させて本体31側に撓ませている。また、図6(b)に拡大して示すように、両案内板33aの左側面又は右側面を案内溝43の左右の内側面に弾接させて、案内板33a同士が近接する方向に両案内板33aを撓ませている。
【0021】
このように、係止突起32aがキャビティ穴42の内側面に、案内板33aが案内溝43の内側面にそれぞれ弾接することで、インサート成型部3を備えたインサート端子1は、キャビティ穴42内に弾性支持されて左右及び上下方向の位置決めをされながら、後方に向けてキャビティ穴42内を移動する。
【0022】
その後、本体31が前端までキャビティ穴42内に没入するまでインサート端子1が案内溝43内に挿入されると、図5(b)に示すように、本体31の後面がキャビティ穴42内の隔壁42aに当接してインサート端子1の後方への移動が規制され、インサート成型部3がキャビティ穴42に嵌め合わされる。係止用アーム32は、キャビティ穴42から連通部44を通して後壁41の後方にまで移動した係止突起32aが、連通部44の周縁に位置する後壁41の後面に係止され、キャビティ穴42の左右の内側面に左右の外面を密着させている。
【0023】
案内溝43内へのインサート端子1の挿入時に、キャビティ穴42の延設方向とインサート端子1の挿入方向とが一致しないと、左右の一方の案内板33aの前端側が案内溝43の左右の一方の側壁に押し付けられると共に、他方の案内板33aの後端側が案内溝43の他方の側壁に押し付けられる。これにより、両案内板33aが撓み、キャビティ穴42の延設方向に対するインサート端子1の挿入方向のずれを抑える方向に弾発力を働かせる。
【0024】
本実施形態によれば、本体31の左右の側面に突設された一対の係止用アーム32がキャビティ穴42の内周面に弾接することで、キャビティ穴42内に挿入されたインサート成型部3がキャビティ穴42内に弾性支持され、係止用アーム32の係止突起32aが連通部44の周縁に係止されることで、インサート端子1がハウジング4に取り付けられることから、キャビティ穴42の延設方向に対するインサート端子1の挿入方向のずれを抑えて、キャビティ穴42内にインサート端子1をスムーズに挿入することが可能となる。
【0025】
また、案内溝43内に挿入された案内部材33の案内板33aが案内溝43の左右の内側壁に弾接することで、インサート成型部3の挿入方向が案内溝43の延設方向と一致するようにインサート成型部3が案内されることから、キャビティ穴42の延設方向に対するインサート端子1の挿入方向のずれをより確実に抑えて、キャビティ穴42内にインサート端子1をスムーズに挿入することが可能となる。
【0026】
この結果、キャビティ穴42内に挿入する際にインサート端子1が削れられて糸バリが発生し、ショート等の不具合が生じるのを防止できる。また、係止用アーム32をハウジング4に係止させて、キャビティ穴42からのインサート端子1の抜けを防止しているので、ハウジング4に対する係止用アーム32の係止を解くことでインサート端子1をキャビティ穴42から容易に抜き出すことができ、ハウジング4やインサート端子1に異常があった場合の組み付け直しやインサート端子1の再利用も可能となる。
【0027】
また、係止用アーム32及び案内部材33でキャビティ穴42内にインサート端子1がに弾性支持されていることから、インサート端子1を相手側の端子と接続する際にインサート端子1が揺動するので、インサート端子1と相手側の端子との間の調芯・アライメント機能をインサート端子1に持たせることができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、案内部材33の両案内板33aが案内溝43の左右の内側壁に常時弾接する構成を有している場合について説明した。しかしながら、インサート端子1の挿入方向がキャビティ穴42の延設方向と一致しない場合にのみ、両案内板33aが案内溝43の左右の内側壁に弾接するように構成してもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、本体31の上下の側面に案内部材33が備えられている場合について説明したが、何れか一方の側面のみに案内部材33が備えられていてもよい。また、係止用アーム32及び案内部材33の形成位置は、本体31の左右の側面には限定されず、上下の側面に設けられていてもよい。また、上下及び左右の4つの側面に設けられていてもよい。また、上記実施形態では、インサート成型部3の本体31が四角ブロック状を呈している場合について説明したが、本体31の形状は任意である。
【0030】
また、キャビティ穴42の開口形状も任意であり、前端から後端にかけて同じ開口形状を有して延びて隔壁42aを備えず、ハウジング4に対する係止用アーム32の係止で後方へのインサート端子1の移動も規制する構成としてもよい。また、係止用アーム32の係止突起32aを係止する係止面は、後壁41の後面に限定されず、キャビティ穴42内に設けてもよい。また、係止用アーム32は、本体31の側面と平行に延びている必要はなく、後端側にかけて外側に向けて広がるように延びていていもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、一対の案内板33aで案内部材33が構成されている場合について説明した。しかしながら、案内溝43の内周面に弾接することでインサート端子1の挿入方向を案内できるのであれば、案内部材33の構成は任意である。
【符号の説明】
【0032】
1 インサート端子
2 端子
2a テーパ部
21 定着部
3 弾性支持部材
31 本体
32 係止アーム
32a 係止突起
33 案内部材
33a 案内板
4 ハウジング
41 後壁
42 キャビティ穴
42a 隔壁
43 案内溝
44 連通部
45 挿通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングが備えるキャビティ穴内に端子を挿入して取り付ける端子取付構造であって、
前記端子は、導電性を有する端子本体と、係止用アーム及び案内部材を有して前記端子本体に固定されたインサート成型部とを備え、
前記ハウジングは、前記キャビティ穴内に挿入された前記係止用アームが係止する係止面と、前記キャビティ穴内で前記案内部材を案内する案内溝とを備えていることを特徴とする端子取付構造。
【請求項2】
前記係止用アームは、前記インサート成型部の本体の両側に形成されており、前記本体の両側に沿って前記端子本体の延伸方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載の端子取付構造。
【請求項3】
前記案内部材は、前記案内溝の内周面に弾接することで前記キャビティ穴内を案内されることを特徴とする請求項1又は2に記載の端子取付構造。
【請求項4】
前記案内部材は、前記本体から延びて互いの間に間隙を設けて配置された一対の案内板から構成されていることを特徴とする請求項2に記載の端子取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−171101(P2011−171101A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33527(P2010−33527)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】