説明

端子圧着作業管理装置

【課題】端子圧着装置の各消耗部品の交換時期やメンテナンス時期の目安となるこの稼動数(ショット数)を把握し、オペレータに全く負担をかけることなく、各消耗部品毎の交換時期の管理を行う端子圧着作業管理装置を提供する。
【解決手段】圧着機2とアプリケータ3とからなる端子圧着装置1によって行われる圧着作業の際の上下動を感知するセンサー5と、上下動の回数を積算し、記憶すると共に、稼動数が各消耗部品毎に予め設定された数に達した際に警告を発するリード・ライトユニット7と、上下動の回数が書き込まれるICカード6と、様々な消耗部品に関する情報をICカード6に書き込むカード設定ユニット8と、ICカード6内のデータを読みとり端子圧着装置毎の稼動数(ショット数)を演算し管理用ファイルを作成するリードユニット9とから端子圧着作業管理装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は端子圧着作業管理装置、詳しくは、圧着機とアプリケータとからなる端子圧着装置の稼動数(ショット数)を正確に把握し、これに基づき各種消耗部品の交換時期などの管理情報を的確に知らせることが出来る様にした端子圧着作業管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線端末に端子を圧着する端子圧着装置は、一般的にラムと呼ばれる部材で、アプリケータに押し込み圧力を間欠的にかける圧着機と、圧着機からの押し込み圧力を使用して、一定のタイミングで端子を電線の端末に圧着するアプリケータとから構成され、ワイヤーハーネスの生産などになくてはならない機材であるが、この端子圧着装置には、ワイヤークリンパー、ワイヤーアンビル、インスレーションクリンパー、インスレーションアンビル等々の各種消耗部品が多く用いられており、これら消耗部品は、それぞれ定められた一定の稼動数(ショット数)に達すると、適宜交換しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来においては、端子圧着装置の稼動数(ショット数)の把握は、圧着作業を担当するオペレータが、作業日報など何らかの形で、記録することによって行うのが普通であり、これに基づいて各消耗部品の交換やメンテナンスなどが実施されていたが、稼動数(ショット数)の記録は、オペレータに過度の負担を掛けるだけでなく、人手を介する為、正確さに欠ける点も否めず、又、交換を必要とする稼動数(ショット数)も各消耗部品毎に異なる為、交換時期を間違えたり、忘失し、圧着不良の発生や部品の破損に伴う作業中断などの事態を招来してしまうこともあった。
【0006】
本発明者は、端子圧着装置の各消耗部品の交換時期やメンテナンス時期の目安となるこの稼動数(ショット数)の把握に関する上記の問題点を解決すべく鋭意研究を行った結果、オペレータに全く負担をかけることなく、正確に稼動数(ショット数)を把握し、しかも、各消耗部品毎の交換時期の管理も行うことが出来る端子圧着作業管理装置を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
圧着機とアプリケータとからなる端子圧着装置によって行われる圧着作業の際の上下動を感知する為、端子圧着装置に付設されたセンサーと、該センサーからの信号を取り込み、上下動の回数を積算し、記憶すると共に、稼動数が各消耗部品毎に予め設定された数に達した際に警告を発するリード・ライトユニットと、該リード・ライトユニットにセットし、これに記憶されている上下動の回数が書き込まれるICカードと、端子圧着装置に用いられている様々な消耗部品に関する情報を前記ICカードに書き込むカード設定ユニットと、ICカード内のデータを読みとり、端子圧着装置毎の稼動数(ショット数)を演算し、管理用ファイルを作成するリードユニットとから端子圧着作業管理装置を構成することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0008】
圧着機の上下動をセンサーで感知し、稼動数をリード・ライトユニットで積算すると共に、ICカードに書き込むので、オペレーターは上下動の回数を記録する必要は全くなく、端子圧着作業に神経を集中させることが出来る。又、ICカードには各種消耗部品毎のデータが予め書き込まれているので、それぞれ交換時期の異なる消耗部品の交換時期を正確に知ることが可能で、端子圧着装置の維持管理に万全を期することが出来る。又、一つの装置で、複数の品種の加工作業を行うときなどは、それぞれの稼動数を別々のICカードに書き込むことが可能なので、一層きめの細かい管理が可能となる。
【0009】
更に、ICカードに書き込んだ情報は適宜リードユニットでエクセルシート(商標名)に落とし込んで、管理用ファイルを作成するので、個々の装置の正確な稼動記録を残すことができ、これに基づいて装置の保守点検の実施が適正に行われ、作業能率、作業精度の向上がもたらされ、ひいては、圧着端子の品質の維持向上に大きく寄与することが出来る効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係る端子圧着作業管理装置の実施例1の構成を模式的に描いた説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
センサー、ICカード、リード・ライトユニット、カード設定ユニット、リードユニットから構成され、端子圧着装置の作業時の上下動をセンサーによって感知することにより、該センサーに接続されているリード・ライトユニットで稼動数(ショット数)を積算すると共に、カード設定ユニットにより、個々の端子圧着装置毎の各消耗部品に関する各種データが予め書き込まれているICカードにリード・ライトユニットで稼動数(ショット数)を書き込み、この稼動数が書き込まれたICカードを適宜リード・ライトユニットにセットして、該ICカード内のデータをエクセルシート(商標名)に落とし込み、各端子圧着装置毎の管理ファイルを作成する様にした点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0012】
図1は、この発明に係る端子圧着作業管理装置の実施例1を模式的に描いた説明図である。
【0013】
図中1は端子圧着装置であり、圧着機2及びアプリケータ3とからなり、圧着機2のラム4が上下運動を行い、アプリケータ3に押し込み圧力を加える様になっている。なお、これら圧着機2及びアプリケータ3は、従来から存在するものと全く同じであり、何ら特別な改良は加えられていない。
【0014】
そして、圧着機2のラム4の近傍には、ラム4の上下運動を感知するセンサー5が付設されている。センサー5としては、近接スイッチや光電スイッチなど、ラム4の上下運動を非接触で感知する形式のものが好ましいが、これら以外の形式のものでももちろん良い。
【0015】
そして、このセンサー5からの信号は、ICカード6への書き込み機能を有するリード・ライトユニット7へ送られる様になっている。このリード・ライトユニット7は、センサー5が感知した圧着機2の上下運動の1サイクルを稼動数(ショット数)1回として積算する機能を有しており、ICカード6へ稼動数を書き込めるだけでなく、内蔵されたメモリーの稼動数の積算値を稼動終了時(作業終了時)まで記憶し続けられる様になっている。又、このリード・ライトユニット7においては、稼動数(ショット数)が各消耗部品毎に予め設定されている耐用回数に達した際のブザーや警告灯の点灯などによる警告の発起が行われる様になっている。
【0016】
なお、ICカード6への稼動数の書き込みは、随時書き込み方法と終了時に一括して書き込む方法を選択出来る様になっている。そして、このICカード6への稼動数の書き込みは、ICカード6とリード・ライトユニット7との間の通信によって行われる。又、ICカード6は、管理対象である端子圧着装置1台毎に1枚づつ用意されるものであり、端子圧着装置1第毎の固有のカードになっている。
【0017】
一方、リード・ライトユニット7とは別に、カード設定ユニット8及びリードユニット9が設けられており、カード設定ユニット8では、端子圧着装置において用いられている様々な消耗部品の品名又は品番、その耐用回数、メンテナンス時期など、端子圧着装置の管理に必要な諸情報のICカード6への書き込みが、リードユニット9では、ICカード6内のデータのエクセルシート(商標名)への落とし込みによる個々の端子圧着装置毎の管理ファイルの作成が行われる様になっている。
【0018】
なお、上記実施例1においては、リード・ライトユニット7、カード設定ユニット8、リード・ユニット9はそれぞれ別体となっているが、これらを一個の筐体に収容しても良く、又、二個の筐体に分けて収容しても良いことはもちろんである。
【0019】
この実施例1は、上記の通りの構成を有するものであり、カード設定ユニット8によって、ICカード6に、消耗部品の品番又は品名、その耐用回数などの各端子圧着装置1の諸情報を予め書き込んでおく。
【0020】
端子圧着作業の開始に伴い、圧着機2のラム4が上下動を行うと、センサー5がこれを感知し、この上下動の信号をリード・ライトユニット7に送る。このリード・ライトユニット7では、上下動の1サイクルを稼動数(ショット数)1回として積算し、内部のメモリーに稼動(生産)終了時まで記憶し続ける。
【0021】
一方、このリード・ライトユニット7にICカード6をセットし、これに稼動数の書き込みを行う。この書き込みは、圧着機2の上下動毎に随時書き込む方法と作業終了時に一括して書き込む方法のどちらかを選択することが出来る。
【0022】
この様にして、稼動数の書き込むが完了したICカード6は、適宜リードユニット9にセットし、ICカード6内のデータ、即ち稼動数をリードユニット9でエクセルシート(商標名)に落とし込み、個々の端子圧着装置1の管理用ファイルを作成する。
【0023】
そして、端子圧着装置1の稼動数がそれぞれの消耗部品の交換基準回数(耐用回数)に達したときは、リード・ライトユニット7はブザーや警告灯などの起動によって、その事実を管理者に知らせ、管理者はそれに基づいて交換や点検などの必要な作業に着手する。又、管理用ファイルは、消耗部品の交換時期の予測やメンテナンス計画の策定等の為の資料として用いる。
【0024】
なお、リード・ライトユニット7で積算する稼動数はロット毎にリセットすることや当該装置を廃却するまで積算し続けることも可能である。又、別の品種の圧着端子について作業するときは、その品種についての固有情報が入力された別のICカード6をリード・ライトユニット7にセットし、読み込みを行わせる。
【0025】
更に、各消耗部品を交換した際には、リード・ライトユニット7内のその交換された消
耗部品に関するメモリーをゼロにリセットし、新たに積算を開始する。又、ある品種の稼動(生産)が終了し、他の品種の稼動(生産)に移行した際には、リード・ライトユニット7のメモリは自動的に消去され、新たな品種の稼動数の積算が開始される。
【0026】
この様に、この実施例1に係る端子圧着作業管理装置においては、圧着機2の上下動をセンサー5で感知し、稼動数をリード・ライトユニット7で積算すると共に、ICカード6に書き込むので、オペレーターは上下動の回数を記録する必要が全くなく、端子圧着作業に神経を集中させることが出来る。又、ICカード6には、カード設定ユニット8によって、各種消耗部品毎のデータが予め書き込まれているので、それぞれ交換時期の異なる消耗部品の交換時期を正確に知ることが可能で、端子圧着装置の維持管理に万全を期することが出来る。又、一つの装置で、複数の品種の加工作業を行うときなどは、それぞれの稼動数を別々のICカードに書き込むことが可能なので、一層きめの細かい管理が可能となる。
【0027】
更に、ICカード6に書き込んだ情報は、適宜リードユニット9でエクセルシート(商標名)に落とし込んで、管理用ファイルを作成するので、個々の装置の正確な稼動記録を残すことができ、これに基づいて装置の保守点検の実施が適正に行われ、作業能率、作業精度の向上がもたらされ、ひいては、圧着端子の品質の維持向上に大きく寄与し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0028】
ワイヤーハーネスなど、圧着端子を多く用いる産業分野において、大いに利用価値がある。
【符号の説明】
【0029】
1.端子圧着装置
2.圧着機
3.アプリケータ
4.ラム
5.センサー
6.ICカード
7.リード・ライトユニット
8.カード設定ユニット
9.リードユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧着機とアプリケータとからなる端子圧着装置によって行われる圧着作業の際の上下動を感知する為、端子圧着装置に付設されたセンサーと、該センサーからの信号を取り込み、上下動の回数を積算し、記憶すると共に、稼動数が各消耗部品毎に予め設定された数に達した際に警告を発するリード・ライトユニットと、該リード・ライトユニットにセットし、これに記憶されている上下動の回数が書き込まれるICカードと、端子圧着装置に用いられている様々な消耗部品に関する情報を前記ICカードに書き込むカード設定ユニットと、ICカード内のデータを読みとり、端子圧着装置毎の稼動数(ショット数)を演算し、管理用ファイルを作成するリードユニットとからなることを特徴とする端子圧着作業管理装置。

【図1】
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