説明

端子圧着機の電線位置検知装置

【課題】電線を端子に圧着する際の電線の芯線部の先端と電線位置決め板との間の隙間やアンビル上での芯線部の上下左右の位置ずれを確実に検知して圧着品質を高める。
【解決手段】端子を配置するアンビル6と昇降可能なクリンパ11と、アンビル上にセットする電線20の芯線部21の先端を突き当てる電線位置決め板7とを備える端子圧着機1において、電線位置決め板に固定されたバックグラウンド基準設定用のリフレクタ8と、リフレクタ又は該リフレクタよりも手前の芯線部の先端部分にレーザビーム23を照射して各反射光24,25を受光するレーザ側長センサ5とを備える端子圧着機の電線位置検知装置を採用した。レーザ側長センサ5をレーザセンサアンプに接続し、レーザセンサアンプを制御リレーに接続し、制御リレーを圧着可能ランプと圧着機駆動スイッチとに接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば手動で電線を圧着機のアンビルとクリンパとの間に供給し、電線の芯線部を電線位置決め板に当接させて位置決めした際の芯線部の位置ずれを検知する端子圧着機の電線位置検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の端子圧着機の電線位置決め機構の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この端子圧着機の電線位置決め機構は、端子61をクリンパ62の下方でアンビル63の上にセットし、電線64を端子61の上にセットし、電線64の端末の芯線部(導体)64aの先端を電線位置決め板65に突き当てて位置決めし、その状態でスイッチ(図示せず)を押してクリンパ62を下降させて、アンビル63との間で電線64の端末を端子61に圧着接続するものである。
【0004】
芯線部64aは前側のクリンパ62aで端子61の前側の一対の圧着片66に圧着接続され、芯線部64aに続く絶縁被覆部64bは後側のクリンパ62bで端子61の後側の一対の圧着片67に圧着固定される。電線位置決め板65は前側の圧着片66とその前側の電気接触部(本例では雌型の電気接触部)68との間に配置される。
【0005】
上記以外の端子圧着機の電線位置決め機構としては、例えば特許文献2に、電線位置決め板に芯線突き当て位置のセンタマークを設け、電線位置決め板を端子圧着機のフレームに上下方向回動自在に軸支して、端子と電線位置決め板との干渉を防止したものが記載され、特許文献3には、クリンパの上昇に伴って電線位置決め板を上向きに回動させて、次にセットされる端子との干渉を防ぐことが記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、端子圧着機ではないが、端子圧着前に電線の端末を皮剥きして芯線部を露出させた際に、光センサの発光器と受光器との間に芯線部を位置させて、皮剥きの良否を検査することが記載されている。
【0007】
また、特許文献5には、端子圧着用の一対の圧着ダイスの間に光センサの光路を設定し、一対の圧着ダイスの閉じが不完全である場合に光路が形成され、一対の圧着ダイスが完全に閉じて圧着が完了した際に光路が遮断されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−161938号公報(図1)
【特許文献2】特開平10−223347号公報(図1)
【特許文献3】特開2007−311062号公報(図1)
【特許文献4】特開昭59−123413号公報(図4)
【特許文献5】特開2007−227218号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の図6の端子圧着機の電線位置決め機構にあっては、特に手動で電線64を端子61に圧着する際に、作業者の感覚の相違やヒューマンエラーによって、電線64の芯線部64aの先端と電線位置決め板65との間に隙間があいたり、芯線部64aがアンビル63上で例えば端子61の各一対の圧着片66,67との隙間の範囲で上下左右に位置ずれしたりして、圧着精度(圧着品質)が低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記した点に鑑み、手動等で電線を端子に圧着する際に、電線の芯線部の先端と電線位置決め板との間に隙間があいたり、芯線部がアンビル上で上下左右に位置ずれしたりすることを確実に検知して、端子との圧着品質を高めることのできる端子圧着機の電線位置検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る端子圧着機の電線位置検知装置は、端子を配置するアンビルと昇降可能なクリンパと、該アンビル上にセットする電線の芯線部の先端を突き当てる電線位置決め板とを備える端子圧着機において、該電線位置決め板に固定されたバックグラウンド基準設定用のリフレクタと、該リフレクタ又は該リフレクタよりも手前の前記芯線部にレーザビームを照射して各反射光を受光するレーザ側長センサとを備えることを特徴とする。
【0012】
上記構成により、リフレクタにレーザビームを照射してその反射光でレーザ側長センサからリフレクタまでの距離(バックグラウンド基準)が三角法で計測され、電線の露出した芯線部を位置決め板に当接させた状態で、芯線部の先端部分にレーザビームを照射してその反射光でバックグラウンド基準に対するレーザ側長センサから芯線部までの距離が同様に計測される。レーザビームの反射角はリフレクタよりも芯線部における方が大きい。
【0013】
芯線部の先端が電線位置決め板に当接していない(離れている)場合、レーザビームは芯線部に当たらずに芯線部の先端を通過してリフレクタに当たって反射するから、電線の位置決め不良が検知される。また、芯線部が正規よりも上下に位置ずれしている場合は、レーザビームが芯線部の径方向中央ではなく上端部又は下端部に当たって正規の場合よりも芯線部までの距離が長く計測されるから、電線の位置決め不良が検知される。また、芯線部が正規よりも左右に位置ずれしている場合は、レーザビームは芯線部の径方向中央に当たるものの、正規の場合よりも芯線部までの距離が長く計測されるから、電線の位置決め不良が検知される。
【0014】
請求項2に係る端子圧着機の電線位置検知装置は、請求項1記載の端子圧着機の電線位置検知装置において、前記レーザ側長センサがレーザセンサアンプに接続され、該レーザセンサアンプが制御リレーに接続され、該制御リレーが圧着可能ランプと圧着機駆動スイッチとに接続されたことを特徴とする。
【0015】
上記構成により、レーザセンサアンプで三角法による距離の算出と基準値に対する良否判定とが行われ、芯線部までの距離が基準値を満たす場合、制御リレーを介して圧着可能ランプが点灯すると共に端子圧着機の駆動回路が圧着機駆動スイッチを介して接続され、圧着が可能となる。芯線部までの距離が基準値を満たさない場合は、制御リレーが作動せず、圧着可能ランプが点灯しないと共に、圧着機駆動スイッチを押しても端子圧着機の駆動回路が接続されず、圧着が不能となる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、リフレクタでバックグラウンド基準を正確に規定することで、端子圧着機の複雑な形状部分にレーザビームが当たって乱反射することに伴う誤検知を防ぐことができ、また、レーザ側長センサを用いて電線の芯線部までの距離を計測することで、電線の芯線部の先端と電線位置決め板との間に隙間があいたり、芯線部がアンビル上で上下左右に位置ずれしたりすることを確実に検知することができ、これらにより、端子と電線の圧着品質を高めることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、電線の芯線部の先端と電線位置決め板との間に隙間があいたり、芯線部がアンビル上で上下左右に位置ずれした場合に、作業者がスイッチを押しても端子圧着機が作動しないので、圧着不良を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る端子圧着機の電線位置検知装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】同じく端子圧着機の電線位置検知装置を示す要部拡大斜視図である。
【図3】同じく端子圧着機の電線位置検知装置の接続回路形態を示す説明図である。
【図4】電線位置決め板に突き当てた電線の芯線部にレーザビームを照射する状態の平面図である。
【図5】(a)は電線の芯線部が上下に位置ずれした場合の検知例、(b)は芯線部が左右に位置ずれした場合の検知例をそれぞれ示す説明図である。
【図6】従来の端子圧着機において電線を位置決めして圧着する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜図3は、本発明に係る端子圧着機の電線位置検知装置の一実施形態を示すものである。
【0020】
図1の如く、この端子圧着機の電線位置検知装置は、端子圧着機1のアプリケータ2を載せるフレーム基台3の上にセット台4を介して配置されたレーザ側長センサ5と、アプリケータ2のアンビル6の側方で電線位置決め板7に固定されたリフレクタ(反射部材)8とを備えるものである。
【0021】
アプリケータ2は既存のものであり、フレーム9に沿って昇降自在なラム10と、ラム10に固定されたクリンパ11と、クリンパ11の下側に対向してブロック12内で上向きにばね付勢されたアンビル6と、ラム10の動きに連動して横連鎖端子13をアンビル6上に駒送りする端子送り機構14とを備えている。
【0022】
ラム10の上端のシャンク15が駆動側装置(図示せず)のフック16に着脱自在に係合し、駆動側装置は、フレームにAC電源のモータとクランク軸とトグルリンク、又は垂直な油圧シリンダを備えて、ラム10を昇降駆動する。端子の種類に応じた着脱可能なアプリケータ2と固定式の駆動側装置とで端子圧着機1が構成される。
【0023】
図1,図2の如く、電線位置検知装置のレーザ側長センサ5は、ケース19の透光性樹脂で封止された下側の投光口17と上側の受光口18とを有し、ケース内に投光部と受光部(図示せず)とを有している。本例ではアプリケータ2の右側に隣接してレーザ側長センサ5が配置され、電線20を境にアプリケータ2の左側にリフレクタ8が配置され、リフレクタ8は電線20の外径よりも大きな寸法で立体矩形状に形成され、リフレクタ8の高さ方向中央部が電線20と同じ高さに位置している。
【0024】
レーザ側長センサ5の下側の投光口18から水平なレーザビーム(レーザ光線)23がリフレクタ8又は電線20の芯線部21に照射され、リフレクタ8又は芯線部21からの反射光(拡散された反射光の一部)24,25が上側の受光口18に傾斜状に入射される。反射光24,25は受光部の受光素子(図示せず)に入射され、受光部から図3のレーザセンサアンプ26に入力されて、レーザセンサセンサ26からリフレクタ8又は芯線部21までの距離が三角法(ピタゴラスの定理)で演算され、芯線部21までの距離が基準値を満たしているか否かが判定される。
【0025】
リフレクタ8はバックグラウンド基準を決めるためのもので、バックグラウンド基準に対してレーザ側長センサ5から芯線部21までの距離が正確に計測される。バックグラウンド基準や芯線部21までの距離の基準値(公差を有する)はレーザビーム23を照射しながらレーザセンサアンプ26(図3)のセットボタン27等を操作して予めレーザセンサアンプ26に入力される。レーザセンサアンプ26はトランジスタを用いた増幅回路や演算回路等を内蔵する。
【0026】
リフレクタ8を用いない場合は、レーザビーム23がアプリケータ2の複雑な形状部分に照射されて回帰反射が安定せず乱反射してしまうので、誤検知の恐れがあるが、リフレクタ8を用いることで誤差のない正確な距離計測が可能となる。リフレクタ8としては光の反射性の良好な白色の樹脂材や金属材等が好ましい。
【0027】
レーザ側長センサ5に対してリフレクタ8は芯線部21よりも遠く離れているので、リフレクタ8に対するレーザビーム23の反射光24の反射角度は、芯線部21に対するレーザビーム23の反射光25の反射角度よりも小さい(芯線部21に対する反射光25の反射角度は、リフレクタ8に対する反射光24の反射角度よりも大きい)。
【0028】
レーザ側長センサ5の受光素子としては、二次元のCMOS式のものが受光量の低下や対象物の色むら等に対処できる点で好ましい。CMOSの受光素子(図示せず)は複数並列に配置され、反射光24,25の反射角度に応じて受光する受光素子が変化するようになっている。レーザ側長センサ5のケース19内で受光口18と受光素子との間や投光口17と投光部本体との間にレンズ(図示せず)が配置されている。
【0029】
図2,図4の如く、アンビル6上の端子28(図2)の上に電線20をセットし、電線位置決め板7に芯線部21の先端を突き当てることで、電線20の位置決めが行われる。芯線部21は端子28の前側の左右一対の圧着片28aの間に位置し(芯線部21の先端部分21aは前側の一対の圧着片28aから前方に突出している)、芯線部21に続く絶縁被覆部22は端子28の後側の左右一対の圧着片28bの間に位置し、芯線部21と絶縁被覆部22とで成る電線20の端末部は端子28で支持され、端子28はアンビル6で支持される。電線位置決め板7の前側には端子28の雄型又は雌型の電気接触部(図示せず)が位置し、電気接触部と前側の一対の圧着片28aとの間に電線位置決め板7が位置する。
【0030】
図4の如く、レーザ側長センサ5からのレーザビーム23は芯線部21の先端部分21(前側の圧着片28aから前方に突出した部分)に照射される。このレーザビーム23と電線位置決め板7との間の距離L1は、電線20の径にもよるが例えば0.5mm程度である。この距離L1は芯線部21の先端21a’の位置基準の許容公差内のものである。レーザビーム23の径はこの距離L1よりも小さく、レーザ側長センサ5の種類にもよるが例えば0.3mm程度である。
【0031】
芯線部21の先端部分21aに当たったレーザビーム23は、図1,図2の如くリフレクタ8におけるよりも大きな反射角で反射して受光部(符号18で代用)に入光し、図3のレーザセンサアンプ26で芯線部21までの距離が基準値の公差範囲にあるか否かが判定され、基準値を満たす場合に、図3の制御リレー29を経て圧着可能ランプ30とフットスイッチ(圧着機駆動スイッチ)31とに通電され、ランプ30が点灯し、作業者がフットスイッチ31を踏むことで、圧着機1のラム10が下降してラム先端のクリンパ11と下側のアンビル6との間で端子28に電線20が圧着接続される。
【0032】
図4で芯線部21の先端21a’が電線位置決め板7から基準距離よりも離れている(隙間があいている)場合は、レーザビーム23が芯線先端21a’を通過してリフレクタ8(図2)に反射することで、電線20の位置ずれが検知され、図3のランプ30が点灯せず、フットスイッチ31を踏んでも、圧着機1が作動しない。
【0033】
図3で、符号31はDC24V電源、32は、電源31とレーザセンサアンプ26及び制御リレー29を接続する電源回路、33は、レーザ側長センサ5とレーザセンサアンプ26と制御リレー29とランプ30とフットスイッチ31とを接続する制御回路、34はアンプ26の閾値表示部、35は同じく実測値表示部をそれぞれ示している。
【0034】
芯線部21からの反射光25を受けたレーザ側長センサ5の受光素子の出力がレーザセンサアンプ26に送られて、三角法で演算処理されて芯線部21までの距離が算出され、その距離が閾値(基準値)と比較され、基準値を満たす場合に制御リレー29を介して圧着可能ランプ30が点灯し、同時に制御リレー29を介してフットスイッチ31と圧着機1のモータ(図示せず)とが接続され、フットスイッチ31を踏むことで圧着機1が作動する。基準値を満たさない場合は、制御リレー29が作動せず、圧着可能ランプ30が点灯せず、制御リレー29を介してフットスイッチ31と圧着機1のモータとが遮断され、フットスイッチ31を踏んでも圧着機1が作動しない。
【0035】
図2の如く、横長矩形状の垂直な電線位置決め板7の後面7aの右端寄りに電線20の芯線部21の先端が当接され、電線位置決め板7の後面7aの左端寄りに矩形状のリフレクタ8の前面が接着やねじ締め等で固定され、電線位置決め板7はブラケット36でアプリケータ2のラム10を案内する左側の固定ガイド部37の下端にねじ締め38で固定されている。電線20の突き当て基準となる電線位置決め板7にリフレクタ8を固定したことで、芯線部21に対するリフレクタ8のバックグラウンド基準のばらつきが発生せず、芯線部21までの距離が正確に計測される。
【0036】
本例の電線位置決め板7は固定式であるが、従来の特許文献2,3の例のように、電線位置決め板7を回動式とした場合でも、電線位置決め板7にリフレクタ8を固定することは可能である。
【0037】
図2で符号39は、クリンパ11の後方に近接して配置された逆V字状の既存の電線押さえ、28は端子(図1の横連鎖端子13の端子本体部)をそれぞれ示す。端子28はガイド板40に沿ってアンビル6の上にセットされる。クリンパ11は電線位置決め板7の後方に近接して下降する。クリンパ11は前側の芯線圧着用のクリンパと後側の絶縁被覆圧着用のクリンパとで構成されている。明細書で前後左右の方向は説明の便宜上のものである。作業者が電線20を手で持った状態で、クリンパ11で端子28を圧着すると同時にアンビル6が上向き付勢ばね(図示せず)に抗して少し下降し、横連鎖端子13の連鎖帯(図示せず)がアンビル6に隣接するブロック12のエッジ部分(図示せず)で切断される。これらの構成作用は公知である。
【0038】
本発明においては、図1〜図3の如く、圧着機1の電線位置決め検知装置としてレーザ側長センサ5を用いたことで、電線位置決め板7への芯線部21の突き当て有無(芯線部21の前後方向の位置ずれ)のみならず、芯線部21の上下左右の位置ずれをも計測可能である。
【0039】
すなわち、図5(a)の如く、芯線部21が実線の正規位置に対して鎖線のように下方に位置ずれした場合、レーザ側長センサ5(図2)の発光部(符号17で代用)からのレーザビーム23は一定(水平)であるので、正規位置の芯線部21の高さ方向中央の右端に当たって斜め上向きに反射した反射光25に対し、下方に位置ずれした芯線部21の上端部にレーザビーム23が当たる(照射される)ことで、レーザ側長センサ5から芯線部21まで距離がL2寸法分長くなり、ビーム25’の反射角度が減少し、三角法で演算されたこの寸法(側長実測値から基準長さを引いた値)L2が予めレーザセンサアンプ26(図3)に入力された上下方向の位置ずれ基準値に対して適正か否かがレーザセンサアンプ26で判定され、基準値を満たす場合に、図3のランプ30が点灯してフットスイッチ31を踏むことで圧着機1が作動し、基準値を満たさない場合は、図3のランプ30が点灯せず、フットスイッチ31を踏んでも圧着機1が作動しない。
【0040】
これは、図5(a)で芯線部21が基準位置に対して上方に位置ずれした場合でも同様であり、上方に位置ずれした芯線部21の下端部にレーザビーム23が当たることで、レーザ側長センサ5から芯線部21まで距離が長くなり(ビーム25’の反射角度が減少し)、基準値との照合で上記同様の判定がなされる。
【0041】
また、図5(b)の如く、芯線部21が実線の正規位置に対して鎖線のように左方に位置ずれした場合、レーザ側長センサ5の発光部からのレーザビーム23は一定(水平)であるので、正規位置の芯線部21の高さ方向中央の右端に当たって斜め上向きに反射した反射光25に対し、左方に位置ずれした芯線部21の右端にレーザビーム23が当たる(照射される)ことで、レーザ側長センサ5から芯線部21まで距離がL3寸法分長くなり(ビーム25”の反射角度が減少し)、三角法で演算されたこの寸法(側長実測値から基準長さを引いた値)L3が予めレーザセンサアンプ26(図3)に入力された左右方向の位置ずれ基準値に対して適正か否かがレーザセンサアンプ26で判定され、基準値を満たす場合に、図3のランプ30が点灯してフットスイッチ31を踏むことで圧着機1が作動し、基準値を満たさない場合に、ランプ30が点灯せず、フットスイッチ31を踏んでも圧着機1が作動しない。
【0042】
これは、図5(b)で芯線部21が基準位置に対して右方に位置ずれした場合でも同様であり、右方に位置ずれした芯線部21の右端にレーザビーム23が当たることで、レーザ側長センサ5から芯線部21まで距離が短くなり(ビーム25”の反射角度が増加し)、基準値との照合で上記同様の判定がなされる。
【0043】
図5(a)の芯線部21の上下方向の位置ずれと、図5(b)の芯線部21の左右方向の位置ずれとは同時に起こり得るものであり、さらに、図5(a)(b)の芯線部21の位置ずれと図4の芯線部先端21a’の位置ずれとも同時に起こり得るものであり、それらの場合でも、上記同様の判定がレーザセンサアンプ26で同時に行われて、芯線部21の位置ずれ不良の場合に、位置ずれがあることがランプ30で報知され、作業者は再度電線20をセットし直して、芯線部21の位置ずれを修正することで、端子28と電線20の圧着の信頼性を高めることができる。
【0044】
なお、上記実施形態においては、手動式(端子28の供給は自動で電線20の供給と圧着駆動は手動)の圧着機1に電線位置検知装置(レーザ側長センサ5とリフレクタ8とレーザセンサアンプ26等とで構成される)を適用した場合について説明したが、自動式(端子28と電線20の供給及び圧着駆動が自動)の圧着機に上記同様の電線位置検知装置を適用することも可能である。この場合も、芯線部21の位置ずれ判定と同時に圧着機1を停止可能である。
【0045】
また、上記した本発明の構成は、端子圧着機の電線位置検知装置としてのみならず、端子圧着機の電線位置検知方法等としても有効なものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る端子圧着機の電線位置検知装置は、例えば手動式の端子圧着機において、作業者が電線をセットした際の電線の芯線部の位置ずれを検知して、位置ずれの大きな場合に電線への端子の圧着を行わせないことで、端子と電線の圧着接続の信頼性を高めるために利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 端子圧着機
5 レーザ側長センサ
6 アンビル
7 電線位置決め板
8 リフレクタ
11 クリンパ
20 電線
21 芯線部
21a 先端部分
23 レーザビーム
24,25 反射光
26 レーザセンサアンプ
28 端子
29 制御リレー
30 圧着可能ランプ
31 フットスイッチ(圧着機駆動スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を配置するアンビルと昇降可能なクリンパと、該アンビル上にセットする電線の芯線部の先端を突き当てる電線位置決め板とを備える端子圧着機において、該電線位置決め板に固定されたバックグラウンド基準設定用のリフレクタと、該リフレクタ又は該リフレクタよりも手前の前記芯線部の先端部分にレーザビームを照射して各反射光を受光するレーザ側長センサとを備えることを特徴とする端子圧着機の電線位置検知装置。
【請求項2】
前記レーザ側長センサがレーザセンサアンプに接続され、該レーザセンサアンプが制御リレーに接続され、該制御リレーが圧着可能ランプと圧着機駆動スイッチとに接続されたことを特徴とする請求項1記載の端子圧着機の電線位置検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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