説明

端子圧着状態良否判別装置、端子圧着加工装置、端子圧着状態良否判別方法及び端子圧着状態良否判別プログラム

【課題】周辺振動環境の影響をなるべく考慮して、精度よく圧着良否判別を行うこと。
【解決手段】端子圧着に伴って検出される圧力波形と圧着良否判別基準とに基づいて端子の圧着良否判別を行う。連続的に行われる端子圧着処理の途中で、圧着良否判別基準を変更して圧着良否判別を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線に端子を圧着する際に端子圧着状態の良否判別を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
端子圧着状態の不良を検出する方法として、特許文献1に開示のものがある。特許文献1では、端子圧着時に検出した圧力の時間的変化波形を、所定の基準波形等と比較することで、圧着状態の良否を判別している。
【0003】
【特許文献1】特開昭63−281071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、端子圧着を連続的に行う場合、周辺振動環境を一定とすることは難しい。例えば、端子圧着の際に発生する振動の影響は、次回の端子圧着時にも残存する。この振動は、端子圧着時に検出される圧力波形にも影響を与える。
【0005】
このため、端子圧着時に検出される圧力波形は、良品として判別されるべき圧着状態であっても、異なる形を持つ圧力波形として観察され得る。このように圧力波形は周辺振動環境による影響を受けるため、特許文献1に記載のように、単一の基準と比較するだけでは、周辺振動環境に応じて精度よく圧着良否を判別することは困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、周辺振動環境の影響をなるべく考慮して、精度よく圧着良否判別を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る端子圧着状態良否判別装置は、電線に端子を圧着する端子圧着処理を連続的に行う際に、端子の圧着良否判別を行う端子圧着状態良否判別装置であって、端子圧着に伴って検出される圧力波形が入力される圧力波形入力部と、複数の圧着良否判別基準を記憶する記憶部と、前記複数の圧着良否判別基準のうちの一つと前記圧力波形とに基づいて、端子の圧着良否判別を行う良否判別部と、を備え、前記良否判別部は、連続的な端子圧着処理の途中で、前記圧着良否判別基準を変更するものである。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る端子圧着状態良否判別装置であって、前記記憶部は、前記複数の圧着良否判別基準として複数の基準波形を記憶し、前記良否判別部は、前記複数の基準波形のうちの一つと前記圧力波形とを比較して、端子の圧着良否判別を行うものである。
【0009】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る端子圧着状態良否判別装置であって、前記良否判別部は、端子圧着関連動作に応じて前記圧着良否判別基準を変更するものである。
【0010】
第4の態様は、第1〜第4のいずれかの態様に係る端子圧着状態良否判別装置であって、前記良否判別部は、連続的な端子圧着開始後1回目の端子圧着と2回目以降の端子圧着との間で前記圧着良否判別基準を変更するものである。
【0011】
第5の態様は、第4の態様に係る端子圧着状態良否判別装置であって、前記良否判別部は、前記圧力波形入力部を通じて入力される前記圧力波形に基づく端子圧着間隔が所定期間よりも大きいときに1回目の端子圧着が行われたと判断し、前記端子圧着間隔が所定期間よりも小さいときに2回目以降の端子圧着が行われたと判断するものである。
【0012】
第6の態様は、端子圧着を行う一対の圧着型と、前記一対の圧着型を相対的に接近及び離隔移動させる圧着駆動部と、前記一対の圧着型に設けられ、端子圧着に伴う圧力波形を検出する圧力検出部と、第1〜第5のいずれかの態様に係る端子圧着状態良否判別装置と、を備えるものである。
【0013】
第7の態様は、電線に端子を圧着する端子圧着処理を連続的に行う際に、端子の圧着良否判別を行う端子圧着状態良否判別方法であって、(a)端子圧着に伴って検出される圧力波形と圧着良否判別基準とに基づいて端子の圧着良否判別を行うステップと、(b)端子圧着に伴って検出される圧力波形と、前記工程(a)における圧着良否判別基準とは別の圧着良否判別基準とに基づいて、端子の圧着良否判別を行うステップとを、連続的な端子圧着処理の途中で変更して実行するものである。
【0014】
第8の態様は、電線に端子を圧着する端子圧着処理を連続的に行う際に、端子圧着に伴って検出される圧力波形に基づいて端子の圧着良否判別を行うための端子圧着状態良否判別プログラムであって、コンピュータに、(a)端子圧着に伴って検出される圧力波形と圧着良否判別基準とに基づいて端子の圧着良否判別を行う処理と、(b)端子圧着に伴って検出される圧力波形と、前記工程(a)における圧着良否判別基準とは別の圧着良否判別基準とに基づいて、端子の圧着良否判別を行う処理とを、連続的な端子圧着処理の途中で変更して行わせる処理を実現させるものである。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、前記良否判別部は、連続的な端子圧着処理の途中で、圧着良否判別基準を変更する。このため、周辺振動環境の変動に応じて適切な圧着良否判別基準を用いて、圧着良否判別を行うことができ、周辺振動環境の影響をなるべく考慮して、精度よく圧着良否判別を行うことができる。
【0016】
第2の態様によると、周辺振動環境の変動に応じた適切な基準波形を用いることで、周辺振動環境の影響をなるべく考慮して、精度よく圧着良否判別を行うことができる。
【0017】
第3の態様によると、端子圧着関連動作に応じて前記圧着良否判別基準の変更タイミングを決定することで、周辺振動環境の変動に応じて適切なタイミングで圧着良否判別基準を変更することができる。
【0018】
第4の態様によると、連続的な圧着開始後1回目の端子圧着と2回目以降の端子圧着との間で前記圧着良否判別基準を変更することで、周辺振動環境の変動に応じた適切なタイミングで、圧着良否判別基準を変更することができる。
【0019】
第5の態様によると、振動の減衰を考慮した振動影響に変動に応じた適切なタイミングで、圧着良否判別基準を変更することができる。
【0020】
第6の態様によると、周辺振動環境の変動に応じて適切な圧着良否判別基準を用いて、圧着良否判別を行うことができ、周辺振動環境の影響をなるべく考慮して、精度よく圧着良否判別を行うことができる。
【0021】
第7の態様によると、周辺振動環境の変動に応じて適切な圧着良否判別基準を用いて、圧着良否判別を行うことができ、周辺振動環境の影響をなるべく考慮して、精度よく圧着良否判別を行うことができる。
【0022】
第8の態様によると、周辺振動環境の変動に応じて適切な圧着良否判別基準を用いて、圧着良否判別を行うことができ、周辺振動環境の影響をなるべく考慮して、精度よく圧着良否判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、実施の形態に係る端子圧着加工装置について説明する。
【0024】
図1は端子圧着加工装置10を示す概略正面図であり、図2は端子圧着機構装置20を示す概略側面図である。
【0025】
この端子圧着加工装置10は、端子圧着機構装置20と端子圧着状態良否判別装置30とを備えている。端子圧着機構装置20は、電線12の端部に端子14を圧着する端子圧着処理を連続的に行う装置であり、端子圧着状態良否判別装置30は端子の圧着良否判別を行う装置である。
【0026】
<1.端子圧着機構装置>
端子圧着機構装置20は、横向きにした略U字状の支持部材21と、一対の圧着型22,25と、圧着駆動部26と、圧力検出部24とを備えている。
【0027】
一対の圧着型22,25は、下側の圧着型22と上側の圧着型25とを有しており、それらの間で端子14を圧着可能に構成されている。
【0028】
下側の圧着型22は、支持部材21の下部ベース部21a上に上向き突出で取付けられている。また、下部ベース部21aには、下側の圧着型22に隣設して支持台22aが取付けられている。そして、端子14の圧着部14aを下側の圧着型22上に載置すると共に、端子14の他の部分を支持台22a上に載置した状態で、端子14が載置状に支持可能に構成されている。
【0029】
また、下部ベース部21a内であって下側の圧着型22の下方に、当該下側の圧着型22と接触した状態で圧力伝達部材23が配設されている。また、圧力伝達部材23の下方に、当該圧力伝達部材23と接触した状態で圧力検出部24が配設されている。そして、端子圧着時に下側の圧着型22に作用する圧力が、圧力伝達部材23を介して圧力検出部24に伝達されるように構成されている。圧力検出部24は、ひずみゲージ、ピエゾ素子、光ファイバ式圧力センサ等、圧力に応じた電気信号を出力するセンサによって構成されている。そして、端子圧着時に生じた圧力が圧力伝達部材23を介して圧力検出部24に伝達されると、圧力検出部24はその圧力変化に応じた圧力波形を電気信号として出力するように構成されている。
【0030】
なお、上記圧力検出部24は、上側の圧着型25側に組込まれていてもよいし、一対の圧着型22,25の双方側に組込まれていてもよい。後者の場合、それぞれで検出される圧力波形のそれぞれに対して後述する圧着良否判別処理を行ってもよいし、それぞれの検出波形の平均波形に対して後述する圧着良否判別処理を行ってもよい。
【0031】
また、圧着駆動部26は、トグルリンク機構、エアシリンダ、油圧シリンダ等により構成されており、上記支持部材21の上方支持部分21bに設けられている。圧着駆動部26には、上側の圧着型25が垂下状姿勢で昇降可能に支持されている。この圧着駆動部26の駆動により、上型の圧着型25が下側の圧着型22に対して接近及び離隔移動されるように構成されている。なお、圧着駆動部26は、一対の圧着型22,25を相対的に接近及び離隔移動させる構成であればよい。
【0032】
また、この端子圧着機構装置20には、複数の端子14を連続的に下側の圧着型22に供給する端子供給機構部28と、電線12を予め設定された所定長に切断し、その端部を皮剥ぎして端子14の圧着部14a内に配設する処理を連続的に行う電線処理機構部29とが組込まれている。そして、電線12に端子14を圧着する端子圧着処理を連続的に行えるように構成されている。これらの端子供給機構部28及び電線処理機構部29については、周知構成を含む種々構成を適用可能であるので、詳細な説明は省略する。
【0033】
<2.端子圧着状態良否判別装置>
図3は端子圧着状態良否判別装置30を示すブロック図である。端子圧着状態良否判別装置30は、上記圧力検出部24で検出された圧力波形を入力可能に当該圧力検出部24に電気的に接続されており、その圧力波形に基づいて端子の圧着良否判別を行うように構成されている。
【0034】
より具体的には、端子圧着状態良否判別装置30は、CPU32、内部記憶装置34、外部記憶装置35等がバスライン31を介して相互接続された一般的なコンピュータによって構成されている。内部記憶装置34は、基本プログラム等を格納したROM及びデータを一時的に保持するRAM等を含んでおり、外部記憶装置35はフラッシュメモリ或はハードディスク装置等の不揮発性の記憶装置によって構成されている。外部記憶装置35には、後述する圧着良否判別処理を行うための判別プログラム35aが格納されている。この判別プログラム35aに従って、主制御部としてのCPU32が演算処理を行うことにより、後述するように端子14の圧着良否判別を行う良否判別部等の各種機能が実現されるように構成されている。判別プログラム35aは、通常、予め外部記憶装置35に格納されるものであるが、CD−ROM或はDVD−ROM、フラッシュメモリ等の記録媒体に記録された状態で提供され、或は、ネットワークを介した外部サーバからのダウンロードなどにより提供され、追加的又は交換的に外部記憶装置35に格納されるものであってもよい。
【0035】
また、上記外部記憶装置35には、複数の圧着良否判別基準として第1基準波形PWb1及び第2基準波形PWb2が記憶されると共に、基準圧着間隔T2が予め設定された値として記憶されている。後述する良否判別処理は、これらの第1基準波形PWb1、第2基準波形PWb2及び基準圧着間隔T2を参照して行われる。なお、第1基準波形PWb1及び第2基準波形PWb2の設定処理については後述する。また、基準圧着間隔T2は、後述する入力部38を通じて予め入力設定された値として記憶される。
【0036】
また、この端子圧着状態良否判別装置30では、圧力波形入力回路部36、信号出力回路部37、入力部38及び表示部39も、バスライン31に接続されている。
【0037】
圧力波形入力回路部36は、AD変換回路等によって構成されており、圧力検出部24で検出された圧力波形がアナログ信号で入力されると、これをデジタル信号に変換するように構成されている。この圧力波形入力回路部36でデジタル信号に変換された圧力波形は、逐次内部記憶装置34或は外部記憶装置35に記憶され、後述する基準波形生成処理及び圧着良否判別処理に供される。
【0038】
信号出力回路部37は、CPU32による制御下、他の機器への制御信号等を出力する出力回路である。ここでは、後述するように端子圧着機構装置20に対するエラー停止信号及び動作許可信号が、信号出力回路部37を介して出力され、端子圧着機構装置20に与えられる。
【0039】
入力部38は、各種スイッチ、タッチパネル等により構成されており、基準波形生成開始指示及び圧着良否判別処理開始指示等、本端子圧着状態良否判別装置30に対する諸指示を受付可能に構成されている。
【0040】
表示部39は、液晶表示装置、ランプ等により構成されており、CPU32による制御下、端子圧着の良否判別結果、圧力波形等の諸情報を表示可能に構成されている。
【0041】
なお、上記端子圧着状態良否判別装置30が行う一部或は全部の機能は、専用の論理回路等でハードウェア的に実現されてもよい。
【0042】
<3.端子圧着状態良否判別装置の処理>
端子圧着状態良否判別装置30の基準波形生成処理及び端子14の圧着良否判別処理について説明する。
【0043】
<3.1.基準波形生成処理>
図4は基準波形生成処理を示すフローチャートである。
【0044】
まず、本装置の利用者等が、端子圧着機構装置20に端子圧着開始指示を与えると共に、端子圧着状態良否判別装置30に基準波形生成開始指示を与える。すると、圧力検出部24で検出された圧力波形が、時間tの経過と圧力Pの変化を示す圧力波形情報として圧力波形入力回路部36を通じて入力される。この際の波形は、図5に示すように、比較的小さな上向き凸波形後に比較的大きな上向き凸波形が連なる圧着波形PWS1,PWS2(以下では、このように圧着によって生ずる圧力波形部分を、単に圧着波形ということがある)が、間隔をあけて連続的に連なる波形として観測される。なお、上記圧着波形は、端子14の種類等によって異なるため、必ずしも上記のような波形形状として観測されるわけではない。
【0045】
端子圧着状態良否判別装置30は、基準波形生成開始指示を受付けると、ステップS1において、1回目の圧着波形PWS1を予め設定されたサンプリング期間TSにおいてサンプリングする。圧着波形PWS1の有無は、例えば、圧力Pが予め設定された基準圧力値Pa以上になったか否か(或は基準圧力値Paよりも大きくなったか否か)をもって判断するとよい。所定の基準圧力値Paは、例えば、過去に行った試行結果に基づき、圧着波形の圧力ピーク値に対する数十%値として決定した値を用いることができる。また、サンプリング期間TSは、例えば、圧力Pが所定の基準圧力値Paになった時間taをサンプリング基準時間taとして、その前の期間TSa及びその後の期間TSbとで規定される期間TSとして設定することができる。その前の期間TSa及びその後の期間TSbは、上記サンプリング基準時間taを基準として圧着良否判別上有効な圧着波形が現れる期間として実験的に或は経験的に判断された値を用いることができる。もっとも、圧力波形の有無及びサンプリング期間の設定は、上記例に限られない。例えば、一定の圧力範囲内でサンプリングしてもよいし、端子圧着機構装置20における圧着動作に連動して所定期間内でサンプリングしてもよい。もっとも、圧力波形の変化に応じてサンプリングを行うことで、端子圧着機構装置20からの動作信号を受けることなくサンプリングを行うことができ、構成の簡易化を図ることができる。
【0046】
ステップS1終了後、端子圧着状態良否判別装置30は、ステップS2において、2回目の圧着波形PWS2をサンプリングする。圧着波形PWS2の有無及びサンプリング期間TSは、上記と同様に判断或は設定することができる。
【0047】
なお、端子圧着機構装置20における1回目の端子圧着と2回目の端子圧着との間隔、つまり、1回目の圧着波形PWS1と2回目の圧着波形PWS2との間隔T1は、後述する所定期間である基準圧着間隔T2よりも小さくなるように、設定されている。
【0048】
ステップS2終了後、端子圧着状態良否判別装置30は、ステップS3において、ステップS1においてサンプリングされた圧着波形PWS1を第1基準波形PWb1に設定すると共に、ステップS2においてサンプリングされた圧着波形PWS2を第2基準波形PWb2に設定して、それぞれ外部記憶装置35に記憶させる。この後、基準波形生成処理を終了する。
【0049】
図6は、圧着波形例を示す図である。同図において、1回目の圧着波形PWS1例を実線で、2回目の圧着波形PWS2例を破線で示している。同図に示すように、2回目の圧着波形PWS2例では、1回目の圧着波形PWS1例よりも、凹凸の変化差が大きいことがわかる。この原因は、1回目の圧着時の振動影響が、2回目の圧着時に影響を及しているからであると想定される。そこで、後述するように、実際の連続的な端子圧着処理においても、処理開始後の1回目の圧着に関しては、1回目の圧着波形PWS1を基準波形PWb1として用いて良否判別を行い、2回目以降の圧着に関しては、2回目の圧着波形PWS2を基準波形PWb1として用いて良否判別を行うことで、周辺振動環境に応じた適切な基準波形PWb1,PWb2によって適切な良否判別を行うことができる。
【0050】
なお、上記第1基準波形PWb1及び第2基準波形PWbは、端子14の種類及び電線12の種類等で特定される端子加工条件に対する圧着良否判別基準として用いられることが好ましい。このため、端子14の種類及び電線12の種類等の端子加工条件が変った場合には、新たに別の第1基準波形PWb1及び第2基準波形PWbをサンプリングすることが好ましい。もっとも、端子14の種類及び電線12の種類変更が、検出されるべき圧力波形に影響を与えない或はあまり影響を与えない程度の変更である場合には、同一の第1基準波形PWb1及び第2基準波形PWbを圧着良否判別基準として用いてもよい。
【0051】
また、上記基準波形生成処理は端子14の圧着処理を行う度に必ず行う必要はない。例えば、既に行った基準波形生成処理により、特定の端子14及び特定の電線12に関して、第1基準波形PWb1及び第2基準波形PWb2が得られている場合には、当該第1基準波形PWb1及び第2基準波形PWb2を用いて後述する端子14の圧着状態良否判別を行ってもよい。
【0052】
<3.2.端子の圧着良否判別処理>
端子圧着状態良否判別装置30は、基本的には、第1基準波形PWb1及び第2基準波形PWbのうちの一つと圧力波形とに基づいて、端子14の圧着良否判別を行い、かつ、連続的な端子圧着処理の途中で、基準として用いる第1基準波形PWb1及び第2基準波形PWbを変更する処理を実行する。
【0053】
この端子14の圧着良否判別処理について、図7に示すフローチャートを用いてより具体的に説明する。
【0054】
すなわち、利用者等が、端子圧着機構装置20に連続的な端子圧着開始指示を与えると共に、端子圧着状態良否判別装置30に圧着良否判別処理開始指示を与える。すると、圧力検出部24で検出された圧力波形が圧力波形入力回路部36を通じて入力される。この際の圧力波形は、図8に示すように、圧着波形PW(1),PW(2),PW(3)・・・PW(n−1),PW(n),PW(n+1)・・・が、間隔をあけて連続的に連なる波形として観測される。
【0055】
端子圧着状態良否判別装置30は、圧着良否判別処理開始指示を受付けると、ステップS11において、圧着波形PW(N)(Nは自然数)有りと判断すると、圧着波形PW(N)のサンプリングを行い、その後、ステップS12に進む。圧着波形PW(N)の有無及びサンプリング期間は、上記基準波形生成処理の場合と同様に判断或は設定すればよい。
【0056】
ステップS12では、前回圧着波形取得からの経過期間TPが所定の基準圧着間隔T2以上であるか否か(或は基準圧着間隔T2よりも大きいか否か)を判断する。経過期間TPは、端子14の圧着間隔として求められる期間であり、例えば、次のようにして求められる期間である。
【0057】
すなわち、上記したように圧着波形PW(N)のサンプリングを行うので、サンプリング基準時間taを、経過時間TPを求める際の基準時間として考える。つまり、時間的に連続する圧着波形PW(N)間で、時間taの差を、端子14の圧着間隔である経過期間TPとして求める。なお、完全な初期状態からの圧着開始時、つまり、前回の基準時間taの実際の値が不存在である場合には、経過期間TPは、T3(T3>T2である値)として設定されるようにしておけばよい。
【0058】
もっとも、経過期間TPは、上記例に限らず、圧着波形PW(N)が圧力のピーク値を呈する時間差、或は、端子圧着機構装置20における圧着タイミングを示す信号の出力時間の差等に基づいて求めることもできる。ただし、圧力波形に基づいて経過期間TPを求めることで、端子圧着機構装置20からの動作信号を受けることなく経過期間TPを求めることができ、構成の簡易化を図ることができる。
【0059】
また、基準圧着間隔T2は、連続的に端子14を圧着する場合に、前回の端子14の圧着による振動影響が、次回の端子14の圧着における圧力波形に大きな影響を与えないと考えられる時間であり、実験的或は経験的に設定される値である。
【0060】
つまり、このステップS12では、端子14の圧着間隔である経過期間TPが基準圧着間隔T2以上であるときに、1回目の端子14の圧着が行われたと判断し、経過期間TPが基準圧着間隔T2よりも小さいときに、連続的な端子14の圧着作業における2回目以降の端子圧着が行われたと判断している。
【0061】
ステップS12において、経過期間TPが所定の基準圧着間隔T2以上であると判断されるとステップS13に進み、経過期間TPが所定の基準圧着間隔T2以上ではないと判断されると、ステップS16に進む。
【0062】
ステップS13では、端子圧着状態良否判別装置30は、ステップS11でサンプリングされた圧着波形PW(N)と第1基準波形PWb1とを比較する処理を実行する。圧着波形PW(N)と第1基準波形PWb1との比較は、例えば、所定時間区間での傾き比較、所定時間区間での上限値及び下限値の差比較、圧力ピーク値の比較、両波形の近似度合の算出(例えば相関係数の算出等)等により行われる。この後ステップS14に進む。
【0063】
ステップS14では、ステップS13での比較結果を、所定のしきい値等と比較することで、端子14の良否判別を行い、良品であると判断されると、ステップS15に進む。ステップS15では、端子圧着を行う生産継続を続行する旨、端子圧着機構装置20に指示し、その後、ステップS11に戻り、続いてサンプリングされる圧着波形PW(N)に対して、ステップS11以下の処理を繰返す。一方、ステップS14において、不良であると判断されると、ステップS18に進む。
【0064】
ステップS18では、表示部39に不良表示である旨を表示すると共に、端子圧着をエラー停止させる旨の信号を端子圧着機構装置20に与える。これにより、端子圧着機構装置20による端子14の圧着処理は一時的に停止される。この後、ステップS19に進む。
【0065】
ステップS19では、入力部38等を通じた確認リセット指示の入力の有無が判断され、入力無しと判断されるとステップS19の処理を繰返し、入力有りと判断されるとステップS15に進む。すなわち、利用者が、端子14の圧着の不良を認識して、当該不良品の排除、端子圧着機構装置20の状態確認等を行った後、確認リセット指示を入力すると、ステップS19からステップS15に進み、端子圧着処理が再開される。
【0066】
また、ステップS12において、経過期間TPが所定の基準圧着間隔T2以上ではないと判断された場合のステップS16では、端子圧着状態良否判別装置30は、ステップS11でサンプリングされた圧着波形PW(N)と第2基準波形PWb2とを比較する処理を実行する。ここでの比較は、ステップS13の場合と同様に行うことができる。この後ステップS17に進む。
【0067】
ステップS17では、ステップS16での比較結果に基づいて、端子14の良否判別を行い、良品であると判断されると、ステップS15に進み、端子圧着を続行する。一方、本ステップS17において、不良であると判断されると、ステップS18に進む。そして、ステップS18からステップS19を経てステップS15に進むことで、端子圧着を停止した後、端子圧着処理を再開する。
【0068】
上記判別処理においては、連続的な端子14の圧着開始後1回目の端子圧着については第1基準波形PWb1を用いて良否判別を行い、連続的な端子14の圧着開始後2回目以降の端子圧着については第2基準波形PWb2を用いて良否判別を行うことになる。つまり、連続的な端子圧着処理の途中、より具体的には、連続的な端子圧着開始後1回目の圧着と2回目以降の圧着との間で圧着良否判別基準である第1基準波形PWb1を第2基準波形PWb2に変更している。
【0069】
端子圧着状態良否判別装置30の圧着良否判別処理の実際の動作について、図8を参照して説明する。
【0070】
まず、連続的な端子14の圧着処理開始後、最初の圧着波形PW(1)がサンプリングされると、この圧着波形PW(1)と第1基準波形PWb1とを比較することで、良否判別が行われる。
【0071】
この後、基準圧着間隔T2よりも小さい経過期間TPaの間隔をあけて圧着波形PW(2)がサンプリングされると、判別基準が第1基準波形PWb1から第2基準波形PWb2に変更され、圧着波形PW(2)と第2基準波形PWb2とを比較することで、良否判別が行われる。
【0072】
続いて、同じく基準圧着間隔T2よりも小さい経過期間TPaの間隔をあけて圧着波形PW(3)・・・が順次サンプリングされ、これらについても第2基準波形PWb2と比較することで、良否判別が行われる。
【0073】
(n−1)回目の圧着終了後、一時停止した後、端子14の圧着が再開された場合、(n)回目の圧着波形PW(n)がサンプリングされる。この場合、(n−1)回目の圧着波形PW(n−1)と(n)回目の圧着波形PW(n)との間隔である経過期間TPbは、上記一時停止していた期間分長く、経過期間TPbは基準圧着間隔T2以上であるとする。
【0074】
すると、再度、判別基準が第2基準波形PWb2から第1基準波形PWb1に変更され、圧着波形PW(n)と第1基準波形PWb1とを比較することで、良否判別が行われる。
【0075】
この後、基準圧着間隔T2よりも小さい経過期間TPaの間隔をあけて圧着波形PW(n+1)がサンプリングされると、判別基準が再度第1基準波形PWb1から第2基準波形PWb2に変更され、圧着波形PW(n+1)と第2基準波形PWb2とを比較することで、良否判別が行われ、以下、同様にして判別処理が行われる。
【0076】
以上のように構成された端子圧着状態良否判別装置、端子圧着各装置、端子圧着状態良否判別方法及び端子圧着状態良否判別プログラムによると、端子14の種類及び電線12の種類等の圧着加工条件が同じ場合でも、連続的な端子14の圧着処理の途中で、圧着良否判別基準としての第1基準波形PWb1,第2基準波形PWb2を変更する。このため、周辺振動環境の変動に応じて適切な基準である第1基準波形PWb1或は第2基準波形PWb2を用いて、圧着良否判別を行うことができる。これにより、周辺振動環境の影響をなるべく排除して、精度よく圧着良否判別を行うことができる。
【0077】
特に、圧着良否判別基準として実際の周辺振動環境の変動に応じてサンプリングされた圧着波形に基づく第1基準波形PWb1,第2基準波形PWb2を用いるため、周辺振動環境を適切に反映させた基準で、精度よく圧着良否判別を行うことができる。
【0078】
ところで、端子圧着によって振動が生じるため、連続的な端子14の圧着開始後2回目以降では、前回の圧着による振動影響が大きい。そこで、連続的な端子14の圧着開始後1回目の端子14の圧着と、2回目以降の端子14の圧着との間で、基準である第1基準波形PWb1,第2基準波形PWb2を変更することで、周辺振動環境の変動の変り目になると予測される適切なタイミングで、第1基準波形PWb1,第2基準波形PWb2を変更することができる。
【0079】
上記の場合、通常、端子14を圧着した後、しばらくは振動による影響が大きく、ある程度の時間が経過すれば、振動は減衰するのでその圧着による振動影響は少なくなる。そこで、端子14の圧着間隔である経過期間TPが所定の基準圧着間隔T2以上であるときに1回目の端子14の圧着が行われたと判断し、経過期間TPが所定の基準圧着間隔T2よりも小さいときに2回目以降の端子14の圧着が行われたと判断すれば、前回の振動影響の減衰を適切に考慮したタイミングで、第1基準波形PWb1,第2基準波形PWb2を変更することができる。
【0080】
{変形例}
なお、上記実施形態では、連続的に端子14を圧着する際において、圧着開始後1回目と2回目以降との間で、圧着良否判別基準を変更しているが、必ずしもその必要はない。例えば、端子圧着機構装置20の端子供給機構部28の動作状況(動作の有無等)及び電線処理機構部29の動作状況(動作の有無)等に応じて、別々の圧着良否判別基準を作成しておき、当該端子供給機構28及び電線処理機構部29の動作状況に応じて、圧着良否判別基準を変更してもよい。この場合、端子供給機構28及び電線処理機構部29からそれらの動作状況を示す信号を端子圧着状態良否判別装置30に入力し、端子圧着状態良否判別装置30において当該動作状況を示す信号に基づいて圧着良否判別基準を変更するタイミングを決定すればよい。
【0081】
また、連続的な圧着波形が周期的に変動することが予測或は観察されている場合等には、周期的に圧着良否判別基準を変更してもよい。
【0082】
要するに、圧着良否判別基準に影響を与える端子圧着を行う動作に関連して、圧着良否判別基準を変更すればよい。
【0083】
また、上記実施形態では、電線12の一端部に端子14を圧着する例で説明したが、電線の両端に端子を圧着する構成であってもよい。この場合、電線12の一端部に対する端子14の圧着良否判別については、電線12の他端部に対する端子14の圧着動作状況に応じて、圧着良否判別基準を変更してもよい。
【0084】
また、上記では、圧着良否判別基準として、サンプリングされた圧着波形に基づく基準波形を用いたが必ずしもその必要はない。圧着良否判別基準は、それぞれの振動環境条件に応じて推測された基準値或は推測された関数曲線等として設定されていてもよい。
【0085】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施形態に係る端子圧着加工装置を示す概略正面図である。
【図2】端子圧着機構装置を示す概略側面図である。
【図3】端子圧着状態良否判別装置を示すブロック図である。
【図4】基準波形生成処理を示すフローチャートである。
【図5】圧着波形の例を示す図である。
【図6】1回目の圧着波形例と2回目の圧着波形例とを示す図である。
【図7】端子の圧着良否判別処理を示すフローチャートである。
【図8】連続的な端子圧着加工中に現れる圧着波形例を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
10 端子圧着加工装置
12 電線
14 端子
20 端子圧着機構装置
22,25 圧着型
24 圧力検出部
26 圧着駆動部
30 端子圧着状態良否判別装置
32 CPU
35 外部記憶装置
35a 判別プログラム
36 圧力波形入力回路部
38 入力部
39 表示部
PWb1 第1基準波形
PWb2 第2基準波形
T2 基準圧着間隔
TP,TPa,TPb 経過期間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に端子を圧着する端子圧着処理を連続的に行う際に、端子の圧着良否判別を行う端子圧着状態良否判別装置であって、
端子圧着に伴って検出される圧力波形が入力される圧力波形入力部と、
複数の圧着良否判別基準を記憶する記憶部と、
前記複数の圧着良否判別基準のうちの一つと前記圧力波形とに基づいて、端子の圧着良否判別を行う良否判別部と、
を備え、
前記良否判別部は、連続的な端子圧着処理の途中で、前記圧着良否判別基準を変更する、端子圧着状態良否判別装置。
【請求項2】
請求項1記載の端子圧着状態良否判別装置であって、
前記記憶部は、前記複数の圧着良否判別基準として複数の基準波形を記憶し、
前記良否判別部は、前記複数の基準波形のうちの一つと前記圧力波形とを比較して、端子の圧着良否判別を行う、端子圧着状態良否判別装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の端子圧着状態良否判別装置であって、
前記良否判別部は、端子圧着関連動作に応じて前記圧着良否判別基準を変更する、端子圧着状態良否判別装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の端子圧着状態良否判別装置であって、
前記良否判別部は、連続的な端子圧着開始後1回目の端子圧着と2回目以降の端子圧着との間で前記圧着良否判別基準を変更する、端子圧着状態良否判別装置。
【請求項5】
請求項4記載の端子圧着状態良否判別装置であって、
前記良否判別部は、前記圧力波形入力部を通じて入力される前記圧力波形に基づく端子圧着間隔が所定期間よりも大きいときに1回目の端子圧着が行われたと判断し、前記端子圧着間隔が所定期間よりも小さいときに2回目以降の端子圧着が行われたと判断する、端子圧着状態良否判別装置。
【請求項6】
端子圧着を行う一対の圧着型と、
前記一対の圧着型を相対的に接近及び離隔移動させる圧着駆動部と、
前記一対の圧着型に設けられ、端子圧着に伴う圧力波形を検出する圧力検出部と、
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の端子圧着状態良否判別装置と、
を備える端子圧着加工装置。
【請求項7】
電線に端子を圧着する端子圧着処理を連続的に行う際に、端子の圧着良否判別を行う端子圧着状態良否判別方法であって、
(a)端子圧着に伴って検出される圧力波形と圧着良否判別基準とに基づいて端子の圧着良否判別を行うステップと、
(b)端子圧着に伴って検出される圧力波形と、前記工程(a)における圧着良否判別基準とは別の圧着良否判別基準とに基づいて、端子の圧着良否判別を行うステップと、
を、連続的な端子圧着処理の途中で変更して実行する、端子圧着状態良否判別方法。
【請求項8】
電線に端子を圧着する端子圧着処理を連続的に行う際に、端子圧着に伴って検出される圧力波形に基づいて端子の圧着良否判別を行うための端子圧着状態良否判別プログラムであって、コンピュータに、
(a)端子圧着に伴って検出される圧力波形と圧着良否判別基準とに基づいて端子の圧着良否判別を行う処理と、
(b)端子圧着に伴って検出される圧力波形と、前記工程(a)における圧着良否判別基準とは別の圧着良否判別基準とに基づいて、端子の圧着良否判別を行う処理と、
を、連続的な端子圧着処理の途中で変更して行わせる処理を実現させるための端子圧着状態良否判別プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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