説明

端子圧着装置、及びワイヤーハーネスの製造方法

【課題】本発明は、電線と端子金具との間の接触抵抗を低減可能な、端子圧着装置、及びワイヤーハーネスの製造方法を提供する。
【解決手段】端子圧着装置であって、第1アンビル22の上面に設けられてワイヤーバレル16の上に芯線13を重ねた状態でワイヤーバレル16が載置される第1載置面24と、第1クリンパ26の下面に設けられて、第1クリンパ26と第1アンビル22とを接近する方向に移動させてワイヤーバレル16を第1載置面24との間で挟むことにより、ワイヤーバレル16を芯線13にかしめて圧着する第1圧着面28と、を備え、第1載置面24は電線11の軸方向について上下方向に傾斜して形成されており、第1圧着面28は、第1載置面24と対応して電線11の軸方向について上下方向に傾斜して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子圧着装置、及びワイヤーハーネスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、芯線を含む電線と、電線の端末から露出する芯線に接続される端子金具と、を含むワイヤーハーネスが知られている。上記の端子金具は、電線の端末から露出する芯線に外側からかしめられる圧着部と、この圧着部に連なって相手側端子と接続する接続部と、を備える。
【0003】
上記の端子金具を電線に圧着するには、例えば以下のようにする。まず、金属板材をプレス加工することにより端子金具を所定の形状に成形する。続いて、上下方向に相対移動可能な一対の金型のうち下側に位置する下型の載置部に、端子金具を載置する。続いて、電線の端末から露出された芯線を、端子金具の圧着部に重ねて載置する。その後、上記した一対の金型のうち上側に位置する上型を、下型に向けて下方に移動させ、上型の圧着部と、下型の載置部との間で圧着部を挟み付けることにより、圧着部を電線の芯線にかしめる。以上により、電線の端末に端子金具が接続される(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−50736公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した芯線の表面に酸化膜が形成されると、芯線と圧着部との間に酸化膜が介在することにより、芯線と圧着部との間の接触抵抗が大きくなることが懸念される。従来技術においては、以下に示すように、電線に圧着部をかしめる工程において、芯線の表面に形成された酸化膜を剥離していた。
【0005】
電線の芯線に圧着部をかしめると、芯線は圧着部に押圧されて電線の軸方向に延びる。すると、芯線の表面に形成された酸化膜が、圧着部と摺接することにより剥離される。すると、酸化膜の剥離により形成された芯線の新生面と、圧着部とが接触する。これにより、電線と端子金具との間の接触抵抗を小さくすることができる。
【0006】
近年、軽量化の観点から、芯線の材料としてアルミニウム又はアルミニウム合金の使用が検討されている。このアルミニウム又はアルミニウム合金の表面には酸化膜が比較的に形成されやすい。このため、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を電線の芯線に用いた場合には、単に芯線に圧着部をかしめただけでは、芯線の表面に形成された酸化膜が十分に剥離されない場合がある。この結果、芯線と圧着部との間の接触抵抗を十分に小さくすることができないおそれがある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電線と端子金具との間の接触抵抗を低減可能な、端子圧着装置、及びワイヤーハーネスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電線の端末から露出する導体に、端子金具に設けられた圧着部をかしめて圧着させる端子圧着装置であって、下型と、前記下型の上方の位置に前記下型に対して上下方向に相対移動可能に配された上型と、前記下型の上面に設けられて前記圧着部の上に前記導体を重ねた状態で前記圧着部が載置される載置面と、前記上型の下面に設けられて、前記上型と前記下型とを接近する方向に移動させて前記圧着部を前記載置面との間で挟むことにより、前記圧着部を前記導体にかしめて圧着する圧着面と、を備え、前記載置面は前記電線の軸方向について上下方向に傾斜して形成されており、前記圧着面は、前記載置面と対応して前記電線の軸方向について上下方向に傾斜して形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、導体を含む電線と、前記電線の端末から露出する前記導体に外側からかしめられる圧着部を有すると共に前記圧着部に連なって相手側端子金具と接続される接続部を有する端子金具と、を備えたワイヤーハーネスの製造方法であって、下型の上面に前記電線の軸方向について上下方向に傾斜して形成された載置面の上に、前記圧着部に前記電線を重ねた状態で前記圧着部を載置する載置工程と、前記下型と、前記下型の上方の位置に前記下型との間で上下方向に相対移動可能に配された上型とを、接近する方向に移動させて、前記上型の下面に形成されて前記載置面と対応して前記電線の軸方向について上下方向に傾斜した圧着面と、前記載置面との間で前記圧着部を挟むことで、前記圧着部を前記導体にかしめて圧着する圧着工程と、を実行することを特徴とする。
【0010】
図4に要部を拡大して示す。上型と下型とを互いに接近方向に移動させて載置面と圧着面との間で圧着部を挟むと、圧着部には、載置面から上向きの力Aが加えられると共に、圧着面から下向きの力Dが加えられる。そして、載置面と圧着面とは、電線の軸方向について上下方向に傾斜して設けられているので、圧着部には、力Aの載置面に沿う方向の分力Bと、力Dの圧着面に沿う方向の分力Eとが加えられる。これら分力Bと、分力Eは、電線の軸方向に沿って互いに反対方向を向いている。
【0011】
そして、分力Bによって、載置面と接触する圧着部は、この圧着部側に位置する導体(図4において下側に位置する導体)に対して、電線の軸方向にずれて移動する。すると、載置面と接触する圧着部と、この圧着部側に位置する導体とが摺動する結果、導体の表面に形成された酸化膜が剥離され、導体の新生面が露出する。この導体の新生面と、圧着部とが接触することにより、電線と端子金具との接触抵抗を小さくすることができる。
【0012】
上記と同様に、分力Eにより、圧着面と接触する圧着部は、この圧着部側に位置する導体(図4において上側に位置する導体)に対して、電線の軸方向にずれて移動する。すると、載置面と接触する圧着部と、この圧着部側に位置する導体とが摺動する結果、導体の表面に形成された酸化膜が剥離され、導体の新生面が露出する。この導体の新生面と、圧着部とが接触することにより、電線と端子金具との接触抵抗を小さくすることができる。
【0013】
本発明の実施態様としては、以下の態様が好ましい。
前記圧着面は、前記電線の端部側の方向に向かうにしたがって下降傾斜して形成されている。
【0014】
圧着部のうち電線の軸方向両端部の近傍に位置する電線は、圧着部に押圧されることで、電線の軸方向について比較的に自由に延びる。これは、圧着部のうち電線の軸方向について中央付近に位置する電線と、圧着部とは、両者がかしめられることで相対的位置が概ね固定されてしまうためである。
【0015】
そして、圧着部のうち電線の端部側の端部の近傍に位置する電線は、電線の端部と反対側に位置する電線に比べて大きく延びることができる。これは、電線の端部は自由端となっているために電線が延びることが妨げられないからである。
【0016】
上記の構成によれば、圧着面は電線の端部側の方向について下降傾斜している。これにより、圧着面に沿う方向の分力は、電線の端部側の方向を向く。この結果、圧着面と接触する圧着部には、電線の端部側を向く力が加わる。これにより、圧着面と接触する圧着部側は、電線に対して電線の端部側を向く力を加える。この結果、圧着部は、比較的に大きく延びる電線と、広い範囲に亘って摺接する。これにより電線の新生面と圧着部との接触面積を大きくすることができるので、電線と端子金具との接触抵抗を一層小さくすることができる。
【0017】
前記導体は、前記導体はアルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする。
【0018】
導体がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合、導体の表面に形成された酸化膜を破って接触抵抗を小さくするためには、高い圧縮率で圧着部を導体にかしめつける必要がある。このような場合に、本構成は有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電線と端子金具との間の接触抵抗を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態を図1ないし図4を参照しつつ説明する。
(ワイヤーハーネス10)
まず、本実施形態により製造されるワイヤーハーネス10について図1を参照して説明する。ワイヤーハーネス10は、電線11と、この電線11の端末に接続された雌端子金具12(端子金具に相当)を含む。
【0021】
図1に示すように、電線11は、芯線13(導体に相当)の外周を絶縁被覆14で包囲してなる。芯線13は、アルミニウム、若しくはアルミニウム合金、又は銅、若しくは銅合金等、必要に応じて任意の金属を用いることができる。また、芯線13は、多数の細線を寄り合わせた撚り線からなる。電線11の端末からは、絶縁被覆14が所定の長さだけ剥がされることにより、芯線13が露出している。
【0022】
雌端子金具12は、図示しない金属板材を所定形状にプレス成形してなる。雌端子金具12は、電線11の絶縁被覆14を外側から抱くようにしてかしめるインシュレーションバレル15を有する。インシュレーションバレル15の図4における左方には、インシュレーションバレル15に連なって、電線11の芯線13を外側から抱くようにしてかしめるワイヤーバレル16(圧着部に相当)が形成されている。
【0023】
図2に示すように、インシュレーションバレル15及びワイヤーバレル16には、それぞれ、電線11の軸方向と交差する方向(図2における上方)に延びるバレル片30,31が形成されている。詳細には図示しないが、本実施形態においては、バレル片30,31は、インシュレーションバレル15及びワイヤーバレル16に、一対ずつ形成されている。
【0024】
ワイヤーバレル16の図1における左方には、ワイヤーバレル16に連なって、図示しない雄端子金具(相手側端子金具に相当)と嵌合して電気的に接続される、筒状の接続部18が形成されている。
【0025】
(端子圧着装置19)
次に、本発明の一実施形態に係る端子圧着装置19について説明する。端子圧着装置19は、下側に位置するアンビル20と、アンビル20の上方に位置してアンビル20に対して上下方向に相対移動可能に配されたクリンパ21とを備える。
【0026】
(アンビル20)
アンビル20は、図示しない基台に取付けられている。アンビル20は、電線11の端部側(図1における左側)に位置して、雌端子金具12のワイヤーバレル16が載置される第1アンビル22(下型に相当)と、電線11の端部と反対側(図1における右側)に位置して、雌端子金具12のインシュレーションバレル15が載置される第2アンビル23と、を備える。
【0027】
第1アンビル22の上面には、電線11の芯線13を重ねた状態のワイヤーバレル16を載置する第1載置面24(載置面に相当)が形成されている。第1載置面24は、電線11の軸方向(図1における左右方向)について上下方向に傾斜して形成されている。詳細には、電線11の端部側の方向(図1における左方)に向かうに従って下降傾斜して形成されている。
【0028】
第2アンビル23の上面には、電線11の絶縁被覆14を重ねた状態のインシュレーションバレル15を載置する第2載置面25が形成されている。第2載置面25は、電線11の軸方向(図1における左右方向)について上下方向に傾斜して形成されている。詳細には、電線11の端部側の方向(図1における左方)に向かうに従って下降傾斜して形成されている。第1載置面24と第2載置面25とは、段差なく連続して形成されている。
【0029】
(クリンパ21)
クリンパ21は、クリンパ21を上下方向に移動移動させる加圧シリンダ(図示せず)に取付けられている。加圧シリンダにより、クリンパ21は、アンビル20に対して接近する方向に移動可能になっている。クリンパ21は、アンビル20の上方の位置に、アンビル20と対向して配置されている。
【0030】
クリンパ21は、電線11の端部側(図1における左側)に位置して、第1アンビル22と対向する位置に配された第1クリンパ26(上型に相当)と、電線11の端部と反対側(図1における右側)に位置して、第2アンビル23と対向する位置に配された第2クリンパ27と、を備える。
【0031】
第1クリンパ26の下面であって、第1アンビル22の第1載置面24と対向する位置には、第1クリンパ26を第1アンビル22に接近させる方向に移動させて、ワイヤーバレル16を第1載置面24との間で挟むことにより、ワイヤーバレル16を芯線13にかしめて圧着する第1圧着面28(圧着面に相当)が形成されている。
【0032】
第1圧着面28は、第1載置面24に対応して、電線11の軸方向(図1における左右方向)について上下方向に傾斜して形成されている。詳細には、電線11の端部側の方向(図1における左方)に向かうに従って下降傾斜して形成されている。第1圧着面28と第1載置面24とは平行に形成されている。
【0033】
第2クリンパ27の下面であって、第2アンビル23の第2載置面25と対向する位置には、第2クリンパ27を第2アンビル23に接近させる方向に移動させて、インシュレーションバレル15を第2載置面25との間で挟むことにより、インシュレーションバレル15を絶縁被覆14にかしめて圧着する第2圧着面29が形成されている。
【0034】
第2圧着面29は、第2載置面25に対応して、電線11の軸方向(図1における左右方向)について上下方向に傾斜して形成されている。詳細には、電線11の端部側の方向(図1における左方)に向かうに従って下降傾斜して形成されている。第2圧着面29と第2載置面25とは平行に形成されている。
【0035】
なお、第1アンビル22の下面は、第2アンビル23の下面よりも下方に位置するように配されている。これにより、第1載置面24は、第2載置面25よりも下方の位置に配されている。
【0036】
続いて、ワイヤーハーネス10の製造工程について説明する。
(載置工程)
まず、加圧シリンダによりクリンパ21を上方に移動させ、クリンパ21とアンビル20とを離間させる。ついで、第1アンビル22及び第2アンビル23の上面に、所定形状にプレス成形された雌端子金具12を載置する。このとき、第1アンビル22の第1載置面24の上には、ワイヤーバレル16を載置し、第2アンビル23の第2載置面25の上には、インシュレーションバレル15を載置する。この状態で、雌端子金具12を、図示しない端子保持手段により保持する。端子保持手段は、端子圧着装置19に設けられていてもよく、また、端子圧着装置19とは別体に設けられていてもよい。
【0037】
続いて、雌端子金具12の上に、絶縁被覆14を剥がして芯線13を露出させた電線11を載置する。このとき、ワイヤーバレル16の上には芯線13を載置し、インシュレーションバレル15の上には絶縁被覆14を載置する。この状態で、電線11を、図示しない電線保持手段により保持する。電線保持手段は、端子圧着装置19に設けられていてもよく、また、端子圧着装置19とは別体に設けられていてもよい。
【0038】
(圧着工程)
続いて、加圧シリンダによりクリンパ21を下方に移動させて、クリンパ21をアンビル20に接近させる。クリンパ21が下方に移動すると、クリンパ21の第1圧着面28が上方からワイヤーバレル16のバレル片31に当接すると共に、第2圧着面29が上方からインシュレーションバレル15のバレル片30に当接する。さらにクリンパ21を下方に移動させると、バレル片30,31はクリンパ21の第1圧着面28及び第2圧着面29に押圧されて電線11の径方向内方に変形する。
【0039】
これにより、インシュレーションバレル15のバレル片30は、電線11の絶縁被覆14を外側から抱くようにかしめられる。また、ワイヤーバレル16のバレル片31は、電線11の芯線13を外側から抱くようにかしめられる。
【0040】
クリンパ21を図3に示す最下方位置にまで移動させたら、加圧シリンダによりクリンパ21を上方に移動させ、クリンパ21とアンビル20とを離間させる(図1参照)。続いて、アンビル20に載置された雌端子金具12及び電線11を取り出す。これにより、ワイヤーハーネス10が完成する。
【0041】
図4に要部を拡大して示す。クリンパ21とアンビル20とを互いに接近方向に移動させて第1載置面24と第1圧着面28との間でワイヤーバレル16を挟むと、ワイヤーバレル16には、第1載置面24から上向きの力Aが加えられると共に、第1圧着面28から下向きの力Dが加えられる。そして、第1載置面24と第1圧着面28とは、電線11の軸方向について上下方向に傾斜して設けられているので、ワイヤーバレル16には、力Aの第1載置面24に沿う方向の分力Bと、力Dの第1圧着面28に沿う方向の分力Eとが加えられる。これら分力Bと、分力Eは、電線11の軸方向に沿って互いに反対方向を向いている。なお、力Aのうち第1載置面24と直交する方向の分力は力Cであり、また、力Dのうち第1圧着面28と直交する方向の分力は力Fである。
【0042】
そして、分力Bによって、第1載置面24と接触するワイヤーバレル16は、このワイヤーバレル16側に位置する芯線13(図4において下側に位置する芯線13)に対して、電線11の軸方向にずれて移動する。すると、第1載置面24と接触するワイヤーバレル16と、このワイヤーバレル16側に位置する芯線13とが摺動する結果、芯線13の表面に形成された酸化膜が剥離され、芯線13の新生面が露出する。この芯線13の新生面と、ワイヤーバレル16とが接触することにより、電線11と雌端子金具12との接触抵抗を小さくすることができる。
【0043】
上記と同様に、分力Eにより、第1圧着面28と接触するワイヤーバレル16は、このワイヤーバレル16側に位置する芯線13(図4において上側に位置する芯線13)に対して、電線11の軸方向にずれて移動する。すると、第1載置面24と接触するワイヤーバレル16と、このワイヤーバレル16側に位置する芯線13とが摺動する結果、芯線13の表面に形成された酸化膜が剥離され、芯線13の新生面が露出する。この芯線13の新生面と、ワイヤーバレル16とが接触することにより、電線11と雌端子金具12との接触抵抗を小さくすることができる。
【0044】
また、ワイヤーバレル16のうち電線11の軸方向両端部の近傍に位置する電線11は、ワイヤーバレル16に押圧されることで、電線11の軸方向について比較的に自由に延びる。これは、ワイヤーバレル16のうち電線11の軸方向について中央付近に位置する電線11と、ワイヤーバレル16とは、両者がかしめられることで相対的位置が概ね固定されてしまうためである。
【0045】
そして、ワイヤーバレル16のうち電線11の端部側の端部の近傍に位置する電線11は、電線11の端部と反対側に位置する電線11に比べて大きく延びることができる。これは、電線11の端部は自由端となっているために電線11が延びることが妨げられないからである。
【0046】
本実施形態によれば、第1圧着面28は電線11の端部側の方向について下降傾斜している。これにより、第1圧着面28に沿う方向の分力は、電線11の端部側の方向を向く。この結果、第1圧着面28と接触するワイヤーバレル16には、電線11の端部側を向く力が加わる。これにより、第1圧着面28と接触するワイヤーバレル16側は、電線11に対して電線11の端部側を向く力を加える。この結果、ワイヤーバレル16は、比較的に大きく延びる電線11と、広い範囲に亘って摺接する。これにより電線11の新生面とワイヤーバレル16との接触面積を大きくすることができるので、電線11と雌端子金具12との接触抵抗を一層小さくすることができる。
【0047】
なお、芯線13がアルミニウム又はアルミニウム合金からなる場合、芯線13の表面に形成された酸化膜を破って接触抵抗を小さくするためには、高い圧縮率(例えば40〜70%程度)でワイヤーバレル16を芯線13にかしめつける必要がある。このような場合に、本実施形態は極めて有効となる。なお、圧縮率は、{(圧縮後導体面積)/(圧縮前導体面積)}×100 で定義される。
【0048】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)第1載置面24は、電線11の端部と反対側に向かうにしたがって下降傾斜して形成される構成としてもよい。この場合、第1圧着面28は、第1載置面24と対応して、電線11の端部と反対側に向かうにしたがって下降傾斜して形成される。
(2)本実施形態においては、端子金具は雌端子金具12としたが、これに限られず、雄端子金具としてもよく、また、円板を貫通する貫通孔が形成された形状(いわゆるLA端子)としてもよい。すなわち、端子金具の接続部18は、必要に応じて任意の形状を取りうる。
(3)本実施形態においては、電線11は被覆電線としたが、これに限られず、周囲との絶縁がなされる場合には裸電線でもよく、また、シールド電線でもよく、必要に応じて任意の電線を用いることができる。電線の導体は、被覆電線の芯線でもよく、また、シールド電線の中心導体、又は編組線でもよく、必要に応じて任意の構成を取りうる。
(4)ワイヤーバレル16のバレル片31の形状は、3本以上が左右両側から互い違いに形成されていてもよく、また、1本のみが形成されていてもよい。
(5)本実施形態においては、上型を下方に移動させる構成としたが、これに限られず、下型を上方に移動させる構成としてもよく、また、上型を下方に移動させ、且つ下型を上方に移動させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係る端子圧着装置と、この端子圧着装置により製造されたワイヤーハーネスを示す側面図
【図2】載置工程を示す側面図
【図3】圧着工程を示す側面図
【図4】ワイヤーハーネスの要部拡大側面図
【符号の説明】
【0050】
10…ワイヤーハーネス
11…電線
12…雌端子金具(端子金具)
13…芯線(導体)
16…ワイヤーバレル(圧着部)
19…端子圧着装置
22…第1アンビル(下型)
24…第1載置面(載置面)
27…第2クリンパ(上型)
28…第1圧着面(圧着面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末から露出する導体に、端子金具に設けられた圧着部をかしめて圧着させる端子圧着装置であって、
下型と、前記下型の上方の位置に前記下型に対して上下方向に相対移動可能に配された上型と、前記下型の上面に設けられて前記圧着部の上に前記導体を重ねた状態で前記圧着部が載置される載置面と、前記上型の下面に設けられて、前記上型と前記下型とを接近する方向に移動させて前記圧着部を前記載置面との間で挟むことにより、前記圧着部を前記導体にかしめて圧着する圧着面と、を備え、
前記載置面は前記電線の軸方向について上下方向に傾斜して形成されており、前記圧着面は、前記載置面と対応して前記電線の軸方向について上下方向に傾斜して形成されていることを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
前記圧着面は、前記電線の端部側の方向に向かうにしたがって下降傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
導体を含む電線と、前記電線の端末から露出する前記導体に外側からかしめられる圧着部を有すると共に前記圧着部に連なって相手側端子金具と接続される接続部を有する端子金具と、を備えたワイヤーハーネスの製造方法であって、
下型の上面に前記電線の軸方向について上下方向に傾斜して形成された載置面の上に、前記圧着部に前記電線を重ねた状態で前記圧着部を載置する載置工程と、
前記下型と、前記下型の上方の位置に前記下型との間で上下方向に相対移動可能に配された上型とを、接近する方向に移動させて、前記上型の下面に形成されて前記載置面と対応して前記電線の軸方向について上下方向に傾斜した圧着面と、前記載置面との間で前記圧着部を挟むことで、前記圧着部を前記導体にかしめて圧着する圧着工程と、
を実行することを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項4】
前記圧着面は、前記電線の端部側の方向に向かうにしたがって下降傾斜して形成されていることを特徴とする請求項3に記載のワイヤーハーネスの製造方法。
【請求項5】
前記導体は、前記導体はアルミニウム又はアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のワイヤーハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−218111(P2009−218111A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61367(P2008−61367)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】