説明

端子圧着装置のフレーム

【課題】従来のフレームが有していた利点を損なうことなく、構成が簡易で且つ製作容易なフレームを提供する。
【解決手段】電線Dに端子を圧着すべく端子圧着装置1に設けられるフレーム30であって、上型が昇降自在に設けられる上フレーム部33と、下型が設けられて前記上フレーム部33に対向配置される下フレーム部と、一側部に開口部が形成されるように他側部に設けられて、前記両フレーム部33を連結する支柱部とを有する複数のフレーム本体31と、該フレーム本体31の上フレーム部33を相互に連結するための梁32とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線のストリップ部(被覆が剥離されて芯線が露出した部分)に端子を圧着する端子圧着装置に設けられるフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の端子圧着装置は圧着作業の効率化を図るために、一対の圧着機構を備えるのが一般的である。即ち、電線の前後端の圧着処理を夫々の圧着機構で各別に行うようにしている(特許文献1参照)。
【0003】
また、かかる圧着機構には、側面略Cの字状の所謂C形フレームからなるフレームが採用されている。このフレームは、上型が昇降自在に設けられる上フレーム部と、下型を有して前記上フレーム部に対向配置される下フレーム部と、これらの両フレーム部を連結するように上下方向に配される支柱部とを備えている(特許文献2参照)。
【0004】
これによると、支柱部側を除く前方及び左右部分に十分な作業空間を確保できるために、端子及び電線の給排や、上型及び下型の交換作業等を良好に行えるという利点があり、この種の端子圧着装置に於いては幅広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−166398号公報
【特許文献2】特開2007−165119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のC形フレームに於いては、その形状に起因して剛性に欠けるという欠点があった。このため、圧着荷重がフレームに作用した際に、振動だけではなく、前方開口部が開くという所謂口開き現象が生じ易く、これが圧着精度を低下せしめる一因ともなっていたのである。
【0007】
これ対して、剛性の高い側面略ロの字状の門形フレームを採用することも考えられる。これによると、その剛性により振動や口開き現象等の発生が抑制されて、良好な圧着精度を維持し得ると予想されるからである。しかるに、門形フレームは前記C形フレームのように十分な作業空間を確保できないために、端子及び電線の給排や、上型及び下型の交換作業等に支障をきたすという致命的な欠点があり、この種の端子圧着装置に採用するのは困難であった。
【0008】
このように、上記従来のものは何れも端子圧着装置に最適なフレームとは言い難く、よって端子圧着装置の特質を考慮した新たなフレームの開発が要請されていたのである。
【0009】
それ故に、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来のフレームが有していた利点を損なうことなく、構成が簡易で且つ製作容易なフレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る端子圧着装置のフレームは、電線に端子を圧着すべく端子圧着装置に設けられるフレームであって、上型が昇降自在に設けられる上フレーム部と、下型が設けられて前記上フレーム部に対向配置される下フレーム部と、一側部に開口部が形成されるように他側部に設けられて、前記両フレーム部を連結する支柱部とを有する複数のフレーム本体と、該フレーム本体の上フレーム部を相互に連結するための梁とを備えてなるものである。
【0011】
このような端子圧着装置のフレームに於いては、先ずフレーム本体の下フレーム部に設けた下型に端子が供給されると共に、該端子に開口部から電線が供給される。そして、この状態で上フレーム部に設けた上型が下降して、電線に端子が圧着されることになる。
【0012】
この場合に於いて、各フレーム本体の上フレーム部は梁により相互に連結されてなるために、これらの各フレーム本体及び梁により、いわば門形フレームと略同様の構造が形成されることになる。これにより、フレーム自体の剛性が大幅に向上し、振動や口開き現象の発生を適切に抑制することができる。その結果、上型及び下型による端子の圧着精度を低下せしめることなく、良好に圧着処理を行えることになる。
【0013】
また、上下フレーム部及び支柱部とからなるフレーム本体の各上フレーム部を梁で連結するものであるために、その構成が極めて簡易であると共に、製作コストが嵩むようなこともなく安価に製作することできる。しかも、従来のC形フレームと同様に十分な作業空間を維持することもできる。
【0014】
また、前記梁は各フレーム本体の上フレーム部に溶着又は接着、或いは締結具により固定しても構わない。
【0015】
これによると、梁は各フレーム本体に事後的に固定することが可能となるために、既存の端子圧着装置についても適用することができる。
【0016】
更に、前記梁は各フレームの上フレーム部に一体形成してもよい。
【0017】
この場合にも、前記端子圧着装置と同様の作用効果が得られる他、更なる剛性の向上を図ることができる。
【0018】
また、前記フレーム本体は、電線の前端部に端子を圧着する一方のフレーム本体と、電線の後端部に端子を圧着する他方のフレーム本体と、の一対で構成してもよい。
【0019】
これによると、一対のフレーム本体と梁とにより、門形フレームに近似するフレームが形成されるために、該門形フレームと略同等の剛性を備えることになる。
【0020】
更に、前記各フレーム本体は作業空間を確保すべく離間させて配するのが好ましい。
【0021】
このような作業空間を確保することにより、端子及び電線の給排や、上型及び下型の交換作業等を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、この種の圧着端子装置に必要且つ十分な剛性が確保されて、圧着精度の向上が図れると共に、十分な作業空間を確保できることになる。また、構成が簡易で且つ安価に製作可能な圧着端子装置のフレームを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態を示す端子圧着装置の平面図である。
【図2】同圧着端子装置の正面図である。
【図3】同フレームの斜視図である。
【図4】他の実施形態を示す端子圧着装置の平面図である。
【図5】他の実施形態を示す端子圧着装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るフレームを備えた端子圧着装置の一実施形態について、図面に従って説明する。図1に示す端子圧着装置1の主要部は従来のものと略同様に構成されており、搬送供給される電線Dの長さを測長する測長機構2と、電線Dの切断及びその被覆を剥離処理するカット機構3と、電線Dの前端部又は後端部を把持するクランプ4、5を有して前後及び左右方向に移動可能な一対の移動機構6、7と、端子連続体Tが卷回された回転自在なリール8、9と、該リール8、9から供給された端子tを前記電線Dのストリップ部に圧着する一対の圧着機構10、11を有するフレーム30とを備えている。
【0025】
また、図2に示すように、リール8、9からの端子連続体Tは搬送機構12を介して前記圧着機構10、11に搬送供給される。フレーム30は、所定間隔を有するように離間配置される一対のフレーム本体31と、略水平方向に配される梁32とからなっている。
【0026】
フレーム本体31は、油圧シリンダ等によりラム(図示せず)を介して上下方向に昇降する上型(クリンパ)13が設けられる上フレーム部33と、該上フレーム部33に対向配置されて下型(アンビル)14が設けられる下フレーム部34と、一側部に開口部36が形成されるように他側部に設けられて、前記両フレーム部33、34を連結する支柱部35とを備えている(図1及び図3参照)。また、一方のフレーム本体31が電線Dの前端部に端子tを圧着し、他方のフレーム本体31が電線Dの後端部に端子tを圧着するように構成されている。
【0027】
梁32は、各フレーム本体31の上フレーム部33の上面を相互に連結するように架設されている。尚、本実施形態では梁32を一直線状の金属製平板で構成しており、これは溶着、接着或いはボルト、ナットの締結具等により各上フレーム部33に固定される。この場合、梁32は上フレーム部33の側面に固定することも可能である。また、梁32の上下方向の肉厚は、フレーム本体31の上フレーム部33の上下方向の肉厚よりも小なる寸法に設定されている。
【0028】
搬送機構12は、図2に示すように、圧着端子連続体Tの端子tに係脱可能な送り爪16を先端に有して、油圧シリンダ等により揺動されるリンク17と、圧着端子連続体Tの搬送路に沿って搬送台18上に設けられた端子ガイド19とを備えている。前記ラムの上昇動作に連動してリンク17が揺動し、その送り爪16により圧着端子連続体Tが端子ガイド19に沿って1ピッチ分だけ下型14側へ搬送されるように構成されている。
【0029】
本実施形態に係る端子圧着装置1は以上のような構成からなるが、次のようにして電線Dに端子tが圧着される。即ち、端子圧着装置1に所定長さ搬送供給された電線Dは、先ずクランプ4、5により前後2ヶ所が把持される。この状態で、電線Dはカッタ機構3により所定の長さに切断されると共に、その端部の被覆が剥離される。その後、クランプ4により把持されている電線Dは、移動機構6により一方のフレーム本体31に設けた圧着機構10側に移動される。また、圧着機構10の下型14には端子tが搬送供給されており、上型13の下降により端子tが前記電線Dのスリップ部に圧着されることになる。
【0030】
一方、かかる電線Dの前端部への圧着処理と同時に、他方のクランプ5に把持された電線Dも移動機構7により他方のフレーム本体31に設けた圧着機構11側に移動される。そして、電線Dの後端側に位置するスリップ部に圧着機構11により端子tが圧着される。以上のような動作が繰返し行われて、電線Dの両端部に端子tが圧着されたハーネスが製造される。
【0031】
この場合に於いて、各フレーム本体31の上フレーム部33間には梁32が架設されて、フレーム30はいわば門形フレームに近似するように形成されるために、該門形フレームと略同等の剛性を備えることになる。よって、従来のC形フレームと比較してその剛性が大幅に向上することになる。これにより、圧着荷重がフレーム30に作用した際に於ける振動及び口開き現象の発生を抑制することが可能となるために、圧着精度を十分に維持することができる。即ち、本実施形態に係る端子圧着装置1に必要且つ十分な剛性を備えることになるのである。
【0032】
また、梁32の上下方向の肉厚は、上フレーム部33のそれよりも小となるように寸法設定されているので、門形フレームのようにフレーム30自体の重量を増大せしめることなく、コンパクトに且つ安価にその製作を行うことができる。
【0033】
更に、各フレーム本体31は相互に離間して配されているために、従来のC形フレームと同様に、前方及び左右部分に十分な作業空間を確保することができる。これにより、端子t及び電線Dの給排や、上型13及び下型14の交換作業等を適切に行うことが可能になる。
【0034】
このように、本実施形態に係るフレーム30は、この種の端子圧着装置1の特質を十分に考慮した最適なものであるということができる。
【0035】
尚、上記実施形態に於いては、梁32を一直線状に形成した平板で構成しているが、梁32の形状は決してこれに限定されるものではない。例えば、梁32は、図4に示すようにフレーム本体31の形状や配置等を考慮して折曲形成してもよく、これによれば良好な外観体裁を維持することが可能になる。また、梁32の上下方向の肉厚も上記実施形態に限られず、任意な変更が可能である。
【0036】
更に、上記実施形態では、フレーム本体31と梁32とを溶着、接着或いは締結具で固定しているが、その具体的な固定手段はこれらに限定されるものではない。
【0037】
また、上記実施形態にあっては、フレーム30を別体のフレーム本体31と梁32とで構成しているが、梁32をフレーム本体31に一体的に形成するようにフレーム30を構成しても構わない。
【0038】
更に、本発明に係るフレーム30は上記実施形態の如き一対に限らず、複数のフレーム本体31を有する既存の端子圧着装置1について幅広く適用することが可能である。即ち、各フレーム本体31の上フレーム部33を梁32により相互に連結すればよく、これにより上記実施形態と同様のフレーム30を備えた端子圧着装置1を得ることができる。
【0039】
また、作業空間の確保という観点からすると、上記実施形態のように各フレーム本体31を相互に離間するように配するのが好ましいが、その具体的な離間距離は一切問わない。
【0040】
更に、本発明が適用される端子圧着装置1の各部の構成も、本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更自在である。例えば、図5の如く開口部36が夫々内側に位置するように、略対角線上に配された一対のフレーム本体31を有する端子圧着装置1についても、本発明に係るフレーム30は適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
13 上型
14 下型
30 フレーム
31 フレーム本体
32 梁
33 上フレーム部
34 下フレーム部
35 支柱部
36 開口部
D 電線
t 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に端子を圧着すべく端子圧着装置に設けられるフレームであって、
上型が昇降自在に設けられる上フレーム部と、下型が設けられて前記上フレーム部に対向配置される下フレーム部と、一側部に開口部が形成されるように他側部に設けられて、前記両フレーム部を連結する支柱部と、を有する複数のフレーム本体と、
該フレーム本体の上フレーム部を相互に連結するための梁と、を備えてなることを特徴とする端子圧着装置のフレーム。
【請求項2】
前記梁が、各フレーム本体の上フレーム部に溶着又は接着により固定されてなる請求項1記載の端子圧着装置のフレーム。
【請求項3】
前記梁が、各フレーム本体の上フレーム部に締結具により固定されてなる請求項1記載の端子圧着装置のフレーム。
【請求項4】
前記梁が、フレーム本体の上フレーム部に一体形成されてなる請求項1記載の端子圧着装置のフレーム。
【請求項5】
前記フレーム本体は、電線の前端部に端子を圧着する一方のフレーム本体と、電線の後端部に端子を圧着する他方のフレーム本体と、の一対で構成されてなる請求項1乃至4の何れか一つに記載の端子圧着装置のフレーム。
【請求項6】
前記各フレーム本体が作業空間を確保すべく離間して配されてなる請求項1乃至5の何れか一つに記載の端子圧着装置のフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−176889(P2010−176889A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15543(P2009−15543)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】