端子圧着装置及び端子圧着方法
【課題】圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計を容易にした端子圧着装置及び端子圧着方法を提供する。
【解決手段】端子圧着装置1の分割上型2は、バレル部11の一端部11aと他端部11bが重なって電線に圧着されるようにするための最終加締め形状の加締め部3を形成する第1上型41及び第2上型42の2個に分割されている。圧着工程の開始時に、一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2加締め部32に同時に当たるように、第2上型42を第1上型41に対して下方向にずらす。圧着工程の終了直前に、加締め部3が形成されるように第1上型41と第2上型42のずれを元に戻す。圧着工程の間、端子10に回転力が生じるのが抑制される。
【解決手段】端子圧着装置1の分割上型2は、バレル部11の一端部11aと他端部11bが重なって電線に圧着されるようにするための最終加締め形状の加締め部3を形成する第1上型41及び第2上型42の2個に分割されている。圧着工程の開始時に、一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2加締め部32に同時に当たるように、第2上型42を第1上型41に対して下方向にずらす。圧着工程の終了直前に、加締め部3が形成されるように第1上型41と第2上型42のずれを元に戻す。圧着工程の間、端子10に回転力が生じるのが抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線の端部に端子のワイヤバレル部やインシュレーションバレル部を加締めて圧着する端子圧着装置及び端子圧着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電線の端部に圧着される端子(雌端子)は、雄端子が挿入される雌型接触子と、電線の導体に圧着されるワイヤバレル部と、電線の絶縁被覆に圧着されるインシュレーションバレル部とを有している。ワイヤバレル部とインシュレーションバレル部は、端子本体に上方が開いたV字状に切り起こされている。このような端子を電線の端部に圧着する端子圧着装置は、電線の端部の導体にワイヤバレル部を圧着するワイヤクリンパ及びワイヤアンビルと、電線の絶縁被覆にインシュレーションバレル部を圧着するインシュレーションクリンパ及びインシュレーションアンビルとを備えている。
【0003】
このような端子圧着装置における端子の圧着作業は、圧着位置に送られた端子のワイヤバレル部及びインシュレーションバレル部の各折り返し部に電線の導体及び絶縁被覆をそれぞれセットし、ワイヤクリンパをワイヤアンビル側へ下降させると共に、インシュレーションクリンパをインシュレーションアンビル側へ下降させることで行う。
【0004】
なお、以下の説明において、端子のワイヤバレル部及びインシュレーションバレル部を単にバレル部といい、ワイヤクリンパ及びインシュレーションクリンパを単にクリンパ或いは上型といい、また、ワイヤアンビル及びインシュレーションアンビルを単にアンビル或いは下型という。
【0005】
このようにして端子圧着装置により端子のバレル部を加締めて電線の端部に圧着する方法の一つとして、いわゆるオーバーラップ圧着方式が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この圧着方式では、V字状に上方が開いたバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、バレル部をクリンパの曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する。
【0006】
特許文献1に記載の端子圧着装置では、図12に示すように、端子のバレル部101を加締めるクリンパ102の端縁部(加締め部)103の形状が、高さの異なる山を2つ連ねるように切り欠いた形状をなしている。すなわち、クリンパ102の加締め部103は、上死点の異なる2つの円弧103a,103bが連なる形状を有している。加締め部103の円弧103aによりバレル部101の一端部101a側が加締められると共に、円弧103bによりバレル部101の他端部101b側が加締められる。この端子圧着装置における端子の圧着動作は、図12に示すように電線100をバレル部101の折り返し部内に置いた状態で、クリンパ102をアンビル104側へ図12に示す位置から図13に示す位置まで下降させることでなされる。
【0007】
特許文献2に記載の端子圧着装置では、クリンパの加締め部はアンビル側から見て上方にと凸である一つの円弧形状であり、電線の端部を端子のバレル部の折り返し部内に置いた状態(同文献の図1(a)参照)で、バレル部の一端部がその他端部よりもアンビルからの高さが高くなるようにして、端子の圧着がなされる。
【特許文献1】特開平3−165478号公報
【特許文献2】特開平8−213142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1に記載された端子圧着装置では、次のような問題点があった。
(1)円弧103a,103bの曲面形状(R形状)が非対称であるため、クリンパ102が図12に示す位置から下降していくと、バレル部101の一端部101aが円弧103aの曲面に当たってこの円弧103aによる加締めが開始された後、他端部101bが円弧103bの曲面に当たり始めてこの曲面103bによる加締めが開始される。そのため、バレル部101の一端部101a側の加締めが開始される際或いはその加締めが進む過程で、端子101に図14の矢印で示す方向の回転力が生じ、端子101がその矢印方向へ回転して傾いてしまう。その結果、バレル部101の一端部101a,他端部101bがそれぞれ円弧103a,103bにより加締められるタイミングや軌道が円弧103a,103bの各曲面形状を設定した際に意図したタイミングや軌道からずれてしまい、圧着不良が発生してしまう恐れがある。この圧着不良により、上記インシュレーションバレル部については電線の絶縁被覆との間で緩みが生じてしまい、また、上記ワイヤバレル部については電線の導体との電気的接続の不良が生じてしまう。
【0009】
(2)円弧103a及び103bの各曲面形状を変えてバレル部101の一端部101a及び他端部101bが加締められるタイミングや軌道を変えることによって、一端部101aと他端部101bが互いに重なって電線に圧着されるようにするための最終加締め形状を成立させていた。そのため、意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように円弧103a及び103bの各曲面形状を設計するのが非常に困難である。
【0010】
このような問題は、上記特許文献2に記載された端子圧着装置においても発生する恐れがある。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計を容易にした端子圧着装置及び端子圧着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る端子圧着装置は、下型と、下型に対して昇降自在の上型とを備え、端子のバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、前記バレル部を前記上型の曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する端子圧着装置において、前記加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に前記上型を分割して形成された分割上型と、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に配置した状態で前記第1上型及び第2上型を前記下型側へ変位させる圧着工程の開始時に、前記バレル部の一端部及び他端部が前記第1加締め部及び第2加締め部に同時に当たるように前記第1上型と第2上型を上下方向に相対的にずらすと共に、前記圧着工程の終了直前に、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻すことを特徴とする。
【0013】
この態様によると、圧着工程の開始時に、バレル部の一端部及び他端部が第1上型の第1加締め部及び第2上型の第2加締め部に同時に当たり、その後各加締め部の曲面形状にそれぞれ沿って誘導される。このため、圧着工程の間、端子に回転力が生じるのが抑制され、端子の姿勢が安定している状態でバレル部の加締めが開始され、その加締めの過程が進んでいく。これにより、圧着不良の発生が抑制される。
【0014】
また、圧着工程の終了直前に第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻すことにより第1加締め部と第2加締め部とが一致し、バレル部の一端部及び他端部が互いに重なって電線に圧着されるようにするための最終加締め形状が形成されるようにしている。このため、圧着工程の終了直前に、バレル部の一端部と他端部の電線への圧着タイミングをずらして、各端部の最終段階での加締めと、各端部の電線への圧着を順番に行い、上記オーバーラップ圧着方式による端子の圧着が非常に高い成功率で可能になる。これによっても、圧着不良の発生が抑制される。
【0015】
また、圧着工程の開始時における第1上型と第2上型の相対的なずれ量で、バレル部の一端部と他端部の加締めのタイミングを調整できるので、意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように加締め部の曲面形状(R形状)の設計が容易になる。
【0016】
従って、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計を容易にした端子圧着装置を得ることができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記圧着工程の開始時に前記第1上型と第2上型を相対的にずらす付勢手段と、前記圧着工程の終了直前に前記最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す復帰手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この態様によると、従来の端子圧着装置において、上型として前記分割上型を用い、付勢手段と復帰手段を付加するという簡単な設計変更をするだけで、圧着不良の発生を抑制できると共に、加締め部の曲面形状の設計が容易な端子圧着装置を実現することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記復帰手段は、前記第1上型及び第2上型のうち、前記付勢手段の付勢力で下方へずらされた一方の上型と前記圧着工程の終了直前に係合し、前記一方の上型を前記付勢手段の付勢力に打ち勝って上方へ付勢する第2付勢手段を含むことを特徴とする。
【0020】
この態様によると、第2付勢手段が前記一方の上型と係合するタイミングを調整することで、圧着工程の終了直前における、バレル部の一端部と他端部の電線への圧着タイミングを変更することが可能になる。
【0021】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記第1上型と第2上型の各摺動面に形成された切り欠き部と、これら2つの切り欠き部に摺動自在に係合し、前記第1上型と第2上型を収容するホルダに固定された係止ピンとを有し、前記2つの切り欠き部のいずれか一方の上端部は、前記付勢手段により前記第1上型と第2上型とを相対的にずらした状態で係止ピンに係合していることを特徴とする。
【0022】
この態様によると、2つの切り欠き部のいずれか一方の上端部が係止ピンに係合することで、第1上型と第2上型の相対的な変位量が規制されるので、その変量により第1上型と第2上型の上下方向への相対的なずれ量を調整することができる。
【0023】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有し、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記最終加締め形状の加締め部が形成される際に前記円弧の上死点が高い一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする。
【0024】
この態様によると、前記最終加締め形状の加締め部が、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有する端子圧着装置において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計が容易になる。
【0025】
ここで、「円弧の上死点」とは、下型側から見て上方に凸の円弧をなす各点のうち下型からの高さの最も高い点をいう。
【0026】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は前記下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状であり、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に置いた状態で、前記端子のバレル部の一端部はその他端部よりも前記下型からの高さが高い位置にあり、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記高さが前記バレル部の一端部より低い位置にある前記バレル部の他端部側を加締める一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする。
【0027】
この態様によると、最終加締め形状の加締め部が、下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状を有する端子圧着装置において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計が容易になる。
【0028】
本発明の第2の態様に係る端子圧着方法は、下型と、下型に対して昇降自在の上型とを備え、端子のバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、前記バレル部を前記上型の曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する端子圧着方法において、前記加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に前記上型を分割して形成された分割上型を使用し、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に配置した状態で前記第1上型及び第2上型を前記下型側へ変位させる圧着工程の開始時に、前記バレル部の一端部及び他端部が前記第1加締め部及び第2加締め部に同時に当たるように前記第1上型と第2上型を相対的にずらす工程と、前記第1上型と第2上型を相対的にずらした状態で、前記バレル部の一端部及び他端部を前記第1加締め部及び第2加締め部によりそれぞれ加締める工程と、前記圧着工程の終了直前に、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す工程と、を備えることを特徴とする。
【0029】
この態様によると、上述したように圧着不良の発生が抑制される。また、上記オーバーラップ圧着方式による端子の圧着が非常に高い成功率で可能になり、これによっても、圧着不良の発生が抑制される。意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように加締め部の曲面形状の設計が容易になる。従って、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計を容易にした端子圧着装置を得ることができる。
【0030】
本発明の他の態様に係る端子圧着方法は、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有し、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記最終加締め形状の加締め部が形成される際に前記円弧の上死点が高い一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする。
【0031】
この態様によると、最終加締め形状の加締め部が、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有する端子圧着装置において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部の曲面形状の設計が容易になる。
【0032】
本発明の第3の態様に係る端子圧着方法は、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は前記下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状であり、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に置いた状態で、前記端子のバレル部の一端部はその他端部よりも前記下型からの高さが高い位置にあり、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記高さが前記バレル部の一端部より低い位置にある前記バレル部の他端部側を加締める一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする。
【0033】
この態様によると、最終加締め形状の加締め部が、下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状を有する端子圧着装置において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部の曲面形状の設計が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の各実施形態に係る端子圧着装置及び端子圧着方法を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る端子圧着装置及び端子圧着方法を、図1乃至図5に基づいて説明する。なお、図4(A)乃至(C)及び図5(A)及び(B)は一連の端子圧着工程を順に示している。
【0035】
図1に示す端子圧着装置1は、下型5と、下型5に対して昇降自在の分割上型2とを備え、端子10のバレル部11の一端部11aと他端部11bが互いに重なるように(図3参照)、バレル部11を分割上型2の曲面形状の加締め部3により加締めて電線20の端部に圧着するようになっている。この電線20の端部は、前工程で電線端末から一定の長さにわたって絶縁被覆21が皮剥ぎされて複数の心線(導体)22が剥き出しになっている。
【0036】
なお、図1では、端子圧着装置1のうち、電線20の端部の絶縁被覆21に端子10のインシュレーションバレル部であるバレル部11を圧着するインシュレーションバレル部の圧着ユニットのみを示しており、ワイヤバレル部の圧着ユニットは図示を省略してある。インシュレーションバレル部の圧着ユニットには、インシュレーションアンビルとしての下型5と、インシュレーションクリンパとしての分割上型2とが設けられている。また、図示を省略したワイヤバレル部の圧着ユニットには、ワイヤアンビルとしての下型と、ワイヤクリンパとしての分割上型2とが設けられている。
【0037】
この端子圧着装置1の分割上型2は、バレル部11の一端部11aと他端部11bが互いに重なって電線に圧着されるようにするための最終加締め形状の加締め部(曲面形状の加締め部)3を形成する第1上型41及び第2上型42の2個に分割して形成されている。第1上型41及び第2上型42は、最終加締め形状の加締め部3を形成する第1加締め部31及び第2加締め部32をそれぞれ有している。
【0038】
また、端子圧着装置1は連結棒(プッシュロッド)4を備えており、この連結棒4により分割上型2を押し下げることにより、図4(A)乃至(B),図5(A)及び(B)の圧着工程が実行される。
【0039】
端子圧着装置1は、電線20の端部をバレル部11の折り返し部12内に配置した状態(図2参照)で、第1上型41及び第2上型42を下型5側へ変位させる圧着工程の開始時に、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2加締め部32に同時に当たるように、第1上型41と第2上型42を上下方向に相対的にずらすようになっている。
【0040】
端子圧着装置1は、圧着工程の終了直前に、第1加締め部31と第2加締め部32とが一致して図5(A)に最終加締め形状の加締め部3が形成されるように第1上型41と第2上型42の相対的なずれを元に戻すようになっている。
【0041】
端子圧着装置1は、図4(A)に示す圧着工程の開始時に第1上型41と第2上型42を相対的にずらす付勢手段としてのコイルばね50と、圧着工程の終了直前に前記最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す復帰手段と、を備えている。
【0042】
第1上型41は、第2上型42の上端面と対向する下端面を有する突出部41aを有し、この突出部41aにはその下端面に開口するばね収容部41bが形成されている。一方、第2上型42の上端部には、その上端面に開口するばね収容部42aが形成されている。このばね収容部42aと第1上型41側のばね収容部41bとの間に、コイルばね50が配置されている。このコイルばね50の付勢力により、圧着工程の開始時に、第2上型42が第1上型41に対して下方へずらされるようになっている(図1及び図4(A)参照)。
【0043】
前記復帰手段は、第1上型41及び第2上型42のうち、コイルばね50の付勢力で下方へずらされた一方の上型(本例では第2上型42)と圧着工程の終了直前に係合し、第2上型42をその付勢力に打ち勝って上方へ付勢する第2付勢手段としての第2コイルばね60を有している。
【0044】
この第2コイルばね60の下端は、下型5の側面に締結されて上方へ延びているステー70の上端部に固定されている。第2コイルばね60の上端は、小片61に固定されて自由端になっている。この小片61に係合可能な段差面42bが第2上型42に形成されている。分割上型2が図1に示す位置から下方へ変位する圧着工程の途中で、段差面42bが第2コイルばね60の小片61と係合すると、第2上型42が第2コイルばね60の付勢力により第1上型41に対して上方へ変位し、第1上型41と第2上型42の相対的なずれが元に戻されるようになっている。
【0045】
また、端子圧着装置1は、第1上型41と第2上型42の各摺動面41c、42cに臨むように形成された切り欠き部41d、42dと、これら2つの切り欠き部に摺動自在に係合し、第1上型41と第2上型42を収容する図示を省略したホルダに固定された係止ピン30とを有している。2つの切り欠き部41d、42dのいずれか一方の上端部(本例では切り欠き部42dの上端部)は、コイルばね50により第1上型41と第2上型42とを相対的に上下方向にずらした状態で係止ピン30に係合している。このように切り欠き部42dの上端部が係止ピン30に係合することで、第1上型41に対する第2上型42の下方への変位量が規制されるようになっている。
【0046】
また、第1加締め部41と第2加締め部32とが一致して形成される最終加締め形状の加締め部は、図5(A)に示すように、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有している。そして、圧着工程の開始時に、第1上型41及び第2上型42のうち、最終加締め形状の加締め部が形成される際に円弧の上死点が高い一方の上型(本例では第2上型42)を他方の上型(第1上型41)に対して下方へずらすようになっている。
【0047】
このように構成された端子圧着装置1による圧着工程を、図4(A)乃至(B),図5(A)及び(B)に基づいて説明する。
・図4(A)は分割上型2が上死点にある状態を示している。分割上型2は、連結棒4により押し下げられることにより、図4(A)に示す上死点から図5(B)に示す下死点まで下降して端子の圧着工程がなされる。分割上型2が上死点にある状態では、第2上型42は第1上型41に対してコイルばね50の付勢力により下方向へずらされている。また、この状態では、端子10のバレル部11の一端部11a及び他端部11bはそれぞれ第1加締め部31及び第2加締め部32に当たっていない。
【0048】
・図4(B)は、分割上型2の第1上型41及び第2上型42が一体となって図4(A)の上死点から押し下げられた状態で、圧着工程が開始される圧着工程の開始時(圧着序盤)の状態を示している。この圧着工程の開始時には、第2上型42が第1上型41に対してコイルばね50により下方向へずらされていることで、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2加締め部32に同時に当たっている。
【0049】
・分割上型2が図4(B)の位置から図4(C)の位置まで下降する間では、第1上型41及び第2上型42は共に下降しながらも第2コイルばね60の小片61が第2上型42の段差面42bと係合することで第2上型42が第1上型41に対して上昇する。このように分割上型2が図4(B)の位置(圧着序盤)から図4(C)の位置(圧着中盤)まで下降する間に、第1加締め部31及び第2加締め部32によるバレル部10の一端部11a及び他端部11bの加締めが進んでいく。
【0050】
このように、図4(B)に示す圧着工程の開始時に、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1上型41の第1加締め部31及び第2上型42の第2加締め部32に同時に当たる。その後、分割上型2が図4(B)の位置から図4(C)の位置まで下降する間で、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2上型42の曲面形状にそれぞれ沿って誘導されながら各端部11a,11bの加締めが開始され、これらの加締めが進んでいく。このため、圧着工程の間、端子10に上記従来技術のような回転力が生じるのが抑制され、端子10の姿勢が安定している状態でバレル部11が加締められることになる。
【0051】
・図5(A)は、分割上型2が図4(C)の位置からさらに下降した状態(圧着終盤)を示している。分割上型2が図4(C)の位置から図5(A)の位置まで下降する間に、第1加締め部31及び第2加締め部32によるバレル部11の一端部11a及び他端部11bの加締めがさらに進んでいる。
【0052】
図5(A)に示す状態では、第2上型42の上端面が第2コイルばね60の付勢力により第1上型41の突出部41aの下端面に当接することで、上記最終加締め形状の加締め部3が第1加締め部31及び第2加締め部32により形成されている。
・分割上型2が図5(A)に示す位置から図5(B)に示す下死点まで下降すると、圧着工程が終了する。分割上型2が図5(A)の位置から図5(B)の位置まで下降する間に、バレル部11の一端部11a側が他端部11bより下側に位置した状態で一端部11aと他端部11bが互いに重なって電線20の絶縁被覆21に圧着される。
【0053】
以上説明した端子圧着装置1を用いて実行される第1実施形態に係る端子圧着方法は、以下の工程を備えている。
・加締め部3を形成する第1加締め部31及び第2加締め部32をそれぞれ有する第1上型41及び第2上型42の2個に上型を分割して形成された分割上型2を使用する工程。
【0054】
・電線10の端部をバレル部11の折り返し部12内に配置した状態で第1上型41及び第2上型を下型5側へ変位させる圧着工程の開始時に、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2加締め部32に同時に当たるように第1上型41と第2上型42を相対的にずらす工程。
【0055】
・第1上型41と第2上型42を相対的にずらした状態で、バレル部11の一端部11a及び他端部11bを第1加締め部31及び第2加締め部32によりそれぞれ加締める工程。
【0056】
・圧着工程の終了直前に、第1加締め部31と第2加締め部32とが一致して最終加締め形状の加締め部3が形成されるように第1上型41と第2上型42の相対的なずれを元に戻す工程。
【0057】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○圧着工程の開始時に、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1上型41の第1加締め部31及び第2上型42の第2加締め部32に同時に当たり、その後各加締め部の曲面形状(R形状)にそれぞれ沿って誘導される。このため、圧着工程の間、端子10に回転力が生じるのが抑制され、端子10の姿勢が安定している状態でバレル部11の加締めが開始され、その加締めの過程が進んでいく。これにより、圧着不良の発生を抑制することができる。
【0058】
○圧着工程の終了直前に第1上型41と第2上型42の相対的なずれを元に戻すことにより第1加締め部31と第2加締め部32とが一致し、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが互いに重なって電線20に圧着されるようにするための最終加締め形状が形成される。このため、圧着工程の終了直前に、バレル部11の一端部11aと他端部11bの電線10への圧着タイミングをずらして、各端部11a,11bの最終段階での加締めと、各端部11a,11bの電線20への圧着を順番に行い、上記オーバーラップ圧着方式による端子10の圧着が非常に高い成功率で可能になる。これによっても、圧着不良の発生を抑制することができる。
【0059】
○圧着工程の開始時における第1上型41と第2上型42の相対的なずれ量で、バレル部11の一端部11aと他端部11bの加締めのタイミングを調整できるので、意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように加締め部3の曲面形状(R形状)の設計が容易になる。
【0060】
○圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計を容易にした端子圧着装置を得ることができる。
【0061】
○端子圧着装置1は、圧着工程の開始時に第1上型41と第2上型42を相対的にずらすコイルばね50と、圧着工程の終了直前に最終加締め形状の加締め部3が形成されるように第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す第2コイルばね60を備えている。これにより、従来の端子圧着装置において、上型として分割上型2を用い、コイルばね50と第2コイルばね60を付加するという簡単な設計変更をするだけで、圧着不良の発生を抑制できると共に、加締め部3の曲面形状の設計が容易な端子圧着装置1を実現することができる。
【0062】
○端子圧着装置1は、コイルばね50の付勢力で下方へずらされた第2上型42と圧着工程の終了直前に係合し、第2上型42をコイルばね50の付勢力に打ち勝って上方へ付勢する第2コイルばね60を備えている。これにより、第2コイルばね60が第2上型42と係合するタイミングを調整することで、圧着工程の終了直前における、バレル部11の一端部11aと他端部11bの電線20への圧着タイミングを変更することが可能になる。
【0063】
○切り欠き部42dの上端部が係止ピン30に係合することで、第1上型41に対する第2上型42の下方への変位量が規制されるので、その変量により第1上型と第2上型42の上下方向への相対的なずれ量を調整することができる。
【0064】
○最終加締め形状の加締め部3が、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有する端子圧着装置1において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部3を形成する第1加締め部31及び第2加締め部32の曲面形状の設計が容易になる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る端子圧着装置を、図6及び図7に基づいて説明する。図7は、上記第1実施形態で説明した図4(B)と同様に圧着工程の開始時の状態を示している。
【0066】
図6に示す端子圧着装置1Aは、第1上型41A及び第2上型42Aからなる分割上型2Aを有している。第1上型41Aの第1加締め部31Aと第2上型42Aの第2加締め部32Aとが一致して形成される最終加締め形状の加締め部3Aは下型5側から見て上方に凸である一つの円弧形状である。
【0067】
また、この端子圧着装置1Aでは、電線20の端部をバレル部11の折り返し部12内に置いた状態で、端子10のバレル部11の一端部11aはその他端部11bよりも下型5からの高さが高い位置にある。
【0068】
この端子圧着装置1Aでは、図7に示す圧着工程の開始時に、第1上型及び第2上型のうち、下型5からの高さがバレル部11の一端部11aより低い位置にあるバレル部11の他端部11b側を加締める一方の上型(本例では第2上型42A)を他方の上型(第1上型41A)に対して下方へずらすようにしている。
【0069】
その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
この端子圧着装置1Aを用いて実行される第2実施形態に係る端子圧着方法は、上記第1実施形態に係る端子圧着方法と以下の工程において相違し、その他の構成は同様である。
・図7に示す圧着工程の開始時に、下型5からの高さがバレル部11の一端部11aより低い位置にあるバレル部11の他端部11b側を加締める第2上型42Aを他方の上型第1上型41Aに対して下方へずらす工程。
【0071】
以上のように構成された第2実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。
○最終加締め形状の加締め部3Aが、下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状を有する端子圧着装置1において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部3Aを形成する第1加締め部31A及び第2加締め部31Bの曲面形状の設計が容易になる。
(第3実施形態)
図8は本発明の第3実施形態に係る端子圧着装置1Bを示している。
【0072】
この端子圧着装置1Bの分割上型2Bは、上記最終加締め形状の加締め部(曲面形状の加締め部)3Bを形成する第1加締め部31B、第2加締め部32B及び第3加締め部33Bをそれぞれ有する第1上型41B、第2上型42B及び第3上型43Bの3個に分割して形成されている。
【0073】
また、第1上型41Bと第2上型42Bの間、及び、第3上型43Bと第2上型42Bの間にそれぞれコイルばね50が配置されている。これら2つのコイルばね50の付勢力により、圧着工程の開始時に、第1上型41B及び第3上型43Bが第2上型42Bに対して下方へずらされるようになっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0074】
以上のように構成された第3実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。
○分割上型2Bを構成する上型の数が多くなることで、意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように、加締め部3Bの曲面形状の設計の自由度を拡大することができる。
(第4実施形態)
図9は本発明の第4実施形態に係る端子圧着装置1Cを示している。
【0075】
この端子圧着装置1Cは、上記第3実施形態において第2上型42Bをさらに2つに分割したものである。つまり、分割上型2Cは、上記最終加締め形状の加締め部3Cを形成する第1加締め部31C、第2加締め部32C、第3加締め部33C及び第4加締め部34Cをそれぞれ有する第1上型41C、第2上型42C、第3上型43C及び第4上型44Cの4個に分割して形成されている。
【0076】
また、第1上型41Bと第2上型42Bの間、及び、第3上型43Bと第2上型42Bの間にそれぞれコイルばね50が配置されている。これら2つのコイルばね50の付勢力により、圧着工程の開始時に、第1上型41B及び第3上型43Bが第2上型42Bに対して下方へずらされるようになっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0077】
以上のように構成された第4実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○分割上型2Cを構成する上型の数がより多くなることで、加締め部3Cの曲面形状の設計の自由度を上記第3実施形態よりもさらに拡大することができる。
(第5実施形態)
図10は本発明の第5実施形態に係る端子圧着装置1Dを示している。
【0078】
この端子圧着装置1Dは、図8に示す上記第3実施形態において、2つのコイルばね50に代えて、2つの板ばね51を用いたものである。板ばね51に代えて皿ばねを使用しても良い。
【0079】
本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第6実施形態)
図11は本発明の第6実施形態に係る端子圧着装置1Eを示している。
【0080】
この端子圧着装置1Eは、図8に示す上記第3実施形態において、2つのコイルばね50に代えて、ゴム52を用いたものである。
本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記第1実施形態では、説明を簡単にするために、端子圧着装置のうち、インシュレーションバレル部の圧着ユニットについて説明したが、本発明に係る端子圧着装置は、端子圧着装置のうち、電線の端部の導体に端子10のワイヤバレル部を圧着するワイヤバレル部の圧着ユニットにも同様に適用可能であることは言うまでもない。この圧着ユニットには、ワイヤアンビルとしての下型5と、ワイヤクリンパとしての分割上型2とが設けられている。
【0082】
・本発明は、上記インシュレーションバレル部の圧着ユニットと上記ワイヤバレル部の圧着ユニットを備えた端子圧着装置において、各圧着ユニットのそれぞれに、上記各実施形態で説明した端子圧着装置を適用した構成にも適用されることは言うまでもない。
【0083】
・上記実施形態では、上型を2乃至4個に分割して形成された分割上型を備えた端子圧着装置について説明したが、分割上型が5以上の上型からなる構成にも本発明は適用される。つまり、本発明は、加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に上型を分割して形成された分割上型を備えた端子圧着装置に広く適用される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1実施形態に係る端子圧着装置の概略構成を示す側面図。
【図2】同圧着装置において端子のバレル部の折り返し部に電線を配置した状態を示す断面図。
【図3】端子のバレル部が加締められて電線に圧着した状態を示す断面図。
【図4】(A)乃至(C)は図1に示す端子圧着装置による圧着工程を示す説明図。
【図5】(A)及び(B)は図4(C)に続く圧着工程を示す説明図。
【図6】第2実施形態に係る端子圧着装置の概略構成を示す側面図。
【図7】同圧着装置による圧着工程の開始時を示す説明図。
【図8】第3実施形態に係る端子圧着装置の主要部の概略構成を示す側面図。
【図9】第4実施形態に係る端子圧着装置の主要部の概略構成を示す側面図。
【図10】第5実施形態に係る端子圧着装置の主要部の概略構成を示す側面図。
【図11】第6実施形態に係る端子圧着装置の主要部の概略構成を示す側面図。
【図12】従来の端子圧着装置の概略構成を示す側面図。
【図13】同端子圧着装置の圧着工程終了状態を示す説明図。
【図14】同端子圧着装置よる加締めの過程を示す説明図。
【符号の説明】
【0085】
1,1A,1B,1C,1D,1E:端子圧着装置、 2,2A,2B,2C,2D,2E:分割上型、 4:連結棒、 5:下型、 10:端子、 11:バレル部、 11a:一端部、 11b:他端部、 12:折り返し部、 20:電線、 21:絶縁被覆、 30:係止ピン、 41,41A,41B,41C:第1上型、 41c,42c:摺動面、 41d,42d:切り欠き部、 42,42A,42B,42C:第2上型、 3,3A,3B,3C:加締め部、 31,31A,31B,31C:第1加締め部、 32,32A,32B,32C:第2加締め部、 50:コイルばね、 51:板ばね、 52:ゴム。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線の端部に端子のワイヤバレル部やインシュレーションバレル部を加締めて圧着する端子圧着装置及び端子圧着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電線の端部に圧着される端子(雌端子)は、雄端子が挿入される雌型接触子と、電線の導体に圧着されるワイヤバレル部と、電線の絶縁被覆に圧着されるインシュレーションバレル部とを有している。ワイヤバレル部とインシュレーションバレル部は、端子本体に上方が開いたV字状に切り起こされている。このような端子を電線の端部に圧着する端子圧着装置は、電線の端部の導体にワイヤバレル部を圧着するワイヤクリンパ及びワイヤアンビルと、電線の絶縁被覆にインシュレーションバレル部を圧着するインシュレーションクリンパ及びインシュレーションアンビルとを備えている。
【0003】
このような端子圧着装置における端子の圧着作業は、圧着位置に送られた端子のワイヤバレル部及びインシュレーションバレル部の各折り返し部に電線の導体及び絶縁被覆をそれぞれセットし、ワイヤクリンパをワイヤアンビル側へ下降させると共に、インシュレーションクリンパをインシュレーションアンビル側へ下降させることで行う。
【0004】
なお、以下の説明において、端子のワイヤバレル部及びインシュレーションバレル部を単にバレル部といい、ワイヤクリンパ及びインシュレーションクリンパを単にクリンパ或いは上型といい、また、ワイヤアンビル及びインシュレーションアンビルを単にアンビル或いは下型という。
【0005】
このようにして端子圧着装置により端子のバレル部を加締めて電線の端部に圧着する方法の一つとして、いわゆるオーバーラップ圧着方式が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。この圧着方式では、V字状に上方が開いたバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、バレル部をクリンパの曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する。
【0006】
特許文献1に記載の端子圧着装置では、図12に示すように、端子のバレル部101を加締めるクリンパ102の端縁部(加締め部)103の形状が、高さの異なる山を2つ連ねるように切り欠いた形状をなしている。すなわち、クリンパ102の加締め部103は、上死点の異なる2つの円弧103a,103bが連なる形状を有している。加締め部103の円弧103aによりバレル部101の一端部101a側が加締められると共に、円弧103bによりバレル部101の他端部101b側が加締められる。この端子圧着装置における端子の圧着動作は、図12に示すように電線100をバレル部101の折り返し部内に置いた状態で、クリンパ102をアンビル104側へ図12に示す位置から図13に示す位置まで下降させることでなされる。
【0007】
特許文献2に記載の端子圧着装置では、クリンパの加締め部はアンビル側から見て上方にと凸である一つの円弧形状であり、電線の端部を端子のバレル部の折り返し部内に置いた状態(同文献の図1(a)参照)で、バレル部の一端部がその他端部よりもアンビルからの高さが高くなるようにして、端子の圧着がなされる。
【特許文献1】特開平3−165478号公報
【特許文献2】特開平8−213142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記特許文献1に記載された端子圧着装置では、次のような問題点があった。
(1)円弧103a,103bの曲面形状(R形状)が非対称であるため、クリンパ102が図12に示す位置から下降していくと、バレル部101の一端部101aが円弧103aの曲面に当たってこの円弧103aによる加締めが開始された後、他端部101bが円弧103bの曲面に当たり始めてこの曲面103bによる加締めが開始される。そのため、バレル部101の一端部101a側の加締めが開始される際或いはその加締めが進む過程で、端子101に図14の矢印で示す方向の回転力が生じ、端子101がその矢印方向へ回転して傾いてしまう。その結果、バレル部101の一端部101a,他端部101bがそれぞれ円弧103a,103bにより加締められるタイミングや軌道が円弧103a,103bの各曲面形状を設定した際に意図したタイミングや軌道からずれてしまい、圧着不良が発生してしまう恐れがある。この圧着不良により、上記インシュレーションバレル部については電線の絶縁被覆との間で緩みが生じてしまい、また、上記ワイヤバレル部については電線の導体との電気的接続の不良が生じてしまう。
【0009】
(2)円弧103a及び103bの各曲面形状を変えてバレル部101の一端部101a及び他端部101bが加締められるタイミングや軌道を変えることによって、一端部101aと他端部101bが互いに重なって電線に圧着されるようにするための最終加締め形状を成立させていた。そのため、意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように円弧103a及び103bの各曲面形状を設計するのが非常に困難である。
【0010】
このような問題は、上記特許文献2に記載された端子圧着装置においても発生する恐れがある。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計を容易にした端子圧着装置及び端子圧着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る端子圧着装置は、下型と、下型に対して昇降自在の上型とを備え、端子のバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、前記バレル部を前記上型の曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する端子圧着装置において、前記加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に前記上型を分割して形成された分割上型と、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に配置した状態で前記第1上型及び第2上型を前記下型側へ変位させる圧着工程の開始時に、前記バレル部の一端部及び他端部が前記第1加締め部及び第2加締め部に同時に当たるように前記第1上型と第2上型を上下方向に相対的にずらすと共に、前記圧着工程の終了直前に、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻すことを特徴とする。
【0013】
この態様によると、圧着工程の開始時に、バレル部の一端部及び他端部が第1上型の第1加締め部及び第2上型の第2加締め部に同時に当たり、その後各加締め部の曲面形状にそれぞれ沿って誘導される。このため、圧着工程の間、端子に回転力が生じるのが抑制され、端子の姿勢が安定している状態でバレル部の加締めが開始され、その加締めの過程が進んでいく。これにより、圧着不良の発生が抑制される。
【0014】
また、圧着工程の終了直前に第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻すことにより第1加締め部と第2加締め部とが一致し、バレル部の一端部及び他端部が互いに重なって電線に圧着されるようにするための最終加締め形状が形成されるようにしている。このため、圧着工程の終了直前に、バレル部の一端部と他端部の電線への圧着タイミングをずらして、各端部の最終段階での加締めと、各端部の電線への圧着を順番に行い、上記オーバーラップ圧着方式による端子の圧着が非常に高い成功率で可能になる。これによっても、圧着不良の発生が抑制される。
【0015】
また、圧着工程の開始時における第1上型と第2上型の相対的なずれ量で、バレル部の一端部と他端部の加締めのタイミングを調整できるので、意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように加締め部の曲面形状(R形状)の設計が容易になる。
【0016】
従って、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計を容易にした端子圧着装置を得ることができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記圧着工程の開始時に前記第1上型と第2上型を相対的にずらす付勢手段と、前記圧着工程の終了直前に前記最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す復帰手段と、を備えることを特徴とする。
【0018】
この態様によると、従来の端子圧着装置において、上型として前記分割上型を用い、付勢手段と復帰手段を付加するという簡単な設計変更をするだけで、圧着不良の発生を抑制できると共に、加締め部の曲面形状の設計が容易な端子圧着装置を実現することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記復帰手段は、前記第1上型及び第2上型のうち、前記付勢手段の付勢力で下方へずらされた一方の上型と前記圧着工程の終了直前に係合し、前記一方の上型を前記付勢手段の付勢力に打ち勝って上方へ付勢する第2付勢手段を含むことを特徴とする。
【0020】
この態様によると、第2付勢手段が前記一方の上型と係合するタイミングを調整することで、圧着工程の終了直前における、バレル部の一端部と他端部の電線への圧着タイミングを変更することが可能になる。
【0021】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記第1上型と第2上型の各摺動面に形成された切り欠き部と、これら2つの切り欠き部に摺動自在に係合し、前記第1上型と第2上型を収容するホルダに固定された係止ピンとを有し、前記2つの切り欠き部のいずれか一方の上端部は、前記付勢手段により前記第1上型と第2上型とを相対的にずらした状態で係止ピンに係合していることを特徴とする。
【0022】
この態様によると、2つの切り欠き部のいずれか一方の上端部が係止ピンに係合することで、第1上型と第2上型の相対的な変位量が規制されるので、その変量により第1上型と第2上型の上下方向への相対的なずれ量を調整することができる。
【0023】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有し、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記最終加締め形状の加締め部が形成される際に前記円弧の上死点が高い一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする。
【0024】
この態様によると、前記最終加締め形状の加締め部が、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有する端子圧着装置において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計が容易になる。
【0025】
ここで、「円弧の上死点」とは、下型側から見て上方に凸の円弧をなす各点のうち下型からの高さの最も高い点をいう。
【0026】
本発明の他の態様に係る端子圧着装置は、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は前記下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状であり、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に置いた状態で、前記端子のバレル部の一端部はその他端部よりも前記下型からの高さが高い位置にあり、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記高さが前記バレル部の一端部より低い位置にある前記バレル部の他端部側を加締める一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする。
【0027】
この態様によると、最終加締め形状の加締め部が、下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状を有する端子圧着装置において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計が容易になる。
【0028】
本発明の第2の態様に係る端子圧着方法は、下型と、下型に対して昇降自在の上型とを備え、端子のバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、前記バレル部を前記上型の曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する端子圧着方法において、前記加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に前記上型を分割して形成された分割上型を使用し、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に配置した状態で前記第1上型及び第2上型を前記下型側へ変位させる圧着工程の開始時に、前記バレル部の一端部及び他端部が前記第1加締め部及び第2加締め部に同時に当たるように前記第1上型と第2上型を相対的にずらす工程と、前記第1上型と第2上型を相対的にずらした状態で、前記バレル部の一端部及び他端部を前記第1加締め部及び第2加締め部によりそれぞれ加締める工程と、前記圧着工程の終了直前に、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す工程と、を備えることを特徴とする。
【0029】
この態様によると、上述したように圧着不良の発生が抑制される。また、上記オーバーラップ圧着方式による端子の圧着が非常に高い成功率で可能になり、これによっても、圧着不良の発生が抑制される。意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように加締め部の曲面形状の設計が容易になる。従って、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計を容易にした端子圧着装置を得ることができる。
【0030】
本発明の他の態様に係る端子圧着方法は、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有し、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記最終加締め形状の加締め部が形成される際に前記円弧の上死点が高い一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする。
【0031】
この態様によると、最終加締め形状の加締め部が、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有する端子圧着装置において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部の曲面形状の設計が容易になる。
【0032】
本発明の第3の態様に係る端子圧着方法は、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は前記下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状であり、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に置いた状態で、前記端子のバレル部の一端部はその他端部よりも前記下型からの高さが高い位置にあり、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記高さが前記バレル部の一端部より低い位置にある前記バレル部の他端部側を加締める一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする。
【0033】
この態様によると、最終加締め形状の加締め部が、下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状を有する端子圧着装置において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部の曲面形状の設計が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の各実施形態に係る端子圧着装置及び端子圧着方法を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る端子圧着装置及び端子圧着方法を、図1乃至図5に基づいて説明する。なお、図4(A)乃至(C)及び図5(A)及び(B)は一連の端子圧着工程を順に示している。
【0035】
図1に示す端子圧着装置1は、下型5と、下型5に対して昇降自在の分割上型2とを備え、端子10のバレル部11の一端部11aと他端部11bが互いに重なるように(図3参照)、バレル部11を分割上型2の曲面形状の加締め部3により加締めて電線20の端部に圧着するようになっている。この電線20の端部は、前工程で電線端末から一定の長さにわたって絶縁被覆21が皮剥ぎされて複数の心線(導体)22が剥き出しになっている。
【0036】
なお、図1では、端子圧着装置1のうち、電線20の端部の絶縁被覆21に端子10のインシュレーションバレル部であるバレル部11を圧着するインシュレーションバレル部の圧着ユニットのみを示しており、ワイヤバレル部の圧着ユニットは図示を省略してある。インシュレーションバレル部の圧着ユニットには、インシュレーションアンビルとしての下型5と、インシュレーションクリンパとしての分割上型2とが設けられている。また、図示を省略したワイヤバレル部の圧着ユニットには、ワイヤアンビルとしての下型と、ワイヤクリンパとしての分割上型2とが設けられている。
【0037】
この端子圧着装置1の分割上型2は、バレル部11の一端部11aと他端部11bが互いに重なって電線に圧着されるようにするための最終加締め形状の加締め部(曲面形状の加締め部)3を形成する第1上型41及び第2上型42の2個に分割して形成されている。第1上型41及び第2上型42は、最終加締め形状の加締め部3を形成する第1加締め部31及び第2加締め部32をそれぞれ有している。
【0038】
また、端子圧着装置1は連結棒(プッシュロッド)4を備えており、この連結棒4により分割上型2を押し下げることにより、図4(A)乃至(B),図5(A)及び(B)の圧着工程が実行される。
【0039】
端子圧着装置1は、電線20の端部をバレル部11の折り返し部12内に配置した状態(図2参照)で、第1上型41及び第2上型42を下型5側へ変位させる圧着工程の開始時に、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2加締め部32に同時に当たるように、第1上型41と第2上型42を上下方向に相対的にずらすようになっている。
【0040】
端子圧着装置1は、圧着工程の終了直前に、第1加締め部31と第2加締め部32とが一致して図5(A)に最終加締め形状の加締め部3が形成されるように第1上型41と第2上型42の相対的なずれを元に戻すようになっている。
【0041】
端子圧着装置1は、図4(A)に示す圧着工程の開始時に第1上型41と第2上型42を相対的にずらす付勢手段としてのコイルばね50と、圧着工程の終了直前に前記最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す復帰手段と、を備えている。
【0042】
第1上型41は、第2上型42の上端面と対向する下端面を有する突出部41aを有し、この突出部41aにはその下端面に開口するばね収容部41bが形成されている。一方、第2上型42の上端部には、その上端面に開口するばね収容部42aが形成されている。このばね収容部42aと第1上型41側のばね収容部41bとの間に、コイルばね50が配置されている。このコイルばね50の付勢力により、圧着工程の開始時に、第2上型42が第1上型41に対して下方へずらされるようになっている(図1及び図4(A)参照)。
【0043】
前記復帰手段は、第1上型41及び第2上型42のうち、コイルばね50の付勢力で下方へずらされた一方の上型(本例では第2上型42)と圧着工程の終了直前に係合し、第2上型42をその付勢力に打ち勝って上方へ付勢する第2付勢手段としての第2コイルばね60を有している。
【0044】
この第2コイルばね60の下端は、下型5の側面に締結されて上方へ延びているステー70の上端部に固定されている。第2コイルばね60の上端は、小片61に固定されて自由端になっている。この小片61に係合可能な段差面42bが第2上型42に形成されている。分割上型2が図1に示す位置から下方へ変位する圧着工程の途中で、段差面42bが第2コイルばね60の小片61と係合すると、第2上型42が第2コイルばね60の付勢力により第1上型41に対して上方へ変位し、第1上型41と第2上型42の相対的なずれが元に戻されるようになっている。
【0045】
また、端子圧着装置1は、第1上型41と第2上型42の各摺動面41c、42cに臨むように形成された切り欠き部41d、42dと、これら2つの切り欠き部に摺動自在に係合し、第1上型41と第2上型42を収容する図示を省略したホルダに固定された係止ピン30とを有している。2つの切り欠き部41d、42dのいずれか一方の上端部(本例では切り欠き部42dの上端部)は、コイルばね50により第1上型41と第2上型42とを相対的に上下方向にずらした状態で係止ピン30に係合している。このように切り欠き部42dの上端部が係止ピン30に係合することで、第1上型41に対する第2上型42の下方への変位量が規制されるようになっている。
【0046】
また、第1加締め部41と第2加締め部32とが一致して形成される最終加締め形状の加締め部は、図5(A)に示すように、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有している。そして、圧着工程の開始時に、第1上型41及び第2上型42のうち、最終加締め形状の加締め部が形成される際に円弧の上死点が高い一方の上型(本例では第2上型42)を他方の上型(第1上型41)に対して下方へずらすようになっている。
【0047】
このように構成された端子圧着装置1による圧着工程を、図4(A)乃至(B),図5(A)及び(B)に基づいて説明する。
・図4(A)は分割上型2が上死点にある状態を示している。分割上型2は、連結棒4により押し下げられることにより、図4(A)に示す上死点から図5(B)に示す下死点まで下降して端子の圧着工程がなされる。分割上型2が上死点にある状態では、第2上型42は第1上型41に対してコイルばね50の付勢力により下方向へずらされている。また、この状態では、端子10のバレル部11の一端部11a及び他端部11bはそれぞれ第1加締め部31及び第2加締め部32に当たっていない。
【0048】
・図4(B)は、分割上型2の第1上型41及び第2上型42が一体となって図4(A)の上死点から押し下げられた状態で、圧着工程が開始される圧着工程の開始時(圧着序盤)の状態を示している。この圧着工程の開始時には、第2上型42が第1上型41に対してコイルばね50により下方向へずらされていることで、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2加締め部32に同時に当たっている。
【0049】
・分割上型2が図4(B)の位置から図4(C)の位置まで下降する間では、第1上型41及び第2上型42は共に下降しながらも第2コイルばね60の小片61が第2上型42の段差面42bと係合することで第2上型42が第1上型41に対して上昇する。このように分割上型2が図4(B)の位置(圧着序盤)から図4(C)の位置(圧着中盤)まで下降する間に、第1加締め部31及び第2加締め部32によるバレル部10の一端部11a及び他端部11bの加締めが進んでいく。
【0050】
このように、図4(B)に示す圧着工程の開始時に、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1上型41の第1加締め部31及び第2上型42の第2加締め部32に同時に当たる。その後、分割上型2が図4(B)の位置から図4(C)の位置まで下降する間で、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2上型42の曲面形状にそれぞれ沿って誘導されながら各端部11a,11bの加締めが開始され、これらの加締めが進んでいく。このため、圧着工程の間、端子10に上記従来技術のような回転力が生じるのが抑制され、端子10の姿勢が安定している状態でバレル部11が加締められることになる。
【0051】
・図5(A)は、分割上型2が図4(C)の位置からさらに下降した状態(圧着終盤)を示している。分割上型2が図4(C)の位置から図5(A)の位置まで下降する間に、第1加締め部31及び第2加締め部32によるバレル部11の一端部11a及び他端部11bの加締めがさらに進んでいる。
【0052】
図5(A)に示す状態では、第2上型42の上端面が第2コイルばね60の付勢力により第1上型41の突出部41aの下端面に当接することで、上記最終加締め形状の加締め部3が第1加締め部31及び第2加締め部32により形成されている。
・分割上型2が図5(A)に示す位置から図5(B)に示す下死点まで下降すると、圧着工程が終了する。分割上型2が図5(A)の位置から図5(B)の位置まで下降する間に、バレル部11の一端部11a側が他端部11bより下側に位置した状態で一端部11aと他端部11bが互いに重なって電線20の絶縁被覆21に圧着される。
【0053】
以上説明した端子圧着装置1を用いて実行される第1実施形態に係る端子圧着方法は、以下の工程を備えている。
・加締め部3を形成する第1加締め部31及び第2加締め部32をそれぞれ有する第1上型41及び第2上型42の2個に上型を分割して形成された分割上型2を使用する工程。
【0054】
・電線10の端部をバレル部11の折り返し部12内に配置した状態で第1上型41及び第2上型を下型5側へ変位させる圧着工程の開始時に、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1加締め部31及び第2加締め部32に同時に当たるように第1上型41と第2上型42を相対的にずらす工程。
【0055】
・第1上型41と第2上型42を相対的にずらした状態で、バレル部11の一端部11a及び他端部11bを第1加締め部31及び第2加締め部32によりそれぞれ加締める工程。
【0056】
・圧着工程の終了直前に、第1加締め部31と第2加締め部32とが一致して最終加締め形状の加締め部3が形成されるように第1上型41と第2上型42の相対的なずれを元に戻す工程。
【0057】
以上のように構成された第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○圧着工程の開始時に、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが第1上型41の第1加締め部31及び第2上型42の第2加締め部32に同時に当たり、その後各加締め部の曲面形状(R形状)にそれぞれ沿って誘導される。このため、圧着工程の間、端子10に回転力が生じるのが抑制され、端子10の姿勢が安定している状態でバレル部11の加締めが開始され、その加締めの過程が進んでいく。これにより、圧着不良の発生を抑制することができる。
【0058】
○圧着工程の終了直前に第1上型41と第2上型42の相対的なずれを元に戻すことにより第1加締め部31と第2加締め部32とが一致し、バレル部11の一端部11a及び他端部11bが互いに重なって電線20に圧着されるようにするための最終加締め形状が形成される。このため、圧着工程の終了直前に、バレル部11の一端部11aと他端部11bの電線10への圧着タイミングをずらして、各端部11a,11bの最終段階での加締めと、各端部11a,11bの電線20への圧着を順番に行い、上記オーバーラップ圧着方式による端子10の圧着が非常に高い成功率で可能になる。これによっても、圧着不良の発生を抑制することができる。
【0059】
○圧着工程の開始時における第1上型41と第2上型42の相対的なずれ量で、バレル部11の一端部11aと他端部11bの加締めのタイミングを調整できるので、意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように加締め部3の曲面形状(R形状)の設計が容易になる。
【0060】
○圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部の曲面形状の設計を容易にした端子圧着装置を得ることができる。
【0061】
○端子圧着装置1は、圧着工程の開始時に第1上型41と第2上型42を相対的にずらすコイルばね50と、圧着工程の終了直前に最終加締め形状の加締め部3が形成されるように第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す第2コイルばね60を備えている。これにより、従来の端子圧着装置において、上型として分割上型2を用い、コイルばね50と第2コイルばね60を付加するという簡単な設計変更をするだけで、圧着不良の発生を抑制できると共に、加締め部3の曲面形状の設計が容易な端子圧着装置1を実現することができる。
【0062】
○端子圧着装置1は、コイルばね50の付勢力で下方へずらされた第2上型42と圧着工程の終了直前に係合し、第2上型42をコイルばね50の付勢力に打ち勝って上方へ付勢する第2コイルばね60を備えている。これにより、第2コイルばね60が第2上型42と係合するタイミングを調整することで、圧着工程の終了直前における、バレル部11の一端部11aと他端部11bの電線20への圧着タイミングを変更することが可能になる。
【0063】
○切り欠き部42dの上端部が係止ピン30に係合することで、第1上型41に対する第2上型42の下方への変位量が規制されるので、その変量により第1上型と第2上型42の上下方向への相対的なずれ量を調整することができる。
【0064】
○最終加締め形状の加締め部3が、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有する端子圧着装置1において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部3を形成する第1加締め部31及び第2加締め部32の曲面形状の設計が容易になる。
【0065】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る端子圧着装置を、図6及び図7に基づいて説明する。図7は、上記第1実施形態で説明した図4(B)と同様に圧着工程の開始時の状態を示している。
【0066】
図6に示す端子圧着装置1Aは、第1上型41A及び第2上型42Aからなる分割上型2Aを有している。第1上型41Aの第1加締め部31Aと第2上型42Aの第2加締め部32Aとが一致して形成される最終加締め形状の加締め部3Aは下型5側から見て上方に凸である一つの円弧形状である。
【0067】
また、この端子圧着装置1Aでは、電線20の端部をバレル部11の折り返し部12内に置いた状態で、端子10のバレル部11の一端部11aはその他端部11bよりも下型5からの高さが高い位置にある。
【0068】
この端子圧着装置1Aでは、図7に示す圧着工程の開始時に、第1上型及び第2上型のうち、下型5からの高さがバレル部11の一端部11aより低い位置にあるバレル部11の他端部11b側を加締める一方の上型(本例では第2上型42A)を他方の上型(第1上型41A)に対して下方へずらすようにしている。
【0069】
その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0070】
この端子圧着装置1Aを用いて実行される第2実施形態に係る端子圧着方法は、上記第1実施形態に係る端子圧着方法と以下の工程において相違し、その他の構成は同様である。
・図7に示す圧着工程の開始時に、下型5からの高さがバレル部11の一端部11aより低い位置にあるバレル部11の他端部11b側を加締める第2上型42Aを他方の上型第1上型41Aに対して下方へずらす工程。
【0071】
以上のように構成された第2実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。
○最終加締め形状の加締め部3Aが、下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状を有する端子圧着装置1において、圧着不良の発生を抑制することができると共に、加締め部3Aを形成する第1加締め部31A及び第2加締め部31Bの曲面形状の設計が容易になる。
(第3実施形態)
図8は本発明の第3実施形態に係る端子圧着装置1Bを示している。
【0072】
この端子圧着装置1Bの分割上型2Bは、上記最終加締め形状の加締め部(曲面形状の加締め部)3Bを形成する第1加締め部31B、第2加締め部32B及び第3加締め部33Bをそれぞれ有する第1上型41B、第2上型42B及び第3上型43Bの3個に分割して形成されている。
【0073】
また、第1上型41Bと第2上型42Bの間、及び、第3上型43Bと第2上型42Bの間にそれぞれコイルばね50が配置されている。これら2つのコイルばね50の付勢力により、圧着工程の開始時に、第1上型41B及び第3上型43Bが第2上型42Bに対して下方へずらされるようになっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0074】
以上のように構成された第3実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。
○分割上型2Bを構成する上型の数が多くなることで、意図した通りの最終的な加締め形状が得られるように、加締め部3Bの曲面形状の設計の自由度を拡大することができる。
(第4実施形態)
図9は本発明の第4実施形態に係る端子圧着装置1Cを示している。
【0075】
この端子圧着装置1Cは、上記第3実施形態において第2上型42Bをさらに2つに分割したものである。つまり、分割上型2Cは、上記最終加締め形状の加締め部3Cを形成する第1加締め部31C、第2加締め部32C、第3加締め部33C及び第4加締め部34Cをそれぞれ有する第1上型41C、第2上型42C、第3上型43C及び第4上型44Cの4個に分割して形成されている。
【0076】
また、第1上型41Bと第2上型42Bの間、及び、第3上型43Bと第2上型42Bの間にそれぞれコイルばね50が配置されている。これら2つのコイルばね50の付勢力により、圧着工程の開始時に、第1上型41B及び第3上型43Bが第2上型42Bに対して下方へずらされるようになっている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0077】
以上のように構成された第4実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○分割上型2Cを構成する上型の数がより多くなることで、加締め部3Cの曲面形状の設計の自由度を上記第3実施形態よりもさらに拡大することができる。
(第5実施形態)
図10は本発明の第5実施形態に係る端子圧着装置1Dを示している。
【0078】
この端子圧着装置1Dは、図8に示す上記第3実施形態において、2つのコイルばね50に代えて、2つの板ばね51を用いたものである。板ばね51に代えて皿ばねを使用しても良い。
【0079】
本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(第6実施形態)
図11は本発明の第6実施形態に係る端子圧着装置1Eを示している。
【0080】
この端子圧着装置1Eは、図8に示す上記第3実施形態において、2つのコイルばね50に代えて、ゴム52を用いたものである。
本実施形態によっても、上記第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記第1実施形態では、説明を簡単にするために、端子圧着装置のうち、インシュレーションバレル部の圧着ユニットについて説明したが、本発明に係る端子圧着装置は、端子圧着装置のうち、電線の端部の導体に端子10のワイヤバレル部を圧着するワイヤバレル部の圧着ユニットにも同様に適用可能であることは言うまでもない。この圧着ユニットには、ワイヤアンビルとしての下型5と、ワイヤクリンパとしての分割上型2とが設けられている。
【0082】
・本発明は、上記インシュレーションバレル部の圧着ユニットと上記ワイヤバレル部の圧着ユニットを備えた端子圧着装置において、各圧着ユニットのそれぞれに、上記各実施形態で説明した端子圧着装置を適用した構成にも適用されることは言うまでもない。
【0083】
・上記実施形態では、上型を2乃至4個に分割して形成された分割上型を備えた端子圧着装置について説明したが、分割上型が5以上の上型からなる構成にも本発明は適用される。つまり、本発明は、加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に上型を分割して形成された分割上型を備えた端子圧着装置に広く適用される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1実施形態に係る端子圧着装置の概略構成を示す側面図。
【図2】同圧着装置において端子のバレル部の折り返し部に電線を配置した状態を示す断面図。
【図3】端子のバレル部が加締められて電線に圧着した状態を示す断面図。
【図4】(A)乃至(C)は図1に示す端子圧着装置による圧着工程を示す説明図。
【図5】(A)及び(B)は図4(C)に続く圧着工程を示す説明図。
【図6】第2実施形態に係る端子圧着装置の概略構成を示す側面図。
【図7】同圧着装置による圧着工程の開始時を示す説明図。
【図8】第3実施形態に係る端子圧着装置の主要部の概略構成を示す側面図。
【図9】第4実施形態に係る端子圧着装置の主要部の概略構成を示す側面図。
【図10】第5実施形態に係る端子圧着装置の主要部の概略構成を示す側面図。
【図11】第6実施形態に係る端子圧着装置の主要部の概略構成を示す側面図。
【図12】従来の端子圧着装置の概略構成を示す側面図。
【図13】同端子圧着装置の圧着工程終了状態を示す説明図。
【図14】同端子圧着装置よる加締めの過程を示す説明図。
【符号の説明】
【0085】
1,1A,1B,1C,1D,1E:端子圧着装置、 2,2A,2B,2C,2D,2E:分割上型、 4:連結棒、 5:下型、 10:端子、 11:バレル部、 11a:一端部、 11b:他端部、 12:折り返し部、 20:電線、 21:絶縁被覆、 30:係止ピン、 41,41A,41B,41C:第1上型、 41c,42c:摺動面、 41d,42d:切り欠き部、 42,42A,42B,42C:第2上型、 3,3A,3B,3C:加締め部、 31,31A,31B,31C:第1加締め部、 32,32A,32B,32C:第2加締め部、 50:コイルばね、 51:板ばね、 52:ゴム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と、下型に対して昇降自在の上型とを備え、端子のバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、前記バレル部を前記上型の曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する端子圧着装置において、
前記加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に前記上型を分割して形成された分割上型と、
前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に配置した状態で前記第1上型及び第2上型を前記下型側へ変位させる圧着工程の開始時に、前記バレル部の一端部及び他端部が前記第1加締め部及び第2加締め部に同時に当たるように前記第1上型と第2上型を上下方向に相対的にずらすと共に、
前記圧着工程の終了直前に、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻すことを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
前記圧着工程の開始時に前記第1上型と第2上型を相対的にずらす付勢手段と、前記圧着工程の終了直前に前記最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す復帰手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
前記復帰手段は、前記第1上型及び第2上型のうち、前記付勢手段の付勢力で下方へずらされた一方の上型と前記圧着工程の終了直前に係合し、前記一方の上型を前記付勢手段の付勢力に打ち勝って上方へ付勢する第2付勢手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の端子圧着装置。
【請求項4】
前記第1上型と第2上型の各摺動面に形成された切り欠き部と、これら2つの切り欠き部に摺動自在に係合し、前記第1上型と第2上型を収容するホルダに固定された係止ピンとを有し、前記2つの切り欠き部のいずれか一方の上端部は、前記付勢手段により前記第1上型と第2上型とを相対的にずらした状態で係止ピンに係合していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の端子圧着装置。
【請求項5】
前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有し、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記最終加締め形状の加締め部が形成される際に前記円弧の上死点が高い一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の端子圧着装置。
【請求項6】
前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は前記下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状であり、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に置いた状態で、前記端子のバレル部の一端部はその他端部よりも前記下型からの高さが高い位置にあり、
圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記高さが前記バレル部の一端部より低い位置にある前記バレル部の他端部側を加締める一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の端子圧装置。
【請求項7】
下型と、下型に対して昇降自在の上型とを備え、端子のバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、前記バレル部を前記上型の曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する端子圧着方法において、
前記加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に前記上型を分割して形成された分割上型を使用し、
前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に配置した状態で前記第1上型及び第2上型を前記下型側へ変位させる圧着工程の開始時に、前記バレル部の一端部及び他端部が前記第1加締め部及び第2加締め部に同時に当たるように前記第1上型と第2上型を相対的にずらす工程と、
前記第1上型と第2上型を相対的にずらした状態で、前記バレル部の一端部及び他端部を前記第1加締め部及び第2加締め部によりそれぞれ加締める工程と、
前記圧着工程の終了直前に、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す工程と、を備えることを特徴とする端子圧着方法。
【請求項8】
前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有し、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記最終加締め形状の加締め部が形成される際に前記円弧の上死点が高い一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする請求項7に記載の端子圧着方法。
【請求項9】
前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は前記下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状であり、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に置いた状態で、前記端子のバレル部の一端部はその他端部よりも前記下型からの高さが高い位置にあり、
圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記高さが前記バレル部の一端部より低い位置にある前記バレル部の他端部側を加締める一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする請求項7に記載の端子圧着方法。
【請求項1】
下型と、下型に対して昇降自在の上型とを備え、端子のバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、前記バレル部を前記上型の曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する端子圧着装置において、
前記加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に前記上型を分割して形成された分割上型と、
前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に配置した状態で前記第1上型及び第2上型を前記下型側へ変位させる圧着工程の開始時に、前記バレル部の一端部及び他端部が前記第1加締め部及び第2加締め部に同時に当たるように前記第1上型と第2上型を上下方向に相対的にずらすと共に、
前記圧着工程の終了直前に、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻すことを特徴とする端子圧着装置。
【請求項2】
前記圧着工程の開始時に前記第1上型と第2上型を相対的にずらす付勢手段と、前記圧着工程の終了直前に前記最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す復帰手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の端子圧着装置。
【請求項3】
前記復帰手段は、前記第1上型及び第2上型のうち、前記付勢手段の付勢力で下方へずらされた一方の上型と前記圧着工程の終了直前に係合し、前記一方の上型を前記付勢手段の付勢力に打ち勝って上方へ付勢する第2付勢手段を含むことを特徴とする請求項2に記載の端子圧着装置。
【請求項4】
前記第1上型と第2上型の各摺動面に形成された切り欠き部と、これら2つの切り欠き部に摺動自在に係合し、前記第1上型と第2上型を収容するホルダに固定された係止ピンとを有し、前記2つの切り欠き部のいずれか一方の上端部は、前記付勢手段により前記第1上型と第2上型とを相対的にずらした状態で係止ピンに係合していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の端子圧着装置。
【請求項5】
前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有し、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記最終加締め形状の加締め部が形成される際に前記円弧の上死点が高い一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の端子圧着装置。
【請求項6】
前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は前記下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状であり、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に置いた状態で、前記端子のバレル部の一端部はその他端部よりも前記下型からの高さが高い位置にあり、
圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記高さが前記バレル部の一端部より低い位置にある前記バレル部の他端部側を加締める一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の端子圧装置。
【請求項7】
下型と、下型に対して昇降自在の上型とを備え、端子のバレル部の一端部と他端部が互いに重なるように、前記バレル部を前記上型の曲面形状の加締め部により加締めて電線の端部に圧着する端子圧着方法において、
前記加締め部を形成する第1加締め部及び第2加締め部をそれぞれ有する第1上型及び第2上型を含む複数個に前記上型を分割して形成された分割上型を使用し、
前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に配置した状態で前記第1上型及び第2上型を前記下型側へ変位させる圧着工程の開始時に、前記バレル部の一端部及び他端部が前記第1加締め部及び第2加締め部に同時に当たるように前記第1上型と第2上型を相対的にずらす工程と、
前記第1上型と第2上型を相対的にずらした状態で、前記バレル部の一端部及び他端部を前記第1加締め部及び第2加締め部によりそれぞれ加締める工程と、
前記圧着工程の終了直前に、前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して最終加締め形状の加締め部が形成されるように前記第1上型と第2上型の相対的なずれを元に戻す工程と、を備えることを特徴とする端子圧着方法。
【請求項8】
前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は、上死点の異なる2つの円弧が連なる形状を有し、圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記最終加締め形状の加締め部が形成される際に前記円弧の上死点が高い一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする請求項7に記載の端子圧着方法。
【請求項9】
前記第1加締め部と前記第2加締め部とが一致して形成される前記最終加締め形状の加締め部は前記下型側から見て上方に凸である一つの円弧形状であり、前記電線の端部を前記バレル部の折り返し部内に置いた状態で、前記端子のバレル部の一端部はその他端部よりも前記下型からの高さが高い位置にあり、
圧着工程の開始時に、前記第1上型及び第2上型のうち、前記高さが前記バレル部の一端部より低い位置にある前記バレル部の他端部側を加締める一方の上型を他方の上型に対して下方へずらすことを特徴とする請求項7に記載の端子圧着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−41410(P2008−41410A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213685(P2006−213685)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]