説明

端末キャップ及びこの端末キャップの取り外し方法

【課題】異なる長さの露出した充電部を覆い隠すことのできる端末キャップ及びこの端末キャップの取り外し方法を提供することを課題とする。
【解決手段】電線の端末を嵌入可能に構成されたキャップ本体2と、該キャップ本体2を端末が挿入された電線に固定するための固定手段3とを備え、該固定手段3がキャップ本体2に取り付けられた端末キャップ1であって、前記キャップ本体2は、電線の端末を嵌入可能に構成されるとともに、嵌入された端末を覆い隠すべく先端部が閉塞された内筒部20と、該内筒部20をスライド移動可能に内装する外筒部21とを備え、前記内筒部20は、外筒部21に対して先端部から進出可能に構成され、前記キャップ本体2は、内筒部20の外筒部21に対する進出量を変化させることで伸縮可能に構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断された電線の端末に取り付けられる端末キャップ及びこの端末キャップの取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線を切断し、切断箇所よりも負荷側を停電させた状態で各種作業を行なうことがある。具体的には、電線の張替を行うために、引き留めクランプ間に掛け渡された縁線が切断されることがあり、また、変圧器やカットアウト等の修理を行うために、電線から分岐された引き下げ線が切断されることがある。
【0003】
切断された電線は、作業が完了すれば、端末同士をスリーブ等を介して電気的に接続することになるため、予め、端末の被覆を剥いて芯線が露出した状態にしておくことがある。そうすると、切断された電線のうち電源側に位置するものは、露出した状態の芯線が充電状態のままとなる。
【0004】
従って、切断された電線は、そのままでは、端末における露出した充電部が作業者に接触して感電事故を引き起こしたり、周辺の設置物に接触して短絡事故や地絡事故を引き起こしたりすることがある。
【0005】
そこで、切断された電線の端末における露出した充電部を覆い隠して絶縁を図るための端末キャップが提供されている。かかる端末キャップには、電線の端末を嵌入可能に構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。該端末キャップは、端末が嵌入された電線に強固に固定されるため、端末が嵌入された電線から容易に抜け落ちることを防ぐことができる。
【0006】
また、上記の端末キャップと異なる種類の端末キャップとしては、電線の端末を挿入可能に構成されたキャップ本体と、該キャップ本体を端末が挿入された電線に固定するための固定手段とを備えているものも提供されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−233666号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】間接活線用端末キャップ、[online]、[平成22年12月13日検索]、インターネット<URL:http://www.daito-d.co.jp/Products/ds#005.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、切断された電線の端末は、被覆を剥いて芯線が露出した状態にされる。そうすると、露出した充電部は、その長さ(端末の軸芯方向における長さ)が、被覆を剥く量(被覆を剥く長さ)によって異なることになる。さらに言えば、被覆を剥いた芯線に予めスリーブを取り付けておく場合の、このスリーブの長さによっても露出した充電部の長さが変化することになる。
【0010】
そのため、作業者は、種々の長さの端末キャップを準備しておく必要があり、また、作業を行うにあたって、その中から適した長さの端末キャップを選定する必要があった。
【0011】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、異なる長さの露出した充電部を覆い隠すことのできる端末キャップ及びこの端末キャップの取り外し方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る端末キャップは、電線の端末を嵌入可能に構成されたキャップ本体と、該キャップ本体を端末が挿入された電線に固定するための固定手段とを備え、該固定手段がキャップ本体に取り付けられた端末キャップであって、前記キャップ本体は、電線の端末を嵌入可能に構成されるとともに、嵌入された端末を覆い隠すべく先端部が閉塞された内筒部と、該内筒部をスライド移動可能に内装する外筒部とを備え、前記内筒部は、外筒部に対して先端部から進出可能に構成され、前記キャップ本体は、内筒部の外筒部に対する進出量を変化させることで伸縮可能に構成されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成の端末キャップによれば、外筒部が内筒部をスライド移動可能に内装し、内筒部が外筒部に対して先端部から進出可能に構成されている。すなわち、端末キャップは、キャップ本体が外筒部と内筒部とを相対的にスライドすることで伸縮可能に構成されており、キャップ本体の長さを変化させることができる。
【0014】
また、端末キャップは、内筒部に電線の端末が嵌入されるため、内筒部が電線の端末に固定されることになる。さらに、端末キャップは、外筒部に取り付けられた固定手段が電線に固定されるため、外筒部が電線に固定された状態になる。これにより、端末キャップは、内筒部と外筒部とが電線に固定された状態になるため、伸縮する方向における長さを適宜調整した状態を維持することができる。
【0015】
本発明に係る別の端末キャップは、電線の端末を嵌入可能に構成されたキャップ本体と、該キャップ本体を端末が挿入された電線に固定するための固定手段とを備え、該固定手段がキャップ本体に取り付けられた端末キャップであって、前記キャップ本体は、電線の端末を嵌入可能に構成されるとともに、嵌入された端末を覆い隠すべく先端部が閉塞された内筒部と、蛇腹状に形成された外筒部とを備え、前記内筒部は、基端部側が外筒部の先端部側に固定され、前記キャップ本体は、外筒部を伸縮させることで伸縮可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
上記構成の端末キャップによれば、外筒部が蛇腹状に形成されているため、該外筒部を伸縮させることでキャップ本体の長さを変化させることができる。また、端末キャップは、外筒部を湾曲させることができるため、端末が湾曲した状態であっても容易に取り付けることができる。
【0017】
さらに、本発明の一態様として、前記固定手段は、前記内筒部に端末が挿入された電線を把持するための一対の第一把持片と、該第一把持片のそれぞれ先端部に連設された第二把持片と、前記一対の第一把持片のそれぞれ基端部に連設された操作片とを備え、前記一対の第一把持片のそれぞれは、軸部材を介して相互に回動可能に連結されるとともに、付勢手段によって先端部側同士が互いに近接する方向に付勢され、前記一対の操作片を互いに近接する方向に移動させることで該先端部側同士が互いに相反する方向に移動する一方、前記一対の操作片を互いに相反する方向に移動させることで該先端部側同士が互いに近接する方向に移動するように構成されていてもよい。
【0018】
上記構成の端末キャップによれば、操作片同士を互いに近接する方向に移動させることで第一把持片の先端部側同士を離反させることができ、操作片同士を離反する方向に移動させることで第一把持片の先端部側同士を近接させることができる。また、端末キャップは、第一把持片のそれぞれ先端部に第二把持片が連設されているため、第一把持片の先端部の動きに連動して第二把持片も動くことになる。
【0019】
従って、端末キャップは、第一把持片で内筒部に端末が嵌入された電線を把持するとともに、第二把持片で電線の周辺に配置された設置物を把持することができる。これにより、端末キャップは、作業に適した位置に移動させた状態を維持することができる。
【0020】
また、電線の端末に取り付けられた上記何れかの端末キャップの取外し方法であって、固定手段の電線に対する固定を解除し、該固定手段を内筒部の先端部側に向けて移動させた後、その位置で再度固定手段を電線に固定し、この状態で内筒部を電線の端末から引き抜き、しかる後、固定手段の電線に対する固定を再び解除し、端末キャップを電線から取り外すことを特徴とする。
【0021】
上記構成の端末キャップの取り外し方法によれば、外筒部が電線に固定された状態で内筒部を引き抜くことになるため、内筒部が電線の端末から引き抜かれるとともに外筒部も電線から抜けることを防ぐことができる。従って、この方法によれば、内筒部を取り外すことに伴って作業者にとって不安定な状況が発生することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明に係る端末キャップ及びこの端末キャップの取り外し方法によれば、異なる長さの露出した充電部を覆い隠すことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る端末キャップを示す図であって、(a)は、端末キャップの正面図を示し、(b)は、キャップ本体の正面断面図を示す。
【図2】同実施形態に係る固定手段の側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る端末キャップが電線の端末に取り付けられた状態を説明する図であって、(a)は、キャップ本体が最も縮められた状態を示し、(b)は、内筒部の一部を外筒部から引き出すことで、キャップ本体が伸ばされた状態を示し、(c)は、キャップ本体が最も伸ばされた状態を示す。
【図4】同実施形態に係る端末キャップの取り外し方法を説明する図であって、(a)は、キャップ本体が最も伸ばされた状態で電線の端末に取り付けられた状態を示し、(b)は、外筒部を内筒部の基端部側から先端部側に向けた方向に移動させた状態を示し、(c)は、内筒部を電線の端末から引き抜いた状態を示し、(d)は、端末キャップを電線の端末から完全に取り外した状態を示す。
【図5】本発明の第二の実施形態に係る端末キャップを示す図であって、(a)は、端末キャップの正面図を示し、(b)は、内筒部の正面図を示し、(c)は、キャップ本体の正面断面図を示す。
【図6】同実施形態に係る固定手段の側面図を示す。
【図7】本発明の第三の実施形態に係る端末キャップを示す図であって、(a)は、端末キャップの正面図を示し、(b)は、キャップ本体の正面断面図を示す。
【図8】同実施形態に係る端末キャップが電線の端末に取り付けられた状態を説明する図であって、(a)は、キャップ本体が最も縮められた状態を示し、(b)は、外筒部を伸ばすことで、キャップ本体が伸ばされた状態を示し、(c)は、キャップ本体が最も伸ばされた状態を示す。
【図9】同実施形態に係る端末キャップの取り外し方法を説明する図であって、(a)は、外筒部が最も伸ばされた状態で電線の端末に取り付けられた状態を示し、(b)は、外筒部を内筒部の基端部側から先端部側に向けた方向に縮めた状態を示し、(c)は、内筒部を電線の端末から引き抜いた状態を示し、(d)は、端末キャップを電線の端末から完全に取り外した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第一の実施形態に係る端末キャップについて、添付図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本実施形態に係る端末キャップは、切断された電線の露出した充電部を覆い隠して絶縁を図るためのものである。具体的に説明すると、前記端末キャップは、図1(a)に示すように、電線の端末を嵌入可能に構成されたキャップ本体2と、該キャップ本体2を端末が挿入された電線に固定するための固定手段3とを備えている。
【0026】
そして、前記キャップ本体2は、電線の端末を嵌入可能に構成された内筒部20と、該内筒部をスライド移動可能に内装する外筒部21とを備えている。
【0027】
前記内筒部20は、図1(b)に示すように、一方向に長手をなして形成された内筒部本体200を備えている。該内筒部本体200は、先端部が閉塞されており、内部に電線の端末を嵌入可能な嵌入孔201が穿設されている。そして、該嵌入孔201は、テーパー状に形成されており、基端部側から先端部側に向けて径が小さくなるようになっている。
【0028】
また、本実施形態に係る内筒部20は、前記内筒部本体200の基端部側の側面に設けられた一対の突起部202a,202bと、前記内筒部本体200の基端部に一体的に設けられた延設部203とを備えている。前記突起部202a,202bは、後述するガイド溝211a,211bに嵌め合わされ、ガイド溝211a,211bの形状に沿って移動可能に構成されている。本実施形態では、突起部202a,202bが一対設けられており、該突起部202a,202bのそれぞれが嵌入孔201の中心線を対称軸として互いに相反する位置に設けられている。
【0029】
前記延設部203は、円筒形状に形成されており、内周面によって画定された貫通孔204が前記嵌入孔201の基端部側と連通するように構成されている。さらに、前記内筒部20は、スライド移動に伴って、先端部側及び基端部側が外筒部21から進出可能に構成されている。すなわち、前記内筒部20は、スライド移動に伴って、内筒部本体200及び延設部203が外筒部から進出可能に構成されている。
【0030】
前記外筒部21は、円筒状に形成された外筒部本体210と、該外筒部本体210の内周面に形成された二条のガイド溝211a,211bとを備えている。さらに、本実施形態に係る外筒部21は、側面における基端部側に、前記固定手段3を取り付けるための取付部材212が設けられている。なお、取付部材212は、外筒部21と一体であっても別体であってもよい。
【0031】
前記外筒部本体210は、内周が前記外筒部本体210の外周とほぼ同じ形状に形成されている。本実施形態に係るガイド溝211a,211bは、外筒部本体210の長手方向に沿って形成されている。また、本実施形態に係る前記ガイド溝211a,211bは、前記突起部202a,202bに合わせて一対設けられるとともに、外筒部本体210の内周面が確定する空間の中心線を対称軸として互いに相反する位置に設けられている。
【0032】
そして、前記固定手段3は、図2に示すように、前記外筒部21の基端部に連設され、内筒部20に端末を挿入した電線Lを把持するとともに、電線Lの周辺に配置された設置物(電線Lのうち(例えばピン碍子や耐張碍子によって)固定されていて動かない箇所や、電線Lとは別の電線や、腕金等)を把持することができるように構成されている。具体的に説明すると、前記固定手段3は、前記内筒部20に端末が挿入された電線Lを把持するための一対の第一把持片30a,30bと、該第一把持片30a,30bのそれぞれ先端部に連設された一対の第二把持片31a,31bと、前記第一把持片30a,30bのそれぞれ基端部に連設された一対の操作片32a,32bとを備えている。また、前記第一把持片30a,30bのそれぞれは、外筒部21の取付部材212に一端部側が挿入される軸部材33を介して相互に回動可能に連結されるとともに、付勢手段34によって先端部側同士が互いに近接する方向に付勢されている。
【0033】
前記第一把持片30a,30bは、一方向に長手をなして形成された一対の第一把持片本体300a,300bを備え、該第一把持片本体300a,300b同士が対向するように配置されている。そして、第一把持片本体300a,300bのそれぞれは、互いに対向する面に凹状に設けられ、電線(内筒部に端末を挿入した電線)Lを把持可能な第一把持部301a,301bが設けられている。
【0034】
そして、前記第二把持片31a,31bは、一方向に長手をなして形成され、基端部が前記第一把持片30a,30bの先端部に一体的に連設されている。そして、前記第二把持片31a,31bは、一方向に長手をなして形成された一対の第二把持片本体310a,310bを備え、該第二把持片本体310a,310b同士が対向するように配置されている。
【0035】
また、第二把持片本体310a,310bのそれぞれは、互いに対向する面に凹状に形成され、電線Lの周辺にある設置物を把持可能に構成されている。
【0036】
前記操作片32a,32bは、一方向に長手をなして形成されており、先端部が前記第一把持片30a,30bの基端部に角度をつけて一体的に連設されている。さらに、前記操作片32a,32bは、それぞれの基端部側を互いに近接する方向に移動させることで前記第一把持片30a,30bの先端部側及び第二把持片31a,31b同士を互いに相反する方向(離間する方向)に移動させることができるように構成されている。また、前記操作片32a,32bは、それぞれの基端部側を相反する方向(離間する方向)に移動させることで前記第一把持片30a,30bの先端部側及び第二把持片31a,31bを近接する方向に移動させることができるように構成されている。
【0037】
本実施形態に係る端末キャップ1の説明は、以上であり、露出した端末の充電部に取り付けられた本実施形態に係る端末キャップ1の取り外し方法について説明する。なお、本実施形態に係る端末キャップ1は、切断されただけの端末や、被覆が剥かれることによって芯線が露出した状態になっている端末や、該芯線にスリーブが取り付けられた端末等に取り付けられるが、本実施形態では、被覆が剥かれることによって芯線が露出した状態になっている端末に対して端末キャップ1を取り付けることを前提として説明する。
【0038】
前記端末は、作業の都度、被覆が剥かれる度合いが異なるため、芯線の露出する軸心方向における長さが異なる。これにより、本実施形態に係る端末キャップ1は、キャップ本体2の長さが露出した芯線の長さに応じて調整された後に、端末に取り付けられる。
【0039】
具体的に説明すると、前記端末キャップ1は、図3(a)に示すように、キャップ本体2が最も縮められた状態で、切断された電線Lの端末(芯線Cが露出した状態の端末)に取り付けられることがある。また、前記端末キャップ1は、図3(b)に示すように、内筒部の一部を外筒部から引き出すことによって、キャップ本体2が伸ばされた状態で前記端末に取り付けられることもある。さらには、前記端末キャップ1は、図3(c)に示すように、キャップ本体2が最も伸ばされた状態で前記端末に取り付けられることもある。
【0040】
そして、図4(a)に示すように、キャップ本体2が最も伸びた状態で前記端末に取り付けられた端末キャップ1の取り外し方について説明すると、まず、前記操作片32a,32bのそれぞれの基端部側を絶縁ヤットコ等の絶縁遠隔操作具で互いに近接させることで第一把持片30a,30bのそれぞれの先端部側を離間させて、電線Lに対する固定(把持)を解除する。このとき、第二把持片31a,31bで前記設置物を把持している場合は、第二把持片31a,31bの設置物に対する固定(把持)も解除される。
【0041】
上述のように、キャップ本体2が最も伸びた状態になっていると、前記突起部202a,202bがガイド溝211a,211bの先端部側に位置した状態になっているため、内筒部20を引き抜き方向(前記内筒部の基端部側から先端部側に向かう方向)に向けて移動させることができない。そのため、第一把持片30a,30bの電線Lに対する固定(第二把持片1a,31bの設置物に対する固定)を解除した後に、図4(b)に示すように、固定手段3を前記引き抜き方向に向けて移動させる。すなわち、前記外筒部21を前記引き抜き方向に向けて移動させることにより、内筒部20を引き抜き方向に向けて移動可能な状態にする。しかる後に、再度第一把持片30a,30bで電線Lを把持する。このとき、第二把持片31a,31bについても設置物を把持させてもよい。
【0042】
そして、内筒部20の先端部における外筒部21から進出した部分を掴み、該内筒部20に対して引き抜き方向に働く力を加えることによって、図4(c)に示すように、内筒部20を芯線Cから取り外す。
【0043】
しかる後に、固定手段3の電線に対する固定を再び解除し、端末キャップ1を引き抜き方向に向けて移動させることで、図4(d)に示すように、端末キャップ1を電線L及び芯線Cから完全に取り外す。
【0044】
以上のように、本実施形態に係る端末キャップ1によれば、キャップ本体2の長さを変化させることができるため、異なる長さの芯線C(露出した充電部)を覆い隠すことができるという優れた効果を奏し得る。
【0045】
また、本実施形態に係る端末キャップ1の取り外し方法によれば、外筒部21が固定された状態で内筒部20を引き抜くため、端末キャップ1が突然電線Lから抜けることによって、作業者が不安定な状態になることを防ぐことができる。
【0046】
次に、本発明の第二の実施形態に係る端末キャップ1’について説明する。なお、本実施形態に係る端末キャップ1’は、上記第一の実施形態と略同等の構成を有しているため、同一の構成については、同一符号、及び同一名称を付して説明を割愛し、第一の実施形態と相違する構成(内筒部20’、固定手段3’)のみを説明する。
【0047】
本実施形態に係る内筒部20’も、図5(a)に示すように、外筒部21にスライド移動可能に内装されている。そして、前記内筒部20’は、図5(b)及び図5(c)に示すように、延設部203に一対の挿通孔205a,205bが穿設されている。該挿通孔205a,205bは、後述する第一上側把持部301a’及び第一下側把持部301b’を挿通するためのものであり、それぞれ延設部203の中心線を対称軸として、相反する位置に穿設されている。
【0048】
本実施形態に係る固定手段3’は、図6(a)に示すように、前記外筒部21の基端部に連設され、内筒部20’に端末を挿入した電線Lを把持するとともに、電線Lの周辺に配置された設置物を把持することができる。具体的に説明すると、前記固定手段3’は、前記内筒部に端末が挿入された電線Lを把持するための一対の第一把持片30a,30bと、該第一把持片30a,30bのそれぞれ先端部に連設された一対の第二把持片31a,31bと、前記第一把持片30a,30bのそれぞれ基端部に連設された操作片32a,32bとを備えている。さらに、前記一対の第一把持片31a,31bのそれぞれは、外筒部21の取付部材212に一端部側が挿入される軸部材33を介して相互に回動可能に連結されるとともに、付勢手段34によって先端部側同士が互いに近接する方向に付勢されている。
【0049】
前記第一把持片30a,30bは、一方向に長手をなして形成された一対の第一把持片本体300a,300bを備え、該第一把持片本体300a,300b同士が対向するように配置されている。そして、第一把持片本体300a,300b,のそれぞれは、互いに対向する面に電線(内筒部に端末を挿入した電線)Lを把持可能な第一把持部301a’ ,301b’が設けられている。本実施形態では、一方の第一把持部(第一上側把持部)301a’が対面する他方の把持部に向けて突出するように形成されている。そして、他方の第一把持部(第一下側把持部)301b’は、第一上側把持部301a’が突出する方向に向けて凹状に形成されている。さらに、本実施形態に係る固定手段3’は、前記第一上側把持部301a’及び第一下側把持部301b’が前記挿通孔205a,205bに挿通されるように構成されている。
【0050】
そして、前記第二把持片31a,31bは、一方向に長手をなして形成され、基端部が前記第一把持片30a,30bの先端部に一体的に連設されている。そして、該第二把持片本体310a,310bのそれぞれは、互いに対向する面に電線Lの周辺にある設置物を把持可能な第二把持部311a’,311b’が設けられている。
【0051】
前記操作片32a,32bは、一方向に長手をなして形成されており、先端部が前記第一把持片30a,30bの基端部に角度をつけて一体的に連設されている。さらに、前記操作片32a,32bは、それぞれの基端部側を互いに近接する方向に移動させることで前記第一把持片30a,30bの先端部側及び第二把持片31a,31b同士を互いに相反する方向(離間する方向)に移動させることができるように構成されている。また、前記操作片32a,32bは、それぞれの基端部側を相反する方向(離間する方向)に移動させることで前記第一把持片30a,30bの先端部側及び第二把持片31a,31bを近接する方向に移動させることができるように構成されている。
【0052】
本実施形態に係る端末キャップ1’の説明は、以上である。本実施形態に係る端末キャップ1’の取り付け態様及び取り外し方法については、図3の各図及び図4の各図を用いて上記第一の実施形態で説明した方法と同一の手順となるため、説明を割愛する。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る端末キャップ1’によれば、キャップ本体2の長さを変化させることができるため、異なる長さの露出した充電部を覆い隠すことができるという優れた効果を奏し得る。
【0054】
また、本実施形態に係る端末キャップ1’の取り外し方法によれば、外筒部21が固定された状態で内筒部20’を引き抜くため、端末キャップ1’が突然露出した充電部から抜けることによって、作業者が不安定な状態になることを防ぐことができる。
【0055】
さらに、上記第一の実施形態では、キャップ本体2を最も縮めた状態で端末の充電部に取り付けた場合、第一把持部30a,30bが、延設部203を介して電線を把持していたが、本実施形態では、延設部に挿通孔205a,205bが設けられているため、キャップ本体2を最も縮めた状態であっても、第一上側把持部301a’及び第一下側把持部301b’が直接電線を把持することができるようになっている。
【0056】
次に、本発明の第三の実施形態に係る端末キャップ1’’について説明する。なお、本実施形態に係る端末キャップ1’’は、上記第一の実施形態と略同等の構成を有しているため、同一の構成については、同一符号、及び同一名称を付して説明を割愛し、第一の実施形態と相違する構成(キャップ本体2’’)のみを説明する。
【0057】
本実施形態に係るキャップ本体2’’は、図7(a)及び図7(b)に示すように、電線の端末を嵌入可能に構成されるとともに、嵌入された端末を覆い隠すべく先端部が閉塞された内筒部20’’と、蛇腹状に形成された外筒部21’’とを備えている。
【0058】
前記内筒部20’’は、一方向に長手をなして形成された内筒部本体200を備えている。該内筒部本体200は、先端部が閉塞されており、内部に電線の端末を嵌入可能な嵌入孔201が穿設されている。そして、該嵌入孔201は、テーパー状に形成されており、基端部側から先端部側に向けて径が小さくなるようになっている。
【0059】
そして、前記外筒部21’’は、筒状に形成された外筒部本体210’’が蛇腹状に形成されている。これにより、前記外筒部21’’は、中心線方向で伸縮することができる。さらに、外筒部21’’の先端部には、前記内筒部20’’が挿通された状態で固定されている。また、基端部には、前記固定手段3が取り付けられている。そして、外筒部21’’は、伸縮するに伴って基端部側の開口部から延設部203の基端部側を進出させることができるように構成されている。
【0060】
本実施形態に係る端末キャップ1’’の説明は以上であり、続いて露出した端末の充電部に取り付けられた端末キャップ1’’の取り外し方法について説明する。なお、本実施形態に係る端末キャップ1’’も、上記第一の実施形態に係る端末キャップ1と同様に、切断されただけの端末や、被覆が剥かれることによって芯線が露出した状態になっている端末や、該芯線にスリーブが取り付けられた端末等に取り付けられるが、本実施形態では、被覆が剥かれることによって芯線が露出した状態になっている端末に対して端末キャップ1’’を取り付けることを前提として説明する。
【0061】
前記端末は、作業の都度、被覆が剥かれる度合いが異なるため、芯線の露出する軸心方向における長さが異なる。これにより、本実施形態に係る端末キャップ1’’は、キャップ本体2’’の長さが露出した芯線の長さに応じて調整された後に、端末に取り付けられる。
【0062】
具体的には、前記端末キャップ1’’は、図8(a)に示すように、キャップ本体2’’が最も縮められた状態で切断された電線Lの端末(芯線Cが露出した状態の端末)に取り付けられることがある。また、前記端末キャップ1’’は、図8(b)に示すように、内筒部の一部を外筒部から引き出すことによって、キャップ本体2’’が伸ばされた状態で前記端末に取り付けられることもある。さらには、前記端末キャップ1’’は、図8(c)に示すように、キャップ本体2’’が最も伸ばされた状態で前記端末に取り付けられることもある。
【0063】
そして、図9(a)に示すように、キャップ本体2’’が最も伸びた状態で前記端末に取り付けられた端末キャップ1’’の取り外し方について説明すると、まず、操作片32a,32bのそれぞれの基端部側を絶縁ヤットコ等で互いに近接させることで第一把持片30a,30bのそれぞれの先端部側を離間させて、電線Lに対する固定(把持)を解除する。このとき、第二把持片31a,31bで前記設置物を把持している場合は、第二把持片31a,31bによる設置物に対する固定(把持)も解除される。
【0064】
上述のように、キャップ本体2’’が最も伸びた状態になっていると、外筒部21’’が伸びることができないため、内筒部20’’を前記引き抜き方向に向けて移動させることができない。そのため、第一把持片30a,30bの電線Lに対する固定(第二把持辺1a,31bの設置物に対する固定)を解除した後に、図9(b)に示すように、固定手段3を前記引き抜き方向に向けて移動させる。すなわち、前記外筒部21’’の基端部側を前記引き抜き方向に向けて移動させることによって縮めた状態にすることにより、内筒部20’’を引き抜き方向に向けて移動可能な状態にする。しかる後に、再度第一把持片30a,30bで電線Lを把持する。このとき、第二把持片31a,31bも設置物を把持するようにしてもよい。
【0065】
そして、内筒部20’’の先端部を掴み、該内筒部20’’を引き抜き方向に向けて移動させることによって、図9(c)に示すように、内筒部20’’を芯線Cから取り外す。
【0066】
しかる後に、固定手段3の電線に対する固定を再び解除し、端末キャップ1’’を引き抜き方向に向けて移動させることで、図9(d)に示すように、端末キャップ1を電線L及び芯線Cから完全に取り外す。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る端末キャップ1’’によれば、キャップ本体2’’の長さを変化させることができるため、異なる長さの露出した充電部を覆い隠すことができるという優れた効果を奏し得る。
【0068】
また、本実施形態に係る端末キャップ1’’の取り外し方法によれば、外筒部2’’が固定された状態で内筒部20’’を引き抜くため、端末キャップ1’’が突然電線L及び芯線Cから抜けることによって、作業者が不安定な状態になることを防ぐことができる。
【0069】
なお、本発明の端末キャップ及びこの端末キャップの取り外し方法は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を行うことは勿論である。
【0070】
上記の各実施形態において、電線Lの先端部の被覆が剥かれて芯線Cが露出したものに端末キャップ1,1’,1’’を取り付けることを前提として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、切断されただけの、被覆が剥かれていない端末に取り付けてもよい。
【0071】
上記の各実施形態において、電線Lの先端部の被覆が剥かれて芯線Cが露出したものに端末キャップ1,1’,1’’を取り付けることを前提として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、露出した芯線にスリーブを取り付けた端末に取り付けてもよい。
【0072】
この場合、端末キャップ1’,1’’ ,1’’’は、キャップ本体2,2’’の長さがスリーブの長さに応じた長さに調整されることになる。
【0073】
上記の各実施形態において、特に言及しなかったが、第一把持部301a,301b及び301a’,301b’の表面(電線と対向することになる面)に複数の突起を設け、該突起が前記引き抜き方向に傾斜するように構成してもよい。
【0074】
このようにすれば、前記外筒部に対して引き抜き方向に働く力が働くと、前記突起が電線Lに食い込むため、内筒部20,20’を引き抜く際に外筒部21,21’’が電線Lから外れてしまうことをより確実に防ぐことができる。
【0075】
上記の第一の実施形態及び第二の実施形態において、一対の突起部202a,202b及び二条のガイド溝211a,211bが設けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば、一つの突起部と、一条のガイド溝を設けるようにしてもよい。
【0076】
上記の第一の実施形態及び第二の実施形態において、前記ガイド溝211a,211bは、直線状に設けられていたが、これに限定されるものではなく、例えば、螺旋状に設けてもよい。このようにした場合、キャップ本体2は、内筒部20,20’及び外筒部21の少なくともいずれか一方を中心線周りで回転させることで伸縮されることになる。
【0077】
上記の第一の実施形態及び第二の実施形態において、前記キャップ本体2、2は、内筒部20,20’と外筒部21で構成していたが、これに限定されるものではなく、例えば、内筒部20,20’と外筒部21との間に、さらに筒状に形成された中間筒部を介設してもよい。
【0078】
この場合、前記中間筒部は、例えば、側面に外筒部21のガイド溝211に嵌入可能な突起部が設けられるとともに、内周面に前記内筒部20に設けられた突起部202a,202bを嵌入可能なガイド溝が設けられるようにしてもよい。
【0079】
上記の第一の実施形態及び第二の実施形態において、前記キャップ体2は、図3(a)に示すように、最も縮めた状態において、内筒部20の先端部が外筒部21から僅かに進出するように構成されていたが、これに限定されるものではなく、内筒部20を長尺に形成することによって、キャップ体2が最も縮んだ状態における内筒部20の進出量を増加させることもできる。
【符号の説明】
【0080】
1,1’,1’’…端末キャップ、2,2’’…キャップ本体、3,3’…固定手段、20,20’、20’’…内筒部、21,21’’…外筒部、30a,30b…第一把持片、31a,31b…第二把持片、32a,32b…操作片、33…軸部材、34…付勢手段、200…内筒部本体、201…嵌入孔、202a,202b…突起部、203…延設部、204…貫通孔、205a,205b…挿通孔、210、210’’…外筒部本体、211a,211b…ガイド溝、212…取付部材、300a,300b…第一把持片本体、301a,301b,301a’,301b’…第一把持部、310a,310b…第二把持片本体、311a’,311b’…第二把持部、C…芯線、L…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の端末を嵌入可能に構成されたキャップ本体と、該キャップ本体を端末が挿入された電線に固定するための固定手段とを備え、該固定手段がキャップ本体に取り付けられた端末キャップであって、前記キャップ本体は、電線の端末を嵌入可能に構成されるとともに、嵌入された端末を覆い隠すべく先端部が閉塞された内筒部と、該内筒部をスライド移動可能に内装する外筒部とを備え、前記内筒部は、外筒部に対して先端部から進出可能に構成され、前記キャップ本体は、内筒部の外筒部に対する進出量を変化させることで伸縮可能に構成されていることを特徴とする端末キャップ。
【請求項2】
電線の端末を嵌入可能に構成されたキャップ本体と、該キャップ本体を端末が挿入された電線に固定するための固定手段とを備え、該固定手段がキャップ本体に取り付けられた端末キャップであって、前記キャップ本体は、電線の端末を嵌入可能に構成されるとともに、嵌入された端末を覆い隠すべく先端部が閉塞された内筒部と、蛇腹状に形成された外筒部とを備え、前記内筒部は、基端部側が外筒部の先端部側に固定され、前記キャップ本体は、外筒部を伸縮させることで伸縮可能に構成されていることを特徴とする端末キャップ。
【請求項3】
前記固定手段は、前記内筒部に端末が挿入された電線を把持するための一対の第一把持片と、該第一把持片のそれぞれ先端部に連設された第二把持片と、前記一対の第一把持片のそれぞれ基端部に連設された操作片とを備え、前記一対の第一把持片のそれぞれは、軸部材を介して相互に回動可能に連結されるとともに、付勢手段によって先端部側同士が互いに近接する方向に付勢され、前記一対の操作片を互いに近接する方向に移動させることで該先端部側同士が互いに相反する方向に移動する一方、前記一対の操作片を互いに相反する方向に移動させることで該先端部側同士が互いに近接する方向に移動するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の端末キャップ。
【請求項4】
電線の端末に取り付けられた請求項1乃至3の何れか一項に記載の端末キャップの取外し方法であって、固定手段の電線に対する固定を解除し、該固定手段を内筒部の先端部側に向けて移動させた後、その位置で再度固定手段を電線に固定し、この状態で内筒部を電線の端末から引き抜き、しかる後、固定手段の電線に対する固定を再び解除し、端末キャップを電線から取り外すことを特徴とする端末キャップの取り外し方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−157173(P2012−157173A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14415(P2011−14415)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】