説明

端末装置及び通信方法

【課題】ユーザデータの送信処理が不要に繰り返されることを抑制する端末装置及び通信方法を提供する。
【解決手段】端末装置100は、自端末と無線局200との間においてRRCコネクションを設定するとともに、自端末とネットワーク300との間においてRAB及びPDPコンテキストを設定するC−PLANE処理部131と、C−PLANE処理部131によって設定されたPDPコンテキストを用いてユーザデータの送信処理を行うU−PLANE処理部132とを備える。C−PLANE処理部131は、プリザベーション状態でユーザデータの送信に失敗した場合に、PDPコンテキストを自端末内で解放する処理であるローカル解放を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線局を介してネットワークと接続する端末装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザデータの送信処理や受信処理を行うU−PLANE処理部と、制御データの送信処理や受信処理を行うC−PLANE処理部とを有する端末装置が知られている。
【0003】
端末装置は、基地局や無線制御局などの無線局(例えば、RNC)を介してコアネットワークと接続する。コアネットワークには、パケット交換を行うSGSN(Serving GPRS Support Node)、コアネットワークと他のネットワーク(例えば、インターネット網)とを接続するGGSN(Gateway GPRS Support Node)などが設けられている。
【0004】
ここで、端末装置は、パケット交換(PS;Packet Switching)によって通信を行う場合には、自端末と無線局との間において、RRCコネクションなどの無線経路を設定する。また、端末装置は、自端末とネットワーク側(SGSN)との間において、RAB(Radio Access Bearer)を設定する。続いて、端末装置は、自端末とネットワーク側(GGSN)との間において、PDPコンテキストなどの論理経路を設定する。
【0005】
ここで、パケット転送が行われていない期間において無線リソースを有効に利用するために、PDPコンテキストを維持しながらRABが解放された状態(Presevation状態)に、端末装置及びネットワークが遷移する技術が知られている。端末装置及びネットワークにおいてPDPコンテキストが維持されているため、Presevation状態からPS通信状態への復帰が行われる場合に、PS通信状態への復帰に必要な遷移時間が短縮される(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TS23.060 「General Packet Radio Service (GPRS); Service description; Stage 2」、9.2章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した背景技術では、Presevation状態において端末装置がユーザデータの送信を試みた場合に、ユーザデータの送信に失敗したとしても、Presevation状態が維持される。ユーザデータの送信に失敗する要因(以下、失敗要因)としては、(1)ユーザデータの送信が規制されている状態(規制状態)、(2)端末装置が圏外に位置する状態(圏外状態)、(3)緊急呼が生じている状態(緊急呼状態)、(4)通信状態への復帰要求に対応する応答待ちタイマのタイムアウト(タイムアウト状態)、(5)通信状態への復帰要求に対する応答拒否を受信した状態(復帰拒否状態)などが考えられる。以下において、(1)〜(5)を総称して規制状態等と称する。
【0008】
ここで、端末装置は、一般的に、TE(Terminal Equipment)及びMT(Mobile Terminal)によって構成される。上述したU−PLANE処理部及びC−PLANE処理部はMT内に設けられている。TEは、ユーザデータの送信をMTに対して要求する。なお、TE及びMTは独立して動作することに留意すべきである。
【0009】
背景技術では、Presevation状態かつ規制状態等においてTEがユーザデータの送信を要求した場合には、ユーザデータの送信に失敗するが、TEは失敗要因を把握していない。従って、TEは、実際の失敗要因を把握していないものの、ユーザデータの送信に失敗したと認識し、ユーザデータの送信を再び試みることが考えられる。
【0010】
このように、背景技術では、Presevation状態においてユーザデータの送信処理が不要に繰り返されてしまう場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ユーザデータの送信処理が不要に繰り返されることを抑制する端末装置及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一の特徴では、無線局を介してネットワークと接続する端末装置は、自端末と前記無線局との間において制御データの送受信に必要な制御データ無線経路(RRCコネクション)を設定するとともに、自端末と前記ネットワークとの間においてユーザデータの送受信に必要なユーザデータ無線経路(RAB)及び論理経路(PDPコンテキスト)を設定する制御データ処理部(C−PLANE処理部131)と、前記制御データ処理部によって設定された前記論理経路を用いて前記ユーザデータの送信処理を行うユーザデータ処理部(U−PLANE処理部132)とを備える。前記制御データ処理部は、前記論理経路を維持しながら前記ユーザデータ無線経路が解放されたプリザベーション状態で前記ユーザデータの送信に失敗した場合に、前記論理経路を自端末内で解放する処理であるローカル解放を行う。
【0013】
上述した一の特徴において、端末装置は、前記ネットワークの種類に応じて、前記ローカル解放を行うか否かを判定する判定部をさらに備え、前記制御データ処理部は、前記ローカル解放を行わないと判定された場合に、前記プリザベーション状態で前記ユーザデータの送信に失敗した場合であっても、前記ローカル解放を行わずにプリザベーション状態を維持することが好ましい。
【0014】
上述した一の特徴において、前記制御データ処理部は、前記プリザベーション状態において、前記ユーザデータの送信要求が行われたときに、前記プリザベーション状態に遷移した通信とは異なる他の通信の制御データ無線経路として緊急呼に対応する制御データ無線経路が設定されている場合に、前記ローカル解放を行う。
【0015】
本発明の一の特徴では、端末装置が無線局を介してネットワークと接続する通信方法は、前記端末装置と前記無線局との間において制御データの送受信に必要な制御データ無線経路を設定するとともに、前記端末装置と前記ネットワークとの間においてユーザデータの送受信に必要なユーザデータ無線経路及び論理経路を設定するステップAと、前記論理経路を維持しながら前記ユーザデータ無線経路が解放されたプリザベーション状態で前記ユーザデータの送信に失敗した場合に、前記論理経路を前記端末装置内で解放する処理であるローカル解放を行うステップBとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ユーザデータの送信処理が不要に繰り返されることを抑制する端末装置及び通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る端末装置100の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図4】第1実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図5】第1実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図6】第1実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図7】第1実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図8】第1実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【図9】第1実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、本発明の実施形態に係る通信システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。
【0019】
ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
[第1実施形態]
(通信システムの構成)
以下において、第1実施形態に係る通信システムの構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。図1に示すように、通信システムは、端末装置100と、無線局200と、ネットワーク300とを有する。
【0021】
端末装置100は、無線通信機能を有する端末であり、携帯電話、PDA、パーソナルコンピュータなどである。端末装置100は、PS(Packet Swiching)通信及びCS(Circuit Swiching)通信を、無線局200を介してネットワーク300と行う。
【0022】
なお、PS通信は、パケット交換によって行われる通信であり、CS通信は、回線交換によって行われる通信である。以下においては、PS通信に必要な構成について主として説明することに留意すべきである。
【0023】
無線局200は、基地局(BTS)や無線制御局(RNC)などの無線局である。以下においては、無線局200がRNCであるものとして説明するが、これに限定されるものではない。
【0024】
端末装置100と無線局200との間には、RRCコネクションなどの制御データ無線経路が設定される。RRCコネクションは、制御データの送受信に必要な経路である。
【0025】
ネットワーク300は、PS通信及びCS通信を、無線局200を介して端末装置100と行うネットワークである。ネットワーク300は、交換機(MSC、SGSN)、ゲートウェイ(GGSN)などを含む。
【0026】
端末装置100とネットワーク300(例えば、SGSN)との間には、RAB(Radio Access Bearer)などのユーザデータ無線経路が設定される。ここで、RABは、ユーザデータの送受信に必要な経路である。
【0027】
(端末装置の構成)
以下において、第1実施形態に係る通信システムの構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、第1実施形態に係る端末装置100の構成を示す図である。
【0028】
図2に示すように、端末装置100は、TE110(Terminal Equipment)と、MT150(Mobile Terminal)とを有する。
【0029】
TE110は、データの入出力などを行う機能を有する。具体的には、TE110は、PS通信やCS通信の発信要求をMT150に出力する。TE110は、PS通信やCS通信に係るユーザデータをMT150に出力する。
【0030】
MT150は、PS通信及びCS通信を行う機能を有する。具体的には、アダプタ120と、無線制御部130とを有する。
【0031】
アダプタ120は、TE110と無線制御部130とのインターフェースである。具体的には、アダプタ120は、TE110からの発信要求やユーザデータなどを無線制御部130に中継する。
【0032】
無線制御部130は、C−PLANE処理部131(制御データ処理部)と、U−PLANE処理部132(ユーザデータ処理部)とを有しており、TE110とは独立して動作する。
【0033】
C−PLANE処理部131は、無線局200やネットワーク300に対して制御データを送信する処理、無線局200やネットワーク300から制御データを受信する処理を行う。
【0034】
具体的には、C−PLANE処理部131は、端末装置100と無線局200との間において、RRCコネクションなどの制御データ無線経路を設定する。上述したように、RRCコネクションは、制御データの送受信に必要な経路である。
【0035】
C−PLANE処理部131は、端末装置100とネットワーク300(例えば、SGSN)との間において、RAB(Radio Acces Bearer)などのユーザデータ無線経路を設定する。上述したように、RABは、ユーザデータの送受信に必要な経路である。
【0036】
C−PLANE処理部131は、端末装置100とネットワーク300(例えば、GGSN)との間において、ユーザデータの送受信に必要な論理経路(PDPコンテキスト)を設定する。
【0037】
PDPコンテキストは、PDP(Packet Data Protocol)の種別を示すPDPタイプ、PDPを識別するPDPアドレス、APN(Access Point Name)やQoS(Quality of Service)プロファイルなどである。
【0038】
ここで、C−PLANE処理部131は、制御データの送信処理及び受信処理によって、端末装置100の状態を把握している。端末装置100の状態としては、待ち受け状態(Idle状態)、プリザベーション状態、PS通信状態などが挙げられる。
【0039】
待ち受け状態(Idle状態)は、端末装置100と無線局200との間及び端末装置100とネットワーク300との間において、無線経理及び論理経路が何も設定されていない状態である。すなわち、待ち受け状態(Idle状態)では、RAB及びPDPコンテキストが設定されていない。
【0040】
プリザベーション状態は、ユーザデータ無線経路が解放されており、論理経路が維持されている状態である。すなわち、プリザベーション状態では、RABが解放されており、PDPコンテキストが維持されている。ここで、プリザベーション状態では、端末装置100と無線局200との間において、RRCコネクションが設定されていないケース(1)と、RRCコネクションが設定されているケース(2)とが考えられる。例えば、プリザベーション状態以外の呼が存在しないケースでは、RRCコネクションが設定されていない。また、プリザベーション状態の呼以外の呼が存在するケース(例えば、PS通信以外にCS通信が行われているケース)では、RRCコネクションが設定されている。
【0041】
PS通信状態は、端末装置100と無線局200との間において、RRCコネクションが設定されており、端末装置100とネットワーク300との間において、RAB及びPDPコンテキストが設定されている状態である。すなわち、PS通信状態では、RAB及びPDPコンテキストが設定されている。
【0042】
また、端末装置100の状態としては、ユーザデータの送信が制限されたPS通信制限状態が挙げられる。PS通信制限状態は、(1)ユーザデータの送信が規制されている状態(規制状態)、(2)端末装置100が圏外に位置する状態(圏外状態)、(3)緊急呼が生じている状態(緊急呼状態)、(4)通信状態への復帰要求に対応する応答待ちタイマのタイムアウト(タイムアウト状態)、(5)通信状態への復帰要求に対する応答拒否を受信した状態(復帰拒否状態)などである。
【0043】
U−PLANE処理部132は、C−PLANE処理部131によって設定されたRAB及びPDPコンテキストを用いて、ユーザデータの送信処理及び受信処理を行う。
【0044】
具体的には、U−PLANE処理部132は、端末装置100がPS通信状態である場合には、ユーザデータの送信処理を行うことができる。
【0045】
U−PLANE処理部132は、端末装置100がプリザベーション状態である場合には、C−PLANE処理部131によってRABが設定されれば、ユーザデータの送信処理及び受信処理を開始することができる。
【0046】
U−PLANE処理部132は、端末装置100がIdle状態である場合には、C−PLANE処理部131によってRAB及びPDPコンテキストが設定された後でなければ、ユーザデータの送信処理を開始することができない。
【0047】
なお、無線制御部130は、上述した処理に加えて、拡散処理、変調処理、同期処理、送信電力制御処理などを行う。
【0048】
(端末装置の動作)
以下において、第1実施形態に係る端末装置の動作の概略について説明する。なお、端末装置の動作を含む通信システムの動作については後述する(図3〜図9を参照)。
【0049】
上述したように、U−PLANE処理部132は、プリザベーション状態でユーザデータの送信を試みることが可能である。
【0050】
C−PLANE処理部131は、プリザベーション状態でユーザデータの送信に失敗した場合に、端末装置100内においてPDPコンテキストを解放するローカル解放を行う。続いて、C−PLANE処理部131は、PDPコンテキストのローカル解放が行われた旨をアダプタ120を介してTE110に通知する(図7〜図9を参照)。
【0051】
また、C−PLANE処理部131は、プリザベーション状態でユーザデータの送信に失敗した要因(失敗要因)をアダプタ120を介してユーザ(TE110)に通知する(図7〜図9を参照)。
【0052】
失敗要因は、(1)ユーザデータの送信要求をネットワーク300側に送信することが制限されていること、(2)ユーザデータの送信要求に対する応答が所定時間内に得られなかったこと、(3)ユーザデータの送信要求に対して、ユーザデータの送信を拒否する応答が得られたこと、(4)通信状態への復帰要求に対応する応答待ちタイマのタイムアウトしたこと、(5)通信状態への復帰要求に対する応答拒否を受信したことなどである。
【0053】
(通信システムの動作)
以下において、第1実施形態に係る通信システムの動作について、図面を参照しながら説明する。図3〜図9は、第1実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
【0054】
(PS通信開始処理)
以下において、第1実施形態に係るPS通信開始処理について、図3を参照しながら説明する。
【0055】
ステップ10Aにおいて、TE110は、アダプタ120に発信要求を送信する。ステップ10Bにおいて、アダプタ120は、無線制御部130(C−PLANE処理部131)に発信要求を送信する。
【0056】
ステップ11において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、端末装置100と無線局200との間において、制御データの送受信を行うためのRRCコネクションを設定する(RRC Connection Establishment)。
【0057】
ステップ12において、無線制御部130は、サービス要求をネットワーク300(GGSN)に送信する。
【0058】
ステップ13において、ネットワーク300は、端末装置100に設けられたSIM(USIM)などに格納された加入者情報に基づいて端末装置100の認証を行う。続いて、ネットワーク300は、端末装置100とネットワーク300との間で用いられる暗号鍵などを端末装置100と共有する。
【0059】
ステップ14において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ネットワーク300(SGSN)に発信要求を送信する。具体的には、C−PLANE処理部131は、PDPコンテキストの活性化要求(Activate PDP Context Request)をネットワーク300に送信する。なお、PDPコンテキストの活性化要求は、ユーザデータの通信に要求されるQoS情報などを含む。
【0060】
ステップ15A及びステップ15Bにおいて、端末装置100とネットワーク300(SGSN)との間においてRABが設定される。
【0061】
ステップ16において、ネットワーク300(SGSN)は、ネットワーク300内でPDPコンテキストを設定した上で、無線制御部130(C−PLANE処理部131)に発信応答を送信する。具体的には、ネットワーク300は、PDPコンテキストの活性化応答(Activate PDP Context Accept)をC−PLANE処理部131に送信する。
【0062】
このように、ステップ12〜ステップ16の処理によって、端末装置100とネットワーク300(GGSN)との間においてPDPコンテキストが設定される。
【0063】
ステップ17Aにおいて、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、アダプタ120に発信応答を送信する。ステップ17Bにおいて、アダプタ120は、TE110に発信応答を送信する。
【0064】
ステップ18において、端末装置100とネットワーク300(GGSN)との間において、ユーザデータの送信や受信が可能である(PS通信状態)。
【0065】
(PS通信状態からPresevation状態への遷移)
以下において、第1実施形態に係るPS通信状態からPresevation状態への遷移について、図4を参照しながら説明する。
【0066】
図4に示すように、ステップ20において、端末装置100とネットワーク300(GGSN)との間において、ユーザデータの送信や受信が可能である(PS通信状態)。
【0067】
ステップ21A及びステップ21Bにおいて、端末装置100とネットワーク300(SGSN)との間においてRABが解放される。
【0068】
ステップ23Aにおいて、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、アダプタ120にPresevation状態へ遷移したことを通知する。ステップ23Bにおいて、アダプタ120は、TE110にPresevation状態へ遷移したことを通知する。なお、アダプタ120は、TE110にPresevation状態へ遷移したことを通知しなくてもよい。
【0069】
ステップ24において、端末装置100及びネットワーク300は、PS通信状態からPresevation状態へ遷移する。
【0070】
(Presevation状態からPS通信状態への遷移)
以下において、第1実施形態に係るPresevation状態からPS通信状態への遷移について、図5を参照しながら説明する。
【0071】
図5に示すように、ステップ30において、端末装置100及びネットワーク300は、PDPコンテキストを維持しながらRABが解放されたPresevation状態である。
【0072】
ステップ31Aにおいて、TE110は、アダプタ120にユーザデータの送信要求を送信する。ステップ31Bにおいて、アダプタ120は、無線制御部130(C−PLANE処理部131)にユーザデータの送信要求を送信する。
【0073】
ステップ32において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ステップ11と同様に、端末装置100と無線局200との間において、制御データの送受信を行うためのRRCコネクションを設定する(RRC Connection Establishment)。
【0074】
ステップ33において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ステップ12と同様に、サービス要求をネットワーク300(GGSN)に送信する。
【0075】
ステップ34において、ネットワーク300は、ステップ13と同様に、端末装置100に設けられたSIM(USIM)などに格納された加入者情報に基づいて端末装置100の認証を行う。続いて、ネットワーク300は、端末装置100とネットワーク300との間で用いられる暗号鍵などを端末装置100と共有する。
【0076】
ステップ36A及びステップ36Bにおいて、端末装置100とネットワーク300(SGSN)との間においてRABが設定される。
【0077】
このように、PDPコンテキストを設定する処理(ステップ14及びステップ16)、すなわち、PDPコンテキスト活性化要求及び応答の手順を実施する必要がなく、ステップ33、ステップ34、ステップ36A及びステップ36Bの処理によって、既存のPDPコンテキストが活性化される。また、ステップ33、ステップ34、ステップ36A及びステップ36Bの処理によって、端末装置100とネットワーク300(GGSN)との間においてPDPコンテキストが設定される。
【0078】
ステップ38Aにおいて、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ステップ17Aと同様に、アダプタ120に発信応答を送信する。ステップ38Bにおいて、アダプタ120は、ステップ17Bと同様に、TE110に発信応答を送信する。
【0079】
ステップ39において、端末装置100とネットワーク300(GGSN)との間において、ユーザデータの送信や受信が可能である(PS通信状態)。
【0080】
(Presevation状態からIdle状態への遷移)
以下において、第1実施形態に係るPresevation状態からIdle状態への遷移について、図6を参照しながら説明する。
【0081】
図6に示すように、ステップ40において、端末装置100及びネットワーク300は、PDPコンテキストを維持しながらRABが解放されたPresevation状態である。
【0082】
ステップ41において、TE110は、ユーザデータの送信及び受信を行うアプリケーションを終了する。
【0083】
ステップ42Aにおいて、TE110は、アダプタ120にアプリケーション終了通知を送信する。ステップ42Bにおいて、アダプタ120は、無線制御部130(C−PLANE処理部131)にアプリケーション終了通知を送信する。
【0084】
ステップ43において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ステップ11と同様に、端末装置100とネットワーク300との間でRRCコネクションを設定する(RRC Connection Establishment)。
【0085】
ステップ44において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、PDPコンテキストの無効化要求(Deactivate PDP Context Request)をネットワーク300(SGSN)に送信する。
【0086】
ステップ45において、ネットワーク300(SGSN)は、PDPコンテキストを無効化した上で、PDPコンテキストの無効化完了(Deactivate PDP Context Accept)を無線制御部130(C−PLANE処理部131)に送信する。
【0087】
ステップ46Aにおいて、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、アダプタ120にIdle状態へ遷移したことを通知する。ステップ46Bにおいて、アダプタ120は、TE110にIdle状態へ遷移したことを通知する。
【0088】
ステップ47において、端末装置100は、RABやPDPコンテキストが解放されたIdle状態に遷移する。
【0089】
(送信要求の送信不可)
以下において、第1実施形態に係る無線制御部130がPresevation状態かつPS通信制限状態において、ユーザデータの送信要求をネットワーク300に送信できないケースについて、図7を参照しながら説明する。図7では、PS通信制限状態は、(1)ユーザデータの送信が規制されている状態(規制状態)、(2)端末装置が圏外に位置する状態(圏外状態)、(3)緊急呼が生じている状態(緊急呼状態)などである。
【0090】
図7に示すように、ステップ50において、端末装置100及びネットワーク300は、PDPコンテキストを維持しながらRABが解放されたPresevation状態である。
【0091】
ステップ51において、端末装置100とネットワーク300との間でユーザデータの送信が制限される。端末装置100及びネットワーク300は、Presevation状態かつPS通信制限状態に遷移する。
【0092】
ステップ52Aにおいて、TE110は、アダプタ120にユーザデータの送信要求を送信する。ステップ52Bにおいて、アダプタ120は、無線制御部130(C−PLANE処理部131)にユーザデータの送信要求を送信する。
【0093】
ステップ53において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ユーザデータの送信要求をネットワーク300側に送信することが制限されていることを検出する。
【0094】
ステップ54Aにおいて、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ユーザデータの送信が不可であることを示す送信要求応答をアダプタ120に送信する。ステップ54Bにおいて、アダプタ120は、ユーザデータの送信が不可であることを示す送信要求応答をTE110に送信する。
【0095】
ステップ55において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、端末装置100内においてPDPコンテキストを解放する(ローカル解放)。これによって、端末装置100内では、Presevation状態からIdle状態への遷移が行われる。
【0096】
ステップ56Aにおいて、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、端末装置100内においてローカル解放が行われたこと、すなわち、Idle状態へ遷移したことをアダプタ120に送信する。ステップ54Bにおいて、アダプタ120は、端末装置100内においてローカル解放が行われたこと、すなわち、Idle状態へ遷移したことをTE110に送信する。
【0097】
ここで、新たにユーザデータの送信を試みる場合には、PDPコンテキストが設定されていないため、TE110は、ユーザデータの送信要求を発行することができない(ステップ57を参照)。すなわち、TE110は、ユーザデータの発信要求を改めて行う必要がある。
【0098】
ステップ58において、TE110は、ユーザデータの送信要求の送信に失敗した要因(失敗要因)をユーザに通知する。ここでは、失敗要因は、ユーザデータの送信要求をネットワーク300側に送信することが制限されていることである。すなわち、失敗要因は、(1)ユーザデータの送信が規制されている状態(規制状態)、(2)端末装置が圏外に位置する状態(圏外状態)、(3)緊急呼が生じている状態(緊急呼状態)などである。
【0099】
(送信要求のタイムアウト)
以下において、第1実施形態に係る無線制御部130がPresevation状態かつPS通信制限状態において、ユーザデータの送信要求をネットワーク300に送信できないケースについて、図8を参照しながら説明する。なお、図8では、図7と同様の処理について同様のステップ番号を付していることに留意すべきである。
【0100】
図8に示すように、ステップ61において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ステップ11と同様に、端末装置100と無線局200との間において、RRCコネクションを設定する(RRC Connection Establishment)。
【0101】
ステップ62において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ステップ12と同様に、サービス要求をネットワーク300(GGSN)に送信する。
【0102】
ステップ63において、無線制御部130は、サービス要求に対する応答がサービス要求を送信してから所定時間内取得できなかったことを検出する(タイムアウト)。
【0103】
なお、ステップ58において、C−PLANE処理部131は、ユーザデータの送信要求の送信に失敗した要因(失敗要因)をユーザに通知する。ここでは、失敗要因は、ユーザデータの送信要求に対する応答が所定時間内に得られなかったことである。
【0104】
(送信要求の拒否)
以下において、第1実施形態に係るPresevation状態かつPS通信制限状態において、ユーザデータの送信要求をネットワーク300に送信できないケースについて、図9を参照しながら説明する。図9では、図7と同様の処理について同様の符号を付している。図7と同様の処理の説明については省略する。
【0105】
図9に示すように、ステップ71において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ステップ11と同様に、端末装置100と無線局200との間において、RRCコネクションを設定する(RRC Connection Establishment)。
【0106】
ステップ72において、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ステップ12と同様に、サービス要求をネットワーク300(GGSN)に送信する。
【0107】
ステップ73において、ネットワーク300(SGSN)は、サービス要求を拒否する拒否応答を端末装置100に送信する。
【0108】
なお、ステップ58において、C−PLANE処理部131は、ユーザデータの送信要求の送信に失敗した要因(失敗要因)をユーザに通知する。ここでは、失敗要因は、ユーザデータの送信要求に対して、ユーザデータの送信を拒否する応答が得られたことである。
【0109】
(作用及び効果)
第1実施形態に係る端末装置100によれば、無線制御部130は、プリザベーション状態でユーザデータの送信に失敗した場合に、端末装置100内においてPDPコンテキストを解放するローカル解放を行う。すなわち、無線制御部130は、プリザベーション状態でユーザデータの送信に失敗した場合に、端末装置100内においてPresevation状態からIdle状態への遷移を行う。
【0110】
このように、端末装置100内においてPDPコンテキストが解放されて、端末装置100内でIdle状態への遷移が行われるため、ローカル解放後にユーザデータの送信を行う場合には、TE110が発信処理を改めて行う必要がある。従って、ユーザデータの送信処理が不要に繰り返されることが抑制される。
【0111】
[変形例1]
以下において、第1実施形態の変形例1について図面を参照しながら説明する。以下においては、上述した第1実施形態との相違点について主として説明する。
【0112】
上述した第1実施形態では特に触れていないが、変形例1では、ネットワーク300の種類に応じて、プリザベーション状態でローカル解放を行うか否かを判定する。
【0113】
具体的には、無線制御部130は、プリザベーション状態でユーザデータの送信に失敗した場合において、ネットワーク300の種類に応じて、プリザベーション状態でローカル解放を行うか否かを判定する。
【0114】
例えば、ネットワーク300(ローミングアウト先におけるネットワーク)において、プリザベーション状態からPS通信状態に遷移する際に課金が生じないが、Idle状態からPS通信状態に遷移する際に課金が生じる場合には、無線制御部130は、プリザベーション状態でローカル解放を行わないと判定する。これによって、ローカル解放を行うことによって、新たな課金が生じることが防止される。
【0115】
[変形例2]
以下において、第1実施形態の変形例2について図面を参照しながら説明する。以下においては、上述した第1実施形態との相違点について主として説明する。
【0116】
上述した第1実施形態では特に触れていないが、変形例2では、緊急呼に対応するRRCコネクションが設定された状態において、ユーザデータの送信要求が拒否される。
【0117】
無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、プリザベーション状態において、プリザベーション状態に遷移した通信に対応するユーザデータの送信要求が行われたときに、プリザベーション状態に遷移した通信とは異なる他の通信のRRCコネクションとして緊急呼に対応するRRCコネクションが設定されているか否かを判定する。
【0118】
また、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、プリザベーション状態において、ユーザデータの送信要求が行われたときに、緊急呼に対応するRRCコネクションが設定されていると判定した場合に、プリザベーション状態に対応するユーザデータの送信要求を拒否する。
【0119】
なお、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ユーザデータの送信要求を拒否した場合に、端末装置100内においてPDPコンテキストを解放する(ローカル解放)。これによって、端末装置100内では、Presevation状態からIdle状態への遷移が行われる。ここで、プリザベーション状態に遷移した通信とは異なる他の通信(CS通信)については、緊急呼に対応するRRCコネクションが維持される。また、プリザベーション状態に遷移した通信とは別の通信(CS通信)については、呼が確立されていれば、緊急通信が行われていることになる。また、無線制御部130(C−PLANE処理部131)は、ユーザパケットの送信要求の送信に失敗した要因(失敗要因)をユーザに通知する。ここでは、失敗要因は、プリザベーション状態に遷移した通信とは異なる他の通信(CS通信)のRRCコネクションとして緊急呼に対応するRRCコネクションが設定されていることである。
【0120】
これによって、通常のユーザデータの送受信において、緊急呼に対応するRRCコネクションが不正に利用されることが抑制される。
【0121】
[その他の実施形態]
本発明は上述した実施形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0122】
例えば、上述した実施形態では、プリザベーション状態からPS通信状態への遷移が行われる場合に、RRCコネクションの設定処理(図5のステップ32など)が行われているが、これに限定されるものではない。具体的には、CS(Circuit Switching)通信が行われている場合には、RRCコネクションの設定処理が省略されてもよい。
【0123】
上述した実施形態では、端末装置100内においてユーザデータの送信が要求された際に、端末装置100とネットワーク300との間において通信が制限されている場合に、端末装置100内でローカル解放を行うケース(図6などを参照)について説明したが、これに限定されるものではない。具体的には、端末装置100内においてPDPコンテキストの変更(PDP Context Modify)やPDPコンテキストの解放(PDP Context Deactivate)が要求された際に、端末装置100とネットワーク300との間において通信が制限されている場合に、端末装置100内でローカル解放が行われてもよい。
【0124】
上述した実施形態では特に触れていないが、ローカル解放が行われた時点では、ネットワーク300は、端末装置100内においてPDPコンテキストが解放されたことを把握していない。ネットワーク300は、ローカル解放後に端末装置100から受信する位置登録情報などによって、端末装置100内においてPDPコンテキストが解放されたことを把握する。続いて、ネットワーク300は、ネットワーク300内においてPDPコンテキストを解放する。
【符号の説明】
【0125】
100…端末装置、110…TE、120…アダプタ、130…無線制御部、131…C−PLANE処理部、132…U−PLANE処理部、150…MT、200…無線局、300…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線局を介してネットワークと接続する端末装置であって、
自端末と前記無線局との間において制御データの送受信に必要な制御データ無線経路を設定するとともに、自端末と前記ネットワークとの間においてユーザデータの送受信に必要なユーザデータ無線経路及び論理経路を設定する制御データ処理部と、
前記制御データ処理部によって設定された前記論理経路を用いて前記ユーザデータの送信処理を行うユーザデータ処理部とを備え、
前記制御データ処理部は、前記論理経路を維持しながら前記ユーザデータ無線経路が解放されたプリザベーション状態で前記ユーザデータの送信に失敗した場合に、前記論理経路を自端末内で解放する処理であるローカル解放を行うことを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記ネットワークの種類に応じて、前記ローカル解放を行うか否かを判定する判定部をさらに備え、
前記制御データ処理部は、前記ローカル解放を行わないと判定された場合に、前記プリザベーション状態で前記ユーザデータの送信に失敗した場合であっても、前記ローカル解放を行わずに、前記プリザベーション状態を維持することを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記制御データ処理部は、前記プリザベーション状態において、前記ユーザデータの送信要求が行われたときに、前記プリザベーション状態に遷移した通信とは異なる他の通信の制御データ無線経路として緊急呼に対応する制御データ無線経路が設定されている場合に、前記ローカル解放を行うことを特徴とする請求項1に記載の端末装置。
【請求項4】
端末装置が無線局を介してネットワークと接続する通信方法であって、
前記端末装置と前記無線局との間において制御データの送受信に必要な制御データ無線経路を設定するとともに、前記端末装置と前記ネットワークとの間においてユーザデータの送受信に必要なユーザデータ無線経路及び論理経路を設定するステップAと、
前記論理経路を維持しながら前記ユーザデータ無線経路が解放されたプリザベーション状態で前記ユーザデータの送信に失敗した場合に、前記論理経路を前記端末装置内で解放するローカル解放を行うステップBとを含むことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−71843(P2011−71843A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222367(P2009−222367)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【出願人】(000187725)パナソニック モバイルコミュニケーションズ株式会社 (38)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】