説明

竹を利用するパルプの製造方法及びこの方法を使用して製造されたパルプ

竹を微細に切断して短い断片とし、切断した竹を選別及び洗浄工程にかけ、それによって、予備加水分解及びパルプ化工程で使用される化学薬品の消費量を減少させかつ反応を容易にすることのできる、そして、優れた品質と高い収率を有することのできる溶解パルプを製造することからなる、竹を使用してパルプを製造する方法が開示されている。更に、パルプをECF又はTCF漂白法により漂白することによりダイオキシンの生成を防止することのできる、竹を使用して繊維(溶解)パルプを製造する方法及びこの方法で製造されたパルプが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹を使用して繊維パルプ(fiber pulp)を製造する方法に関する;特に、本発明は、竹を使用して品質の良好な繊維パルプ(溶解パルプ)を製造する方法であって、竹を縦方向に裂断し(split)、裂断した竹を短い長さに横方向に切断し、切断した材料から予備加水分解によりヘミセルロースを溶解させついで予備加水分解した材料を低い環境汚染しか生じない漂白剤で漂白することからなり、かくして、高いパルプ製造収量を得ることができるかつダイオキシンのごとき環境汚染物質を放出することのないパルプの製造方法、並びに、この方法で製造されたパルプ法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には、製紙用及び溶解パルプは木材を使用して製造されるものと認識されている。
【0003】
本明細書においては、“溶解パルプ”(“dissolving pulp”)という用語は、後に繊維を製造するのに使用し得る繊維パルプを意味する。
【0004】
換言すると、溶解パルプは、主として、木材パルプからなり、紙の原料としてのパルプを製造すること、一方では、木材資源の欠乏のため、森林を保護しかつ環境を保持することが、最近、大きな問題となっているため、非木材植物繊維等を使用してパルプを製造する努力が行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、パルプの製造方法、特に、後に繊維を製造するのに使用し得る溶解パルプ(即ち、繊維パルプ)の製造方法に関する。
【0006】
換言すると、溶解パルプは、主として、木材パルプからなり、紙の原料としてのパルプを製造すること、一方では、木材資源の欠乏のため、森林を保護しかつ環境を保持することが、最近、大きな問題となっているため、非木材植物繊維等を使用してパルプを製造する努力が行われている。
【0007】
かかる非木材植物としては紙クワジン皮繊維(paper mulberry bast fiber)、麻、綿及びマニラ麻が挙げられ、韓国特許公開第98−9651号及び93−2604号には稲のワラを使用するパルプの製法が開示されている。
【0008】
かかる努力は全て、樹木を保護するための努力と考えられ、このことは環境汚染を防止し得る。
【0009】
即ち、これらの努力は大気中に含まれる汚染物質と二酸化炭素を光合成により吸収し、一方、酸素を生成させ、供給することにより樹木を保護することを目的とする。
【0010】
工業及び文明の発展により、実際に、人類の生活の質は大きく改善されたが、エネルギーの使用が急速の増大し、その結果、温室ガスの放出も急速に増大し、かくして、地球環境の汚染とその副作用が極めて過酷なものになっている。
【0011】
その典型的な例においては、南極におけるオゾン層の減少が極めて急速に進行し、気候の急変により生じる災害、地球温暖化及び生態系の破壊が全世界で発生している。
【0012】
かかる環境汚染現象は極めて急速に進行して、人類の生存を脅かす状態に到達しており、かくして、高度発展国の幾つかの非協力により遅延されている、温室ガス放出に関する東京議定書は有効になっている。
【0013】
従って、種々の国の製造業者においては、温室ガスの放出を減少させる努力が緊急に要求されており、極端な場合には、温室ガス放出の権利を獲得するための追加的な費用が予測されている。
【0014】
ところで、高等級繊維(high-grade fiber)に相当するレーヨンは原料としての木材から製造された溶解パルプを利用している。
【0015】
上記した温室ガス放出の減少が要求されていることに関して、樹木は再生可能な天然材料であるが、樹木が使用可能な水準に到達するまで数年から数十年の期間を必要とする。このような理由から、木材の使用についての規定は厳格であり、樹木と置換し得る、生態系に優しい材料の開発についての要求が現実に生じている。
【0016】
この問題を解決するための手段であって、近年、大きな注目を浴びている一つの手段は、樹木の伐採の必要性を排除する非木材植物(non−woody plant)である。
【0017】
換言すれば、この非木材植物をパルプの製造に使用した場合には、大量に消費されている木材を伐採することが必要でないという大きな利点が得られる。
【0018】
非木材植物の内、注目を浴びているかつ本発明で原料として使用されている竹は、中国及びミャンマーのごとき東南アジアの国々で大量に生産され、約5年以内に使用し得る程度まで充分に生長する。
【0019】
近年、中国において、抗菌活性を有する竹を使用して溶解パルプを製造するための、そして、この溶解パルプを使用してレーヨン繊維を製造するための技術が開発された。
【0020】
しかしながら、この技術は竹の圧縮構造(compact structure)を考慮しておらず、その結果、竹のパルプ化が満足し得るように達成されず、そして、多量の薬品とエネルギーを消費し、漂白工程が強力な条件下で行われるため、収量が低いという欠点を有する。更に、この技術では繊維の分解と破壊が生じ、繊維が弱化する。
【0021】
元素状塩素を使用する塩素漂白法はダイオキシンの生成を生じる。
【0022】
また、装置の腐食の原因として作用する漂白粉が漂白薬品として使用されるので、製造装置の耐久性が大きな問題となる。
【0023】
更に、この加工の問題が薬品の量、エネルギーの消費及びパルプの生産単位当りの生産コストの増大の原因として作用する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は従来の技術で生じる上記したごとき問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、竹を縦方向に裂断し、裂断した竹を短い長さに横方向に切断し、切断した材料から予備加水分解によりヘミセルロースを溶解させついで予備加水分解した材料を低い環境汚染しか生じない漂白剤で漂白することからなる、竹を使用して品質の良好な繊維(溶解)パルプを製造する方法を提供することにある;かくして、この方法によれば、高いパルプ製造収量が得られかつダイオキシンのごとき環境汚染物質を放出することがない。
【0025】
本発明の他の目的は、竹を使用して溶解(繊維)パルプを製造する方法であって、場合により繊維パルプの重合度を調節することのできる技術を適用することにより、その意図する用途に応じて種々の品質のパルプを製造することが可能であり、また、予備加水分解工程中に溶解したヘミセルロースの大部分を形成するキシロースを溶液から回収しかつ精製しついで予備加水分解後にパルプから分離された廃棄物を蒸解する方法を使用して、副生物のキシロースを製造することが可能な溶解(繊維)パルプの製造方法並びにこの方法で製造されたパルプを提供することにある。
【0026】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、
竹の葉を除去する、葉の除去工程;
竹を縦方向に裂断して1.5〜3mmの幅にする、縦方向の裂断工程;
裂断した竹を10〜30mmの長さに横方向に切断して竹のチップを製造する、横方向の切断工程;
切断した竹のチップから小さい断片又は不純物を濾別する選別工程;
竹のチップを水で洗浄して不純物、混入物又は塵埃を除去する洗浄工程;
洗浄した竹のチップを、水又は水蒸気を使用する予備加水分解工程にかけ、そして、予備加水分解を促進するために、必要とされる予備加水分解の程度に応じて二酸化硫黄又は硫酸を添加して竹のチップからヘミセルロースを溶解させる、予備加水分解工程;
竹のチップを蒸解ガマに導入する蒸解工程;この工程においては、水、アルカリ及びアントラキノンからなる薬液と竹のチップの重量の比率を1:3.5−6.0(竹:薬液)に調節し、かつ、竹のチップを高温で蒸解して竹のチップを軟化させ、パルプ化する;
遠心式クリーナーを使用して竹から混入物を除去する混入物除去工程;
加圧式スクリーンを使用して蒸解したパルプから混入物を除去し、そして、竹の不完全に蒸解した部分を蒸解ガマに還送する分別工程;
デッカーを使用してパルプを洗浄して薬品を除去し、ついで、水を絞ってパルプを濃縮する洗浄及び濃縮工程;
洗浄し、濃縮したパルプを漂白する漂白工程;
パルプの表面及び内部に存在する金属イオンを除去する酸処理及び洗浄工程;及び
パルプをシート又はロールにするシート製造工程;
からなる、竹を使用する繊維パルプの製造方法が提供される。
【0027】
更に、本発明によれば、上記方法で製造された繊維パルプが提供される。
【0028】
図1は本発明の製造方法を連続的に示すフローチャートである。
図2は一般的な遠心式クリーナーを示す。
【0029】
本発明は繊維パルプを製造する方法に関連するという点で従来技術に類似している。
【0030】
しかしながら、本発明は、パルプを製造するのに非木材植物である竹を使用すること;パルプの製造において、加水分解と蒸解が容易になるように竹を処理することにより薬品とエネルギーの消費を減少させること;漂白工程で発生し得るダイオキシンのごとき危険な物質の生成を最小限にすること;及び本発明の予備加水分解工程中に溶解したヘミセルロース中に含まれるキシロース(ガムの原料としても使用される)を製造し得ること;かくして、地球上に存在する木材を伐採する必要がないこと及び竹から製造されたパルプは驚くべきほどに良好な品質を有することにおいて従来技術と明らかに相違する。以下においては、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0031】
図1のフローチャートに示すごとく、繊維(溶解)パルプを製造する本発明の方法の第1工程は、竹の葉を除去する工程(竹の葉の除去工程)からなる。
【0032】
換言すれば、竹の葉はパルプを製造するのに不必要な抽出物を多量に含んでいるが、本質的に繊維質の物質は少量しか含んでいない。
【0033】
従って、竹の葉はパルプを製造するのに役に立つというより、むしろ、薬品の消費を増大させる原因として作用をするので、竹の葉は、溶解パルプを製造する工程に導入する前に除去する。
【0034】
換言すれば、竹パルプを製造する本発明の方法では、竹の葉は使用されず、竹の幹だけが使用される。
【0035】
ついで、竹を1.5−3mmの幅に縦方向に裂断する第2工程(縦方向の裂断工程)が行われる。
【0036】
竹の圧縮構造のために、薬品の竹中への浸透は、木材に比べて著しく困難である。
【0037】
従って、パルプの製造を開始するためには、粉砕を行うことが必要である。この目的のためには、最初、竹を縦に半分に裂断しついで裂断した竹を更に狭い巾に裂断する。
【0038】
この工程においては、竹を1.5−3mmの幅に裂断することが好ましい。
【0039】
この縦方向の裂断は本発明の非常に特徴的な工程であり、竹を方向を考慮することなしに無差別に裂断した場合には、繊維材料が均一に裂断されず、むしろ、繊維材料自体が破壊され得る。
【0040】
このことにより、製造されたパルプの強度が減少し、その品質が低下する。
【0041】
このような理由から、本発明の製造方法においては、竹を多数回、縦方向に裂断して狭い幅にした後に使用する。
【0042】
多数の刃を備えた装置を使用して、竹を一工程で裂断する方法も使用し得る。
【0043】
ついで、縦方向に裂断した竹を10−30mmの長さに横方向に切断する第3工程(切断工程)が行われる。
【0044】
換言すれば、蒸解ガマに容易に装入され、充填される小さな竹のチップを製造するために、裂断した竹をカッターを使用して10−30mmの長さに横方向に切断する。
【0045】
竹のチップの長さが余りにも大きい場合には、竹のチップを蒸解ガマに効果的に充填することができず、竹を過度に短い長さに切断した場合には、繊維に対する大きな損傷が生じ、パルプの強度が低下する。
【0046】
ついで、竹のチップから小さい断片又は不純物を濾別する第4工程(選別工程)が行われる。
【0047】
換言すれば、竹を切断する工程で発生した小さい断片からパルプを製造したとしても、パルプは繊維物質が破壊された状態にある。従って、これらの小さい断片はパルプの強度を低下させ、薬品の消費を増大させる。
【0048】
また、切断工程中の混入物はパルプを製造するのに役に立たないものである。
【0049】
従って、これらの小さい断片及び混入物の全てを繊維(溶解)パルプの製造に使用した場合には、これらはパルプの収率(生産率)を増大させず、パルプの品質に悪影響を及ぼすであろう。かかる理由から、小さい断片及び混入物は選別により除去される。
【0050】
ついで、竹のチップを水で洗浄して、竹のチップから不純物、混入物及び塵埃を除去する第5工程(洗浄工程)が行われる。
【0051】
即ち、竹チップに付着した混入物、塵埃等を水で除去する。
【0052】
これにより、蒸解工程における薬品の不必要な消費が減少し、純粋なパルプを得ることが可能となり、かくして、製造されたパルプの品質が改善される。
【0053】
ついで、第6工程(予備加水分解工程)が行われ、洗浄した竹のチップを水又は水蒸気を使用する予備加水分解にかけ、予備加水分解を促進して竹のチップからヘミセルロースを溶解させるために、要求される予備加水分解の程度に応じてチップに二酸化硫黄又は硫酸が添加される。
【0054】
換言すれば、竹のチップにおける繊維(溶解)パルプの収量を最大にし、ヘミセルロースを溶解させるために、竹のチップを予備加水分解にかける。
【0055】
この加水分解は触媒としての二酸化硫黄又は硫酸を使用して、液体の水又は水蒸気を用いて行われる。
【0056】
この予備加水分解は竹のチップからヘミセルロースを溶解させることを目的としており、従って、酸を単独で使用した場合には、酸加水分解が激しく生起して、セルロースが甚だしく破壊される。
【0057】
かかる理由から、酸は操作環境に従って、適当な液体比に制御されなければならない。
【0058】
この工程においては、液体の水と触媒の量と竹チップの量の比は、要求される加水分解の程度に応じて、1.5−7:1の範囲に調節されることが好ましい。
【0059】
換言すれば、予備加水分解は、水含有液体と竹のチップの比が1.5−7:1である状態で行われる。
【0060】
この工程においては、竹の化学的成分中のヘミセルロースを分解し、有機酸を生成させ、これによって、竹の加水分解を生起させる。
【0061】
従って、前記液体比が増大したとき、加水分解が円滑に進行するという特徴を使用して、所望の重合度とヘミセルロースの加水分解度を調節しなければならない。
【0062】
換言すれば、液体比に関して、竹のチップの重量が絶乾重量に基づいて1である場合、水溶液の容量(触媒のごとき薬品が含まれている場合には、薬品が水に溶解する状態)は1.5−7である。
【0063】
また、前記液体比の使用は、反応中、竹のチップと薬品との均一な接触を容易にすること及び液体比に応じて、竹のチップと接触する薬品の強度(濃度)を変化させることにより反応の程度を調節することを目的とする。
【0064】
また、予備加水分解工程の条件は要求される品質に応じて若干変化させ得るが、予備加水分解は100−200℃で40−200分間行なうことが好ましい。
【0065】
かかる条件は出願人によって行われた多数の実験によって決定された。
【0066】
本明細書で使用されている“絶乾重量”(“oven-dry weight”)という用語は、竹のチップ中の水分の含有量を除いた、竹のチップの重量を意味する。
【0067】
絶乾重量を算定するためには、竹のチップの水分含有量を測定し、測定した値に基づいて、竹のチップだけの重量を算定する。
【0068】
ところで、本発明の第6工程(予備加水分解)においては、更に、キシロースを抽出し得る。
【0069】
換言すれば、竹はペントサン類を22%に相当する大きな量で含有しており、ペントサン類は繊維(溶解)パルプを製造する予備加水分解中に溶解する。
【0070】
これらのペントサン類は従来技術においては廃棄物として廃棄されているが、ペントサン類の大きな部分を形成するキシロースはフルフラール、キシリトール又は甘味剤を製造するための重要な原料として使用し得る。
【0071】
換言すれば、第6工程(予備加水分解)で溶解させるキシロースは、予備加水分解後のパルプから分離された溶液を熱交換系又は廃熱を使用して濃縮することにより得られる。
【0072】
濃縮された溶液にメタノール又はエタノールを添加してアルカノール沈殿法により又は中和法によりキシロースを沈殿させる。
【0073】
なお、キシロースは後記する第7工程(蒸解工程)においても溶解させ得る。
【0074】
換言すれば、蒸解工程において溶解させたキシロースをアルカリとキシロース溶液とを分離することにより回収しそしてキシロース溶液を前記したものと同一の溶解工程にかける。
【0075】
ついで、第7工程(蒸解工程)が行われる;この工程においては、竹のチップを蒸解ガマに導入し、この蒸解ガマ中において竹のチップを高温で、1:3.5−6.0
(竹のチップ:薬液)の液体比で蒸解する;この液体比は、水、アルカリ及びアントラキノンからなる薬液と竹のチップの比を示す。かくして、竹のチップを軟化させ、パルプ化する。
【0076】
竹のチップを蒸解するための従来の亜硫酸塩法の使用は繊維が弱化し、パルプの収量が低いという欠点を有する。
【0077】
従って、本発明では脱リグニンを促進し、アルファ−セルロースの分解を防止しかつパルプの収量を増大させるためにソーダ−AQ法を適用する。
【0078】
換言すれば、ソーダ−AQ法はアルカリ(主としてNaOH)、アントラキノン及び水からなる液体を、竹のチップの絶乾重量に関して3.5−6.0:1の液体比で添加することからなる。
【0079】
また、ソーダ−AQ法においては、水に添加されるアルカリの量(NaOとして)は、竹のチップの絶乾重量(即ち、竹のチップ中の水分の含有量を除いた重量)に基づいて10−30%であることが好ましく、アントラキノン(AQ)は0.01−2%の量で添加することが好ましい。
【0080】
蒸解工程の温度は140−180℃であることが好ましく、蒸解時間は重合度及び製造されるパルプの品質に応じて90−200分の範囲に制御されることが好ましい。
【0081】
この工程でもキシロールを抽出し得ることは第6工程(予備加水分解)で既に述べたので、その説明はここでは省略する。
【0082】
ついで、第8工程(混入物除去工程)が行われる;この工程では竹と一緒に導入された混入物を遠心式クリーナーを使用して除去する。
【0083】
換言すれば、図2に示されている遠心式クリーナーを使用して竹と一緒に処理プロセスに導入された混入物を除去する。
【0084】
簡単に述べると、遠心式クリーナーは、図2に示すごとき円錐型装置であり、混入物を蒸解パルプから除去するのに使用される。除去されるべき混入物は主として砂、金属片及びガラス片からなり、処理工程の各々において導入され得る。
【0085】
遠心式クリーナーは、パルプの比重は水で完全に湿潤されたとき、1に近づくが、上記した混入物の比重は1より大きいという事実を考慮して使用される。
【0086】
従って、パルプを図2の入り口 10に導入したとき、パルプはポンプの力によって遠心式クリーナー100の内壁に沿って回転し、底部30に移動し、この場合に、回転力により遠心力が加えられる。
【0087】
この作用に従って、比較的軽いパルプは内部に移動し、アクセプト20を経て排出され、重い混入物は外側に移動し、底部30に排出される。
【0088】
なお、パルプより大きい比重を有する混入物をパルプの製造中に除去するのに通常使用される遠心式クリーナー100は“フォワードクリーナー”(“forward cleaner”)と呼ばれており、廃パルプを再循環させる際にパルプより低い重量を有する混入物(スチロフォーム(styroform)、プラスチック等)を除去するのに使用される遠心式クリーナーは“リバースクリーナー”(“reverse cleaner”)と呼ばれている。
【0089】
上記遠心式クリーナーは当業者には周知のものであるので、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の他の遠心式クリーナーも使用し得る。
【0090】
ついで、第9工程(分別工程)が行われる;この工程においては、加圧式スクリーンを使用して混入物を蒸解パルプから除去し、不完全に蒸解されたパルプの部分を蒸解ガマに返送する。
【0091】
換言すれば、加圧式スクリーンを使用して解離しなかった繊維と混入物を除去する。
【0092】
加圧式スクリーンを通過した部分を次の工程に供給し、スクリーン上に残留した部分を振動スクリーンを経て濾過し、振動スクリーン上に残留する部分を廃棄し、繊維状又は不完全蒸解部分を図1に示すごとく蒸解ガマに返送する。
【0093】
ついで、第10工程(洗浄及び濃縮工程)が行われる;この工程においては、デッカーを使用してパルプを洗浄して化学薬品を除去し、水を絞ることによりパルプを濃縮する。
【0094】
デッカー(図示せず)はパルプを洗浄し、同時に、水を絞ることにより濃縮する働きをする装置である。デッカーを使用してパルプを洗浄し、漂白に適する濃度まで濃縮する。
【0095】
この工程においては、洗浄操作を少なくとも3回繰り返して、微細な粉体及び柔組織細胞を可能なかぎり多く除去する。
【0096】
ついで、本発明において非常に重要な第11工程(漂白工程)が行われる。
【0097】
換言すれば、環境ホルモンのダイオキシンの発生のごとき環境問題を排除するために、ECF(元素状塩素不使用、elementary chlorine-free)又はTCF(全塩素不使用、total chlorine-free)漂白法が使用される。
【0098】
この工程の漂白工程として、DED、DEDD、DEDP、DEZP、DEOP、DEOZ及びPEOZが選択的に適用される。漂白プロセス、漂白工程の数及び漂白条件は要求される漂白の程度に応じて決定される。
【0099】
上記した漂白工程についての説明において、Dは二酸化塩素漂白を意味し、Eはアルカリ抽出を意味し、Pは過酸化物漂白を意味し、Oは酸素漂白を意味し、Zはオゾン漂白を意味する。
【0100】
パルプ中の金属イオンの含有量が大きい場合には、パルプの漂白を行う前に、パルプをキレート化剤(EDTA、DTPA、DTPMPA等)で処理して金属イオンを不活性化することにより漂白効率を増大させる。
【0101】
ここで、キレート化剤は金属イオンの反応性を不能化する薬品であり、パルプ中に多量の金属イオンが存在する場合には、この金属イオンは漂白に使用される化学薬品の性能を著しく低下させるであろう。
【0102】
このような理由で、金属イオンの含有量が大きく、その結果、金属イオンが漂白効率を低下させる場合には、パルプの漂白を行う前にパルプをキレート化剤で処理する。
【0103】
複数の漂白工程を使用する漂白法の例として、漂白工程DEDDは、漂白が4つの連続的漂白工程:(1) 二酸化塩素漂白、(2) アルカリ抽出、(3) 二酸化塩素漂白及び(4) ) 二酸化塩素漂白で行われることを示している。
【0104】
換言すれば、前記した種々の」漂白工程は、製造されるべきパルプに要求される白色度又は化学的純度に応じて又は作業者の選択に応じて、パルプ製造業者が漂白工程を選択し得ることを示している。
【0105】
漂白工程の数を増大させる目的に関して、白色度又は化学的純度についての要求が大きい場合には、漂白工程の数を増大させるか又は使用する薬品の量を増大させることができる。また、同一の水準が要求される場合においても、各工程で使用される薬品の量を減少させかつ工程の数を増加させる方法を使用して、パルプに対する有害な影響(パルプの損傷、分解等)を最小限にすることができる。
【0106】
従って、同一水準の品質が要求される場合においても、漂白工程の数又は使用される化学薬品の量を調節することが可能であり、従って、漂白工程に供給されるパルプの状態は上記した工程で行われる予備加水分解及びパルプ化又は蒸解の程度に応じて変動するので、上記の調節を絶対的数値として表すことは困難である。
【0107】
しかしながら、繊維(溶解パルプ)を漂白する場合、蒸解ガマ内で製造されるパルプ中のリグニンの含有量を最初に測定し、測定された含有量に応じて、漂白薬品の添加量を算定して、要求される品質に応じて漂白薬品の量を増加又は減少させることが好ましい。
【0108】
かくして、本発明によれば、前記漂白剤を使用して環境汚染物であるダイオキシンの発生を防止することができ、すぐれた漂白効果を得ることができる。
【0109】
ついで、パルプの表面及び内部から金属イオンを除去する第12工程(酸処理及び洗浄工程)が行われる。
【0110】
換言すれば、繊維(溶解)パルプの表面及び内部に存在する金属イオンを除去するために、パルプをpH 3−5に調節し、室温で20−110分間、酸で処理しついでパルプが中性pH範囲に到達するまで清浄な水で洗浄する。
【0111】
処理時間は金属イオンの含有量及び除去の困難度に応じて増大又は減少させることが好ましい。
【0112】
最後に、パルプをシート状又はロール(巻物)状にする第13工程(シート形成工程)が行われる。
【0113】
また、本発明は上記したごとき方法に従って竹を使用して製造された全ての繊維(溶解)パルプを包含し、このパルプはシート又はロールの形であり得る。
【0114】
また、シート状パルプは0.1−3mmの厚さを有するように製造することが好ましく、ロール状パルプはパルプを0.1−1.5mmの厚さを有するウエブにし、このウエブをロール状に巻き取ることが好ましい。
【0115】
即ち、ロール状パルプは、ローラーに巻き取らなければならないので、シート状パルプより薄い形で製造することが好ましい。
【0116】
以下においては、本発明を図面を参照して説明する。
【0117】
実施例1
ミャンマー竹を約2mmの幅に裂断しついで15−25mmの長さに切断した。切断した材料を60メッシュの篩を通過させて篩分け、混入物と竹の小さな断片を除去しついで洗浄した。
【0118】
洗浄した竹 400g(絶燥重量に基づく)を蒸解ガマに導入し、このカマに水を添加して液体比を6:1とした。ついで、ステンレス製の重しを竹の上に載せて竹を水に十分に浸漬させた。
【0119】
蒸解ガマを蓋で覆い、ねじで止めた後、竹を170℃で90分間予備加水分解にかけた。
【0120】
予備加水分解の完了後、蒸解ガマの内容物を洗浄し、再び、蒸解ガマに装入し、蒸解ガマに16%の活性アルカリ(NaOとして計算して)及び0.1%のアントラキノンを添加して液体比を4:1に調節した。ついで、竹を170℃で120分間蒸解した。
【0121】
蒸解したパルプを4工程漂白DEDDにかけた;得られたパルプの特性を表1に示す。
【0122】

【0123】
蒸解ガマ内で製造されたパルプ中に残留するリグニンの量を示すのにカッパ価を使用し、このカッパ価を漂白を行う際の薬品の添加量を決定するための基準として使用し、そしてこのカッパ価は酸化―還元滴定の際の過マンガン酸カリウムの消費量から算定した。
【0124】
実施例2
竹の処理と大部分の条件は実施例1と同一であるが、予備加水分解と漂白条件は下記の通りであった。
【0125】
予備加水分解における液体比は4:1に調節し、予備加水分解は170℃で100分間行った。
【0126】
蒸解し、洗浄したパルプを4工程漂白DEDPにかけた;得られたパルプの特性を表2に示す。
【0127】

【0128】
工業的適用性
上記したごとく、本発明によれば、縦方向に裂断し、横方向に切断して予備加水分解と蒸解を容易にすることにより繊維(溶解)パルプをより温和な条件下で製造することが可能である。また、蒸解工程で触媒としてアントラキノンを使用するソーダ−AQ法を竹のパルプ化に適用することにより、本発明によれば、脱リグニンについて大きな効果が得られ、パルプの品質が改善され、パルプの収率が増大する。
【0129】
また、ECF及びTCF漂白法を適用することにより環境問題が解決され、そして、予備加水分解、蒸解及び漂白条件を調節することにより、製造されるべきレーヨンの性質に応じてアルファ−セルロースの含有量及び重合度を随意に調節し得る。
【0130】
なお、繊維(溶解)パルプ製造プロセスで溶解したキシロースを回収し、回収したキシロースをキシリトール、甘味剤、フルフラール等を製造するための原料として使用することにより廃棄物の資源としての使用及び経済効率の増大が達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の製造方法を連続的に示すフローチャートである。
【図2】一般的な遠心式クリーナーを示す図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 竹から葉を除去する、葉の除去工程;
(2) 竹を縦方向に裂断して1.5〜3mmの幅にする、縦方向の裂断工程;
(3) 裂断した竹を10〜30mmの長さに横方向に切断して竹のチップを製造する、横方向の切断工程;
(4) 切断した竹のチップから小さい断片又は不純物を濾別する選別工程;
(5) 竹のチップを水で洗浄して不純物、混入物又は塵埃を除去する洗浄工程;
(6) 洗浄した竹のチップを、水又は水蒸気を使用する予備加水分解工程にかけ、そして、予備加水分解を促進するために、必要とされる予備加水分解の程度に応じて二酸化硫黄又は硫酸を添加して竹のチップからヘミセルロースを溶解させる、予備加水分解工程;
(7) 竹のチップを蒸解ガマに導入する蒸解工程;この工程においては、水、アルカリ及びアントラキノンからなる薬液と竹のチップの重量の比率を1:3.5−6.0(竹:薬液)に調節し、竹のチップを高温で蒸解し、かくして、竹のチップを軟化し、パルプ化する;
(8) 遠心式クリーナーを使用して竹から混入物を除去する混入物除去工程;
(9) 加圧式スクリーンを使用して蒸解したパルプから混入物を除去し、そして、不完全に蒸解した竹の部分を蒸解ガマに還送する分別工程;
(10) デッカーを使用してパルプを洗浄して薬品を除去し、かつ、水を絞ってパルプを濃縮する洗浄及び濃縮工程;
(11) 洗浄し、濃縮したパルプを漂白する漂白工程;
(12) パルプの表面及び内部に存在する金属イオンを除去する酸処理及び洗浄工程;及び
(13) パルプをシート又はロールにするシート製造工程;
からなる、竹を使用する繊維パルプの製造方法。
【請求項2】
工程(6)の予備加水分解を、水含有液と竹のチップとの液体比が1.5−7:1である状態で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(7)において、水に添加される(Na2Oのごとき)アルカリは、竹のチップの絶乾重量(即ち、竹のチップの水含有量を除いた重量)に基づいて、10−30%であり、アントラキノン(AQ)は0.01−2%の量で添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(11)の漂白工程は、ECF(元素状塩素非含有)又はTCF(全塩素非含有)漂白プロセスに従った漂白段階を使用して行う、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
漂白工程は、DED、DEDD、DEDP、DEZP、DEOP、DEOZ及びPEOZからなる群から選ばれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(12)の酸処理及び洗浄工程は、パルプのpHを3−5に調節し、パルプを室温で20−110分間、酸で処理し、ついで、処理されたパルプを、パルプのpHが中性pH範囲に到達するまで清浄な水で洗浄することからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法に従って竹から製造された繊維パルプ。
【請求項8】
パルプがシート状又はロール状である、請求項7に記載の繊維パルプ。
【請求項9】
シート状パルプは、0.1−3mmの厚さを有する竹を使用して製造する、請求項8に記載の繊維パルプ。
【請求項10】
ロール状パルプは0.1−1.5mmの厚さを有する巻きウエブからなる、請求項8に記載の繊維パルプ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−501074(P2008−501074A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514926(P2007−514926)
【出願日】平成17年6月18日(2005.6.18)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001893
【国際公開番号】WO2006/115310
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(506355486)
【Fターム(参考)】