説明

竹材の連続的平板化方法及びその装置

【課題】 生産性に優れ、安価な製品を容易に得られる、竹材の連続的平板化方法及びその装置を提供する。
【解決手段】竹が縦に複数に分割されることによって形成された、一つの断面円弧状の柱面を持つ竹分割片を加熱したうえ、ロール加工によって平板化するよう、成形容易に均一加熱されたうえ、断面円弧状の凸の表面を上にして長手方向に前進する前記竹分割片1を、左右対称の支持・拘束機構20の円錐台状ロール21,21によって、その前進を阻むことなく、それぞれ左右両側面で支持、拘束した状態で、押圧ロール30によって上方から前記凸の表曲面を押圧し、前記凹の裏曲面を下方にスプリングバック量分凸になるまで逆反りさせるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長が速く、且つ地球温暖化の原因である二酸化炭素を吸収する竹を建築材や家具素材として平板化するに当たって、生産性に優れ、且つ安価な製品が容易に得られる、竹材の連続的平板化方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油を初めとする化石燃料の利用で排出される二酸化炭素による地球温暖化の問題が高まっている。それに対して植物はその光化学反応によって二酸化炭素を吸収しながら、成長するため、地球上の二酸化炭素の削減に貢献している。従って、森林資源の保全を図りながら、それから得られるバイオマスを有効利用すると共に、二酸化炭素を吸収し、その増加を抑制することは、環境保全、資源の有効活用の上から極めて望ましいことである。なお、バイオマスの有効活用は、その発生場所の周辺地域の振興と利便性向上の一助にもなる。
【0003】
バイオマスのうち、竹は稲科植物に属し、一般の樹木に比較して繁殖力が旺盛で、4〜5年で成竹となり、10年間で2倍以上に拡がり、近年それに対する需要が減少しているため、荒れるままに放置された竹林域が増大し、他の樹林や畑を侵食さえしていると言う問題点がある。従って、それの計画的な伐採利用は、上記効果に加えて、地域の雇用確保、活性化、過疎化の抑制を、長期にわたって図る一助とすることが出来る。
【0004】
竹材の利用の一つとしてそれを平板化し、集成せずにそのまま建築材や家具素材等へ利用するものが提案されている(例えば、特許文献1乃至3)。
【0005】
そのうち、特許文献1には、縦割り竹材の前処理加工及びその前処理加工された縦割り竹材からの平板製造について記されている。さらに後者の平板製造については、縦割り竹材を一方向に長く、長手方向に順次下面の形状が変化する、トンネル状の加熱展開テーブル*1に、その下方長手方向に配置された複数の圧延送りロール*2で送り込み、前記加熱展開テーブルに内蔵の高周波電極で均一加熱すると共に、その縦割り竹材の幅方向の両端を左右一対の展開ガイドで挟持した状態で、その内面側を前記圧延送りロールで順次加圧することによって、展開(平板化)して行き、その展開の進行と同時に、前記展開ガイドの挟持間隔を順次拡大して行くことが記されている。
1:その断面は、内蔵の高周波電極と共に、入口では曲率半径が小さい、上に凸の円弧状であるが、その円弧の曲率半径が下流に向かって順次増大し、出口では平面状となっている。
2:その形状は、入口側では球状であるが、順次曲率半径が下流に向かって増大した楕円回転体状を経て、最後は円柱状となっている。
【0006】
それに対して、特許文献2には、長手方向に形成された1本の溝を上にして、水平に配置された丸竹を高周波又は電磁波又はスチームを利用した加熱設備で内外から加熱した後、複数対の内外の回転プレスローラで内外から連続して加圧することによって板状にすることが記されている。
【0007】
上記内外の回転プレスローラについて説明すると、上流側入口では、竹の中心と溝とを通る平面を対称面として、その対称面に対称に竹の溝のすぐ両側、竹の外面に当接する左右一対の円柱状ローラと,それに対応して、竹の内面に当接する左右対称の円錐台状ローラが設けられている。以下、下流に向かって順次外側の回転ローラの外面への当接位置が両側に移動すると共に、それに対応する内面側の回転ローラは円柱状のものへと変化している。さらに下流側、当接位置が溝の反対側に近くなると、二つの内面側の回転ローラ(円柱状)が一体化されると共に、そのローラの両側の角が切り欠かれたものになり、その切り欠かれた左右両側の部分だけが、竹の内面、対称の位置に当接するが、それもさらにその表面全体で当接するものになると共に、外側のローラも一つになった後、最後は平板化された竹の幅と略等しい長さの内外一対の円柱状ロールになっている。
【0008】
さらに同じ出願人による特許文献3では、長手方向に形成された1本の溝を上にして、水平に配置された丸竹を高周波又はスチームを利用した加熱設備で上下(内外)から加熱した後、複数対の支持ローラ*1と加圧ローラ*2とで上下(内外)から連続して加圧することによって板状にすることが記されている。
1:その表面形状は、入口では曲率半径が小さい、両側が切断された、上に凸の略球状であるが、それの曲率半径が下流に向かって順次増大した(両側が切断された)略楕円回転体状を経て、出口では円柱状となっている。
2:その形状は、入口では曲率半径が小さく、その曲率半径が下流に向かって順次増大する鼓状であるが、出口では円柱状となっている。
【0009】
以上の従来例は、形状が長手方向に変化する加熱展開テーブルとそれに対応して長手方向に形状の異なる複数の圧延送りロール、又は長手方向に順次形状と数が変化する複数対の内外の回転プレスローラ、又は長手方向に形状が異なる複数の加圧ロールとそれに対応して形状が長手方向に変化する支持ローラを、それぞれ備えている。しかしながら、いずれもその機構が極めて複雑であって、1番目のものは、内面の伸び抑制のための展開ガイドで幅方向両側縁を拘束しているが、移動時にそれと摺動するため、滑り摩擦が大きく、また、2番目、3番目のものは、内面への割れ抑制機能が弱く、三者いずれも高速処理は困難であって、設備負担が高く、生産性が低いと言う問題点がある。そのうえ、平均径の違うものは勿論、根元側と先端側とで径が異なる広範囲の竹材を処理するためには、装置のさらなる複雑化は免れず、いずれにしても設備コスト、製品コストが高くなると言う問題点がある。
その他、特許文献2には、平板にした竹の固定のための乾燥について触れられているが、熱風によるとだけしかなく、それによる均一加熱は困難であって、加熱むらによる変形は避けられそうにない。
【0010】
特許文献4は上記問題を解決すべく、先に提出したものであるが、竹を平板化する部分の装置は単純化されたものの、竹のクリープ変形特性によるだけでは平板とみなしうる賦形のためにはロール速度を抑える必要があり、満足できる高速処理ができないことが判った。特許文献4の前後の方法と装置はそのまま残して、竹を平板化する部分の方法と装置を改善変更した。
【0011】
【特許文献1】特許2098043号公報((請求項1),(請求項3)及び(請求項4),第1図,第3図乃至第5図)
【特許文献2】特開2741328号公報((請求項1),(請求項4)及び(請求項6),(実施例)の(0039),図6乃至図12)
【特許文献3】特開平8−336810号公報((特許請求の範囲)(但し(請求項4)と(請求項7)以下を除く),図8乃至図13)
【特許文献4】特許2004−209806号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のことから、本発明は、従来の欠点を除いた、生産性に優れ、安価な製品が容易に得られる、竹材の連続的平板化方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達するために、請求項1の発明に係わる竹材の連続的平板化方法は、竹が縦に複数に分割されることによって形成された、一つの断面円弧状の柱面を持つ竹分割片を加熱したうえ、ロール加工によって平板化するものであって、成形容易に均一加熱されたうえ、断面円弧状の凸の表面を上にして長手方向に前進する前記竹分割片を、その前進を阻むことなく、それぞれ左右両側面で支持、拘束し、上方から前記凸の表曲面を押圧することによって、前記凹の裏曲面を下方にスプリングバック量分凸になるまで逆反りさせることを含んでいる。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の発明の構成に加えて、前記平板化された竹分割片にマイクロ波を照射することによって均一加熱し、且つ減圧することによってそれの残留水分を急速に除去し、平板の形をそのまま固定することを含んでいる。
【0015】
請求項3の発明は、竹が縦に複数に分割されることによって形成された、一つの断面円弧状の柱面を持つ竹分割片を加熱したうえ、ロール加工によって平板化する、竹材の連続的平板化装置であって、成形容易に均一加熱されたうえ、断面円弧状の凸の表面を上にして長手方向に前進する前記竹分割片の左右両側面を、その前進を阻むことなく、両側から挟み、支持、拘束する左右対称の支持・拘束機構、及びその左右両側面で支えられた竹分割片を、その凹の裏面が下方にスプリングバック量分凸に逆反りするまで、上方から押圧する押圧ロールを備えている。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3の発明の構成に加えて、前記左右対称の支持・拘束機構が、前記凸の表面を上にして前進する竹分割片の左右各側面と外面を当接した状態でその竹分割片と同じ速度で巡回する左右1対の無端の帯板と,その巡回する各無端の帯板を支持し、低摩擦で案内する左右対称、1対の無端のレールとを備えている。
【0017】
請求項5の発明は、請求項3又は4の発明の構成に加えて、前記竹分割片の幅径又は肉厚の変化に応じて、それぞれ前記左右両側面を拘束する前記左右対称の拘束機構による拘束の度合い又は前記竹分割片の前記凸の表面を押圧する押圧ロールによる押圧の度合いを変化させる制御部を備えている。
【0018】
請求項6の発明は、請求項3乃至5のずれかの発明の構成に加えて、前記竹分割片の内外面にマイクロ波を均一に照射可能にするために、横断面がその竹分割片の内外面に沿って彎曲する多孔金属板を有する加熱装置を備えている。
【0019】
請求項7の発明は、請求項3乃至6のいずれかの発明の構成に加えて、前記平板化された竹分割片の水分を除去し、平板の形をそのまま固定するために、それを暫時減圧して加熱する、乾燥装置を備えている
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、成形容易に均一加熱されたうえ、断面円弧状の凸の表面を上にして長手方向に前進する竹分割片は、上方から前記凸の表面が押圧されても、その左右両側面で支持、拘束され、凹の裏面の伸びが阻止されているため、単に下から支えられた状態で上方から押圧されることによる割れを生じることはない。前記左右両側面で支持、拘束された竹分割片の見掛け上平板の形までの押圧では、押圧する時間が短いとその押圧から開放されたとき、スプリングバックによって上に凸に湾曲した状態に戻るため、完全な平板は得られず、完全な平板化にはかなりの長い押圧時間が必要であり、そのため生産性が低いと言う問題があったが、その押圧が前記凹の裏面を下方にスプリングバック量分凸に逆反りするまで行われることによって、その竹分割片はその押圧から開放されると、スプリングバックによって戻っても平板になる。本発明によって押圧時間が著しく短縮され、生産性が向上した。
【0021】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加えて、前記ロール加工によって平板化された竹分割片が急速且つ均一加熱され、且つガス抜き減圧によって,残留水分が急速に除去され、平板の形が完全に固定される。従って折角平板化されても、加熱むら等があって、変形するおそれがある、例えば特許文献2によるものと比較して、良質の竹材の平板が得られる。
【0022】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果に加えて、左右対称の支持・拘束機構として、例えば軸が鉛直、且つ左右1対の円錐台状ロールが使用されれば、いずれの従来例に比較しても装置の構成が著しく簡単で、部品点数が僅少であるため、設備コストは勿論、保全コストが著しく低くなる。
【0023】
請求項3の発明では、左右対称の支持・拘束機構として、例えば前記軸が鉛直、且つ左右1対の円錐台状ロールが使用される場合、それが小径のものでは、竹分割片を支持、拘束する間隔を、その竹分割片の進行方向に所望長さ(時間)、略均一に確保することが困難又は不可能であって、そのためには大きな径のロールが必要であると言う問題点があるのに対して、請求項4の発明によれば、それに比較して構成は若干複雑になるが、前記左右1対のレールすなわち帯板の周の形状を自由に設定可能あり、それによって例えば均一な間隔を任意の長さ確保可能であるだけでなく、竹分割片の進行方向に対して、その間隔と長さとを、任意に、且つ容易に、且つ最小限の占有面積で付与することが可能である。
【0024】
請求項5の発明によれば、請求項3又は4の発明の効果に加えて、竹分割片の幅径又は肉厚に応じて、左右1対の前記支持・拘束機構の左右方向の間隔又はその支持・拘束機構のフランジと押圧ロールとの間隔を変化させるだけで、それの平板化を容易に実施可能であり、例えば幅径又は肉厚の小さい先端から根元側に向かって処理される場合、その幅径又は肉厚の増大に応じて、若干の時間差を以って上記ロールの間隔を次第に拡げれば、長い竹分割片を幅径又は肉厚の比較的揃った短いものに裁断する必要がなく、長いものを一度に平板化可能であって、生産性が著しく向上する。
【0025】
請求項6の発明によれば、請求項3乃至5の発明のいずれかの効果に加えて、断面円弧状の竹分割片を容易に均一且つ急速に加熱することが可能となり,ロール加工の迅速化を促進する。
【0026】
請求項7の発明によれば、請求項3乃至6の発明のいずれかの効果に加えて、請求項2の発明の効果と同様の効果を発揮することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に関わる竹材の連続的平板化方法及びその装置のうち、先ず成形方法及びその装置の第1の形態例について図1によって説明すると、10は成形容易に均一加熱された、断面円弧状の竹分割片1を成形し、平板化する成形装置であって、(a)はその平面図、(b)は鉛直縦断面図、及び(1)乃至(4)はその成形の推移を示す鉛直横断面図である。
【0028】
さらに詳細に説明すると、20は、左右対称の支持・拘束機構であって、前記均一加熱されたうえ、断面円弧状の凸の表面を上にして長手方向に前進する前記竹分割片1を、その前進を阻むことなく、それぞれの左右両側面を両側から挟むことによって支持し、拘束する左右1対の円錐台状ロール21,21と,その各々と同軸一体の左右1対の円形フランジ22,22と,を備え、鉛直軸21xの周りに駆動装置(図示省略)によって一体に回転可能に構成されている。
【0029】
なお、その各フランジ22は、その各円錐台状ロール21の下底側周上に突設され、しかもその上面は外下向きに僅かに傾斜している。このフランジ22,22は、基本的には竹分割片1の支持が円錐台状ロール21,21による挟持によって行われるため、その支持のために不可欠であると言うものではないが、それによって竹分割片1が円錐台状ロール21,21に適正な姿勢で支持、拘束されるよう、それを誘導すると共に、後述の上方からの押圧による竹分割片1の下に凸の逆反りの度合いを規定する機能を有する。
【0030】
30は、前進する竹分割片1の直上に配置された端に比べて中央部の径が僅かに大きい(外に凸の)円柱状の押圧ロールであって、水平軸30xの周りに駆動装置(図示省略)によって回転しながら、上記円錐台状ロール21,21によって支持、拘束された竹分割片1を、その凹の裏面が下方にスプリングバック量分(約50mm幅の竹分割片で2mm程度)凸に逆反りするまで、上方から押圧するよう構成されている。
【0031】
ここで、円錐台状ロール21,21と押圧ロール30との径及び竹分割片1の走行方向についての位置関係について説明すると、その押圧ロール30による竹分割片1の押圧開始からその押圧が最大に達するまで、その竹分割片1の左右両側面がその円錐台状ロール21,21によって確実に支持、拘束され、それによってその裏面側が伸びないよう、図1では、先ず円錐台状ロール21,21として、押圧ロール30に比べて著しく大径のものが採用されている。そのうえ、前記円錐台状ロール21,21の各鉛直軸21xが、押圧ロール30の水平軸30xを含む鉛直面より少し上流側に位置するよう設定されている。すなわち、両円錐台状ロール21,21の間隔が最も狭くなる位置を少し過ぎ、その拘束が少し緩くなった位置で竹分割片1が押圧ロール30によって最も強く押圧され、下にスプリングバック量分凸に逆反りするよう設定されている。なお、図1(a)の斜線部分は、押圧ロール30の竹分割片1の表面との当接部分を示す。
【0032】
上記成形装置10の作用について説明する。水平に前進する竹分割片1の長手方向に垂直な各横断面は、先ず前記左右1対のフランジ22,22上に到達し、それによって下から支えられる(図1(1))。このとき、もし前記左右1対の円錐台状ロール21,21の間隔が、押圧され、展開、平板化される竹分割片1を支えるだけで、その側面を拘束するまでに至らない大きさであれば、円弧長の小さい裏面が円弧長の大きい表面に引っ張られ、割れを生じる。
【0033】
次いで前記各断面はそのフランジ22,22によって誘導され、前記左右1対の円錐台状ロール21,21の間に進入する。そしてその円錐台状ロール21,21の間隔が、竹分割片1の側面を支持、拘束する程度の大きさに設定されているため、その各横断面は両円錐台状ロール21,21に挟まれ、それらによって左右両側面の支持・拘束され、さらに押圧ロール30の下に入ると、それによる押圧が開始される。その後各横断面は両円錐台状ロール21,21の間隔が最も狭くなる位置(鉛直軸21x,21xを含む鉛直面)に達するまで、それらによる左右両側面の支持・拘束及び押圧ロール30による押圧の度合いが次第に増大、平板化が進む(図1(2))。
【0034】
その鉛直軸21x,21xを含む鉛直面を過ぎると、前記両円錐台状ロール21,21の間隔は次第に拡がるが、押圧の度合いはなおも増大し、それによってその各横断面の左右方向の展開、平板化が進み、幅径が増大するため、各横断面に対する左右両側面の拘束は保持される。従って竹分割片1のいずれの方向に対しても引っ張りを受けることはなく、割れを生じることはない。
【0035】
そして押圧ロール30の水平軸30xを含む鉛直面に達すると、押圧の度合いが最大になり、各横断面は裏面がスプリングバック量分下に凸に逆反りする(図1(3))。この逆反りのため、および側面に対する拘束が緩むため、竹分割片1の裏面長は拡大状態になるが、その逆反りの程度が僅少であるため、前段階の平面化までの幅全体の大きな圧縮量に埋もれて、割れを生じることはない。その後前記水平軸30xを含む鉛直面を過ぎると、前記各横断面に対する押圧の度合いが次第に緩められ、遂にはそれから解放され、下に凸に逆反りの状態からスプリングバックによって平板にまで戻る(図1(4))。
【0036】
以上のように、単段の支持・拘束機構20、押圧ロール30の組み合わせだけでロール加工することによって、竹分割片1は内面の伸びによる割れを生じることなく、容易に平板化可能であるため、いずれの従来例に比較しても装置が著しく簡単であって、設備コストが著しく低くなる。しかも、竹分割片1と,その両側面を支持拘束する両円錐台状ロール21,21と,の間の摩擦が転がり摩擦であるため、その竹分割片1の両側面の支持拘束に何ら支障がなく、その進行速度を容易に高めることが可能である。従って、いずれの従来例に比較しても著しい高速化が可能であり、生産性が著しく高くなる。
【0037】
しかも、前記左右両側面で支持、拘束された竹分割片1を見掛け上平板の形まで押圧する時間が短いと、その押圧から開放されたとき、スプリングバックによって上に凸に湾曲した状態に戻るため、完全な平板は得られない。従って完全な平板化にはかなりの長い押圧時間が必要であり、そのため生産性が低いと言う問題があったが、本発明によって押圧時間が著しく短縮され、生産性が向上した。
【0038】
しかしながら、上記第1の形態例には、左右1対の円錐台状ロール21,21が使用されており、それらが小径のものでは、竹分割片1を支持、拘束する間隔を、その竹分割片1の進行方向に所望長さ(時間)、略均一に確保することが困難又は不可能であり、生産性向上のためには押圧ロール30と共に円錐台状ロール21,21の径を著しく大きくする必要があり、比較的小径の押圧ロール30はともかくとして、円錐台状ロール21の径をさらに大きくすると、その占有面積が異常に大きくなると言う問題点がある。
【0039】
その問題点を解決する第2の形態例について図2乃至図4によって説明すると、新しい支持・拘束機構120は、上記第1の形態例の支持・拘束機構20に換わるものであって、121,121は左右1対の無端の帯板であって、前記凸の表面を上にして前進する竹分割片1の左右各側面とそれぞれ外面を当接し、後述するように、その竹分割片1と同じ速度で巡回することが可能に構成されている。122は、その巡回する各無端の帯板121の内面を支持し、転動する多数のコロ、123,123は左右対称、1対の無端のレールであって、その転動する多数のコロ122を介して巻き掛けられた前記各無端の帯板121,121をその周りに巡回可能に支持し、案内するよう構成されている。
【0040】
なお、図2及び図3に示すように、各前記無端の帯板121の外面は、前進する竹分割片1の側面の全面に当接可能に平行に、その当接区間では、前記両帯板121,121の鉛直対称面Tに対して傾斜しており、従ってその帯板121の内外面に垂直な面Mも、前記対称面に対して外下向きに傾斜している。また、その各無端の帯板121が多数のコロ122を介して巻き掛けられる各無端のレール123は、図ではレール台124の外周面を切り欠くことによって形成された断面コの字状の無端の溝よりなり、その溝内には前記多数の円柱状のコロ122が装填されているが、各帯板121の巡回軌道が任意に規定され、その巡回が低摩擦で行われるものであれば、これに限定されるものではない。
【0041】
そのうえ上記各レール台124の外周のうち、竹分割片1に相対する部分、溝の開口下方には、帯板121の下端に接するフランジ125が突設されている。なお、このフランジ125は、上述の円錐台状ロール21に突設されたフランジ22と同じ機能を有するものであって、竹分割片1を下から支えると共に、それを下に凸に逆反りさせることが可能に、その上面は外下向きに僅かに傾斜している。
【0042】
ここで各帯板121の巡回軌道のうち、戻り部分を除く、竹分割片1の側面に相対する部分について説明すると、図4に示すように、先ず竹分割片1の進行方向上流側では、前記押圧ロール30に近付くに従って、次第にその竹分割片1の側面に次第に接近する。次いで押圧ロール30下方では、それによる押圧開始直前からその側面に当接する。その押圧による竹分割片1の左右への展開、幅の増大に対して、その当接した状態を保ちながら、左右いずれかに緩やかに後退するが、押圧最大の点を過ぎ、その押圧から解放される位置からは竹分割片1の側面から離れる。従って、この支持・拘束機構120を出来るだけ有効に活用するためには、大径の押圧ロール30を対応させることが好ましい。しかし、これはその1端であって、必要によって押圧ロール30の径、帯板121の軌道の形状は任意に変更可能である。
【0043】
作用について説明する。基本的には、上述の円錐台状ロール21,21を備えた第1の形態例のそれと同様であって、水平に前進する竹分割片1の長手方向に垂直な各横断面は、先ず前記左右1対のフランジ125,125上に到達し、それによって下から支えられる(図2(1))。次いで前記左右1対の帯板121,121の間に進入する。それに伴い、その各横断面は両帯板121,121によって左右両側面が支持・拘束され、さらに押圧ロール30によって上方から押圧される(図2(2))。この押圧開始位置から押圧ロール30による押圧の度合いは次第に強くなり、それに応じて両帯板121,121の間隔は次第に拡がる。これは各横断面の左右方向の展開、幅径の拡大に対応するものであって、その両帯板121,121による各横断面の拘束は、それが見掛け上平板になるまで引き続き保持される。そのため、竹分割片1のいずれの方向に対しても引っ張りを受けることはなく、従って割れを生じることはない。
【0044】
そして押圧ロール30の水平軸30xを含む鉛直面に達すると、押圧の度合いが最大になり、各横断面は裏面が僅かながら下に凸に逆反りする(図1(3))。この逆反りのため、および側面に対する拘束が緩むため、竹分割片1の裏面長は拡大状態になるが、その逆反りの程度が僅少であるため、前段階の平面化までの幅全体の大きな圧縮量に埋もれて、割れを生じることはない。その後前記水平軸30xを含む鉛直面を過ぎると、前記各横断面に対する押圧の度合いが次第に緩められ、遂にはそれから解放され、下に凸に逆反りの状態からスプリングバックによって平板にまで戻る(図2(4))。
【0045】
本形態例は、上述の円錐台状ロール21,21を備えた第1の形態例に比較して構成は若干複雑になるが、前記左右1対のレール123,123、すなわち帯板121,121の周の形状を自由に設定可能あり、それによって例えば均一な間隔を任意の長さ確保可能であるだけでなく、竹分割片1の進行方向に対して、その間隔と長さとを、任意に、且つ容易に、且つ最小限の占有面積で付与することが可能であり、生産性を著しく高くすることが出来るか、又は装置の占有面積を最小限に小さくすることが出来る。
【0046】
最後に成形装置10の上流側に配置される機器について図6によって説明する。40,40は竹分割材1を上下から挟んで水平方向に送る、一対の送りロール、50はその送られて来た竹分割片1を上下から均一加熱する加熱装置、60は成形装置10を含む装置全体を制御する制御部、61は前記加熱装置50を通過した竹分割片1の計測装置であって、特に上述のように、竹分割片1の幅径又は肉厚が変化する場合、前記成形装置10の制御に必要な、その幅径・肉厚等を予め計測するものである。
【0047】
上述の第1の形態例に付加する制御手段について図5及び図6によって説明すると、長手方向にその幅径又は肉厚が変化する竹分割片1に対応可能に、その幅径又は肉厚に応じて、それぞれ前記支持・拘束機構20,20の円錐台状ロール21,21の左右方向の間隔(鉛直軸21x,21xの間隔)又はその支持・拘束機構20,20のフランジ22,22上面と押圧ロール30の下端との間隔(水平軸30xの高さ)を容易に変化させることが可能に構成されており(図示省略)、例えば幅径又は肉厚の小さい先端から根元側に向かって処理される場合は、図6に示すように、幅径又は肉厚の増大に応じて、それぞれ若干の時間差を以って上記ロールの間隔を次第に拡げることになる。なお、この制御手段は第2の形態例の支持・拘束機構120,120にも略同様に適用可能である。
【0048】
上記加熱装置50は、図7(a)に示すように、マイクロ波を発射するマグネトロン51、そのマグネトロン51から発射されたマイクロ波を、加熱域53を通過する竹分割材1の上下両方から照射可能に導く導波管52,52、そのマイクロ波を竹分割材1に対して均一に分散し、照射する、多孔の金属よりなる均一分散板54を備えている。なお、その均一分散板54は、マイクロ波の外への漏れ防止のため、その周縁部に対して十分な広さを確保する必要があり、また、図7(b)に示すように、竹分割材1の均一加熱のため、均一分散板54は、その横断面が、竹分割片1の内外面に沿って湾曲していることが好ましい。
【0049】
その他、図8は、平板化された竹に残った水分を除き、その形状を固定するための乾燥装置70を示したものであって、71は平板化された竹を水平に挿入し、鉛直方向に積層することが可能に、直方体の箱状に形成されたケーシング、72はその上側面に形成された、蓋つきの挿入口、73はその反対側、下側面に形成された、蓋つきの排出口、74は未乾燥の竹を背後から押し、前記挿入口72に挿入するためのプッシャ、75は乾燥済みの竹を背後から押し、前記排出口53から排出するためのプッシャ、76はマグネトロン(図示省略)へ連通するマイクロ波の導波管、77は真空ポンプ(図示省略)へ連通し、発生した水蒸気等を抜き出すガス抜き管である。それの作用として、各部の操作スケジュールを示せば、図9に示す通りである。なお、以上の付属装置の効果については、前述の発明の効果に示した通りであって、ここでは省略する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係わる竹材の連続的平板化方法及びその装置の第1の形態例を示したものであって、装置構成を示す平面図、縦断面図、及び竹分割材の平板化の推移をその断面形状の変化で示す、推移断面図である。
【図2】第2の形態例の竹分割材の平板化の推移をその断面形状の変化で示す、推移断面図である。
【図3】図2の支持・拘束機構の一部を示す断面図。
【図4】図2の支持・拘束機構の一部を示す平面図である。
【図5】装置の主として上流側部分を示す断面図である。
【図6】幅径又は肉厚の変化とロール間隔の変化の関係を示すグラフである。
【図7】竹分割片の加熱装置を示す、それぞれ(a)は長手方向断面図、(b)はそれに垂直な横断面図である。
【図8】平板化された竹分割片の乾燥装置の断面図である。
【図9】図8に示す乾燥装置の各部の作動スケジュールを示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1 竹分割片
10 成形装置
20 支持・拘束機構
21 円錐台状ロール
21x 鉛直軸
22 フランジ
30 押圧ロール
31x 水平軸
40 送りロール
50 加熱装置
51 マグネトロン
52 導波管
53 加熱域
54 均一分散板
60 制御部
61 計測装置
70 乾燥装置
71 ケーシング
72 挿入口
73 排出口
74 プッシャ
75 プッシャ
76 導波管
77 ガス抜き管
120 支持・拘束機構
121 帯板
122 コロ
123 レール
124 レール台
125 フランジ
M 帯板の内外面に垂直な面
T 対称面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹が縦に複数に分割されることによって形成された、一つの断面円弧状の柱面を持つ竹分割片を加熱したうえ、ロール加工によって平板化する、竹材の連続的平板化方法であって、成形容易に均一加熱されたうえ、断面円弧状の凸の表面を上にして長手方向に前進する前記竹分割片を、その前進を阻むことなく、それぞれ左右両側面で支持、拘束し、上方から前記凸の表曲面を押圧することによって、前記凹の裏曲面を下方にスプリングバック量分凸になるまで逆反りさせることを特徴とする、竹材の連続的平板化方法。
【請求項2】
前記平板化に引き続き平板化された竹分割片にマイクロ波を照射することによって均一加熱し、且つ減圧することによってそれの残留水分を急速に除去し、平板の形をそのまま固定することを特徴とする、請求項1に記載の竹材の連続的平板化方法。
【請求項3】
竹が縦に複数に分割されることによって形成された、一つの断面円弧状の柱面を持つ竹分割片を加熱したうえ、ロール加工によって平板化する、竹材の連続的平板化装置であって、成形容易に均一加熱されたうえ、断面円弧状の凸の表面を上にして長手方向に前進する前記竹分割片の左右両側面を、その前進を阻むことなく、両側から挟み、支持、拘束する左右対称の支持・拘束機構、及びその左右両側面で支えられた竹分割片をその凹の裏面が、下方にスプリングバック量分凸に逆反りするまで上方から押圧する押圧ロールを備えていることを特徴とする、竹材の連続的平板化装置。
【請求項4】
前記左右対称の支持・拘束機構が、前記凸の表面を上にして前進する竹分割片の左右各側面と外面を当接した状態でその竹分割片と同じ速度で巡回する左右1対の無端の帯板と,その巡回する各無端の帯板を支持し、低摩擦で案内する左右対称、1対の無端のレールと,を備えていることを特徴とする、請求項3に記載の竹材の連続的平板化装置。
【請求項5】
前記竹分割片の幅径又は肉厚の変化に応じて、それぞれ前記左右両側面を拘束する前記左右対称の拘束機構による拘束の度合い又は前記竹分割片の前記凸の表面を押圧する押圧ロールによる押圧の度合いを変化させる制御部を備えている
ことを特徴とする、請求項3又は4に記載の竹材の連続的平板化装置。
【請求項6】
前記竹分割片の内外面にマイクロ波を均一に照射可能に、横断面が、その竹分割片の内外面に沿って彎曲する多孔金属板を有する加熱装置を備えていることを特徴とする、請求項3乃至5のいずれかに記載の竹材の連続的平板化装置。
【請求項7】
前記平板化された竹分割片の水分を除去し、平板の形をそのまま固定するために、それを暫時減圧して加熱する、乾燥装置を備えていることを特徴とする、請求項3乃至6のいずれかに記載の竹材の連続的平板化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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