説明

第四アンモニウム官能基を有するノルボルネン型ポリマー

本開示の態様は、N(CHOH部分を包含する反復単位の少なくとも1つのタイプを有するビニル付加およびROMPポリマーを包含する。本開示に従った他の態様としては、前記ポリマーの1つから作製されるアルカリアニオン交換膜(AAEM)、前記AAEMを包含するアニオン燃料電池(AFC)、および、前記AFCのAAEM以外の成分で、前記ポリマーを包含するものが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の態様は、一般に、第四アンモニウム官能基を有するノルボルネン型ポリマーに関し、より具体的には、水酸化物イオン伝導性アルカリアニオン交換膜(AAEM)の形成に有用なノルボルネン型ビニル付加およびROMPポリマー、ならびに、第1の電極、AAEMおよび第2の電極を包含し、各電極の活性層がAAEMと接触している、アルカリ燃料電池(AFC)に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]アルカリ燃料電池(AFC)は、もっとも発達した技術の1つであり、1960年代中頃からNASAによりアポロおよびスペースシャトル計画において用いられてきた。これらの宇宙船に搭載された燃料電池は、搭載システムのための電力および飲料水を提供し、ほぼ70%に達する効率を有し電気を発生させるのに最も効率的なものの1つであるため選ばれた。
【0003】
[0003]NASAのAFCは、水性電極、具体的には、多孔質安定化マトリックス中に保持されている水酸化カリウム(KOH)の溶液を用いていた。AFCの電荷担体はヒドロキシルイオン(OH)であり、これは、カソードからアノードへ移動し、アノードで水素と反応して水と電子を生じる。アノードで形成した水はカソードに戻って、ヒドロキシルイオンを再生する。したがって、反応のセットの全体は以下のとおりである:
アノード反応: 2H+4OH=>4HO+4e
カソード反応: O+2HO+4e=>4OH
全体的な正味の反応: 2H+O=>2H
[0004]効率が高く、操作温度が適度であり、他の肯定的な性質を有するにもかかわらず、NASAのAFCは、電池により使用される燃料中または環境中に存在する可能性があるCOに対し非常に敏感であった。この感受性は、微量であってもCO、CO、HOおよびCHに由来する。これらは、KOH電極と反応し、それを急速に汚染し、燃料電池の性能を、電解質を希釈するか、カーボネートを形成することにより、著しく低下させる。カーボネートは、電解質のpHを低下させ、したがって電極のレベルにおける電気化学的反応の反応速度を低下させて、それらの性能を害する。したがって、そのようなAFCは、純粋な水素および酸素を燃料とすることに価値があり得る閉じた環境、例えば、宇宙船および海底車両に限定されていた。
【0004】
[0005]肯定的な側面では、高い効率および低い操作温度に加え、AFCは製造するのがもっとも安価な燃料電池である。これは、電極上に必要な触媒が、他のタイプの燃料電池に必要な貴金属触媒(noble catalyst)に比べ比較的安価ないくつかの異なる材料のいずれかであることができるためである。したがって、純粋または浄化した水素および酸素を供給する以外の方法で汚染に対するそれらの感受性を解決し、比較低温での操作および高い効率を活用してAFCの肯定的な性質、例えば、迅速な起動電源および高い燃料効率をそれぞれもたらすことに、かなりの関心が寄せられてきた。
【0005】
[0006]ここ数年、AFCおよび電解槽に使用するためのアニオン交換膜(AEM)の開発に関心が寄せられている。これは、高いpHで多くの電気化学的反応に伴う過電圧が低く、貴金属触媒を用いなくてもよい可能性があるためである。AEMは、より幅広く開発され理解されているプロトンまたはカチオン交換膜(PEMまたはCEM)に対し興味深い対比となる。しかしながら、例えばカチオン交換膜の分野でDuPontのNafion(登録商標)PSFA(ペルフルオロスルホン酸)膜がそうであるように、電気化学的用途での商業的標準となる、容易に入手可能なアニオン交換膜はない。
【0006】
[0007]固体ポリマーアニオン交換膜(AEM)に基づくアニオン燃料電池の使用、ならびにAFCおよびアルカリ膜DMFC(直接メタノール燃料電池)の両方における該膜の使用が、実証されている。さらに、金属を含まないアニオン交換膜を高いpHで操作して使用することにより、貴金属に基づく触媒の必要性が低減または排除され、電気化学的反応の反応速度が改善される可能性がある。AEM、詳細にはポリマーアルカリアニオン交換膜(AAEM)には、さらなる利点がある。例えば、固定された固体ポリマーAAEM中に伝導性の種が組み込まれるので、AAEMでは電極の構造および配向性の制限を克服することができると考えられる。これに加えて、アノードにおいてCO−2/HCOの形成が多少起こると考えられても、AAEMを用いるとカチオンが固定化されるので、金属炭酸塩の固体結晶を沈殿させて電極層を閉塞または破壊する移動性のカチオン(NaまたはK)がAAEM中に存在しない。さらに、液体苛性アルカリ電解質が存在しないので、電極の滲出および成分の腐食は最小限に抑えられるはずである。
【0007】
[0008]したがって、次世代のAFCをもたらすために、必要な伝導性、耐水膨潤性、機械的強度、および操作温度における化学的安定性を有するAAEMが必要とされている。
[0009]先に述べたように、膜に付着しているカチオン性基に関する操作温度での化学的安定性は、燃料電池のための新規AAEMの開発において焦点となる分野の性質である。電解質を加えていない電気化学的電池を考えた場合、膜のイオン伝導性チャネル内の局部的pHはかなり高くなるであろう。また、AFCは、適切な反応速度を達成するために、プロトン交換膜(PEM)を包含する燃料電池で必要な温度ほど高い操作温度を必要とはしないが、AFCは高温での操作により益を得る可能性もある。これは、そのような高温はヒドロキシルの輸送を増進し、したがって燃料電池の性能を向上させることができると予想されるためである。しかしながら、高いpHと高温との組み合わせは、もっとも一般的にはE2(ホフマン分解)機序またはSN2置換反応により、第四アンモニウム基上で化学的攻撃を引き起こす可能性がある。脱離反応の経路は、β−水素を有さない第四アンモニウム基、例えばベンジルトリメチルアンモニウム基を用いることにより、回避することができる。置換の経路は、あまり容易に回避することができず、置換反応に対するアンモニウム基の感受性を低下させるために、いくつかのアプローチが試みられている。
【0008】
[0010]多くのアニオン交換ポリマーでは、炭化水素ポリマー主鎖に付着している第四アンモニウム基が採用されており、ごく最近、アンモニウム官能基化ノルボルネン型モノマーを、ジシクロペンタジエンとの開環メタセシス重合(ROMP)経路を介して直接組み込んで、高い水酸化物イオン伝導性および例外的なメタノール耐久性(tolerance)を有し機械的に強いAAEMと報告されているものが形成された。G.W.Coates et al.J.Am.Chem.Soc.2009,131,12888−12889(Coates I)。しかしながら、CとCの不飽和結合を有するCoates IのROMPコポリマー(以下に示す)は、そのような不飽和を有さない類似のビニル付加ポリマーより酸化的に不安定であることが知られている。
【0009】
【化1】

【0010】
[0011]さらに、Coates Iでは、非水素化ROMPポリマーから作製したフィルムの厚さおよび性質が、ジシクロペンタジエンに対するそれらの構造1の量および比を変動させることにより容易に制御できると報告されているが(同書、p12888)、彼らはまた、1より大きい:1(構造1:DCPD)の比を有するフィルムは膨潤およびヒドロゲル形成を示し、逆の比を有するフィルムは十分な伝導性を有していなかったので、そのような変動の範囲は限定されていたと報告した(同書、p12888−12889)。
【0011】
[0012]また、J.Phys.Chem.C,2008,112,3179−3182におけるChempath et al.およびECS Transactions,11(1) 1173−1180(2007)におけるEinsla et al.により、テトラアルキルアンモニウムに基づくカチオンは、アルカリ性媒体中で適度な安定性を示す、すなわち、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムは、同様の条件下で、水酸化フェニルトリメチルアンモニウムより遙かに良好な安定性を示したと、報告されている。具体的には、1N、3Nおよび5Nの水酸化ナトリウム中のベンジルトリメチルアンモニウムカチオンの溶液は、80℃で29日間保持された後、ほとんど分解を示さなかったと報告された(Einsla et al.、p1179の図4)。Einsla et al.は、水酸化アンモニウム中でベンジルトリメチルアンモニウムカチオンの溶液を調製してナトリウムカチオンの存在を排除することにより、カチオンの安定性に対する水和の影響の調査も行った。これに関し、120℃に加熱した密封溶液は、48時間で、29日間の試験で見られたより顕著な分解を示した。Einsla et al.は、OHアニオンの溶媒和作用が頭部基の安定性に重要であると示唆した(同書、p1178およびp1179の図5)。したがって、良好な溶媒和作用を生じさせる膜の状態が、より劣った溶媒和作用を生じさせるものより高いカチオンの安定性をもたらすと考えられる。
【0012】
[0013]最近、G.W.Coates et al.J.Am.Soc.2010,132,3400−3404(Coates II)は、Coates Iで用いたDCPDではなくテトラアルキルアンモニウム官能基化架橋剤の使用を報告した。これは、そのような新規架橋剤が、イオン濃度、したがって材料の伝導性を減じないことが見いだされたためである(同書、p3400)。詳細には、Coates IIは、化合物1:
【0013】
【化2】

【0014】
[0014]をシクロオクテン(COE)のコモノマーとして使用して、架橋ポリマー:
【0015】
【化3】

【0016】
を直接形成すること対象とする。
[0015]しかしながら、Coates Iに関し先に観察したように、結果として生じるCoates IIのポリマーも不飽和であり、したがって、水素化ROMPポリマーまたはビニル付加重合により生じる飽和ポリマーと比べ、酸化的に不安定であると思われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.2009,131,12888−12889
【非特許文献2】J.Phys.Chem.C,2008,112,3179−3182
【非特許文献3】ECS Transactions,11(1) 1173−1180(2007)
【非特許文献4】J.Am.Soc.2010,132,3400−3404
【発明の概要】
【0018】

[0016]したがって、2以上のタイプのノルボルネン型モノマーのビニル付加重合またはROMP重合とこれに続く水素化により形成されるノルボルネン型ポリマーは、Coates IまたはIIのいずれかにより報告されたものより酸化的に安定なポリマーをもたらすほか、ポリマーの伝導性、化学的性質および物理的性質の調整に追加的な柔軟性をもたらすと考えて、本開示に従ったポリマーの態様は、ノルボルネン型ビニル付加ポリマーおよび水素化ノルボルネン型ROMPポリマーの両方を包含する。ここにおいて、後者は、DCPDまたはシクロオクテンのコポリマーを除く。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[0017]この趣旨で、本開示のいくつかの水素化ROMPポリマーの態様は、2以上のノルボルネン型モノマーから誘導される水酸化物イオン伝導性ポリマーである。ここにおいて、第1のそのようなモノマーは式Iにより表され、第2のそのようなモノマーは式IIにより表される。両者を以下に示す:
【0020】
【化4】

【0021】
[0018]ここにおいて、式Iに関し、mは0〜3であり、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、式IIIにより表される側基(あるいは、第四アンモニウム塩の略であるQASとよぶ)であり、他のものは、独立して、水素、C〜C10アルキル、アリール、またはアルキル−アリール基である。式IIに関しては、mは先に定義したとおりであり、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換もしくは非置換マレイミド−アルキル側基[ここにおいて、アルキルは、C〜Cアルキルである]、または他の架橋性基、例えば、NB−エーテル−NB(例えば、NBCHOCHNB、NBCH(OCHCHOCHNB、およびNBCH(OCHCHOCHNB)、NB−アルキレン−NB(例えば、NB−NB、NB−Et−NB、NB−Bu−NB、およびNB−Hx−NB);NB−アリール−NB(例えば、NBCNBおよびNBCHCHNB)であり、他のものは、独立して、水素、C〜C12アルキル、末端ハロゲン化アルキル、アルキル−アリール[ここにおいて、アリール部分はハロゲン化されていてもよい]、またはメチルグリコールエーテル、例えば−CH−(OCHCH−OMe[式中、qは1〜4である]から選択される。式IIIに関しては、R’は、−(CH−[式中、pは0〜12である]から選択され;Arは1以上の芳香族環を有する所望による芳香族基であり;R’’は、−(CH−[式中、pは0〜12である]または−(CH−O−(CH−[式中、sおよびtは、独立して1〜6である]から選択され、そして、R’’は、共有結合により第四アンモニウム官能基の窒素につながっており、R、RおよびRはそれぞれ、独立して、メチル、アリールまたはアルキル−アリール基[ここにおいて、アルキルはC〜Cアルキルである]から選択され、そして、vは、1または2のいずれかである。したがって、上記モノマーから誘導される各ROMPポリマーには、QAS基を包含する第1のタイプのノルボルネン型反復単位と、置換もしくは非置換マレイミド−アルキル側基または上記他の架橋性側基の1つを包含する第2の反復単位がある。
【0022】
[0019]本開示に従ったビニル付加ポリマーの態様に関し、そのようなものも、2以上のノルボルネン型モノマーから誘導される水酸化物イオン伝導性ポリマーである。ここにおいて、第1のそのようなモノマーは式Aにより表され、第2のそのようなモノマーは式Bにより表される。両者を以下に示す:
【0023】
【化5】

【0024】
[0020]式Aに関し、mは0〜3であり、R、R10、R11およびR12の少なくとも1つは、以下で論じるように、四級化することができる官能基(FG)であり、他のものは、独立して、水素、C〜Cアルキル、アリールまたはアルキル−アリール基である。式Bに関しては、mは先に定義したとおりであり、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つは、置換もしくは非置換マレイミド−アルキル側基[ここにおいて、アルキルはC〜Cアルキルである]または上記のような他の架橋性基であり、他のものは、独立して、水素、C〜C12アルキル、アルキル−アリール、またはメチルグリコールエーテル、例えば−CH−(OCHCH−OMe[式中、qは1〜4である]から選択される。
【0025】
[0021]式Iに従った代表的なモノマーとしては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:
【0026】
【化6】

【0027】
[0022]式Aに従ったモノマーに関し、上記モノマーは、ビニル付加重合により直接重合することはできないが、重合後の官能基化により入手可能にすることができる。これに加えて、以下の一般式IVaにより表されるもののような第四アミンと、これに続いて代表式IVbに示す各一般式の具体例とを包含するモノマーは、本開示に従った態様に適していると考えられる。そのような側基としては、以下が挙げられる:
【0028】
【化7】

【0029】
[0023]前者および後者のモノマーの重合に関し、RuおよびOs遷移金属開始剤を採用する代表的なROMP重合法は、本明細書中で全体を参考として援用する米国特許公報第6838489号に記載されており;第VIII族の遷移金属触媒を採用する代表的なビニル付加重合法は、本明細書中で全体を参考として援用する米国特許出願公開第2006/0020068A1号に記載されている。
【0030】
[0024]本開示のROMPおよびビニル付加ポリマーの両方の態様は、それらの使用に適した重量平均分子量(Mw)を有するように形成される。一般に、いくつかの態様では5000〜500000のMwが適していることが見いだされているが、他の態様では他のMw範囲が有利である可能性がある。例えば、ポリマーは、いくつかの態様では少なくとも30000からのMw、他の態様では少なくとも60000からのMwを有することが有利である。いくつかの態様において、ポリマーのMwの上側の範囲は最大400000であるが、他の態様では最大250000である。適したMwは、該ポリマーから形成されるアニオン性ポリマー膜の望ましい物理的性質の相関的要素であるので、それは設計上の選択であり、したがって、先に挙げた範囲内のMwは本開示の範囲内にあることが、理解されるであろう。
【0031】
[0025]本開示のROMPポリマーのいくつかの態様は、式IIIに従ったアンモニウムカチオン側基を有するモノマーから直接形成することができるが、飽和ポリマーが望ましい場合、式AおよびBに従ったモノマーを開環メタセシス重合(ROMP)開始剤と接触させて、得られる不飽和ポリマーを飽和ポリマーに水素化することができる。この開環メタセシス重合は、溶液中か、または100%反応性固体として、すなわち、溶媒をほとんどまたは全く用いない塊状重合としてのいずれかで、達成することができる。以下のスキームは、開環メタセシスポリマー(ROMP)の水素化と、これに続くアリール−アルキルハロゲン化物側基の第四アンモニウム塩への転化を例示している(以下の反応1(重合)、2(水素化)、3(四級化)および4(塩化物から水酸化物へのメタセシス)の反応順序参照)。
【0032】
【化8】

【0033】
[0026]言うまでもなく、不飽和ROMPポリマーが望ましい場合、出発モノマーが式Iに従っているならば、上記スキームの反応1のみを実施することが必要であることを、理解すべきである。そのような反応順序を以下に示す:
【0034】
【化9】

【0035】
[0027] ビニル付加ポリマーの形成に従ったポリマーの態様では、一般に、モノマーが、四級化することができる官能側基、例えば上記式IVのようなアリール−アルキルハロゲン化物を有し、以下に例示する反応スキームを一般に採用する。
【0036】
【化10】

【0037】
[0028]その後、第四アミン側基の塩基安定性は、アルキル置換基の脂肪族鎖の長さが長くなるほど向上すると考えられ、さらに、2以上の第四アミンカチオンを有する反復単位をポリマーへ組み込むことは、他の反復単位をより自由に選択することを可能にし、これにより、高い伝導性を維持しつつポリマーの性質を調整することが可能になると考えられる。したがって、DPCDコポリマーに関しCoates Iで報告されたモノマー比の限定された範囲、またはCOEコポリマーに関しCoates IIで報告されたモノマー比のそれよりは少し限定されていない範囲とは異なり、本開示のいくつかの態様の上記ビニル付加および後官能基化(post functionalization)のスキームは、水酸化物イオン伝導性を低下させることなく、高温メタノール中での膨潤、イオン交換容量(IEC)、ポリマーの安定性、および機械的強度に対処するのに十分な量で存在するモノマーの包含を提供することができる。例えば、そのようなポリマーは、第四アンモニウム部分を含有する反復単位が多官能性である場合、より高い比の架橋性反復単位を含むことができる。これに加えて、アルカリ性条件下での膜の安定性の向上は、β−水素原子を持たない構造にあるトリメチルアンモニウム基を組み込み、これにより、ホフマン脱離による分解を妨げることにより達成することができる。さらに、設計上の選択肢として、官能基化テトラシクロドデセン(TDFG)モノマー単位をポリマー主鎖に組み込んで、機械的、熱的および輸送上の性質に変化をもたらしてもよい。
【0038】
[0029]上記ビニル重合スキームから入手可能な代表的な反復単位としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:
【0039】
【化11】

【0040】
[0030]ビニル付加重合および後官能基化のスキームに関し、最初のモノマーは、例えばNBPhCHX(式中、XはCl、BrまたはIから選択される)であることができる。すなわち、第1のタイプのモノマーの官能基は、アリール−ハロゲン化−アルキルである。この重合を、ニッケル開始剤/触媒Ni(トルエン)(Cもしくはその場で生じさせるニッケル開始剤/触媒)、またはパラジウム触媒、例えば、[Pd(P−i−Pr(NCCH)(OAc)][B(C]もしくは[Pd(PCy(NCCH)(H)][B(C]もしくはその場で生じさせるパラジウム触媒を採用して溶液中で実施すると、示した飽和ポリマーを生じさせることができる。これらのハロゲン化基の四級化は、トリメチルアミン(N(CH)との適切な接触(例えば、室温において、望ましい程度のアミノ化をもたらすのに十分な時間にわたり、40〜75%トリメチルアミンの溶液中に浸漬する)により達成することができる。すなわち、側基のハロゲンを、第四アンモニウム官能基N(CHおよびハロゲン対イオンにより置換し、これを水酸化物イオンにより置換する。
【0041】
[0031]さらに、ビニル付加重合および後官能基化のスキームに関し、とりわけエキソ−またはエンド−配置を有するモノマーを重合すると、最初の配置を維持する反復単位を形成することができる。以下に挙げる代表的な反復単位参照。そのような配置の特定のモノマーを使用することにより、得られるポリマーの物理的および化学的性質の一部を、そのようなモノマーのジアステレオマー混合物が採用された場合に得られるものから、改変することができる。
【0042】
【化12】

【0043】
[0032] 第四アンモニウムを含有するビニル重合ポリノルボルネンの調製に有用なノルボルネンモノマーは、以下に例示するように、(i)シクロペンタジエンと、末端オレフィンおよび末端ハロゲンを含有するα,ω−ハロゲンオレフィン、例えば、4−クロロ−1−ブテン、クロロメチルスチレン、または1−(クロロメチル)−4−(2−プロペニル)ベンゼンとのディールス−アルダー反応;(ii)パラジウム触媒およびハロアレーン(例えば、NBPhCHBr XXIV−aを得るためには1−(ブロモメチル)−4−ヨードベンゼン)の存在下でのノルボルナジエンのヒドロアリール化;ならびに(iii)ノルボルネンカルボキシアルデヒド、カルボン酸、カルボン酸エステル、およびニトリルから、容易にクロロ、ブロモまたはヨードアルキルに転化するノルボルネンヒドロキシルへの還元により、すなわち、NB(エンド−CH)(エキソ−COH)→NB(CH)(CHOH)→NB(CH)(CHCl)またはNBCN→NBCHO→NBCHOH→NBCHClにより、生じさせることができる。
【0044】
【化13】

【0045】
[0033]上記式XVIII−a、XX−a、およびXXV−aはそれぞれ、立体化学を表示することなく図示しているが、一般に、これらのモノマーおよび本開示の目的のために生産される他のモノマーはそれぞれ、特記しない限り、反復単位に転化したときに配置を維持しているジアステレオマー混合物として得られることに、留意すべきである。先に指摘し論じたように、そのようなジアステレオマー混合物のエキソ−およびエンド−異性体は、わずかに異なる化学的および物理的性質を有することができる。さらに、本開示に従ったいくつかの態様は、好都合な異性体に富む異性体の混合物または実質的に純粋な好都合な異性体のいずれかであるモノマーを用いることによりそのような違いを活用するために作成されていることを、理解すべきである。採用したモノマーがエキソ−置換官能基を持ち、したがって、より容易に重合して第四アンモニウム塩に転化すると予想される場合、例示したXXI−aおよびXXII−a構造が本開示の態様である。
【0046】
[0034]いくつかの態様において、第四アミンの塩基安定性を、例えば化合物XIにおいては、アルキル置換基NB(CH[NMe]Cl(n=1〜6)の脂肪族鎖の長さを増大させることにより、改善することができる。塩基的性質の改善は、例えば、高温メタノール中での低い膨潤、高いイオン交換容量(IEC)、良好な水酸化物イオン伝導性、ポリマー安定性、および機械的強度である。
【0047】
[0035]化合物XIX〜XXIVは、化合物XVIと比較して、アルカリ性条件下において向上した膜安定性を有する。これは、β−水素原子を持たない構造にあるトリメチルアンモニウム基が組み込まれ、したがってホフマン脱離による分解が妨げられるためである。
【0048】
[0036]他の態様において、ポリマーは多環式構造1つにつき単一のアルキルトリメチルアンモニウムカチオンで置換されるが、官能性ノルボルネンを適切に選択することにより、追加的な第四アンモニウム部分を導入してイオン伝導性を向上させることができる。フィルムの機械的強度は、1以上の官能性ノルボルネンモノマー、例えば、アルキルNB(例えば、デシルNB、ヘキシルNB、ブチルNB);メチルグリコールエーテルNB(例えば、NBCH(OCHCHOMeおよびNBCH(OCHCHOMe);NB−エーテル−NB(例えば、NBCHOCHNB、NBCH(OCHCHOCHNB、およびNBCH(OCHCHOCHNB)、NB−アルキレン−NB(例えば、NB−NB、NB−Et−NB、NB−Bu−NB、およびNB−Hx−NB);NB−アリール−NB(例えば、NBCNBおよびNBCHCHNB);ならびにマレイミド−アルキル−NB(例えば、NBMeDMMI、NBPrDMMI、NBBuDMMI、およびNBHxDMMI)を組み込むことにより調整される。ここにおいて、これらのモノマーは、100%反応性固体重合か、または酸性もしくは塩基性触媒を用いたポリノルボルネンフィルムの熱的および光化学的反応によるかのいずれかで、架橋することができる。
【0049】
[0037]本開示に従った他の態様では、二官能性アミン、多環式アミンまたはデンドリマーポリアミン、または環状ジアミン、例えばDABCO(1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン)の使用を、フィルム流延中に架橋剤単位として採用して、ホフマン脱離反応およびヒドロキシル基による置換に対する感受性がより低いアンモニウム官能基を作り出すことができ、これにより、第2の窒素を介しての熱架橋が可能になる。キヌクリジンは、DABCOに似た構造を有し、ホフマン分解およびOHイオンによる求核置換に対し良好な抵抗性をもたらす。架橋フィルムの生産方法を以下のように例示する:
【0050】
【化14】

【0051】
[0038]フィルム流延中に採用することができる他の架橋剤部分としては、とりわけ、以下のようなビス(ジメチルアミノ)部分が挙げられる:1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N,N,N−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N−2−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N,N−2−ペンタメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,2−プロパンジアミン、N,N,N,N,2,2−ヘキサメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N,N10,N10−テトラメチル−1,10−デカンジアミン、N,N,N12,N12−テトラメチル−1,12−ドデカンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−(1−メチルエチル)−1,3−プロパンジアミン、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N−ジメチル−1,2−プロパンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,4−ベンゼンジメタンアミン、4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N−ジメチルベンゼンメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,3−ベンゼンジメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,4−シクロヘキサンジメタンアミン、およびN,N,N,N−テトラメチルビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジメタンアミン。
【0052】
[0039]芳香族架橋剤部分としては、限定するものではないが、N,N,N,N−テトラメチル−3,6−フェナントレンジメタンアミン、N,N,N10,N10−テトラメチル−9,10−アントラセンジメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,5−ナフタレンジメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−2,6−ナフタレンジメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,8−ナフタレンジメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,8−ナフタレンジメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,4−ベンゼンジメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,3−ベンゼンジメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,2−ベンゼンジメタンアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジメタンアミン、N,N,N14,N14−テトラメチル−トリシクロ[9.3.1.14,8]ヘキサデカ−1(15),4,6,8(16),11,13−ヘキサエン−5,14−ジメタンアミンおよび9,10−ジヒドロ−N,N,N,N−テトラメチル−2,7−アントラセンジアミン、2,7−ビス[(ジメチルアミノ)メチル]−9,10−アントラセンジオン、2,6−ビス[(ジメチルアミノ)メチル]−9,10アントラセンジオン、9,10−ジヒドロ−N,N,N,N−テトラメチル−2,6−アントラセンジメタンアミン、N,N,N,N−テトラメチル−9H−フルオレン−3,6−ジアミン、2,6−ビス[(ジメチルアミノ)メチル]−1,5−ジヒドロキシ−9,10−アントラセンジオンが挙げられる。
【0053】
[0040]フィルム流延中に採用することができるさらに他の架橋剤部分としては、とりわけ、以下のようなジブロモ、クロロ/ブロモ、トリ−ブロモ、ヨードおよびクロロ部分が挙げられる:1,2−ジブロモプロパン、1,2−ジブロモエタン、1,2,3−トリブロモプロパン、1,3−ジブロモブタン、1,3−ジブロモ−2,2−ジメチルプロパン、2,4−ジブロモペンタン、1,4−ジブロモブタン、1−ブロモ−3−(ブロモメチル)オクタン、2,5−ジクロロ−2,5−ジメチルヘキサン、2−ブロモ−4−(2−ブロモエチル)オクタン、1,5−ジブロモオクタン、1−ブロモ−4−(ブロモメチル)オクタン、1−ブロモ−3−(2−ブロモエチル)ヘプタン、1−ブロモ−3−(2−ブロモエチル)−4,4−ジメチルペンタン、2,5−ジブロモヘキサン、1,4−ジブロモ−ヘプタン、2,4−ジブロモ−2−メチルペンタン、1,10−ジブロモウンデカン、1−ブロモ−3−(2−ブロモエチル)−4,4−ジメチルペンタン、2−ブロモ−4−(2−ブロモエチル)オクタン、1,5−ジブロモ−3,3−ジメチルペンタン、1−ブロモ−4−(ブロモメチル)オクタン、1−ブロモ−3−(2−ブロモエチル)ヘプタン、1−ブロモ−3−(ブロモメチル)オクタン、1,10−ジブロモデカン、1,11−ジブロモウンデカン、1,10−ジブロモウンデカン、2,4−ビス(ブロモメチル)ペンタン、1,12−ジブロモドデカン、1,13−ジブロモトリデカン、1,5−ジブロモ−3−メチルペンタン、1,8−ジブロモオクタン、1,9−ジブロモノナン、1,5−ジブロモオクタン、1,2−ジブロモドデカン、1,4−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、1,2,6−トリブロモヘキサン、1,2,5,6−テトラブロモヘキサン、1,4−ビス(ブロモメチル)ビシクロ[2.2.2]オクタン、1,1−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、1,1−ビス(ブロモメチル)シクロオクタン、1,1−ビス(ブロモメチル)−2−メチルシクロヘキサン、トランス−1,4−ビス(1−ブロモ−1−メチルエチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(1−ブロモ−1−メチルエチル)シクロヘキサン、1,3,5−トリス(ブロモメチル)−1,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シス−1,5−ビス(ブロモメチル)シクロオクタン、トランス−1,2−ビス(ブロモメチル)シクロヘキサン、トランス−1,5−ビス(ブロモメチル)シクロオクタン、1,1−ビス(ブロモメチル)シクロヘプタン、1,4−ビス(ブロモメチル)ベンゼン、1−(ブロモメチル)−4−(クロロメチル)ベンゼン、1−(2−ブロモエチル)−4−(ブロモメチル)ベンゼン、1,3−ジヨード−2,2−ジメチルプロパン、1,3−ジヨード−2,2−ビス(ヨードメチル)プロパン、1,3−ジヨードプロパン、1−ブロモ−3−クロロ−2−メチルプロパン、1,3−ジブロモ−2−メチルプロパン、1,5−ジヨード−3−メチルペンタン、1,4−ジヨードブタン、1,3−ジヨードペンタン、1,5−ジヨードペンタン、1−クロロ−3−ヨードプロパン、1−ブロモ−3−ヨードプロパン、1,3−ジクロロ−2,2−ジメチルプロパン、1,4−ビス(クロロメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヨードメチル)ベンゼン、,4−ビス(2−ヨードエチル)ベンゼン;および1,2−ビス(ヨードメチル)ベンゼン。
【0054】
[0041]さらに他の架橋剤部分としては、以下が挙げられる:N,N−ビス[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N−ジメチル−1,2−エタンジアミン、N,N−ビス[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N−ジメチル−1,2−エタンジアミン、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]−N,N−ジエチル−N−メチル−1,2−エタンジアミン、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N,N−トリメチル−1,2−エタンジアミン、N−[(ジメチルアミノ)メチルエチル]−N,N’,N’−トリメチル−1,2−プロパンジアミン、N−[2−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エチル]−N,N,N−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ビス[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、および3−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N,N,N,N,3−ペンタメチル−1,5−ペンタンジアミン。
【0055】
[0042]そのような架橋性部分をさらに例示するために、先に挙げた部分のいくつかの構造を以下に示す:
【0056】
【化15】

【0057】
[0043]本開示のいくつかの態様の観点をさらに例示するために、以下の理論実施例を提供する。そのような実施例は、そのような態様の範囲を限定するものではなく、例示するために示すに過ぎないことを、理解すべきである。
【実施例】
【0058】
モノマーの合成例
実施例M1− エンド−5−メチル−エキソ−5−カルボン酸−2−ノルボルネンの合成
[0044]分解したばかりのシクロペンタジエン(939グラム、14.2モル)およびメタクリル酸(1203グラム、14.2モル)を、マグネティックスターラーが入った適切な大きさの容器に加えた。内容物を24時間攪拌した後、攪拌せずに60時間にわたり静置し、その間に溶液から白色粉末が沈殿するのを観察した。沈殿を促進するために、フラスコを10℃で数時間にわたり冷却した。沈殿物を減圧濾過により収集し、低温のペンタン(2L、−10℃)ですすいで、あらゆる未反応出発材料および形成した可能性があるNB(エキソ−Me)(エンド−COH)副生物を除去した。沈殿した白色粉末(700g)をヘキサン(約50重量%)中で再結晶化して、24時間にわたる冷却によりNB(エンド−Me)(エキソ−COH)の透明結晶(621g、29%)を得た。
【0059】
[0045]該モノマーの特性を、H NMRおよび13C NMRにより決定した。以下の図に示す番号方式を、NMR信号の帰属に用いた。
【0060】
【化16】

【0061】
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ(ppm) = 6.25 (dd, 1H, J= 5.59 & 2.96, H2&3), 6.12 (dd, 1H, J = 5.59 & 3.17, H2&3), 3.07 (s, 1H, H1&4), 2.86 (s, 1H, H1&4), 2.45 (dd, 1H, J = 12.02 & 3.96, H7), 1.48 (m, 2H, H6), 1.18 (m, 3H, H8), 0.89 (m, 1H, J = 12.02, H7′). 13C NMR (125.6 MHz, CDCl3):δ(ppm) = 186.03, 139.03, 133.82, 50.71, 49.77, 49.32, 43.13, 37.64および24.49.
実施例M2 エンド−5−メチル−エキソ−5−メチルヒドロキシ−2−ノルボルネンの合成
[0046]NB(エンド−Me)(エキソ−COH)(174.8g、1.15mmol)および無水トルエン(1000mL)を適切な大きさの容器に加え、窒素下で保持した。容器は、マグネティックスターラーバー、温度計、添加漏斗および冷却器を備えていた。Vitride(登録商標)のプレミックス(500g、トルエン中70重量%、1.73mol)を添加漏斗に加えた(空気への短時間曝露は、<2分であれば許容可能である)。容器を氷水浴に入れて、ポットの温度を5〜20℃に維持しつつ、希釈Vitride(登録商標)を3時間かけて滴下して加えた。添加終了後、内容物を6時間にわたり(薄層クロマトグラフィー(TLC)により反応終了が示されるまで)100℃に加熱した。該内容物を一晩放置して冷却した。該溶液を、激しく攪拌している5N HCl(1000mL)が入っているビーカーに徐々に加えた。氷浴を用いて温度を<20℃に維持した。濁りが減少したら、混合物を分液漏斗に移した。その後、有機相をジエチルエーテル(1.0L)で希釈し、水相を廃棄した。有機物を、1N HCl(3×300mL)、15重量%水性重炭酸カリウム(3×300mL)および水(500mL)の溶液で洗浄した。続いて、有機物をMgSO上で乾燥した後濾過し、溶媒を減圧下で除去すると、NB(エンド−Me)(エキソ−CHOH)が生じた(152g、96%、純度>95%)。
【0062】
[0047] 該モノマーの特性を、H NMRおよび13C NMRにより決定した。以下の図に示す番号方式を、NMR信号の帰属に用いた。
【0063】
【化17】

【0064】
1H NMR (300 MHz, CDCl3):δ(ppm) = 6.12 (m, 2H, H2&3), 3.56 (m, 2H, H9), 2.76 (bs, 1H, H1&4), 2.55 (bs, 1H, H1&4), 2.14 (m, 1H, H10), 1.55 (d, 1H, J = 8.62, H6), 1.44 (m, 1H, J = 11.72 & 3.71, H7), 1.35 (d, 1H, J = 8.62, H6), 0.91 (s, 3H, H8), 0.77 (m, 1H, J = 11.72 & 2.68, H7′). 13C NMR (75 MHz, CDCl3):δ(ppm) = 136.75, 135.68, 72.26, 47.85, 47.61, 43.70, 37.34, 22.87.
実施例M3− エンド−5−メチル−エキソ−5−メトキシ−メシレート−2−ノルボルネンの合成
[0048]NB(エンド−Me)(エキソ−CHOH)(74.8g、540mmol)を適切な大きさの容器内で250mLのジクロロメタンに溶解した。メタンスルホニルクロリド(MsCl)(65.6g、0.54mol)を加えた。その後、混合物をメタノール−氷浴で−12.5℃に冷却した。反応温度を−1.0℃未満に維持しつつ、トリエチルアミン(65.6g、650mmol)を徐々に滴下して加えた。大量の白色固体が沈殿した。添加は30分後に終了した。反応物を40分かけて14℃に温めた。GC分析は、すべての出発材料が消費されたことを示した。該混合物を200mLの水で処理し、相を分離した。有機相を、200mLの1N HCl、続いてブラインで、洗液のpHが約6になるまで洗浄した。有機部分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、回転蒸発させて、100g(収率90%)のNB(エンド−Me)(エキソ−CHOMs)を淡い橙色の液体として得た。
【0065】
[0049]該モノマーの特性を、H NMRにより決定した。以下に示す番号方式を、NMR信号の帰属に用いた。
【0066】
【化18】

【0067】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ(ppm) = 6.11 (m, 1H, H2&3), 6.10 (m, 1H, H2&3), 4.10 (s, 2H, H9), 2.96 (s, 3H, H10), 2.78 (s, 1H, H1&4), 2.57 (s, 1H, H1&4), 1.48 (m, 2H), 1.39 (m, 1H), 0.91 (s, 3H, H8), 0.80 (m, 1H, H7′).
実施例M4− エンド−5−メチル−エキソ−5−ブロモメチル−2−ノルボルネンの合成
[0050]NB(エンド−Me)(エキソ−CHOMs)(10.3g、46.3mmol)、無水臭化リチウム(6.2g、69.4mmol)および100mLの2−ペンタノンを室温で一緒に混合して、黄色溶液を得た。該混合物を2時間還流した後、室温でそのまま一晩攪拌した。水を加えて塩を溶解した。酢酸エチルを加え、混合した。相を分離し、水相を2×100mLの酢酸エチルで抽出した。有機部分を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、回転蒸発させて、褐色のオイルおよび固体を得た。H NMRにより、粗生成物がそれぞれNB(エンド−Me)(エキソ−CHOMs):NB(エンド−Me)(エキソ−CHBr)=1:3の比を含有することが示された。粗生成物をシリカゲル(35g)およびシクロヘキサン(250mL)上でのカラムクロマトグラフィーにより精製して、透明無色のオイルを得た。R(シクロヘキサン)=0.80。収率=65%。
【0068】
[0051]該モノマーの特性を、H NMRおよび13C NMRにより決定した。以下の図に示す番号方式を、NMR信号の帰属に用いた。
【0069】
【化19】

【0070】
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ(ppm) = 6.15 (dd, 1H, J= 5.60 & 2.80, H3), 6.11 (dd, 1H, J = 5.60 & 3.20, H2), 3.56 (s, 1H, H8), 2.82 (s, 1H, H4), 2.65 (s, 1H, H1), 1.65 (dd, 1H, J = 11.98 & 3.75, H7), 1.54 (d, 1H, J= 8.91, H6), 1.42 (d, 1H, J = 8.91, H6), 1.01 (s, 1H, H9), 0.97 (dd, 1H, J = 12.98 & 2.72, H7′). 13C NMR (101 MHz, CDCl3):δ(ppm) = 137.09 (C2), 135.78 (C3), 50.24 (C4), 48.29 (C8), 47.96 (C6), 43.68 (C1), 40.16 (C7), 27.15 (C5), 24.86 (C9).
実施例M5− エンド−/エキソ−ブロモブチルノルボルネンの合成
[0052]エンド−/エキソ−ノルボルネンブチルメシレート:5−(2−ヒドロキシブチル)ノルボルネン(1000g、6mol)、2000mLのジクロロメタン、およびメタンスルホニルクロリド(723.4g、6.32mol)を、サーモウェル、窒素注入口、添加漏斗、および機械的攪拌機を備える適切な大きさの容器に加えた。追加的な500mLのジクロロメタンを加えて、メタンスルホニルクロリド(MsCl)中ですすいだ。攪拌混合物を、ドライアイス−イソプロパノール冷却浴で−14.0℃に冷却した。トリエチルアミン(733.6g、7.26mol)を、−14°〜−6℃の温度で2時間20分間にわたり迅速に滴下して加えた。GC分析は、残存NBBuOHを示さなかった。得られたスラリーを3時間放置して室温に温めた。その後、1000mLの水を加えた。相を分離し、水相を1000mLのジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出物を合わせたものを1Lの1N HClで2回洗浄した後、1000mLのブライン、1000mLの飽和NaHCO、および2000mLのブラインで洗浄した。該ジクロロメタン溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、回転蒸発させて、1570g(定量的収量)の赤褐色液体を得た。NMRは構造と一致しており、5.4重量%のジクロロメタンが残存していることを示した。GC分析は、96.6%のメシレート純度を示した。さらに、GC分析は、DB5カラム、30メートル、内径0.32mm、皮膜0.25μm、75℃〜300℃に15℃/minで加熱、300℃で2分間保持(注入温度:250℃、検出器温度:350℃、保持時間:11.216分)で完了した。
【0071】
[0053]エンド−/エキソ−ブロモブチルノルボルネン:臭化リチウム(LiBr)(782g、9.0mol)および12Lの2−ペンタノンを、サーモウェル、窒素アダプター付き冷却器、および機械的攪拌機を備える適切な大きさの容器に加えた。混合物を攪拌すると黄色液体が生じた。ノルボルネン−ブチルメタンスルホネート(1570g、約6.01mol)を2Lの2−ペンタノンに溶解し、LiBr溶液に加えた。追加的な4Lの2−ペンタノン(2−ペンタノンの全体積は合計18Lになった)を、すすぎ液として加えた。該混合物を1.5時間にわたり加熱還流すると、白色スラリーが生じた。還流(101℃)に達すると、GC分析は出発材料を示さなかった。混合物を101℃でさらに1時間加熱した後、17℃に冷却した。2リットルの蒸留水を加えて、混合物を透明にした。数分攪拌した後混合物は再び曇ったので、追加的に1リットルの水を加えた。相を分離した。反応器を2×1000mLの酢酸エチルですすいだ。その後、水相を1Lの酢酸エチル洗浄で2回抽出した。有機部分を組み合わせ、<30℃で回転蒸発させると、1579gの液体および固体が生じた。GC分析は、96.9%のNBBuBrを示した。残留物を1Lのジクロロメタンおよび1Lの水と混合して、すべての固体を溶解した。相を分離した。有機部分を500mLの飽和重炭酸ナトリウムおよび500mLのブラインで洗浄してpH 7にした。有機部分を回転蒸発させると1419gの褐色透明オイルが生じた。NMR分析は、2.3重量%の2−ペンタノンがまだ残存していることを示した。10mLの水を加え、材料を再び回転蒸発させた。しかしながら、NMRは、2−ペンタノンの減少を示さなかった。その後、生成物を硫酸ナトリウム上で乾燥し、ジクロロメタンですすぎ、回転蒸発させて、1375g(収率99.6%)を得た。GCは、97.3%の純度を示した。材料を、14’’Vigreuxカラムに74.2〜76.2℃(0.22〜0.53Torr)で通して減圧蒸留して、純度98.5%で511.2g、純度97.5%で379.4g(0.164〜0.33Torrで69.3〜76.0℃)、および純度95〜96%で309g(0.245〜0.72Torrで68〜77℃)を得た。GC分析は、DB5カラム、30メートル、内径0.32mm、皮膜0.25μm、75℃〜300℃に15℃/minで加熱、300℃で2分間保持、注入温度:250℃、検出器温度:350℃、保持時間:8.584および8.616分で完了した。
実施例M6 エンド−/エキソ−ブロモエチルノルボルネンの合成
[0054]エンド−/エキソ−ノルボルネンエチルメシレート:5−(2−ヒドロキシエチル)ノルボルネン(1000g、7.235mol)、2000mLのジクロロメタン、およびメタンスルホニルクロリド(871.6g、7.609mol)を、サーモウェル、窒素注入口、添加漏斗、および機械的攪拌機を備える適切な大きさの容器に加えた。追加の1500mLのジクロロメタンを加えて、メタンスルホニルクロリド中ですすいだ。攪拌混合物を、ドライアイス−イソプロパノール冷却浴で−14℃に冷却した。トリエチルアミン(883g、8.74mol)を、温度を−14°〜−4℃に変動させながら70分間にわたり迅速に滴下して加えた。反応混合物は非常に濃厚になったので、混合を改善するために、追加的な550mLのジクロロメタンを加えた。GC分析は、<0.3%のNBEtOHを示した。得られたスラリーを、一晩攪拌しつつ放置して室温に温めた。GC分析は、95.5%のメシレート、1.0%のNBEtCl、および<0.2%のNBEtOHを示した。1000mLの水を加えて混合物を透明にした。2回目の分量の500mLの水を加えた。これは混合物を曇らせた。相を分離し、水相を500mLのジクロロメタンで2回抽出した。ジクロロメタン抽出物を合わせたものを、1000mLの1N HCl、1000mLの飽和NaHCO、および2回の1000mLのブラインで洗浄した。該ジクロロメタン溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、回転蒸発させて、約1600g(定量的収量)の褐色液体を得た。NMRは構造と一致しており、1.4重量%のジクロロメタンが残存していることを示した。GC分析は、94.6%のメシレート純度を示した。GC分析は、DB5カラム、30メートル、内径0.32mm、皮膜0.25μm、75℃〜300℃に15℃/minで加熱、300℃で2分間保持、注入温度:275℃、検出器温度:350℃、保持時間:7.856分で完了した。
【0072】
[0055]エンド−/エキソ−ブロモエチルノルボルネン:臭化リチウム(943g、10.83mol)および11.5Lの2−ペンタノンを、サーモウェル、窒素アダプター付き冷却器、および機械的攪拌機を備える適切な大きさの容器に加えた。混合物を攪拌して黄色液体を得た。ノルボルネン−エチルメタンスルホネート(1604g、約7.235mol)を3.5Lの2−ペンタノンに溶解し、LiBr溶液に加えた。追加的な1.5Lの2−ペンタノン(2−ペンタノンの全体積=16.5L)を、すすぎ液として加えた。該混合物を1.75時間にわたり加熱還流して、スラリーを得た。還流(99℃)に達すると、GC分析は出発材料を示さなかった。混合物を99〜102℃でさらに30分間加熱した。その後、混合物を25℃に冷却した。2リットルの蒸留水を加えて混合物を透明にし、続いて追加的に1リットルの水を加えると混合物は曇った。相を分離した。反応器を1000mLの分量の酢酸エチルで2回すすいだ。その後、水相を1000mLの酢酸エチル洗浄で2回抽出した。有機部分を組み合わせ、<30℃で回転蒸発させた。相当量の2−ペンタノンを除去してから、200mLの水を加え、混合物を45〜50℃で回転蒸発させた。これを、さらなる凝縮物が回収されなくなるまで行った。これにより、1630gの褐色液体が生じた。残留物を1Lのジクロロメタンおよび1Lの水と混合した。相を分離した。有機部分を500mLの飽和重炭酸ナトリウムおよび1000mLのブラインで洗浄してpH 7にした。有機部分を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、回転蒸発させると、1416gの赤褐色オイルが得られた(収率96.8%)。NMR分析は、微量の2−ペンタノンおよび多少のジクロロメタンがまだ残存していることを示した。GCは96.7%の純度を示した。
【0073】
[0056]該材料を最初に14’’Vigreuxカラムに通して減圧蒸留したが、生成物は黄色く着色したままであった。10’’ガラスへリックス充填物に通して蒸留すると、わずかに黄色く着色した材料が生じた。合計605gの純度96〜97.6%の留出物を1000mLのジクロロメタンに溶解し、Darco G−60活性炭と沸騰させ、濾過し、2回の100mLの10%水性重亜硫酸ナトリウム、200mLのブライン、100mLの飽和重炭酸ナトリウムと100mLのブラインとの混合物、および2回の200mLのブラインで洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、これを、ほぼ無色の材料になるまで回転蒸発させた。48〜53℃(0.69〜0.95Torr)で10’’ガラスへリックス充填カラムに通して減圧蒸留して、0.3%のNBEtCl、0.3%のNBEtOH、および0.9%のジヒドロNBEtBrを含有する純度98.3%の無色液体を236g得た。純度97.4〜97.8%の無色液体117gおよび純度96.6〜96.8%の無色液体168gも得た。
【0074】
[0057]合計576gの純度>98%の留出物を1000mLのジクロロメタンに溶解し、2×100mLの10%水性重亜硫酸ナトリウム、200mLのブライン、100mLの飽和重炭酸ナトリウムと100mLのブラインとの混合物、および2×200mLのブラインで洗浄した。硫酸ナトリウム上で乾燥した後、これを回転蒸発させると、黄色い液体がまだ生じた。48〜54℃(0.76〜1.30Torr)で10’’ガラスへリックス充填カラムに通して減圧蒸留すると、0.3〜0.6%のNBEtCl、0.4〜0.6%のNBEtOH、および0.6〜0.8%のジヒドロNBEtBrを含有する純度98.2〜98.5%の無色液体が245g生じた。純度97.8%の無色液体35.7gも収集した。合計266gの純度>98%の最後の2つの蒸留留分は、まだわずかに黄色をしており、43〜50℃(0.46〜1.00Torr)で10’’ガラスへリックス充填カラムに通して再蒸留すると、<0.2%のNBEtCl、<0.3%のNBEtOH、および0.8〜1.5%のジヒドロNBEtBrを含有する純度98.2〜98.8%の無色液体が251g生じた。全体的収率は、純度>98%で733g(収率46.8%)、純度97.4〜97.8%で153g(収率9.8%)、純度96.6〜96.8%で168g(収率10.7%)であった。GC分析は、DB5カラム、30メートル、内径0.32mm、皮膜0.25μm、75℃〜300℃に15℃/minで加熱、300℃で2分間保持、注入温度:250℃、検出器温度:350℃、保持時間:4.305および4.332分で完了した。
実施例M7− 2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)−N,N,N−トリメチルエタナミニウムブロミドの合成
[0058]適切な大きさの容器に、窒素下で、テトラヒドロフラン(180g、202mL)、2−ブロモエチルノルボルネン(20.11g、100mmol)、およびトリメチルアミンの保存溶液(45%水性、65.7g、79.1mL)を入れた。内容物を48時間攪拌し、48時間目に溶媒を減圧下で除去した。1回分のドラム缶グレードのトルエン(200mL、173g)を加えた。その後、トルエンは水の共沸除去を促進するのに有用なので、溶媒を再び減圧下で除去した。水の共沸除去を、トルエン(200mL、173g)および続いてヘプタン(200mL、136g)を用いて繰り返した。得られた粉末を、減圧下で18時間乾燥した。
【0075】
[0059]該モノマーの特性を、H NMRにより決定した。以下の図に示す番号方式を、NMR信号の帰属に用いた。
【0076】
【化20】

【0077】
1H NMR (500 MHz, CDCl3):δ(ppm) = 6.20 (dd, 1H, H2&3), 6.03 (dd, 1H, H2&3), 3.55-3.75 (2H, H9) 3.4-3.55 (m, 9H, H10) 2.84 (s, 1H, H1&4), 2.63 (s, 1H, H1&4), 2.05 (1H, H7′), 1.48 (2H, H5), 1.38 (m, 1H, H6), 1.21 (m, 2H, H8), 0.59 (dd, 1H, J = 12.02, H7).
A.ポリマーの合成
実施例P1:ROMP塊状重合
[0060]5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(HexNB)、5−(4−ブロモブチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NBBuBr)および1,4−ジ(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)ブタン(NBBuNB)の重量を測定し、適切な大きさの容器に移した。トルエン中の[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]−[2−[[(2−メチルフェニル)イミノ]メチル]−フェノリル]クロロ−(3−フェニル−インデニリデン)ルテニウム(II)の触媒溶液を、別個のバイアル中で調製した。触媒溶液をモノマー混合物に加えた。該重合混合物をペトリ皿に注ぎ入れた。混合物を80℃で数分間および130℃で30分間加熱して完了させた。
実施例P2:2,3ビニル付加塊状重合
[0061]5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(HexNB)、5−(4−ブロモブチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NBBuBr)および1,4−ジ(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イル)ブタン(NBBuNB)の重量を測定し、適切な大きさの容器に移した。トルエン中の(アセタト−O)(アセトニトリル)ビス[トリス(1−メチルエチル)ホスフィン]パラジウムテトラキス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)ボレートの触媒溶液を、別個のバイアル中で調製した。触媒溶液をモノマー混合物に加えた。該重合混合物をペトリ皿に注ぎ入れた。混合物を80℃で数分間および130℃で30分間加熱して完了させた。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例(1以上)P3:NB−アルキル/NB−アルキルブロミドポリマーの合成
[0062]実施例3P3:53%Nb−EtBr/47%ヘキシルNBポリマーの合成。
以下は上記ポリマーの合成に用いられる具体的手順であるが、当業者なら、そのような手順が、表2に挙げるポリマーまたは他のあらゆるNB−アルキル/NB−アルキルブロミドタイプのポリマーを生産するための溶液重合の一般的手順であると考えることもでき、該手順では、選択したモノマーの適切な比、ならびに触媒および溶媒の適切な量の置き換えが行われることを、理解するであろう。
【0080】
[0063]適切な大きさの容器に、窒素下で、ドラム缶グレードのトルエン(510g、589.6mL)、5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ヘキシルノルボルネン、70.01g、392.6mmol)、5−(4−ブロモブチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ブロモブチルノルボルネン、29.99g、130.9mmol)および酢酸エチル(24.95g、27.66mL)を入れた。混合物を恒温油浴中で40℃に保持しつつ、窒素を15分間分散させた。酢酸エチル(31.7g、35.2mL)中のNi(トルエン)(C(3.17g、6.54mmol)の溶液を、激しく攪拌している反応混合物に一度に加えた。反応物を4時間にわたり激しく攪拌しつつ40℃に保ち、4時間目に脱イオン水(10mL)の添加により反応を止めた。残留するニッケル金属を、過酸化水素(35%水溶液10g)および氷酢酸(97+%、10g)での反応混合物の処理により除去し、攪拌を、温度を40℃に維持しつつ2時間にわたり継続した。
【0081】
[0064]該反応混合物を1L分液漏斗に移した。反応溶液を、テトラヒドロフラン(90.2g、100mL)を用いて脱イオン水(5×250mL)で洗浄して、洗浄プロセス中に形成したエマルションを破壊した。有機相を2Lの丸底フラスコにデカントし、溶媒を減圧下で除去した。得られた混合物は濃厚な蜂蜜様の稠度を有していた。この濃厚溶液をテトラヒドロフラン(180.4g、200mL)で希釈し、得られた溶液をメタノール(1582g、2000mL)に滴下して加え、固体ポリマーを沈殿させた。固体ポリマーを、得られたスラリーの濾過により収集した。濾過ケークを1回分のメタノール(79.1g、100mL)で洗浄し、約1時間にわたりフィルター上で放置して乾燥させた。乾燥したままのポリマーを結晶化皿に移し、無塵紙で覆い、25torrの圧力で50℃に設定した真空オーブン中で18時間乾燥した。全体的収量は、乾燥固体99g(99%)であった。GPCによるポリマー分子量は、Mn=27501a.m.u.;Mw=107013a.m.u.;PDI=3.89であった。H NMRにより測定したポリマー組成は、53モル%のノルボルネンエチルブロミドおよび47モル%のヘキシルノルボルネンであった。
【0082】
【表2】

【0083】
フィルムの形成
フィルム例F1:フィルムの流延手順およびフィルムのアミン/水酸化物処理
段階1:ポリマー溶液の調製
[0065]HexNB/NBBuBr)のコポリマーをTHF(30重量%)に溶解した。該ポリマー溶液を2.7ミクロンのガラス繊維フィルターに通して濾過した。
段階2:フィルムの調製
[0066]濾過したポリマー溶液を、Gardco調整可能フィルムアプリケーターを用いて20ミル間隔でガラスプレート上で流延した。流延したフィルムを室温で風乾した。フィルムの端を剃刀で引き上げ、フィルムを脱イオン水に浸漬して、ガラスプレートから完全に引き離した。得られたフィルムを拭き、風乾した。
段階3:フィルムの四級化
[0067]試料フィルムをPTFEフランジの間に置いた。試料フィルムをトリメチルアミンの50重量%水溶液に48時間浸した。アミンで処理したフィルムを12時間風乾した。その後、フィルムを8時間にわたり減圧乾燥した。
段階4:四級化フィルムのアニオン交換
[0068] フィルムをPTFEフランジの間に置いた。試料フィルムを1N NaOH水溶液に24時間浸した。該フィルムを脱イオン水ですすぎ、風乾した。
フィルム例F2 対照−アミンを加えないもの
[0069]5−(2−ブロモエチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ノルボルネニルエチルブロミド、48mol%)および5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(ヘキシルノルボルネン、48mol%)のコポリマーの試料25gを、500mLの琥珀色のガラスボトルに量り入れ、75gのクロロホルム(Fisher、HPLCグレード)を加えた。ボトルを密封し、周囲温度でWheaton実験室用ローラー上に置いた。ボトルを50rpmで18時間回転させると、均質な粘性溶液が生じた。該ポリマー溶液を、35psigの窒素背圧を用いて0.5ミクロンのTeflonフィルターに通して濾過し、濾液を粒子の少ない状態で250mLの琥珀色のボトルに収集した。10gアリコートのポリマー溶液を60mmのPyrexペトリ皿に注ぎ入れ、急速な溶媒蒸発を妨げるためにガラスの蓋で覆った。ペトリ皿をヒュームフード内に置き、周囲温度でそのまま18時間静置した。触ったときに、得られたフィルムの表面に粘着性はなかった。ペトリ皿を真空オーブンに移し、40℃の減圧下(23インチHg)でさらに18時間乾燥させた。得られたフィルムを、ビードの端を外科用メスで切断し、フィルムを25mLの脱イオン水に浸漬することにより、ペトリ皿から取り出した。その後、フィルムを放置して周囲条件下で乾燥させた。得られたフィルムは、1.30gの重量を有し、厚さ97ミクロンと測定された。
フィルム例F3:N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンを加えたもの
[0070]13.08gアリコートの実施例1で調製したポリマー溶液を、50mLの琥珀色のボトルに移した。N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン(0.775g、9.0mmol)を、ポリマー溶液が入ったボトルに加え、ボトルを密封した。該ポリマー溶液を、周囲温度において50rpmのWheaton実験室用ローラー上で18時間回転させることにより混合した。5.71gアリコートの得られた粘性溶液を60mmのペトリ皿に注ぎ入れ、急速な溶媒蒸発を妨げるためにガラスの蓋で覆った。ペトリ皿をヒュームフード内に置き、周囲温度でそのまま18時間静置した。触ったときに、得られたフィルムの表面に粘着性はなかった。ペトリ皿を真空オーブンに移し、40℃の減圧下(23インチHg)でさらに18時間乾燥させた。得られたフィルムを、ビードの端を外科用メスで切断し、フィルムを25mLの脱イオン水に浸漬することにより、ペトリ皿から取り出した。その後、フィルムを放置して周囲条件下で乾燥させた。得られたフィルムは、1.38gの重量を有し、厚さ102μmと測定された。
B.フィルムのイオン伝導性
[0071]本開示に従ったフィルムの態様を、20グラムのポリマーを24グラムのテトラヒドロフラン(45重量%)に溶解することにより調製した。その後、該溶液を、12ミルに設定したGardco調整可能フィルムアプリケーターを用いてガラスプレート上で流延した。その後、流延したフィルムを室温で風乾した。乾燥したら、フィルムの端を剃刀で引き上げ、フィルムを脱イオン水に浸漬して、ガラスプレートから完全に引き離した。得られたフィルムを拭き、風乾した。典型的なフィルムの厚さは70ミクロンであることが見いだされた。
【0084】
[0072]伝導率測定は、4点プローブ配置で行う。外側の白金電極は2.5cm離れており、幅1cmである。したがって、用いる試料領域は2.5cm×1cmである。正弦波電圧を外側の2つの電極に加え、電流を測定する。内側の2つの電極間の電圧を測定する。したがって、内側電極におけるR=V/Iである。該配置では、内側電極を流れる電流はほぼゼロなので、内側電極における接触抵抗は無視することができる。正弦波電圧の周波数はさまざまであり、(典型的には10Hz〜100kHzである)。抵抗の値を高周波数まで外挿し、これにより、フィルムのシート抵抗を捕獲する。R−(ロー)(厚さ)/(面積)。これに関し、面積は横断面積、すなわちフィルムの厚さ×1cm(幅)である。
【0085】
[0073]水酸化物の形にあるAAEM膜の試料0.05〜0.1グラムを、10mLの0.01M HCl標準液に24時間浸漬した。その後、該溶液を標準化NaOH溶液で滴定した。膜を加えていない対照試料もNaOHで滴定した。試料と対照の滴定に要した体積の差を用いて、膜中の水酸化物イオンの量を算出した。滴定後、膜を水洗し、1M HCl溶液中に24時間浸して、水酸化物イオンを塩化物イオンに転化した。続いて、膜を水に24時間浸して、残留HClを除去した。その後、各膜の湿潤質量を、表面から過剰の水を拭き取り重量を測定することにより決定した。その後、膜を室温においてPの存在下で24時間にわたり減圧乾燥した後、重量を再び測定して乾燥質量を決定した。水酸化物イオンによるノルボルニルアルキルトリメチルアンモニウム基の分解を回避するために、乾燥に先立ち膜を塩化物イオンの形に転化した。したがって、IECは、乾燥膜(塩化物イオンの形にある)1グラムあたりの水酸化物イオンのミリ当量として表される。
【0086】
[0074]以下の表において、挙げている場合、理論イオン交換容量(IEC)の値は、ミリ当量毎グラム(meq/g)のディメンション(dimension)を有し、伝導率(COND)の値はミリジーメンス毎センチメートル(mS/cm)単位である。
【0087】
【表3】

【0088】
理論実施例1
[0075]ポリ(エキソ−ノルボルネニルフェンメチルアンモニウムヒドロキシド)の調製。
【0089】
【化21】

【0090】
[0076]11mLのDMF中の4−ヨードベンジルブロミド(32mmol)およびPd(PPhCl(1.4mmol)に、ノルボルナジエン(120mmol)、炭酸カリウム(100mmol)およびギ酸(88%、66mmol)を加える。その後、該溶液を、完了を判断するために定期的にTLCでモニタリングして、約6時間にわたり80℃に加熱する。その後、反応混合物を、50mLの10%HClおよび50mLのヘプタンを含む分液漏斗に移し、得られた有機相を50mLの10%HClで少なくとも2回抽出する。得られた水相を合わせて50mLのヘプタンで少なくとも2回洗浄し、いくつかの有機相を合わせ、NaSOで乾燥した後、シリカのパッド(2cm×4.5cm)に通して濾過し、続いてこれをヘプタンで洗浄する。有機溶媒を蒸発させ、得られた残留物を精製した後、5−エキソ−(4−ブロモメチルフェニル)ノルボルネンが無色固体として得られると予想される。
【0091】
[0077]得られた5−エキソ−(4−ブロモメチルフェニル)ノルボルネンを、トルエン中の(トルエン)Ni(Cのトルエン溶液を用いて重合し、生成物をメタノール中に沈殿させることができる。ポリ(エキソ−(4−ブロモメチルフェニル)ノルボルネン)は、DMFのような適した溶媒に溶解し、室温での適切な時間にわたる40%トリメチルアミン溶液での室温処理により第四アミノ塩に転化することができる。
【0092】
[0078]精製後、最終ポリマーのDMF溶液をTeflon(登録商標)プレート上に流延した後、加熱して溶媒を蒸発させ、軟質膜を形成することができる。適切な濃度の溶液を採用した場合、約100〜200μmの膜厚が実現する。上記膜中の移動性の塩化物は、水性水酸化カリウム(1M)に約1日にわたり浸して水酸化アンモニウム塩を形成して、置換することができる。上記方法は、本明細書中で全体を参考として援用する米国特許出願公開第2007/0128500号の図1に示すような集成体を形成するために用いることができるアニオン性アルカリ交換膜(AAEM)を形成するのに有効であると考えられる。さらに、そのような集成体は、本明細書中で全体を参考として援用するVarcoe et al.,Prospects for Alkaline Anion−Exchange Membranes in Low Temperature Fuel Cells,Fuel Cells 2005,5 No.2,187−200(2005)の図1(b)(添付‘C’参照)に示すようなアニオン燃料電池のための有効な高分子電解質になると考えられる。
理論実施例2
[0079]付加重合架橋ポリノルボルネンフィルムの調製。
【0093】
【化22】

【0094】
[0080]薄い架橋付加重合フィルムは、最初にジクロロメタン溶液中でパラジウム触媒組成物(Pd 1206((アセトニトリル)ビス(トリイソプロピルホスフィン)パラジウム(アセテート)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)およびジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)(DANFABA))を組み合わせて予備触媒濃縮物を形成し、この混合物を室温において5−(ブロモメチル)−5−メチルノルボルネン(80mol%)および1,4−ジ(ノルボルネニル)ブタン(20mol%)モノマーのモノマー混合物に加えて均質溶液を得ることにより、合成することができる。そのような混合物の触媒モル反応比は、約10000:1:4(NBモノマー:Pd:DANFABA)である。その後、この溶液の一部をガラス皿に注ぎ入れて反応混合物の薄いコーティングを生じさせた後、約30分間かけて80℃に加熱して過剰の溶媒を蒸発させ、その後、追加的に約30分間にわたり130℃で加熱し、これにより重合および架橋を可能にする。架橋ポリマーの透明で薄いフィルムが得られ、これを続いてトリメチルアミンの40%溶液で処理して第四アンモニウムブロミド官能基化膜を生じさせ、その後、これを、理論実施例1に記載したように水酸化物の形に転化する。
【0095】
[0081]上記方法により形成することができるフィルムの性質は、各モノマーのモル比を変動させて、水酸化物イオン中での望ましくない膨潤およびヒドロゲルの形成を減少させることにより、制御することができる。上記方法は、米国特許出願公開第2007/0128500号の図1に示すような集成体を形成するために用いることができるアニオン性アルカリ交換膜(AAEM)を形成するのに有効であり、そのような集成体は、Varcoe et al.の図1(b)に示すようなアニオン燃料電池のための有効な高分子電解質になると考えられる。
理論実施例3
[0082]開環メタセシス架橋ポリノルボルネンフィルムの調製。
【0096】
【化23】

【0097】
[0083]薄い架橋付加重合フィルムは、最初にジクロロメタン溶液中でルテニウム開始剤(例えば、トリシクロヘキシルホスフィン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾル−2−イリデン][ベンジリジン]ルテニウム(IV)ジクロリド(第2世代Grubbs触媒)を組み合わせて予備触媒濃縮物を形成し、この混合物を室温において5−(ブロモメチル)−5−メチルノルボルネン(50mol%)および1,4−ジ(ノルボルネニル)ブタン(50mol%)モノマーのモノマー混合物に加えて均質溶液を得ることにより、合成することができる。そのような混合物の触媒モル反応比は、約10000:1(NBモノマー:Ru)である。フィルムを形成するために、この溶液の一部をガラス皿に注ぎ入れて反応混合物の薄いコーティングを生じさせ、室温でそのまま放置してゲルにし、その後、硬化するためにそれを約30分間にわたり80℃に徐々に加熱する。上記方法により形成するポリマーは不飽和になるので、所望により、この時点で架橋フィルムを水素化することができる。その後、架橋フィルムを水酸化カリウム溶液(1M)で処理して水酸化物の形に転化する。
【0098】
[0084]上記方法により形成することができるフィルムの性質は、各モノマーのモル比を変動させて、水酸化物イオン中での望ましくない膨潤およびヒドロゲルの形成を減少させることにより、制御することができる。上記方法は、米国特許出願公開第2007/0128500号の図1に示すような集成体を形成するために用いることができるアニオン性アルカリ交換膜(AAEM)を形成するのに有効であり、そのような集成体は、Varcoe et al.の図1(b)に示すようなアニオン燃料電池のための有効な高分子電解質になると考えられる。
理論実施例4
[0085]開環メタセシス架橋ポリノルボルネンフィルムの調製。
【0099】
【化24】

【0100】
[0086]薄い架橋付加重合フィルムは、最初にクロロホルム溶液中でルテニウム開始剤(例えば、(1,3−ビス−(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウム(第2世代Hoveyda Grubbs触媒)を組み合わせて予備触媒濃縮物を形成し、この混合物を室温においてクロロホルム中の1,1’−(ノルボルネン−2,2−ジイル)ビス(トリメチルメタンアンモニウムヨージド)(35mol%)および1,4−ジ(ノルボルネニル)ブタン(65mol%)モノマーのモノマー混合物に加えて均質溶液を得ることにより、合成することができる。触媒モル反応比は、約5000:1(NBモノマー:Ru)である。フィルムを形成するために、この溶液の一部をガラス皿に注ぎ入れて反応混合物の薄いコーティングを生じさせ、室温でそのまま放置してゲルにし、その後、硬化するためにそれを約30分間にわたり80℃に徐々に加熱する。上記方法により形成するポリマーは不飽和になるので、所望により、この時点で架橋フィルムを水素化することができる。その後、架橋フィルムを水酸化カリウム溶液(1M)で処理して水酸化物の形に転化する。
【0101】
[0087]上記方法により形成することができるフィルムの性質は、各モノマーのモル比を変動させて、水酸化物イオン中での望ましくない膨潤およびヒドロゲルの形成を減少させることにより、制御することができる。上記方法は、米国特許出願公開第2007/0128500号の図1に示すような集成体を形成するために用いることができるアニオン性アルカリ交換膜(AAEM)を形成するのに有効であり、そのような集成体は、Varcoe et al.の図1(b)に示すようなアニオン燃料電池のための有効な高分子電解質になると考えられる。
【0102】
[0088]ここまでで、ポリマー材料を作製するためのさまざまな方法を開示してきたことを、理解すべきである。これに関し、そのようなポリマー材料は膜の形成に有用であり、さらに、これまでに公知のアルカリ燃料電池での問題点に対処するAFCを形成するのに採用することができる膜の形成に有用である。例えば、本開示に従ったポリマーの態様を用いて作製したAAEMを包含するAFCは、寿命が長く、上記のようにカーボネート形成による閉塞または破壊に抵抗性を示すと考えられる。さらに、本開示の完全飽和ポリマーの態様から作製したAAEMは、不飽和ポリマーから作製したAAEMより酸化的に安定になると考えられる。
【0103】
[0089]さらに、本開示に従ったポリマーの態様は、AAEM以外のAFCの要素を形成するのにも有用であることを、理解すべきである。例えば、本明細書中で全体を参考として援用する米国特許出願公開第2007/0128500号の段落[0028]〜[0039]を参照すると、図2の電極2および4はそれぞれ活性層を包含し、そのような活性層2aおよび4aはそれぞれ、水酸化物イオンを伝導する要素を包含することが開示されている。本開示に従ったポリマーの態様のいくつかは、活性部分2aおよび4aのこの要素を形成するのに有用であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むビニル付加ノルボルネン型ポリマー:
式Aにより表されるノルボルネン型モノマーから誘導される第1のタイプの反復単位:
【化1】

ここにおいて、式Aに関し、mは0〜3であり、R、R10、R11およびR12の少なくとも1つは、四級化することができることを特徴とする官能基(FG)であり、他のものは、独立して、水素、C〜Cアルキル、アリールまたはアルキル−アリール基である;
ならびに、
式Bにより表されるノルボルネン型モノマーから誘導される第2のタイプの反復単位:
【化2】

ここにおいて、式Bに関し、mは先に定義したとおりであり、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つは、置換もしくは非置換マレイミド−アルキル側基[ここにおいて、アルキルはC〜Cアルキルである]または他の架橋性基であり、他のものは、独立して、
【請求項2】
第1のタイプの反復単位の官能基を四級化してN(CHOHを含ませる、請求項1のビニル付加ノルボルネン型ポリマー。
【請求項3】
以下を含むROMPノルボルネン型ポリマー:
式Iにより表されるノルボルネン型モノマーから誘導される第1のタイプの反復単位:
【化3】

ここにおいて、式Iに関し、
mは0〜3であり、
、R、RおよびRの少なくとも1つは、式III:
【化4】

により表される側基であり、
ここにおいて、式IIIに関し、R’は、−(CH−[式中、pは0〜12である]から選択され;Arは1以上の芳香族環を有する芳香族基であり;R’’は、−(CH−[式中、pは0〜12である]または−(CH−O−(CH−[式中、sおよびtは、独立して1〜6である]から選択され、そして、R’’は、共有結合により第四アンモニウム官能基の窒素につながっており、R、RおよびRはそれぞれ、独立して、メチル、アリールまたはアルキル−アリール基[ここにおいて、アルキルはC〜Cアルキルである]から選択され、そして、vは、1または2のいずれかであり、
、R、RおよびRの他のものは、独立して、水素、C〜C10アルキル、アリール、またはアルキル−アリール基である;ならびに、
式IIにより表されるノルボルネン型モノマーから誘導される第2のタイプの反復単位:
【化5】

ここにおいて、式IIに関し、
mは先に定義したとおりであり、
、R、RおよびRの少なくとも1つは、置換もしくは非置換マレイミド−アルキル側基[ここにおいて、アルキルは、C〜Cアルキルである]、またはNBCHOCHNB、NBCH(OCHCHOCHNB、NBCH(OCHCHOCHNB−、NB−NB、NB−Et−NB、NB−Bu−NB、NB−Hx−NB、NBCNBおよびNBCHCHNBから選択され、
、R、RおよびRの他のものは、独立して、水素、C〜C12アルキル、または末端ハロゲン化アルキル、アルキル−アリール[ここにおいて、アリール部分はハロゲン化されていてもよく、アルキルはC〜C12である]、またはメチルグリコールエーテル−CH−(OCHCH−OMe[式中、qは1〜4である]から選択され、
ただし、
シクロペンタジエンおよびシクロオクテンは架橋剤部分ではないという条件が付く。
【請求項4】
請求項2のビニル付加ポリマーを含む、水酸化物伝導性アニオン性アルカリ交換膜。
【請求項5】
請求項3のROMPポリマーを含む、水酸化物伝導性アニオン性アルカリ交換膜。
【請求項6】
請求項4または5の水酸化物伝導性アニオン性アルカリ交換膜を含むアルカリ燃料電池。
【請求項7】
活性層を有する第1の電極を含み、前記活性層が請求項2または請求項4のポリマーを含む、アルカリ燃料電池。
【請求項8】
請求項4の水酸化物伝導性アニオン性アルカリ交換膜と、活性層を有する第1の電極とを含むアルカリ燃料電池であって、前記活性層が請求項2のビニル付加ポリマーを含む、前記アルカリ燃料電池。
【請求項9】
請求項5の水酸化物伝導性アニオン性アルカリ交換膜と、活性層を有する第1の電極とを含むアルカリ燃料電池であって、前記活性層が請求項2のビニル付加ポリマーを含む、前記アルカリ燃料電池。
【請求項10】
請求項5の水酸化物伝導性アニオン性アルカリ交換膜と、活性層を有する第1の電極とを含むアルカリ燃料電池であって、前記活性層が請求項3のビニル付加ポリマーを含む、前記アルカリ燃料電池。

【公表番号】特表2013−513705(P2013−513705A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543335(P2012−543335)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/060144
【国際公開番号】WO2011/072304
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(303043461)プロメラス, エルエルシー (18)
【Fターム(参考)】