説明

第1液圧機械及び第2液圧機械の行程容積を変更するための作動装置

本発明は,第1液圧機械(2)及び第2液圧機械(3)の行程容積を変更するための作動装置(1)に関する。ピストン・シリンダ装置(4)における少なくとも1つのピストン(7)が,液圧機械(2,3)の軸(5,6)に作動結合されている。ドライバからの出力要求に応じて,ピストン(7)には,バルブ装置(9)における位置制御バルブユニット(10)及び圧力制御バルブユニット(11)により,液圧機械(2,3)の領域内における圧力に対応すると共に液圧機械(2,3)の軸(5,6)の第1作動位置に向けて作用する圧力が,ピストン室(12A)を画成する作用面(7A)の領域内において負荷可能とされている。液圧機械(2,3)の領域内における圧力は,位置制御バルブユニット(10)による制御下で調整可能とされると共に,圧力制御バルブユニット(11)による制御下で規制可能とされている。バルブ手段(9)により,液圧機械(2,3)の領域内における圧力に対応すると共に液圧機械(2,3)の軸(5,6)の第2作動位置に向けて作用する圧力が,更なるピストン室(13A)を画成する作用面(7B)の領域内においてピストン(7)に負荷可能とされている。位置制御バルブユニット(10)の作動モードは,圧力制御バルブユニット(11)の領域内で逆転可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,第1液圧機械及び第2液圧機械の行程容積を変更するための,請求項1の上位概念部分に記載した形式の作動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO2009/047041号パンフレット(特許文献1)には,斜軸型液圧ピストン機械の行程容積を変更するための作動装置が開示されている。両ピストン機械は,互いに隣接して配置され,いわゆるダブルヨークにより同時に作動させることにより,行程容積を変更可能とされている。更に,ピストン機械は,閉ループ状の液圧循環路における作動管路により互いに接続され,ポンプモード又はモータモードで作動可能とされている。
【0003】
ピストン機械の行程容積を調整するためのダブルヨークは,ダブルヨークの第1端位置において,第1ピストン機械の行程容積が最小値に対応し,第2ピストン機械の行程容積が最大値となるように,ピストン機械と協働させる。
【0004】
ダブルヨークの第2端位置においては,第1ピストン機械の行程容積が最大値となり,第2ピストン機械の行程容積は最小値となる。
【0005】
ダブルヨークを変位させるために,ピストン機械又は液圧機械の可動軸と作動結合する複動型のピストン・シリンダ装置が設けられている。このピストン・シリンダ装置は,ピストンに結合したピストンロッドにより,液圧機械の軸と作動結合するものである。
【0006】
ピストン・シリンダ装置は,液圧機械の領域内に作用する圧力が,そのロッド側に常時負荷されている。ピストン・シリンダ装置におけるピストンの底部側の大きさは,所要の復元力に応じて,ピストンのロッド側における作用面よりも大きく構成されている。ピストン・シリンダ装置の領域内に作用する変位力は,斜軸ユニット又は液圧機械の領域に作用する復元力から生じるものである。したがって,ポンプモードで作動する液圧機械の領域では,作用する圧力を低下させると共に押しのけ容積を減少させようとする機能が発揮される。同様に,モータモードで作動する液圧機械の領域では作用する圧力を低下させると共に行程容積を,押しのけ容積が減少する方向に変更させようとする機能が発揮される。
【0007】
ドライバからの出力要求に応じて,ピストン・シリンダ装置のピストンには,ピストン室を画成する作用面の領域で,バルブ装置により,液圧機械の領域内における圧力に対応すると共に液圧機械の軸の第1移動方向に作用する圧力が負荷される。
【0008】
位置制御バルブユニット及び圧力制御バルブユニットを備えるバルブ装置により,ピストン・シリンダ装置及び両液圧機械の行程容積の液圧的制御のみならず,調整装置の液圧流路系における圧力遮断及び圧力制御も実行可能である。
【0009】
圧力制御バルブユニットにより所期の圧力制御機能を発揮可能とするため,圧力制御バルブユニットのバルブスプールには2つの制御面が設けられている。小面積の制御面に液圧機械の領域内の圧力を作用させて,制御された圧力遮断機能を発現可能とし,これにより液圧機械の領域内におけるシステム圧を実質的に無損失で制限可能としている。圧力制御バルブユニットのバルブスプールにおける大面積の制御面領域には,比例的制御圧を発生するための制御バルブにより発生された制御圧を作用させ,この制御圧に基づき,システム内において圧力遮断機能により限定されたシステム圧の上限値が,作動状態に応じて,又は所要に応じて変更可能とされている。
【0010】
実際には,上述した調整装置により作動され,かつ,液圧機械を含む液圧ユニットは,機械的なトランスミッション装置と組み合わされて,いわゆるCVT変速機(無段変速機)を構成しており,該変速機は多くの場合には複数の変速比領域を有している。各変速比領域内では変速比が上限値と下限値との間で無段階的に変更可能であり,また,変速比領域相互間では,好適には同期的な作動態様で,CVT変速機の関連する領域への切り換えが行われる。
【0011】
各変速比領域が選択されている間,液圧機械は多重的に使用される。先ず,第1変速比領域が選択されている間に第1液圧機械はポンプモードで,また第2液圧機械はモータモードで作動する。次に,CVT変速機において第1変速比領域に連続する第2変速比領域が選択されると,第1液圧機械がモータモードで,また第2液圧機械はポンプモードで作動する。更に,第2変速比領域に連続する第3変速比領域がCVT変速機に設けられている場合,第3変速比領域では,第1変速比領域におけると同様に,第1液圧機械がポンプモードで,また第2液圧機械はモータモードで再び作動する。上述した態様で液圧機械が適用される更なる変速比領域を設けておくことも可能である。
【0012】
しかしながら,液圧機械のこのような作動態様では,液圧機械の領域における圧力を制限するために従来技術により既知の調整装置において圧力制御バルブユニットに設けられている開口が,第2変速比領域が選択されている間にポンプモードで作動する第2液圧機械の供給容積を,液圧機械領域における圧力制御の間に減少させる代わりに増加させるものであり,そのような増加は不所望である。
【0013】
このような理由から,上述した調整装置における圧力制御バルブユニットの圧力制御機能は,第1変速比領域から第2変速比領域への切り換えに際して無効とされている。
【0014】
それにも関らずシステム内における過度に高い圧力を回避可能とするために圧力制御バルブユニットが設けられているが,これにより圧力を制限する間に当該領域で動力損失が生じ,システムの不所望の加熱が生じることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開WO2009/047041号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって,本発明の課題は,CVT変速機の全変速比領域内で,実質的な動力損失を伴わずに圧力制御機能を発揮することのできる作動装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は,本発明によれば,請求項1に記載した特徴を有する作動装置によって解決されるものである。
【0018】
本発明に係る作動装置は,第1液圧機械及び第2液圧機械の行程容積を変更するものであり,これらの液圧機械がそれぞれ斜軸型ピストン機械として構成され,かつ,その行程容積が,複動型のピストン・シリンダ装置により同時に変位可能とした液圧機械の軸の傾斜位置に対応し,ピストン・シリンダ装置における少なくとも1つのピストンが,液圧機械の軸に作動結合され,該ピストンに,ドライバからの出力要求に応じて,バルブ手段における位置制御バルブユニット及び圧力制御バルブユニットにより,液圧機械の領域内における圧力に対応すると共に液圧機械の軸の第1作動位置に向けて作用する圧力が,ピストン室を画成する作用面の領域内において負荷可能とされており,液圧機械の領域内における前記圧力が,位置制御バルブユニットによる制御下で調整可能とされると共に圧力制御バルブユニットによる制御下で規制可能とされており,更に,前記ピストンに,前記バルブ手段により,液圧機械の領域内における液圧に対応すると共に液圧機械の軸の第2作動位置に向けて作用する圧力が,更なるピストン室を画成する作用面の領域内において負荷可能とされており,位置制御バルブユニットの作動モードが,圧力制御バルブユニットの領域内で逆転可能としたものである。
【0019】
したがって,液圧機械の領域内における圧力を,全ての変速比領域において損失が実質的に生じない所望の限度内で,前記バルブ手段により,すなわち圧力規制バルブ以外の領域において,作動状態に応じて,かつ所要に応じて制限することが可能である。そのためには,ピストン・シリンダ装置の領域内でそれぞれの作用面に作用させる圧力,すなわち液圧機械の軸の第1調整位置又は第2調整位置に向けて作用する圧力を,バルブ装置により可変とすると共に圧力制御バルブユニットの領域において位置制御バルブユニットの作動モードを逆転可能とするものである。
【0020】
圧力制御機能又は制御された圧力遮断機能は,液圧機械の作動モードに関わらず,すなわちモータモードであるかポンプモードであるかを問わず,CVT変速機の全ての変速比領域で実行可能である。
【0021】
本発明の作動装置を簡単に作動可能とした実施形態においては,圧力制御バルブユニットに,そのバルブスリーブにおける制御面の領域で,液圧機械の領域内における圧力が負荷可能とされ,その圧力が,前記バルブスプールに及ぼされる制御力,好適にはばね装置のばね力に対抗するものであり,液圧機械の領域内における圧力は前記制御力に対応している
【0022】
本発明の作動装置の有利な実施形態では,制御力を発生させるために比例マグネットが設けられており,又は制御力を,圧力制御バルブユニットのバルブスプールにおける更なる作用面に作用可能とした比例的な制御圧により発生させる。
【0023】
本発明の作動装置を僅かな制御時間又は調整時間で作動可能とした実施形態では,ピストン・シリンダ装置におけるピストン室及び更なるピストン室は,バルブ手段により,液圧機械の圧力側又は,液圧機械の作動時に,液圧機械の圧力側領域よりも圧力が低い領域に交互に接続可能とされている。制御時間又は調整時間を僅かなものとするために,ピストンの所望の変位に対向する圧力由来の力を,ピストン室の1つにおける短期の圧力低下により減少させる。
【0024】
本発明の作動装置を簡単に作動可能とした実施形態では,ピストンの作用面が互いに同一面積を有する。
【0025】
本発明の作動装置の構造的に簡単かつ安価な実施形態では,位置制御バルブユニットの領域に比例マグネットが設けられており,この比例マグネットにより一制御バルブユニットをばね装置に抗して変位可能としている。
【0026】
本発明の作動装置を制御及び調整に煩わされずに作動可能とした実施形態では,ばね装置のばね力が,ピストン・シリンダ装置のピストンに対するばね装置の機械的結合に応じて変更可能である。
【0027】
本発明の作動装置を構造的に簡単かつ安価でスペース的にも有利な構成とした実施形態では,位置制御バルブユニットが4/2路弁として形成され,及び/又は圧力制御バルブユニットが,4/2路弁として形成されている。
【0028】
本発明の作動装置の更なる有利な実施形態では,位置制御バルブユニットと,液圧機械との間の領域に圧力規制バルブが配置され,該圧力規制バルブにより,液圧機械の領域内における圧力が所定レベルに調整可能である。これにより,複雑な構造的措置を要することなく,圧力制御バルブユニットの誤作動時に液圧機械の領域内における過度に高い圧力自体を回避することが可能である。
【0029】
本発明の作動装置の更なる利点及び有利な実施形態は,特許請求の範囲と,図面を参照しつつ後述する実施形態から明らかである。なお,各実施形態については,説明の明確化を期するため,構造又は機能が対応する構成要素を同一の参照数字で表わすものとする。
【0030】
本発明の作動装置に関して従属請求項に記載された特徴や,後述する実施形態に関連する特徴は,それぞれ単独で,及び任意の組み合わせをもって,本発明の対象を構成するものである。このような特徴の組み合わせは,何れも本発明の対象の実施形態に関するものであり,限定的ではなく,単なる例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の作動装置の第1実施形態を示す液圧回路図である。
【図2】本発明の作動装置の第2実施形態を示す,図1と同様な液圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は,第1液圧機械2及び第2液圧機械3の行程容積を変更するための本発明に係る作動装置1を示し,これらの液圧機械は斜軸型ピストン機械として構成されており,その行程容積は複動型ピストン・シリンダ装置4により同時に変位可能とした液圧機械2,3の軸5,6の傾斜位置に対応するものである。ピストン・シリンダ装置4のピストン7は,ピストンロッド8により液圧機械2,3の軸5,6に作動結合されている。
【0033】
液圧機械2,3は,CVT変速機において,車両パワートレインにおける駆動機械が発生するトルクの一部を被動側に液圧的に伝達する走行レンジを構成するための液圧ユニットに対応する。この液圧ユニットは,CVT変速機における第1動力分岐手段として,通常は,CVT変速機における第2動力分岐手段としての機械的手段と組み合わされ,この機械的手段は,駆動機械が発生するトルクの残部を変速機入力部と変速機出力部との間に伝達可能とするものである。両動力分岐手段は,好適には遊星ギヤ機構により互いに作動結合されている。このようなCVT変速機は,好適には,前進走行及び後退走行のための複数の走行レンジがそれぞれ設けられており,これらの走行レンジは,少なくとも1つのシフト要素を解放すると共に少なくとも1つのシフト要素を締結することによりそれぞれ切換可能とされている。また,各走行レンジ内では,CVT変速機の変速比が,液圧機械2,3の行程容積を変化させることにより無段階的に変更可能とされている。なお,走行レンジを同期的に切換可能とするため,各液圧機械2,3はポンプモードのみならず,モータモードでも作動可能とされている。
【0034】
次に,作動装置1の機能を,前進走行及び後退走行のためにそれぞれ3つの走行レンジを選択可能としたCVT変速機に関連させて説明する。なお,更なる走行レンジを設けておくことも可能である。
【0035】
CVT変速機において第1走行レンジが選択されており,同時に車両が静止している場合,作動装置1は,第1液圧機械2がポンプモードで,また第2液圧機械3がモータモードで作動する。この作動状態において,第1液圧機械2の押しのけ容積は最少であると共に第2液圧機械3の供給容積は最大であり,両液圧機械2,3の軸5,6はそれぞれ図1に示す傾斜位置を占めている。
【0036】
ピストン・シリンダ装置4に関連して,位置制御バルブユニット10及び圧力制御バルブユニット11を含むバルブ装置9が配置されている。バルブ装置9には,位置制御バルブユニット10の領域のみならず,圧力制御バルブユニット11の領域においても,それぞれ液圧機械2,3の領域における圧力が作用しており,この圧力は,バルブ装置9の対応する作動により,ピストン・シリンダ装置4における第1ピストン室12A及び第2ピストン室13A内で,ピストン7の作用面7A,7Bに作用可能とされている。
【0037】
位置制御バルブユニット10及び圧力制御バルブユニット11は,何れも4/2路弁又は4/2制御弁として形成されている,圧力制御バルブユニット11は,液圧機械2,3に関して位置制御バルブユニット10の下流側に配置され,かつ,位置制御バルブユニット10に対向する方向に作用する。図1に示す実施形態において,位置制御バルブユニット10は比例マグネット12により作動され,その際に位置制御バルブユニット10は比例的に変位可能とした制御圧バルブによっても制御可能とされている。
【0038】
比例マグネット12の操作力はばね装置13のばね力と対向し,そのばね力はピストン・シリンダ装置4のピストン7に対するばね装置13の機械的結合14に応じて変更可能である。この機械的結合14により,ピストン・シリンダ装置4におけるピストン7の位置を位置制御バルブユニット10にフィードバックして,両液圧機械2,3を制御下で作動させるものである。
【0039】
比例マグネット12の領域内で発生させた調整力が,位置制御バルブユニット10のバルブスプールに作用するばね装置13のばね力よりも大きい場合には,液圧機械2,3の領域内の圧力又は図1に示す位置を占める圧力制御バルブユニット11内の圧力がピストン・シリンダ装置4の第2ピストン室13A内に導かれると共に,作動流体が第1ピストン室12Aから無圧領域15又はタンクに排出される。
【0040】
その結果,ピストン7が図1に示す位置からピストンロッド8と共に変位して,第1ピストン室12Aの容積を減少させると共に第2ピストン室13Aの容積を増加させる。そして,ピストンロッド8の変位により,ポンプモードで作動する第1液圧機械2の供給容積が増加すると共に,モータモードで作動する第2液圧機械3の供給容積が減少する。比例マグネット12の領域で発生する力がばね装置13のばね力に対向することにより,ピストン7の位置が制御される。
【0041】
ピストン・シリンダ装置4の各変位位置は,ポンプモードで作動する液圧機械2,3とモータモードで作動する液圧機械3,2の押しのけ容積比を決定する。両液圧機械2,3で構成された液圧装置が,二次的に結合された動力分岐型トランスミッションに設けられている場合には,そのトランスミッションを装備した車両の走行速度を無段階的に調整し,又は制御することが可能である。
【0042】
位置制御バルブユニット10の下流側に配置された圧力制御バルブユニット11は,二重的機能を発揮する。第1の機能はいわゆる圧力遮断機能である。他方,第2の機能は,圧力制御バルブユニット11を制御することにより,全走行レンジに亘って圧力を無段階的に制御することである。これらの機能を切り換えるため,圧力制御バルブユニット11は2つの制御面16,17が設けられており,小面積の制御面16に液圧機械2,3の圧力が作用し,他方,図示しない制御圧制御バルブにより比例的に制御可能とした大面積の制御面17には,圧力制御バルブユニット11におけるばね装置18のばね力に対向する制御圧が負荷可能とされている。
【0043】
代替的に,圧力制御バルブユニット11を,図2に示す比例マグネット19により,後述する様式及び態様で作動させることも可能である。
【0044】
圧力遮断機能の目的は,緊急時にのみ圧力を圧力規制バルブ20,21の領域で規制し,圧力規制バルブ20,21の領域内における作動流体を,高圧側から低圧側に逃すことである。圧力規制バルブ20,21による圧力規制に際しては動力損失が生じ,この動力損失は,液圧機械2,3で構成された液圧式動力伝達系を早期に過熱させ,CVT変速機として構成された車両用パワートレインにおける,好適には内燃機関よりなる駆動機械の燃料消費を必要以上に高めるものである。
【0045】
圧力規制バルブ20,21は,バルブ装置9又は圧力制御バルブユニット11よりも応答時間が短い構成とされているため,過大な動的負荷変動の間にシステムを保全することを一義的な目的とするものである。これにより作動装置1における流体系の不所望の損傷を回避することができ,このような損傷は,バルブ装置9のみでは遅い応答特性のために回避できなかったものである。
【0046】
圧力制御バルブユニット11の圧力遮断機能により液圧機械2,3の領域内における最大圧力が,圧力規制バルブ20,21の開放圧力よりも低レベルに規制される。圧力規制バルブ20,21の応答限界値が500barであれば,圧力が負荷される小面積の制御面17は,圧力制御バルブユニット11のばね装置が約460barに加圧され,これにより作動流体が,圧力負荷されているピストン室12A又はピストン室13Aからタンク15に向けて排出されるように構成するのが好適である。
【0047】
圧力制御バルブユニット11の応答時点から,モータモードで作動する液圧機械2又は3の出力回転数が低下し,又はその押しのけ容積が増加する。同時に,ポンプモードで作動する液圧機械3又は2の供給容積が減少し,これにより動力消費が減少する。作動装置1による圧力遮断は,CVT変速機の全変速比領域内で,すなわち全ての走行レンジに亘って達成可能である。その結果,液圧機械2,3の領域内又は全システム内における圧力を,圧力制御バルブユニット11の付加的な制御を要することなく大面積の制御面17の領域内で,又は比例マグネット19の作動を要することなく,460barの最大値以下に規制することができる。
【0048】
圧力制御バルブユニットにおける大面積の制御面16に負荷可能とした制御圧は,小面積の制御面17の作用する液圧機械2,3の圧力と足し合わされるものであり,この制御圧により圧力制御バルブユニット11の開放開始時点が,作動状態に適合させて,かつ,所要に応じて可変とされ,また,システム内における達成可能な最大圧力が一定の制御下で調整可能とされるものである。このような圧力制御は,車両を駆動力の無段階的な制御下で作動させるための,システム内における無段階的な圧力調整を目的とするものである。
【0049】
圧力制御バルブユニット11における制御面16,17の面積比を100:3.9とすれば,約100barの液圧は3.9barの制御圧に対応する。大面積の制御面16の領域における最大制御圧が18barであれば,システム内における圧力を作動装置の全作動範囲に亘って制御することができ,これにより大面積の制御面16の無圧状態における圧力遮断機能の最大値を460barに規制することができる。大面積の制御面16の領域における制御圧が増加すれば圧力制御バルブユニット11の開放開始が遅れることとなり,制御圧の3.9barからの増加は約100barにおける圧力制御バルブユニット11の開放開始の遅れにつながる。
【0050】
両比例的機能,すなわち無段階的な供給量及び圧力制御を組み合わせることにより,液圧機械2,3を含む液圧装置全体の動力消費を調整することが可能である。
【0051】
対応する位置制御バルブユニット10の比例マグネット側における作動により,CVT変速機の全変速比範囲内において,ポンプモードで作動する液圧機械2又は3の供給量が増加する。圧力制御バルブユニット11を制御面16,17の領域における高い制御圧により作動させると,すなわち圧力制御バルブユニット11におけるバルブスプールをばね装置18のばね力に抗して図1,2に示す作動位置から第2の作動位置に向けて変位させると,ポンプモードで作動する液圧機械2又は3の供給量が減少する。両制御バルブユニット,すなわち位置制御バルブユニット10及び圧力制御バルブユニット11を交互に作動させることにより,CVT変速機の全変速比領域に亘って,格別の制約を伴わずに,しかも低損失下で位置制御及び圧力制御を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 作動装置
2 第1液圧機械
3 第2液圧機械
4 ピストン・シリンダ装置
5,6 軸
7 ピストン
7A 作用面
7B 作用面
8 ピストンロッド
9 バルブ装置
10 位置制御バルブユニット
11 圧力制御バルブユニット
12 比例マグネット
12A ピストン・シリンダ装置の第1ピストン室
13 ばね装置
13A ピストン・シリンダ装置の第2ピストン室
14 機械的結合
15 無圧領域,タンク
16 大面積の制御面
17 小面積の制御面
18 ばね装置
19 比例マグネット
20,21 圧力規制バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液圧機械(2)及び第2液圧機械(3)の行程容積を変更するための作動装置(1)であって,該液圧機械がそれぞれ斜軸型ピストン機械として構成され,かつ,その行程容積が,複動型のピストン・シリンダ装置(4)により同時に変位可能とした液圧機械(2,3)における軸(5,6)の傾斜位置に対応するものであり,前記ピストン・シリンダ装置(4)における少なくとも1つのピストン(7)が,前記液圧機械(2,3)の軸(5,6)に作動結合され,該ピストンに,ドライバの出力要求に応じて,バルブ手段(9)における位置制御バルブユニット(10)及び圧力制御バルブユニット(11)により,前記液圧機械(2,3)の領域内における圧力に対応すると共に前記液圧機械(2,3)の軸(5,6)の第1作動位置に向けて作用する圧力が,ピストン室(12A)を画成する作用面(7A)の領域内において負荷可能とされており,前記液圧機械(2,3)の領域内における前記圧力が,前記位置制御バルブユニット(10)による制御下で調整可能とされると共に,前記圧力制御バルブユニット(11)による制御下で規制可能とされている作動装置において,前記ピストン(7)に,前記バルブ手段(9)により,前記液圧機械(2,3)の領域内における液圧に対応すると共に前記液圧機械(2,3)の軸(5,6)の第2作動位置に向けて作用する圧力が,更なるピストン室(13A)を画成する作用面(7B)の領域内において負荷可能とされており,前記位置制御バルブユニット(10)の作動モードが,前記圧力制御バルブユニット(11)の領域内で逆転可能であることを特徴とする作動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において,前記圧力制御バルブユニット(11)に,バルブスリーブにおける制御面(17)の領域で,前記液圧機械(2,3)の領域内における圧力が負荷可能とされ,該圧力が,前記バルブスプールに及ぼされる制御力,好適にはばね装置(13)のばね力に対抗するものであり,前記液圧機械(2,3)の領域内における圧力が,前記制御力に対応していることを特徴とする作動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において,前記液圧機械(2,3)の領域内における圧力が,前記圧力制御バルブユニット(11)に及ぼされる更なる制御力により可変とされ,該制御力が,前記圧力制御バルブユニット(11)のバルブスリーブに及ぼされるばね力に対向することを特徴とする作動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置において,前記更なる制御力は,比例マグネット(19)により発生させるものであることを特徴とする作動装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の装置において,前記更なる制御力は,前記圧力制御バルブユニット(11)におけるバルブスリーブの制御面(16)に対して負荷可能な,比例的な制御圧により発生させるものであることを特徴とする作動装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の装置において,前記ピストン・シリンダ装置(4)におけるピストン室(12A)及び更なるピストン室(13A)が,前記バルブ手段(9)により,前記液圧機械(2,3)の圧力側又は,前記液圧機械(2,3)の作動時に,前記液圧機械(2,3)の圧力側領域における圧力よりも圧力が低い領域(15)に交互に接続可能とされていることを特徴とする作動装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の装置において,前記ピストン(7)の作用面(7A,7B)が同じ大きさであることを特徴とする作動装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の装置において,前記位置制御バルブユニット(10)が比例マグネット(12)によりばね装置(13)に抗して移動可能であることを特徴とする作動装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装置において,前記位置制御バルブユニット(10)におけるばね装置(13)のばね力が,該ばね装置(13)の,前記ピストン・シリンダ装置(4)のピストン(7)に対する機械的結合(14)に応じて変更可能であることを特徴とする作動装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の装置において,前記位置制御バルブユニット(10)が,4/2路弁として構成されていることを特徴とする作動装置。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の装置において,前記バルブ手段(9)における前記圧力制御バルブユニット(11)が,前記位置制御バルブユニット(10)と,前記ピストン・シリンダ装置(4)におけるピストン室(12A,13A)との間に配置されていることを特徴とする作動装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の装置において,前記圧力制御バルブユニット(11)が,4/2路弁として構成されていることを特徴とする作動装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の装置において,前記位置制御バルブユニット(10)と,前記液圧機械(2,3)との間の領域に圧力規制バルブ(20,21)が配置され,該圧力規制バルブにより,前記液圧機械(2,3)の領域内における圧力が所定レベルに調整可能であることを特徴とする作動装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−507583(P2013−507583A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532518(P2012−532518)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062854
【国際公開番号】WO2011/042266
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】