説明

筆記具用水性インキ組成物及びそれを内蔵した筆記具

【課題】印刷文字等のマーキングに適する水性インキ組成物とそれを含む筆記具の提供。
【解決手段】下記式(1)と、着色剤と、水とを含んでなる筆記具用水性インキ組成物。該インキ組成物を内蔵してなる筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用水性インキ組成物に関する。更には、印字面のなぞり書きに適した筆記具用水性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙に印刷された文字や像を強調して表示する方法として、マーキングペンによるハイライト処理が一般的に行われている。例えば、ある特定の文字列を強調したい場合、その文字列上をマーキングペンでなぞることで着色し、視覚的に目立たせる方法がある。その際、元の文字列が視覚的にはっきりと認識されることは非常に重要であり、輪郭のにじみや非印字部分の汚れが発生することは好ましくない。
特に近年、インクジェット記録装置の普及に伴い、インクジェット方式による印刷物を取り扱う機会が増加してきている。汎用されている多くのインクジェット記録装置では水性インキを使用しており、その着色剤も水に溶解ないしは分散するものが採用されている。そのため、水性のマーキングペンを用いてインクジェット記録装置により形成された印刷物(印字部分)をマーキング(筆記)した際に、着色剤が再溶解又は再分散されることにより、印字の輪郭にじみや、溶解した印刷インキが流れることで生じる印字部周辺の非印刷部分の汚れを発生する場合がある。
【0003】
前記マーキングによるハイライト処理時に発生する印字の輪郭にじみや非印刷部分汚れを抑制するために、インキ組成物中にポリアリルアミン等のカチオン性ポリマーを添加する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−286952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記カチオン性ポリマーを添加したインキは、着色剤として染料を用いた場合には、印字の輪郭にじみや非印刷部分の汚れを抑制できるものの、着色剤として顔料を用いた場合には、経時により顔料が凝集してしまい、筆跡カスレを生じたり筆記不能となる等、筆記性能を損なうものであった。
本発明は、インクジェット記録装置による印刷物に使用した場合であっても、着色剤の種類に関係なく優れた筆記性能を長期的に維持したまま、印字の輪郭にじみや非印刷部分の汚れを抑制できる実用性の高い筆記具用水性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、下記一般式(1)、一般式(2)、オキシエチレンアルキルジアミン及びポリオキシエチレンアルキルジアミンから選ばれる一種又は二種以上のアミノ化合物と、着色剤と、水とを含んでなることを要件とする。
【化1】

〔式中R1,R2は炭素数1〜3のアルキル基から選ばれる置換基であり、XはCl,CSOのいずれかである。また、分子量は1,000〜250,000の範囲にある〕
【化2】

〔式中R3は水素又は炭素数1〜3のアルキル基から選ばれる置換基であり、Xは塩酸,酢酸,アミド硫酸のいずれかである。また、分子量は1,000〜250,000の範囲にある〕
更に、前記アミノ化合物をインキ組成物中0.5〜5重量%含んでなること、前記着色剤が着色樹脂顔料、マイクロカプセル顔料のいずれかを含むことを要件とする。
更には、前記いずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物を内蔵してなる筆記具を要件とし、前記筆記具がマーキングペン形態であることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、前記アミノ化合物を配合することにより、インクジェット記録装置による印刷物に使用した場合であっても、着色剤の種類に関係なく優れた筆記性能を長期的に維持したまま、印刷面に形成された印字の輪郭にじみや溶解した印刷インキによる非印刷部分の汚染を抑制できる。そのため、実用性の高い筆記具用水性インキ組成物とそれを内蔵した筆記具となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記アミノ化合物は、水媒体によって再溶解又は再分散されるインクジェット印字(着色剤成分)と反応して前記印字部分の不溶化を生じる。そのため印字部分の着色剤が再溶解又は再分散することを抑制できると推察される。
前記一般式(1)で表されるアミン系ポリマーは、四級アンモニウム塩を有するジアリルアンモニウムクロライドやジアリルアンモニウムエチルサルファイトを繰り返し単位とするポリマーであり、一般式(2)で表されるアミン系ポリマーは、三級アミンのカチオンを持つジアリルアミンアルキルの酸塩を繰り返し単位とするポリマーや、二級アミンのカチオンを持つジアリルアミンの酸塩を繰り返し単位とするポリマーである。これらはいずれも分子量が1000〜250000の範囲にあるポリマーである。
前記一般式(1)で表されるアミン系ポリマーの市販品としては、例えば、センカ(株)製のユニセンスFPA101、FPA102、日東紡績(株)製のPAS−H−1L、5L、10L等が例示できる。
前記一般式(2)で表されるアミン系ポリマーの市販品としては、例えば、日東紡績(株)製のPAS−M−1、1L、1A、PAS−21CL等が例示できる。
【0009】
また、オキシエチレンアルキルジアミン、ポリオキシエチレンアルキルジアミン(これら2種を併せて(ポリ)オキシエチレンアルキルジアミンということがある。)はアミン型界面活性剤として用いられるものであり、(ポリ)オキシエチレンアルキルジアミンの市販品としては、例えば、ライオン(株)製のエソデュオミンT/11、T/13、T/25等を挙げることができる。
【0010】
前記アミン化合物は、インキ組成物全量中0.05〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の範囲で添加することができる。
0.05重量%未満ではインクジェットによる印字の再溶解抑制効果を得ることは困難であり、また、5重量%を越えて配合しても更なる効果は得られないので、これ以上の添加を要しない。
【0011】
前記着色剤としては、水性系媒体に溶解もしくは分散可能な染料及び顔料がすべて使用可能であり、その具体例を以下に例示する。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等を使用することができる。
酸性染料としては、ニューコクシン(C.I.16255)、タートラジン(C.I.19140)、アシッドブルーブラック10B(C.I.20470)、ギニアグリーン(C.I.42085)、ブリリアントブルーFCF(C.I.42090)、アシッドバイオレット6B(C.I.42640)、ソルブルブルー(C.I.42755)、ナフタレングリーン(C.I.44025)、エオシン(C.I.45380)、フロキシン(C.I.45410)、エリスロシン(C.I.45430)、ニグロシン(C.I.50420)、アシッドフラビン(C.I.56205)等が用いられる。
塩基性染料としては、クリソイジン(C.I.11270)、メチルバイオレットFN(C.I.42535)、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、ビクトリアブルーFB(C.I.44045)、アクリジンオレンジNS(C.I.46005)、メチレンブルーB(C.I.52015)等が用いられる。
直接染料としては、コンゴーレッド(C.I.22120)、ダイレクトスカイブルー5B(C.I.24400)、バイオレットBB(C.I.27905)、ダイレクトディープブラックEX(C.I.30235)、カヤラスブラックGコンク(C.I.35225)、ダイレクトファストブラックG(C.I.35255)、フタロシアニンブルー(C.I.74180)等が用いられる。
【0012】
特に、ハイライト効果が高いことから、カラ−インデックス(以下、省略する)アシッドイエロ−1、同3、同7、アシッドレッド51、同52、同92、同94、ベ−シックオレンジ14、同15、ジスパ−ズイエロ−6、ダイレクトイエロー59(プリムリン)、ベーシックイエロー1(チオフラビン)、チアゾ−ルイエロ−G、ソルベントグリーン7(ヒドロキシピレントリスルホン酸)、ベーシックバイオレット10、ベーシックレッド1等の蛍光染料が好適に用いられる。
【0013】
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤や樹脂を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:Sandye Super Blue GLL、顔料分24%、山陽色素株式会社製〕、C.I. Pigment Red 146〔品名:Sandye Super Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、C.I.Pigment Red 220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
尚、前記顔料を分散する樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル酸樹脂、マレイン酸樹脂、アラビアゴム、セルロース、デキストラン、カゼイン等、およびそれらの誘導体、前記した樹脂の共重合体等が挙げられる。
また、二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、天然雲母、合成雲母、アルミナ、ガラス片から選ばれる芯物質の表面を二酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料、コレステリック液晶型光輝性顔料等を使用することもできる。
【0014】
特に、ハイライト効果が高いことから着色樹脂顔料が好適に用いられる。前記着色樹脂顔料は、各種染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状のものが適用でき、印字上をなぞった際に印字の視認性を妨げることなくハイライト効果を付与できる。
特に、蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が有用であり、具体的には、ルミコールシリーズ(日本蛍光株式会社製)、SWシリーズ(シンロイヒ株式会社製)、LM21シリーズ(富士色素株式会社製)等が例示できる。
【0015】
更に、熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料や、熱変色性組成物と共に染料や顔料を内包したマイクロカプセル顔料等を使用することもできる。
前記熱変色性組成物としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物が好適であり、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として適用される。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
【0016】
更に、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、前記色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0017】
前記着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成物中1〜25重量%、好ましくは2〜15重量%の範囲で用いられる。
【0018】
更に必要に応じて、水に相溶性のある従来汎用の水溶性有機溶剤を用いることができる。具体的には、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
尚、前記水溶性有機溶剤は一種又は二種以上を併用して用いることができ、2〜60重量%、好ましくは5〜35重量%の範囲で用いられる。
【0019】
その他、必要に応じて、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系界面活性剤を使用してもよい。
更に、潤滑剤を添加することができ、金属石鹸、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系活性剤、N−アシルアミノ酸系界面活性剤、ジカルボン酸型界面活性剤、β−アラニン型界面活性剤、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールやその塩やオリゴマー、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、α−リポ酸、N−アシル−L−グルタミン酸とL−リジンとの縮合物やその塩等が用いられる。
また、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピペリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
【0020】
また、耐乾燥性を妨げない範疇でアルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等の水溶性樹脂を一種又は二種以上添加したり、尿素、ノニオン系界面活性剤、ソルビット、マンニット、ショ糖、ぶどう糖、還元デンプン加水分解物、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤を一種又は二種以上添加することもできる。
【0021】
前記水性インキ組成物には、剪断減粘性付与剤を添加することもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、ゼータシーガム、ダイユータンガム、マクロホモプシスガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ポリN−ビニル−カルボン酸アミド架橋物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示できる。更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加してもよい。
前記剪断減粘性付与剤は、インキ組成物中0.1〜20重量%の範囲で用いることができる。
【0022】
本発明の筆記具用水性インキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、ボールペンチップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペンに充填される。尚、前記マーキングペンやボールペンは、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式の他、ノック式、回転式、スライド式等の出没機構を有し、軸筒内にペン先を収容可能な出没式であってもよい。
【0023】
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペン用ペン先(砲弾型、チゼル型、筆ペン型等)を筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
また、ペン先を1本備えるものの他、太さや形状の異なるペン先を軸筒の両端に備えた両頭式形態であってもよい。尚、前記両頭式形態においては、一端をボールペンとしたものであってもよい。
【0024】
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接している構造のボールペンが挙げられる。
【0025】
特に、インクジェット装置による印字箇所をなぞることを目的とする場合には、マーキングペンが好適であり、一本のペン先で線幅の異なる筆跡を形成できるチゼル型のペン先が広範囲での使用に適したものである。
【実施例】
【0026】
実施例及び比較例のインキ組成を以下の表に示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、表中の組成の数値は重量部を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)日本蛍光(株)製、商品名:ルミコールNKW−3205E
(2)(イ)成分として4−[2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン、(ロ)成分として、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチルからなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を黄色に発色させたもの)。平均粒子径:2.5μm、完全消色温度:61℃、完全発色温度:−20℃、温度変化により黄色から無色に変色する。
(3)(イ)成分として2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−[1]ベンゾピラノ[2,3−g]ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン、(ロ)成分として4,4′−(2−エチルヘキサン−1、1−ジイル)ジフェノール、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチルからなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料をピンク色に発色させたもの)。平均粒子径:2.1μm、完全消色温度:59℃、完全発色温度:−20℃、温度変化によりピンク色から無色に変色する。
(4)ライオン(株)製、商品名:エソデュオミンT/25
(5)日東紡績(株)製、商品名:PAS−21CL
(6)日東紡績(株)製、商品名:PAS−H−5L
(7)日東紡績(株)製、商品名:PAS−22−SA−40
(8)日東紡績(株)製、商品名:PAAA−01
(9)リン酸エステル系界面活性剤、第一工業製薬(株)製、商品名:プライサーフAL
(10)アーチケミカルズジャパン社製、商品名:プロキセルXL−2
【0029】
インキの調製
前記実施例及び比較例の配合量で各原料を混合し、20℃で3時間撹拌溶解した後、濾過することにより筆記具水性インキ組成物を得た。
【0030】
マーキングペンの作製
得られた各インキ組成物を軸筒内のインキ吸蔵体に充填し、先端部にインキ吸蔵体と連通するアクリル繊維束を樹脂で結着したチゼル型チップを設けることで試料用マーキングペンを得た。
【0031】
各マーキングペンを用いて以下のテストを行った。
筆記試験
純正カートリッジを内蔵したオンデマンド型インクジェット記録装置(キヤノン株式会社製)を用いて、市販のPPC用紙に黒色文字を印刷した印刷物に対して、各試料用マーキングペンで印字部分をなぞって筆記した際の印字部分の状態を目視により確認した。
インキ安定性試験
各試料用マーキングペンをチップ下向き状態で静置し、50℃の環境下に60日間放置した。その後、室温にて内部のインキの状態を目視により確認した。
【0032】
以下の表に各試験の結果を示す。
【表2】

【0033】
尚、試験結果の評価は以下の通りである。
筆記試験
○:印字が滲むことなく良好な筆跡を示した。
△:印字に若干の滲みが発生する。
×:印字が滲み、複数文字に亘って連続筆記すると印字流れを生じる。
インキ安定性試験
○:異常なし。
×:顔料の凝集や沈降が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)、一般式(2)、オキシエチレンアルキルジアミン及びポリオキシエチレンアルキルジアミンから選ばれる一種又は二種以上のアミノ化合物と、着色剤と、水とを含んでなる筆記具用水性インキ組成物。
【化1】

〔式中R1,R2は炭素数1〜3のアルキル基から選ばれる置換基であり、XはCl,CSOのいずれかである。また、分子量は1,000〜250,000の範囲にある〕
【化2】

〔式中R3は水素又は炭素数1〜3のアルキル基から選ばれる置換基であり、Xは塩酸,酢酸,アミド硫酸のいずれかである。また、分子量は1,000〜250,000の範囲にある〕
【請求項2】
前記アミノ化合物をインキ組成物中0.05〜5重量%含んでなる請求項1記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項3】
前記着色剤が着色樹脂顔料、マイクロカプセル顔料のいずれかを含む請求項1又は2に記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載の筆記具用水性インキ組成物を内蔵してなる筆記具。
【請求項5】
マーキングペン形態である請求項4記載の筆記具。