説明

筆記具用水性インキ組成物

【課題】本発明の課題は、筆記具用水性インキ組成物において、ドライアップ性能に優れ、非浸透面に筆記可能である筆記具用水性インキ組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、少なくとも、水、着色剤、ドライアップ抑制剤、界面活性剤を含有する筆記具用水性インキ組成物であって、前記ドライアップ抑制剤の20℃における水に対する溶解度が、3.0〜20.0質量%であり、前記筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が、20〜40mN/mであることを特徴とする筆記具用水性インキ組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筆記具用水性インキ組成物に関し、さらに詳細としては、ドライアップ性能に優れ、非浸透面に筆記可能である筆記具用水性インキ組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、キャップを筆記具本体から外して、ペン先を大気中に放置すると、インキ中の溶剤などが蒸発して、着色剤や樹脂などが乾燥固化して詰まり、筆跡カスレや、筆記不良になってしまうことがあった。
【0003】
そのため、筆記具用水性インキのペン先の乾燥防止剤として、エチレングリコールやプロピレングリコール等の多価アルコール溶剤や尿素及び/又は尿素誘導体などにより、ドライアップ性能を向上した筆記具用水性インキ組成物が知られている。
【0004】
しかしながら、前者のエチレングリコールやプロピレングリコール等の多価アルコール溶剤は十分なドライアップ性能を得るためには多量の添加が必要となり、その結果インキ粘度の上昇によるインキ追従不良や、筆跡の滲み等が発生する、さらに、筆跡乾燥性も劣ってしまい、プラスチック、金属材料等の非浸透面においては、より顕著に筆跡乾燥性が劣ってしまう。また、後者の尿素及び/又は尿素誘導体は、ある程度のドライアップ性能の向上は認められるものの、高温環境下では分解してアンモニアを発生させ、インキ経時が不安定になる問題が発生してしまう。
【0005】
こうした問題を鑑みて、特許第3507514号公報「水性インク組成物」には、サリチル酸を含有したもの、特開平9−67535号公報「水性インキ組成物」には、セリンを含有したもの、特開2010−37369号公報「筆記具用インキ」には、ジペンタエリスリトールを含有したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】「特許第3507514号公報」
【特許文献2】「特開平9−67535号公報」
【特許文献3】「特開2010−37369号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3のように、新たにドライアップ抑制剤を含有する ことで、ある程度の性能の向上は認められるものもあるが、インキ中で前記ドライアップ抑制剤が多量に析出してしまい、筆跡カスレや筆記不良が発生するものや、インキ中でドライアップ抑制剤が溶解安定せず、経時安定性などに問題があった。特に、低温時(0〜10℃)では、室温時(約20℃)よりも水に対する溶解度が低くなり、不利な条件のため、インキ中でドライアップ抑制剤が多量に析出してしまい、より筆跡カスレや筆記不良が発生する問題を抱えていた。また、最近では、紙面だけでなく、非浸透面においても筆記可能な筆記具が求められており、それを満足するには、さらなる添加剤などが求められる。
【0008】
本発明の目的は、ドライアップ性能が優れることで、筆跡が良好であり、さらに、非浸透面にも筆記可能である筆記具用水性インキ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、
「1.少なくとも、水、着色剤、ドライアップ抑制剤、界面活性剤を含有する筆記具用水性インキ組成物であって、前記ドライアップ抑制剤の20℃における水に対する溶解度が、3.0〜20.0質量%であり、前記筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が、20〜40mN/mであることを特徴とする。
2.前記ドライアップ抑制剤が、高級アルコール系のドライアップ抑制剤であることを特徴とする第1項に記載の筆記具用水性インキ組成物。
3.前記ドライアップ抑制剤の含有量が、20℃における水に対する含有量に対して、0.1〜20.0質量%であることを特徴とする第1項または第2項に記載の筆記具用水性インキ組成物。
4.前記界面活性剤が、シリコン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする第1項ないし第3項に記載の筆記具用水性インキ組成物。
5.前記界面活性剤が、ポリエーテル変性のシリコーンオイルであり、含有量が0.01〜5.00質量%であることを特徴とする第1項ないし第4項に記載の筆記具用水性インキ組成物」
とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、少なくとも、水、着色剤、ドライアップ抑制剤、界面活性剤を含有する筆記具用水性インキ組成物であって、前記ドライアップ抑制剤の20
℃における水に対する溶解度が、3.0〜20.0質量%であり、前記筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が、20〜40mN/mであることを特徴とすることで、ドライアップ性能が優れ、さらに、非浸透面にも筆記可能である筆記具用水性インキ組成物を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の特徴は、20℃における水に対する溶解度が、3.0〜20.0質量%であるドライアップ抑制剤と、界面活性剤を併用し、さらに、筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が、20〜40mN/mであることを特徴とする。
【0012】
ドライアップ抑制剤について、本願発明者が鋭意検討した結果、前記溶解度が、3.0〜20.0質量%であるドライアップ抑制剤を用いると、キャップを外した状態では、インキ中の水分が蒸発することで、ペン先において溶媒の蒸発を抑制する膜を形成し、それ以上の水分蒸発を抑制することが可能となり、ドライアップ性能を向上する効果がある。
【0013】
前記溶解度が、3.0質量%未満のドライアップ抑制剤を用いると、ドライアップ抑制効果を得られるのに十分な量を含有できず、また、前記溶解度が、20.0質量%を越えるドライアップ抑制剤を用いると、前記結晶物が析出しづらく、ペン先で十分に膜を形成できず、ドライアップ抑制効果が得られない。そのため、前記溶解度が、3.0〜20.0質量%であるドライアップ抑制剤を用いる必要がある。また、低温時(0〜10℃)では、水に対する溶解度が低くなることを考慮すれば、前記溶解度が、5.0〜20.0質量%のドライアップ抑制剤が好ましく、最も好ましくは、前記溶解度が、10.0〜15.0質量%のドライアップ抑制剤である。
【0014】
さらに、近年では、紙面だけでなく、非浸透面においても良好な筆跡で筆記可能するためには、前記溶解度が、3.0〜20.0質量%であるドライアップ抑制剤を単独で用いただけでは、非浸透面への十分な濡れ性が得られず、非浸透面へ良好に筆記するのは難しい。そこで、界面活性剤を用いて、筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力を、20〜40mN/mにする必要がある。前記表面張力は、20mN/mより低いと、筆跡に滲み、紙への裏抜けが発生し、40mN/mを超えると、非浸透面への濡れ性が劣り、筆跡カスレや、筆記面においてはインキが、はじかれてしまうため、表面張力は、20〜40mN/mにする必要があり、好ましくは、25〜35mN/mである。
【0015】
前記溶解度が、3.0〜20.0質量%であるドライアップ抑制剤については、低級アルコール系(炭素数1〜4)、高級アルコール系(炭素数5以上)、芳香族アルコール系、脂環式アルコール系、有機酸系、ヒダントイン系などの種類がある。
【0016】
それらの中でも、高級アルコール系のドライアップ抑制剤を用いると、析出速度が速まり、すぐに膜を形成するため、ペン先での溶媒の蒸発を抑制し、より優れたドライアップ性能を得やすくなる。そのため、高級アルコール系のドライアップ抑制剤を用いる方が、好ましい。
【0017】
また、前記溶解度が、3.0〜20.0質量%であるドライアップ抑制剤の含有量は、水の含有量に対して、20.0質量%を越えると、経時不安定性になりやすく、0.1質量%未満だと、所望のドライアップ性能が得られにくいため、水の含有量に対し0.1〜20.0質量%にすることが好ましい。より好ましくは、0.1〜10.0質量%である。最も好ましくは3.0〜8.0質量%である。
【0018】
また、前記溶解度が、3.0〜20.0質量%であるドライアップ抑制剤としては、ペンタエリスリトール(20℃での水に対する溶解度:7.2質量%)、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール(同溶解度:12.3質量%)、コハク酸(同溶解度:7.1質量%)、ヒダントイン(同溶解度:3.8質量%)、5,5−ジメチルヒダントイン(同溶解度:11.5質量%)、ヒドロキノン(同溶解度:7.4質量%)などが挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトール(和光純薬工業(株))、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール(和光純薬工業(株))、ヒダントイン(和光純薬工業(株))、5,5−ジメチルヒダントイン(和光純薬工業(株))などが挙げられる。
【0019】
また、筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力を、20〜40mN/mにするために用いる界面活性剤としては、シリコン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩が挙げられる。その中でも、生産工程時に気泡抑制をする効果があり、生産性を向上することが可能となるため、消泡性が良好な、シリコン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
【0020】
また、前記界面活性剤の中でも、より経時安定性を考慮すれば、シリコン系界面活性剤の非反応性シリコーンオイルが好ましく、ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、親水性特殊変性、フッ素変性、ジメチル、メチルフェニルなどのシリコーンオイル等が挙げられる。その中でも、水との溶解性、消泡性を考慮すれば、ポリエーテル変性のシリコーンオイルが最も好ましい。
【0021】
界面活性剤の含有量は、インキ組成物全量に対し、0.01質量%より少ないと、表面張力を十分に下げる効果が得られず、5.00質量%を越えると、筆跡乾燥性が劣りやすく、さらに、インキ経時も不安定となりやすいため、インキ組成物全量に対し、0.01〜5.00質量%が好ましい。より好ましくは、インキ組成物全量に対し、0.01〜2.00質量%である。最も好ましくは0.10〜1.50質量%である。
【0022】
具体例としては、シリコン系界面活性剤は、ポリエーテル変性のもので、KF351、KF-352、KF -353、KF-354、KF-355、KF-615、KF-618、KF−642、KF643、KF945、KF−6004(信越化学工業(株))、SILWETL−720、FZ−2104、FZ−2191、同L−7001、同L−7002、同Y−7006、L−7600、L−7607(日本ユニカー(株))、TSF4445(東芝シリコーン(株))が挙げられる。アセチレングリコール系界面活性剤の具体例としては、ダイノール604、サーフィノール104H、同104A、同104BC、同104DPM、同104PA、同104S、同420、同440、同SE、同SE−F、同61等(エアープロダクツ ジャパン(株)社製)が挙げられる。ジアルキルスルホコハク酸塩の具体例としては、ネオコールSW−C、ネオコールYSW−CE、ネオコールYSK(第一工業製薬(株))、ペレックスOT−P、ペレックスTR、ペレックスCS、ペレックスTA(花王(株))、エアロールOB−70(東邦化学工業(株))、エアロゾ−ルMA−80、エアロゾ−ルAY−100(三井サイアナミド(株))、アデカコールEC((株)アデカ)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤の具体例としては、メガファックF−447、F−410、F−553、F−444(DIC(株))、DSN−403N(ダイキン工業(株))、ノベックFC−4430、FC−4432(住友スリーエム(株))等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0023】
着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料については、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、及び各種造塩タイプ染料等が採用可能である。顔料については、無機、有機、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ギオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料、補色顔料等が挙げられる。その他、着色樹脂粒子体として顔料を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包又は固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。更に、顔料を透明、半透明の樹脂等で覆った着色樹脂粒子などや、また着色樹脂粒子や無色樹脂粒子を、顔料もしくは染料で着色したもの等も用いることもできる。これらの染料および顔料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。含有量は、インキ組成物全量に対し、1質量%〜20質量%が好ましい。また、本発明の筆記具用インキに関しては、顔料系インキは、染料系インキと違い再分散しづらく、ドライアップ性能が劣りやすいため、よりドライアップ性能の向上がより望まれる。
【0024】
また、本発明には、定着剤として樹脂を用いてもよい。具体的には、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂等や、アクリル系樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエン系樹脂エマルジョンなどのエマルジョン樹脂が挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用してもよい。また、樹脂の含有量は、インキ組成物全量に対して、0.1質量%未満だと、所望のインキ粘度が得られにくく、30質量%を越えると書き出し性能が劣ってしまう可能性があるため、0.1質量%以上、30質量%以下が好ましい。
【0025】
その他必要に応じて、低級・高級アルコールなどの溶剤、トリエタノールアミン等のpH調整剤、ソルビット等の保湿剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤等を添加してもよい。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0026】
次に実施例を示して本発明を説明する。
実施例1
着色剤(顔料分散体) 30.0質量%
水 60.0質量%
ペンタエリスリトール 3.0質量%
シリコン系界面活性剤(ポリエーテル変性のシリコーンオイル) 1.0質量%
水溶性樹脂(アクリル系樹脂) 5.0質量%
1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン 1.0質量%
【0027】
まず、実施例1の筆記具用水性インキ組成物は、予め顔料を均一に分散させた顔料分散体(LUMIKOL NKW−6007E(固形分:34%、日本蛍光化学(株)))、水、水溶性樹脂(ジョンクリル61J(固形分:30%、ジョンソンポリマー(株))、ペンタエリスリトール(和光純薬工業(株))、シリコン系界面活性剤(KF-618:信越化学工業(株))、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オンを所定量正確に秤量し、ディスパー撹拌機にて50℃の攪拌温度で1時間加温撹拌し、筆記具用水性インキ組成物を得た。尚、ブルックフィールド社製DV−II粘度計(CPE−42ローター)を用いて20℃、剪断速度384.0sec−1(回転数100rpm)にてインキ粘度を測定したところ、2.82mPa・sであった。また、表面張力については、20℃の環境下において、共和界面科学株式会社製の表面張力計測器を用い、ガラスプレートを用いて、垂直平板法によって測定したところ、26.4mN /mであった。
【0028】
実施例および比較例のインキ粘度は、ブルックフィールド社製DV−II粘度計(CPE−42ローター)を用いて20℃で、インキ粘度を測定したが、本発明の筆記具用水性インキ組成物は、ニュートニアンインキであるため、剪断速度が相違してもインキ粘度は、略同じ数値を示した。
【0029】
実施例2〜6
表1に示すように各成分を配合に変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜6の筆記具用水性インキ組成物を得た。表1に測定、評価結果を示す。
【表1】

【0030】
比較例1〜6
インキの配合を表2に示す通りとし、表2に測定、評価結果を示す。
【表2】

【0031】
実施例1〜6及び比較例1〜6で作製した筆記具用水性インキ組成物を、市販のマーキングペン(パイロットコーポレーション製;スーパープチ(SEG−10M))に充填することでマーキングペンを作製した。
【0032】
前記マーキングペンのペン先として用いられるペン芯については、繊維芯、フェルト芯、フェルト芯などが挙げられる。また、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではない。
【0033】
試験および評価
前述のように作製した マーキングペンを用いて、以下の試験および評価を行った。尚、ドライアップ性能試験、滲み試験の評価は、筆記試験用紙としてJIS P3201 筆記用紙Aを用い、非浸透面での筆記試験には、市販の透明アクリル板を用いて以下のような試験方法で評価を行った。
【0034】
ドライアップ性能試験:キャップをはずして大気中に24時間放置した後、手書き筆記した際の筆跡の状態を評価した。
筆跡にカスレがなく、筆跡が良好のもの ・・・◎
筆跡に若干カスレが出るが、実用上問題ないもの ・・・○
筆跡にカスレがひどく、実用性に乏しいもの ・・・×
【0035】
非浸透面での筆記試験:透明アクリル板面上に筆記し、観察した。
筆記可能で、実用上問題ないもの ・・・○
筆跡にカスレ、又はインキはじきが、ひどく、実用性に乏しいもの ・・・×
【0036】
滲み試験:手書き筆記した際の筆跡の状態を、評価した。
滲みがない、または、滲みが若干出るが、実用上問題ないもの ・・・○
滲みがひどく、実用性に乏しいもの ・・・×
【0037】
表1の結果より、実施例1〜6では、ドライアップ性能試験、非浸透面での筆記試験、滲み試験ともに良好もしくは、実用上問題のないレベルの性能が得られた。
【0038】
表2の結果より、比較例1、3、4では、20℃における水に対する溶解度が、3.0〜20.0質量%であるドライアップ抑制剤を用いなかったため、ドライアップ性能が悪かった。
【0039】
比較例2では、界面活性剤を用いず、濡れ性が足りないため、筆跡のインキはじきがひどかった。
【0040】
比較例5では、20℃における表面張力が、40mN/mを越えていたため、濡れ性が足りず、筆跡のインキはじきがひどかった。比較例6では、20℃における表面張力が、20mN/m未満であったため、滲みがひどかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は筆記具用水性インキ組成物に関し、さらに詳細としては、少なくとも、水、着色剤、ドライアップ抑制剤 、界面活性剤を含有する筆記具用水性インキ組成物であって、前記ドライアップ抑制剤の20℃における水に対する溶解度が、3.0〜20.0質量%であり、前記筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が、20〜40mN/mであることを特徴とすることで、ドライアップ性能に優れ、非浸透面に筆記可能である筆記具用水性インキ組成物を提供することができる。また、実施例のマーキングペンに限らず、ボールペン、万年筆、サインペン、プレートペン等に好適に使用でき、さらに、キャップ式、ノック式等、筆記具として広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、水、着色剤、ドライアップ抑制剤、界面活性剤を含有する筆記具用水性インキ組成物であって、前記ドライアップ抑制剤の20℃における水に対する溶解度が、3.0〜20.0質量%であり、前記筆記具用水性インキ組成物の20℃における表面張力が、20〜40mN/mであることを特徴とする。
【請求項2】
前記ドライアップ抑制剤が、高級アルコール系のドライアップ抑制剤であることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項3】
前記ドライアップ抑制剤の含有量が、20℃における水に対する含有量に対して、0.1〜20.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、シリコン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸塩から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3に記載の筆記具用水性インキ組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤が、ポリエーテル変性のシリコーンオイルであり、含有量が0.01〜5.00質量%であることを特徴とする請求項1ないし4に記載の筆記具用水性インキ組成物。

【公開番号】特開2012−12468(P2012−12468A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149403(P2010−149403)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)
【Fターム(参考)】