説明

筆記具

【課題】継手等の部品を必要とせずに、筆記部を直接保持するコレクターで水蒸気バリア性を確保し、コレクターとキャップでシールすることによりシール部径を小さくすることが可能となり、キャップ時のインクタンク内圧力増加をポンピング現象の発生しない範囲にすることが可能な筆記具を提供する。
【解決手段】長さ方向にインク誘導部14が挿入され、かつ、インクタンク10と先端側の筆記部12の間に設けられたコレクター20であって、インクタンク10内の圧力調整時に気液交換部22を経由して毛細管力を利用した保溜部24でインクを保蔵する調節体であるコレクター20を一体形成して有し、前記筆記部12がそのコレクター20の先端部に保持されている筆記具において、コレクター20先端部にキャップ18とのシール部26を設け、シール部26内側にインクタンク10に通じる空気置換孔28を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクタンク内にコレクターを有する筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の筆記具に設けられたコレクターは、機能上濡れ性が必要なこと、寸法安定性が必要なことから、ABS樹脂製が多く、さらに十分な機能を得るために成形後の製品状態でエッチング処理による凹凸面の形成や、プラズマ処理による濡れ性を高める加工が行なわれている。
【0003】
ABSは、水蒸気バリア性が低く、シール部材に使用すると、長期保存時のインク揮発が多くなりやすい樹脂材である。その対策として、水蒸気バリア性に優れた樹脂材のPP(ポリプロピレン)等で成形されたインクタンク内の先端部にコレクター(インク保溜体)を配置する。そして、その先端部には、ペン先を保持した水蒸気バリア性に優れた材料で成形された継手をインクタンクとシールできる構造で配置し、キャップとのシールをこの継手で行なうことによって、ABS製コレクターからのインク揮発防止の対策を採っている(特許文献1:特開2004−42292号公報の構造参照)。
【0004】
筆記部(チップ)直接保持する構造のコレクターでは、先端部に継手が設けられていないため、インク揮発防止はキャップとインクタンクのシールで行なう必要がある(特許文献2:特開平2−599942号公報、特許文献3:実開平2−58979号公報等の構造参照)。この場合、インクタンク外径部がシール部となるため、シール時の体積変化が大きく、インクタンク内部の圧力が増加してしまう。この圧力増加によりキャップOFF時にインクがコレクター内に押し出され、この動作を繰り返すことによって、最終的にはコレクター先端部の空気置換孔やペン先よりインクが噴出する、いわゆるポンピング現象が発生してしまう。
【0005】
この対策のためキャップを二重構造にし、内キャップを可動式にすることで、シール後の体積変化を無くし、内圧変化をさせない構造が知られている(特許文献4:特開2002−205490号公報参照)。しかしながら、この構造では部品点数や組み立て費の増加によるコストアップを避けることができず、低コスト生産可能で、低価格で提供できる筆記具が求められる現在では、採用することが困難である。また、この方法では、稼働する内キャップをスプリング等により継手に押し付けてシールするため、通常の嵌合させるシール方法により揮発抑制効果が低いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−42292号公報
【特許文献2】実開平2−599942号公報
【特許文献3】実開平2−58979号公報
【特許文献4】特開2002−205490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、継手等の部品を必要とせずに、筆記部を直接保持するコレクターで水蒸気バリア性を確保し、コレクターとキャップでシールすることによりシール部径を小さくすることが可能となり、キャップ時のインクタンク内圧力増加をポンピング現象の発生しない範囲にすることが可能な筆記具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内部に低粘度のインクを液状態で保蔵するインクタンクと、インクタンクから筆記部までの間でインクを送出可能とするインク誘導部と、不使用時に筆記部を覆うように本体に嵌着するキャップとを有し、
長さ方向にインク誘導部が挿入され、かつ、インクタンクと先端筆記部の間に設けられたコレクターであって、インクタンク内の圧力調整時に気液交換部を経由して毛細管力を利用した保溜部でインクを保蔵する調節体であるコレクターを一体形成して有し、前記筆記部がそのコレクターの先端部に保持されている筆記具において、
コレクター先端部にキャップとのシール部を設け、シール部内側にインクタンクに通じる空気置換孔を設けたことを特徴とする筆記具である。
【0009】
本発明においては、コレクターの先端部は、内側筒状部と外側筒状部の間に間隙を置いて構成された略二重管状を呈し、前記間隙が空気置換孔であり、内側筒状部はその先端内に筆記部を挿入して保持し、当該筆記部にインク誘導部からインクを供給するようにし、
外側筒状部の先端外面にシール部を形成したことが好適である。
【0010】
本発明においては、前記コレクターの先端部に形成された空気置換孔は、先端が筆記部先方に向けて開口し後端が保溜部側に開口している軸方向に沿った通路に形成されていることが好適である。
【0011】
本発明においては、前記コレクターは、その先端部から中央部さらに後端部に渡って内部中空が連続するように、概略管状構造を呈した一体構造であって、その連続した内部中空内に前記インク誘導部が挿入され、
そのインク誘導部の挿入された状態のコレクターが筆記具の外周を構成する軸筒内の前部に嵌着されると共に、該軸筒のコレクターの嵌着部分よりも後方部がその内部にインクを収容するインクタンクを形成し、
前記インク誘導部の先端が筆記部後部に近接しかつ前記インク誘導部後端がインクタンク内に位置して、該インクタンク内のインクがインク誘導部を介して筆記部に供給されるようにし、
コレクター外周にスリットの有る保溜部が形成され、コレクターの後端部に気液交換部がインクタンク内に面して形成され、インクタンク内の圧力調整時に気液交換部からスリットを経由して毛細管力を利用してインクを保蔵可能にしたことが好適である。
【0012】
本発明においては、コレクターの材質を水蒸気バリア性に優れた樹脂としたことが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の筆記具によれば、長さ方向にインク誘導部が挿入され、かつ、インクタンクと先端筆記部の間に設けられたコレクターであって、インクタンク内の圧力調整時に気液交換部を経由して毛細管力を利用した保溜部でインクを保蔵する調節体であるコレクターを一体形成して有し、前記筆記部がそのコレクターの先端部に保持されている筆記具において、コレクター先端部にキャップとのシール部を設け、シール部内側にインクタンクに通じる空気置換孔を設けたので、シール部を軸筒等の他の部品外周に設けた場合に比較してシール部の径を小さくすることができ、シール部の緊密さを確保することができる。
さらに、シール部外径が小さいことでキャップ時のインクタンク内の圧力変化も微小となり、ポンピング現象が発生し難くなることで、キャップを二重構造にし、内キャップを可動とさせて、インクタンク内圧力変化を抑える方法を採用することがないので、部品数削減による低コスト化を可能とする。また、コレクター先端部のシール部とキャップとの嵌合によるシール方法となるため、インク揮発抑制効果が大きくなる。
【0014】
本発明においては、コレクターの先端部は、内側筒状部と外側筒状部の間に間隙を置いて構成された略二重管状を呈し、前記間隙が空気置換孔であり、内側筒状部はその先端内に筆記部を挿入して保持し、当該筆記部にインク誘導部からインクを供給するようにし、外側筒状部の先端外面にシール部を形成することによって、内側筒状部内のインク誘導部を確実に気密して乾燥防止をし、かつキャップを閉めた際にキャップ内の空気が流れ込まず、インクタンク内の圧力の上昇によるポンピング作用を確実に防止することができる。
【0015】
本発明において、前記コレクターの先端部に形成された空気置換孔を、先端が筆記部先方に向けて開口し後端が保溜部側に開口している軸方向に沿った通路に形成することによって、一体成形するコレクターにおいて射出成形時に空気置換孔の金型を容易に抜くことができ、成形が容易である。
【0016】
本発明においては、前記コレクターが、その先端部から中央部さらに後端部に渡って内部中空が連続するように、概略管状構造を呈した一体構造であって、その連続した内部中空内に前記インク誘導部が挿入され、前記インク誘導部の先端が筆記部後部に近接しかつ前記インク誘導部後端がインクタンク内に位置して、該インクタンク内のインクがインク誘導部を介して筆記部に供給されるように構成することによって、内部中空を直線的に構成することができ、構造を簡単にして成形を容易化でき、またインク誘導部が確実にインクタンク内のインクを筆記部に供給することができる。
【0017】
また、本発明においては、コレクターの材質を水蒸気バリア性に優れた樹脂(ポリプロピレン(:PP)、ポリブチレンテレフタレート(:PBT))として、揮発防止性を高め、コレクターとキャップを直接シールしてもインクの揮発を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る筆記具のキャップ装着時の全体説明図であって、(a)は一側から見た側面図、(b)は他側から見た側面図、(c)は縦断面図である。
【図2】前記筆記具に設けるキャップの説明図であって、(a)は一側から見た側面図、(b)は他側から見た側面図、(c)は縦断面図、(d)は外観斜視図である。
【図3】前記筆記具に設けるコレクターに筆記部およびインク誘導部を装着した状態の部分組み立て図であって、(a)が側面図、(b)が縦断面図である。
【図4】前記コレクター単体の説明図であって、(a)は側面図、(b)は縦断断面図、(c)は後端視図、(d)は外観斜視図である。
【図5】前記コレクター単体の説明図であって、(a)は後方視図、(b)は後方斜視図、(c)は側面図、(d)は前方斜視図、(e)は前方視図である。
【図6】前記筆記具に設ける軸筒の説明図であって、(a)が側面図、(b)が縦断面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る筆記具のキャップ装着時の全体説明図であって、(a)は一側から見た側面図、(b)は他側から見た側面図、(c)は縦断面図である。
【図8】前記筆記具に設けるキャップの説明図であって、(a)は一側から見た側面図、(b)は他側から見た側面図、(c)は縦断面図、(d)は外観斜視図である。
【図9】前記筆記具に設けるコレクターに筆記部およびインク誘導部を装着した状態の部分組み立て図であって、(a)は一側から見た側面図、(b)が他側から見た側面図、(c)が縦断面図である。
【図10】前記コレクター単体の説明図であって、(a)は前方斜視図、(b)は前方視図、(c)は外観斜視図、(d)は一側から見た側面図、(e)は他側から見た側面図、(f)は縦断面図、(g)は外観斜視図、(h)は後端視図、(i)は後方斜視図である。
【図11】前記筆記具に設ける軸筒の説明図であって、(a)が側面図、(b)が縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜図6は本発明の第1の実施形態に係る筆記具の説明図である。
【0021】
図1はキャップ装着状態の筆記具の全体図、図2は前記筆記具に設けるキャップの説明図、図3は前記筆記具に設けるコレクターに筆記部およびインク誘導部を装着した状態の部分組み立て図、図4、図5は前記コレクター単体の説明図、図6は前記筆記具に設ける軸筒の説明図である。
【0022】
図1に示すように、筆記具は、内部に低粘度のインクを液状態で保蔵するインクタンク10と、インクタンク10から筆記具本体の先端に設ける筆記部12までの間でインクを送出可能とするインク誘導部14と、不使用時に筆記部12を覆うように筆記具本体の軸筒16に嵌着するキャップ18とを有している。
【0023】
前記筆記具には、長さ方向にインク誘導部14が挿入され、かつ、インクタンク10と筆記具先端側の筆記部12の間に設けられたコレクター20であって、インクタンク10内の圧力調整時に気液交換部22を経由して毛細管力を利用した保溜部24でインクを保蔵する調節体であるコレクター20を一体形成して有したものであり、前記筆記部12がそのコレクター20の先端部に保持されている。
【0024】
そして、筆記具には、前記コレクター20先端部の外周にキャップ18とのシール部26を設け、シール部26内側にインクタンク10に通じる空気置換孔28を設けたものである。
【0025】
詳しくは、図3〜図5に示すように、コレクター20の先端部は、内側筒状部30aと外側筒状部30bの間に間隙を置いて構成された略二重管状を呈している。内側筒状部30aおよび外側筒状部30bはそれぞれほぼ管状を呈し、それらの間に複数のリブ34…を形成し(実施形態では周方向に90度間隔)、かつ内側筒状部30aおよび外側筒状部30bの後端部同士をフランジ状部36で繋いで、内側筒状部30aおよび外側筒状部30bの間隔に変化が生じないように構成している。前記間隙がリブ34,34間からフランジ状部36に空気置換孔28が貫通している。本実施形態ではリブ34…は四箇所形成されて、空気置換孔28が一箇所と前端開口部29が三箇所形成されている。なお空気置換孔28は、本実施形態では一箇所であるが、複数形成されていてもよい。
【0026】
また、前記内側筒状部30aはその先端内に筆記部12を挿入して保持し、当該筆記部12にインク誘導部14を経由してインクを供給するようにし、外側筒状部30bの先端外面に前記シール部26を形成したものである。前記シール部26は、筒状を呈し外面が平坦円筒形状である。
【0027】
図2に示すように、キャップ18には外筒部18aとその内部の内筒部18bが軸平行に後方向きに開口形成されている。内筒部18bは、外筒部18aよりも短く、後端にキャップ18側シール部40が形成されている。このキャップ18側シール部40は内周面に凸部が環状に連続形成されると共に、キャップ18側シール部40が前記シール部26に摺接して筆記部12の気密を保つようにしている。また、キャップ18の外筒部18aの後端部内側に突起42が複数形成されて、軸筒16外周の凹凸16aに係止して嵌着固定するようになっている。
【0028】
コレクター20は、その空気置換孔28形成箇所の外側筒状部30bの半ばまで埋没させて軸筒16内に装着・嵌着されて固定される。この場合、外側筒状部30b外面の環状凹部(凹凸)30b1が、軸筒16内の環状凸部(凹凸)16bに嵌合し、内径部16cと外側筒状部30b外面より外径の大きいアンダーカット30b2が圧入されているので、気密を保ちつつ、インク等の液や水蒸気等の気体の漏れを防いでいる。
【0029】
また、キャップ18が筆記部12を覆って嵌着状態で、内筒部18bのキャップ18側シール部40がコレクター20のシール部26に嵌着し、かつ、キャップ18の後端内周面部の突起42が軸筒16の外周の凹凸16aに嵌着してキャップ18の軸筒16からの抜け止めをする構成になっており、気密と固定用嵌着部を別に形成していることから、それぞれの設計の自由度が高い。
【0030】
なお、図1、図2において、符号18cは筆記具を衣服のポケットに挟み付ける等して固定するためのクリップである。
【0031】
図3〜図5に示すように、上記のコレクター20の先端部に形成された空気置換孔28は、先端が筆記部12先方に向けて開口し後端が保溜部24側に開口している軸方向に沿った通路に形成されている。
【0032】
また、前記コレクター20は、その先端部から中央部さらに後端部に渡って内部中空32が連続するように、概略管状構造を呈した一体構造であって、その連続した内部中空32内に前記インク誘導部14が挿入される。
【0033】
インク誘導部14は多孔質体成形品、誘導芯等種々の材質のものを用いることができる。
【0034】
そのインク誘導部14の挿入された状態のコレクター20が筆記具の外周を構成する軸筒16内の前部に嵌着されると共に、該軸筒16のコレクター20の嵌着部分よりも後方部がその内部にインクを収容するインクタンク10を形成している。
【0035】
前記インク誘導部14の先端が筆記部12後部に近接しかつ前記インク誘導部14後端がインクタンク10内に位置して、該インクタンク10内のインクがインク誘導部14を介して筆記部12に供給されるようにしている。
【0036】
筆記部12はチップが内側筒状部30aに嵌着してチップ先端にボールを有し、そのボールにインク誘導部14が近接してインクが供給されるようにしている水性ボールペンの構成となっている。この場合、インク誘導部14が筆記部12のボールに接触してボールの回転を阻害しない(筆記のスムーズさを奪わない)ように、該インク誘導部14はボールにインクを供給できる程度に近接状態(近づきかつ非接触状態)になっている。なお、筆記部12は、インク誘導部14と一体で成形芯前端部が突出した構造のフェルトペン、マーキングペン等とすることもできる。
【0037】
また、前記コレクター20は、外側筒状部30bの後端に設けられたフランジ状部36に空気置換孔28が開口している。そのフランジ状部36より後方のコレクター20外周面部にスリット44のある保溜部24が形成される。保溜部24は蛇腹状に多数の板部が径方向に典設されて、後方に行くほど間隔が狭くなり毛細管力が高くなる保溜部24が形成されている。各間隙は縦方向のスリット44によって繋がれている。
【0038】
前記コレクター20の後端部に気液交換部22がインクタンク10内に面して形成され、保溜部24にインクタンク10内の圧力調整時に気液交換部22からスリット44を経由して毛細管力を利用してインクを保蔵可能にしたものである。気液交換部22は、コレクター20の後端部に凹部に形成されてスリット44が連続している。
【0039】
コレクターの材質は水蒸気バリア性に優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン(:PP)、ポリブチレンテレフタレート(:PBT))とすることが好適である。
【0040】
実施形態の筆記具によれば、長さ方向にインク誘導部14が挿入され、かつ、インクタンク10と先端側の筆記部12の間に設けられたコレクター20であって、インクタンク10内の圧力調整時に気液交換部22を経由して毛細管力を利用した保溜部24でインクを保蔵する調節体であるコレクター20を一体形成して有し、前記筆記部12がそのコレクター20の先端部に保持されている筆記具において、コレクター20先端部にキャップ18とのシール部26を設け、シール部26内側にインクタンク10に通じる空気置換孔28を設けたので、シール部26をインクタンク10外周に設けた場合に比較してシール部26の径を小さくすることができ、シール部26の緊密さを確保することができる。
【0041】
さらに、シール部26の外径が小さいことでキャップ18嵌合時のインクタンク10内の圧力変化も微小となり、ポンピング現象が発生し難くなる。また、キャップ18を二重構造による内キャップ18を可動させて、インクタンク10内の圧力変化を抑える方法を採用することがないので、部品数を削減することができ、低コスト化を可能とすることができる。
【0042】
また、コレクター先端部のシール部26とキャップ側シール部40との嵌合によるシール方法となるため、インク揮発抑制効果が大きくなる。
【0043】
前記筆記具において、コレクター20の先端部は、内側筒状部と外側筒状部の間に間隙を置いて構成された略二重管状を呈し、前記間隙が空気置換孔28であり、内側筒状部はその先端内に筆記部12を挿入して保持し、当該筆記部12にインク誘導部14からインクを供給するようにし、外側筒状部の先端外面にシール部26を形成することによって、内側筒状部内のインク誘導部14を確実に気密して乾燥防止をすると共にキャップ18を閉めた際にキャップ18内の空気が流れ込まず、インクタンク10内の圧力の上昇によるポンピング作用を確実に防止することができる。
【0044】
前記筆記具において、前記コレクター20の先端部に形成された空気置換孔28を、先端が筆記部12先方に向けて開口し後端が保溜部24側に開口している軸方向に沿った通路に形成することによって、一体成形するコレクター20において射出成形時に空気置換孔28の金型を容易に抜くことができ、成形が容易である。
【0045】
前記筆記具においては、前記コレクター20が、その先端部から中央部さらに後端部に渡って内部中空32が連続するように、概略管状構造を呈した一体構造であって、その連続した内部中空32内に前記インク誘導部14が挿入され、前記インク誘導部14の先端が筆記部12後部に近接しかつ前記インク誘導部14後端がインクタンク10内に位置して、該インクタンク10内のインクがインク誘導部14を介して筆記部12に供給されるように構成することによって、内部中空32を直線的に構成することができ、構造を簡単にして成形を容易化でき、またインク誘導部14が確実にインクタンク10内のインクを筆記部12に供給することができる。
【0046】
また、コレクター20の材質を水蒸気バリア性に優れた樹脂(PP、PBT)として、揮発防止性を高め、コレクター20とキャップ18を直接シールしてもインクの揮発を防止することが可能となる。
【0047】
図7〜図12は本発明の第2の実施形態に係る筆記具の説明図である。
図7はキャップ装着状態の筆記具の全体図、図8は前記筆記具に設けるキャップの説明図、図9は前記筆記具に設けるコレクターに筆記部およびインク誘導部を装着した状態の部分組み立て図、図10は前記コレクター単体の説明図、図11は前記筆記具に設ける軸筒の説明図である。
第1の実施形態と異なる点は、軸筒16に内リブ11を形成した点、キャップ18の前方に空間部50を形成し内筒部18b内の容積を少なくした点、コレクター20のシール部26を先細く形成したテーパ状に形成し、キャップ18とのシール方式が異なる点である。
内リブ11は軸筒16後部内をインク収容部のインクタンク10内壁面に軸方向に沿って複数のリブを形成したものである。キャップ18の空間部50は、内筒部18bの先端を蓋状に構成する部分をキャップ18先端部より後方に引っ込めて形成し、それによって、キャップ18先端部を筒状にした個所の内側空間である。前記空間部50の形成によって、また、内筒部18bによって筆記部12の先端部を覆う空間を最小限にできるので、筆記部12からのインク乾燥を最小限にできる。
また、前記コレクター20のシール部26は先細のテーパ状に形成してシール部26を内筒部18bのシール部40と気密し、一方、キャップ18の固定はその内側の突起42を軸筒10の外周凹凸部16aに嵌着して行なうので、気密と固定用嵌着部を別に形成してそれぞれの設計の自由度が高い。
上記以外の構成及び効果については第1の実施形態と同様であるので省略する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の筆記具は、ボールペン、マーカペン等の筆記具に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 インクタンク
11 内リブ
12 筆記部
14 インク誘導部
16 軸筒
16a 凹凸部
16b 環状凸部
16c 内径部
18 キャップ
18a 外筒部
18b 内筒部
20 コレクター
22 気液交換部
24 保溜部
26 シール部
28 空気置換孔
29 前端開口部
30a 内側筒状部
30b 外側筒状部
30b1 環状凹部
30b2 アンダーカット
32 内部中空
34 リブ
36 フランジ状部
40 キャップ側シール部
42 キャップの内側の突起
44 スリット
50 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に低粘度のインクを液状態で保蔵するインクタンクと、インクタンクから筆記部までの間でインクを送出可能とするインク誘導部と、不使用時に筆記部を覆うように軸筒に嵌着するキャップとを有し、
長さ方向にインク誘導部が挿入され、かつ、インクタンクと筆記部の間に設けられ、インクタンク内の圧力調整時に気液交換部を経由して毛細管力を利用した保溜部でインクを保蔵する調節体であるコレクターであって、前記筆記部が前記コレクターの先端部に保持されている筆記具において、
コレクター先端部にキャップとのシール部を設け、シール部内側にインクタンクに通じる空気置換孔を設けたことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
コレクターの先端部は、内側筒状部と外側筒状部の間に間隙を置いて構成された略二重管状を呈し、前記間隙が空気置換孔であり、内側筒状部はその先端内に筆記部を挿入して保持し、当該筆記部にインク誘導部からインクを供給するようにし、
外側筒状部の先端外面にシール部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記コレクターの先端部に形成された空気置換孔は、先端が筆記部先方に向けて開口し後端が保溜部側に開口している軸方向に沿った通路に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記コレクターは、その先端部から中央部さらに後端部に渡って内部中空が連続するように、概略管状構造を呈した一体構造であって、その連続した内部中空内に前記インク誘導部が挿入され、
そのインク誘導部の挿入された状態のコレクターが筆記具の外周を構成する軸筒内の前部に嵌着されると共に、該軸筒のコレクターの嵌着部分よりも後方部がその内部にインクを収容するインクタンクを形成し、
前記インク誘導部の先端が筆記部後部に近接しかつ前記インク誘導部後端がインクタンク内に位置して、該インクタンク内のインクがインク誘導部を介して筆記部に供給されるようにし、
コレクター外周にスリットの有る保溜部が形成され、コレクターの後端部に気液交換部がインクタンク内に面して形成され、インクタンク内の圧力調整時に気液交換部からスリットを経由して毛細管力を利用してインクを保蔵可能にしたことを特徴とする請求項1から3のうちの1項に記載の筆記具。
【請求項5】
コレクターの材質を水蒸気バリア性に優れた樹脂としたことを特徴とする請求項1から4のうちの1項に記載の筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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