説明

筋緊張計測装置、筋緊張計測方法および筋緊張計測プログラム

【課題】被計測者の姿勢および/または動作の如何に拘わらず、異常な筋緊張を検出することができる筋緊張計測装置、筋緊張計測方法および筋緊張計測プログラムを提供する。
【解決手段】筋緊張計測装置1は、姿勢・動作情報取得部2、筋電位計測部3、姿勢・動作情報判別部4、筋電位データベース(筋電位DB)5、筋電位推定部6および異常筋緊張検出部7を備える。筋電位計測部3は、被計測者の身体で発生した筋電位を計測する。姿勢・動作情報取得部2は、被計測者の姿勢・動作情報を取得する。姿勢・動作情報判別部4は、姿勢・動作情報により、被計測者がどのような姿勢・動作であるかを判別する。筋電位推定部6は、筋電位DB5を用い、姿勢・動作情報から発生すべき筋電位を推定する。異常筋緊張検出部7は、実測筋電位とその同時間における推定筋電位とを比較することによって、被計測者の筋緊張の異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病気または心理的な緊張等に起因する異常な筋緊張を検出する筋緊張計測装置、筋緊張計測方法および筋緊張計測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、身体に取り付けて、生体情報(血圧または心拍数等)を測定し、分析を行い、生体情報が異常であるか否かを検出する計測装置が多数開発されている。これらの計測装置の中には、さらに多様な機能を備えた装置もある。例えば、特許文献1には、生体の動脈内を伝播する脈波の伝播速度情報に基づいて、生体の血圧値を監視する血圧監視装置において、高い血圧監視精度が得られる血圧監視装置が紹介されている。
【0003】
生体情報の異常を検出する計測装置のうち、筋緊張の異常を検出する計測装置についても開発されている。筋緊張の異常は、病気または心理的な要因等による緊張時において起こる場合が多い。筋緊張の計測に関連する装置については、例えば、特許文献2に記載されている。特許文献2には、計測した筋緊張度から高緊張時間帯を学習し、高緊張時間帯になる前、すなわち筋状態が悪化する前に、使用者に緊張緩和を促す報知を行う緊張緩和装置または緊張緩和システムについて記載されている。通常、このような筋緊張の異常を計測する技術としては、筋電位を測定する方法が用いられている。
【0004】
筋緊張の異常を検出する他の技術には、医師が患者の身体を他動的に動かし、抵抗感を感じるか否かで患者の筋緊張を評価する方法も存在する。例えば、これに関連する技術として、非特許文献1には、患者の体の動作と筋活動の対応を検査官が検査する筋力検査法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−043147号公報
【特許文献2】特開2008−022934号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Helen J. Hislop, Jacqueline Montgomery著、津山直一・中村耕三訳「新・徒手筋力検査法」共同医書出版社、2008年3月1日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
血圧、心拍数または筋緊張等の生体情報の計測において、該生体情報が正常か異常かは被計測者の姿勢または動作によって変化する場合がある。特許文献1に記載の血圧監視装置においても、生体情報(脈派情報)から予測した生体情報(血圧)が異常である場合に異常な生体情報であると検出するため、被計測者の姿勢等は考慮されていない。特許文献2に記載の緊張緩和装置中の筋緊張計測手段においても、被計測者の姿勢等は考慮されていない。
【0008】
特に、筋緊張の測定においては、被計測者の腕等に計測装置を装着した場合、腕の姿勢等によって異常とされる筋緊張の状態(異常とされる筋電位の値)は大きく変化する。そのため、筋緊張の計測・異常検出においては、専門知識をもつ医師または検査官等の第三者が、被計測者の姿勢等が計測に適しているか否かを確認する必要がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、被計測者の姿勢および/または動作の如何に拘わらず、異常な筋緊張を検出することができる筋緊張計測装置、筋緊張計測方法および筋緊張計測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の観点にかかる筋緊張計測装置は、
被計測者の身体で発生した筋電位を計測する筋電位計測手段と、
前記被計測者の姿勢および/または動作の情報である姿勢・動作情報を取得する姿勢・動作情報取得手段と、
前記姿勢・動作情報により、前記被計測者がどのような姿勢および/または動作であるかを判別する姿勢・動作情報判別手段と、
予め記憶された、被計測者が特定の姿勢および/または動作をとり、身体の特定の部位の筋電位を計測した場合における、発生すべき正常な筋電位に関する情報から、前記姿勢・動作情報判別手段により判別された前記被計測者の姿勢および/または動作において、発生すべき筋電位を推定する筋電位推定手段と、
前記筋電位計測手段によって計測された実測筋電位と、その同時間における前記筋電位推定手段によって推定された発生すべき推定筋電位とを比較することによって、前記被計測者の筋緊張の異常を検出する異常筋緊張検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の観点にかかる筋緊張計測方法は、
被計測者の身体で発生した筋電位を計測する筋電位計測ステップと、
前記被計測者の姿勢および/または動作の情報である姿勢・動作情報を取得する姿勢・動作情報取得ステップと、
前記姿勢・動作情報により、前記被計測者がどのような姿勢および/または動作であるかを判別する姿勢・動作情報判別ステップと、
予め記憶された、被計測者が特定の姿勢および/または動作をとり、身体の特定の部位の筋電位を計測した場合における、発生すべき正常な筋電位に関する情報から、前記姿勢・動作情報判別ステップにより判別された前記被計測者の姿勢および/または動作において、発生すべき筋電位を推定する筋電位推定ステップと、
前記筋電位計測ステップによって計測された実測筋電位と、その同時間における前記筋電位推定ステップによって推定された発生すべき推定筋電位とを比較することによって、前記被計測者の筋緊張の異常を検出する異常筋緊張検出ステップと、
を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の観点にかかる筋緊張計測プログラムは、コンピューターに、
被計測者の身体で発生した筋電位を計測する筋電位計測ステップと、
前記被計測者の姿勢および/または動作の情報である姿勢・動作情報を取得する姿勢・動作情報取得ステップと、
前記姿勢・動作情報により、前記被計測者がどのような姿勢および/または動作であるかを判別する姿勢・動作情報判別ステップと、
予め記憶された、被計測者が特定の姿勢および/または動作をとり、身体の特定の部位の筋電位を計測した場合における、発生すべき正常な筋電位に関する情報から、前記姿勢・動作情報判別ステップにより判別された前記被計測者の姿勢および/または動作において、発生すべき筋電位を推定する筋電位推定ステップと、
前記筋電位計測ステップによって計測された実測筋電位と、その同時間における前記筋電位推定ステップによって推定された発生すべき推定筋電位とを比較することによって、前記被計測者の筋緊張の異常を検出する異常筋緊張検出ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る筋緊張計測装置、筋緊張計測方法および筋緊張計測プログラムによれば、被計測者の姿勢および/または動作の如何に拘わらず、異常な筋緊張を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1に係る筋緊張計測装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る筋緊張計測システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2に係る筋緊張計測装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】実施の形態2に係る筋電位計測システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2に係る筋電位推定システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態2に係る異常筋緊張検出システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の具体例1に係る筋電位データベースに格納され筋電位推定部が使用する変換テーブルを示す図である。
【図8】具体例1に係る肩関節の屈曲角度を示す図である。
【図9】具体例1に係る筋緊張計測装置の使用状況を示す図である。
【図10】具体例1に係る時間経過における肩関節の屈曲角度を示す図である。
【図11】具体例1に係る時間経過における予測される筋電位の振幅の極大値を示す図である。
【図12】具体例1に係る時間経過における筋電位センサにより計測された筋電位を示す図である。
【図13】本発明の具体例2に係る筋緊張計測装置の使用状況を示す図である。
【図14】本発明に係る筋緊張計測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0016】
本実施の形態において、筋緊張の異常とは、病気または心理的な要因等によって、通常の人間の平常時における筋緊張とは異なる状態、例えば筋緊張亢進または低下の状態をいう。正常な筋電位とは、通常の人間が平常時に特定の姿勢および/または動作を行った場合における、身体の特定の部位で発生する筋電位(筋電位の振幅の状態)をいう。平常時の通常の人間とは、病気または心理的な要因等による筋緊張の異常が起きていない人間をいう。また、本実施の形態において、被計測者の姿勢とは、被計測者が制止した状態における身体の構えをいい、被計測者の動作とは被計測者が動いた状態における身体の動きをいう。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る筋緊張計測装置の構成例を示すブロック図である。本実施の形態1では、筋緊張計測装置1は、姿勢・動作情報取得部2と、筋電位計測部3と、姿勢・動作情報判別部4と、筋電位データベース(筋電位DB)5と、筋電位推定部6と、異常筋緊張検出部7と、異常筋緊張表示部8とを備える。本実施の形態1に係る筋緊張計測装置1では、少なくとも前述した各構成部を有する限り、筋緊張計測装置1として全て一体に構成しても、2つ以上の装置から構成しても構わない。
【0018】
姿勢・動作情報取得部2は、被計測者の姿勢・動作についての情報(以下、姿勢・動作情報)を取得し、姿勢・動作情報判別部4に送る。姿勢・動作情報判別部4は、姿勢・動作情報を受け取り、被計測者がどのような姿勢・動作であるかを判別する。これらの姿勢・動作情報取得部2および姿勢・動作情報判別部4は、例えば、加速度・角速度センサまたはモーションキャプチャ等の人間の動きを定量的に測定できる当業者にとって公知の技術により構成されている。姿勢・動作情報判別部4は、判別した姿勢・動作情報を筋電位推定部6に送る。
【0019】
筋電位計測部3は、筋緊張を計測する被計測者の身体の所定の部位で発生した筋電位を計測する。筋電位計測部3によって計測された筋電位を、以下、実測筋電位という。筋電位計測部3は、例えば、被計測者の身体に取り付ける筋電位センサ等、筋電位を計測することができる公知の技術を用いて構成されている。筋電位計測部3は、実測筋電位を異常筋緊張検出部7に送る。
【0020】
筋電位DB5には、被計測者が特定の姿勢・動作をとり、身体の所定の部位の筋電位を計測した場合における、発生すべき正常な筋電位に関する情報が格納されている。具体的には、被計測者が任意の姿勢・動作をとった場合における、被計測者の身体の所定の部位に発生すべき正常な筋電位の振幅(ベースラインからの変化量)の極大値の情報が格納されている。これは、正常な筋電位の振幅の極大値は、被計測者の姿勢・動作によって異なるためである。すなわち、筋電位DB5には、被計測者の任意の姿勢・動作からの、該所定の部位に発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値への変換テーブルが格納されている。このような正常な筋電位の情報は、例えば、予め病気または心理的な要因等による筋緊張の異常が起きていない人間の筋電位を計測し、筋電位DB5に格納しておく。
【0021】
筋電位推定部6は、筋電位DB5に格納されている情報から、姿勢・動作情報判別部4によって判別された被計測者の姿勢・動作において、発生すべき筋電位を推定する。すなわち、送られた姿勢・動作情報から、発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値の情報へ変換する。このように筋電位推定部6によって推定された筋電位の振幅の極大値を、以下、推定筋電位という。筋電位推定部6は、推定筋電位を異常筋緊張検出部7に送る。
【0022】
異常筋緊張検出部7は、筋電位計測部3によって計測された実測筋電位と、その同時間における筋電位推定部6によって推定された推定筋電位とを比較することによって、被計測者の筋緊張の異常を検出する。ここでの同時間とは、後にフローチャートを用いて詳細に述べるが、実測筋電位が計測された時間と、姿勢・動作情報取得部2によって姿勢・動作情報が取得された時間とが同時間という意味である。異常筋緊張検出部7は、具体的には、実測筋電位が推定筋電位(発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値)を超えていた場合に筋緊張の異常を検出する。
【0023】
異常筋緊張表示部8は、異常筋緊張検出部7によって筋緊張が異常であると検出された場合、筋緊張の異常を被計測者に表示する。例えば、異常筋緊張表示部8は、ディスプレイ等の画面による画像やテキストを用いた提示、アラーム等の音声による提示、または、ランプ等の光による提示によって、被計測者に異常筋緊張を表示する。具体的には、例えば、ディスプレイの画面に「異常筋緊張が検出されています。リラックスしてください。」といったテキストを表示する。
【0024】
図2は、実施の形態1に係る筋緊張計測システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下、図1および図2を用いて、本実施の形態1における実際の筋緊張計測時における筋緊張計測装置1の動作について説明する。
【0025】
姿勢・動作情報取得部2は、筋緊張を計測する被計測者の姿勢・動作情報を取得し(ステップS101)、姿勢・動作情報判別部4に該姿勢・動作情報を送る。次に、筋電位計測部3は、筋緊張を計測する被計測者の身体の所定の部位で発生した筋電位(実測筋電位)を計測する(ステップS102)。その際、後に実測筋電位と推定筋電位とをほぼ同程度の時間において比較できるよう、姿勢・動作情報の取得時の実際の筋電位の値と筋電位計測部3の計測した実測筋電位の値とがほぼ変化しない程度の時間差において、ステップS101およびステップS102が行われる。筋電位計測部3は、計測した実測筋電位を異常筋緊張検出部7に送る。具体的には、例えば、X(mV)の筋電位を計測したという情報を送る。
【0026】
姿勢・動作情報判別部4は、送られた該姿勢・動作情報を判別し(ステップS103)、筋電位推定部6に送る。具体的には、例えば、送られた該姿勢・動作情報が、右腕肩関節Y°屈曲という姿勢・動作であることを判別し、筋電位推定部6に送る。筋電位推定部6は、判別された姿勢・動作情報を受け取り、該姿勢・動作情報から筋電位を推定(すなわち、変換)するために必要な情報を、筋電位DB5から読み出す(ステップS104)。前述したように、筋電位DB5には、被計測者が任意の姿勢・動作をとった場合における、発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値の情報が格納されている。すなわち、筋電位DB5から読み出す情報とは、判別された姿勢・動作情報に基づく発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値の情報をいう。具体的には、例えば、判別された姿勢・動作情報が右腕肩関節Y°屈曲という情報の場合、発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値はZ(mV)という情報を読み出す。
【0027】
筋電位推定部6は、読み出された筋電位情報から筋電位を推定し(ステップS105)、推定筋電位を異常筋緊張検出部7に送る。具体的には、例えば、推定筋電位はZ(mV)という情報を送る。
【0028】
異常筋緊張検出部7は、送られた実測筋電位と推定筋電位とを比較する(ステップS106)。その際、実測筋電位が推定筋電位を超えているかを判断する(ステップS107)。具体的には、例えば、実測筋電位X(mV)が推定筋電位はZ(mV)を超えているか否かを判断する。実測筋電位が推定筋電位を超えている場合(ステップS107、YES)、異常筋緊張検出部7は、異常筋緊張を設定し(ステップS108)、異常筋緊張情報を異常筋緊張表示部8に送る。異常筋緊張表示部8は、送られた異常筋緊張情報を表示する(ステップS109)。その後、ステップS101に戻り、継続的に筋緊張計測を行う。一方、実測筋電位が推定筋電位を超えていない場合(ステップS107、NO)、異常筋緊張検出部7は、正常筋緊張を設定し(ステップS110)、その後、ステップS101に戻り、継続的に筋緊張計測を行う。
【0029】
本実施の形態1によれば、被計測者の姿勢等に基づき筋電位を推定し異常筋緊張を検出しているため、被計測者の姿勢および/または動作の如何に拘わらず、異常な筋緊張を検出することができる。すなわち、被計測者の姿勢等を確認するための医師や検査官等の第三者の立ち会いが不要であり、日常的かつ長時間継続的な筋緊張の計測が可能となる。
【0030】
さらに、本実施の形態1に係る筋緊張計測装置1は、異常筋緊張表示部8を備えるため、異常筋緊張が検出された場合に被計測者に異常筋緊張を提示し、筋緊張の緩和等を促すことができる。
【0031】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係る筋緊張計測装置1は、異常筋緊張表示部8を備えず、計時部9と、実測筋電位情報記憶部10と,推定筋電位情報記憶部11と、筋緊張情報記憶部12とを備えるという点で、前述した実施の形態1と異なる。以下、実施の形態1と異なる部分について特に詳細に説明する。
【0032】
図3は、本発明の実施の形態2に係る筋緊張計測装置の構成例を示すブロック図である。本実施の形態2では、筋緊張計測装置1は、姿勢・動作情報取得部2と、筋電位計測部3と、姿勢・動作情報判別部4と、筋電位DB5と、筋電位推定部6と、異常筋緊張検出部7と、計時部9と、実測筋電位情報記憶部10と、推定筋電位情報記憶部11と、筋緊張情報記憶部12とを備える。筋緊張計測装置1、姿勢・動作情報取得部2、筋電位計測部3、姿勢・動作情報判別部4、筋電位DB5、筋電位推定部6および異常筋緊張検出部7についての詳細は、実施の形態1とほぼ同様であるが、異なる部分については以下に述べる。
【0033】
筋緊張計測装置1は、実施の形態1と同様に、少なくとも前述した各構成部を有する限り、筋緊張計測装置1として全て一体に構成しても、2つ以上の装置から構成しても構わない。特に、本実施の形態2では、図4ないし図6を用いて後に詳細に説明するが、筋緊張計測システムを、筋電位計測システムと、筋電位推定システムと、異常筋緊張検出システムとで構成している。そこで、例えば、それぞれのシステムを有する3つの装置として構成しても構わない。
【0034】
計時部9は、筋電位計測部3によって筋電位を計測した時間(以下、筋電位計測時間)、および、姿勢・動作情報取得部2によって被計測者の姿勢・動作情報を取得した時間すなわち被計測者が特定の姿勢・動作をとった時間(以下、姿勢・動作取得時間)を計測する。
【0035】
筋電位計測部3については、実施の形態1とほぼ同様であるが、計測された筋電位計測時間の情報を含む実測筋電位の情報を、実測筋電位情報記憶部10に送る。すなわち、タイムスタンプが付随した実測筋電位の情報を、実測筋電位情報記憶部10に送る。
【0036】
姿勢・動作情報取得部2についても、実施の形態1とほぼ同様であるが、計測された姿勢・動作取得時間の情報を含む姿勢・動作情報を、姿勢・動作情報判別部4に送る。姿勢・動作情報判別部4は、判別した姿勢・動作情報(姿勢・動作取得時間の情報を含む)を筋電位推定部6に送る。筋電位推定部6は、実施の形態1と同様に筋電位DB5から必要な情報を読み出し、推定筋電位を推定筋電位情報記憶部11に送る。その際、筋電位推定部6は、姿勢・動作取得時間情報についても推定筋電位情報記憶部11に送る。すなわち、タイムスタンプが付随した推定筋電位の情報を、推定筋電位情報記憶部11に送る。
【0037】
実測筋電位情報記憶部10は、筋電位計測部3から送られたタイムスタンプが付随した実測筋電位の情報を一時的に記憶する。推定筋電位情報記憶部11についても同様に、筋電位推定部6から送られたタイムスタンプが付随した推定筋電位の情報を一時的に記憶する。
【0038】
異常筋緊張検出部7は、実測筋電位情報記憶部10および推定筋電位情報記憶部11から、同時間における実測筋電位の情報と推定筋電位の情報とを読み出し、比較することによって筋緊張の異常を検出する。具体的な検出方法については、実施の形態1と同様である。異常筋緊張検出部7は、読み出した実測筋電位の情報、推定筋電位の情報および検出した異常または正常筋緊張の情報を、筋緊張情報記憶部12に送る。異常または正常筋緊張情報とは、例えば、異常または正常筋緊張として検出された時間帯等の情報のことをいう。筋緊張情報記憶部12は、送られた実測筋電位の情報、推定筋電位の情報および検出した異常または正常筋緊張の情報等を、順次記憶する。
【0039】
図4ないし図6は、実施の形態2に係る筋緊張計測システムの動作の一例を示すフローチャートである。以下、図4ないし図6を用いて、本実施の形態2における実際の筋緊張計測時における筋緊張計測装置1の動作について説明する。
【0040】
図4は、実施の形態2に係る筋電位計測システムの動作の一例を示すフローチャートである。筋電位計測部3は、筋緊張を計測する被計測者の身体の所定の部位で発生した筋電位(実測筋電位)を計測する(ステップS211)。その際、計時部9によって筋電位計測時間が計測されているため、実測筋電位の情報にはタイムスタンプが付随する。筋電位計測部3は、計測した実測筋電位の情報を実測筋電位情報記憶部10に送る。具体的には、例えば、何時何分何秒にX(mV)の筋電位を計測したという情報を送る。実測筋電位情報記憶部10は、タイムスタンプが付随した実測筋電位の情報を一時記憶する(ステップS212)。その後、ステップS211に戻り、継続的に筋電位計測を行う。
【0041】
図5は、実施の形態2に係る筋電位推定システムの動作の一例を示すフローチャートである。姿勢・動作情報取得部2は、筋緊張を計測する被計測者の姿勢・動作情報を取得する(ステップS221)。その際、計時部9によって姿勢・動作取得時間が計測されているため、姿勢・動作情報にはタイムスタンプが付随する。姿勢・動作情報取得部2は、姿勢・動作情報判別部4に該姿勢・動作情報を送る。
【0042】
姿勢・動作情報判別部4は、送られた該姿勢・動作情報を判別し(ステップS222)、筋電位推定部6に送る。この際、筋電位推定部6に送られる姿勢・動作情報についても姿勢・動作取得時間のタイムスタンプが付随する。具体的には、例えば、何時何分何秒に右腕肩関節Y°屈曲という姿勢・動作の情報を、筋電位推定部6に送る。筋電位推定部6は、判別された姿勢・動作情報を受け取り、該姿勢・動作情報から筋電位を推定(すなわち、変換)するために必要な情報を、筋電位DB5から読み出す(ステップS223)。この際、筋電位DB5から読み出す情報とは、実施の形態1と同様に、判別された姿勢・動作情報に基づく発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値の情報をいう。具体的には、例えば、判別された姿勢・動作情報が右腕肩関節Y°屈曲という情報の場合、発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値はZ(mV)という情報を読み出す。
【0043】
筋電位推定部6は、読み出した筋電位情報から筋電位を推定し(ステップS224)、推定筋電位の情報を推定筋電位情報記憶部11に送る。この際、姿勢・動作取得時間のタイムスタンプの情報についても送られる。具体的には、例えば、何時何分何秒の推定筋電位はZ(mV)という情報が送られる。推定筋電位情報記憶部11は、タイムスタンプが付随した推定筋電位の情報を一時記憶する(ステップS225)。その後、ステップS221に戻り、継続的に筋電位推定を行う。
【0044】
図6は、実施の形態2に係る異常筋緊張検出システムの動作の一例を示すフローチャートである。異常筋緊張検出部7は、実測筋電位情報記憶部10および推定筋電位情報記憶部11から、それぞれ同時間のタイムスタンプが付随した実測筋電位の情報または推定筋電位の情報を読み出す(ステップS231)。次に、読み出した同時間における実測筋電位と推定筋電位とを比較する(ステップS232)。その際、実測筋電位が推定筋電位を超えているかを判断する(ステップS233)。具体的には、例えば、何時何分何秒において、実測筋電位X(mV)が推定筋電位Z(mV)を超えているか否かを判断する。
【0045】
実測筋電位が推定筋電位を超えている場合(ステップS233、YES)、異常筋緊張検出部7は、異常筋緊張を設定し(ステップS234)、実測筋電位の情報、推定筋電位の情報および異常筋緊張の情報を筋緊張情報記憶部12に送る。一方、実測筋電位が推定筋電位を超えていない場合(ステップS233、NO)、異常筋緊張検出部7は、正常筋緊張を設定し(ステップS235)、実測筋電位の情報、推定筋電位の情報および正常筋緊張の情報を筋緊張情報記憶部12に送る。
【0046】
筋緊張情報記憶部12は、送られた実測筋電位の情報、推定筋電位の情報および異常または正常筋緊張の情報を記憶する(ステップS236)。その後、ステップS231に戻り、継続的に(他の時間のタイムスタンプにおける)異常筋緊張検出を行う。
【0047】
本実施の形態2によれば、被計測者の姿勢等に基づき筋電位を推定し異常筋緊張を検出しているため、被計測者の姿勢および/または動作の如何に拘わらず、異常な筋緊張を検出することができる。すなわち、被計測者の姿勢等を確認するための医師や検査官等の第三者の立ち会いが不要であり、日常的かつ長時間継続的な筋緊張の計測が可能となる。
【0048】
特に、本実施の形態2によれば、筋緊張情報記憶部12を有しているため、被計測者が本実施の形態2にかかる筋緊張計測装置1を日常において長時間継続的に装着した後に、どの時間帯等おいて異常筋緊張が検出されたのか確認をすることができる。すなわち、筋電位計測時間または姿勢・動作取得時間、姿勢・動作等の情報を対比させて、どのような場合に筋緊張の異常が発生するかを知ることができる。
【0049】
本実施の形態2では、筋緊張情報記憶部12は、実測筋電位の情報、推定筋電位の情報および異常または正常筋緊張の情報を記憶するよう構成したが、その他の情報についても記憶するよう筋緊張計測装置1および筋緊張情報記憶部12を構成しても構わない。例えば、タイムスタンプが付随され判別した姿勢・動作情報(具体的には、例えば、何時何分何秒に右腕肩関節Y°屈曲していたという情報)についても記憶するよう構成してもよい。また、異常筋緊張の情報(異常筋緊張が検出された時間等)のみを記憶するよう構成しても構わない。
【0050】
実施の形態1および2では、異常筋緊張検出部7において異常筋緊張であるか否かを判断する際に、実測筋電位が推定筋電位(振幅の極大値)を超えているか否かで判断を行う場合について記載したが、実測筋電位と推定筋電位とを比較することによって、異常筋緊張を検出できればどのような判断方法でも構わない。例えば、予め筋電位DB5に、ある程度範囲を持った推定筋電位(例えば、X(mV)〜Y(mV))のデータを格納しておいた場合、その範囲外の実測筋電位が計測された場合に異常筋緊張と検出してもよい。
【0051】
また、実測筋電位および推定筋電位の値の比較についても、一定時間経過ごとのある時間における各筋電位の値について比較しても、一定時間帯における平均値による各電位の値について比較しても構わない。
【0052】
さらに、実施の形態1および2では、発生した筋電位を計測する被計測者の身体の部位を所定の部位と仮定して記載した。これは、筋電位を計測する身体の部位により、正常な筋電位が異なる場合があるためである。しかし、例えば、筋電位DB5に所望の複数の身体の部位についての筋電位の情報を格納しておき、ディスプレイのパネル操作等によって外部から筋電位を計測する身体の部位を入力できるようにする。すると、本発明に係る筋緊張計測装置1を被計測者の身体の様々な部位において使用することができる。
【0053】
実施の形態1および2では、異常筋緊張表示部8または筋緊張情報記憶部12等の様々な構成部を有する筋緊張計測装置1について記載したが、少なくとも、姿勢・動作情報取得部2、筋電位計測部3、姿勢・動作情報判別部4、筋電位DB5、筋電位推定部6、異常筋緊張検出部7を備えれば、どのような構成でも構わない。例えば、図1に示す実施の形態1において、異常筋緊張表示部8を筋緊張情報記憶部12としてもよいし、異常筋緊張表示部8および筋緊張情報記憶部12を組み合わせた構成でも構わない。
【0054】
以下に、具体例を用いて本発明の実施の形態の動作を説明する。
【0055】
(具体例1)
本具体例1は、本発明に係る筋緊張計測装置1を、上腕部の前方挙上(被計測者の姿勢および動作)に使用し、右腕の三角筋前部(筋電位を計測する身体の部位)の筋緊張を計測した場合における具体的な動作例である。
【0056】
三角筋前部は、対応する上腕部の前方挙上を行うのに使われる筋である。図7は、本発明の具体例1に係る筋電位DBに格納され筋電位推定部が使用する変換テーブルを示す図である。図7に示すように、肩関節の屈曲角度は、上腕部の前方挙上が低い(肩関節の屈曲角度が小さい)と小さい筋電位が推定され、上腕部の前方挙上が高い(肩関節の屈曲角度が大きい)と大きい筋電位が推定される。図8は、具体例1に係る肩関節の屈曲角度を示す図である。なお、図7に示す変換テーブルおよび三角筋前部と上腕部の前方挙上との関係の詳細については、非特許文献1を参照されたい。
【0057】
図9は、具体例1に係る筋緊張計測装置の使用状況を示す図である。被計測者は筋電位センサ13および加速度・角速度センサ14を装着している。筋電位センサ13は、三角筋前部の筋電位が計測できるよう、図9に示す位置に装着する。加速度・角速度センサ14は、右上腕部の姿勢(角度)および動作(角度の変化量)を計測できる。加速度・角速度センサ14は、加速度および角速度センサを用いた身体の運動・姿勢の計測に係る公知の技術である。この技術の詳細については、橋本渉、田村紘之、野間春生、多田昌裕、小暮潔「無線加速度センサによる上腕関節可動域の測定手法」http://www.is.oit.ac.jp/~whashimo/server/~whashimo/Article/Paper/2008WUVR.pdfを参照されたい。
【0058】
すなわち、本具体例1においては、被計測者の右腕の三角筋前部の筋電位を計測する筋電位センサ13は筋電位計測部3として機能しており、被計測者の右上腕部に装着した加速度・角速度センサ14は姿勢・動作情報取得部2および姿勢・動作情報判別部4として機能している。
【0059】
まず、姿勢・動作情報取得部2および姿勢・動作情報判別部4として機能する加速度・角速度センサ14によって、被計測者の右上腕部の角度および角度の変化量が、姿勢・動作情報として取得、判別される。姿勢・動作情報取得時には、計時部9によってタイムスタンプが附随される。図10は、具体例1に係る時間経過における肩関節の屈曲角度を示す図である。このように判別された姿勢・動作情報は、筋電位推定部6に送られる。
【0060】
筋電位推定部6は、図10に示す姿勢・動作情報から、図7に示す変換テーブル(筋電位DB5に格納)を用いて、筋電位の振幅の極大値を推定する。図11は、具体例1に係る時間経過における予測される筋電位の振幅の極大値を示す図である。すなわち、このように予測される筋電位の振幅の極大値は、推定筋電位であり、該推定筋電位は、異常筋緊張検出部7に送られる。
【0061】
一方、筋電位計測部3として機能する筋電位センサ13によって、被計測者の右腕の三角筋前部の筋電位が計測される。計測された筋電位は、計時部9によってタイムスタンプが附随される。図12は、具体例1に係る時間経過における筋電位センサにより計測された筋電位を示す図である。このように計測された実測筋電位は、異常筋緊張検出部7に送られる。
【0062】
異常筋緊張検出部7は、筋電位センサ13(筋電位計測部3)から送られた被計測者の右腕の三角筋前部で発生した実測筋電位と、加速度・角速度センサ14(姿勢・動作情報取得部2および姿勢・動作情報判別部4)の情報に基づき筋電位推定部6から送られた被計測者の右腕の三角筋前部の筋電位の推定筋電位との比較を行う。実測筋電位が推定筋電位を超えている場合、右腕の三角筋前部の筋電位を異常筋緊張として検出する。
【0063】
図12に示す実測筋電位と図11に示す推定筋電位とを比較すると、tA〜tBの時間帯において、実測筋電位が推定筋電位を超えており、異常筋緊張と検出される。このような異常筋緊張が検出された時間帯や異常筋緊張が検出された肩関節の屈曲角度等(異常筋緊張検出情報)は、筋緊張情報記憶部12に記憶される。また、図12に示す実測筋電位のデータ(実測筋電位情報)、図10に示す肩関節の屈曲角度のデータ(姿勢・動作情報)、および、図11に示す推定筋電位のデータについても筋緊張情報記憶部12に記憶される。
【0064】
本具体例1では、右腕の三角筋前部の実測筋電位と、右上腕部の姿勢・動作から推定される推定筋電位との比較により筋緊張を計測することにより、異常な筋緊張を検出することができる。すなわち、被計測者の姿勢等を確認するための医師や検査官等の第三者の立ち会いが不要であり、日常的かつ長時間継続的な筋緊張の計測が可能となる。また、継続的な筋緊張の計測を行った後に、どの時間にどのような姿勢等において筋緊張が行われていたかを確認することができる。
【0065】
本具体例1においては、筋電位DB5、筋電位推定部6、異常筋緊張検出部7、計時部9および筋緊張情報記憶部12を備えている装置については限定していないが、例えば、筋電位センサ13または加速度・角速度センサ14がこれらの構成部を備えてもよいし、その他の装置がこれらの構成部を備えても構わない。また、実施の形態2において記載した、筋電位情報を一時記憶する実測筋電位情報記憶部10および推定筋電位情報記憶部11を、筋電位センサ13または加速度・角速度センサ14中に構成しても構わない。
【0066】
(具体例2)
本具体例2は、姿勢・動作情報取得部2および姿勢・動作情報判別部4が、加速度・角速度センサ14ではなく、モーションキャプチャ用マーカー15およびモーションキャプチャ用動画収録カメラ16で構成されている点において前述した具体例1と異なる。被計測者の姿勢および動作は上腕部の前方挙上であり、筋電位を計測する身体の部位は右腕の三角筋前部である点は具体例1と同様である。本具体例2に係る筋電位DB5に格納され筋電位推定部6が使用する変換テーブルは、具体例1において示した図7と同様である。
【0067】
図13は、本発明の具体例2に係る筋緊張計測装置の使用状況を示す図である。被計測者は筋電位センサ13およびモーションキャプチャ用マーカー15を装着している。モーションキャプチャ用マーカー15は、モーションキャプチャ用動画収録カメラ16によって収録されている。筋電位センサ13は、三角筋前部の筋電位が計測できるよう、図13に示す位置に装着されている。モーションキャプチャ用マーカー15およびモーションキャプチャ用動画収録カメラ16は、当業者にとって公知の技術であるモーションキャプチャの技術を用いて被計測者が右上腕部に装着したマーカーを撮影した動画から右上腕部の姿勢(角度)および動作(角度の変化量)を計測する。
【0068】
まず、姿勢・動作情報取得部2および姿勢・動作情報判別部4として機能するモーションキャプチャ用マーカー15およびモーションキャプチャ用動画収録カメラ16によって、被計測者の右上腕部の角度および角度の変化量が、姿勢・動作情報として取得、判別される。姿勢・動作情報取得時には、計時部9によってタイムスタンプが附随される。取得され、判別された姿勢・動作判別情報は、具体例1に示す図10と同様とする。このように判別された姿勢・動作情報は、筋電位推定部6に送られる。筋電位推定部6は、図10に示す姿勢・動作情報から、図7に示す変換テーブルを用いて、筋電位の振幅の極大値を推定する。予測される筋電位の振幅の極大値、すなわち推定筋電位についても、具体例1に示す図11と同様とする。推定筋電位は、異常筋緊張検出部7に送られる。
【0069】
一方、筋電位計測部3として機能する筋電位センサ13によって、被計測者の右腕の三角筋前部の筋電位が計測される。計測された筋電位は、計時部9によってタイムスタンプが附随される。計測された実測筋電位は、具体例1に示す図12と同様とする。このように計測された実測筋電位は、異常筋緊張検出部7に送られる。
【0070】
異常筋緊張検出部7は、筋電位センサ13(筋電位計測部3)から送られた実測筋電位と、モーションキャプチャ用マーカー15およびモーションキャプチャ用動画収録カメラ16(姿勢・動作情報取得部2および姿勢・動作情報判別部4)の情報から得た推定筋電位との比較を行う。実測筋電位が推定筋電位を超えている場合、右腕の三角筋前部の筋電位を異常筋緊張として検出する。異常筋緊張の検出および筋緊張情報記憶部12に記憶されるデータについては具体例1と同様である。
【0071】
本具体例2では、右腕の三角筋前部の実測筋電位と、右上腕部の姿勢・動作から推定される推定筋電位との比較により筋緊張を計測することにより、異常な筋緊張を検出することができる。すなわち、被計測者の姿勢等を確認するための医師や検査官等の第三者の立ち会いが不要であり、日常的かつ長時間継続的な筋緊張の計測が可能となる。また、継続的な筋緊張の計測を行った後に、どの時間にどのような姿勢等において筋緊張が行われていたかを確認することができる。
【0072】
本具体例2においては、筋電位DB5、筋電位推定部6,異常筋緊張検出部7、計時部9および筋緊張情報記憶部12を備えている装置については限定していないが、例えば、筋電位センサ13、モーションキャプチャ用マーカー15またはモーションキャプチャ用動画収録カメラ16がこれらの構成部を備えてもよいし、その他の装置がこれらの構成部を備えても構わない。また、実施の形態2において記載した、筋電位情報を一時記憶する実測筋電位情報記憶部10および推定筋電位情報記憶部11を、筋電位センサ13またはモーションキャプチャ用動画収録カメラ16中に構成しても構わない。
【0073】
図14は、本発明に係る筋緊張計測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。筋緊張計測装置1は、図14に示すように、制御部21、主記憶部22、外部記憶部23、入力部24、表示部25および送受信部26を備える。主記憶部22、外部記憶部23、入力部24、表示部25および送受信部26はいずれも内部バス20を介して制御部21に接続されている。
【0074】
制御部21はCPU(Central Processing Unit)等から構成され、外部記憶部23に記憶されている筋緊張計測用プログラム30に従って、前述の筋緊張計測装置1の処理を実行する。
【0075】
主記憶部22はRAM(Random-Access Memory)等から構成され、外部記憶部23に記憶されている筋緊張計測用プログラム30をロードし、制御部21の作業領域として用いられる。
【0076】
外部記憶部23は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD−RAM(Digital Versatile Disc Random-Access Memory)、DVD−RW(Digital Versatile Disc ReWritable)等の不揮発性メモリから構成され、前記の処理を制御部21に行わせるための筋緊張計測用プログラム30を予め記憶し、また、制御部21の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを制御部21に供給し、制御部21から供給されたデータを記憶する。
【0077】
入力部24は、筋電位または姿勢・動作を取得するセンサ、またはカメラ等を接続して、それらの信号を入力する。制御部21は、入力部24に接続するそれらのセンサ等の信号を用いて、被計測者の筋電位情報等を取得する。入力部24は、筋電位または姿勢・動作を取得するセンサ等の信号を、数値演算しやすいデータにして制御部21に供給する。
【0078】
表示部25は、例えば、ランプ、LED(Light Emitting Diode)、または、CRT(Cathode Ray Tube)もしくはLCD(Liquid Crystal Display)等の画像表示部を駆動する回路を備え、それらを用いて、被計測者への異常筋緊張情報を出力する。表示部25は、また、例えば、音信号源とアンプを備える。ブザー、スピーカ等の音響出力装置を接続して、音響または音声によって被計測者への異常筋緊張情報を出力してもよい。
【0079】
送受信部26は、無線送受信機、無線モデム又は網終端装置、およびそれらと接続するシリアルインタフェースまたはLAN(Local Area Network)インタフェースから構成されている。例えば、送受信部26を介して、被計測者が装着する情報端末から本発明の筋緊張計測装置1を構成する他の情報端末に筋電位情報等を送信したり、また、該情報端末に筋電位情報等を表示したりする。
【0080】
図1または図3に示す筋緊張計測装置1の各部の処理は、筋緊張計測用プログラム30が、制御部21、主記憶部22、外部記憶部23、入力部24、表示部25および送受信部26等を資源として用いて実行する。
【0081】
その他、本発明の好適な変形として、以下の構成が含まれる。
【0082】
本発明の第1の観点に係る筋緊張計測装置について、
好ましくは、該筋緊張計測装置は、少なくとも、前記筋電位計測手段によって計測された前記実測筋電位の情報、前記筋電位推定手段によって推定された前記推定筋電位の情報、および、前記異常筋緊張検出手段によって検出された異常筋緊張の情報を記憶する筋緊張情報記憶手段を備えることを特徴とする。
【0083】
さらに好ましくは、前記正常な筋電位に関する情報は、発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値の情報を含み、
前記推定筋電位は、前記発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値であり、
前記異常筋緊張検出手段は、前記筋電位計測手段によって計測された前記実測筋電位が、前記推定筋電位である前記発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値を超えた場合に、筋緊張の異常を検出することを特徴とする。
【0084】
また、好ましくは、前記姿勢・動作情報取得手段および前記姿勢・動作情報判別手段は、加速度・角速度センサ、または、モーションキャプチャを用いることを特徴とする。
【0085】
本発明の第2の観点に係る筋緊張計測方法について、
好ましくは、該筋緊張計測方法は、少なくとも、前記筋電位計測ステップによって計測された前記実測筋電位の情報、前記筋電位推定ステップによって推定された前記推定筋電位の情報、および、前記異常筋緊張検出ステップによって検出された異常筋緊張の情報を記憶する筋緊張情報記憶ステップを備えることを特徴とする。
【0086】
さらに好ましくは、前記正常な筋電位に関する情報は、発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値の情報を含み、
前記推定筋電位は、前記発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値であり、
前記異常筋緊張検出ステップは、前記筋電位計測ステップによって計測された前記実測筋電位が、前記推定筋電位である前記発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値を超えた場合に、筋緊張の異常を検出することを特徴とする。
【0087】
また、好ましくは、前記姿勢・動作情報取得ステップおよび前記姿勢・動作情報判別ステップは、加速度・角速度センサ、または、モーションキャプチャを用いることを特徴とする。
【0088】
その他、前記のハードウエア構成やフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0089】
姿勢・動作情報取得部2、筋電位計測部3、姿勢・動作情報判別部4、筋電位DB5、筋電位推定部6、異常筋緊張検出部7等から構成される筋緊張計測を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。たとえば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、コンピュータが読みとり可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM等)に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する筋緊張計測装置1を構成してもよい。また、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロード等することで筋緊張計測装置1を構成してもよい。
【0090】
また、筋緊張計測装置1を、OS(オペレーティングシステム)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合等には、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体や記憶装置に格納してもよい。
【0091】
また、搬送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して配信することも可能である。たとえば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS、Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを配信してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、被計測者の姿勢および/または動作の如何に拘わらず、病気または心理的(精神的)な要因等による緊張時に起こる筋緊張の異常を検出することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 筋緊張計測装置
2 姿勢・動作情報取得部
3 筋電位計測部
4 姿勢・動作情報判別部
5 筋電位データベース
6 筋電位推定部
7 異常筋緊張検出部
8 異常筋緊張表示部
9 計時部
10 実測筋電位情報記憶部
11 推定筋電位情報記憶部
12 筋緊張情報記憶部
13 筋電位センサ
14 加速度・角速度センサ
15 モーションキャプチャ用マーカー
16 モーションキャプチャ用動画収録カメラ
21 制御部
22 主記憶部
23 外部記憶部
24 入力部
25 表示部
26 送受信部
30 筋緊張計測用プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測者の身体で発生した筋電位を計測する筋電位計測手段と、
前記被計測者の姿勢および/または動作の情報である姿勢・動作情報を取得する姿勢・動作情報取得手段と、
前記姿勢・動作情報により、前記被計測者がどのような姿勢および/または動作であるかを判別する姿勢・動作情報判別手段と、
予め記憶された、被計測者が特定の姿勢および/または動作をとり、身体の特定の部位の筋電位を計測した場合における、発生すべき正常な筋電位に関する情報から、前記姿勢・動作情報判別手段により判別された前記被計測者の姿勢および/または動作において、発生すべき筋電位を推定する筋電位推定手段と、
前記筋電位計測手段によって計測された実測筋電位と、その同時間における前記筋電位推定手段によって推定された発生すべき推定筋電位とを比較することによって、前記被計測者の筋緊張の異常を検出する異常筋緊張検出手段と、
を備えることを特徴とする筋緊張計測装置。
【請求項2】
該筋緊張計測装置は、少なくとも、前記筋電位計測手段によって計測された前記実測筋電位の情報、前記筋電位推定手段によって推定された前記推定筋電位の情報、および、前記異常筋緊張検出手段によって検出された異常筋緊張の情報を記憶する筋緊張情報記憶手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の筋緊張計測装置。
【請求項3】
前記正常な筋電位に関する情報は、発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値の情報を含み、
前記推定筋電位は、前記発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値であり、
前記異常筋緊張検出手段は、前記筋電位計測手段によって計測された前記実測筋電位が、前記推定筋電位である前記発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値を超えた場合に、筋緊張の異常を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の筋緊張計測装置。
【請求項4】
前記姿勢・動作情報取得手段および前記姿勢・動作情報判別手段は、加速度・角速度センサ、または、モーションキャプチャを用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の筋緊張計測装置。
【請求項5】
被計測者の身体で発生した筋電位を計測する筋電位計測ステップと、
前記被計測者の姿勢および/または動作の情報である姿勢・動作情報を取得する姿勢・動作情報取得ステップと、
前記姿勢・動作情報により、前記被計測者がどのような姿勢および/または動作であるかを判別する姿勢・動作情報判別ステップと、
予め記憶された、被計測者が特定の姿勢および/または動作をとり、身体の特定の部位の筋電位を計測した場合における、発生すべき正常な筋電位に関する情報から、前記姿勢・動作情報判別ステップにより判別された前記被計測者の姿勢および/または動作において、発生すべき筋電位を推定する筋電位推定ステップと、
前記筋電位計測ステップによって計測された実測筋電位と、その同時間における前記筋電位推定ステップによって推定された発生すべき推定筋電位とを比較することによって、前記被計測者の筋緊張の異常を検出する異常筋緊張検出ステップと、
を備えることを特徴とする筋緊張計測方法。
【請求項6】
該筋緊張計測方法は、少なくとも、前記筋電位計測ステップによって計測された前記実測筋電位の情報、前記筋電位推定ステップによって推定された前記推定筋電位の情報、および、前記異常筋緊張検出ステップによって検出された異常筋緊張の情報を記憶する筋緊張情報記憶ステップを備えることを特徴とする請求項5に記載の筋緊張計測方法。
【請求項7】
前記正常な筋電位に関する情報は、発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値の情報を含み、
前記推定筋電位は、前記発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値であり、
前記異常筋緊張検出ステップは、前記筋電位計測ステップによって計測された前記実測筋電位が、前記推定筋電位である前記発生すべき正常な筋電位の振幅の極大値を超えた場合に、筋緊張の異常を検出することを特徴とする請求項5または6に記載の筋緊張計測方法。
【請求項8】
前記姿勢・動作情報取得ステップおよび前記姿勢・動作情報判別ステップは、加速度・角速度センサ、または、モーションキャプチャを用いることを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1項に記載の筋緊張計測方法。
【請求項9】
コンピューターに、
被計測者の身体で発生した筋電位を計測する筋電位計測ステップと、
前記被計測者の姿勢および/または動作の情報である姿勢・動作情報を取得する姿勢・動作情報取得ステップと、
前記姿勢・動作情報により、前記被計測者がどのような姿勢および/または動作であるかを判別する姿勢・動作情報判別ステップと、
予め記憶された、被計測者が特定の姿勢および/または動作をとり、身体の特定の部位の筋電位を計測した場合における、発生すべき正常な筋電位に関する情報から、前記姿勢・動作情報判別ステップにより判別された前記被計測者の姿勢および/または動作において、発生すべき筋電位を推定する筋電位推定ステップと、
前記筋電位計測ステップによって計測された実測筋電位と、その同時間における前記筋電位推定ステップによって推定された発生すべき推定筋電位とを比較することによって、前記被計測者の筋緊張の異常を検出する異常筋緊張検出ステップと、
を実行させることを特徴とする筋緊張計測プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−103914(P2011−103914A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258946(P2009−258946)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】