説明

筋肉誘導前駆体組成物を利用した骨格筋の強化およびその処置

本発明の目的は、移植後長期間生存性を示す新規な筋肉誘導前駆細胞(MDC)およびMDC組成物を提供することである。本発明のMDCおよびMDCを含有する組成物は、早期前駆筋肉細胞、即ちデスミン、M−カドヘリン、MyoD、ミオゲニン、CD34、およびBcl−2を包含するがこれらに限定されない前駆細胞マーカーを発現する筋肉誘導幹細胞を含む。さらにまた、これらの早期前駆筋肉細胞はFlk−1、Sca−1、MNF、およびc−met細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kit細胞マーカーは発現しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筋肉誘導前駆細胞(MDC)およびMDCの組成物ならびに身体組織、特に骨格筋の強化におけるその使用に関する。特に本発明は、骨格筋内への導入後長期間の生存を示す筋肉誘導前駆細胞、MDCを単離する方法、およびヒトまたは動物の骨格筋の強化のためにMDC含有組成物を使用する方法に関する。本発明はまた、美容上または機能上の状態、例えば限定しないが、骨格筋の脆弱化、筋ジストロフィー、筋萎縮症、痙性、ミオクローヌスおよび筋肉痛の治療のための筋肉誘導前駆細胞の新規な使用に関する。本発明はまた、平均以上の骨格筋の質量を必要とする運動家または他の生物における骨格筋の質量の増大のためのMDCの新規な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
筋芽細胞、即ち筋線維の前駆体は、単核性の筋細胞であり、これが融合して有糸分裂後の多核性の筋管を形成し、生物活性蛋白の長期の発現および送達を可能とする(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。
【0003】
培養された筋芽細胞は、幹細胞の自己再生特性の一部を示す細胞のサブ集団を含有している(非特許文献6)。このような細胞は融合して筋管を形成することができず、分離して培養しなければ分裂しない(A.Baroffio等、非特許文献6)。筋芽細胞の移植の試験(後述参照)は、移植細胞の大半が急速に死滅するが、一部少数が生存して新しい筋肉の形成を媒介することを示している(非特許文献7)。この一部少数の細胞は区別可能な挙動、例えば組織培養物中での緩徐な成長、および移植後の急速な成長を呈し、これらの細胞が筋芽細胞幹細胞である可能性を示している(J.R.Beuchamp等、非特許文献7)。
【0004】
筋芽細胞は、種々の筋肉および非筋肉関連の障害の治療における遺伝子療法のためのベヒクルとして使用されている。例えば、遺伝子的に修飾されたか、または未修飾の筋芽細胞の移植は、デュシェーヌ筋ジストロフィーの治療のために使用されている(非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。さらにまた、筋芽細胞は1型糖尿病の治療のためのプロインスリン(非特許文献14)、B型血友病の治療のための第IX因子(非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18)、アデノシンデアミナーゼ不全症候群の治療のためのアデノシンデアミナーゼ(非特許文献19)、慢性貧血の治療のためのエリスロポエチン(非特許文献20;非特許文献21)、および成長遅延の治療のためのヒト成長ホルモン(非特許文献22)を産生するように遺伝子操作されている。
【0005】
筋芽細胞は、参照により本明細書に援用されるLaw等への特許文献1、Blau等への特許文献2、およびChancellor等による特許文献3に開示されている通り、筋肉組織の損傷または疾患の治療のためにも使用されている。さらにまた、筋芽細胞移植は心筋の機能不全の修復のためにも使用されている(非特許文献23;非特許文献24;非特許文献25)。
【0006】
上記にも関わらず、主な筋芽細胞誘導治療は、遊走および/または貪食作用のために移植後の細胞の低い生存率を伴っている。この問題を回避するために、参照により本明細書に援用されるAtala等の特許文献4は、アルギネートのような液体ポリマー中に懸濁された筋芽細胞の使用を開示している。ポリマー溶液は、筋芽細胞が注射後に遊走および/または貪食作用を起こすことを防止するマトリックスとして作用する。しかしながらポリマー溶液は、上記した生物ポリマーと同様の問題を呈する。さらにまた、Atalaの特許は他の組織を除く筋肉組織のみにおける筋芽細胞の使用に限定されている。
【0007】
このように、長時間持続し、広範な宿主組織と適合し、移植部位を包囲する組織の炎症、瘢痕形成、および/または強直を最小限とする他の異なる組織強化物質が必要とされている。したがって、本発明の筋肉誘導前駆細胞(MDC)含有組成物は、骨格筋を強化するための改善された新規な物質として提供される。さらに、移植後長期間生存性を示す筋肉誘導前駆細胞組成物を製造する方法、ならびに、種々の美容的および/または機能的な欠陥、例えば限定しないが骨格筋の脆弱化、筋ジストロフィー、筋萎縮症、痙性、ミオクローヌスおよび筋肉痛を治療するためにMDCおよびMDCを含有する組成物を利用する方法を提供する。同様に、平均以上の骨格筋の質量を必要とする運動家または他の生物における骨格筋の質量の増大のためにMDCおよびMDCを含有する組成物を使用する方法を提供する。
【0008】
非筋肉組織の強化のために筋芽細胞を使用する従来の試みは功を奏していないことは明らかである(Atalaへの特許文献4)。したがって、本明細書に開示した所見は、本発明の筋肉誘導前駆細胞が非筋肉組織、例えば骨格筋組織内に良好に移植可能であり、長期の生存を呈することを示していることから、予測されなかったものである。その結果、MDCおよびMDCを含有する組成物は、骨格筋生成のための一般的な強化用物質として使用できる。さらにまた、本発明の筋肉誘導前駆細胞および組成物は自系源から誘導できるため、宿主における免疫学的な合併症、例えば強化用物質の再吸収、ならびに移植部位を包囲する組織の炎症および/または瘢痕形成の危険性は低下している。
【0009】
間葉幹細胞は筋肉、骨格筋、軟骨等を包含する身体の種々の結合組織に存在する(非特許文献26;非特許文献27)が、間葉という用語は、筋肉からではなく骨格筋の骨髄から精製された幹細胞のクラスを指すために歴史的に使用されてきた。このように、間葉幹細胞は本発明の筋肉誘導前駆細胞とは区別可能である。さらにまた、間葉細胞は、本明細書に記載した筋肉誘導前駆細胞により発現されるCD34細胞マーカーを発現しない(非特許文献28)。
【0010】
既知組成物および方法に関連している不都合な点および問題点の本明細書における記載は、本文書に記載した実施形態の範囲をそれのみに限定する意図はない。実際、特定の実施形態は、そのように記載された不都合な点または問題点に煩わされることなく1つ以上の既知組成物、化合物、または方法を包含してよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,130,141号明細書
【特許文献2】米国特許第5,538,722号明細書
【特許文献3】米国特許第6,866,842号明細書
【特許文献4】米国特許第5,667,778号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T.A.Partridge and K.E.Davies,1995,Brit.Med.Bulletin 51:123〜137
【非特許文献2】J.Dhawan等、1992,Science254:1509〜12
【非特許文献3】A.D.Grinnell,1994,Myology 第2版 A.G.Engel and C.F.Armstrong,McGraw−Hill,Inc.,303〜304
【非特許文献4】S.Jiao and J.A.Wolff,1992,Brain Research 575:143〜7
【非特許文献5】H.Vandenburgh,1996,Human Gene Therapy7:2195〜2200
【非特許文献6】A.Baroffio等、1996,Differentiation 60:47〜57
【非特許文献7】J.R.Beuchamp等、1999,J.Cell Biol.144:1113〜1122
【非特許文献8】E.Gussoni等、1992,Nature,356:435〜8
【非特許文献9】J.Huard等、1992,Muscle&Nerve,15:550〜60
【非特許文献10】G.Karpati等、1993,Ann.Neurol.,34:8〜17
【非特許文献11】J.P.Tremblay等、1993,Cell Transplantation,2:99〜112
【非特許文献12】P.A.Moisset等、1998,Biochem.Biophys.Res.Commun.247:94〜9
【非特許文献13】P.A.Moisset等、1998,Gene Ther.5:1340〜46
【非特許文献14】L.Gros等、1999,Hum.Gen.Ther.10:1207〜17
【非特許文献15】M.Roman等、1992,Somat.Cell.Mol.Genet.18:247〜58
【非特許文献16】S.N.Yao等、1994,Gen.Ther.1:99〜107
【非特許文献17】J.M.Wang等、1997,Blood 90:1075〜82
【非特許文献18】G.Hortelano等、1999,Hum.Gene Ther.10:1281〜8
【非特許文献19】C.M.Lynch等、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:1138〜42
【非特許文献20】E.Regulier等、1998,Gene Ther.5:1014〜22
【非特許文献21】B.Dalle等、1999,Gene Ther.6:157〜61
【非特許文献22】K.Anwer等、1998,Hum.Gen.Ther.9:659〜70
【非特許文献23】C.E.Murry等、1996,J.Clin.Invest.98:2512〜23
【非特許文献24】B.Z.Atkins等、1999,Ann.Thorac.Surg.67:124〜129
【非特許文献25】B.Z.Atkins等、1999,J.Heart Lung Transplant.18:1173〜80
【非特許文献26】H.E.Young等、1993,In Vitro Cell Dev.Biol.29A:723〜736
【非特許文献27】H.E.Young等、1995,Dev.Dynam.202:137〜144
【非特許文献28】M.F.Pittenger等、1999,Science284:143〜147
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
本発明の目的は、移植後長期間生存性を示す新規な筋肉誘導前駆細胞(MDC)およびMDC組成物を提供することである。本発明のMDCおよびMDCを含有する組成物は、早期前駆筋肉細胞、即ちデスミン、M−カドヘリン、MyoD、ミオゲニン、CD34、およびBcl−2を包含するがこれらに限定されない前駆細胞マーカーを発現する筋肉誘導幹細胞を含む。さらにまた、これらの早期前駆筋肉細胞はFlk−1、Sca−1、MNF、およびc−met細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kit細胞マーカーは発現しない。
【0014】
本発明の別の目的は、出発筋肉細胞集団から筋肉誘導前駆細胞を単離して富化するための方法を提供することである。この方法は、軟組織の部位内への移植または導入後長期間の生存能力を有するMDCの富化をもたらす。本発明によるMDC集団はデスミン、M−カドヘリン、MyoD、ミオゲニン、CD34、およびBcl−2を包含するがこれらに限定されない前駆細胞マーカーを発現する細胞が特に富化されている。このMDC集団はまた、Flk−1、Sca−1、MNF、およびc−met細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kit細胞マーカーは発現しない。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、移植のためのポリマー担体または特別な培養基を必要としない、骨格筋を包含する筋肉組織の強化のためのMDCおよびMDCを含む組成物を使用する方法を提供することである。そのような方法は例えば組織の表面の内部または上部への直接の注射によるか、または組成物の全身分布による骨格筋への導入によるMDC組成物の投与を包含する。
【0016】
本発明のさらに別の目的は傷害、創傷、手術、外傷、非外傷、または裂溝、開口部、陥没部、創傷等をもたらす他の処置の後の、骨格筋を強化する方法を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は化学物質、成長培地、および/または遺伝子操作の使用を介して修飾されるMDCおよびMDCを含む組成物を提供することである。そのようなMDCおよびその組成物は、生物学的化合物の製造および送達および種々の疾患、状態、傷害、または病気の治療のために有用な化学的または遺伝子的に修飾された細胞を含む。
【0018】
本発明の別の目的は、化学物質、生育培地、および/または遺伝子操作の使用を介して修飾されたMDCおよびMDCを含む組成物を提供することである。そのようなMDCおよびその組成物は、生物学的化合物の製造および送達および種々の疾患、状態、傷害、または病気の治療のために有用な化学的または遺伝子敵に修飾された細胞を含む。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、MDCおよびMDCを含む組成物を含む医薬組成物を提供することである。医薬組成物は単離されたMDCを含む。このMDCはその後、単離後の細胞培養により増殖してよい。本実施形態の1つの態様において、これらのMDCは医薬組成物を必要とする被験体への送達の前に凍結される。
【0020】
本発明はまた、組成物および単一のプレーティング操作法を用いながらMDCの単離を行う方法を提供する。MDCは骨格筋の生検から単離される。1つの実施形態において、生検から得られる骨格筋は1〜6日間保存してよい。本実施形態の1つの態様において、生検由来の骨格筋は4℃で保存される。細胞を粉砕し、コラゲナーゼ、ジスパーゼ、別の酵素または酵素の組み合わせを用いて消化する。細胞から酵素を洗浄した後、細胞を約30〜約120分間培養基中フラスコ内で培養する。この期間、「急速接着細胞」はフラスコまたは容器の壁部に付着するのに対し、「緩徐接着細胞」即ちMDCは懸濁液中に残存する。「緩徐接着細胞」を第2のフラスコまたは容器に移し、そこで1〜3日間培養する。この第2の期間、「緩徐接着細胞」即ちMDCは第2のフラスコまたは容器の壁部に付着する。
【0021】
本発明の別の実施形態においては、これらのMDCを任意の数量の細胞にまで増殖させる。本実施形態の好ましい態様において、細胞を新しい培養基中、約10〜20日間増殖させる。より好ましくは、細胞を17日間増殖させる。
【0022】
MDCは増殖または非増殖に関わらず、輸送のために温存するか、または使用前の期間保存してよい。1つの実施形態において、MDCは凍結される。好ましくは、MDCは−20〜−90℃で凍結される。より好ましくは、MDCは約−80℃で凍結される。この凍結MDCは医薬組成物として使用される。
【0023】
凍結されるか医薬組成物として温存されるか、またはそのまま使用されるかのいずれかで、MDCを多くの骨格筋変性病理状態を治療するために使用してよい。この状態は例えば限定しないが、骨格筋の脆弱化、筋ジストロフィー、筋萎縮症、痙性、ミオクローヌスおよび筋肉痛を包含する。凍結されるか医薬組成物として温存されるか、またはそのまま使用されるかのいずれかで、MDCを平均以上の骨格筋の質量を必要とする運動家または他の生物における骨格筋の質量の増大のために使用してよい。
【0024】
追加的な目的および本発明により得られる利点は、以下に記載する詳細な説明および実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
特許または特許出願ファイルはカラーで行われた写真複写少なくとも1つを含有する。カラー写真複写による本特許または特許出願のコピーは、申請および必要料金の支払いにより、米国特許庁から提供されることになる。
【0026】
添付した図面はその種々の態様の明確化を介して本発明をさらに説明し、かつその理解を容易にするために提示している。
【図1】図1Aおよび1Bは、ヒトジストロフィンと共にマウス筋肉に注射されたヒトMDC(hMDC)および融合したヒトおよびマウスの筋肉細胞におけるキメラ形成性を示すために染色したマウスY染色体を示している。
【図2】図2は、hMDCを注射したマウスにおけるジストロフィン陽性線維のパーセンテージを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ヒトMDCおよびそのような細胞を使用することにより、骨格筋組織を形成して損傷した骨格筋を修復または骨格筋の体積および/もしくは強度を野生型レベルより高値に上昇させる方法を提供する。本発明はさらに、骨格筋の障害、例えば限定しないが骨格筋の脆弱化、筋ジストロフィー、筋萎縮症、痙性、ミオクローヌスおよび筋肉痛を治療する方法を提供する。成人組織からのヒト筋肉誘導細胞(MDC)の単離によって、これらの細胞を投与されたヒト被験体内で増大した骨格筋密度および骨格筋体積を達成することができる。
【0028】
筋肉誘導細胞および組成物
本発明は身体組織、好ましくは骨格筋内部への移植の後に長期の生存率を示す初期前駆細胞(本明細書においては筋肉誘導前駆細胞または筋肉誘導幹細胞とも称する)よりなるMDCを提供する。本発明のMDCを得るためには、筋肉の体外移植組織、好ましくは骨格筋を、動物ドナー、好ましくはヒトを包含する哺乳類より得る。この体外移植組織は筋肉前駆細胞の「残余」を包含する構造的および機能的なシンシチウムとして機能する(T.A.Partridge等、1978,Nature 73:306〜8;B.H.Lipton等、1979,Science205:12924)。
【0029】
一次筋肉組織から単離した細胞は線維芽細胞、筋芽細胞、脂肪細胞、造血前駆細胞および筋肉誘導前駆細胞の混合物を含有する。筋肉誘導集団の前駆細胞は、参照により本明細書に援用されるChancellor等への米国特許6,866,842号に記載のようなコラーゲンコーティング組織フラスコ上の一次筋肉細胞の示差的な接着特性を用いながら富化することができる。接着が緩徐である細胞は形態学的に丸型であり、高レベルのデスミンを発現し、融合して多核の筋管に分化する能力を有している(Chancellor等の米国特許6,866,842号)。これらの細胞のサブ集団はアルカリホスファターゼ、副甲状腺ホルモン依存性3’,5’−cAMP、ならびに骨形成性および筋原性の系列の他のマーカーを高レベルで発現することによりインビトロで組み換えヒト骨格筋形態形成タンパク質2(rhBMP−2)に応答することがわかっている(Chancellor等への米国特許6,866,842号;T.Katagiri等、1994,J.Cell Biol.,127:1755〜1766)。
【0030】
本発明の1つの実施形態においては、予備プレーティング操作を用いることにより緩徐接着細胞(MDC)から急速接着細胞に分化させてよい。本発明によれば、急速接着MDC(PP1−4)および緩徐接着丸型MDC(PP6)の集団を単離し、骨格筋体外移植組織から富化して免疫組織化学的方法を用いながら種々のマーカーの発現に関して試験することにより、緩徐接着細胞のうちの多能性細胞の存在を調べた(Chancellor等への米国特許6,866,842号の実施例1)。本明細書の実施例1の表1に示す通り、PP6細胞は筋原性のマーカー、例えばデスミン、MyoD、およびミオゲニンを発現していた。PP6細胞はまた、筋肉形成の早期の段階において発現される2つの遺伝子であるc−metおよびMNFも発現していた(J.B.Miller等、1999,Curr.Top.Dev.Biol.43:191〜219;表3参照)。PP6では、衛星細胞特異的マーカーであるM−カドヘリンを発現する細胞のパーセンテージはより低値であった(A.Irintchev等、1994,Development Dynamics 199:326〜337)が、筋肉形成の早期の段階の細胞に限定されるマーカーであるBcl−2を発現する細胞のパーセンテージはより高値であった(J.A.Dominov等、1998,J.Cell Biol.142:537〜544)。PP6細胞はまた、ヒト造血前駆細胞、並びに骨格筋骨髄中の間質細胞前駆体で同定されたマーカーであるCD34を発現している(R.G.Andrews等、1986,Blood67:842〜845;C.I.Civin等、1984,J.Immunol.133:157〜165;L.Fina等、1990,Blood75:2417〜2426;P.J.Simmons等、1991,Blood78:2848〜2853;表3参照)。PP6細胞はまた、幹細胞様特徴を有する造血細胞のマーカーとして最近同定されたヒトKDR遺伝子のマウス相同体であるFlk−1を発現していた(B.L.Ziegler等、1999,Science285:1553〜1558;表3参照)。同様に、PP6細胞は幹細胞様特徴を有する造血細胞に存在するマーカーであるSca−1を発現していた(M.van de Rijn等、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4634〜8;M.Osawa等、1996,J.Immunol.156:3207〜14;表3参照)。しかしながら、PP6細胞はCD45またはc−Kit造血幹細胞マーカーを発現していなかった(L K.Ashman,1999,Int.J.Biochem.Cell.Biol.31:1037〜51;G.A.Koretzky,1993,FASEB J.7:420〜426にお掲載;表3参照)。
【0031】
本発明の1つの実施形態において、本明細書に記載した特徴を有する筋肉誘導前駆細胞のPP6集団が提供される。これらの筋肉誘導前駆細胞はデスミン、CD34、およびBcl−2細胞マーカーを発現する。本発明によれば、PP6細胞を本明細書に記載した技術(実施例1)で単離することにより、移植後長期間の生存性を有する筋肉誘導前駆細胞の集団を得る。PP6筋肉誘導前駆細胞集団は、例えば限定しないがデスミン、CD34、およびBcl−2を包含する前駆細胞マーカーを発現する細胞の多大なパーセンテージを含んでいる。さらにまた、PP6細胞はFlk−1およびSca−1細胞マーカーを発現するが、CD45やc−Kitマーカーは発現しない。好ましくは、PP6細胞の95%超がデスミン、Sca−1およびFlk−1マーカーを発現するが、CD45やc−Kitマーカーは発現しない。PP6細胞は、最後のプレーティングの後約1日または約24時間以内に使用することが好ましい。
【0032】
好ましい実施形態においては、急速接着細胞および緩徐接着細胞(MDC)は単一プレーティング技術を用いて相互から分離される。1つのそのような技術を実施例2に示す。先ず、細胞を骨格筋の生検試料から準備する。生検試料は細胞約100mgを含有すればよい。約50mg〜約500mgのサイズ範囲の生検試料を本発明の予備プレーティング法および単一プレーティング法の両方に従って使用する。さらに、50、100、110、120、130、140、150、200、250、300、400および500mgの生検試料を本発明の予備プレーティング法および単一プレーティング法の両方に従って使用する。
【0033】
本発明の好ましい実施形態においては、次に生検試料由来の組織を1〜7日間保存する。この保存は概ね室温〜約4℃の温度で行う。この待機期間により生検された骨格筋の組織にストレスを与える。このストレスは単一プレーティング技術を用いたMDCの単離には必要ではないが、待機期間を使用すると一般的にMDCのより高値の収率が得られる。
【0034】
好ましい実施形態によれば、生検試料由来の組織を粉砕し、遠心分離する。ペレットを再懸濁し、消化酵素を用いて消化する。使用し得る酵素は、例えば限定しないがコラゲナーゼ、ジスパーゼまたはこれらの酵素の組み合わせを包含する。消化後、酵素を細胞から洗浄除去する。細胞は急速接着細胞の単離用の培養基中のフラスコに移す。多くの培養基を使用してよい。特に好ましい培養基はCambrex内皮成長培地を包含する内皮細胞の培養のために設計されたものを包含する。この培地はウシ胎児血清、IGF−1、bFGF、VEGF、EGF、ヒドロコルチゾン、ヘパリン、および/またはアスコルビン酸を包含する他の成分が補給されていてよい。単一プレーティング技術において使用し得る他の培地は、InCell M310F培地を包含する。この培地は上記した通り補給されているか、または未補給のまま使用してよい。
【0035】
急速接着細胞の単離のための工程は約30〜約120分間、フラスコ中で培養することを必要とする場合がある。急速接着細胞は30、40、50、60、70、80、90、100、110、または120分内にフラスコに接着する。細胞が接着した後、緩徐接着細胞は、急速接着細胞が付着しているフラスコから培養基を取り出すことにより急速接着細胞から分離される。
【0036】
このフラスコから取り出した培養基を、次に、第2のフラスコに移す。細胞を遠心分離し、培養基中に再懸濁した後に、第2のフラスコに移す。細胞をこの第2のフラスコ中で1〜3日間培養する。好ましくは、細胞は2日間培養する。この期間中、緩徐接着細胞(MDC)はフラスコに接着する。MDCが接着した後、MDCの増殖を促進するために培養基を取り出し、新しい培養基を添加する。MDCは約10〜約20日間培養することによりその数を増やしてよい。MDCは10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20日培養することによりその数を増やしてよい。好ましくは、MDCは17日間の増殖培養に付す。
【0037】
予備プレーティング法および単一プレーティング法の代替法として、本発明のMDCは、MDCにより発現される細胞表面マーカー1つ以上に対して標識された抗体を用いる蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)により単離できる(C.Webster等、1988,Exp.Cell.Res.174:252〜65;J.R.Blanton等、1999,Muscle Nerve22:43〜50)。例えばFACS分析は、宿主組織内に導入された場合に、長期の生存性を示すPP6様細胞の集団を選択するためにCD34、Flk−1、Sca−1、および/または本明細書に記載した他の細胞表面マーカーに特異的に結合する標識された抗体を用いて実施できる。本発明によりまた包含されるものは、異なる細胞マーカータンパク質の抗体検出のための、例えばフルオレセインまたはローダミンのような蛍光検出標識1つ以上の使用である。
【0038】
上記した、または当該分野で知られた任意のMDC単離方法を用いて、輸送すべき、またはある期間中は使用されないMDCを当該分野で知られた任意の方法を用いて温存してよい。例えば、単離されたMDCは約−25〜約−90℃の範囲の温度で凍結してよい。好ましくは、MDCは遅延した使用または輸送のためにドライアイスで約−80℃にて凍結する。凍結は当該分野で知られた任意の低温保存媒体中で行ってよい。
【0039】
筋肉誘導細胞に基づく治療
本発明の1つの実施形態において、MDCは骨格筋源から単離され、目的の筋肉もしくは非筋肉の軟組織内に、または骨格筋内に導入または移植される。好都合には、本発明のMDCは単離され、移植後長期の生存を示す前駆細胞を多数含有するように富化される。さらにまた、本発明の筋肉誘導前駆細胞はデスミン、CD34、およびBcl−2のような特徴的な細胞マーカーを多数発現する。さらにまた、本発明の筋肉誘導前駆細胞はSca−1、およびFlk−1細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kit細胞マーカーを発現しない(実施例1参照)。
【0040】
本発明のMDCおよびMDCを含む組成物は、骨格筋の強化を介して種々の美容上または機能上の状態(例えば欠陥)を修復、治療、または緩解するために使用できる。特に、そのような組成物は骨格筋の障害を治療するために使用できる。多数回および連続したMDC投与もまた本発明に包含される。
【0041】
MDCに基づく治療に関しては、骨格筋体外移植組織は好ましくは自系または異系のヒト源または動物源から得られる。自系の動物源またはヒト源がより好ましい。次にMDC組成物を本明細書に記載する通り調製して単離する。ヒトまたは動物のレシピエント内に本発明に従ってMDCおよび/またはMDCを含む組成物を導入または移植するために、単核筋肉細胞の懸濁液を調製する。そのような懸濁液は生理学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤中に本発明の筋肉誘導前駆細胞の濃縮物を含有する。例えば、被験体に投与するためのMDCの懸濁液は、ウシ胎児血清の代わりに被験体の血清を含有するように変性された完全培地の滅菌溶液中に10〜10細胞/mlを含むことができる。あるいは、MDC懸濁液は無血清の滅菌溶液、例えば低温保存溶液(Celox Laboratories,St.Paul,Minn.)であることができる。次にMDC懸濁液を例えば注射を介してドナー組織の1つ以上の部位内に導入できる。
【0042】
記載した細胞は、生理学的に許容される担体、賦形剤、もしくは希釈剤を含有する製薬上または生理学上許容しうる調製品または組成物として投与し、ヒトまたは非ヒト動物を包含する目的のレシピエント生物の組織に投与できる。MDC含有組成物は、滅菌生理食塩水または他の生理学的に許容される注射用の水性液体のような適当な液体または溶液中に細胞を再懸濁することにより調製できる。当業者は通常、そのような組成物中に使用される成分の量を決定できる。
【0043】
MDCまたはその組成物は、吸収性または接着性の物質、例えばコラーゲンスポンジマトリックス上へのMDC懸濁液の添加、および目的の部位の内部または上部へのMDC含有物質の挿入により投与できる。あるいは、MDCは皮下、静脈内、筋肉内、および胸骨内を包含する非経口経路の注射により投与できる。他の投与様式は、例えば限定しないが鼻内、髄腔内、皮内、経皮、経腸、および舌下を包含する。本発明の1つの実施形態において、MDCの投与は内視鏡手術により媒介できる。
【0044】
注射投与の場合、組成物は滅菌された溶液もしくは懸濁液として存在するか、または製薬上および生理学上許容しうる水性もしくは油性のベヒクル中に再懸濁でき、これは保存料、安定化剤、および溶液または懸濁液をレシピエントの体液(即ち血液)と等張にするための物質を含有してよい。使用に適する賦形剤の非限定的な例は、水、リン酸塩緩衝食塩水pH7.4、0.15M塩化ナトリウム水溶液、デキストロース、グリセロール、希薄エタノール等およびこれらの混合物を包含する。例示される安定化剤はポリエチレングリコール、タンパク質、糖類、アミノ酸、無機酸、および有機酸であり、これらは単独または混合物として使用してよい。使用する量並びに投与経路は個々に決定され、当業者に知られた同様のタイプの用途または適応において使用されている量に相当する。
【0045】
移植の結果を最適化するためには、ドナーとレシピエントの間の可能な限り最も緊密な免疫学的な一致が望ましい。自系源を使用できない場合は、ドナーおよびレシピエントのクラスIおよびクラスIIの組織適合性抗原を分析することにより使用できる最も緊密な一致を決定できる。これにより免疫拒絶が最小限化または排除され、免疫抑制剤または免疫調節剤による治療の必要性を低減できる。所望により免疫抑制剤または免疫調節剤による治療を移植操作の前、最中、および/または後に開始できる。例えば、シクロスポリンAまたは他の免疫抑制剤を移植片レシピエントに投与できる。免疫学的耐容性もまた当該分野で知られた代替法による移植の前に誘導してよい(D.J.Watt等、1984,Clin.Exp.Immunol.55:419;D.Faustman等、1991,Science252:1701)。
【0046】
本発明と合致して、MDCは骨格筋を包含する身体組織に投与できる。MDC懸濁液中の細胞の数および投与の様式は治療すべき部位および状態に応じて変動してよい。約1.0×10〜約1×10のMDCを本発明に従って投与してよい。非限定的な例として、本発明によれば、約0.5〜2.0×10MDCを、頭蓋欠陥の約5mm領域の治療のためにコラーゲンスポンジマトリックスを介して投与する(実施例3参照)。
【0047】
骨格筋の強化または骨格筋障害の治療のためには、MDCを上記した通り調製し、例えば骨格筋上、内部、または周囲への注射を介して投与することにより、追加的な骨格筋の強度および/または体積を得ることができる。導入されるMDCの数は必要に応じて骨格筋の密度および/または骨格筋の体積の変動する量が与えられるように調節されるもしくは骨格筋の体積の増強における本発明のMDCの使用を包含する。骨格筋の障害は、例えば限定しないが骨格筋の脆弱化、筋ジストロフィー、筋萎縮症、痙性、ミオクローヌスおよび筋肉痛を包含する。本発明はまた、平均を超えた骨格筋の質量を必要とする運動家または他の生物における骨格筋の質量の増大のためのMDCの新規な使用に関する。
【0048】
遺伝子操作された筋肉誘導細胞
本発明の別の態様において、本発明のMDCは活性な生物学的分子1つ以上をコードする核酸配列を含有し、かつその生物学的分子、例えばタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ホルモン、代謝産物、薬剤、酵素等を発現するために、遺伝子操作してよい。そのようなMDCはヒトを包含するレシピエントに対して組織適合性(自系)であるか非組織適合性(同種異系)であってよい。この細胞は、種々の治療のため、例えば限定しないが骨格筋の脆弱化、筋ジストロフィー、筋萎縮症、痙性、ミオクローヌスおよび筋肉痛を包含する骨格筋の疾患ならびに病理状態の治療のための長期間の局所送達系として機能できる。
【0049】
本発明で好ましいものは、レシピエントに対して異物と認識されない、自系の筋肉誘導前駆細胞である。この点に関し、細胞媒介の遺伝子の転移または送達のために使用されるMDCは、望ましくは主要組織適合性遺伝子座(ヒトにおけるMHCまたはHLA)に関して一致するものとなる。そのようなMHCまたはHLA一致細胞は自系である。或いは、細胞は同じか同様のMHCまたはHLA抗原プロファイルを有する個人に由来するものであってよい。患者はまた、同種異系のMHC抗原に対して耐容性付与されていてよい。本発明はまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許5,538,772号に記載されているようなMHCクラスIおよび/またはIIを欠いている細胞の使用を包含する。
【0050】
MDCは当業者に知られた種々の分子技術および方法、例えばトランスフェクション、感染、またはトランスダクションにより遺伝子操作してよい。本明細書において使用するトランスダクションは一般的には細胞内へのウィルス性ベクターまたは非ウィルス性ベクターの導入を介して外来性または非相同の遺伝子を含有するように遺伝子操作されている細胞を指す。トランスフェクションは、より一般的にプラスミドまたは非ウィルス性のベクター中に保有されている外来性遺伝子を含有するように遺伝子操作されている細胞を指す。MDCは異なるベクターによりトランスフェクトまたは形質導入されており、そのため、筋肉内に発現産物を転移するための遺伝子送達ベヒクルとして機能できる。
【0051】
ウィルスベクターが好ましいが、当業者は、所望のタンパク質またはポリペプチド、サイトカイン等をコードする核酸配列を含有するための細胞の遺伝子操作が当該分野で知られた方法、例えば米国特許5,538,722号に記載の方法、例えば融合、トランスフェクション、リポソームの使用により媒介されるリポフェクション、エレクトロポレーション、DEAE−デキストランまたはリン酸カルシウムによる沈殿、核酸コーティング粒子(例えば金粒子)を用いた粒子衝突(バイオリスティックス)、マイクロインジェクション等により実施してよいことを理解されたい。
【0052】
生物学的に活性な産物の発現のために、筋肉細胞内に非相同(即ち外来性)核酸(DNAまたはRNA)を導入するためのベクターは当該分野で良く知られている。そのようなベクターはプロモーター配列、好ましくは、細胞特異的であり、発現すべき配列の上流に位置しているプロモーターを保有する。ベクターはまた、場合により、ベクター内に含有される核酸配列の良好なトランスフェクションおよび発現の指標としての発現に関する発現可能なマーカー遺伝子1つ以上を含有してよい。
【0053】
本発明の筋肉誘導細胞のトランスフェクションまたは感染のためのベヒクルまたはベクターコンストラクトの代表例は、複製欠損ウィルスベクター、DNAウィルスまたはRNAウィルス(レトロウィルス)ベクター、例えば限定しないが、アデノウィルス、単純疱疹ウィルスおよびアデノ関連ウィルスベクターを包含する。アデノ関連ウィルスベクターは1本鎖であり、細胞の核への核酸の多コピーの効率的送達を可能にする。好ましいものはアデノウィルスベクターである。ベクターは通常は任意の原核生物のDNAを実質的に含有しておらず、多くの異なる種類の機能的核酸配列を含んでよい。そのような機能的配列の例はポリヌクレオチド、例えばDNAまたはRNA、転写および翻訳の開始および終止の調節配列を含む配列、例えば筋肉細胞において活性であるプロモーター(例えば強力プロモーター、誘導プロモーター等)およびエンハンサーを包含する。、目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ポリヌクレオチド配列)であり、フランキング配列もまた部位指向性組み込みのために包含されてよい。一部の状況においては、5’−フランキング配列は相同組み換えを可能にすることにより、例えば転写のレベルを上昇または低下させるための誘導または非誘導性の転写をもたらすために転写開始領域の性質を変えることができる。
【0054】
一般的に、筋肉誘導前駆細胞により発現されることが望まれる核酸配列は、例えば筋肉誘導前駆細胞に対して非相同であり、所望のタンパク質またはポリペプチド産物をコードする、構造遺伝子、または遺伝子の機能的フラグメント、セグメントもしくは部分である。コードされ、かつ発現される産物は、細胞内、即ち細胞質、核、もしくは細胞内小器官内に保持されてよく、または、細胞により分泌されてもよい。分泌のためには、構造遺伝子内に存在する天然のシグナル配列を保持してもよく、または、構造遺伝子内に天然に存在しないシグナル配列を使用してよい。ポリペプチドまたはペプチドがより大型のタンパク質のフラグメントである場合、分泌およびプロセシング部位におけるプロセシングの際に所望のタンパク質が天然の配列を有するようになるようなシグナル配列が与えられてよい。本発明に従って使用するための目的の遺伝子の例は、細胞成長因子、細胞分化因子、細胞シグナリング因子およびプログラムされた細胞死因子をコードする遺伝子を包含する。特定の例は限定しないが、BMP−2(rhBMP−2)、IL−1Ra、第IX因子、およびコネキシン43をコードする遺伝子を包含する。
【0055】
上記した通り、ベクターコンストラクトを含有する細胞の選択のためにマーカーを存在させてよい。マーカーは誘導または非誘導遺伝子であってよく、一般的には、それぞれ誘導下、または誘導を行うことなく、陽性選択を可能にする。一般的に使用されているマーカー遺伝子の例は、ネオマイシン、ジヒドロフォレート還元酵素、グルタミン合成酵素等を包含する。
【0056】
使用されるベクターは一般的に、当業者により通常使用されている複製起点および宿主細胞における複製のために必要な他の遺伝子を包含する。一例として、複製起点および特定のウィルスによりコードされる複製に関連する任意のタンパク質を含む複製系は、コンストラクトの部分として包含されてよい。複製系は、複製に必要な産物をコードする遺伝子が最終的に筋肉誘導細胞を形質転換しないように選択しなければならない。そのような複製系は例えばG.Acsadi等、1994,Hum.Mol.Genet3:579〜584により記載される通り構築される複製欠損アデノウィルス、またエプスタインバールウィルスにより示される。複製欠損ベクター、特に複製欠損であるレトロウィルスベクターの例は、Price等、1987,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:156、およびSanes等、1986,EMBO J.,5:3133により記載されているBAGである。最終遺伝子コンストラクトは1つ以上の目的の遺伝子、例えば生物学的に活性な代謝分子をコードする遺伝子を含有してよいことを理解されたい。さらにまた、cDNA、合成により製造されたDNAまたは染色体DNAを、当業者に公知でかつ実施される方法およびプロトコルを用いながら使用してよい。
【0057】
所望により、感染性の複製欠損ウィルスベクターを使用することにより細胞のインビボ注射の前に細胞を遺伝子操作してよい。この点に関し、ベクターはアンホトロピックパッケージングのためにレトロウィルスプロデューサー細胞内に導入してよい。筋肉誘導前駆細胞の隣接領域への天然の増殖によって、目的の部位内部または目的の部位における多数回の注射が不要になる。
【0058】
別の態様において、本発明は、MDC、例えば所望の遺伝子産物をコードする非相同遺伝子を含有するように操作されたアデノウィルスベクターを用いてウィルス的に形質導入されている早期前駆筋肉細胞の使用を介して、ヒトを包含するレシピエント哺乳類宿主の細胞および組織へのエクスビボの遺伝子送達を提供する。そのようなエクスビボの手順は、直接の遺伝子転移の手順よりも優れた効率的なウィルス遺伝子転移の利点を与える。エクスビボの操作法では筋肉組織の単離された細胞に由来する筋肉誘導前駆細胞を使用する。筋肉誘導前駆細胞源として機能する筋肉生検試料は、傷害部位より、または臨床医からより容易に得られる場合がある別の領域より得ることができる。
【0059】
本発明によれば、クローン単離株は、当該分野で知られた種々の操作法、例えば組織培養基中の限界希釈プレーティングを用いながら筋肉誘導前駆細胞(即ち単一プレーティング操作法を用いるPP6細胞または「緩徐接着」細胞)の集団から誘導できる。クローン単離株は単一の孤立性細胞を起源とする遺伝子的に同一の細胞を含む。さらにまた、クローン単離株は上記した通りFACS分析を使用し、その後限界希釈により1ウェル当たりの単細胞を達成し、クローン的に単離された細胞系統を樹立することにより誘導することができる。PP6細胞集団から誘導されたクローン単離株の例は、実施例1に記載するmc13である。好ましくは、MDCクローン単離株は、本発明の方法において、並びに1つ以上の生物学的に活性な分子の発現のための遺伝子操作のために、または遺伝子置換治療において、利用される。
【0060】
MDCを先ず所望の遺伝子産物をコードする非相同遺伝子を少なくとも1つを含有する操作されたウィルスベクターに感染させ、生理学的に許容される担体または賦形剤、例えば食塩水またはリン酸塩緩衝食塩水に懸濁し、次に宿主の適切な部位に投与する。本発明と合致して、MDCは上記した通り骨格筋を包含する身体組織に投与できる。所望の遺伝子産物は注射された細胞により発現され、これにより宿主内に遺伝子産物が導入される。これにより、導入され発現された遺伝子産物は宿主内で長期間生存する本発明のMDCにより長期間にわたって発現されるため、傷害、機能不全、または疾患を治療、修復または緩解するために利用され得る。
【0061】
筋芽細胞媒介遺伝子療法の動物モデル試験において、筋肉酵素欠損の部分的補正のために100mg筋肉当たり10個の筋芽細胞の移植が必要であった(J.E.Morgan等、1988,J.Neural.Sci.86:137;T.A.Partridge等、1989,Nature 337:176参照)。このデータから類推すると、70kgのヒトに対する遺伝子療法のためには生理学的に適合性のある培地中に懸濁された約1012MDCが筋肉組織に移植できることになる。本発明のMDCのこの数は、ヒト源由来の単一の100mg骨格筋生検試料から製造できる(後述参照)。特定の傷害部位の治療のために、傷害の所定の組織または部位内への遺伝子操作されたMDCの注射は、溶液または懸濁液中の細胞の治療有効量、好ましくは、生理学的に許容される培地中で、治療すべき組織の1cm当たり約10〜10細胞を含む。
【実施例】
【0062】
実施例1.予備プレーティング法によるMDCの富化、単離および分析
MDCは記載されている通り調製した(Chancellor等の米国特許6,866,842号)。筋肉の体外移植組織は多くの源、即ち、3週齢のmdx(ジストロフィー)マウス(C57BL/10ScSn mdx/mdx,Jackson Laboratories)、4〜6週齢の正常雌性SD(スプラーグドーリー)ラット、またはSCID(重度複合免疫不全)マウスの後肢から得た。動物源の各々に由来する筋肉組織を切開して骨があれば除き、粉砕してスラリーとした。次にスラリーを37℃において0.2%XI型コラゲナーゼ、ジスパーゼ(II等級、240単位)および0.1%トリプシンと共に1時間連続インキュベートすることにより消化した。得られた細胞懸濁液を18,20および22ゲージの針を通過させ、5分間3000rpmで遠心分離した。その後、細胞を生育培地(DMEMに10%ウシ胎児血清、10%ウマ血清、0.5%ニワトリ胚抽出液、および2%ペニシリン/ストレプトマイシンを補給したもの)中に懸濁した。次に細胞をコラーゲンコーティングフラスコ(Chancellor等の米国特許6,866,842号)中に予備プレーティングした。約1時間後、上澄みをフラスコから取り出し、新しいコラーゲンコーティングフラスコ内に再プレーティングした。この1時間のインキュベーション内で急速に接着した細胞は、大部分が線維芽細胞であった(上出のZ.Qu等;Chancellor等の米国特許6,866,842号)。細胞の30〜40%が各フラスコに接着した後に上澄みを取り出し、再プレーティングした。約5〜6回の連続プレーティングの後、培養物は小型丸型の細胞、即ちPP6細胞と命名されるものが富化されており、これを出発細胞集団から単離し、その後の試験に使用した。早期のプレーティングにおいて単離された接着細胞をプールし、PP1−4細胞と命名した。
【0063】
mdxPP1−4、mdxPP6、正常PP6、および線維芽細胞の集団を細胞マーカーの発現に関して免疫組織化学的分析により検査した。この分析の結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

mdxPP1−4、mdxPP6、正常PP6、および線維芽細胞は予備プレーティング技術により誘導し、免疫組織化学的分析により検査した。「−」は細胞の2%未満が発現を示したことを示し、「(−)」、「−/+」は細胞の5〜50%が発現を示したことを示し、「+/−」は細胞の約40〜80%が発現を示したことを示し、「+」は細胞の95%超が発現を示したことを示し、「nor」は正常細胞を示し、「na」は免疫組織化学的データが得られなかったことを示す。
【0065】
mdxおよび正常なマウスの両方が本アッセイにおいて試験した細胞マーカーの全ての同一な分布を示していたことを理解されたい。即ち、mdx突然変異の存在は、単離されたPP6筋肉細胞誘導集団の細胞マーカー発現に影響していない。
【0066】
MDCをDMEM(ダルベッコ変性イーグル培地)と10%FBS(ウシ胎児血清)、10%HS(ウマ血清)、0.5%ニワトリ胚抽出液、および1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を含有する増殖培地、または、DMEMに2%ウシ胎児血清および1%抗生物質溶液を補給したものを含有する融合培地中で生育させた。全ての培地材料はGibco Laboratories(Grand Island,N.Y.)から購入した。
【0067】
実施例2.単一プレーティング法によるMDCの富化、単離および分析
急速接着MDCおよび緩徐接着MDCの集団を哺乳類被験体の骨格筋から単離した。被験体はヒト、ラット、イヌまたは他の哺乳類であってよい。生検試料サイズは42〜247mgの範囲であった。
【0068】
骨格筋生検組織は即座に寒冷培地(硫酸ゲンタマイシン(100ng/mL、Roche)を補給したHYPOTHERMOSOL(登録商標)(BioLife))中に入れ、4℃で保存する。3〜7日の後、生検組織を保存場所から取り出し、生成を開始する。結合組織または非筋肉組織がある場合は、生検試料から切除する。単離のために使用する残存筋肉組織を計量する。組織をハンクス平衡塩溶液(HBSS)中で粉砕し、三角試験管に移し、遠心分離(2500×g、5分間)する。次にペレットを消化酵素溶液(Liberase Blendzyme4(0.4〜1.0U/mL,Roche))中に再懸濁する。消化酵素溶液2mLを生検組織100mg当たり使用し、回転プレート上37℃で30分間インキュベートする。次に試料を遠心分離(2500×g、5分間)する。ペレットを培養基中に再懸濁し、70μmの細胞ストレーナーを通過させる。本実施例に記載した操作法のために使用した培養基は、Cambrex内皮生育培地EGM−2基礎培地に、以下の成分、即ち(i.)10%(v/v)ウシ胎児血清、および(ii.)Cambrex EGM−2 SingleQuotキットであってインスリン成長因子−1(IGF−1)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、表皮成長因子(EGF)、ヒドロコルチゾン、ヘパリン、およびアスコルビン酸を含有するもの、を補給したものとした。次に濾過した細胞溶液をT25培養フラスコに移し、5%CO下に37℃で30〜120分インキュベートした。このフラスコに付着する細胞は「急速接着細胞」である。
【0069】
インキュベーションの後、細胞培養物の上澄みをT25フラスコから取り出し、15mLの三角試験管中に入れる。T25培養フラスコを加温した培養基2mLで濯ぎ、上記した15mLの三角試験管に移す。15mLの三角試験管を遠心分離(2500×g、5分間)する。ペレットを培養基に再懸濁し、新しいT25培養フラスコに移す。フラスコを5%CO下に37℃で約2日間インキュベートする(このフラスコに付着する細胞は「緩徐接着細胞」である)。インキュベーションの後、細胞培養上澄みを吸引し、新しい培養基をフラスコに添加する。次にフラスコをインキュベーターに戻し、増殖させる。標準的な培養継代をここから行うことにより、培養フラスコ中の細胞コンフルエンシーを50%未満に維持する。トリプシンEDTA(0.25%、Invitrogen)を用いて継代中フラスコから接着細胞を脱着させる。「緩徐接着細胞」の典型的な増殖が3700万細胞の平均総生存細胞数を達成するためには、平均で17日間を要する(生成を開始した日から起算)。
【0070】
所望の細胞数が達成された後、細胞をトリプシンEDTAを用いてフラスコから採取し、遠心分離(2500×g、5分間)する。ペレットをBSS−P溶液(ヒト血清アルブミン(2%v/v、Sera Care Life)を補給したHBSS)中に再懸濁し、計数する。次に細胞溶液を再度遠心分離(2500×g、5分間)し、低温保存培地(ヒト血清アルブミン(2%v/v、Sera Care Life Sciences)を補給したCryoStor(Biolife))を用いて所望の細胞濃度となるように再懸濁し、低温保存用の適切なバイアル中に充填する。低温バイアルは凍結容器内におき、−80℃の冷凍庫中に入れる。細胞を、等容量の生理食塩水で室温において凍結細胞懸濁液を解凍することにより投与し、直接注射する(その他の操作は行わない)。緩徐接着細胞集団の系列特徴は筋原性(87.4%CD56+、89.2%デスミン+)、内皮(0.0%CD31+)、造血系(0.3%CD45+)、および線維芽細胞(6.8%CD90+/CD56−)を示す。
【0071】
骨格筋生検組織の解離後、細胞の2画分を、培養フラスコへの急速または緩徐な接着に基づいて収集した。次に細胞を生育培地を用いた培養において増殖させ、次に1.5mL容のエッペンドルフ試験管の低温保存培地中に凍結した(15μL中3×10細胞)。対照群として、低温保存培地単独15μLを試験管内に入れた。これらの試験管を−80℃で注射時まで保存した。注射直前に、試験管を保存場所から取り出し、室温で解凍し、0.9%塩化ナトリウム溶液15μlに再懸濁した。次に得られた30μLの溶液を30ゲージ針を有する0.5ccインスリンシリンジ内に吸引した。手術および注射を行った試験者は、試験管の内容物に関して盲検状態とした。
【0072】
細胞数および生存性をGuavaフローサイトメーターおよびViacountアッセイキット(Guava)を用いながら計測した。CD56は、PEコンジュゲート抗CD56抗体(1:50、BD Pharmingen)およびPEコンジュゲートアイソタイプ対照モノクローナル抗体(1:50、BD Pharmingen)を用いながら、フローサイトメトリー(Guava)により計測した。デスミンは、モノクローナルデスミン抗体(1:100、Dako)およびアイソタイプ対照モノクローナル抗体(1:200、BD Pharmingen)を用いながら、パラホルムアルデヒド固定細胞(BD Pharmingen)に対するフローサイトメトリー(Guava)により計測した。蛍光標識は、Cy3−コンジュゲート抗マウスIgG抗体(1:250、Sigma)を用いながら実施した。工程間、細胞を透過性付与緩衝液(BD Pharmingen)で洗浄した。クレアチンキナーゼ(CK)アッセイに関しては、分化誘導培地中12穴プレート内の1ウェル当たり1×10細胞をプレーティングした。4〜6日後、細胞をトリプシン処理により採取し、遠心分離してペレット化した。細胞溶解上澄みは、CK Liqui−UVキット(Stanbio)を用いながらCK活性に関してアッセイした。
【0073】
実施例3.MDCを用いた骨格筋の強化
予備プレーティング技術を用いてヒト筋肉生検試料から単離したヒト筋肉誘導細胞(hMDC)の集団を試験することにより、hMDCがそのネズミ相応物と同様の筋原性特徴および再生特徴を有することを示した。
【0074】
方法
予備プレーティング技術:この技術は出願全体を通して、特に上記実施例1において開示している。
【0075】
単離および細胞培養:候補集団は予備プレーティング技術を用いて得た。これらの細胞を600細胞/cmの密度でEGMTM−2培地(Cambrex)中で生育させ、標準的条件下(5.0%CO、37℃)でコンフルエンスに達するまで72〜96時間毎に継代した。
【0076】
フローサイトメトリー:hMDCを、分化マーカーCD34、CD56、CD144、およびCD146の細胞表面クラスターの存在に関して分析した。
【0077】
免疫化学:hMDCをデスミン、ミオシン重鎖、およびジストロフィンで染色した。
【0078】
バイオインフォマティック生細胞画像化:細胞を動的画像撮影できる細胞培養システム中で生育させた。画像は10分間隔で撮影した。本発明者等は多くのパラメーター、例えば倍化速度、生育速度、総細胞数、伸長度、面積、および周囲を、種々の集団に関して、早期継代および後期継代時に計測した。本発明者等はヒトMDC表現型プロファイルを種々の予備プレーティング画分の間で比較することにより、インビボの再生効率を予測すると考えられる分子特徴および挙動特徴の両方を同定した。
【0079】
インビボの再生:本発明者等はmdx/SCIDマウスの腓腹筋内に早期継代ヒト集団を移植した。本発明者等は移植後2週間に筋肉を採取した。筋肉を凍結し、10μmの切片に切り出した。免疫組織化学的分析のために、本発明者等はマウス抗ヒトジストロフィンまたは抗マウスジストロフィン(Novocastra,DYS3/2,1:50)、ビオチニル化ヤギ抗マウス二次Ab(Vector,1:500)およびストレプトアビジン−Cy3(Sigma,1:500)を使用した。本発明者等は骨格筋切片におけるヒト核を標識するためにヒト核抗原抗体を使用した。
【0080】
結果
本発明者等は3つの予備プレーティング画分、即ち予備プレーティング1および2(pp1−2)および予備プレーティング2〜3(pp2〜3)および予備プレーティング5〜6)を検査した。全ての集団はCD34およびCD144に対して陰性であり、CD56およびCD146に対して陽性であった。経時的にCD56およびCD146の低下が観察された。免疫染色によれば、細胞は多核筋管内に融合する能力を呈し、デスミン、ミオシン、およびジストロフィンの発現を示したことから、その筋原性能力が明らかになった。
【0081】
経時的撮像によれば細胞分裂時間、集団倍化時間、細胞運動性挙動、および形態学的なパラメーターのようなパラメーターにおいて、多大な変動性が観察された。本発明者等は形態学上の培地特異的な変化を観察した。EGM2中で生育させた細胞は、細胞が増殖するにしたがって増殖速度の低下を示した。これまでの本発明者等の分析によれば、予備プレーティング画分に関するこのような挙動の相違は全く観察されていない。
【0082】
本発明者等は数種の予備プレーティング集団、即ちpp2(n=11 筋肉)、pp4(n=19)、pp6(n=20)を注射した。宿主mdx−scid筋肉へのhMDCの性別交差性の移植は、ドナー細胞から宿主骨格筋線維への融合およびその後の宿主におけるジストロフィンの送達および発現をもたらした。キメラ発生性がヒト特異的抗体およびドナー特異的Y染色体の使用により測定された(図1)。ジストロフィン陽性線維の再生数は、pp2画分と比較してpp6画分を使用した移植において有意に高値であった(P=0.037、両側2検定、図2)。しかしながら、pp2とpp4移植の間には再生のレベルに有意差はなかった。全ての群がPBSシャム対照より高値のジストロフィンレベルを有していた(図2)。
【0083】
本試験はヒト筋肉生検試料から得られたpp2とは異なると思われるpp6からhMDCが同様に得られることを示している。移植試験においては、ジストロフィン陽性の再生筋肉線維の数はマウスMDCで観察されたものより低値であったものの、本発明者等はヒトジストロフィン発現を観察している。初期の結果は、SkGM中の培養は、EGM−2またはDMEMのいずれかにおける培養よりも高値のhMDC増殖をもたらすことを示している。現在進行中の撮像試験は、この生育上昇がより高い治療薬効および異なる細胞表現型と関連するかどうかを決定することになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格筋の強化を必要とする哺乳類において骨格筋の強化を行う方法であって、
a)MDCを単離する工程、
b)単離されたMDCを10〜20日間培養物中で増殖させる工程、および、
c)増殖されたMDCの治療有効部分を、骨格筋の強化を必要とする哺乳類の骨格筋に投与する工程、
を含むことにより、骨格筋の強化を必要とする哺乳類において骨格筋の強化を行う、方法。
【請求項2】
骨格筋の強化を必要としている哺乳類が筋肉の病理学的状態に罹患している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
哺乳類がヒトである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
(a)30〜120分間、第1の細胞培養容器中にヒト骨格筋細胞を懸濁する工程、
(b)第2の細胞培養容器に第1の細胞培養容器から培地を移す工程、
(c)第2の細胞培養容器の壁部に培地中の残存細胞を付着させる工程、および、
(d)第2の細胞培養容器の壁部から細胞を単離する工程、ここで単離された細胞はMDCであること、
を含むことにより、MDCを単離する方法によってMDCが単離される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
(a)骨格筋細胞懸濁液の線維芽細胞が接着する第1の容器中で骨格筋組織由来の骨格筋細胞の懸濁液をプレーティングする工程、
(b)第2の容器中に工程(a)由来の非接着細胞を再プレーティングする工程、ここで再プレーティングの工程は細胞の約15〜約20%が第1の容器に接着した後であること、および、
(c)工程(b)を少なくとも1回反復する工程、
を含むことにより、MDCを単離する方法によってMDCが単離される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
哺乳類の骨格筋内にMDCを注射することによりMDCが投与される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
哺乳類の筋肉が欠陥を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
MDCを前記欠陥に適用することによりMDCが投与される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
MDCが注射を介して適用される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
骨格筋の強化を必要とする哺乳類において骨格筋の強化を行う方法であって、
a)MDCを単離する工程、
b)単離されたMDCを約−25℃〜−90℃の温度に凍結する工程、
c)凍結した単離されたMDCを解凍する工程、および、
d)解凍されたMDCを、骨格筋の強化を必要とする哺乳類の骨格筋に投与する工程、
を含むことにより、骨格筋の強化を必要とする哺乳類において骨格筋の強化を行う、方法。
【請求項11】
骨格筋の強化を必要とする哺乳類が筋肉の病理学的状態に罹患している、請求項10記載の方法。
【請求項12】
哺乳類がヒトである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
(a)30〜120分間、第1の細胞培養容器中にヒト骨格筋細胞を懸濁する工程、
(b)第2の細胞培養容器に第1の細胞培養容器から培地を移す工程、
(c)第2の細胞培養容器の壁部に培地中の残存細胞を付着させる工程、および、
(d)第2の細胞培養容器の壁部から細胞を単離する工程、ここで単離された細胞はMDCであること、
を含むことにより、MDCを単離する方法によってMDCが単離される、請求項10記載の方法。
【請求項14】
(a)骨格筋細胞懸濁液の線維芽細胞が接着する第1の容器中で骨格筋組織由来の骨格筋細胞の懸濁液をプレーティングする工程、
(b)第2の容器中に工程(a)由来の非接着細胞を再プレーティングする工程、ここで再プレーティングの工程は細胞の約15〜約20%が第1の容器に接着した後であること、および、
(c)工程(b)を少なくとも1回反復する工程、
を含むことにより、MDCを単離する方法によってMDCが単離される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
哺乳類の骨格筋内にMDCを注射することによりMDCが投与される、請求項10記載の方法。
【請求項16】
哺乳類の筋肉が欠陥を有する、請求項10記載の方法。
【請求項17】
MDCを前記欠陥に適用することによりMDCが投与される、請求項10記載の方法。
【請求項18】
MDCが注射を介して適用される、請求項17記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−540639(P2010−540639A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527998(P2010−527998)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/011458
【国際公開番号】WO2009/045506
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(504279968)ユニバーシティー オブ ピッツバーグ − オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケーション (24)
【Fターム(参考)】