説明

筐体

【課題】軽量であり、熱伝導性、導電性及び電界遮蔽性を有し、かつ、振動を吸収する能力に優れた筐体を提供する。
【解決手段】筐体1は、金属製のカバー10と、樹脂製のボトムハウジング20とを備える。カバー10は、矩形状の第1の平面部11と第1の平面部11の外周縁に接続される第1の側壁部12a〜12cを有し、第1の側壁部12a〜12cには凹部13a〜13cが形成されている。ボトムハウジング20は、矩形状の第2の平面部21と第2の平面部21の外周縁に接続される第2の側壁部22a〜22cを有し、第2の側壁部22a〜22cには所定の間隔を空けて一対の切り欠きが設けられ、一対の切り欠きの間にツメ23a〜23cが形成されている。カバー10にボトムハウジング20を嵌めこむと、凹部13a〜13cにツメ23a〜23cが沿うように収容される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばソリッドステートドライブ(以下、「SSD」という)のような電子部品を収容するための筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばSSDのような電子部品は、底板と天板及び側壁からなる中空状の扁平な直方体形状を有する筐体の内部に収容され、筐体ごとパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」という)等の本体内部の所定位置に取り付けられる。この筐体としては、一般に、アルミダイキャスト成形品、アルミニウムの板金加工品又はABS樹脂のみの成形品が用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−156702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アルミダイキャスト成形で筐体を作製した場合は、筐体の重量が重くなり、また、成形後に別途、切削加工が必要となる。また、アルミニウムの板金加工で筐体を作製した場合は、天板と底板とを組み合わせるための構造やタップ加工が複雑となり、製造コストが高くなる。更に、これらのアルミニウム単体で形成された筐体は振動を吸収する性能に乏しい。一方、ABS樹脂を用いた成形で筐体を作製した場合は、ABS樹脂自身の物性に起因し、筐体の熱伝導性、導電性及び電界遮蔽性が不十分であるという問題がある。
【0005】
それ故に、本発明では、軽量であり、熱伝導性、導電性及び電界遮蔽性を有し、かつ、振動を吸収する能力に優れた筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電子部品を収容するための中空箱形の筐体に関する。筐体は、金属からなり、第1の平面部と第1の平面部の外周縁に接続される第1の側壁部とを有するカバーと、導電性を有する樹脂からなり、第2の平面部を有し、第1の平面部及び第2の平面部を対向させた状態で、カバーにはめ込まれるボトムハウジングと、ボトムハウジングの外周縁から立ち上がる複数のツメとを備える。第1の側壁部の複数のツメの各々に対応する部分には、カバーとボトムハウジングとを嵌め合わせた際に、ツメの各々を収容すると共に、ツメの各々と接触する複数の凹部が設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、軽量であり、熱伝導性、導電性及び電界遮蔽性を有し、かつ、振動を吸収する能力に優れた筐体を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係る筐体の分解斜視図
【図2】本発明の実施形態に係る筐体の斜視図
【図3】図2に示す筐体の上面図
【図4】図2に示す筐体のA−A’ラインの断面図
【図5】図2に示す筐体のB−B’ラインの断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る筐体の分解斜視図である。
【0010】
筐体1は、一面に開口を有する中空の扁平な直方体形状であり、アルミニウム製のカバー10と、導電性を有する樹脂製のボトムハウジング20とを備える。
【0011】
カバー10は、表面に導電性材料をコーティングしたアルミニウム板の板金加工で作製され、矩形上の第1の平面部11と、第1の平面部11の3辺に接続される第1の側壁部12a〜12cとを有する。第1の側壁部12a〜12cの各々の中央部分には、内側に凹んだ窪みよりなる凹部13a〜13cが形成されている。また、第1の平面部には、2箇所の皿ネジ取り付け穴14b及び14fが形成されている。更に、第1の平面部11の内面(図1における下面)には、基板30上の電子部品からの熱を外部に放出するための放熱シート40aが貼着されている。
【0012】
ボトムハウジング20はカバー10に嵌め込まれるものであって、樹脂を用いた一体成形で作製され、矩形状の第2の平面部21と、第2の平面部21の3辺における外縁に接続される第2の側壁部22a〜22cとを有する。また、第2の側壁部22a〜22cの各々には所定の間隔を設けて2つの切り欠きを形成することで、側壁部22a〜22cの中央部分には、切り欠きの間にツメ23a〜23cが形成される。これらのツメ23a〜23cと、先述したカバーに設けられる凹部13a〜13cとは、カバー10にボトムハウジング20が嵌め合わされた時に対応する位置関係となるように配置されている。
【0013】
第2の平面部21の内面には、ボス24a〜24fが設けられている。ボス24a〜24eには電子基板がネジ留めされ、ボス24b及び24fには、皿ネジ取り付け穴14b及び14fを通してカバー10がネジ留めされる。これらのボス24a〜24fは樹脂で形成されているため、セルフタップによるネジ留めが可能である。従って、予めボス24a〜24fにタップ構造を設けておく必要がなく、ボトムハウジング20を成形する金型入れ子の構造を簡易にすることができる。
【0014】
また、第2の平面部21の一方面かつ電子基板に対向する位置には、厚み9μm以上のアルミニウム箔を有する複合フィルム25が設けられ、更に、この複合フィルム25の一部を覆うように放熱シート40bが貼着されている。複合フィルム25は、インサート成形によりボトムハウジング20と一体化しても良いし、成形後に別途ボトムハウジング20に貼着しても良い。
【0015】
ボトムハウジング20を成形する樹脂は導電性を有するもの(ボトムハウジングの形状において、100〜103Ωの抵抗を示すもの)であれば良く、例えば、ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂とアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂とのポリマーアロイに、フィラーとして炭素繊維を10〜30重量%添加した複合材料を好適に用いることができる。ここで、フィラーを添加するベースとなる樹脂(以下、「ベース樹脂」という)に、ポリアミド樹脂を用いると、成形時においてスキン層が形成され、成形品の表面を円滑にすることができ、更に、アイゾット衝撃強度が高くなり、後述するセルフタップ時の割れや欠けを回避することが可能となる。ベース樹脂に添加するフィラーとして、上記した炭素繊維や金属フィラーを用いると、ベース樹脂に導電性及び電界遮蔽性を付与することができる。また、銅やアルミ等の金属、黒鉛、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛又はカーボンナノチューブをフィラーとしてベース樹脂に添加すると、ベース樹脂に熱伝導性を付与することができる。更に、パーマアロイ合金、磁性ステンレス鋼、Fe−Cr−Al系合金、Fe−Cr−Al−Si系合金、その他Fe系合金等の金属磁性粉をフィラーとしてベース樹脂に添加することで、ベース樹脂の電界遮蔽性を高めることができる。
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係る筐体の斜視図であり、図3は、図2に示す筐体の上面図であり、図4は、図2に示す筐体のA−A’ラインの断面図である。尚、図2、3では電子基板の記載を省略している。
【0017】
カバー10とボトムハウジング20とを対向させた状態(図1に示す状態)のまま、カバー10にボトムハウジング20を嵌め込むと、凹部13a〜13cの外面とツメ23a〜23cの内面とが擦り合いながら、凹部13a〜13cの外面にツメ23a〜23cが沿った状態で、凹部13a〜13cにツメ23a〜23cが収容される(図3)。一方、ツメ23a〜23c以外の第2の側壁部22a〜22cは、第1の側壁部12a〜12cの内面に第2の側壁部22a〜22cが沿った状態で、第1の側壁部12a〜12cの内側に収容される。
【0018】
このように、ツメ23a〜23cが凹部13a〜13cに沿った状態に嵌め合わされることにより、カバー10とボトムハウジング20とのガタツキが効果的に防止される。詳細には、ツメ23a及び23cと凹部13a及び13cとを嵌め合せることで、図3の上下方向における、カバー10とボトムハウジング20とのガタツキが防止され、ツメ23bと凹部13bとの嵌め合せにより、図3の紙面左右方向におけるガタツキが防止される。
【0019】
ここで、ツメ23a〜23cと凹部13a〜13cとのクリアランスを調整することで、ツメ23a〜23cと凹部13a〜13cとの嵌め合いの強弱を調整することができる。具体的には、クリアランスを小さくすると、ツメ23a〜23cと凹部13a〜13cとの嵌め合いが強くなる。このクリアランスを変更するには、第1の側壁部12a〜12cのへこみ寸法(図4におけるh)を変えれば良い。ツメ23a〜23c以外の第2の側壁部22a〜22cは、第1の側壁部12a〜12cの内面に沿った状態であるため、hの寸法を変えることで、上記のクリアランスを変更することができる。
【0020】
また、筐体1では、3箇所のツメ23a〜23cと凹部13a〜13cとが嵌合しているため、ボトムハウジング20のボス24b及び24fの2箇所にカバー10をネジ留めするだけで、カバー10にボトムハウジング20を完全に固定することができる。そして電子基板30を収容した筐体1は、例えば、カバー10がパソコン本体(図示せず)の内面に接触するようにパソコン本体内部に取り付けられ、電子基板30の端子(図示せず)に開口から挿入したコネクタを接続して使用される。
【0021】
カバー10にボトムハウジング20を嵌め込んだ筐体1においては、ツメ23a〜23cと凹部13a〜13cとが面接触している。これによって、樹脂製であるボトムハウジング20に帯電する電荷や熱をカバー10に移動させることが可能となり、筐体1の導電性、電界遮蔽性及び熱伝導性が良好となる。また、筐体1は、ボトムハウジング20が樹脂製であるため、振動を吸収する特性にも優れる。
【0022】
カバー10を形成するアルミニウム板の表面には導電性材料がコーティングされているため、アルミニウム表面の酸化皮膜形成による導電性及び電界遮蔽性の劣化が効果的に抑制される。これによって、長期間に渡り、筐体1において熱伝導性、導電性及び電界遮蔽性の効果が発揮される。
【0023】
図5は、図2に示す筐体のB−B’ラインの断面図である。
【0024】
カバー10の内面に設けられる放熱シート40aと、ボトムハウジング20の内面に設けられる複合フィルム25及び放熱シート40bとは、各々電子基板30に対向するように配置されている。これにより、電子基板30で発生する熱をカバー10及びボトムハウジング20に素早く伝えることができる。特に、集積回路チップのような発熱の大きな電子部品に対して接触するように放熱シート40a及び40bを配置した場合、電子基板30から発生する熱をより効果的にカバー10及びボトムハウジング20に伝えることが可能となる。この放熱シート40a及び40bには、例えば熱伝導率が1W/m・k以上であり、かつ、弾性を有する、シリコンゴムや非シリコンゴムを好適に用いることが出来る。
【0025】
筐体1は、放熱シート40a及び40bの平面に垂直方向にカバー10とボトムハウジング20とを嵌め合せて組み立てられるため、放熱シート40a及び40bがズレたり、放熱シート40a及び40bにしわが入ることがない。
【0026】
尚、本実施形態では、カバーをアルミニウムの板金加工で形成しているが、形成方法はこれに限定されず、例えばアルミダイキャスト成形で製作しても良い。
【0027】
また、本実施形態では、カバーはアルミニウムで形成されているが、金属であれば特にこれに限定されない。また、アルミニウムの表面に導電性材料をコーティングすることは任意である。
【0028】
更に、本実施形態では、筐体は一面が開口した扁平な直方体形状であるが、特にこれに限定されず、電子基板の形状や筐体の組み込み先の形状を考慮して最適なものを選択することができる。
【0029】
更に、本実施形態では、ツメ及び凹部を各々3箇所に設けているが、これに限定されない。例えば、ツメ及び凹部の各々を2箇所に設けても良い。
【0030】
更に、本実施形態では、ボトムハウジングに設けられる複合フィルム及び放熱シートと、カバーに設けられる放熱シートとには矩形状のものを採用しているが、形状は特に限定されず、電子基板や筐体の形状に応じて適宜最適なものを選択することができる。更に、複合フィルムや放熱シートを設けることは任意である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えばSSDのような電子部品を収容するための筐体に用いることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 筐体
10 カバー
11 第1の平面部
12a〜12c 第1の側壁部
13a〜13c 凹部
20 ボトムハウジング
21 第2の平面部
22a〜22c 第2の側壁部
23a〜23c ツメ
24a〜24f ボス
25 複合フィルム
30 電子基板
40a、40b 放熱シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容するための中空箱形の筐体であって、
金属からなり、第1の平面部と前記第1の平面部の外周縁に接続される第1の側壁部とを有するカバーと、
導電性を有する樹脂からなり、第2の平面部を有し、前記第1の平面部及び前記第2の平面部を対向させた状態で、前記カバーにはめ込まれるボトムハウジングと、
前記ボトムハウジングの外周縁から立ち上がる複数のツメとを備え、
前記第1の側壁部の前記複数のツメの各々に対応する部分には、前記カバーと前記ボトムハウジングとを嵌め合わせた際に、前記ツメの各々を収容すると共に、前記ツメの各々と接触する複数の凹部が設けられる、筐体。
【請求項2】
前記ボトムハウジングは、前記第2の平面部の外周縁に接続される第2の側壁部を更に有し、
前記第2の側壁部には、所定の間隔を空けて一対の切り欠きを設けることで、前記一対の切り欠きの間に前記ツメが形成される、請求項1に記載の筐体。
【請求項3】
前記導電性を有する樹脂は、ポリアミド樹脂又はポリアミド樹脂とアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂とのポリマーアロイに炭素繊維を10〜30重量%添加した複合材料からなる、請求項1又は2に記載の筐体。
【請求項4】
前記カバー及び前記ボトムハウジングの少なくとも一方の内面に、熱伝導性を有する放熱シートが設けられる、請求項1〜3に記載の筐体。
【請求項5】
前記カバーはアルミニウムで成形され、
前記成形されたアルミニウムの表面には導電性を有する材料がコーティングされる、請求項1〜4に記載の筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−176079(P2011−176079A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38361(P2010−38361)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】