説明

筒体切断機、筒体切断システム、および筒体切断方法

【課題】筒体を短時間で精度良く切断することができる筒体切断機、筒体切断システム、および筒体切断方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも一端が開口された容器2を切断する第一切断機100であって、容器2の外面のうち対向する二箇所にそれぞれ接するダイ側剪断刃部112が形成されたダイ111と、容器2における開口から容器2内に挿入され、ダイ側剪断刃部112よりも容器2の開口側に配置され容器2の内面に接触可能なパンチ側剪断刃部114,115が形成されたパンチ113と、ダイ111とパンチ113とを相対移動させる相対移動手段116と、を備え、相対移動手段116は、パンチ113に対してダイ111を一往復させ、ダイ側剪断刃部112とパンチ側剪断刃部114,115とによって容器2における耳部3の二箇所をそれぞれ剪断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒体切断機、筒体切断システム、および筒体切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒体等を切断する方法として、カッター等を用いた切削や、プレス装置等を用いた剪断等の方法が知られている。筒体を切断する方法の例として、例えば特許文献1には、絞り加工により成形された有底円筒状の電池用正極缶のフランジを、カッターを用いて切断する方法が開示されている。特許文献に記載の方法によれば、カッターを用いて電池用正極缶のフランジ部を切断することにより、バリの発生を抑えることができる。
また、特許文献2には、有底角筒状に形成された電池缶の耳部を切断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61‐27058号公報
【特許文献2】特開2000‐30673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の切断方法では、電池用正極缶の中心軸回りにカッターを回転させたり、位置決めして配置されたカッターに対して電池用正極缶をその中心軸回りに回転させたりする必要があり、電池用正極缶の切断に時間がかかってしまう。また、特許文献1に記載の切断方法によって、特許文献2に記載された角筒状の電池缶の耳部を切断しようとすると、角筒とカッターとの位置制御が複雑となり、角筒の切断面に段差が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、筒体を短時間で精度良く切断することができる筒体切断機、筒体切断システム、および筒体切断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の筒体切断機は、少なくとも一端が開口された筒体を切断する筒体切断機であって、前記筒体の外面のうち対向する二箇所にそれぞれ接するダイ側剪断刃部が形成されたダイと、前記筒体における一の開口から前記筒体内に挿入され、前記ダイ側剪断刃部よりも前記一の開口側に配置され前記筒体の内面に接触可能なパンチ側剪断刃部が形成されたパンチと、前記ダイと前記パンチとを前記二箇所の対向方向へ相対移動させる相対移動手段と、を備え、前記相対移動手段は、前記パンチに対して前記ダイを一往復させ、前記ダイ側剪断刃部と前記パンチ側剪断刃部とによって前記筒体における前記二箇所をそれぞれ剪断することを特徴とする筒体切断機である。
【0007】
この発明によれば、相対移動手段がパンチに対してダイを一往復させる相対移動をすることによって、筒体において対向する二箇所をそれぞれ剪断するので、筒体を短時間で精度良く切断することができる。
【0008】
また、前記筒体は有底筒状に形成され、本発明の筒体切断機は、前記筒体の底部の外面に当接可能であり前記筒体の深さ方向に移動可能且つ位置決め可能なストッパと、前記筒体の底部の内面に当接可能であり、前記底部の外面を前記ストッパに押し付けるプッシャとをさらに備えることが好ましい。
この場合、切断される筒体における切断位置を筒体の外側寸法によって位置決めすることができる。
【0009】
本発明の筒体切断システムは、少なくとも一端が開口された筒体を切断する筒体切断システムであって、本発明の筒体切断機であって前記筒体の対向する二箇所を剪断する第一切断機と、本発明の筒体切断機であって前記二箇所と直交する他の二箇所を剪断する第二切断機と、を備えることを特徴とする筒体切断システムである。
【0010】
この発明によれば、第一切断機と第二切断機とによって筒体を全周にわたって精度よく切断することができる。
【0011】
本発明の筒体切断方法は、少なくとも一端が開口された筒体を切断する筒体切断方法であって、前記筒体における対向する二箇所を往復動作によりそれぞれ剪断する第一剪断工程と、前記二箇所と直交する他の二箇所を往復動作によりそれぞれ剪断する第二剪断工程と、を有し、前記第一剪断工程と前記第二剪断工程とによって前記筒体を全周にわたって切断することを特徴とする筒体切断方法である。
【0012】
この発明によれば、単純な動作の組み合わせにより筒体を全周にわたって切断することができる。
【0013】
また、前記筒体は長方形状に開口され、前記第一剪断工程では前記筒体の開口における短辺側の二辺をそれぞれ切断し、前記第二剪断工程では前記第一剪断工程の後に前記筒体の開口における長辺側の二辺をそれぞれ切断することが好ましい。
この場合、短辺側の二辺を切断するために要する剪断力と、長辺側の二辺を切断するために要する剪断力との差を少なくすることができる。
【0014】
また、前記第一剪断工程および前記第二剪断工程では、前記筒体の外面にダイを接触させ、前記筒体の一の開口から前記筒体の内部にパンチを挿入し、前記筒体の内面且つ前記ダイよりも前記一の開口側にパンチを接触させて前記筒体を剪断することが好ましい。
この場合、筒体を切断したあとに生じるバリの向きを、筒体の径方向内側あるいは径方向外側のいずれかに揃えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の筒体切断機、筒体切断システム、および筒体切断方法によれば、筒体を短時間で精度良く切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の筒体切断システムの構成を示す正面図である。
【図2】同筒体切断システムによって切断される筒体の切断前の形状を示す斜視図である。
【図3】同筒体切断システムにおける第一切断機の構成を示す図で、図1のA−A線における断面図である。
【図4】図3のB−B線における断面図である。
【図5】図4のC−C線における断面図である。
【図6】同第一切断機におけるダイを示す斜視図である。
【図7】同第一切断機におけるパンチを示す斜視図である。
【図8】同筒体切断システムにおける第二切断機の構成を示す図で、図1のD−D線における断面図である。
【図9】図8のE−E線における断面図である。
【図10】図9のF−F線における断面図である。
【図11】同第二切断機におけるダイを示す斜視図である。
【図12】同第二切断機におけるパンチを示す斜視図である。
【図13】本実施形態の筒体切断方法を示すフローチャートである。
【図14】同第一切断機の使用時の動作を説明するための図である。
【図15】同第一切断機の使用時の動作を説明するための図である。
【図16】同第一切断機によって切断された筒体を示す斜視図である。
【図17】同第二切断機の使用時の動作を説明するための図である。
【図18】同第二切断機によって切断された筒体と、筒体に固定される蓋体とを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態の筒体切断機および筒体切断システムについて説明する。図1は、本実施形態の筒体切断システムの構成を示す正面図である。図2は、筒体切断システムによって切断される筒体の切断前の形状を示す斜視図である。
本実施形態の筒体切断システム1は、少なくとも一端が開口された筒体を切断するシステムである。以下では、切断される筒体の例として、深絞り加工により成形された有底筒状の筒体、具体的にはリチウムイオン電池などの乾電池の容器を挙げて説明する。
【0018】
図2に示すように、容器2は、たとえば金属板を材料として深絞り加工された有底角筒状に形成されている。また、容器2は、一端が長方形状に開口されており、全体として直方体状の外形形状を有している。深絞り加工直後における容器2の深さ方向の外寸は、容器2の設計上の外寸d1よりも大きい。これにより、容器2の開口近傍において深絞り加工により歪みが生じている部分(以下、「耳部3」と称する。)を切断(トリミング)して容器2の開口端部を平坦にできる。
【0019】
図1に示すように、筒体切断システム1は、二台の筒体切断機(第一切断機100、第二切断機200)を備える。筒体切断システム1において、第一切断機100は容器2の開口における短辺側の二辺3aをそれぞれ切断し、第二切断機200は容器2の開口における長辺側の二辺3bをそれぞれ切断するために設けられている。以下、第一切断機100と第二切断機200の構成について順に説明する。
【0020】
図3は、筒体切断システム1における第一切断機100の構成を示す図で、図1のA−A線における断面図である。図4は、図3のB−B線における断面図である。図5は、図4のC−C線における断面図である。
図3ないし図5に示すように、第一切断機100は、床あるいは作業台上に固定されるベース101と、ベース101に対して相対移動できるようにベース101上に設けられた容器支持部102と、容器支持部102に固定されたダイ111と、ベース101に固定されたパンチ113と、容器支持部102をベース101に対して相対移動させる相対移動手段116とを備える。
【0021】
図4および図5に示すように、容器支持部102は、容器2が内部に収容される枠体103と、枠体103の上部に設けられたストッパ104とを備える。
枠体103は、上下方向に開口された角筒状に形成されており、枠体103の内寸は、内部に容器2を出し入れできる程度のクリアランスを有する大きさに設定されている。本実施形態では、外形が直方体形状をなす容器2を内部に収容するために、枠体103は、枠体103を平面視したときに略長方形状となる開口が上端に形成されている。枠体103には、耳部3を下側にし底部を上側にした状態で容器2が挿入されるようになっている。
【0022】
図4および図5に示すように、ストッパ104は、枠体103の上部開口から枠体103の内部に挿入される当接部105と、当接部105を枠体103の上下方向に進退動作させる位置決め手段106とを有している。
当接部105は、枠体103に挿入された容器2の底部の外面4aに当接可能な当接面105aを有している。
【0023】
位置決め手段106は、当接部105に連結されており、当接部105を枠体103の上下方向へ移動させる例えばサーボモータを有する図示しない移動機構と、当接部105の下端と後述するダイ側剪断刃部112との上下方向の距離を測定する図示しないエンコーダとを有している。
位置決め手段106は、枠体103内に収容された容器2の深さ方向に当接部105を進退動作可能とし、容器2の深さ方向における任意の位置で当接部105を位置決めして固定することができる。
【0024】
プッシャ107は、容器2の底部4の内面4bに当接可能な先端部材108と、先端部材108に連結された緩衝部材108aと、緩衝部材108aを支持するシャフト109とを有する。
【0025】
先端部材108は、枠体103を平面視したときの長辺方向に長い棒状に形成されている。
緩衝部材108aは、枠体103の内部に配置されており、枠体103の上下方向、すなわち枠体103内に挿入された容器2の深さ方向に伸縮可能であり先端部材108を上側へ付勢する部材である。緩衝部材108aは、先端部材108の長手方向の両端にそれぞれ取り付けられている。本実施形態では、緩衝部材108aとしてコイルスプリングが採用されている。
【0026】
シャフト109は、2つの緩衝部材108aの下端にそれぞれ固定された2本の棒状部材であり、後述するパンチ113を貫通してベース101に連結されている。また、本実施形態では、シャフト109は、パンチ113に固定された略長方形状の支持体110に挿通され、支持体110の上端からシャフト109の上端が突出している。支持体110は、容器2の内部に挿入できる大きさに形成されている。
シャフト109は、図示しないサーボモータによって上下方向へ進退移動される。シャフト109が上下方向へ進退移動されることによって、先端部材108を上下に移動させることができる。
【0027】
プッシャ107は、枠体103内に挿入された容器2を下から支え、容器2の底部4の外面4aが当接部105の当接面105aに当たるまで容器2を押し上げるようになっている。これにより、枠体103内に挿入された容器2の底部4の外面4aは、ストッパ104の当接部105に常に押し付けられた状態となる。
【0028】
図3および図4に示すように、ダイ111は、枠体103の下端に配置されており、枠体103を平面視したときの短辺の二箇所にそれぞれ設けられている。二箇所に設けられたダイ111は、互いに同形同大に形成されて対向配置されている。
【0029】
図6は、第一切断機100におけるダイ111を示す斜視図である。
図に示すように、ダイ111は、容器2の側面のうち短辺の外面に沿った形状に形成されているとともに、短辺側の側壁の中間部を剪断により切り取るためのダイ側剪断刃部112が形成されている。
【0030】
図7は、第一切断機100におけるパンチ113を示す斜視図である。
図4および図7に示すように、パンチ113は、ベース101に下端が固定されており枠体103の内部へ向かう略直方体状の部材である。パンチ113の上部には、ダイ側剪断刃部112との間に僅かなクリアランスを有するパンチ側剪断刃部114,115が形成されている。
図4に示すように、パンチ側剪断刃部114,115は、枠体103内に挿入された容器2の開口から容器2内に挿入され、ダイ側剪断刃部112が接する位置よりも僅かに容器2の開口側における容器2の内面に接触可能となっている。
【0031】
図3ないし図5に示すように、相対移動手段116は、出力軸を一方向に回転動作させるモータ117と、モータ117の出力軸に連結されたエキセン軸118と、エキセン軸118が摺動可能に嵌合する板状の移動子119と、移動子119に連結され容器支持部102に固定されたスライダ120と、ベース101に固定されスライダ120を一方向にスライド移動可能に支持するガイドレール121とを有する。
【0032】
モータ117は、図示しない制御部によって回転動作が制御され、一工程につきエキセン軸118を一回転させる。
エキセン軸118は、モータ117の出力軸と連結された主軸118bと、主軸118bの回転軸に対して偏心された円板状のエキセン118aとを有する。
移動子119は、エキセン118aの直径と略同形の貫通孔119aが形成された矩形形状の板状部材であり、貫通孔119aの内部にエキセン軸118が挿入されている。
【0033】
スライダ120は、移動子119が摺動可能に嵌合する矩形形状の貫通孔120aが形成された略板状の部材である。第一切断機100を平面視したときにガイドレール121が延びる方向(図3において符号Pで示す方向)において、貫通孔120aの内寸は移動子119の外寸と略同じであり、第一切断機100を平面視したときにガイドレール121が延びる方向と直交する方向(図3において符号Qで示す方向)において、スライダ120に形成された貫通孔120aの内寸は移動子119の外寸よりも大きい。
なお、スライダ120の初期位置は、枠体103内に挿入された容器2の開口内にパンチ113の上部が収まる位置に設定されている。
【0034】
エキセン軸118が回転軸118b回りに回転したときには、移動子119は、主軸118b回りに一方向に円を描くように平行移動する。さらに、平行移動する移動子119によってスライダ120が押され、スライダ120はガイドレール121が延びる方向に沿って一方向の往復運動をする。
【0035】
図5に示すように、ガイドレール121は、スライダ120を間に挟んで一対設けられており、スライダ120の進退方向を一方向に規制するものである。ガイドレール121とスライダ120との間は、ガイドレール121とスライダ120とを軽い力で相対移動させる目的で摩擦が低減されている。
【0036】
スライダ120がガイドレール121に沿って進退することにより、スライダ120上に固定された容器支持部102もガイドレール121に沿って進退する。ガイドレール121に沿ったスライダ120の進退移動距離は、エキセン軸118の偏心量と直径とによって定まる。モータ117によってエキセン軸118が一回転すると、容器支持部102はガイドレール121が延びる方向の一方へ初期位置から移動し、その後ガイドレール121が延びる方向の他方へ初期位置を越えて移動し、その後初期位置へ戻る。
【0037】
次に、第二切断機200の構成について説明する。図8は、筒体切断システム1における第二切断機200の構成を示す図で、図1のD−D線における断面図である。図9は、図8のE−E線における断面図である。図10は、図9のF−F線における断面図である。
第二切断機200は、第一切断機100と同様の原理で容器2の耳部3(図2参照)を切断する装置であり、具体的には容器2の耳部3における長辺側の二辺3b(図2参照)を切断するものである。以下、第二切断機200について、第一切断機100と構成が異なる点について説明する。なお、第一切断機100と同様の機能を有する構成については、第一切断機100において相当する構成の符号に枝番号「‐2」を追加した符号を付すことにより説明を省略する。
【0038】
図8ないし図10に示すように、第二切断機200は、床あるいは作業台上に固定されるベース101‐2と、ベース101‐2上に設けられた容器支持部202と、容器支持部202に固定されたダイ211と、ベース101‐2に固定されたパンチ213と、容器支持部202をベース101‐2に対して相対移動させる相対移動手段116‐2とを備える。
【0039】
第二切断機200の容器支持部202は、第一切断機100の枠体103に対して平面視で向きを90°ずらした状態で配置された枠体203を有する。枠体203は、上下方向に開口された筒状であり、内部に容器2を挿入することができる。枠体203の下端には、第一切断機100の枠体103に設けられたダイ111とは形状が異なるダイ211が固定されている。
【0040】
図11は、第二切断機200におけるダイ211を示す斜視図である。
図9および図11に示すように、ダイ211は、枠体203の下端であって枠体203を平面視したときの長辺側の二箇所にそれぞれ設けられている。2つのダイ211は互いに同形同大に形成されており、対向配置されている。ダイ211は、容器2の耳部3のうち長辺側の二辺3b(図2参照)の外面と、長辺と短辺との間の角部とに沿った形状に形成されているとともに、容器の耳部3における長辺および角部の側壁を剪断するためのダイ側剪断刃部212が形成されている。
【0041】
図12は、第二切断機200におけるパンチ213を示す斜視図である。
図12に示すように、パンチ213は、第一切断機100のパンチ113と異なり、平面視したときの長辺側にパンチ側剪断刃部214,215が形成されている。
【0042】
次に、本発明の一実施形態の筒体切断方法について、上述の筒体切断システム1を用いた場合を例に説明する。なお、本発明の筒体切断方法は、上述の筒体切断システム1以外にも適用することができる。図13は、本実施形態の筒体切断方法を示すフローチャートである。図14および図15は、第一切断機100の使用時の動作を説明するための図である。
【0043】
図1に示す筒体切断システム1の使用時には、図13に示すように、第一切断機100によって容器2の短辺側の二辺3aを剪断する第一剪断工程S1と、第二切断機200によって容器2の長辺側の二辺3bを剪断する第二剪断工程S2とがこの順に行われる。
【0044】
第一剪断工程S1では、まず、図示しない深絞り成形装置によって有底角筒状に成形された容器2が図示しない搬送手段によって第一切断機100(図3ないし図5参照)へ搬送される。このとき、第一切断機100においては、枠体103の上部開口から退避した位置にストッパ104が移動され、枠体103の上部開口は、容器2を挿入することができるように開放される。
第一切断機100へ搬送された容器2は、開口が下向きとされた状態で枠体103の内部に上端から挿入される。
【0045】
枠体103の内部に容器2が挿入されると、容器2の底部4の内面4bとプッシャ107とが接触し、容器2はプッシャ107によって支持される。
その後、ストッパ104の当接部105が枠体103の上部開口から下方へ移動し、当接部105の当接面105aが容器2の底部4の外面4aに当接する(図4参照)。当接部105は、図示しない制御機構により、ストッパ104のエンコーダが測定した距離に基づいて移動される。当接部105の当接面105aによって容器2の底部4の外面4aは下方に押され、これにより緩衝部材108aは圧縮される。その結果、当接部105と先端部材108とによって容器2の底部4が挟み込まれる。エンコーダによって測定された距離が、容器2の設計上の外寸d1(図2参照)と一致したときに当接部105は停止し、この状態で当接部105は位置決めされる。
【0046】
続いて、エキセン軸118が一回転する分だけモータ117が駆動される。これにより、スライダ120は、初期位置から移動して再び初期位置に戻るまでの一周期(一往復)の進退動作をする(図14および図15参照)。このとき、第一切断機100は、容器2の外面にダイ111を接触させ、容器2の内面且つダイ側剪断刃部112よりも僅かに開口側にずれた位置にパンチ側剪断刃部114,115を当てる(図4参照)。これにより、容器2の耳部3の短辺側の側壁におけるバリが容器2の外側へ向くバリとなるように容器2は剪断される。
【0047】
スライダ120が一周期の進退動作をすると、第一切断機100のパンチ113とダイ111とによって、図16に示すように容器2の耳部3の短辺側の二辺3aに位置する側壁が両方とも矩形状に切り取られる。
スライダ120が初期位置に戻ったら、モータ117の駆動は停止され、ストッパ104の当接部105の位置決めは解除される。さらに当接部105は枠体103の上部開口から退避した位置へ移動し、枠体103から容器2を取り出すことができるようになる。
【0048】
このように、第一剪断工程S1では、容器2における対向する二箇所を往復動作によりそれぞれ剪断することができる。
【0049】
これで第一切断機100による工程は終了し、第二切断機200による工程へ進む。
図17は、第二切断機200の使用時の動作を説明するための図である。図18は、第二切断機200によって切断された容器2と、容器2に固定される蓋体5とを示す斜視図である。
【0050】
第一切断機100による工程が終了した後、図示しない搬送手段によって、耳部3の短辺側の二辺3aが切り取られた容器2(図16参照)が第一切断機100の枠体103における上部開口から引き抜かれる。さらに、容器2は第二切断機200まで搬送される。第二切断機200においては、枠体203の上部開口から退避した位置にストッパ104‐2の当接部105‐2が移動されている。これにより、枠体203の上部開口は、容器2を挿入することができるように開放されている。図9に示すように、第二切断機200へと搬送された容器2は、底部4が上向きで開口が下向きとされた状態で枠体203の内部に上端から挿入される。
【0051】
その後、第一切断機100と同様にモータ117‐2が駆動され、スライダ120‐2が一周期(一往復)されることにより、図17に示すように、第二切断機200のダイ211とパンチ213とによって容器2の耳部3の長辺側の二辺3bが角部とともに切り取られる。
このとき、第二切断機200のダイ211とパンチ213との相対移動は、第一切断機100において切断された切断面X(図16参照)に、パンチ213の両端部213aが当接した状態で開始される。これにより、第一切断機100と第二切断機200とによって切断された耳部3の切断面X、Y(図18参照)は面一となる。
【0052】
また、第二切断機200は、第一切断機100と同様に、容器2の外面にダイ211を接触させ、容器2の内面且つダイ側剪断刃部212よりも僅かに開口側にずれた位置にパンチ側剪断刃部214,215を当てる。これにより、容器2の耳部3の長辺側の二辺3bに生じるバリは、容器2の外側へ向くバリとなる。
【0053】
このように、第二剪断工程S2では、第一剪断工程S1において切り取った耳部3と直交する他の耳部3を、一周期の往復動作によりそれぞれ剪断することができる。
第一剪断工程S1と第二剪断工程S2とがこの順に行われることによって、図18に示すように、第一剪断工程S1において切断された切断面Xと、第二剪断工程S2において切断された切断面Yとは、全周にわたって面一となっている。
【0054】
耳部3が切断された容器2には、たとえばリチウムイオン電池の発電要素など所定の収容対象物が収容され、図18に示すように、開口を封止する蓋体5が固定される。容器2の開口と蓋体5との固定方法としては、例えばレーザー溶接などを挙げることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の筒体切断機(第一切断機100、第二切断機200)、筒体切断システム1、及び筒体切断方法によれば、パンチ113,213に対してダイ111,211を一周期(一往復)だけ動作させることにより容器2の耳部3における対向する側壁をそれぞれ剪断することができる。これにより、筒体を短時間で精度良く切断することができる。
【0056】
また、ストッパ104,104‐2の当接部105が容器2の底部4の外面4aに当接し、当接部105,105‐2の位置によって容器2の耳部3の切断位置が規定されるので、容器2の外側寸法を直接計測して容器2の外側寸法に基づいて容器2が切断される。これにより、容器2の板厚によらず容器2の外側を基準とした寸法精度を高めることができる。
【0057】
また、第二切断機200に設けられたパンチ213が、第一切断機100において切断された容器2の切断面Xに当接するように形成されているので、第二切断機200における切断面Yを第一切断機100における切断面Xと面一にすることができる。この場合、切断面Xと切断面Yとを面一にするための位置センサーや段差検出手段等を設ける必要がなく、簡易な構成で精度良く容器2を切断することができる。
【0058】
また、本実施形態の筒体切断システム1は、容器2の耳部3の短辺側の二辺3aを切断する第一切断機100と、容器2の長辺側の二辺3bを切断する第二切断機200とを備えるので、容器2を回転させながら切断したりする位置制御を必要とせず、簡易な構造で精度良く容器2の耳部3を切断することができる。
【0059】
また、第一剪断工程S1および第二剪断工程S2では、容器2の外側にバリが向くようにダイ111,211とパンチ113,213との位置関係が定められているので、容器2内に収容された収容対象物がバリによって傷つくことがない。特に、本実施形態の場合には、容器2の開口に蓋体5を溶接するので、容器2の外側に向けられたバリは溶接等によって消失し、バリを除去するための容器2を研磨する工程が不要となる。
【0060】
(変形例)
次に、上述の実施形態で説明した筒体切断機、筒体切断システム、および筒体切断方法の変形例について説明する。
本変形例では、上述の実施形態とは異なる制御によって第二切断機200が容器2を切断する点が異なっている。
本変形例の第二切断機200は、図16に示すように、容器2の長辺側の二辺3bにおいて、切断面Yよりもさらに開口側に位置する予備切断位置Yaにおいて容器2の長辺側の二辺3bをそれぞれ切断し、その後、切断面Yにおいて容器2の長辺側の二辺3bをそれぞれ切断するようになっている。
【0061】
本変形例では、まず、第二切断機200のストッパ104−2は、上述の実施形態で説明した位置より上に当接部105−2を位置決めする。具体例を挙げれば、当接部105−2の当接面105a−2の位置は、上述の実施形態で説明した位置よりも2mmだけ上側となるように調整して位置決めされる。この場合、ダイ211およびパンチ213による容器2の切断位置は、切断面Yよりも2mmだけ開口側にずれた予備切断位置Yaとなる。
この状態で、第二切断機200は、まず、予備切断位置Yaに沿って、容器2の長辺側の二辺3aを切断する。
続いて、ストッパ104−2によって当接部105−2が2mm押し下げられ、ダイ211およびパンチ213によって容器2の長辺側の二辺3bは切断面Yにおいて剪断される。
【0062】
本変形例では、予備切断位置Yaにおいて容器2を剪断した後に切断面Yにおいて容器2を剪断する二段階の剪断工程を有している。これにより、切断面Yの近傍で容器2のコーナーに引張応力が発生するのを軽減し、容器2の切断面を平滑にすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述の実施形態では、筒体の例として有底筒状の深絞り成形品を示したが、切断対象がこのような成形品に限定されることはない。たとえば、両端が開口された筒体を切断する場合にも、本発明の筒体切断機、筒体切断システム、および筒体切断方法を適用することができる。
【0064】
また、本発明において、筒体は円筒に限らず、径方向断面の輪郭形状が多角形状のいわゆる角筒を含む。また、径方向に対向する側壁がない例えば断面三角形、五角形、七角形等の角筒であっても、パンチおよびダイの形状を適宜設計変更することにより、本発明の筒体切断機、筒体切断システム、および筒体切断方法を適用することができる。
【0065】
また、上述の実施形態では、長方形状に開口された容器の耳部を2台の筒体切断機によって切断する例を示したが、例えば断面六角形、八角形等径方向に対向する側壁が2組以上ある角筒の場合には、対向する側壁の組数と同数の筒体切断機を備えてこれらの筒体を全周にわたって切断することもできる。
【0066】
また、上述の実施形態では、容器の外側へバリが向くように容器を切断する例を示したが、容器の内側へバリが向くようにする必要がある場合には、容器の深さ方向におけるダイとパンチとの位置関係を上述の実施形態と逆にすればよい。
【0067】
また、上述の変形例において、予備切断位置は切断面より2mmだけ開口側に設定する例を示したが、予備切断位置と切断面との距離は2mmには限られない。
【符号の説明】
【0068】
1 システム
2 容器
3 耳部
3a 短辺側の二辺
3b 長辺側の二辺
4 底部
4a (底部の)外面
4b (底部の)内面
5 蓋体
100 第一切断機
101 ベース
102 容器支持部
103 枠体
104 ストッパ
105 当接部
105a 当接面
106 位置決め手段
107 プッシャ
108 先端部材
109 シャフト
110 支持体
111 ダイ
112 ダイ側剪断刃部
113 パンチ
114 パンチ側剪断刃部
116 相対移動手段
117 モータ
118 エキセン軸
118a エキセン
118b 主軸
119 移動子
119a 貫通孔
120 スライダ
120a 貫通孔
121 ガイドレール
200 第二切断機
202 容器支持部
203 枠体
211 ダイ
212 ダイ側剪断刃部
213 パンチ
214 パンチ側剪断刃部
X 切断面
Y 切断面
S1 第一剪断工程
S2 第二剪断工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端が開口された筒体を切断する筒体切断機であって、
前記筒体の外面のうち対向する二箇所にそれぞれ接するダイ側剪断刃部が形成されたダイと、
前記筒体における一の開口から前記筒体内に挿入され、前記ダイ側剪断刃部よりも前記一の開口側に配置され前記筒体の内面に接触可能なパンチ側剪断刃部が形成されたパンチと、
前記ダイと前記パンチとを前記二箇所の対向方向へ相対移動させる相対移動手段と、
を備え、
前記相対移動手段は、前記パンチに対して前記ダイを一往復させ、前記ダイ側剪断刃部と前記パンチ側剪断刃部とによって前記筒体における前記二箇所をそれぞれ剪断する
ことを備えることを特徴とする筒体切断機。
【請求項2】
前記筒体は有底筒状に形成され、
前記筒体の底部の外面に当接可能であり前記筒体の深さ方向に移動可能且つ位置決め可能なストッパと、
前記筒体の底部の内面に当接可能であり前記底部の外面を前記ストッパに押し付けるプッシャと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の筒体切断機。
【請求項3】
少なくとも一端が開口された筒体を切断する筒体切断システムであって、
請求項1または2に記載の筒体切断機であって前記筒体の対向する二箇所を剪断する第一切断機と、
請求項1または2に記載の筒体切断機であって前記二箇所と直交する他の二箇所を剪断する第二切断機と、
を備えことを特徴とする筒体切断システム。
【請求項4】
少なくとも一端が開口された筒体を切断する筒体切断方法であって、
前記筒体における対向する二箇所を往復動作によりそれぞれ剪断する第一剪断工程と、
前記二箇所と直交する他の二箇所を往復動作によりそれぞれ剪断する第二剪断工程と、
を有し、
前記第一剪断工程と前記第二剪断工程とによって前記筒体を全周にわたって切断することを特徴とする筒体切断方法。
【請求項5】
前記筒体は長方形状に開口され、
前記第一剪断工程では前記筒体の開口における短辺側の二辺をそれぞれ切断し、
前記第二剪断工程では前記第一剪断工程の後に前記筒体の開口における長辺側の二辺をそれぞれ切断する
ことを特徴とする請求項4に記載の筒体切断方法。
【請求項6】
前記第一剪断工程および前記第二剪断工程では、前記筒体の外面にダイを接触させ、前記筒体の一の開口から前記筒体の内部にパンチを挿入し、前記筒体の内面且つ前記ダイよりも前記一の開口側にパンチを接触させて前記筒体を剪断することを特徴とする請求項4または5に記載の筒体切断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−157959(P2012−157959A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20679(P2011−20679)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(508092820)瑞穂テクノ株式会社 (2)
【出願人】(508061907)株式会社メガテック (2)
【Fターム(参考)】