説明

筒形防振装置

【課題】弾性ストッパの抜け落ちを有効に防止しつつ、組付作業性を向上させ得るようにした筒形防振装置を提供する。
【解決手段】内筒部材1の軸方向一端部の外周面を覆うゴム被覆層31とゴム被覆層31の外周面から径方向外方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数の外向き突部32とを有するゴム弾性体3と、環状に形成されて内周面に径方向内方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数の内向き突部42を有する弾性ストッパ4と、を備えている。内向き突部42及び外向き突部32は、周方向に延びるに連れて軸方向一端側から他端側へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成する。弾性ストッパ4を、内筒部材1の軸方向一端部の外周に外嵌した後、周方向に回転させることにより内向き突部42と外向き突部32が軸方向において係合した状態に組み付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において、例えばメンバマウントやエンジンマウント等として好適に採用される筒形防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば車両において採用されるメンバマウントの一種として、内筒部材と、その内筒部材の外周側に距離を隔てて同軸状に配置された外筒部材と、内筒部材と外筒部材との間に介在し両部材を弾性的に連結するゴム弾性体と、からなる筒形防振装置が知られている。この筒形防振装置には、通常、内筒部材と外筒部材の軸方向の過大な相対変位を阻止してゴム弾性体の耐久性の向上を図るために、内筒部材の軸方向端部にゴム等の弾性体で形成された弾性ストッパが嵌着されている。
【0003】
ところで、上記のような筒形防振装置にあっては、それらの搬送中等において、内筒部材に取付けられた弾性ストッパが内筒部材から抜け落ちることがあることから、種々の対策が講じられている。例えば、特許文献1の図3には、内筒部材の軸方向端部に径方向外方へ突出する凸部を設けると共に、弾性ストッパの嵌合孔にその凸部と対応する形状の凹部を設けておき、凸部と凹部を位置合わせした状態で弾性ストッパを内筒部材に嵌着して、弾性ストッパが凸部を越えて軸方向内方へ移動した後、弾性ストッパを回転させて組み付ける形態が開示されている。
【0004】
また、特許文献1の図4及び図5には、内筒部材の軸方向両端近傍に設けられたゴム弾性体の外周部に凹部を設けると共に、弾性ストッパの嵌合孔周面に突条を設けて、その突条あるいは弾性ストッパの内周側端部を凹部に嵌め込むことにより、弾性ストッパを組み付ける形態が開示されている。さらに、特許文献2には、内筒部材の軸方向両端近傍に延設されたゴム弾性体の延設部の外周面に、例えばシボ加工等による微小高さの凹凸を形成することにより、延設部に対して弾性ストッパの嵌合孔周面が部分的に異なる圧接力で圧接するようにした形態が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1及び2に開示された弾性ストッパの組付け形態においては、弾性ストッパを嵌め込む際の挿入力を小さくすれば取付け作業が容易になる反面、抜け力も小さくなるため弾性ストッパが抜け落ち易くなる。逆に、弾性ストッパが抜け落ち難くするために、弾性ストッパの抜け力を大きくすると、挿入力も大きくなるため組付作業が困難になるという問題を内在している。そのため、「挿入し易く、抜け難い」という要求を満足できない場合が多い。
【0006】
【特許文献1】特開平5−118367号公報
【特許文献2】特開2000−205323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、弾性ストッパの抜け落ちを有効に防止しつつ、組付作業性を向上させ得るようにした筒形防振装置を提供することを解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、内筒部材と、該内筒部材の外周側に距離を隔てて同軸状に配置された外筒部材と、前記内筒部材と前記外筒部材との間に介在して両部材を弾性的に連結し、前記内筒部材の軸方向端部の外周面を覆うゴム被覆層と該ゴム被覆層の外周面から径方向外方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数の外向き突部とを有するゴム弾性体と、環状に形成されて内周面に径方向内方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数の内向き突部を有し、前記内筒部材の軸方向端部の外周に外嵌された後、周方向に回転されることにより前記内向き突部が前記外向き突部と軸方向において係合した状態に組み付けられる弾性ストッパと、を備えた筒形防振装置であって、前記内向き突部及び前記外向き突部の少なくとも一方の突部は、周方向に延びるに連れて軸方向一端側から他端側へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明の筒形防振装置は、内筒部材側に設けられた外向き突部及び弾性ストッパ側に設けられた内向き突部が、それぞれ複数のものが周方向に距離を隔てて配置され、且つ内向き突部及び外向き突部の少なくとも一方の突部が、上記のような傾斜突条により構成されている。そのため、内筒部材に対して弾性ストッパを組み付けるには、弾性ストッパを、内筒部材の軸方向端部から軸方向に嵌着した後、軸方向に少し押圧しつつ周方向に所定角度回転させればよい。これにより、弾性ストッパの内周面に設けられた複数の内向き突部が、内筒部材の外周面を覆うゴム被覆層に設けられた複数の外向き突部と軸方向において係合し、弾性ストッパが内筒部材から抜け落ちないように組み付けられる。このとき、例えば、外向き突部が傾斜突条により構成されて、内向き突部が点状の突起により構成されている場合には、傾斜突条(外向き突部)の周方向長さの範囲が、軸方向における外向き突部と内向き突部との係合範囲となる。
【0010】
本発明においては、弾性ストッパ側に設けられた内向き突部と内筒部材側に設けられた外向き突部とを、弾性ストッパを回転させることにより係合させるようにしているため、締め代を必要としない。また、内向き突部及び外向き突部は、それぞれ周方向に距離を隔てて複数のものが配置されているので、弾性ストッパを回転させる際の最大回転角度は、内向き突部及び外向き突部の数に応じて小さくすることができる。そのため、弾性ストッパを組み付ける際の挿入力(弾性ストッパを軸方向に押圧する押圧力、及び弾性ストッパを回転させる回転力)が小さくて済むため、組付作業性が大幅に向上する。
【0011】
本発明において、内向き突部及び外向き突部の数は、それぞれ2以上の複数で任意に設定することができるが、それらの数を多くする程、弾性ストッパを回転させる際の最大回転角度を小さくすることが可能となる。内向き突部及び外向き突部の少なくとも一方の突部は、周方向に延びるに連れて軸方向一端側から他端側へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成されている。即ち、内向き突部及び外向き突部の何れか一方の突部を、周方向に延びる突条ではなく、点状に形成される突起により構成するようにしてもよい。このようにした場合には、内向き突部と外向き突部の周方向長さが異なるように設定される。なお、点状に形成される突起は、より多くのものを配置して配置間隔を狭くすることができるので、弾性ストッパの最大回転角度を小さくする上で有利となる。
【0012】
しかし、内向き突部及び外向き突部の両方が、周方向に延びるに連れて軸方向一端側から他端側へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成されている方が好ましい。このようにすれば、内向き突部と外向き突部の周方向長さを十分に確保できることから、それらの軸方向における係合範囲を広くすることができるので、弾性ストッパの抜け落ちをより確実に防止することが可能となる。また、このようにされている場合、内向き突部と外向き突部の傾斜角度が一致するように設定されている方が好ましい。このようにすれば、内向き突部と外向き突部が軸方向において係合したときに面接触するため、大きな抜け力を確保することができる。なお、内向き突部及び外向き突部の何れか一方の突部が、弾性ストッパの内周面又はゴム被覆層の外周面に接触するように構成することにより、軸方向における内向き突部と外向き突部との確実な係合状態を得ることができる。
【0013】
また、ゴム被覆層の外周面及び弾性ストッパの内周面の何れか一方の面に、弾性ストッパの組付時と逆方向の回転を阻止する突起が設けられているのが好ましい。このようにすれば、内向き突部と外向き突部の係合状態を良好に維持することができるので、弾性ストッパの抜け落ちをより確実に防止することができる。この逆回転防止突起は、内向き突部及び外向き突部の突出高さよりも低く設定されている方が好ましい。このようにすれば、組付作業時において弾性ストッパを回転させるときに、内向き突部又は外向き突部が、その突起を容易に乗り越えるようになるため、組付作業を容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の筒形防振装置は、内筒部材の軸方向端部の外周面を覆うゴム被覆層と該ゴム被覆層の外周面から径方向外方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数の外向き突部とを有するゴム弾性体と、環状に形成されて内周面に径方向内方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数の内向き突部を有し、前記内筒部材の軸方向端部の外周に外嵌された後、周方向に回転されることにより前記内向き突部が前記外向き突部と軸方向において係合した状態に組付けられる弾性ストッパと、を備え、前記内向き突部及び前記外向き突部の少なくとも一方の突部は、周方向に延びるに連れて軸方向一端側から他端側へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成されているため、弾性ストッパの抜け落ちを有効に防止しつつ、組付作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施形態に係る筒形防振装置の一部断面で示す正面図であり、図2はその筒形防振装置の弾性ストッパを取付ける前の状態を一部断面で示す斜視図である。
【0016】
本実施形態の筒形防振装置は、図1及び図2に示すように、内筒部材1と、内筒部材1の外周側に距離を隔てて同軸状に配置された外筒部材2と、内筒部材1と外筒部材2との間に介在して両部材1、2を弾性的に連結し、ゴム被覆層31と4条の外向き突部32、…、32とを有するゴム弾性体3と、環状に形成されて内周面に複数の内向き突部42、…、42を有し、内筒部材1の軸方向一端部の外周に組み付けられた弾性ストッパ4と、から構成されている。
【0017】
内筒部材1は、鉄系金属によりストレートな厚肉円筒状に形成されている。外筒部材2は、鉄系金属により内筒部材1よりも薄肉の円筒状に形成されており、円筒部21と、円筒部21の一端から径方向外方に延出するリング状のフランジ部22とからなる。円筒部21は、内筒部材1の外径よりも所定寸法大きい内径をもち、内筒部材1の略1/2の長さを有する。この外筒部材2は、円筒部21が内筒部材1の軸方向中央から少し一端側(フランジ部22側)へ寄った所に位置するようにして、内筒部材1の外周側に距離を隔てて同軸状に配置されている。
【0018】
ゴム弾性体3は、内筒部材1及び外筒部材2と共にゴム材料を加硫成形することにより略円筒状に形成されている。このゴム弾性体3は、その内周面が内筒部材1の外周面に加硫接着されるとともに、その外周面が外筒部材2の円筒部21の内周面に加硫接着されており、これにより内筒部材1と外筒部材2との間に介在して両部材1、2を弾性的に連結している。このゴム弾性体3の軸方向一端側には、ゴム本体部から軸方向外方に延出して内筒部材1の軸方向一端部の外周面を覆う薄肉のゴム被覆層31が設けられている。このゴム被覆層31は、外筒部材2の円筒部21と径方向において重なり合わない位置に設けられている。
【0019】
ゴム被覆層31には、ゴム被覆層31の外周面から径方向外方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数(本実施形態では4条)の外向き突部32、…、32が設けられている。この外向き突部32、…、32は、周方向に延びるに連れて軸方向一端側(図1において上側)から他端側(図1において下側)へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成されている。各傾斜突条は、周方向長さが同じであり、隣り合う二つの傾斜突条の間隔幅よりも少し長い長さに形成されている。なお、外向き突部32、…、32を構成する各傾斜突条は、内筒部材1の軸端面から等距離となる位置に設けられている。
【0020】
弾性ストッパ4は、ゴム材料を加硫成形することにより厚肉円環状に形成されており、軸方向一端側(図1において下側)の内部にリング状に形成された金属製のコア41が埋め込まれている。弾性ストッパ4のコア41と対応する部位の内周面には、径方向内方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数(本実施形態では4条)の内向き突部42、…、42が設けられている。
【0021】
この内向き突部42、…、42は、外向き突部32、…、32と同様に、周方向に延びるに連れて軸方向一端側(図1において上側)から他端側(図1において下側)へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成されている。各傾斜突条は、周方向長さが同じであり、隣り合う二つの傾斜突条の間隔幅よりも少し長い長さに形成されている。また、内向き突部42、…、42を構成する傾斜突条の傾斜角度は、外向き突部32、…、32を構成する傾斜突条の傾斜角度と一致するように設定されている。なお、各内向き突部42、…、42は、弾性ストッパ4の軸端面から等距離となる位置に設けられている。
【0022】
この弾性ストッパ4は、内筒部材1の軸方向一端部に対して次のように組み付けられている。即ち、図2に示すように、内筒部材1の軸方向一端部側(図2において上側)からゴム被覆層31の外周に、弾性ストッパ4の内孔を軸方向に嵌着する。このとき、弾性ストッパ4と内筒部材1との周方向の位置決めは必要なく、任意の位置でよい。
【0023】
そして、弾性ストッパ4を軸方向に嵌着した後、軸方向に少し押圧しつつ周方向(図3及び図4において矢印X方向)に所定角度(最大で90°)回転させる。これにより、図3に示すように、弾性ストッパ4の内周面に設けられた4条の各内向き突部42、…、42の回転方向先端が、内筒部材1の外周面を覆うゴム被覆層31に設けられた4条の各外向き突部32、…、32の端部と係合する。そして、この状態から弾性ストッパ4を更に回転させると、各内向き突部42、…、42が各外向き突部32、…、32に案内されつつ移動して、図4に示すように、各内向き突部42、…、42と各外向き突部32、…、32が、平行に重なり合った状態で係合する。これにより、軸方向における大きな抜け力が確保され、弾性ストッパ4が内筒部材1から抜け落ちないように組み付けられる。
【0024】
以上のように、本実施形態の筒形防振装置は、弾性ストッパ4側に設けられた内向き突部42、…、42と内筒部材1側に設けられた外向き突部32、…、32とを、弾性ストッパ4を回転させることにより係合させるようにしているため、締め代を必要としない。また、内向き突部42、…、42及び外向き突部32、…、32は、それぞれ周方向に距離を隔てて4条のものが配置されているので、弾性ストッパ4を回転させる際の回転角度は、最大でも90°で小さくなっている。そのため、弾性ストッパ4を組み付ける際の挿入力(弾性ストッパ4を軸方向に押圧する押圧力、及び弾性ストッパ4を回転させる回転力)が小さくて済むため、組付作業性が大幅に向上する。
【0025】
したがって、本実施形態の筒形防振装置によれば、弾性ストッパ4の抜け落ちを有効に防止しつつ、取付け作業性を向上させることができる。また、本実施形態では、内向き突部42、…、42及び外向き突部32、…、32の両方が、周方向に延びるに連れて軸方向一端側から他端側へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成されているため、内向き突部42、…、42と外向き突部32、…、32の周方向長さを十分に確保できることから、それらの軸方向における係合範囲を広くすることができるので、弾性ストッパ4の抜け落ちをより確実に防止することができる。さらに、内向き突部42、…、42と外向き突部32、…、32は、傾斜角度が一致するように設定されていることから、内向き突部42、…、42と外向き突部32、…、32が軸方向において係合したときに面接触するため、大きな抜け力を確保することができる。
【0026】
〔変形例1〕
図5は変形例1に係る筒形防振装置において弾性ストッパを取付けた状態の内向き突部と外向き突部の位置関係を示す展開図である。本変形例は、図5に示すように(図中矢印X方向は弾性ストッパの回転方向)、内筒部材1のゴム被覆層31に設けられる外向き突部32、…、32が、8個の点状突起により構成されたものであり、それらは周方向において等間隔に配置されている。また、各外向き突部32、…、32は、内筒部材1の軸端面から等距離となる位置に設けられている。なお、弾性ストッパ4の内周面に設けられる内向き突部42、…、42は、上記実施形態と同じ4条の傾斜突条で構成されている。
【0027】
本変形例の場合には、外向き突部32、…、32が点状突起により構成されているため、配置個数を多くしてそれらの配置間隔が狭くされているので、弾性ストッパ4を回転させて組み付ける際の最大回転角度を小さくすることができる。なお、本変形例では、外向き突部32、…、32を点状突起により構成し、内向き突部42、…、42を傾斜突条により構成するようにしているが、それらを逆にして、外向き突部32、…、32を傾斜突条により構成し、内向き突部42、…、42を点状突起により構成するようにしてもよい。
【0028】
〔変形例2〕
図6は変形例2に係る筒形防振装置において弾性ストッパを取付けた状態の内向き突部と外向き突部の位置関係を示す展開図である。本変形例は、図6に示すように(図中矢印X方向は弾性ストッパの回転方向)、内筒部材1のゴム被覆層31に設けられる外向き突部32、…、32が、2個一組で配置される合計4組の点状突起により構成されたものであり、弾性ストッパ4の内周面に設けられる内向き突部42、…、42は、上記実施形態と同じ4条の傾斜突条で構成されている。外向き突部32、…、32の各一組の点状突起は、内向き突部42、…、42の傾斜突条の長さよりも短い距離を隔てて配置され、且つ内向き突部42、…、42の傾斜突条の傾斜角度に合わせて傾斜するように配置されている。
【0029】
本変形例の場合には、内向き突部42、…、42の各傾斜突条に対して、それぞれ2個の点状突起が係合するように構成されているため、変形例1の場合に比べて、より大きな抜け力を確保することができる。なお、本変形例の場合にも、外向き突部32、…、32を傾斜突条により構成し、内向き突部42、…、42を2個一組で配置される点状突起により構成するようにしてもよい。
【0030】
〔変形例3〕
図7は変形例3に係る筒形防振装置において弾性ストッパを取付けた状態の内向き突部と外向き突部の位置関係を示す展開図である。本変形例は、図7に示すように(図中矢印X方向は弾性ストッパの回転方向)、内筒部材1のゴム被覆層31の外周面に、弾性ストッパ4の組付時と逆方向の回転を阻止する逆回転防止突起33、…、33が設けられているものである。
【0031】
本変形例においては、ゴム被覆層31の外周面に設けられた外向き突部32、…、32は、傾斜突条により構成されており、それら外向き突部32、…、32の逆回転方向(図7において右方向)側の端部に、それぞれ逆回転防止突起33、…、33が設けられている。この場合、弾性ストッパ4の内周面に設けられる内向き突部42、…、42は、外向き突部32、…、32の傾斜突条よりも少し短い長さの傾斜突条により構成されている。逆回転防止突起33、…、33は、内向き突部42、…、42の逆回転方向側の端部が当接することにより、弾性ストッパ4の逆方向への回転を防止するように構成されている。なお、逆回転防止突起33、…、33は、外向き突部32、…、32の突出高さよりも低くされている。
【0032】
本変形例の場合には、上記のように逆回転防止突起33、…、33が設けられていることから、内向き突部42、…、42と外向き突部32、…、32の係合状態を良好に維持することができるので、弾性ストッパ4の抜け落ちをより確実に防止することができる。また、逆回転防止突起33、…、33は、外向き突部32、…、32の突出高さよりも低くされていることから、組付作業時において弾性ストッパ4を回転させるときに、内向き突部42、…、42が、逆回転防止突起33、…、33を容易に乗り越えるようになるため、組付作業を容易に行うことが可能となる。なお、逆回転防止突起33、…、33は、弾性ストッパ4の内周面に設けようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る筒形防振装置の一部断面で示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る筒形防振装置の弾性ストッパを取付ける前の状態を一部断面で示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る筒形防振装置において弾性ストッパを取付ける際の内向き突部と外向き突部の位置関係を示す展開図である。
【図4】本発明の実施形態に係る筒形防振装置において弾性ストッパを取付けた状態の内向き突部と外向き突部の位置関係を示す展開図である。
【図5】本発明の変形例1に係る筒形防振装置において弾性ストッパを取付けた状態の内向き突部と外向き突部の位置関係を示す展開図である。
【図6】本発明の変形例2に係る筒形防振装置において弾性ストッパを取付けた状態の内向き突部と外向き突部の位置関係を示す展開図である。
【図7】本発明の変形例3に係る筒形防振装置において弾性ストッパを取付けた状態の内向き突部と外向き突部の位置関係を示す展開図である。
【符号の説明】
【0034】
1…内筒部材 2…外筒部材 21…円筒部 22…フランジ部 3…ゴム弾性体 31…ゴム被覆層 32…外向き突部 33…逆回転防止突起 4…弾性ストッパ 41…コア 42…内向き突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒部材と、
該内筒部材の外周側に距離を隔てて同軸状に配置された外筒部材と、
前記内筒部材と前記外筒部材との間に介在して両部材を弾性的に連結し、前記内筒部材の軸方向端部の外周面を覆うゴム被覆層と該ゴム被覆層の外周面から径方向外方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数の外向き突部とを有するゴム弾性体と、
環状に形成されて内周面に径方向内方へ突出し周方向に距離を隔てて配置された複数の内向き突部を有し、前記内筒部材の軸方向端部の外周に外嵌された後、周方向に回転されることにより前記内向き突部が前記外向き突部と軸方向において係合した状態に組み付けられる弾性ストッパと、を備えた筒形防振装置であって、
前記内向き突部及び前記外向き突部の少なくとも一方の突部は、周方向に延びるに連れて軸方向一端側から他端側へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成されていることを特徴とする筒形防振装置。
【請求項2】
前記内向き突部及び前記外向き突部の両方が、周方向に延びるに連れて軸方向一端側から他端側へ次第に傾斜するように形成された傾斜突条により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の筒形防振装置。
【請求項3】
前記内向き突部と前記外向き突部は、周方向長さが異なるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の筒形防振装置。
【請求項4】
前記内向き突部と前記外向き突部は、傾斜角度が一致するように設定されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の筒形防振装置。
【請求項5】
前記ゴム被覆層の外周面及び前記弾性ストッパの内周面の何れか一方の面に、前記弾性ストッパの組付時と逆方向の回転を防止する逆回転防止突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の筒形防振装置。
【請求項6】
前記逆回転防止突起は、前記内向き突部及び前記外向き突部の突出高さよりも低く設定されていることを特徴とする請求項5に記載の筒形防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−249050(P2008−249050A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92376(P2007−92376)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】