答案分析処理方法及び答案分析処理システム
【課題】特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を多面的に測定し、これを収集して母集団の理解傾向を与えて、教育上の課題を抽出可能とする。
【解決手段】問題文の1つの解答例である典型解答例から学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出チェック要素を列記してチェックボックスを作成する。チェックボックスのチェック要素毎にその有無の組み合わせである解答例パターンを求め、これらが互いに同一とならないようにチェック要素を訂正する。その上で、受験者毎の求解手続の記載についてチェックボックスのチェック要素毎にその有無の組み合わせである個人パターンを求め、受験者を識別する識別符号とともに前記個人パターンを記録する。個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する。
【解決手段】問題文の1つの解答例である典型解答例から学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出チェック要素を列記してチェックボックスを作成する。チェックボックスのチェック要素毎にその有無の組み合わせである解答例パターンを求め、これらが互いに同一とならないようにチェック要素を訂正する。その上で、受験者毎の求解手続の記載についてチェックボックスのチェック要素毎にその有無の組み合わせである個人パターンを求め、受験者を識別する識別符号とともに前記個人パターンを記録する。個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載から受験者全体の所定の学習項目に対する理解傾向を分析処理するための答案分析処理方法及び答案分析処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種学校の入学試験などでは、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続又は意見などの記載を求めて、受験者毎の問題に対する処理能力を測定(採点)し入学の合否を判定している。このような試験では、測定結果が受験者の利益・不利益に影響を与えるため、測定の公平性、つまり測定又は測定者(採点者)毎のばらつきを排除した均一性が要求される。そこで、例えば、最終的な解答をいくつかの選択肢から受験者に選択させる「多肢選択式試験」を採用する場合がある。受験者の解答は選択肢に集約されるので、測定者は機械的にこれを処理できて、測定毎のばらつきを排除できるのである。
【0003】
ところで、国や地方自治体の教育指針を定めるような場合には、試験により特定の学習項目に対する母集団の理解傾向を多面的に測定して、教育上の課題を抽出する必要がある。このような試験についても、測定(採点)又は測定者(採点者)毎のばらつきを排除した均一性が要求されるから、「多肢選択式試験」が採用され得る。つまり、予測される理解傾向に従って特定の学習項目をポイントに細分化し、これにピンポイントで対応した問題及び選択肢を作成する。受験者の解答を逆に辿って集計すると、特定の学習項目に対する母集団の理解傾向が測定できる。このような方法において、教育上の課題を適確に抽出するには学習項目のポイント分けが母集団の理解傾向を詳細に反映していなければならない。しかしながら、母集団の理解傾向は常に詳細に予測できるとは限らない。また一部の受験者が所定の手続きを経ないで選択肢を選んだとしてもこれを所定の手続を経て選択した受験者と区別できず測定が不正確となりがちである。
【0004】
そこで、母集団の全員又は一部に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続又は考えや意見などの一定量の自由記述を求めて、これから受験者毎の特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を多面的に測定しこれを収集して母集団の特定の学習項目に対する理解傾向を測定する「記述式試験」が採用され得る。
【0005】
ところで「記述式試験」において、測定又は測定者毎のばらつきを排除して測定の均一性を高める試みが既になされている。
【0006】
特許文献1は、「記述式試験」における受験者の自由記述を機械的に処理するための自動採点システムを開示している。受験者の問題に対する自由記述を言語解析して解答モデルを作成し、予め格納されている模範解答と比較して採点が行われる。解答モデル及び模範解答に言語解析による一定の幅を設けているため、互いの一致・不一致は容易に判断できる。しかしながら、ここでは予め用意された模範解答と受験者の自由記述との間の対比を行うだけであって、特定の学習項目に対する一連の理解度を測定するものではない。
【0007】
また、特許文献2では、解答が一意に定まらない「記述式試験」における受験者の自由記述を採点(測定)するシステムを開示している。1の採点者の採点結果はシステム上で修正できて、複数の採点者間で採点結果が一致せず、採点の結果の客観性に疑問がある場合には、他の測定者の測定根拠を参照しながら測定結果を再評価してこれを修正できる。測定結果及び測定根拠を複数の測定者が共有することで、自らが行った主観的な測定結果にとらわれず、様々な視点から解答を再評価できるのである。この場合も予め用意された模範解答及び受験者の自由記述の間の対比を行うだけであって、特定の学習項目に対する一連の理解度を測定するものではない。
【特許文献1】特開2001−56634号公報
【特許文献2】特開2006−277086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、数万人、数十万人といった母集団で「記述式試験」を行って、母集団の特定の学習項目に対する一連の理解傾向を測定し、教育上の課題を抽出しなければならない場合がある。一方で、上記したように、従来の記述式試験では、受験者の求解手続の記載を処理する者、すなわち採点者の判断・裁量がその処理に介在していたため、処理結果が採点毎、また採点者毎によって異なるとの問題があった。この傾向は受験者が多くなるとより大きな問題となる。
【0009】
本発明は、このような大人数の受験者であっても、特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を多面的に測定し、これを収集して母集団の理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題を抽出可能とする答案分析処理方法及びそのシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者全体の所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する答案分析処理方法であって、前記問題文の1つの解答例である典型解答例から前記学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出してこれを構成するいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素を列記してチェックボックスを作成するチェックボックス作成ステップと、前記所定の学習項目についての理解度に差異を与えた求解手続の記載からなる他の解答例を複数作成し、前記典型解答例及び前記解答例のそれぞれについて前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の組み合わせである解答例パターンを求め、これらが互いに同一とならないように前記チェック要素を訂正する訂正ステップと、前記受験者毎の前記求解手続の記載について前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の組み合わせである個人パターンを求め、前記受験者を識別する識別符号とともに前記個人パターンを記録する個人記録ステップと、前記個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する集計ステップと、からなることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、採点者は、受験者の求解手続の記載(答案)の中にいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素(ターム)が有るか無いかをチェックするだけであるから、採点者の判断・裁量が処理に介在しない。故に、数万人、数十万人といった規模の受験者であっても、その答案を複数の採点者又は機械によって迅速に処理できて、しかも処理結果は常に一定になるのである。その上で、かかるチェック要素は学習項目を細分化した複数の小項目に対応しているから、チェック要素毎の有無の組み合わせは特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を反映したものである。よってチェック要素毎の有無の組み合わせについて処理データを集計すれば母集団の特定の学習項目についての理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題の抽出が可能である。
【0012】
更に、本発明のシステムは、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者全体の所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する答案分析処理システムであって、前記問題文の1つの解答例である典型解答例から前記学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出してこれを構成するいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素の入力を許容しこれを表示するチェックボックス表示手段と、前記受験者毎の前記求解手続の記載について、前記受験者を特定するための入力を許容しこれに応じて識別符号を生成し、前記チェックボックス表示手段によって表示される前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の入力を許容しこの有無の組み合わせである個人パターンを生成し、前記識別符号とともに前記個人パターンを個人記録として記録するチェック手段と、前記個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する集計手段と、からなることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、上記したと同様に、大規模の受験者であっても母集団の特定の学習項目についての理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題の抽出が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の原理を説明するためにn人の受験生の母集団に対して所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する方法を図1及び図2を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、1つの学習項目は、多くの小項目(A、B、C、D、E、F・・・・・・)からなる集合体である。この所定の学習項目についての母集団の理解傾向を分析処理するためには、小項目のいくつか(A、B、C、D、E)を選択して(S1)、これらに対応した情報要素(a、b、c、d、e)を含むように問題を作成する(S2)。なお、一部の情報要素(e)は、問題文には明記しなくとも問題を解いていく上で必然的に外部から導かれるような場合がある。(例えば、円周率の値は、問題文中に明記されていなくとも、必要に応じて使われ得る。)このような情報要素(e)は問題文中には明記されない場合がある。
【0016】
次に、問題を解いていく求解過程を含めて1つの解答例である典型解答例を作成する(S3)。典型解答例は、いくつかの数値の固まり、式、文、及び、単語などの「ターム」(p1〜p13)によって表現される。
【0017】
一方、選択した小項目(A、B、C、D、E)の中から理解傾向を分析処理する分析項目(A、B、C)を決定する(S4)。なお、分析項目が多いほど母集団の所定の学習項目に対するより細かい理解傾向を知ることが出来る。一方で、これが多すぎると、分析項目間の差異が不明瞭となり、また処理の煩雑さが増加する。故に、適宜、分析項目となる小項目数を調整することが好ましい。
【0018】
典型解答例中の「ターム」(p1〜p13)から分析項目(A、B、C)のそれぞれに対応した「ターム」を抜き出す(S5)。例えば、分析項目Aについて(p1、p2、p3、p4)、分析項目Bについて(p2、p5、p6、p7、p8)、分析項目Cについて(p3、p9、p10)の各「ターム」の集合体で典型解答例中に表現されているとする。各集合体には、分析項目(A、B、C)相互間で共通する「ターム」を含み得る。なお、典型解答例中だけでなく、分析項目に対応して他の「ターム」を与えても良い。
【0019】
図2に示すように、分析項目(A、B、C)毎の「ターム」の集合体からそれぞれ少なくとも1つ以上の「ターム」を選択して列記する。選択した「ターム」(p1、p2、p5、p7、p9、p10)が答案の求解手続の記載に含まれているか含まれていないかを二択でチェックするチェックボックス要素を列記したチェックボックスを作成する。ここで、すべてのチェックボックス要素について二択でチェックした結果であるチェックパターンは、チェックボックス要素の個数をnとすると、2nつまり、ここでは2n通りの組み合わせが存在する。なお、一連の「ターム」はこれを連結して(p1+p2、p5、p7、p9+p10)のようにすることもできて、この場合、チェックパターンは、24通りの組み合わせとなる。
【0020】
特定の理解傾向及び理解度を反映した解答例α、β、γ・・・を作成する(S7)。なお、解答例α、β、γ・・・には典型解答例を含んでもよい。解答例α、β、γ・・・も「ターム」の集合体からなる。例えば、解答例αについて(p1〜13)、解答例βについて(p1〜p6、p7’、p8’、p9’)、解答例γについて(p1、p12、p13)の「ターム」の集合体で表現されるとする。解答例α、β、γ・・・のそれぞれについて、チェックボックス要素に選ばれた「ターム」(p1、p2、p5、p7、p9、p10)の有無をチェックして、チェックパターンを求める。ここで各タームの「有」を○、「無」を×で示すと、解答例αについて(○、○、○、○、○、○)、解答例βについて(○、○、○、×、×、×)、解答例γについて(○、×、×、×、×、×)となる。なお、解答例α、β、γ・・・について相互に同じチェックパターンとなったときは、チェックボックス要素を変更する。
【0021】
さて、母集団を構成するn人の受験者に上記したような情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載(答案)の提出を求める。n人全て若しくはその一部の受験者の求解手続の記載について、チェックボックス要素に選ばれた「ターム」(p1、p2、p5、p7、p9、p10)のそれぞれの有無をチェックしてチェックパターンを求める。チェックボックスの要素毎のチェックは、受験者の求解手続の記載の中にその「ターム」が有るか無いかをチェックするだけであるから、機械による自動集計も可能である。仮に人手によったとしても、チェックを担当する者によってチェックパターン結果が異なることはほとんどないから、多くのチェック担当者を採用してもよく、迅速な処理が出来る。
【0022】
さらにチェックボックスの組み合わせパターン毎の人数を集計する。この集計から、母集団の所定の学習項目に対する理解傾向を知ることが出来る。すなわち、上記した解答例α、β、γ・・・と同じチェックボックスの組み合わせパターンを有する受験者の答案について、それぞれの解答例と同じ特定の理解度にあると予測される。解答例α、β、γ・・・と同じ特定の理解度にある受験者同士の比、母集団に対するおおよその割合から母集団の所定の学習項目に対する理解傾向を求めることが出来る。なお、解答例α、β、γ・・・と同じチェックボックスの組み合わせパターン以外の人数が少ないほど、この理解傾向についての「確からしさ」が高められる。そこで、母集団を構成する人数が多くてもチェックパターンの集計は容易であるので、タームを変更したチェックボックスを作成して「確からしさ」を高めるとともに、特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を多面的に測定し得る。
【0023】
なお、チェックパターン毎の集計人数から、例えば、一番人数の多いチェックパターンであるとか、特定のチェックパターンはどのような所定の学習項目に対する理解度であるかは、上記したような解答例をいろいろ作成し、チェックパターンを求めてそのパターンが同じとなるまで解答例の修正を行うことで達成され得る。
【0024】
従来の記述式試験では、受験者の求解手続の記載についての処理をする者、すなわち採点者の判断・裁量が受験者の求解手続の記載、すなわち答案の処理に介在していた。故に、処理結果が採点又は採点者毎によって異なるとの問題があった。上記態様によれば、採点者は、受験者の求解手続の記載中に「ターム」が有るか無いかをチェックするだけであるから、採点者の判断・裁量が受験者の答案の処理に介在せず、処理結果は採点又は採点者毎にほとんど異ならないのである。その上で、かかる「ターム」は学習項目を細分化した複数の小項目に対応しているから、チェック要素毎の有無の組み合わせは特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を反映したものである。よってチェック要素毎の有無の組み合わせについて処理データを集計すれば母集団の特定の学習項目についての理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題の抽出が可能である。
【実施例】
【0025】
更に、本発明の1つの実施例について、図3乃至図13を用いて詳細に説明する。
【0026】
本実施例では、L1:「問題文の条件に基づき一元二次方程式を立式して、この方程式の複数の解を得た上で問題文中に示された前提条件に沿った解答をする」という数学の1つの学習項目に対する複数の受験者の理解傾向を分析処理する方法及びそのシステムの1つの実施例について説明する。
【0027】
まず、図3に示すように、学習項目L1の内容を細分化して、本問題で問うべき小項目L2を抽出する。すなわち、<1>題意から一元二次方程式を立式できること、<2>一元二次方程式の式変形を正確にできること、<3>一元二次方程式の解を得ること、<4>得られる2つの解から問題文中に示された前提条件に沿って解答をすること、の4つの小項目<1>〜<4>を抽出する。
【0028】
次に、図4に示すように、上記した小項目<1>〜<4>に対応した問題文Q1及びその典型解答例として解答例A1を作成する。なお、典型解答例は、一般的に、「模範解答」と称される解答例であることが好ましいがこれに限定されるものではない。ここでは、数字の配列表から一元二次方程式を立式する問題として身近な題材であるカレンダーを選んで作題した。問題文Q1は、抽出した小項目L2の各々について、受験者の理解度をその解答中で確認できるように作成されていなければならない。つまり、少なくとも解答例A1中に小項目L2の各々が確認できるように反映されていなければならず、必要に応じて問題文を修正する。各小項目<1>〜<4>は、解答例A1中に以下のように反映されている。
<1>:(第1行目)
<2>:(第2行目)〜(第4行目)
<3>:(第5行目)
<4>:反映されず
すなわち、解答例A1では、第5行目で一元二次方程式から得られた2つの解をそのまま第6行目の「答え」の欄に転記しており、小項目<4>の「得られる2つの解から問題文中に示された前提条件に沿って解答をすること」との内容を反映していない。そこで、全く同じ一元二次方程式が導かれるが、その2つの解の一方については問題文中に示された前提条件から不適当となるように問題文Q1の修正を工夫する。
【0029】
図5の問題文Q2に示すように、例えば、カレンダーの数字の配列を変えて、xの値に制限を与えて一元二次方程式の2つの解の一方を不適当とする条件を追加する。すると、問題文Q2に対する典型解答例である解答例A2に示したように、2つの解「3」及び「7」の一方の解「7」は、問題文Q2のカレンダーを参照すると、「左隣の数」がないから答えから除外される。なお、本実施例における分析に最低限必要な求解手続の記載を受験生に促すよう問題文Q2中には、「求める過程も書きなさい」とその指示を加えた。
【0030】
図6に示すように、再び、各小項目<1>〜<4>が解答例A2に反映されているかを確認すると、
<1>:(第1行目)
<2>:(第2行目)〜(第4行目)
<3>:(第5行目)
<4>:(第6行目)〜(第7行目)
となる。
【0031】
次に、分析手法上、学習項目L1から抽出した小項目L2からさらに受験者の理解傾向を分析するための分析項目を選択する。すなわち、小項目L2の数が多い場合、受験者の答案を細かく類型別けでき得るのであるが、一方で類型毎の差異が小さくなって類型間の特徴を把握しづらくしてしまう。そこで、例えば、4つの小項目から3つの小項目<1>〜<3>を選択して後述する操作で受験者の答案のチェックパターンを求めた後、さらに小項目<2>〜<4>を選択して同様の操作を行って類型毎の差異を明らかにしてもよい。なお、本実施例においては小項目<1>〜<4>の全てを分析項目<1>〜<4>として選択した。
【0032】
次に、図6に示すように、解答例A2の分析項目<1>〜<4>に対応する記載部分から少なくとも1つずつ以上の「いくつかの数値の固まり」、「式」、「単語」、又は、「文」などの「ターム」を選択して、「ターム」の有無を問うCB要素を列記する。ここでCB要素を列記したCBは、各受験者の答案の求解手続の記載中に「ターム」を表現しているかどうかを二択で判断するテンプレートである。故に、CB要素は、「ターム」の記載の有無を二択で判断でき得る表現形態で構成される。一方で、求解手続きの記載中に「ターム」が表現されているかは直接に特定の項目に対する理解の有無を問うものではない。
【0033】
図7に示すように、ここでは「ターム」の記載の有無を文章で問い掛けている。例えばCB1「(x+7)の記載がある」と、分析項目<1>に対応する解答例A2の第1行目の記載から短い式の部分(x+7)を選択して(図6参照)、この「ターム」の記載があるかどうかを文章で問い掛けている。また、CB0「数字・文字の記載がない」については、分析項目<1>〜<4>の全てに共通する、記載自体の有無を問い掛けている。更に、CB11は“答えの欄に「3」のみの記載がある”と、求解手続の記載中ではなく「答え」の欄の記載において、「3及び7」ではなく「3」だけが記載されていることを問い掛けている。このようなCB要素の判断は、通常の採点者であればほとんど異なった判断にはなり得ず、後述する各受験者の答案毎のチェックパターンの取得について複数の採点者でこれを行ったとしても客観性を担保できるのである。
【0034】
次に、図8及び図9に示すように、特定の理解傾向を反映した解答例A3〜A6を作成する。例えば、小項目「<4>得られる2つの解から前提条件に沿った解答をすること」に関して、「xの左隣に数字がなくてはならない」という問題文中の前提条件に気付かず、答えの欄において隣に数字がない「7」を除外しなかった解答例をA3とする。また、小項目「<1>題意から一元二次方程式を立式できること」に関して、xの真下にある数については理解できても積についての立式を誤った解答例をA5とする。さらに、小項目「<2>一元二次方程式の式変形を正確にできること」に関して、一元二次方程式の正と負の積における符号に誤りのある解答例をA4とする。また、白紙の解答例をA6とする。
【0035】
次に、図10に示すように、解答例A2〜A6についてCBの各CB要素(CB0〜CB11)についてチェックを行って、チェックの正否の組み合わせ(以下チェックパターンと称する。)を求める。ここで、図中の「○」は各CB要素の条件を満たす(肯定された)印であり、「×」は条件を満たさない(否定された)印である。チェックパターンは、各CB要素に対して「×」か「○」かの二択を与えるから、CB要素の数をn個とするとチェックパターンの数は、2n通りある。本実施例ではCB要素は11個であるから、チェックパターンの数は211通りである。
【0036】
ここで、後述するように少なくとも類型分けしたい各解答例A2〜A6のチェックパターンは互いに同一とならないように必要に応じてCB要素の変更を行う。なお、本実施例では互いに同一となるチェックパターンがなかったため、CB要素の変更は行わなかった。各解答例A2〜A6のチェックパターンを類型C2〜C6とする。
【0037】
次に、複数の受験者の答案毎に各CB要素をチェックしてチェックパターンを取得してデータベース化する。上記したように答案から得られるチェックパターンは、最大211通りに分類され得る。しかしながら、単一の問題の中で作成されるCB要素は互いに少なからず連関関係を有するので、特定のCB要素間のチェック結果は連関する。故に、チェックパターンの数は上記した最大数よりもずっと少なくなるのである。本実施例では、類型分けしたいチェックパターンは解答例A2〜A6の5通りである。5通り以上のチェックパターンを確保するため、CB要素の数nは5≦2n、すなわちn≧3である必要がある。
【0038】
次に、類型C2〜C6のチェックパターンと同一のチェックパターンとなる答案の数をそれぞれ求める。これらの答案数同士の比、及び、全答案数に占めるそれぞれの割合から受験者の理解傾向を分析できる。例えば、類型C5のチェックパターンと同一のチェックパターンを示す答案は、解答例A5と同様の傾向、すなわち小項目「<1>題意から一元二次方程式を立式できること」に関して、xの真下にある数については理解できていても積についての立式を誤ってしまう程度の理解度と推定される。同様に、類型C4のチェックパターンと同一の答案は、解答例A4と同様の傾向、つまり、小項目「<2>一元二次方程式の式変形を正確にできること」に関して、一元二次方程式の正と負の積における符号に誤りのある式変形を導いてしまう程度の理解度であると推定できる。全答案数に占める前者と後者との割合を求めると、全受験者の理解傾向を把握することができる。
【0039】
以上、本実施例では、CB要素は短い「ターム」の記載の有無を問うものであって、チェック担当者は、受験者の答案中におけるこの「ターム」の有無を客観的且つ迅速に判断できる。一方、短い「ターム」の答案中における有無が特定の項目に対する理解の有無をそのまま問うものではない。つまり、学習項目に関係した複数のCB要素で受験者の答案をチェックしてチェックパターンを得て、これを理解度の異なる特定の解答例とのチェックパターンと対比することで、所定の確率で互いの相関関係を得られる。つまり、各答案の学習項目に対する理解度を分類できるのである。故に、母集団の特定の学習項目についての理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題の抽出が可能である。
【0040】
分析方法については上記した如きであるが、一旦、分析結果を得た後に、類型C2〜C6に類型分けされなかった答案について、解答例を追加して、さらに分析を続けることも出来る。
【0041】
図11に示すように、解答例A7は、解答例A4と同様に小項目<2>に関して、一元二次方程式の途中式の変形に誤りを有する解答例である。詳細には、解答例A4は因数分解を誤っており、解答例A7は式の展開を誤っている。このとき、図12に示すように、解答例A7についてのチェックパターンは、類型C2〜C6のいずれのチェックパターンとも異なる。そこで解答例A7についてのチェックパターンを類型C7として、類型C2〜C6に類型分けされなかった答案について、その一部を類型C7に類型分けできる。なお、類型C7に類型分けされた答案は、上記したように、小項目<2>に関して、式の展開に誤りを生じる傾向にある答案と推定できる。
【0042】
さらに、学習項目に対する理解度の似通ったと推定される答案の類型分けされる複数の類型を1つの類型にまとめても良い。
【0043】
図13に示すように、CB4〜CB8は、典型解答例である解答例A2の第2行目〜第4行目、すなわち小項目<2>に関する記載から選択したタームによって作成されたCB要素である。CB4〜CB8の中に少なくとも1つ以上「×」となるCB要素を含む解答例は、小項目<2>に関して、少なくとも一部の理解を欠いていると推定される。このような推定を受ける答案を類型分けするため、類型CC4として、CB4〜CB8について、注1のように「少なくとも1箇所は×」とした類型を作成しても良い。
【0044】
さらに、CB要素毎の連関を考慮して、答案の類型分けされる複数の類型を1つの類型にまとめても良い。
【0045】
図13に示すように、式の変形を誤ると、その後の記載は、通常、典型解答例A2と異なるか、若しくは、無記載となるはずである。一方で、CB要素は式全体の記載の有無を問うのではなく、その一部である短い「ターム」の有無を問うものであるから、偶然にも典型解答例A2と同じ「ターム」を含む場合もあり得る。CB4〜CB8に「×」を含む解答例では、CB9〜CB11は、本来、典型解答例A2と異なるか、若しくは、無記載となるはずである。故に、CB9〜CB11のチェック結果はいずれであってもよく、類型CC4として、「−」と表わした類型を作成しても良い。類型CC5も同様である。
【0046】
次に、上記分析処理方法を実行するための答案分析処理システムの1つの実施例について図14を用いて説明する。
【0047】
答案分析処理システム1は、中央制御部2に接続されたメイン入力装置3、警報手段4及びデータ記憶装置5と、CB採点者の使用する複数の端末装置6とを備える。データ記憶装置5は、CBデータを保存するCBデータ記憶部8、受験者の答案データの画像情報若しくは読み取り情報を保存する答案データ記憶部9、CBパターンなどの個人データを保存する個人データ記憶部10を有する。メイン入力装置3及び端末装置6は、画像表示装置14及びキーボードなどの入力手段15をそれぞれ含む。これらは、中央制御部2とインターネット回線やLAN回線等によって双方向通信可能に接続されている。
【0048】
次に、上記した答案分析処理システム1の使用方法について図14を用いて説明する。
【0049】
答案分析処理を統括する者(以下、統括者と称する。)によって、作成されたCBデータはメイン入力装置3の入力手段15から入力されて、CBデータ記憶部8に転送・保存される。また、解答例A2〜A6についても、メイン入力装置3の入力手段15から入力され、答案データ記憶部9に解答例データとして転送・保存される。なお、入力手段15をスキャナなどによることで、画像データとしてCBデータ及び解答例データを保存することもできる。
【0050】
次に、統括者がメイン入力装置3を操作すると、CBデータ記憶部8からCBデータ、答案データ記憶部9から1の解答例データがメイン入力装置3に転送されて、その画像表示装置14に表示される。統括者は、入力手段15を操作してCB要素毎に「ターム」の「有」「無」を「○」「×」の二択で入力する。すべてのCB要素に対する入力が終了したことを示す入力を行うと、「○」「×」の一連データであるチェックパターンが解答例A2〜A6を特定する符号とともに個人データ記憶部10に転送・保存される。
【0051】
解答例A2〜A6のそれぞれについてチェックパターンの入力が終了すると、中央制御部2は、メイン入力装置3の画像表示装置14に解答例A2〜A6のチェックパターンを表示させる。中央制御部2は、解答例A2〜A6に同じチェックパターンが存在すると、メイン入力装置3の画像表示装置14に警告を表示させるとともに、警報手段4から警報を送出させる。統括者は、これに応じてメイン入力装置3を操作してCBデータを一度、消去し、CB要素の再入力を行う。一方、同じチェックパターンが存在しない場合は、中央制御部2は、解答例A2〜A6に対応するチェックパターンをそれぞれ類型C2〜C6としてCBデータ記憶部8に書き換えさせる。
【0052】
一方、問題文Q2が受験者に与えられ、各受験者の求解手続の記載された答案が回収される。統括者によって、答案は、図示しない電子情報化手段で画像データ化されて答案データとして答案データ記憶部9に受験者を特定する氏名や受験番号などと併せて保存される。
【0053】
次に、各端末装置6から中央制御部2へ採点開始信号を送出すると、中央制御部2は、各端末装置6へ向けてCBデータ記憶部8からCBデータを、また答案データ記憶部9から1の答案データを送出する。端末装置6の画像表示装置14にはCBデータ及び答案データが表示されて、CBのCB要素毎の入力が可能となる。採点者は端末装置6の入力手段15を操作してCB要素毎に「ターム」の有無を入力する。すべてのCB要素に対する入力が終了したことを示す入力を行うと、チェックパターンが受験者を特定する符号とともに中央制御部2を経て、個人データ記憶部10に転送・保存される。
【0054】
すべての受験者の答案についてチェックパターンを得て、個人データ記憶部10にデータベースを作成する。データベースの解析については上記したので詳述しない。
【0055】
なお、中央制御部2は、明らかに矛盾するチェックパターンの入力に対して修正を促すように端末装置6に警告を発する機能を有していても良い。例えば、CB0「数字、文字の記載がない」にチェックした場合、他の記載内容を問うCB要素にチェックは付き得ないから、これに反するチェックパターンの入力に対して中央制御部2は、端末装置6に向けて再入力をするよう警告を発し、入力ミスを減ずることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による答案分析処理方法を示すフロー図である。
【図2】本発明による答案分析処理方法を示すフロー図である。
【図3】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図4】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図5】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図6】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図7】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図8】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図9】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図10】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図11】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図12】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図13】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図14】本発明による答案分析処理システムの図である。
【符号の説明】
【0057】
1 答案分析処理システム
2 中央制御部
3 メイン入力装置
4 警報手段
5 データ記憶装置
6 端末装置
8 CBデータ記憶部
9 答案データ記憶部
10 個人データ記憶部
14 画像表示装置
15 入力手段
L1 学習項目
L2 小項目
Q2 問題文
CB チェックボックス
A1〜A7 解答例
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載から受験者全体の所定の学習項目に対する理解傾向を分析処理するための答案分析処理方法及び答案分析処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種学校の入学試験などでは、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続又は意見などの記載を求めて、受験者毎の問題に対する処理能力を測定(採点)し入学の合否を判定している。このような試験では、測定結果が受験者の利益・不利益に影響を与えるため、測定の公平性、つまり測定又は測定者(採点者)毎のばらつきを排除した均一性が要求される。そこで、例えば、最終的な解答をいくつかの選択肢から受験者に選択させる「多肢選択式試験」を採用する場合がある。受験者の解答は選択肢に集約されるので、測定者は機械的にこれを処理できて、測定毎のばらつきを排除できるのである。
【0003】
ところで、国や地方自治体の教育指針を定めるような場合には、試験により特定の学習項目に対する母集団の理解傾向を多面的に測定して、教育上の課題を抽出する必要がある。このような試験についても、測定(採点)又は測定者(採点者)毎のばらつきを排除した均一性が要求されるから、「多肢選択式試験」が採用され得る。つまり、予測される理解傾向に従って特定の学習項目をポイントに細分化し、これにピンポイントで対応した問題及び選択肢を作成する。受験者の解答を逆に辿って集計すると、特定の学習項目に対する母集団の理解傾向が測定できる。このような方法において、教育上の課題を適確に抽出するには学習項目のポイント分けが母集団の理解傾向を詳細に反映していなければならない。しかしながら、母集団の理解傾向は常に詳細に予測できるとは限らない。また一部の受験者が所定の手続きを経ないで選択肢を選んだとしてもこれを所定の手続を経て選択した受験者と区別できず測定が不正確となりがちである。
【0004】
そこで、母集団の全員又は一部に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続又は考えや意見などの一定量の自由記述を求めて、これから受験者毎の特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を多面的に測定しこれを収集して母集団の特定の学習項目に対する理解傾向を測定する「記述式試験」が採用され得る。
【0005】
ところで「記述式試験」において、測定又は測定者毎のばらつきを排除して測定の均一性を高める試みが既になされている。
【0006】
特許文献1は、「記述式試験」における受験者の自由記述を機械的に処理するための自動採点システムを開示している。受験者の問題に対する自由記述を言語解析して解答モデルを作成し、予め格納されている模範解答と比較して採点が行われる。解答モデル及び模範解答に言語解析による一定の幅を設けているため、互いの一致・不一致は容易に判断できる。しかしながら、ここでは予め用意された模範解答と受験者の自由記述との間の対比を行うだけであって、特定の学習項目に対する一連の理解度を測定するものではない。
【0007】
また、特許文献2では、解答が一意に定まらない「記述式試験」における受験者の自由記述を採点(測定)するシステムを開示している。1の採点者の採点結果はシステム上で修正できて、複数の採点者間で採点結果が一致せず、採点の結果の客観性に疑問がある場合には、他の測定者の測定根拠を参照しながら測定結果を再評価してこれを修正できる。測定結果及び測定根拠を複数の測定者が共有することで、自らが行った主観的な測定結果にとらわれず、様々な視点から解答を再評価できるのである。この場合も予め用意された模範解答及び受験者の自由記述の間の対比を行うだけであって、特定の学習項目に対する一連の理解度を測定するものではない。
【特許文献1】特開2001−56634号公報
【特許文献2】特開2006−277086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、数万人、数十万人といった母集団で「記述式試験」を行って、母集団の特定の学習項目に対する一連の理解傾向を測定し、教育上の課題を抽出しなければならない場合がある。一方で、上記したように、従来の記述式試験では、受験者の求解手続の記載を処理する者、すなわち採点者の判断・裁量がその処理に介在していたため、処理結果が採点毎、また採点者毎によって異なるとの問題があった。この傾向は受験者が多くなるとより大きな問題となる。
【0009】
本発明は、このような大人数の受験者であっても、特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を多面的に測定し、これを収集して母集団の理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題を抽出可能とする答案分析処理方法及びそのシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者全体の所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する答案分析処理方法であって、前記問題文の1つの解答例である典型解答例から前記学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出してこれを構成するいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素を列記してチェックボックスを作成するチェックボックス作成ステップと、前記所定の学習項目についての理解度に差異を与えた求解手続の記載からなる他の解答例を複数作成し、前記典型解答例及び前記解答例のそれぞれについて前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の組み合わせである解答例パターンを求め、これらが互いに同一とならないように前記チェック要素を訂正する訂正ステップと、前記受験者毎の前記求解手続の記載について前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の組み合わせである個人パターンを求め、前記受験者を識別する識別符号とともに前記個人パターンを記録する個人記録ステップと、前記個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する集計ステップと、からなることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、採点者は、受験者の求解手続の記載(答案)の中にいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素(ターム)が有るか無いかをチェックするだけであるから、採点者の判断・裁量が処理に介在しない。故に、数万人、数十万人といった規模の受験者であっても、その答案を複数の採点者又は機械によって迅速に処理できて、しかも処理結果は常に一定になるのである。その上で、かかるチェック要素は学習項目を細分化した複数の小項目に対応しているから、チェック要素毎の有無の組み合わせは特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を反映したものである。よってチェック要素毎の有無の組み合わせについて処理データを集計すれば母集団の特定の学習項目についての理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題の抽出が可能である。
【0012】
更に、本発明のシステムは、複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者全体の所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する答案分析処理システムであって、前記問題文の1つの解答例である典型解答例から前記学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出してこれを構成するいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素の入力を許容しこれを表示するチェックボックス表示手段と、前記受験者毎の前記求解手続の記載について、前記受験者を特定するための入力を許容しこれに応じて識別符号を生成し、前記チェックボックス表示手段によって表示される前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の入力を許容しこの有無の組み合わせである個人パターンを生成し、前記識別符号とともに前記個人パターンを個人記録として記録するチェック手段と、前記個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する集計手段と、からなることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、上記したと同様に、大規模の受験者であっても母集団の特定の学習項目についての理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題の抽出が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の原理を説明するためにn人の受験生の母集団に対して所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する方法を図1及び図2を用いて説明する。
【0015】
図1に示すように、1つの学習項目は、多くの小項目(A、B、C、D、E、F・・・・・・)からなる集合体である。この所定の学習項目についての母集団の理解傾向を分析処理するためには、小項目のいくつか(A、B、C、D、E)を選択して(S1)、これらに対応した情報要素(a、b、c、d、e)を含むように問題を作成する(S2)。なお、一部の情報要素(e)は、問題文には明記しなくとも問題を解いていく上で必然的に外部から導かれるような場合がある。(例えば、円周率の値は、問題文中に明記されていなくとも、必要に応じて使われ得る。)このような情報要素(e)は問題文中には明記されない場合がある。
【0016】
次に、問題を解いていく求解過程を含めて1つの解答例である典型解答例を作成する(S3)。典型解答例は、いくつかの数値の固まり、式、文、及び、単語などの「ターム」(p1〜p13)によって表現される。
【0017】
一方、選択した小項目(A、B、C、D、E)の中から理解傾向を分析処理する分析項目(A、B、C)を決定する(S4)。なお、分析項目が多いほど母集団の所定の学習項目に対するより細かい理解傾向を知ることが出来る。一方で、これが多すぎると、分析項目間の差異が不明瞭となり、また処理の煩雑さが増加する。故に、適宜、分析項目となる小項目数を調整することが好ましい。
【0018】
典型解答例中の「ターム」(p1〜p13)から分析項目(A、B、C)のそれぞれに対応した「ターム」を抜き出す(S5)。例えば、分析項目Aについて(p1、p2、p3、p4)、分析項目Bについて(p2、p5、p6、p7、p8)、分析項目Cについて(p3、p9、p10)の各「ターム」の集合体で典型解答例中に表現されているとする。各集合体には、分析項目(A、B、C)相互間で共通する「ターム」を含み得る。なお、典型解答例中だけでなく、分析項目に対応して他の「ターム」を与えても良い。
【0019】
図2に示すように、分析項目(A、B、C)毎の「ターム」の集合体からそれぞれ少なくとも1つ以上の「ターム」を選択して列記する。選択した「ターム」(p1、p2、p5、p7、p9、p10)が答案の求解手続の記載に含まれているか含まれていないかを二択でチェックするチェックボックス要素を列記したチェックボックスを作成する。ここで、すべてのチェックボックス要素について二択でチェックした結果であるチェックパターンは、チェックボックス要素の個数をnとすると、2nつまり、ここでは2n通りの組み合わせが存在する。なお、一連の「ターム」はこれを連結して(p1+p2、p5、p7、p9+p10)のようにすることもできて、この場合、チェックパターンは、24通りの組み合わせとなる。
【0020】
特定の理解傾向及び理解度を反映した解答例α、β、γ・・・を作成する(S7)。なお、解答例α、β、γ・・・には典型解答例を含んでもよい。解答例α、β、γ・・・も「ターム」の集合体からなる。例えば、解答例αについて(p1〜13)、解答例βについて(p1〜p6、p7’、p8’、p9’)、解答例γについて(p1、p12、p13)の「ターム」の集合体で表現されるとする。解答例α、β、γ・・・のそれぞれについて、チェックボックス要素に選ばれた「ターム」(p1、p2、p5、p7、p9、p10)の有無をチェックして、チェックパターンを求める。ここで各タームの「有」を○、「無」を×で示すと、解答例αについて(○、○、○、○、○、○)、解答例βについて(○、○、○、×、×、×)、解答例γについて(○、×、×、×、×、×)となる。なお、解答例α、β、γ・・・について相互に同じチェックパターンとなったときは、チェックボックス要素を変更する。
【0021】
さて、母集団を構成するn人の受験者に上記したような情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載(答案)の提出を求める。n人全て若しくはその一部の受験者の求解手続の記載について、チェックボックス要素に選ばれた「ターム」(p1、p2、p5、p7、p9、p10)のそれぞれの有無をチェックしてチェックパターンを求める。チェックボックスの要素毎のチェックは、受験者の求解手続の記載の中にその「ターム」が有るか無いかをチェックするだけであるから、機械による自動集計も可能である。仮に人手によったとしても、チェックを担当する者によってチェックパターン結果が異なることはほとんどないから、多くのチェック担当者を採用してもよく、迅速な処理が出来る。
【0022】
さらにチェックボックスの組み合わせパターン毎の人数を集計する。この集計から、母集団の所定の学習項目に対する理解傾向を知ることが出来る。すなわち、上記した解答例α、β、γ・・・と同じチェックボックスの組み合わせパターンを有する受験者の答案について、それぞれの解答例と同じ特定の理解度にあると予測される。解答例α、β、γ・・・と同じ特定の理解度にある受験者同士の比、母集団に対するおおよその割合から母集団の所定の学習項目に対する理解傾向を求めることが出来る。なお、解答例α、β、γ・・・と同じチェックボックスの組み合わせパターン以外の人数が少ないほど、この理解傾向についての「確からしさ」が高められる。そこで、母集団を構成する人数が多くてもチェックパターンの集計は容易であるので、タームを変更したチェックボックスを作成して「確からしさ」を高めるとともに、特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を多面的に測定し得る。
【0023】
なお、チェックパターン毎の集計人数から、例えば、一番人数の多いチェックパターンであるとか、特定のチェックパターンはどのような所定の学習項目に対する理解度であるかは、上記したような解答例をいろいろ作成し、チェックパターンを求めてそのパターンが同じとなるまで解答例の修正を行うことで達成され得る。
【0024】
従来の記述式試験では、受験者の求解手続の記載についての処理をする者、すなわち採点者の判断・裁量が受験者の求解手続の記載、すなわち答案の処理に介在していた。故に、処理結果が採点又は採点者毎によって異なるとの問題があった。上記態様によれば、採点者は、受験者の求解手続の記載中に「ターム」が有るか無いかをチェックするだけであるから、採点者の判断・裁量が受験者の答案の処理に介在せず、処理結果は採点又は採点者毎にほとんど異ならないのである。その上で、かかる「ターム」は学習項目を細分化した複数の小項目に対応しているから、チェック要素毎の有無の組み合わせは特定の学習項目に包含されるポイントの一連の理解度を反映したものである。よってチェック要素毎の有無の組み合わせについて処理データを集計すれば母集団の特定の学習項目についての理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題の抽出が可能である。
【実施例】
【0025】
更に、本発明の1つの実施例について、図3乃至図13を用いて詳細に説明する。
【0026】
本実施例では、L1:「問題文の条件に基づき一元二次方程式を立式して、この方程式の複数の解を得た上で問題文中に示された前提条件に沿った解答をする」という数学の1つの学習項目に対する複数の受験者の理解傾向を分析処理する方法及びそのシステムの1つの実施例について説明する。
【0027】
まず、図3に示すように、学習項目L1の内容を細分化して、本問題で問うべき小項目L2を抽出する。すなわち、<1>題意から一元二次方程式を立式できること、<2>一元二次方程式の式変形を正確にできること、<3>一元二次方程式の解を得ること、<4>得られる2つの解から問題文中に示された前提条件に沿って解答をすること、の4つの小項目<1>〜<4>を抽出する。
【0028】
次に、図4に示すように、上記した小項目<1>〜<4>に対応した問題文Q1及びその典型解答例として解答例A1を作成する。なお、典型解答例は、一般的に、「模範解答」と称される解答例であることが好ましいがこれに限定されるものではない。ここでは、数字の配列表から一元二次方程式を立式する問題として身近な題材であるカレンダーを選んで作題した。問題文Q1は、抽出した小項目L2の各々について、受験者の理解度をその解答中で確認できるように作成されていなければならない。つまり、少なくとも解答例A1中に小項目L2の各々が確認できるように反映されていなければならず、必要に応じて問題文を修正する。各小項目<1>〜<4>は、解答例A1中に以下のように反映されている。
<1>:(第1行目)
<2>:(第2行目)〜(第4行目)
<3>:(第5行目)
<4>:反映されず
すなわち、解答例A1では、第5行目で一元二次方程式から得られた2つの解をそのまま第6行目の「答え」の欄に転記しており、小項目<4>の「得られる2つの解から問題文中に示された前提条件に沿って解答をすること」との内容を反映していない。そこで、全く同じ一元二次方程式が導かれるが、その2つの解の一方については問題文中に示された前提条件から不適当となるように問題文Q1の修正を工夫する。
【0029】
図5の問題文Q2に示すように、例えば、カレンダーの数字の配列を変えて、xの値に制限を与えて一元二次方程式の2つの解の一方を不適当とする条件を追加する。すると、問題文Q2に対する典型解答例である解答例A2に示したように、2つの解「3」及び「7」の一方の解「7」は、問題文Q2のカレンダーを参照すると、「左隣の数」がないから答えから除外される。なお、本実施例における分析に最低限必要な求解手続の記載を受験生に促すよう問題文Q2中には、「求める過程も書きなさい」とその指示を加えた。
【0030】
図6に示すように、再び、各小項目<1>〜<4>が解答例A2に反映されているかを確認すると、
<1>:(第1行目)
<2>:(第2行目)〜(第4行目)
<3>:(第5行目)
<4>:(第6行目)〜(第7行目)
となる。
【0031】
次に、分析手法上、学習項目L1から抽出した小項目L2からさらに受験者の理解傾向を分析するための分析項目を選択する。すなわち、小項目L2の数が多い場合、受験者の答案を細かく類型別けでき得るのであるが、一方で類型毎の差異が小さくなって類型間の特徴を把握しづらくしてしまう。そこで、例えば、4つの小項目から3つの小項目<1>〜<3>を選択して後述する操作で受験者の答案のチェックパターンを求めた後、さらに小項目<2>〜<4>を選択して同様の操作を行って類型毎の差異を明らかにしてもよい。なお、本実施例においては小項目<1>〜<4>の全てを分析項目<1>〜<4>として選択した。
【0032】
次に、図6に示すように、解答例A2の分析項目<1>〜<4>に対応する記載部分から少なくとも1つずつ以上の「いくつかの数値の固まり」、「式」、「単語」、又は、「文」などの「ターム」を選択して、「ターム」の有無を問うCB要素を列記する。ここでCB要素を列記したCBは、各受験者の答案の求解手続の記載中に「ターム」を表現しているかどうかを二択で判断するテンプレートである。故に、CB要素は、「ターム」の記載の有無を二択で判断でき得る表現形態で構成される。一方で、求解手続きの記載中に「ターム」が表現されているかは直接に特定の項目に対する理解の有無を問うものではない。
【0033】
図7に示すように、ここでは「ターム」の記載の有無を文章で問い掛けている。例えばCB1「(x+7)の記載がある」と、分析項目<1>に対応する解答例A2の第1行目の記載から短い式の部分(x+7)を選択して(図6参照)、この「ターム」の記載があるかどうかを文章で問い掛けている。また、CB0「数字・文字の記載がない」については、分析項目<1>〜<4>の全てに共通する、記載自体の有無を問い掛けている。更に、CB11は“答えの欄に「3」のみの記載がある”と、求解手続の記載中ではなく「答え」の欄の記載において、「3及び7」ではなく「3」だけが記載されていることを問い掛けている。このようなCB要素の判断は、通常の採点者であればほとんど異なった判断にはなり得ず、後述する各受験者の答案毎のチェックパターンの取得について複数の採点者でこれを行ったとしても客観性を担保できるのである。
【0034】
次に、図8及び図9に示すように、特定の理解傾向を反映した解答例A3〜A6を作成する。例えば、小項目「<4>得られる2つの解から前提条件に沿った解答をすること」に関して、「xの左隣に数字がなくてはならない」という問題文中の前提条件に気付かず、答えの欄において隣に数字がない「7」を除外しなかった解答例をA3とする。また、小項目「<1>題意から一元二次方程式を立式できること」に関して、xの真下にある数については理解できても積についての立式を誤った解答例をA5とする。さらに、小項目「<2>一元二次方程式の式変形を正確にできること」に関して、一元二次方程式の正と負の積における符号に誤りのある解答例をA4とする。また、白紙の解答例をA6とする。
【0035】
次に、図10に示すように、解答例A2〜A6についてCBの各CB要素(CB0〜CB11)についてチェックを行って、チェックの正否の組み合わせ(以下チェックパターンと称する。)を求める。ここで、図中の「○」は各CB要素の条件を満たす(肯定された)印であり、「×」は条件を満たさない(否定された)印である。チェックパターンは、各CB要素に対して「×」か「○」かの二択を与えるから、CB要素の数をn個とするとチェックパターンの数は、2n通りある。本実施例ではCB要素は11個であるから、チェックパターンの数は211通りである。
【0036】
ここで、後述するように少なくとも類型分けしたい各解答例A2〜A6のチェックパターンは互いに同一とならないように必要に応じてCB要素の変更を行う。なお、本実施例では互いに同一となるチェックパターンがなかったため、CB要素の変更は行わなかった。各解答例A2〜A6のチェックパターンを類型C2〜C6とする。
【0037】
次に、複数の受験者の答案毎に各CB要素をチェックしてチェックパターンを取得してデータベース化する。上記したように答案から得られるチェックパターンは、最大211通りに分類され得る。しかしながら、単一の問題の中で作成されるCB要素は互いに少なからず連関関係を有するので、特定のCB要素間のチェック結果は連関する。故に、チェックパターンの数は上記した最大数よりもずっと少なくなるのである。本実施例では、類型分けしたいチェックパターンは解答例A2〜A6の5通りである。5通り以上のチェックパターンを確保するため、CB要素の数nは5≦2n、すなわちn≧3である必要がある。
【0038】
次に、類型C2〜C6のチェックパターンと同一のチェックパターンとなる答案の数をそれぞれ求める。これらの答案数同士の比、及び、全答案数に占めるそれぞれの割合から受験者の理解傾向を分析できる。例えば、類型C5のチェックパターンと同一のチェックパターンを示す答案は、解答例A5と同様の傾向、すなわち小項目「<1>題意から一元二次方程式を立式できること」に関して、xの真下にある数については理解できていても積についての立式を誤ってしまう程度の理解度と推定される。同様に、類型C4のチェックパターンと同一の答案は、解答例A4と同様の傾向、つまり、小項目「<2>一元二次方程式の式変形を正確にできること」に関して、一元二次方程式の正と負の積における符号に誤りのある式変形を導いてしまう程度の理解度であると推定できる。全答案数に占める前者と後者との割合を求めると、全受験者の理解傾向を把握することができる。
【0039】
以上、本実施例では、CB要素は短い「ターム」の記載の有無を問うものであって、チェック担当者は、受験者の答案中におけるこの「ターム」の有無を客観的且つ迅速に判断できる。一方、短い「ターム」の答案中における有無が特定の項目に対する理解の有無をそのまま問うものではない。つまり、学習項目に関係した複数のCB要素で受験者の答案をチェックしてチェックパターンを得て、これを理解度の異なる特定の解答例とのチェックパターンと対比することで、所定の確率で互いの相関関係を得られる。つまり、各答案の学習項目に対する理解度を分類できるのである。故に、母集団の特定の学習項目についての理解傾向を得ることができて、もって教育上の課題の抽出が可能である。
【0040】
分析方法については上記した如きであるが、一旦、分析結果を得た後に、類型C2〜C6に類型分けされなかった答案について、解答例を追加して、さらに分析を続けることも出来る。
【0041】
図11に示すように、解答例A7は、解答例A4と同様に小項目<2>に関して、一元二次方程式の途中式の変形に誤りを有する解答例である。詳細には、解答例A4は因数分解を誤っており、解答例A7は式の展開を誤っている。このとき、図12に示すように、解答例A7についてのチェックパターンは、類型C2〜C6のいずれのチェックパターンとも異なる。そこで解答例A7についてのチェックパターンを類型C7として、類型C2〜C6に類型分けされなかった答案について、その一部を類型C7に類型分けできる。なお、類型C7に類型分けされた答案は、上記したように、小項目<2>に関して、式の展開に誤りを生じる傾向にある答案と推定できる。
【0042】
さらに、学習項目に対する理解度の似通ったと推定される答案の類型分けされる複数の類型を1つの類型にまとめても良い。
【0043】
図13に示すように、CB4〜CB8は、典型解答例である解答例A2の第2行目〜第4行目、すなわち小項目<2>に関する記載から選択したタームによって作成されたCB要素である。CB4〜CB8の中に少なくとも1つ以上「×」となるCB要素を含む解答例は、小項目<2>に関して、少なくとも一部の理解を欠いていると推定される。このような推定を受ける答案を類型分けするため、類型CC4として、CB4〜CB8について、注1のように「少なくとも1箇所は×」とした類型を作成しても良い。
【0044】
さらに、CB要素毎の連関を考慮して、答案の類型分けされる複数の類型を1つの類型にまとめても良い。
【0045】
図13に示すように、式の変形を誤ると、その後の記載は、通常、典型解答例A2と異なるか、若しくは、無記載となるはずである。一方で、CB要素は式全体の記載の有無を問うのではなく、その一部である短い「ターム」の有無を問うものであるから、偶然にも典型解答例A2と同じ「ターム」を含む場合もあり得る。CB4〜CB8に「×」を含む解答例では、CB9〜CB11は、本来、典型解答例A2と異なるか、若しくは、無記載となるはずである。故に、CB9〜CB11のチェック結果はいずれであってもよく、類型CC4として、「−」と表わした類型を作成しても良い。類型CC5も同様である。
【0046】
次に、上記分析処理方法を実行するための答案分析処理システムの1つの実施例について図14を用いて説明する。
【0047】
答案分析処理システム1は、中央制御部2に接続されたメイン入力装置3、警報手段4及びデータ記憶装置5と、CB採点者の使用する複数の端末装置6とを備える。データ記憶装置5は、CBデータを保存するCBデータ記憶部8、受験者の答案データの画像情報若しくは読み取り情報を保存する答案データ記憶部9、CBパターンなどの個人データを保存する個人データ記憶部10を有する。メイン入力装置3及び端末装置6は、画像表示装置14及びキーボードなどの入力手段15をそれぞれ含む。これらは、中央制御部2とインターネット回線やLAN回線等によって双方向通信可能に接続されている。
【0048】
次に、上記した答案分析処理システム1の使用方法について図14を用いて説明する。
【0049】
答案分析処理を統括する者(以下、統括者と称する。)によって、作成されたCBデータはメイン入力装置3の入力手段15から入力されて、CBデータ記憶部8に転送・保存される。また、解答例A2〜A6についても、メイン入力装置3の入力手段15から入力され、答案データ記憶部9に解答例データとして転送・保存される。なお、入力手段15をスキャナなどによることで、画像データとしてCBデータ及び解答例データを保存することもできる。
【0050】
次に、統括者がメイン入力装置3を操作すると、CBデータ記憶部8からCBデータ、答案データ記憶部9から1の解答例データがメイン入力装置3に転送されて、その画像表示装置14に表示される。統括者は、入力手段15を操作してCB要素毎に「ターム」の「有」「無」を「○」「×」の二択で入力する。すべてのCB要素に対する入力が終了したことを示す入力を行うと、「○」「×」の一連データであるチェックパターンが解答例A2〜A6を特定する符号とともに個人データ記憶部10に転送・保存される。
【0051】
解答例A2〜A6のそれぞれについてチェックパターンの入力が終了すると、中央制御部2は、メイン入力装置3の画像表示装置14に解答例A2〜A6のチェックパターンを表示させる。中央制御部2は、解答例A2〜A6に同じチェックパターンが存在すると、メイン入力装置3の画像表示装置14に警告を表示させるとともに、警報手段4から警報を送出させる。統括者は、これに応じてメイン入力装置3を操作してCBデータを一度、消去し、CB要素の再入力を行う。一方、同じチェックパターンが存在しない場合は、中央制御部2は、解答例A2〜A6に対応するチェックパターンをそれぞれ類型C2〜C6としてCBデータ記憶部8に書き換えさせる。
【0052】
一方、問題文Q2が受験者に与えられ、各受験者の求解手続の記載された答案が回収される。統括者によって、答案は、図示しない電子情報化手段で画像データ化されて答案データとして答案データ記憶部9に受験者を特定する氏名や受験番号などと併せて保存される。
【0053】
次に、各端末装置6から中央制御部2へ採点開始信号を送出すると、中央制御部2は、各端末装置6へ向けてCBデータ記憶部8からCBデータを、また答案データ記憶部9から1の答案データを送出する。端末装置6の画像表示装置14にはCBデータ及び答案データが表示されて、CBのCB要素毎の入力が可能となる。採点者は端末装置6の入力手段15を操作してCB要素毎に「ターム」の有無を入力する。すべてのCB要素に対する入力が終了したことを示す入力を行うと、チェックパターンが受験者を特定する符号とともに中央制御部2を経て、個人データ記憶部10に転送・保存される。
【0054】
すべての受験者の答案についてチェックパターンを得て、個人データ記憶部10にデータベースを作成する。データベースの解析については上記したので詳述しない。
【0055】
なお、中央制御部2は、明らかに矛盾するチェックパターンの入力に対して修正を促すように端末装置6に警告を発する機能を有していても良い。例えば、CB0「数字、文字の記載がない」にチェックした場合、他の記載内容を問うCB要素にチェックは付き得ないから、これに反するチェックパターンの入力に対して中央制御部2は、端末装置6に向けて再入力をするよう警告を発し、入力ミスを減ずることができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明による答案分析処理方法を示すフロー図である。
【図2】本発明による答案分析処理方法を示すフロー図である。
【図3】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図4】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図5】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図6】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図7】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図8】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図9】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図10】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図11】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図12】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図13】本発明による答案分析処理方法についての図である。
【図14】本発明による答案分析処理システムの図である。
【符号の説明】
【0057】
1 答案分析処理システム
2 中央制御部
3 メイン入力装置
4 警報手段
5 データ記憶装置
6 端末装置
8 CBデータ記憶部
9 答案データ記憶部
10 個人データ記憶部
14 画像表示装置
15 入力手段
L1 学習項目
L2 小項目
Q2 問題文
CB チェックボックス
A1〜A7 解答例
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者全体の所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する答案分析処理方法であって、
前記問題文の1つの解答例である典型解答例から前記学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出してこれを構成するいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素を列記してチェックボックスを作成するチェックボックス作成ステップと、
前記所定の学習項目についての理解度に差異を与えた求解手続の記載からなる他の解答例を複数作成し、前記典型解答例及び前記解答例のそれぞれについて前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の組み合わせである解答例パターンを求め、これらが互いに同一とならないように前記チェック要素を訂正する訂正ステップと、
前記受験者毎の前記求解手続の記載について前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の組み合わせである個人パターンを求め、前記受験者を識別する識別符号とともに前記個人パターンを記録する個人記録ステップと、
前記個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する集計ステップと、からなることを特徴とする答案分析処理方法。
【請求項2】
前記集計ステップは、前記個人パターンを前記解答例パターンと同一とする前記受験者の数を集計するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の答案分析処理方法。
【請求項3】
複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者全体の所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する答案分析処理システムであって、
前記問題文の1つの解答例である典型解答例から前記学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出してこれを構成するいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素の入力を許容しこれを表示するチェックボックス表示手段と、
前記受験者毎の前記求解手続の記載について、前記受験者を特定するための入力を許容しこれに応じて識別符号を生成し、前記チェックボックス表示手段によって表示される前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の入力を許容しこの有無の組み合わせである個人パターンを生成し、前記識別符号とともに前記個人パターンを個人記録として記録するチェック手段と、
前記個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する集計手段と、からなることを特徴とする答案分析処理システム。
【請求項4】
前記所定の学習項目についての理解度に差異を与えた求解手続の記載からなる他の解答例を複数作成し、前記典型解答例及び前記解答例を特定するための入力を許容しこれに応じて識別符号を生成し、前記チェックボックス表示手段によって表示される前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の入力を許容しこの有無の組み合わせである解答例パターンを生成し、前記識別符号とともに前記解答例パターンを記録する解答例チェック手段と、前記解答例パターンが前記解答例同士で同一となったときに前記チェック要素の訂正を促す警報手段と、を更に有することを特徴とする請求項3記載の答案分析処理システム。
【請求項5】
前記集計手段は、前記個人パターンを前記解答例パターンと同一とする前記受験者の数を集計することを特徴とする請求項4記載の答案分析処理システム。
【請求項1】
複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者全体の所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する答案分析処理方法であって、
前記問題文の1つの解答例である典型解答例から前記学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出してこれを構成するいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素を列記してチェックボックスを作成するチェックボックス作成ステップと、
前記所定の学習項目についての理解度に差異を与えた求解手続の記載からなる他の解答例を複数作成し、前記典型解答例及び前記解答例のそれぞれについて前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の組み合わせである解答例パターンを求め、これらが互いに同一とならないように前記チェック要素を訂正する訂正ステップと、
前記受験者毎の前記求解手続の記載について前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の組み合わせである個人パターンを求め、前記受験者を識別する識別符号とともに前記個人パターンを記録する個人記録ステップと、
前記個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する集計ステップと、からなることを特徴とする答案分析処理方法。
【請求項2】
前記集計ステップは、前記個人パターンを前記解答例パターンと同一とする前記受験者の数を集計するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の答案分析処理方法。
【請求項3】
複数の受験者に情報要素を複数含む問題文を与えてこれに対する求解手続の記載を求めて受験者全体の所定の学習項目についての理解傾向を分析処理する答案分析処理システムであって、
前記問題文の1つの解答例である典型解答例から前記学習項目を細分化した複数の小項目に対応する部分を抽出してこれを構成するいくつかの数値の固まり、式、単語、又は、文からなるチェック要素の入力を許容しこれを表示するチェックボックス表示手段と、
前記受験者毎の前記求解手続の記載について、前記受験者を特定するための入力を許容しこれに応じて識別符号を生成し、前記チェックボックス表示手段によって表示される前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の入力を許容しこの有無の組み合わせである個人パターンを生成し、前記識別符号とともに前記個人パターンを個人記録として記録するチェック手段と、
前記個人パターンの同一となる前記受験者の数を集計する集計手段と、からなることを特徴とする答案分析処理システム。
【請求項4】
前記所定の学習項目についての理解度に差異を与えた求解手続の記載からなる他の解答例を複数作成し、前記典型解答例及び前記解答例を特定するための入力を許容しこれに応じて識別符号を生成し、前記チェックボックス表示手段によって表示される前記チェックボックスの前記チェック要素毎にその有無の入力を許容しこの有無の組み合わせである解答例パターンを生成し、前記識別符号とともに前記解答例パターンを記録する解答例チェック手段と、前記解答例パターンが前記解答例同士で同一となったときに前記チェック要素の訂正を促す警報手段と、を更に有することを特徴とする請求項3記載の答案分析処理システム。
【請求項5】
前記集計手段は、前記個人パターンを前記解答例パターンと同一とする前記受験者の数を集計することを特徴とする請求項4記載の答案分析処理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−229606(P2009−229606A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72532(P2008−72532)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(502194735)株式会社教育測定研究所 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(502194735)株式会社教育測定研究所 (10)
【Fターム(参考)】
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