説明

箏調弦用物指し

【課題】 箏の初心者又は中学校等の音楽授業において音楽担当の先生や生徒が一人でも容易に箏の調弦を行うことができる、箏調弦用物指しを得る。
【解決手段】 テープ状の物指し本体の表面に、13本の各弦に対して柱を立てる位置を示した目印線及び弦の名称を印刷すると共に各目印線の中央部に穴を開け、更に前記テープ状の物指し本体の先端部に、弦を掛止するための弦掛止部を具備して構成する。前記テープ状の物指し本体の表面に印刷する目印線は、平調子や雲井調子等の各調弦法の中から1つの調弦法の調弦位置を専用に印刷し、又は複数の調弦法の調弦位置を色又は線種を変えて印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箏(こと)に張られた弦に柱(じ)を立てて音の高さを調節(以後、調弦と言う)する場合において、該柱を立てる位置が簡単に見つけ出すことができ、初心者でも容易に箏の調弦を行うことができる、箏調弦用物指しに関するものである。
【背景技術】
【0002】
箏は、雅楽に用いる楽器の一つとして奈良時代に唐より伝来され、その後八橋検校らにより改良され、発展して現在に至っているものである。該箏の弦は一般的に13本であり、箏の本体部である槽の上面に柱を立て、該柱の頭に刻まれている溝に前記弦を乗せ、音の高さの調節すなわち調弦を行っている。該調弦において、基準音の音程は絶対的なものではなく、曲の種類や唱者の声域により変わり、更には流派や地域などによっても変わるため、非常に熟練を要するものである。このため、初心者は自ら調弦が行えず、師匠や熟練者に任せたり又は業者に依頼することが多い。
【0003】
また、自己が所有する箏においては、弦に油性筆記具等を用いて印を付け又は槽の上面にシール等を貼るなどして柱を立てる位置の目印にすることが多い。該方法は、例えば特開2002−73009号公報の「新規な箏」において、各々の弦の琴柱が接する部分若しくは槽の琴柱が接する部分にマークが付与され、又は槽の上面が所定の模様に着色されることを特徴とする新規な箏について記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−73009
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記弦に印を付けて柱を立てる位置の目印にする方法においては、弦の磨耗等により新しい弦に張り替える際において再度目印を付けるための調弦が必要となる。このため、該調弦を再度師匠や熟練者に任せたり又は業者に依頼しなければならないといった問題点があった。また、自己の所有物ではない箏においては、弦に印を付けたり槽にシール等を貼ることなどが勝手にはできないといった問題点があった。
【0006】
また、平成14年度より中学校の学習指導要領が変わり、音楽授業において邦楽器として箏が取り上げられるようになったが、音楽担当の先生であっても箏の調弦は容易ではなく、該調弦に時間を費やさずに演奏に時間を費やすべく、該調弦を業者に依頼しなければならないといった問題点があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解決するために成されたものであり、箏の調弦を行う場合において、弦に印を付けたり槽の上面にシール等を貼るなどして柱を立てる位置の目印にしなくとも、該柱を立てる位置が簡単に見つけ出すことができ、箏の初心者又は中学校等の音楽授業において音楽担当の先生や生徒が一人でも容易に箏の調弦を行うことができる、箏調弦用物指しを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の箏調弦用物指しにおいては、テープ状の物指し本体の表面に、13本の各弦に対して柱を立てる位置を示した目印線及び弦の名称を印刷すると共に各目印線の中央部に穴を開け、更に前記テープ状の物指し本体の先端部に、弦を掛止するための弦掛止部を具備して構成する。
【0009】
上記テープ状の物指し本体の表面に印刷する目印線は、平調子や雲井調子等の各調弦法の中から1つの調弦法の調弦位置を専用に印刷し、又は複数の調弦法の調弦位置を色又は線種を変えて印刷する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の箏調弦用物指しを用いることにより、箏の初心者又は中学校等の音楽授業における音楽担当の先生や生徒でも柱を立てる位置を簡単に見つけ出すことができるため、師匠や熟練者に任せたり又は業者に依頼することなく一人でも容易に箏の調弦を行うことができるという絶大なる効果を奏することができる。また、柱を立てる位置の目印として弦に印を付けたり又は槽の上面にシール等を貼ることなどが不要となるため、箏を常にきれいな状態で保つことができるという効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施するための最良の形態を図を用いて説明する。
【0012】
図3は本発明の箏調弦用物指しの表面全体図であり、テープ状の物指し本体2aの表面に、13本の各弦に対して柱を立てる位置を示した目印線3(3a〜3n)及び弦の名称を印刷すると共に各目印線3の中央部に穴4を開ける。該テープ状の物指し本体2aの幅は1〜2cm程度で、長さは100cm程度が好適である。また、穴4は前記物指し本体2aの幅に応じて2〜5mm程度が好適である。
【0013】
また、上記テープ状の物指し本体2aの先端部に、弦を掛止するための弦掛止部5を具備する。該弦掛止部5は、弦を通すためのL字状のガイド7及び弦を掛止するための穴6にて構成し、該弦掛止部5に弦を掛止した後、図中矢印a方向に箏調弦用物指し2を引っ張っても当該箏調弦用物指し2が弦より外れない構造とする。更に、前記テープ状の物指し本体2aの後端部に、前記と同様の弦掛止部5を具備すれば、箏調弦用物指し2自体が弦に掛止して乗った状態となるため、両手が使えて調弦作業が楽に行える。
【0014】
図3において、目印線3aは巾(きん)の弦,目印線3bは為(い)の弦,目印線3cは斗(と)の弦,目印線3dは十の弦,目印線3eは九の弦,目印線3fは八の弦,目印線3gは七の弦,目印線3hは六の弦,目印線3iは五の弦,目印線3jは四の弦,目印線3kは三の弦,目印線3mは二の弦,目印線3nは一の弦での平調子における柱を立てる位置を示している。
【0015】
上記テープ状の物指し本体2aの表面に印刷する目印線3(3a〜3n)は、通常は平調子や雲井調子等の各調弦法の中から1つの調弦法の調弦位置を専用に印刷して使用するが、複数の調弦法の調弦位置を色又は線種を変えて印刷して使用しても構わない。
【0016】
また、上記テープ状の物指し本体2aの材質は紙や布又は合成樹脂フィルムにてラミネート処理した紙や布が好適であり、更に当該テープ状の物指し本体2aの先端部の弦掛止部5の材質は合成樹脂板が好適であるが、何れも特に限定するものではない。
【0017】
また、テープ状の物指し本体2aの表面に薄い色又は模様による彩色を施した彩色部9と、前記彩色を施さない非彩色部8を例えば5cm毎に交互に配置すれば、箏調弦用物指し2自体が5cm単位の物指しとなるため、各弦に対して柱を立てる位置が龍角12よりどの程度の位置にあるのかの判断が容易にできて好適である。
【実施例】
【0018】
本発明の実施例を図を用いて説明する。
【0019】
図1は本発明の箏調弦用物指しの使用状態を示す図であり、図2は図1における龍頭側の拡大図である。図1において、箏1の本体部である槽10の龍頭11側にある龍角12と龍尾13側にある雲角14に13本の弦15が張られ、各弦15に柱16を立てて音の高さを調節することにより調弦が行われる。該図において、手前側(演奏者側)にある巾の弦15の調弦を行う場合、箏調弦用物指し2の先端部にある弦掛止部5のガイド7に前記巾の弦15の龍角12部にある弦15を通して穴6に掛止する。
【0020】
次に、箏調弦用物指し2の左側を引っ張り又は後端部に弦掛止部5がある場合には当該弦掛止部5を巾の弦15に掛止し、巾の弦15の上に箏調弦用物指し2を乗せる。
【0021】
次に、上記箏調弦用物指し2の表面にある巾の文字が印刷された目印線3aの位置を確認することにより巾の弦15の柱を立てる位置を簡単に見つけ出すことができ、該目印位置に柱を立てることにより巾の弦15の調弦を容易に行うことができる。以後同様にして、為の弦15より一の弦15までの調弦を行うことにより、初心者でも容易に箏1の調弦を行うことができる。
【0022】
また、図4は図3におけるA部拡大図であり、巾の弦15を調弦するための目印線3aにより巾の弦15の柱を立てる位置を簡単に見つけ出すことができると共に、穴4により箏調弦用物指し2の裏側に隠れた巾の弦15を確認することができるため、該目印線3aに柱を立てることにより巾の弦15の調弦が容易に行える。なお、箏1が自己の所有物であれば、前記穴4を利用して巾の弦15に油性筆記具等で印を付けても構わない。
【0023】
また、図5は本発明の箏調弦用物指しの収納状態を示す図であり、(a)図は箏調弦用物指し2の後端部より直接巻いて巻取り部17を形成した状態図を示し、(b)図はケース18内に前記巻取り部17及び発条(図示せず)を具備して巻尺とした状態図を示しているが、収納に関しては特に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の箏調弦用物指しの使用状態を示す図である。
【図2】図1における龍頭側の拡大図である。
【図3】本発明の箏調弦用物指しの表面全体図である。
【図4】図3におけるA部拡大図である。
【図5】本発明の箏調弦用物指しの収納状態を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 箏
2 箏調弦用物指し
3 目印線
4 穴
5 弦掛止部
6 穴
7 ガイド
8 非彩色部
9 彩色部
10 槽
11 龍頭
12 龍角
13 龍尾
14 雲角
15 弦
16 柱
17 巻取り部
18 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状の物指し本体(2a)の表面に、13本の各弦(15)に対して柱(16)を立てる位置を示した目印線(3)及び弦(15)の名称を印刷すると共に各目印線(3)の中央部に穴(4)を開け、更に前記テープ状の物指し本体(2a)の先端部に、弦(15)を掛止するための弦掛止部(5)を具備して構成することを特徴とする、箏調弦用物指し。
【請求項2】
上記テープ状の物指し本体(2a)の表面に印刷する目印線(3)は、平調子や雲井調子等の各調弦法の中から1つの調弦法の調弦位置を専用に印刷し、又は複数の調弦法の調弦位置を色又は線種を変えて印刷することを特徴とする、請求項1に記載の箏調弦用物指し。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−34241(P2007−34241A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238004(P2005−238004)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(599097692)
【出願人】(599097706)
【Fターム(参考)】