説明

管の継手構造

【課題】 管の接合作業を短時間で行い、かつ管の継手部に確実にシール機能を付与する。
【解決手段】 挿口10の外周にシール材13に、接触可能なシール材押圧リング20と、このシール材押圧リング20に接触可能な押輪21とが配置され、シール材押圧リング20の外周に押圧リングテーパ面22が形成され、押輪21が、周方向の分割部と、分割部の締め付けにより分割部に形成された空間を周方向に狭めることが可能なボルト29、ナット18と、このボルト29、ナット18により押輪21が縮径されることで受口フランジ19にかかり合い可能となる爪部24と、押輪21が縮径されることで押圧リングテーパ面22に接する押輪テーパ面27とを有するものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、管の継手構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、管の継手構造の一つとして図6に示すような継手構造がある。図6に示すように、一方の管1の端部には受口2が形成されており、受口2の奥側には奥端面3が形成されている。
【0003】受口2の内周における開口側には、開口側に向かって広がるテーパ面6が形成されている。また、受口2の端面7には周方向に一定の間隔をおいて複数の管軸方向のねじ孔8が形成されている。
【0004】一方、他方の管9の端部には挿口10が形成されており、所定の位置まで受口2に挿入されている。ロックリング5の位置よりも受口2の開口側における挿口10の外周には、周方向一つ割のバックアップリング12と環状でゴム製のシール材13とが配置されている。また、他方の管9における、受口2に入り込まない部分の外周には、受口2と同様の外径の環状の押輪15が設けられており、押輪15とシール材13との間には割輪14が配置されている。なお、押輪15における割輪14と接触する部分には、割輪14の形状に合わせて切欠部15aが形成されており、割輪14に安定して接触することができる。
【0005】この押輪15には、受口2の端面7に形成された複数のねじ孔8に対応する複数の丸孔16が貫通状態で形成されている。複数のボルト17の一端部が受口2の端面7に形成されているそれぞれのねじ孔8にねじ合わされて植え込まれており、この状態の各ボルト17に押輪15におけるそれぞれの丸孔16がはめ合わされ、かつ各ボルト17の他端部にそれぞれのナット18がねじ合わされている。
【0006】このボルト17とナット18との締め付け力により押輪15が管軸方向に受口2の奥側に向かって割輪14を押圧し、さらに割輪14が挿口10の外周に配置されているシール材13及びバックアップリング12を管軸方向に受口2の奥側に向かって押圧して、受口2に形成されているテーパ面6にシール材13を強く押し当てる。これにより、この管継手にシール機能が付与される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の管の継手構造であると、上述したように、受口2と挿口10とを接合する際には、複数のボルト17の一端部を受口2の端面7に形成されているそれぞれのねじ孔8にねじ合わせ、この状態の各ボルト17に押輪15におけるそれぞれの丸孔16をはめ合わせ、各ボルト17の他端部にそれぞれのナット18をねじ合わせる作業が必要とされる。このように管の接合には複数のボルト17が使用されるため、管の接合作業には多くの時間が必要となる。
【0008】そこで本発明はこのような問題点を解決して、管の接合作業を短時間で行い、かつ管の継手部に確実にシール機能を付与することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために請求項1記載の発明は、一方の管における受口の端部の外周には径方向外向きにフランジが形成され、前記受口内に他方の管の挿口が挿入され、前記受口におけるシール材圧接面と前記挿口との間に環状のシール材が配置され、前記挿口の外周に前記シール材に接触可能な接触リングと、前記接触リングに接触可能な押輪とが配置され、前記接触リングの外周における前記シール材から遠い側の部分に、前記シール材から遠くなるにつれて径が小さくなる第1のテーパ面が形成され、前記押輪が、前記押輪を周方向に分割する分割部と、前記分割部を締め付けることにより前記分割部に形成された空間を周方向に狭めることが可能な締付手段と、前記締付手段により前記分割部に形成された空間が周方向に狭められて前記押輪が縮径されることで前記フランジにかかり合い可能となる爪部と、前記締付手段により前記分割部に形成された空間が周方向に狭められて前記押輪が縮径されることで前記第1のテーパ面に接して前記接触リングを介して前記シール材を前記シール材圧接面に向かって押圧させる第2のテーパ面とを有するものである。
【0010】このような構成によれば、締付手段によって分割部を締め付けて分割部に形成された空間を周方向に狭め、押輪全体を縮径させることにより、押輪における爪部を受口におけるフランジにかかり合わせ、かつ押輪における第2のテーパ面を接触リングにおける第1のテーパ面に接触させることができる。さらにこの状態の押輪の分割部を締付手段により一層強く締め付け、分割部に形成された空間を周方向に狭めることで、押輪をこの状態からさらに縮径させると、既に接触している、押輪における第2のテーパ面と接触リングにおける第1のテーパ面とが、この第1及び第2のテーパ面に沿って互いにずれようとする。しかし、押輪における爪部が受口におけるフランジにかかり合っていることから、接触リングに対して押輪がずれることができず、接触リングが押輪に対し、管軸方向に受口におけるシール材圧接面に向かって、シール材をその全周にわたって押圧しながらずれる。したがって、シール材は接触リングによりシール材圧接面に圧接されるので、管の継手部にシール機能を確実に付与することができる。また、このように、締付手段により押輪を縮径させるのみで、締付手段により発生する締付力を接触リングに伝達し、締付力が伝達された接触リングによりシール材をその全周にわたって押圧することができるので、分割部の数のみに依存した少ない締結手段で管の継手部にシール機能を確実に付与することができ、かつ管の接合作業を短時間で行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態の管の継手構造を図1〜図3を参照しながら説明する。なお、本明細書中において使用する縮径という用語は、周方向に分割部を有する押輪を、その分割部で空間を形成するように配置し、この分割部をしめたときに押輪自体が実質的に変形せずその内径が小さくならないような単に空間が狭まる場合や、上記と同様に配置された押輪の分割部をしめたときに、押輪がこの空間を周方向に狭めるように変形することにより、押輪自体の内径が小さくなる場合をいう。
【0012】図1は、本発明の実施の形態の管の継手構造を示す管軸方向の断面図であり、図2は、図1において用いられている押輪の分解斜視図である。また、図3は、図1においてさらにナットが締められた状態を示す管軸方向の断面図である。なお、実施の形態において、従来の管の継手構造において既に説明したものと同様のものには、図6において使用した符号と同一の符号を付すことで、その詳細な説明を省略する。
【0013】図1及び図3に示すように、本発明の実施の形態の管の継手構造を構成する一方の管1の受口2における端部の外周には径方向外向きにフランジである受口フランジ19が形成されている。受口2内には挿口10が挿入されており、受口2におけるシール材圧接面であるテーパ面6と挿口10との間に環状のシール材13が配置され、挿口10の外周にシール材13に接触可能な接触リングであるシール材押圧リング20と、このシール材押圧リング20に接触可能な押輪21とが配置されている。なお、シール材押圧リング20は、挿口10の外周に配置しやすくするために、周方向に分割部、例えば周方向に一つの分割部を有する形状に形成されていても良い。
【0014】シール材押圧リング20の外周におけるシール材13から遠い側の部分には、シール材13から遠くなるにつれて径が小さくなる第1のテーパ面である押圧リングテーパ面22が形成されている。
【0015】図1〜図3に示すように、押輪21は、押輪21を周方向に二つに分割する分割部23a、23bと、受口フランジ19にかかり合い可能な爪部24と、この爪部24と接続部28を介して連続し、シール材押圧リング20における押圧リングテーパ面22に接することが可能な第2のテーパ面である押輪テーパ面27と、分割部23a、23bの近傍において押輪21における受口2から遠い側の端面から管軸方向に伸びて形成されている各分割部23a、23bごとに一対の押輪フランジ25と、押輪フランジ25に形成されている丸孔25aに通されて分割部23a、23bを締め付けることにより分割部23a、23bに形成された空間26を周方向に狭めることが可能な締付手段であるボルト29、ナット18とを有する。
【0016】このような構成の押輪21を用いて、図3の仮想線に示すように、押輪21における爪部24が受口フランジ19にかかり合い可能となるように管の継手部分に押輪21をはめ合わせる。このとき、それぞれの分割部23a、23bによって空間26が形成する。押輪フランジ25に形成されている丸孔25aにボルト29を通し、このボルト29にナット18をねじ合わせ、分割部23a、23bを締め付ける。そして、押輪21を実質的に変形させずに、分割部23a、23bに形成された空間26を単に周方向に狭めて押輪21を縮径する。その後、押輪21における爪部24を受口2における受口フランジ19にかかり合わせ、かつ押輪21における押輪テーパ面27をシール材押圧リング20における押圧リングテーパ面22に接触させる。
【0017】このとき、この状態の押輪21の分割部23a、23bをボルト29及びナット18により一層強く締め付け、分割部23a、23bに形成された空間26を周方向に狭めることで、図3に示すように、押輪21を仮想線にて示す状態からさらに実線にて示す状態にまで縮径させると、既に接触している、押輪21における押輪テーパ面27とシール材押圧リング20における押圧リングテーパ面22とが、この押輪テーパ面27または押圧リングテーパ面22に沿って互いにずれようとする。
【0018】しかし、押輪21における爪部24が受口2における受口フランジ19にかかり合っていることから、シール材押圧リング20に対して押輪21がずれることができず、シール材押圧リング20が押輪21に対し、管軸方向に受口2におけるテーパ面6に向かって、シール材13をその全周にわたって押圧しながらずれる。したがって、シール材13はシール材押圧リング20によりテーパ面6に圧接されるので、管の継手部にシール機能を確実に付与することができる。
【0019】また、このように、分割部23a、23bに対応した少ない数のボルト29及びナット18により押輪21を縮径させるのみで、ボルト29及びナット18により発生する締付力をシール材押圧リング20に伝達し、締付力が伝達されたシール材押圧リング20によりシール材13をその全周にわたって押圧することができるので、このように少ないボルト29及びナット18で管の継手部にシール機能を確実に付与することができ、かつ管の接合作業を短時間で行うことができる。
【0020】また、図1〜図3に示した押輪21のかわりとして、図4及び図5に示すような押輪30を用いることができる。この押輪30は、図示のように、押輪21における周方向に一定の間隔をおいた複数の位置に、爪部24及び押輪テーパ面27が接続部28と同じ肉厚になるように管軸方向に肉盗み部31が形成された構成とされている。
【0021】このように構成される押輪30を用いて管の継手部を構成するには、押輪フランジ25における丸孔25aに通されているボルト29にナット18をねじ合わせて分割部23a、23bを締め付ける。このとき、押輪30には肉盗み部31が形成されているので、押輪テーパ面27が押圧リングテーパ面22に接触した状態からさらに分割部23a、23bが締め付けられると、押輪30はその内径が小さくなる方向に容易に変形して縮径することができる。したがって、シール材押圧リング20を管軸方向に受口2の奥側に向かってしっかりと押圧することができる。
【0022】
【発明の効果】以上のように本発明によると、締付手段によって分割部を締め付けて分割部に形成された空間を周方向に狭め、押輪全体を縮径させることにより、押輪における爪部を受口におけるフランジにかかり合わせ、かつ押輪における第2のテーパ面を接触リングにおける第1のテーパ面に接触させることができる。さらにこの状態の押輪の分割部を締付手段により一層強く締め付け、分割部に形成された空間を周方向に狭めることで、押輪をこの状態からさらに縮径させると、既に接触している、押輪における第2のテーパ面と接触リングにおける第1のテーパ面とが、この第1及び第2のテーパ面に沿って互いにずれようとする。しかし、押輪における爪部が受口におけるフランジにかかり合っていることから、接触リングに対して押輪がずれることができず、接触リングが押輪に対し、管軸方向に受口におけるシール材圧接面に向かって、シール材をその全周にわたって押圧しながらずれる。したがって、シール材は接触リングによりシール材圧接面に圧接されるので、管の継手部にシール機能を確実に付与することができる。
【0023】また、このように、締付手段により押輪を縮径させるのみで、締付手段により発生する締付力を接触リングに伝達し、締付力が伝達された接触リングによりシール材をその全周にわたって押圧することができるので、分割部の数のみに依存した少ない締結手段で管の継手部にシール機能を確実に付与することができ、かつ管の接合作業を短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の管の継手構造を示す管軸方向の断面図である。
【図2】図1における押輪の分解斜視図である。
【図3】図1においてさらにナットが締められた状態を示す管軸方向の断面図である。
【図4】図1〜図3に示した押輪とは異なる形状の押輪の正面図である。
【図5】図4における押輪の分解斜視図である。
【図6】従来の技術における耐震機能を有する継手構造の一例を示す管軸方向の断面図である。
【符号の説明】
1 一方の管
2 受口
6 テーパ面
9 他方の管
10 挿口
13 シール材
18 ナット
19 受口フランジ
20 シール材押圧リング
21 押輪
22 押圧リングテーパ面
23a、 23b 分割部
24 爪部
26 空間
27 押輪テーパ面
29 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】一方の管における受口の端部の外周には径方向外向きにフランジが形成され、前記受口内に他方の管の挿口が挿入され、前記受口におけるシール材圧接面と前記挿口との間に環状のシール材が配置され、前記挿口の外周に前記シール材に接触可能な接触リングと、前記接触リングに接触可能な押輪とが配置され、前記接触リングの外周における前記シール材から遠い側の部分に、前記シール材から遠くなるにつれて径が小さくなる第1のテーパ面が形成され、前記押輪が、前記押輪を周方向に分割する分割部と、前記分割部を締め付けることにより前記分割部に形成された空間を周方向に狭めることが可能な締付手段と、前記締付手段により前記分割部に形成された空間が周方向に狭められて前記押輪が縮径されることで前記フランジにかかり合い可能となる爪部と、前記締付手段により前記分割部に形成された空間が周方向に狭められて前記押輪が縮径されることで前記第1のテーパ面に接して前記接触リングを介して前記シール材を前記シール材圧接面に向かって押圧させる第2のテーパ面とを有することを特徴とする管の継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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